(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドライバーが運転する車両の現在地と目的地の情報に基づいて、カーブを走行する際の平均車速及び平均ヨーレートの相違に応じて分類される運転状態のうち、前記現在地から前記目的地までの運転経路に応じた運転状態を取得する運転状態取得部と、
ステアリング操舵に関連する腕の加速度および腕の筋活動量の離散度が低くなる前記ステアリング操舵のアシスト比を、前記運転状態毎に、個々のドライバーに関して規定したデータベースから、前記運転状態取得部により取得した前記運転経路に応じた前記運転状態に応じたアシスト比を取得するアシスト比取得部と、
を備えることを特徴とする、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
前記運転状態取得部は、地図情報から得られるカーブ区間毎に車速及びヨーレートを取得し、全カーブ区間で車速及びヨーレートを平均することで、前記運転経路に応じた平均車速及び平均ヨーレートを前記運転状態として取得することを特徴とする、請求項1に記載のパワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算装置。
ドライバーが運転する車両の現在地と目的地の情報に基づいて、カーブを走行する際の平均車速及び平均ヨーレートの相違に応じて分類される運転状態のうち、前記現在地から前記目的地までの運転経路に応じた運転状態を取得するステップと、
ステアリング操舵に関連する腕の加速度および腕の筋活動量の離散度が低くなる前記ステアリング操舵のアシスト比を、前記運転状態毎に、個々のドライバーに関して規定したデータベースから、前記運転状態を取得するステップで取得した前記運転経路に応じた前記運転状態に応じたアシスト比を取得するステップと、
を備えることを特徴とする、パワーステアリングシステムの操舵アシスト比演算方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング操舵のアシスト比演算システム1000の構成を示す模式図である。
図1に示すシステム1000は、車両に搭載されることができる。本実施形態では、個々のドライバー(運転者)から、ステアリング操舵に関連する身体の情報を取得し、取得した身体の情報に基づいて、それぞれのドライバーに最適なステアリング操舵のアシスト比を算出する。ステアリング操舵に関連する身体の情報として、腕の加速度Aと、腕の筋活動量M(筋電(筋負担ともいう))を用いる。
【0016】
ドライバーが車両を運転する際に、ステアリング操舵は運転操作の主要な部分の1つを占めており、操舵感を向上させることで運転フィーリングを高めることができる。本実施形態は、乗員の操舵時の動作を計測することにより、個人の特性に合わせた最適な操舵制御の設定を行うことで操舵感を向上させる。具体的には、生体計測によって、操舵時の手の加速度A、筋活動量Mを測定する。これらの計測を、3つ以上の異なる制御設定にて行う。制御設定の変更は、電動パワーステアリングシステム(EPS)のアシスト比Cを変更することで行う。異なる制御設定で取得した加速度A、筋活動量MをそれぞれZ得点化し、加速度A、筋活動量Mの2軸の相平面上にて制御設定毎に操舵感指標としての離散度Dの平均を計算する。そして、求めた離散度Dとアシスト比Cが非線形となるような近似曲線を求め(D=f(C))、離散度Dが最適値(下に凸となる頂点)となるアシスト比を求める。このような手法によれば、ドライバー毎に離散度が最も低くなるアシスト比を算出することができるため、個々のドライバーの特性に応じて最適にアシスト比を設定することができる。なお、加速度Aは3軸合成ベクトルの平均値を用いても良い。
【0017】
なお、本実施形態では、生体情報として腕の加速度Aと、腕の筋活動量Mを例示するが、生体情報は他の情報であっても良い。また、生体情報として腕の加速度Aと、腕の筋活動量Mの2つの情報を使用したが、1つ又は3つ以上の生体情報を使用しても良い。
【0018】
図1に示すように、アシスト比演算システム1000は、制御装置(アシスト比演算装置)100、生体センサ200(加速度センサ210、筋負担を計測する筋負担センサ220)、車両センサ400、モード切替SW500、通信部510、電動パワーステアリングシステム(EPS)600を有して構成されている。車両センサ400は、車速センサ402、操舵角センサ404、ヨーレートセンサ406、操舵トルクセンサ408、車外センサ410、位置センサ(GPS)412を含む。車外センサ410は、ステレオカメラ等から得た画像の画像処理により、道路形状や路面の白線形状等を検知する。なお、ステレオカメラの代わりに、単眼カメラ等の他の撮像装置を用いても良い。また、車外センサ410として、ミリ波レーダー、赤外線レーザー等を用いて車外の状況を検出する装置を用いても良い。位置センサ412は、現在位置を取得する。通信部510は、無線通信により外部と通信を行い、他車の走行状態、走行履歴等を取得する。
