(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1フランジ部の外周面と前記曲面の少なくともいずれか一方には、前記リール本体を把持した手の親指を接触させて前記スプールの回転数を認識するための認識部が形成されている、
請求項1に記載の両軸受リールのスプール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているスプールフランジのリム面は、リール本体のサイズによっては、リム面に親指の腹部分をしっかりと押し当てられる程の面積を確保することが難しい。さらには、釣糸がスプールフランジとリム面との間のコーナー部付近まで巻かれた場合、釣糸がコーナー部に非常に近接するため、コーナー部にしっかりと親指を押し当ててサミング操作をすることも難しい。
【0006】
本発明の課題は、スプールのフランジ部で確実にサミング操作を行うことができるスプール、及びそれを備えた両軸受リールを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る両軸受
リールのスプールは、リール本体に対して回転可能に配置され、外周に釣糸が巻きつけられる。両軸受
リールのスプールは、糸巻胴部と、第1フランジ部と、第2フランジ部と、を備えている。糸巻胴部は、外周に釣糸を巻き付け可能である。第1フランジ部および第2フランジ部は、糸巻胴部の一端に形成された内壁面と、内壁面の先端から軸方向外方に延びる外周面と、をそれぞれ有している。第1フランジ部の内壁面は、先端の外径が第2フランジ部の内壁面の先端の外径よりも大径であり、第1フランジ部の内壁面と第1フランジ部の外周面とは、滑らかな曲面で接続されている。
【0008】
この両軸受リールのスプールでは、第1フランジ部の内壁面の先端の外径が、第2フランジ部の内壁面の先端の外径よりも大径に形成されている。このため、第2フランジ部の内壁面の最外径部まで釣糸が巻かれた場合でも、釣糸の影響を受けることなく、曲面にしっかりと親指を押し当ててサミング操作をすることができる。
【0009】
好ましくは、第2フランジ部の外周面は軸方向外方に延びるにしたがって徐々に外径が大きくなるように傾斜する。
【0010】
好ましくは、第2フランジ部は、外周面の最外径部から軸方向外方に延びて形成された円筒面をさらに有している。この場合は、スプールをリール本体に装着したとき、円筒面がリール本体の内周側に配置される。これにより、リール本体とスプールの間の間隔を精度よく管理でき、間に釣り糸が噛み込むのを抑制できる。
【0011】
好ましくは、第1フランジ部の外周面のスプールの回転軸に対する傾斜は、第1フランジ部の内壁面のスプールの回転軸に対する傾斜よりも小さい。この場合は、第1フランジ部の内壁面と外周面とを接続する曲面に対する親指の当たり具合が安定する。このため、曲面にしっかりと親指を押し当ててサミング操作をすることができる。
【0012】
好ましくは、第1フランジ部の外周面と曲面の少なくともいずれか一方には、リール本体を把持した手の親指を接触させてスプールの回転数を認識するための認識部が形成されている、この場合は、曲面に指を当てたとき、認識部の一部が指に接触する。これにより、釣人がスプールの回転数または回転速度の程度を認識しながらサミング操作を行うことができるため、細やかな回転数または回転速度の調整が可能となる。
【0013】
好ましくは、認識部は、少なくとも1つの突起または溝である。この場合は、指に接触する突起または溝によって容易にスプールの回転数または回転速度の程度を認識することができる。
【0014】
本発明の一側面に係る両軸受リールは、前方に釣糸を繰り出し可能であって、ハンドルと、リール本体と、上記のスプールと、クラッチ操作部材と、を備えている。リール本体は、ハンドルが回転可能に取り付けられる第1本体部と、第1本体部と軸方向に間隔をあけて配置される第2本体部と、を有している。上記のスプールは、第1本体部と第2本体部との間に回転可能に配置されている。クラッチ操作部材は、リール本体に揺動可能に設けられ、ハンドルとスプールとの間で回転力の伝達操作及び遮断操作を行う。上記のスプールの第1フランジ部は、第1本体部側に配置されている。
【0015】
