特許第6857470号(P6857470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857470
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ミシン糸および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/46 20060101AFI20210405BHJP
   D02G 3/26 20060101ALI20210405BHJP
   D02G 3/02 20060101ALI20210405BHJP
   D06M 13/152 20060101ALI20210405BHJP
   D06M 101/36 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   D02G3/46
   D02G3/26
   D02G3/02
   D06M13/152
   D06M101:36
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-189721(P2016-189721)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-43879(P2017-43879A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤男
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−059841(JP,A)
【文献】 特開昭61−097438(JP,A)
【文献】 特開昭62−006928(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/159749(WO,A1)
【文献】 実公昭58−029186(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00−3/48
D02J1/00−13/00
D01F1/00−6/96
9/00−9/04
D03D1/00−27/18
D04B1/00−1/28
21/00−21/20
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性繊維を含む紡績糸で構成されるミシン糸であって、前記紡績糸において下記式で算出される撚係数Kaが150以上となるよう撚りが付与されてなり、前記難燃性繊維がメタ型全芳香族ポリアミド繊維であり、ミシン糸の明度指数L値が10〜50であり、
前記難燃性繊維が、JIS L1091−1999 E−2法による限界酸素指数LOIが25.0以上であり、
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、結晶化度が15〜25%の範囲内であり、
ミシン糸が、前記紡績糸2〜6本を合撚してなり、
全ての紡績糸が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を紡績糸重量対比80重量%以上含み、
ミシン糸において、下記式で算出される撚係数Kbが300〜600の範囲内となるよう上撚りが付与されてなり、
下記式を満足し、
0.3≦Ka/Kb≦0.8
前記難燃性繊維において、繊維長が50mm以上であり、
前記難燃性繊維において、単繊維繊度が2.0dtex以下であり、
前記難燃性繊維において、引張強度が3.5cN/dtex以上であり、
かつ、前記難燃性繊維にキャリヤ剤が1.0〜2.0重量%含まれることを特徴とするミシン糸。
Ka=Ta×√(5905.42/Na)
ただし、Taは紡績糸の撚数(回/2.54cm)であり、Naは紡績糸の英式綿番手である。
Kb=Tb×√(5905.42/Nb)
ただし、Tbは上撚りの撚数(回/2.54cm)であり、Nbはミシン糸の英式綿番手である。
【請求項2】
ミシン糸の英式綿番手Nbが5〜13の範囲内である、請求項1に記載のミシン糸。
【請求項3】
ミシン糸の引張強力が10N以上である、請求項1または請求項2に記載のミシン糸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のミシン糸を用いて縫製してなる繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速での縫製が可能であり、染色性にも優れるミシン糸およびその製造方法および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシン糸として種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。例えば、メタ型全芳香族ポリアミド繊維はその耐熱性、難燃性とともに、柔らかさを有するため防火服用途に好適に使用されており、特に火炎暴露時の防火服としての機械的耐久性維持のためメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いたミシン糸が使用されている。
【0003】
しかしながら従来のメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いたミシン糸は構成繊維自体の耐熱性が優れているためミシン針通過時の摩擦熱による溶融破断はないものの、高い縫製張力には耐えられず、特に4000rpmを超える高速のミシン回転数では非常に糸切れしやすいという問題や、ミシン針自体も損耗するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭58−29186号公報
【特許文献2】特開平4−65545号公報
【特許文献3】特開2005−307391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、高速での縫製が可能であり、染色性にも優れるミシン糸およびその製造方法および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、メタ型全芳香族ポリアミド繊維などの難燃性繊維を含む紡績糸を用いてミシン糸を構成する際、紡績糸の撚数等を巧みに工夫することにより、高速での縫製が可能であり、染色性にも優れるミシン糸が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「難燃性繊維を含む紡績糸で構成されるミシン糸であって、前記紡績糸において下記式で算出される撚係数Kaが150以上となるよう撚りが付与されてなり、前記難燃性繊維がメタ型全芳香族ポリアミド繊維であり、ミシン糸の明度指数L値が10〜50であり、
前記難燃性繊維が、JIS L1091−1999 E−2法による限界酸素指数LOIが25.0以上であり、
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、結晶化度が15〜25%の範囲内であり、
ミシン糸が、前記紡績糸2〜6本を合撚してなり、
全ての紡績糸が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を紡績糸重量対比80重量%以上含み、