【0019】
腕の加速度は、ドライバーの腕に加速度センサ210を装着することによって計測する。また、腕の加速度は、カメラで撮像した画像を解析して手の軌跡を計測し、軌跡から算出しても良い。画像解析の場合、モーションキャプチャーによるマーカー計測、ステレオカメラや赤外線カメラ等によるマーカーレス計測を用いることができる。なお、腕の加速度の取得方法はこれらに限定されるものではなく、他の方法を用いても良い。
【0020】
筋負担センサ220は、筋電計(電極)を含み、例えば筋電計をドライバーの三角筋に装着することで筋電を計測する。具体的には、以下の式より、筋電のデータから%MVCを計算した値を使用することができる。なお、RMS値は筋電の実効値を表す。最大随意収縮時におけるRMS値は予め停車状態などで計測しておく。
%MVC=解析箇所のRMS値
÷ 最大随意収縮時におけるRMS値
なお、筋電計の代わりに、荷重センサによる代用測定で筋負担を計測しても良い。この場合、ステアリング、またはシートに荷重センサを装着し、ドライバーが力を入れた時の作用点として荷重を測定し、荷重から筋負担を推定する。また、筋骨格モデルなどを用いて筋負担を推定しても良い。
【0021】
アシスト比演算装置100は、第1の制御部110、第2の制御部120、モータ制御部130、データベース140,150を有して構成される。第1の制御部110は、車速、操舵トルクに基づいて、電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータを制御するための制御値を求め、モータ制御部130に送る。モータ制御部130は、制御値に基づいて電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータを制御する。
【0022】
第2の制御部120は、生体センサ200の情報に基づいて電動パワーステアリングシステム(EPS)600のアシスト比を演算する。モータ制御部130は、第2の制御部120が演算したアシスト比に基づいて、電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータを制御する。
【0023】
通常の運転状態では、車速、操舵トルクに基づいて、電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータが制御される。この際、電動パワーステアリングシステム(EPS)600は、予め定められた所定のアシスト比で電動パワーステアリングシステム(EPS)600を制御する。一方、ドライバーがモード切替SW500により所定の操作を行うと、電動パワーステアリングシステム(EPS)600によるアシスト比が第2の制御部120が演算したアシスト比に変更され、変更されたアシスト比により電動パワーステアリングシステム(EPS)600が備えるモータが制御される。
【0024】
データベース140には、ナビゲーションシステムの地図情報、自車又は他社の走行履歴情報、等が格納されている。また、データベース150には、後述するアシスト比C
xjkが格納されている。
【0025】
第2の制御部120は、生体センサ200が検出した生体情報を取得する生体情報取得部122、生体情報に基づいてアシスト比を演算するアシスト比演算部124、車両の運転状態を取得する運転状態取得部126、車両の運転状態に基づいて、データベース150に格納されたアシスト比を取得するアシスト比取得部127、経路検索部128、を有して構成されている。
【0026】
より詳細には、生体情報取得部122は、パワーステアリングシステム600で設定されるステアリング操舵の複数のアシスト比のそれぞれについて、複数の運転状態に応じて、ステアリング操舵に関連する生体情報を取得する。また、アシスト比演算部124は、複数の運転状態において、生体情報の離散度が低くなるアシスト比を演算する。運転状態取得部126は、車両の現在地と目的地の情報に基づいて、運転経路に応じた運転状態を取得する。アシスト比取得部127は、ステアリング操舵に関連する生体情報の離散度が低くなるアシスト比を運転状態毎に規定したデータベース150から、運転状態取得部126が取得した前記運転状態に応じたアシスト比を取得する。
【0027】
なお、
図1のアシスト比演算装置100が有する各構成要素は、回路(ハードウェア)又はCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成することができる。また、そのプログラムは、メモリ等の記録媒体に格納されることができる。
