(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857467
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】医薬品有効成分の粒子加工のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20210405BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20210405BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20210405BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20210405BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20210405BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20210405BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K9/72
A61K31/137
A61K31/167
A61K31/46
A61K31/56
A61K31/573
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-176303(P2016-176303)
(22)【出願日】2016年9月9日
(62)【分割の表示】特願2013-505534(P2013-505534)の分割
【原出願日】2011年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-19845(P2017-19845A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年9月26日
【審判番号】不服2019-8993(P2019-8993/J1)
【審判請求日】2019年7月4日
(31)【優先権主張番号】105058
(32)【優先日】2010年4月21日
(33)【優先権主張国】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】507128610
【氏名又は名称】ホビオネ インテル エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ジル
(72)【発明者】
【氏名】クオンスタンクア クアセルア
(72)【発明者】
【氏名】リクアルド メンドンクア
(72)【発明者】
【氏名】フィルイペ ガスパル
【合議体】
【審判長】
藤原 浩子
【審判官】
石井 裕美子
【審判官】
穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/073154(WO,A1)
【文献】
特開2004−137272(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2156823(EP,A1)
【文献】
INTERNATIONAL JOURNAL OF PHARMACEUTICS,2008年 8月22日,VOL. 365, NO. 1−2,PAGES 162−169
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径縮小プロセスの間に多形転移を受けやすい医薬品有効成分(API)の粒径を、該APIの結晶形又は多形を95重量%以上維持したまま、縮小させる方法であって、
a)2〜60% w/vの該APIを含む非溶媒中の該APIの均一な懸濁液を形成するステップ;及び
b)該APIの該均一な懸濁液を、300〜3500バールの範囲の圧力でのキャビテーションによって、加工するステップを含み、
該方法は、該非溶媒以外の賦形剤の非存在下で該APIに対し行われ、かつキャビテーションによって加工された該医薬品有効成分が肺又は鼻への局所送達に適するように、キャビテーションによって加工された該医薬品有効成分の粒径分布が、2.5未満のスパン((Dv90-Dv10)/Dv50)を有する、前記方法。
【請求項2】
前記均一な懸濁液が、10〜50% w/vの前記APIを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記APIが、水、ヘプタン、アルコール、ケトン、若しくはアルカン、又は2種以上のこれらの混合物中で懸濁化される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