この場合は、例えば、クラッチ操作部材が第1フランジ部側のリール本体の側部に揺動可能に取り付けられ、先端が第1フランジ部側に延出するクラッチレバーのとき、クラッチ操作後のサミング操作およびサミング操作後のクラッチ操作を、迅速かつスムーズに行うことができる。
【0016】
本発明の一側面に係る両軸受リールは、前方に釣糸を繰り出し可能であって、ハンドルと、リール本体と、上記のスプールと、クラッチ操作部材と、を備えている。リール本体は、ハンドルが回転可能に取り付けられる第1本体部と、第1本体部と軸方向に間隔をあけて配置される第2本体部と、を有している。上記のスプールは、第1本体部と第2本体部との間に回転可能に配置されている。クラッチ操作部材は、リール本体に揺動可能に設けられ、ハンドルとスプールとの間で回転力の伝達操作及び遮断操作を行う。上記のスプールの第1フランジ部は、第2本体部側に配置されている。この場合は、より強くサミングをかけたいときに有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スプールのフランジ部で確実にサミング操作を行うことができるスプール、及びそれを備えた両軸受リールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から
図4に示すように、両軸受リール100は、前方に釣糸を繰り出し可能な両軸受リールである。両軸受リール100は、リール本体1と、スプール2と、ハンドル3と、回転伝達機構4(
図4参照)と、クラッチレバー5と、を備えている。なお、
図1は両軸受リール100を前方(竿に装着した場合の竿先側)から視た図であり、
図2は後方から視た図である。
【0020】
リール本体1は、第1本体部6と、第2本体部7と、サムレスト8と、を有している。第1本体部6は、第1側カバー6aと、第1側板6bと、を有している。第1側カバー6aは、第1側板6bの側面を覆うように第1側板6bに装着されている。第1側板6bには、内周側に窪むように形成された切り欠き部9が形成されている。この切り欠き部9の詳細については後述する。
【0021】
第2本体部7は、第1本体部6と軸方向に間隔をあけて配置されている。第2本体部7は、第2側カバー7aと、第2側板7bと、を有している。第2側カバー7aは、第2側板7bの側面を覆うように第2側板7bに装着されている。
【0022】
サムレスト8は、リール本体1の後方に配置されている。サムレスト8は、第1側カバー6aと第2側カバー7aとの間で軸方向に延びて、第1側カバー6aと第2側カバー7aとを連結している。サムレスト8は、第1側板6bおよび第2側板7bに曲面状に繋がる円弧面8aを両端に有している。
【0023】
スプール2は、第1本体部6と第2本体部7との間に回転可能に配置されている。スプール2は、
図4に示すように、第1本体部6と第2本体部7との間を延びるスプール軸10に固定されて、スプール軸10と一体的に回転する。なお、スプール軸10は、軸受部材などを介して、第1及び第2本体部6,7に回転可能に支持されている。
【0024】
スプール2は、
図5に示すように、外周に釣糸を巻き付け可能な糸巻胴部11と、第1フランジ部12と、第2フランジ部13と、を有している。
【0025】
第1フランジ部12は、糸巻胴部11の第1本体部6側に、第1本体部6の外径よりも小径に形成されている。第1フランジ部12は、内壁面12aと、外周面12bと、円筒面12cと、を有している。
【0026】
内壁面12aは、第1本体部6側の糸巻胴部11の先端(
図5において右側)から徐々に外径が大きくなるように軸方向外側に傾斜して形成されている。
【0027】
外周面12bは、内壁面12aの最外径部12a´から軸方向外方に延びるにしたがって徐々に外径が大きくなるように傾斜して形成されている。外周面12bのスプール2の回転軸に対する傾斜は、内壁面12aのスプール2の回転軸に対する傾斜よりも小さくなっている。また、内壁面12aと外周面12bとは、滑らかな曲面12dで接続されている。
【0028】
円筒面12cは、外周面12bの最外径部から軸方向外方にスプール軸
10と平行に延びる平坦面である。円筒面12cは、スプール2をリール本体1に装着したとき、第1本体部6の第1側板6bの内周部に対向する。
【0029】