【0028】
図2は、アシスト比演算装置100が行う処理の概要を示す模式図である。先ず、加速度センサ210、筋負担センサ220をドライバーに装着した状態で、車両の運転を行う(ステップS10)。そして、運転中に手の加速度と筋電を計測する(ステップS12,S14)。
【0029】
次に、計測した加速度と筋電の離散度を計算する(ステップS16)。次に、離散度のデータを蓄積し、離散度に基づいてステアリング操舵のアシスト比の最適値を計算する(ステップS18)。次に、電動パワーステアリングシステム(EPS)600におけるステアリング操舵のアシスト比を変更し(ステップS18)、ステップS10へ戻り、ステップS10〜S20の処理を繰り返す。そして、3回以上の繰り返し処理を行った後は、ステップS16からステップS22へ進んで最適値を判定し、アシスト比を最終決定する(ステップS24)。ステップS24で決定されたアシスト比により、制御条件が決定され、車両の運転が行われる(ステップS26)。制御条件の決定には、車速、舵角等の各種車両情報が適宜用いられる。
【0030】
図3及び
図4は、アシスト比演算装置100が行う処理の詳細を示すフローチャートである。
図3の処理は、主として生体情報取得部122によって行われる。また、
図4の処理は、主としてアシスト比演算部124、アシスト比決定部127によって行われる。先ず、ステップS100では、モード切替SW500が操作され、初期設定モードがオン(ON)とされる。なお、初期設定モードは車両を運転することが前提となるが、車両静止状態で操舵を行うシミュレーション設定モードで各種情報を取得しても良い。次のステップS102では、各制御設定時の電動パワーステアリングシステム(EPS)600のアシスト比Ciを設定する。iは3以上とし、3つ以上のアシスト比を設定する。一例として、i=1,2,3であり、C1=1、C2=2、C3=0.4とする。また、アシスト比の設定は、直線区間や停車中等に行う。直線区間の推定は、ナビゲーションシステムの地図情報や車外センサ410から得られる情報等を用いて行うことができる。
【0031】
次のステップS104では、各種データの記録を開始する。ここで記録するデータは、車速Vi、操舵角αi、ヨーレートγi、実操舵トルクTsi、操舵トルクThi、腕の加速度Ai、腕の筋負担Mi、等の各種データである。
【0032】
次のステップS106では、定常円区間を走行しているかを推定し、定常円区間走行毎に上記各データの平均値を計算する。定常円走行区間の推定は、一例として、ヨーレートの移動平均ピーク値を計算し、ピーク値の前2秒、後2秒の4秒分を定常円走行区間として推定し、各データを計算する。
【0033】
次のステップS108では、ラベル表に従い、定常円区間毎に車速、ヨーレートの平均値に合わせて、各データにj,kのラベル付をする。
図5はラベル表の例を示す模式図である。i=1の場合、ある定常円区間の車速V1の平均が0〜10[km/h]であり、ヨーレートγ1の平均が0.1〜0.2[rad/s]の場合、ラベル付け後の腕の加速度はA
115となる。
【0034】
次のステップS110では、j,kを組み合わせたデータ数がN個記録されるまで、運転を続ける。次のステップS112ではiの値に1を加算し、次のステップS114ではiの値が3以下であるか否かを判定し、iの値が3以下の場合はステップS102以降の処理を再度行う。
【0035】
ステップS114でiの値が3を超えた場合は、
図4のステップS116へ進む。ステップS116では、j,kを1から変化させ、それぞれの組み合わせで計算を開始する。jの値は1からJまでであり(j=1:J)、kの値は1からKまでである(k=1:K)。次のステップS118では、j,kのラベルが一致するデータ(腕の加速度、腕の筋負担)をそれぞれZスコア化する。これにより(ZA
ijk,ZM
ijk)が得られる。なお、Zスコアは、母集団を構成する要素iのある値piが分布の中でどの辺りに位置するかを平均値0、標準偏差1の標準正規分布に置き換えて表したものであり(Zスコア=(pi−μ)/σ、但し、μは母平均、σは標準偏差)、piが平均値と等しければZスコアは0となり、平均より高い値ならZスコアはプラスの値、低ければマイナスの値となる。Zスコアを求める上記式は任意の値の標準偏差の分布を、標準偏差1の標準正規分布に置き換えたものである。
【0036】
図6は、腕の加速度のZスコア(ZA
ijk)と腕の筋負担のZスコア(ZM
ijk)を2次元平面にプロットした例を示す特性図である。
図6において、横軸は腕の加速度のZスコア(ZA
ijk)の値を示しており、縦軸は腕の筋負担のZスコア(ZM