粉末の形態の前記加工された医薬品有効成分を単離するステップをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記単離ステップが、濾過又は噴霧乾燥を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記単離ステップが、噴霧乾燥を含み、該噴霧乾燥ステップが、前記キャビテーションステップの後すぐに行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記医薬品有効成分が、モメタゾン、フルチカゾン、チオトロピウム、シクレソニド、ブデソニド、フォルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、イプラトロピウム、テルブタリン、若しくはヒドロコルチゾン、又は前述のものの1種の医薬として許容し得る塩若しくはエステル、或いは前述の医薬品有効成分又はそれらの医薬として許容し得る塩若しくはエステルの2種以上のものの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記有効成分が、フランカルボン酸モメタゾン若しくはフランカルボン酸モメタゾン一水和物;プロピオン酸フルチカゾン若しくはフランカルボン酸フルチカゾン;チオトロピウム臭化物若しくはチオトロピウム臭化物一水和物;シクレソニド;ブデソニド;フォルモテロール;サルメテロール;サルブタモール;ジプロピオン酸ベクロメタゾン;酢酸ベタメタゾン;イプラトロピウム;テルブタリン;若しくはヒドロコルチゾン17-プロピオナート21-アセタート、又はこれらの医薬品有効成分の2種以上のものの組み合わせである、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記医薬品有効成分が、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、プロピオン酸フルチカゾン、又はフランカルボン酸フルチカゾンである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記APIが、水中で懸濁化される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記医薬品有効成分が、キシナホ酸サルメテロールである、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記APIが、ヘプタン中で懸濁化される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記医薬品有効成分が、チオトロピウム臭化物である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記APIが、アセトン中で懸濁化される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記スパンが、2.0未満である、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記スパンが、1.8未満である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
医薬組成物を製造するための方法であって、請求項1〜16のいずれか1項記載の方法を実施することと、次いで、キャビテーションにより加工された該医薬品有効成分を1種以上の医薬として許容し得る賦形剤と合わせることとを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品有効成分の粒子加工及びサイズ縮小のための方法に関する。この方法
は、特に高圧でのキャビテーションによる湿式粉砕を含み、好ましくはそれに噴霧乾燥が
続く。この方法によって、医薬品有効成分の多形を変化させずに粒子のサイズ及びサイズ
分布を制御することが可能になる。
【0002】
本発明は、特に高圧でのキャビテーションによる湿式粉砕を含む、医薬品有効成分の粒
径縮小のための新規の方法に関する。ここでは、生成物は、該生成物が溶解しない水又は
他の溶媒に懸濁され、次いで、好ましくは懸濁液の噴霧乾燥がそれに続き、乾いた粉末と
して生成物を得ることが好ましい。
【0003】
本発明の一態様によれば、医薬品有効成分の粒径を、該医薬品有効成分の多形を維持し
ながら縮小させるための方法であって、高圧でのキャビテーションによって医薬品有効成
分を加工するステップを含む前記方法が提供される。好ましい態様では、次いで、加工さ
れた有効成分が噴霧乾燥される。
【0004】
本発明の方法は、加工のために必要とされるいずれかの懸濁溶媒以外のいかなる賦形剤
も存在しない状態で、単離状態の医薬品有効成分に対して実施されることが好ましい。
【0005】
本発明はまた、本発明の方法に従うプロセスによって得ることが可能である又は得られ
る医薬品有効成分(API)も包含する。
【0006】
本発明はまた、医薬品有効成分の粒径を、該医薬品有効成分の多形を維持しながら縮小
させるための、高圧でのキャビテーションの使用も提供する。好ましくは、キャビテーシ
ョンの後に、噴霧乾燥による有効成分の単離が続く。
【0007】
この発明の際立った特徴は、本明細書で開示する方法が、医薬品有効成分の結晶形又は
多形を変化させないことである。例えば、従来の方法(例えば:エアジェット粉砕(air-jet
milling))によるフランカルボン酸モメタゾン一水和物のようなある種の医薬品有効成分
の粒径縮小は、有効成分の結晶形を部分的又は完全に無水形(I型)又は非晶形に変化させ