ミシン糸において、下記式で算出される撚係数Kbが300〜600の範囲内となるよう上撚りが付与されてなり、
下記式を満足し、
0.3≦Ka/Kb≦0.8
前記難燃性繊維において、繊維長が50mm以上であり、
前記難燃性繊維において、単繊維繊度が2.0dtex以下であり、
前記難燃性繊維において、引張強度が3.5cN/dtex以上であり、
かつ、前記難燃性繊維にキャリヤ剤が1.0〜2.0重量%含まれることを特徴とするミシン糸。」が提供される。
Ka=Ta×√(5905.42/Na)
ただし、Taは紡績糸の撚数(回/2.54cm)であり、Naは紡績糸の英式綿番手である。
Kb=Tb×√(5905.42/Nb)
ただし、Tbは上撚りの撚数(回/2.54cm)であり、Nbはミシン糸の英式綿番手である。
【0009】
また、ミシン糸の引張強力が10N以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記のミシン糸を用いて縫製してなる繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高速での縫製が可能であり、染色性にも優れるミシン糸およびその製造方法および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明において、難燃性繊維としては、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維などが例示される。
【0013】
なかでも、高速での縫製時に発生する熱や張力に耐える上で、JIS L1091−1999 E−2法による限界酸素指数LOIが25.0以上(より好ましくは25.0〜35.0)であることが好ましい。特にメタ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。
ここで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維とは、その繰返し単位の85モル%以上がm−フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ型全芳香族ポリアミドは、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であっても差しつかえない。
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、従来から公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN−メチル−2−ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3〜1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
【0014】
上記メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、又はドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
【0015】
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上、好ましくは3.0〜7.0モル%の範囲にあるものが好ましい。
また、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ−m−フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられそのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
【0016】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等目的で、下記の式(2)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1〜10mol%となるように共重合させることも可能である。
−(NH−Ar1−NH−CO−Ar1−CO)− ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0017】
また、第3成分として共重合させることも可能であり、式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’−ビフェニルジカルボン酸クロライド、5−クロルイソフタル酸クロライド、5−メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0018】
N−Ar2−NH ・・・式(2)
N−Ar2−Y−Ar2−NH ・・・式(3)
XOC−Ar3−COX ・・・式(4)
XOC−Ar3−Y−Ar3−COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0019】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で、5〜35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15〜25%であることがより好ましい。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が難燃剤を含んでいてもよい。用いる難燃剤としては特開平10−251981号公報に記載されたものや、無機系の金属および担体、金属含有担体の表面を被覆したものなどが例示されるが、優れた難燃性を得る上でリン系難燃剤が好ましい。含有量としては繊維重量対比1〜15重量%が好ましい。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が、有機染料または有機顔料または無機顔料を含んでいてもよい。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点で、0.1重量%以下(好ましくは0.001〜0.1重量%)であることが好ましい。
【0020】
前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定する必要はなく、例えば特公昭35−14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47−10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
紡糸溶液としては、とくに限定する必要はないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いても良いし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いても良い。
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0021】
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全重量に対して1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。その際、前記のような難燃剤を含ませてもよい。