ijk)の値を示している。
図6に示すプロットの特性は、j,kの特定の組み合わせ毎に得られる。i,jの特定の組み合わせにおいて、アシスト比を示すiが1,2,3のそれぞれの場合についてプロットが行われる。一例として、説明の便宜上、
図6に示す特性はj=1,k=1であるものとする。
図6では、i=1(アシスト比C1=1、操舵トルク「中間」)の場合のプロットを◇で示し、i=2(アシスト比C2=2、操舵トルク「軽い」)の場合のプロットを□で示し、i=3(アシスト比C3=0.4、操舵トルク「重い」)の場合のプロットを△で示している。
【0037】
次のステップS120では、Zスコア化したデータから各アシスト比の制御設定毎の離散度D
ijkを求める。離散度D
ijkは、以下(1)の式から算出される。離散度D
ijkは、運転しやすい制御設定では、操舵時の動き(加速度A、筋活動量M)の再現性が高いという実験結果を基に作成した指標である。操舵トルクが重すぎたり、軽すぎたりすると筋活動と加速度のばらつきが大きくなり、離散度が高くなる傾向があり、離散度は操舵感と高い相関関係がある。操舵感が良い、適切な操舵トルクを設定すると、操舵トルクが重い設定や軽い設定に対して筋活動、加速度が過度に増減せず、ばらつきも減少し、離散度が下がる。
【0039】
以上のようにして、例えばj=1,k=1の場合、離散度D
i11が求まることになる。
図7は、j=1,k=1の場合に、i=1,2,3のそれぞれの離散度D
111,D
211,D
311とアシスト比の関係を示す特性図である。
図7に示すように、アシスト比に応じて離散度Dが変化することが判る。
【0040】
次のステップS122では、D
1jk<D
2jk且つD
1jk<D
3jkの条件が満たされるか否かを判定し、この条件が満たされる場合はステップS124へ進む。一方、この条件が満たされない場合は、ステップS116へ戻り、再計算を行う。ここで、アシスト比C3の場合は操舵トルクが重く、アシスト比C2の場合は操舵トルクが軽くなり、C3とC2はアシスト比を両極端に外した制御設定としている。一方、アシスト比C1の場合は操舵トルクが中間であり、設計ニュートラル値であり、適正値に近いと想定される制御設定である。このため、ステップS122の判定を行うことで、アシスト比C1の時の離散度がアシスト比C2とアシスト比C3の場合の離散度よりも小さい最小値になる条件のみを抽出する。
【0041】
ステップS124では、
図7の離散度Dとアシスト比Cとの関係を示す非線形の近似曲線を算出する。近似曲線は、例えば以下の式(2)から算出できる。但し、式(2)において、eは定数項とする。
D
jk=(C−C
xjk)
2+e ・・・(2)
【0042】
図8は、式(2)から算出した近似曲線を示す模式図である。ステップS124では、近似曲線に基づいてピーク値のC
xjkを算出する。
図7及び
図8の例では、極小値となるC
i11が算出される。
【0043】
例えば、
図8では、アシスト比C1=1、C2=2,C3=0.4のそれぞれの場合におけるD
jkを式(2)に代入し、式(2)に基づく以下の演算により、C
x11=0.81となる。具体的には、C1=1の場合の離散度D
111=0.9、C2=2の場合の離散度D
211=2.6、C3=0.4の場合の離散度D
311=1.4を式(2)に代入し、C
x11=0.81を求める。従って、この場合、最も離散度が低くなるアシスト比は0.81である。
D
i11=3.93c
2−6.36c+3.29
=3.93(c−0.81)
2+0.71
【0044】
次のステップS126では、全てのj,kの組み合わせについて、ステップS116〜S124の処理が終了したか否かを判定し、全てのj,kの組み合わせについて処理が終了した場合はステップS128へ進み、全てのC
xjkをデータベース150に格納する。一方、全てのj,kの組み合わせについて処理が終了していない場合は、ステップS116へ戻る。ステップS128の後はステップS130へ進み、初期設定モードをオフ(OFF)に設定する。
【0045】
図10は、走行状態に応じて最適なC
xjkがデータベース150に格納された様子を示す模式図である。
図10に示すように、データベースには、平均速度vj,平均ヨーレートγlの任意の組み合わせ毎に最適なアシスト比C
xjkが格納されている。
【0046】
次に、
図9に基づいて、本実施形態に係るアシスト比の自動変更モード1について説明する。
図9の処理は、主として運転状態取得部126、アシスト比取得部127、経路検索部128によって行われる。先ず、ステップS200では、ドライバーが自動変更モード1をオン(ON)にする。次のステップS202では、ルートの検索を開始する。具体的には、経路検索部128が、データベース140に格納されているナビゲーションの地図情報に基づいて、現在地から目的地までのルートの検索を開始する。