ることが周知である。この発明は、ある種の医薬品有効成分、及び従来の粒子縮小法にか
けられた場合に結晶形が変化を受ける他の医薬品有効成分によって提示されるこの問題を
解決することを目的とする。
【0008】
本発明による加工又は処理後、APIの粒子は、結晶の結晶形又は多形という観点から見
て、好ましくは95(重量)%以上、より好ましくは99(重量)%以上、加工前のAPIの粒子と同
一である。結晶性の出発材料が使用される場合、加工後の粒子の好ましくは2(重量)%以下
、より好ましくは1(重量)%以下が、非晶質材料を含む。言い換えれば、加工後の粒子の好
ましくは98(重量)%以上、より好ましくは99%以上が、結晶性材料を含む。
【0009】
さらに、本明細書に記述する発明は、圧力、濃度、及びサイクル数又は再循環期間など
の作動パラメータを調整することによって、非常に分布の狭い、粒径縮小の厳密な制御を
可能にする。本発明はまた、乾燥粉末としての有効成分の高再現性及び単離も提供する。
これは、革新的特徴であり、従来の粒径縮小法に勝るかなりの利点を提供し、それだけに
は限らないが気道に送達される粉末又は懸濁液、注射用懸濁液、又は皮膚科的使用のため
の製剤を含めた粒径が重要性を有するような様々な製剤に使用することができる安定な医
薬品有効成分粒子の単離を可能にする。
【0010】
この発明の別の際立った特徴は、この方法を、肺及び経鼻送達に有用な製剤の製造に特
に適したものとする、粉末が呼吸器系への薬物送達に不可欠な高細粒分を示すが、安定化
添加物を必要としないという事実によって特徴付けられる粉末の生成である。
【0011】
この発明の別の態様は、粉末形態の材料を微分化及び単離するための本明細書に記述す
る方法が、容易にスケールアップされ、工業規模で適用できるようになることである。特
に、(例えばMFIC社又はBee International社によって供給されるもののような)高圧キャ
ビテーション装置及び(例えばNiro社によって供給されるもののような)噴霧乾燥機の大規
模の使用を、この発明に記述する通りに達成することができる。
【背景技術】
【0012】
医薬品有効成分の粒径縮小は、製薬工業における鍵となる単位操作である。このプロセ
スの最終目的は、薬物粒子の空気力学的特性の最適化を通じて、肺に及び鼻に送達される
薬物の沈着を増強することである。最も一般的な粒径縮小技術(例えば、ジェット粉砕、
ボールミリング)は、結晶表面での高い熱応力(これは、微粉化された粉末における高レ
ベルの非晶質含有率又は多形の変化を場合によってはもたらす、結晶構造のある程度の異
常を誘発する可能性がある)が伴う。
【0013】
高圧でのキャビテーション及び噴霧乾燥が、多くの様々な適用例に関して文献中に比較
的よく記載されているプロセスであるという事実にもかかわらず、これらは、その生成物
が他の粒径縮小プロセスによって多形転換を受けることへの解決策として順序立てて記載
されてはいない。米国特許出願US20070178051は、有効成分-賦形剤の混合物のより十分な
ブレンドと、安定なナノ粒子の単離とを目的として、表面安定剤を含有するあらかじめ加
工した製剤の噴霧乾燥を含むプロセスを記載している。
【0014】
さらに、大抵の医薬品有効成分については、安定化添加物を伴わない肺送達のための高
細粒分を示す、非常に分布が狭く、再現性が高く、かつ粉末形態の有効成分を単離する、
粒径縮小の厳密な制御は、工業規模ではまだ実現していない。
【0015】
例えば、プロピオン酸フルチカゾンの場合、文献に記載されている粒径縮小プロセスは
、エアジェット粉砕である。しかし、このプロセスを用いると、粒径分布の制御は難しく
、最終生成物は、高レベルの非晶質含有率を示す。これは、非晶質含有率のレベルを低下
させるために、微粉化された医薬成分のエージングを必要とするが、これは、生成サイク
ルタイムを増大させるさらなる加工ステップである。従来の技術においては、記載された
プロセスを使用して、望ましくない多形変化を起こさずに粒径を縮小することができるこ
とを示すものは存在しない。
【0016】
フランカルボン酸モメタゾン一水和物の場合、エアジェット粉砕及びボールミリングなどの従来の粒径縮小技術が、結合水を失わせ、無水或いは非晶形が生じることが公知である。US 6,187,765は、医薬品有効成分の粒径分布を縮小するための、他の賦形剤を用いるフランカルボン酸モメタゾン一水和物の懸濁液のマイクロフルイダイゼーション(microfluidization)の使用を開示している。しかし、この文献は、粉末形状の微粉化されたフランカルボン酸モメタゾン一水和物を得るためのいかなるプロセスも記載していない。
論文「Preparation and characterisation of spray-dried tobramycin powders conta
ining nanoparticles for pulmonary delivery」(International Journal of Pharmaceuticals, vol. 365, no. 1-2, 2009年1月5日, 162-169ページ)及びEisai R&D Man. Co. Ltd.によるEP1834624A1。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、HPCに続くSD後のフランカルボン酸モメタゾン一水和物のXRPDディフラクトグラムである。