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
【0022】
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000〜30000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20〜90℃の範囲が適当である。
【0023】
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜50℃の範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
【0024】
引続き、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45〜60質量%の水溶液であり、浴液の温度を10〜50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3〜4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10〜30℃のNMPの濃度が20〜40質量%の水溶液、続いて50〜70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。
洗浄後の繊維は、温度270〜290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族アラミド繊維を得ることができる。
前記メタ型全芳香族アラミド繊維において、繊維長50mm以上(より好ましくは50〜100mm)の短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては2.0dtex以下(より好ましくは0.001〜2.0dtex)が好ましい。また、引張強度としては3.5cN/dtex以上(より好ましくは3.5〜8.0dtex)が好ましい。
【0025】
本発明のミシン糸は前記のような難燃性繊維を含む紡績糸で構成される。その際、前記紡績糸において下記式で算出される撚係数Kaが150以上となるよう撚り(下撚り)が付与されていることが肝要である。かかる撚係数Kaが150未満の場合、繊維間の拘束が小さいためミシン糸の引張強力が低下するおそれがあり好ましくない。
Ka=Ta×√(5905.42/Na)
ただし、Taは紡績糸の撚数(回/2.54cm)であり、Naは紡績糸の英式綿番手である。
前記紡績糸の製造方法は特に限定されず、空気紡績法、リング紡績法など公知の方法でよい。
【0026】
本発明のミシン糸は、前記紡績糸1本で構成してもよいが、優れた引張強力を得る上で前記紡績糸2〜6本を引き揃えて合撚(上撚り)してなることが好ましい。
ここで、ミシン糸を構成する全ての紡績糸が、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を紡績糸重量対比80重量%以上含むと、高速での縫製が可能であり染色性にも優れ、好ましい。
その際、メタ型全芳香族ポリアミド繊維以外の繊維としては、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)繊維、ポリベンズチアゾール(PBTZ)繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリスルホンアミド(PSA)繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、ポリアリレート(PAr)繊維、メラミン繊維、フェノール繊維、フッ素系繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、セルロース繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、獣毛繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリカーボネート繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などが例示される。
【0027】
また、ミシン糸の英式綿番手Nbとしては、高速での縫製や取扱性の点で5〜13の範囲内であることが好ましい。
また、ミシン糸において、優れた引張強力を得る上で、下記式で算出される撚係数Kbが300〜600の範囲内となるよう上撚りが付与されていることが好ましい。
Kb=Tb×√(5905.42/Nb)
ただし、Tbは上撚りの撚数(回/2.54cm)であり、Nbはミシン糸の英式綿番手である。
ここで、下撚りの撚係数Kaと上撚りの撚係数Kbとの比Ka/Kbが下記式を満足すると優れた引張強力が得られ好ましい。
0.3≦Ka/Kb≦0.8
【0028】
また、本発明のミシン糸は着色していることが好ましい。ここで、着色方法としてはミシン糸に含まれる繊維を形成中に顔料が練り込まれていてもよいが、染色加工により着色していることが好ましい。
その際、前記難燃性繊維が、キャリヤ剤を含む浴中で処理したものであることが好ましい。
かかるキャリヤ剤としては、DL−β−エチルフェネチルアルコール、2−エトキシベンジルアルコール、3−クロロベンジルアルコール、2,5−ジメチルベンジルアルコール、2−ニトロベンジルアルコール、p−イソプロピルベンジルアルコール、2−メチルフェネチルアルコール、3−メチルフェネチルアルコール、4−メチルフェネチルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、3−ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコール、ベンズヒドロール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、N−メチルホルムアニリドなどが例示される。
【0029】
また、処理条件としては、キャリヤ剤を20〜80g/リットル含む水溶液中に5:1〜15:1で浸漬し、温度110〜150℃で30〜90分間処理することが好ましい。さらに乾燥、オイリングを施すことが好ましい。
また、染色加工の条件としては、カチオン染料および助剤を適宜用いて120〜140℃、40〜80分間染色処理を行うことが好ましい。さらに乾燥、オイリングを施すことが好ましい。
かくして得られたミシン糸において、キャリヤ剤が1.0重量%以上(好ましくは1.0〜2.0重量%)含まれることが好ましい。
かくして得られたミシン糸は前記の構成を有するので、高速での縫製が可能であり、染色性にも優れる。
【0030】
ここで、ミシン糸の明度指数L値が80以下(より好ましくは10〜50)であることが好ましい。
また、高速での縫製性としては、可縫性は1本針本縫いミシン、ミシン針DP×17#20を用い、4000rpm、針糸張力300gr(2940mN)、ボビン糸張力90gr(882mN)、縫い目数10個/3cmの条件にて縫製し、糸切れまでの糸長さを測定し2m以上であることが好ましい。
【0031】