【0047】
次のステップS204では、走行ルート上のカーブ区間を走行する際の平均車速vlを全カーブ区間毎に取得する。ここで、lはカーブ数である。次のステップS206では、走行ルート上のカーブ区間を走行する際のヨーレート平均値γl、又は平均曲線半径ρlを全カーブ区間毎に取得する。
【0048】
図11は、現在地から目的地までの経路を示す模式図である。
図11の例では、カーブ数が2(l=2)であり、現在地Q1から中間地Q2までの区間において、平均車速がv1、ヨーレート平均値がγ1、平均曲線半径がρlが取得される。また、中間地Q2から目的地Q3までの区間において、平均車速がv2、ヨーレート平均値がγ2、平均曲線半径がρ2が取得される。
【0049】
平均車速vl、ヨーレート平均値rl、又は平均曲線半径ρlは、データベース140に格納されているナビゲーションの地図情報データから取得する。また、自車や他車の走行履歴の情報を取得し、走行履歴の情報から取得しても良い。
図12は、データベース140に格納された情報を示す模式図である。
図12に示すように、データベース140には、地図情報に対応付けて、各区間における平均車速vl、ヨーレート平均値γl、又は平均曲線半径ρl等の情報が格納されている。また、データベース140には、自車や他車の走行履歴の情報が格納されており、地図情報におけるカーブ区間と、車や他車がそのカーブ区間を走行した際の平均車速vl、ヨーレート平均値rl、又は平均曲線半径ρlとが対応付けされて記録されている。
図12に示す各区間における平均車速vl、ヨーレート平均値γl、又は平均曲率半径ρlは、推定された定常円区間を走行した際の車速、ヨーレート、曲率半径をそれぞれ平均して求めたものであり、例えば、定常円区間の始まりと判定したら各データを蓄積し始め、定常円区間の終わりと判定したら各データの平均値を計算することで得られる。
【0050】
なお、ステップS206で取得したデータがρlの場合は、ステップS208へ進み、以下の式から平均ヨーレートγlを算出する。ステップS206でヨーレート平均値rlを直接取得した場合は、ステップS208を経ることなくステップS210へ進む。
γl=vl/ρl
【0051】
ステップS210では、全てのカーブ区間で取得した平均車速vlを平均することで、目的地までの走行ルートの平均車速vyを求める。また、全てのカーブ区間で取得した平均ヨーレートγlを平均することで、目的地までの走行ルートの平均ヨーレートγyを求める。以上のようにして、運転状態取得部126は、運転経路に応じた運転状態として、平均車速vy、平均ヨーレートγyを取得する。次のステップS212では、アシスト比取得部127が、
図10に示したC
xjkを格納したデータベース150から、平均車速vy、平均ヨーレートγyの組み合わせに最も近い値となる車速vj、ヨーレートγkの組み合わせを検索し、検索した車速vj、ヨーレートγkの組み合わせに対応する制御条件C
xjkを選ぶ。
【0052】
次のステップS214では、制御条件(アシスト比をC
xjk)に設定する。次のステップS216で車両が目的地に到達すると、ステップS218で自動変更モード1をオフ(OFF)にする
【0053】
図13A〜
図13Cは、異なるドライバーA,B,C毎にアシスト比のピーク値C
xjkが異なる様子を示す特性図である。
図13Aに示すドライバーAの特性では、操舵トルクが中間(アシスト比≒1)の場合に離散度がピークになっている。また、
図13Bに示すドライバーBの特性では、操舵トルクが重い(アシスト比1.0以下)の場合に離散度がピークになっている。また、
図13Cに示すドライバーCの特性では、操舵トルクが軽い(アシスト比1.0以上)の場合に離散度がピークになっている。以上のように、ドライバー毎に最適のアシスト比は異なるが、本実施形態では、運転状態に応じて、j,kのラベル毎に離散度Dが最も小さくなるピーク値C
xjkを求め、更に、運転状態に応じてC
xjkを選択するようにしたため、ドライバー毎に、運転状態に応じた最適なアシスト比Cxを設定することが可能となる。
【0054】
以上説明したように本実施形態によれば、ドライバー毎に生体情報の離散度が最も低くなるアシスト比を算出することができるため、個々のドライバーの特性に応じて最適にアシスト比を設定することができる。また、地図情報に基づいて現在地から目的地までの運転状態を取得し、運転状態に応じて生体情報の離散度が最も低くなるアシスト比を自動設定できるため、運転状態に応じて最適な操舵感を得ることが可能となる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。