【
図2】
図2は、HPCに続くSD後のプロピオン酸フルチカゾンのXRPDディフラクトグラムである。
【
図3】
図3は、HPCに続くSD後のフランカルボン酸フルチカゾンのXRPDディフラクトグラムである。
【
図4】
図4は、HPCに続くSD後のキシナホ酸サルメテロールのXRPDディフラクトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましい態様では、本発明は、湿式粉砕、特に高圧でのキャビテーションを含む、医薬
品有効成分(API)の粒径縮小のための方法を提供する。ここでは、生成物は、該生成物が
溶解しない水又は他の溶媒に懸濁され、それに続いて懸濁液の噴霧乾燥が行われ、乾燥粉
末の形で生成物が得られる。
【0019】
該化合物は、該化合物が溶解しない水又は任意の他の無機若しくは有機溶媒などの任意
の適切な溶媒に懸濁することができる。懸濁液濃度は一般的に、2から60% w/vの間、好ま
しくは10から50% w/vの間となるであろう。用いることとなる濃度の範囲は、材料を加工
するための高圧キャビテーション装置の性能によって制限されることとなる。
【0020】
粒径縮小は、非溶媒に懸濁させた材料の高圧でのキャビテーションによって実現する。
当業者には明らかであるように、このプロセスは、懸濁液に高圧をかけること、それに続
く、ノズルを通した急激な膨張、それによる、粒子を破砕するのに十分に強いキャビテー
ション力の産生からなる。マイクロフルイダイゼーションは、このプロセスを説明するた
めにこの分野で時折使用される代替用語である。本発明の目的では、用語「高圧でのキャ
ビテーション」は、用語マイクロフルイダイゼーションと本質的に同義である。ある種の
キャビテーション設備の追加的特徴は、懸濁させた材料の粒径をさらに低下させるための
、液体の対向流による粒子-粒子衝突の促進である。適用される圧力は、設備的制限によ
ってのみ限定される。
【0021】
「高圧」とは、適切には、圧力がおよそ300バール以上であることと理解されたい。一
般的に、圧力は、300から3100バール又は300から3500バールの範囲内となるが、設備によ
って定められる制限に応じて、所望される場合には、より高い圧力(例えば最高5000バー
ル以上まで)を使用することができる。
【0022】
懸濁液は、高圧キャビテーション装置を、所望の粒径及びサイズ分布が達成されるまで
何度か通過させることができる。こうした「再循環」は、本発明の好ましい特徴である。
再循環は、例えば、APIに応じて2〜30回(又はサイクル)実施することができる。好ましい
サイクル範囲としては、5から25及び15から25が挙げられる。注目すべきは、粒径縮小の
他の従来の方法と比較した場合に、この粒径縮小技術によって提供される狭い粒径分布で
あり、肺又は鼻への局所的薬物送達に特に適している。このプロセスによって、スパン(s
pan)値が低い粒子を生じさせることが可能になり、適切には、スパン値は、2.5以下であ
る。より好ましくは、スパン値は、2.0以下、又は1.8以下である。当業者には明らかであ
るように、スパンは、比((Dv90-Dv10)/Dv50)によって定義されるが、Dvは、定義された割
合の粒子(例えば、数式中では、10%、50%、又は90%)の直径がDv値以下であるような直径
値である。薬物送達は、本発明の方法に従って製造される粒子からなる薬物の投薬量を送
達することが可能な器具を使用することによって実現し、こうした器具は、口又は鼻を通
して、患者の吸入努力下で又は投薬量の加圧を介して、投薬量を送達することとなる。
【0023】
キャビテーションプロセスで使用される圧力に応じて、懸濁液を、溶媒の沸点近くの温
度まで温めることができる。設備の出口に冷却システムを備え付けることができ、溶媒が
沸点に達するのを避けるために、背圧もかけることができる。
【0024】
次いで、溶媒を除去して乾燥粉末としての生成物を得るために、本発明中に記載する微
粉化された懸濁液を濾過するか、又は、こうした小さな粒径の懸濁液を濾過することが難
しい場合には好ましくは噴霧乾燥機に送り込むことができる。噴霧乾燥プロセスは、標準
の作動条件で実施することができる。二流体ノズル又は圧力ノズルなどの噴霧化器具を使
用することができる。供給速度だけでなく、乾燥温度(これは、最終生成物中のプロセス
溶媒及び残留溶媒レベル目標に依存する)も、適切に選択することができる。
【0025】
本明細書に記述するプロセスは、該プロセスを、工業生産へのスケールアップに特に適
したものとするような、市販品として入手できる任意の適切な種類の標準の高圧キャビテ
ーション及び噴霧乾燥設備を用いて実現することができる。こうした設備は、当業者に周
知である。
【0026】
好ましい態様では、噴霧乾燥(SD)ステップは、キャビテーションステップの後すぐに行
われる。「すぐに」とは、噴霧乾燥ステップが、キャビテーションステップの完了後1時