次に、本発明の繊維製品は、前記のミシン糸を用いて縫製してなる繊維製品である。かかる繊維製品には、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、軍服などが含まれる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)高速での縫製性
1本針本縫いミシン、ミシン針DP×17#20を用い、4000rpm、針糸張力300gr(2940mN)、ボビン糸張力90gr(882mN)、縫い目数10個/3cmの条件にて縫製し、糸切れまでの糸長さを測定した。
(2)濃色性(L値)
マクベス分光光度計Color−Eye3100にて測色した。
(3)下撚りの撚係数Ka
下記式により算出した。
Ka=Ta×√(5905.42/Na)
ただし、Taは紡績糸の撚数(回/2.54cm)であり、Naは紡績糸の英式綿番手である。
(4)上撚りの撚係数Kb
下記式により算出した。
Kb=Tb×√(5905.42/Nb)
ただし、Tbは上撚りの撚数(回/2.54cm)であり、Nbはミシン糸の英式綿番手である。
(5)引張強力
JIS L1095−1990により単糸引張強さを定速伸長形で測定した。
(6)ミシン糸中に残留するプロピレングリコールフェニルエーテル量
GC−MSにより定量した。
(7)限界酸素指数LOI
JIS L1091−1999 E−2法により測定した。
【0033】
[実施例1]
単繊維繊度1.7dtex、繊維長51m、引張強度4.5cN/dtexのメタ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(登録商標)、LOIが26.0の短繊維)をプロピレングリコールフェニルエーテル(キャリヤ剤)の40g/L(ダウ・ケミカル日本株式会社製)水溶液中に浴比10:1で浸漬し、130℃で60分間処理した後、乾燥、オイリングした後、空気紡績法により下撚り20回/2.54cmを付与して、英式綿番手30の紡績糸を得た。
【0034】
次いで、該紡績糸を3本引き揃えて上撚り20回/2.54cmを施した。
次いで、染色ボビンに捲き返し、以下の水溶液中で130℃60分間染色し、乾燥、オイリングした。
・カチオン染料Kayacryl Blue GSL−ED
・酢酸 3g/リットル
・ディスパーTL(明成化学工業株式会社)4g/リットル
・硝酸ナトリウム 25g/リットル
評価結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm、引張強度3.8cN/dtexのメタ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(登録商標)、LOIが26.0の短繊維)をプロピレングリコールフェニルエーテル(キャリヤ剤)の40g/L(ダウ・ケミカル日本株式会社製)水溶液中に浴比10:1で浸漬し、130℃で60分間処理した後、乾燥、オイリングした。
一方、単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm、引張強度24.5cN/dtexのパラ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人社製「テクノーラ」(登録商標))を用意した。
【0036】
次いで、両繊維を空気紡績法により下撚り18回/2.54cmを付与して、英式綿番手30の紡績糸を得た。
次いで、該紡績糸を3本引き揃えて上撚り22回/2.54cmを施した。
次いで、染色ボビンに捲き返し、以下の水溶液中で130℃60分間染色し、乾燥、オイリングした。
・カチオン染料Kayacryl Blue GSL−ED
・酢酸 3g/リットル
・ディスパーTL(明成化学工業株式会社)4g/リットル
・硝酸ナトリウム 25g/リットル
評価結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
単繊維繊度1.7dtex、繊維長77m、引張強度3.8cN/dtexのメタ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(登録商標)、LOIが26.0の短繊維)をプロピレングリコールフェニルエーテル(キャリヤ剤)の40g/L(ダウ・ケミカル日本株式会社製)水溶液中に浴比10:1で浸漬し、130℃で60分間処理した後、乾燥、オイリングした後、空気紡績法により下撚り12回/2.54cmを付与して、英式綿番手20の紡績糸を得た。
【0038】
次いで、該紡績糸を3本引き揃えて上撚り12回/2.54cmを施した。
次いで、染色ボビンに捲き返し、以下の水溶液中で130℃60分間染色し、乾燥、オイリングした。
・カチオン染料Kayacryl Blue GSL−ED
・酢酸 3g/リットル
・ディスパーTL(明成化学工業株式会社)4g/リットル
・硝酸ナトリウム 25g/リットル
評価結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
単繊維繊度2.3dtex、繊維長77m、引張強度3.0cN/dtexのメタ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(登録商標)、LOIが26.0の短繊維)をプロピレングリコールフェニルエーテル(キャリヤ剤)の40g/L(ダウ・ケミカル日本株式会社製)水溶液中に浴比10:1で浸漬し、130℃で60分間処理した後、乾燥、オイリングした後、空気紡績法により下撚り7回/2.54cmを付与して、英式綿番手20の紡績糸を得た。
【0040】
次いで、該紡績糸を3本引き揃えて上撚り8回/2.54cmを施した。
次いで、染色ボビンに捲き返し、以下の水溶液中で130℃60分間染色し、乾燥、オイリングした。
・カチオン染料Kayacryl Blue GSL−ED
・酢酸 3g/リットル
・ディスパーTL(明成化学工業株式会社)4g/リットル
・硝酸ナトリウム 25g/リットル
評価結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
単繊維繊度1.7dtex、繊維長77m、引張強度5.1cN/dtexのメタ型全芳香族ポリアミド繊維(帝人社製「コーネックス」(登録商標)、LOIが26.0の短繊維)をプロピレングリコールフェニルエーテル(キャリヤ剤)の40g/L(ダウ・ケミカル日本株式会社製)水溶液中に浴比10:1で浸漬し、130℃で60分間処理した後、乾燥、オイリングした後、空気紡績法により下撚り7回/2.54cmを付与して、英式綿番手40の紡績糸を得た。
【0042】
次いで、該紡績糸を2本引き揃えて上撚り2回/2.54cmを施した。
次いで、染色ボビンに捲き返し、以下の水溶液中で130℃60分間染色し、乾燥、オイリングした。
・カチオン染料Kayacryl Blue GSL−ED
・酢酸 3g/リットル
・ディスパーTL(明成化学工業株式会社)4g/リットル
・硝酸ナトリウム 25g/リットル
評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、高速での縫製が可能であり、染色性にも優れるミシン糸およびその製造方法および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。