間以内、好ましくは30分以内に実施されることを意味する。
【0027】
多形転移を防止し、かつ粒径の厳密な制御を達成するために、このプロセスを適用する
ことができる医薬品有効成分の例としては、それだけには限らないが、大抵のコルチコス
テロイド及び他の医薬品有効成分などの、従来の粒径縮小技術を使用した時に多形転移を
受けやすい、非晶質、結晶質、水和、又は溶媒和形態の医薬品有効成分及びその医薬とし
て許容し得る塩が挙げられる。こうした化合物の例は、以下である:モメタゾン及びその
エステル(例えば、フランカルボン酸モメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン一水和物)
、フルチカゾン及びそのエステル(例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン
酸フルチカゾン)、チオトロピウム(例えば、チオトロピウム臭化物、チオトロピウム臭化
物一水和物)、シクレソニド、ブデソニド、フォルモテロール、サルメテロール、サルブ
タモール、ベクロメタゾン及びそのエステル(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン)、
ベタメタゾン及びそのエステル(例えば、酢酸ベタメタゾン)、イプラトロピウム、テルブ
タリン、ヒドロコルチゾン及びそのエステル(例えば、ヒドロコルチゾン17-プロピオナー
ト21-アセタート)、又は2種以上のこれらの医薬品有効成分の組み合わせ。
【0028】
当業者には明らかであるように、本発明の方法に従って製造されたAPIを、適切な賦形
剤を必要に応じて含む、治療的に有用な医薬組成物に組みこむことができる。例えば、本
発明によって生成されたAPI粉末の粒子と、肺又は鼻への送達に適したラクトースなどの
粒子状の賦形剤又は任意の他の適切な賦形剤(マンニトール、グルコース、トレハロース
など)とをブレンドすることによって、粉末製剤を生成することができる。本発明の粒子
はまた、バルブに基づく用量調節機構を備えた加圧型の缶などの送達器具における使用の
ための懸濁液として製剤化することもできる。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は、単なる例示として示すものであり、本発明の範囲を限定しない。
【0030】
(実施例1)
1)フランカルボン酸モメタゾン一水和物(130g)を、水(867g)に懸濁し、30分間撹拌して
均一な懸濁液を形成し、実験室規模の高圧キャビテーション(HPC)装置に送り込み、再循
環モード(すなわちHPCの排出液を撹拌容器入口に戻すモード)で10kPsi(689バール)の圧力
で作動させた。このキャビテーションステップの後、懸濁液を、次のステップで使用する
ために保持容器に移した。HPC装置を水ですすぎ、この洗浄水を懸濁液の主部分に加えた
。
2)懸濁液を、5ml/分の供給速度で、撹拌しながら、実験室規模の噴霧乾燥機に送り込み
、66℃の温度で乾燥させた。生成物を、ガラスフラスコ内に収集し、72gを得た。
3)単離した生成物は、US6180781B1に主張されているのと実質的に同じXRPD
図1.1を示し
た。動的水蒸気吸着(dynamic vapour sorption)(DVS)によって測定された非晶質含有率は
、1.1%未満であり、無水形は、近赤外分光法によって検出されなかった。TGA値は、3.0%
であった。生成された粉末の粒径分布は、Dv10=1.91μm;Dv50=3.97μm;Dv90=7.47μm;ス
パン=1.4であった。
図1を参照のこと。
【0031】
(実施例2)
1)プロピオン酸フルチカゾン(30g)を、水(100g)に懸濁し、均一な懸濁液が得られるま
で撹拌し、実験室規模のHPCに送り込み、40kPsi(2758バール)の圧力で、20サイクル作動
させた。このキャビテーションステップの後、懸濁液を、次のステップで使用するために
保持容器に移した。HPC装置を水ですすぎ、このすすぎ水を懸濁液の主部分に加えた。
2)懸濁液を、5ml/分の供給速度で、撹拌しながら、実験室規模の噴霧乾燥機に送り込み
、70℃の温度で乾燥させた。生成物を、ガラスフラスコ内に収集し、21gを得た。
3)単離した生成物は、Dv10=1.20μm;Dv50=2.45μm;Dv90=4.68μm;スパン=1.4という粒
径分布と共に、出発材料と実質的に同じXRPDを示した。
図2を参照のこと。
【0032】
(実施例3)
1)フランカルボン酸フルチカゾン(9g)を、水(100g)に懸濁し、均一な懸濁液が得られる
まで撹拌し、実験室規模のHPCに送り込み、30kPsi(2068バール)の圧力で、20サイクル作
動させた。このキャビテーションステップの後、懸濁液を、次のステップで使用するため
に保持容器に移した。HPC装置を水ですすぎ、このすすぎ水を懸濁液の主部分に加えた。
2)懸濁液を、5ml/分の供給速度で、撹拌しながら、実験室規模の噴霧乾燥機に送り込み
、50℃の温度で乾燥させた。生成物を、ガラスフラスコ内に収集し、6.7gを得た。
3)単離した生成物は、Dv10=0.89μm;Dv50=1.95μm;Dv90=3.78μm;スパン=1.5という粒
径分布と共に、出発材料と実質的に同じXRPDを示した。
図3を参照のこと。
【0033】
(実施例4)
1)キシナホ酸サルメテロール(140g)を、ヘプタン(1400g)に懸濁し、均一な懸濁液が得
られるまで撹拌した。次いで、これを実験室規模のHPCに送り込み、15kPsi(1034バール)
の圧力で、7サイクル作動させた。このキャビテーションステップの後、懸濁液を、ヘプ
タンと共に使用するために保持容器に移し、すすぎ水を懸濁液の主部分に加えた。
2)懸濁液を、12ml/分と17ml/分の間の供給速度で、撹拌しながら、実験室規模の噴霧乾
燥機に送り込み、40℃の温度で乾燥させた。生成物を、ガラスフラスコ内に収集し、104g
を得た。
3)単離した生成物は、Dv10=0.33μm;Dv50=1.37μm;Dv90=3.09μm;スパン=2.0という粒
径分布と共に、出発材料と実質的に同じXRPDを示した。
図4を参照のこと。
【0034】
(実施例5)
1)チオトロピウム臭化物(20g)を、アセトン(200g)に懸濁し、均一な懸濁液が得られるまで撹拌した。次いで、これを実験室規模のHPCに送り込み、20kPsi(1379バール)の圧力で、21サイクル作動させた。このキャビテーションステップの後、懸濁液を、保持容器に移した。
2)懸濁液を、6ml/分の供給速度で、撹拌しながら、実験室規模の噴霧乾燥機に送り込み、45℃の温度で乾燥させた。生成物を、ガラスフラスコ内に収集し、13gを得た。
3)単離した生成物は、Dv10=0.74μm;Dv50=2.90μm;Dv90=5.58μm;スパン=1.7の粒径分布を示した。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
医薬品有効成分(API)の粒径を、該医薬品有効成分の多形を維持しながら縮小させるための方法であって、高圧でのキャビテーションによって該医薬品有効成分を加工するステップを含む、前記方法。
(構成2)
前記有効成分が、該有効成分が可溶でない溶媒に懸濁される、構成1記載の方法。
(構成3)
前記溶媒が、水、ヘプタン、アルコール、ケトン、若しくはアルカン、又は2種以上の前述のものの混合物である、構成1又は2記載の方法。
(構成4)
300から3500バールであるキャビテーション圧力を特徴とする、構成1、2、又は3記載の方法。
(構成5)
粉末の形態の加工された有効成分を単離するステップをさらに含む、構成1〜4のいずれか1項記載の方法。
(構成6)
前記単離ステップが、濾過又は噴霧乾燥を含む、構成5記載の方法。
(構成7)
前記単離ステップが、噴霧乾燥を含む、構成6記載の方法。
(構成8)
前記噴霧乾燥ステップが、前記キャビテーションステップの後すぐに行われる、構成7記載の方法。
(構成9)
前記医薬品有効成分が、肺又は鼻への局所送達に適している、構成1〜8のいずれか1項記載の方法。
(構成10)
前記有効成分が、モメタゾン、フルチカゾン、チオトロピウム、シクレソニド、ブデソニド、フォルモテロール、サルメテロール、サルブタモール、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、イプラトロピウム、テルブタリン、若しくはヒドロコルチゾン、又は前述のものの1種の医薬として許容し得る塩若しくはエステル、或いは前述の医薬品有効成分又はその医薬として許容し得る塩若しくはエステルの2種以上のものの組み合わせである、構成1〜9のいずれか1項記載の方法。
(構成11)
前記有効成分が、フランカルボン酸モメタゾン若しくはフランカルボン酸モメタゾン一水和物;プロピオン酸フルチカゾン若しくはフランカルボン酸フルチカゾン;チオトロピウム臭化物若しくはチオトロピウム臭化物一水和物;シクレソニド;ブデソニド;フォルモテロール;サルメテロール;サルブタモール;ジプロピオン酸ベクロメタゾン;酢酸ベタメタゾン;イプラトロピウム;テルブタリン;若しくはヒドロコルチゾン17-プロピオナート21-アセタート、又はこれらの医薬品有効成分の2種以上のものの組み合わせである、構成10記載の方法。
(構成12)
前記有効成分が、フランカルボン酸モメタゾン一水和物、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、キシナホ酸サルメテロール、又はチオトロピウム臭化物である、構成1〜11のいずれか1項記載の方法。
(構成13)
前記医薬品有効成分の粒径分布が、2.5未満のスパンを含む、構成1〜12のいずれか1項記載の方法。
(構成14)
前記スパンが、2.0未満である、構成13記載の方法。
(構成15)
前記スパンが、1.8.未満である、構成13又は14記載の方法。
(構成16)
医薬組成物を製造する方法であって、構成1〜15のいずれか1項記載の方法を実施することと、次いで、該医薬品有効成分を1種以上の医薬として許容し得る賦形剤と合わせることとを含む、前記方法。
(構成17)
前記医薬組成物が、鼻又は肺への局所送達のための粉末である、構成16記載の方法。
(構成18)
構成1〜15のいずれか1項記載の方法によって得ることができる、医薬品有効成分(API)。
(構成19)
構成18記載の医薬品有効成分(API)を含む、医薬組成物。