サミング操作をするときは、曲面12dに親指を押圧させてスプール2の回転を抑制する。このとき、第1フランジ部12に接触する親指の接触面積は、内壁面12aを親指で押圧するときに比べて減少するが、親指の当たり具合が安定するため、曲面12dにしっかりと親指を押し当てることができる。このため、曲面12dに与える面圧の大きさを自由に調整することで、微妙なサミングコントロールが可能となる。
【0030】
外周面12bには、スプール2の回転を認識するための溝12e(認識部の一例)が形成されている。溝12eは、外周面12bを軸方向に横断している。溝12eは、レーザー彫刻等によって形成される。溝12eは、少なくとも1つあればよい。溝12eが複数形成される場合は、釣人がスプール2の回転数または回転速度の程度を認識しやすい本数(例えば、周方向に均等に2〜8本程度の範囲の本数)設けられることが望ましい。
【0031】
スプール2が回転しているとき、曲面12dにリール本体1を把持した手の親指を接触させると、外周面12bに形成された溝12eによって釣人は接触刺激を感じることができる。これにより、釣人がスプール2の回転数または回転速度の程度を認識しながら、曲面12
dに与える面圧の大きさを調整することで、釣人が所望するスプール2の回転数または回転速度の程度を容易に得ることができる。
【0032】
第2フランジ部13は、糸巻胴部11の第2本体部7側に、第2本体部7の外径よりも小径に形成されている。第2フランジ部13は、内壁面13aと、外周面13bと、円筒面13cと、を有している。
【0033】
内壁面13aは、第
2本体部7側の糸巻胴部11の先端(
図5において左側)から徐々に外径が大きくなるように軸方向外側に傾斜して形成されている。なお、ここでは、内壁面13aのスプール2の回転軸に対する傾斜は、第1フランジ部12の内壁面12aのスプール2の回転軸に対する傾斜と同じである。
【0034】
外周面13bは、内壁面13aの最外径部13a´から軸方向外方に延びるにしたがって徐々に外径が大きくなるように傾斜して形成されている。
【0035】
円筒面13cは、外周面13bの最外径部から軸方向外方に平坦にスプール軸
10と平行に延びる平坦面である。円筒面13cは、スプール2をリール本体1に装着したとき、第2本体部7の第2側板7bの内周部に対向する。
【0036】
ここでは、
図5の破線で示すように、第1フランジ部12の内壁面12aの最外径部12a´の外径が、第2フランジ部13の内壁面13aの最外径部13a´の外径よりも大径に形成されている。これにより、第2フランジ部13の内壁面13aの最外径部13a´付近(破線で示す高さ)まで釣糸が巻き付けられた場合でも、第1フランジ部12の曲面12dが釣糸で隠れてしまうことがない。このため、常に曲面12dに親指をしっかりと押し当ててサミング操作をすることができる。さらには、釣糸の表面に親指を押し当ててサミング操作をする必要がないため、サミング操作による釣糸の磨耗および釣糸との摩擦による親指の損傷を防ぐことができる。
【0037】
次に、
図2及び
図3に従って、切り欠き部9の構成について説明する。第1本体部6の第1側板6bに形成された切り欠き部9は、サムレスト8に近接する第1側板6bの外縁が、スプール2の第1フランジ部12の外縁(曲面12d)に近接するように切り欠いて形成されている。詳細には、切り欠き部9は、第1側板6bの内周側に窪むように形成され、スプール2の第1フランジ部12の曲面12dに近接するにしたがって、外径が小さくなるように傾斜する湾曲面9aで構成されている。そして、サムレスト8の第1側板6b側の円弧面8aは、この湾曲面9aに滑らかに連続して形成されている。
【0038】
切り欠き部9をこのような構成にすることで、サミング操作をするときのスプール2の第1フランジ部12へのアクセス性が向上する。また、第1フランジ部12の曲面12dが切り欠き部9に近接する位置にあるため、これにより、迅速かつスムーズにサミング操作を行うことができる。さらには、切り欠き部9に親指を載置することが可能になるため、この場合は、切り欠き部9から親指をスプール2側に少し移動させるだけでサミング操作を行うことができる。
【0039】
ハンドル3は、リール本体1の第1本体部6の外側面に回転可能に取り付けられている。ハンドル3は、
図4に示すように、第1本体部6から突出した駆動軸15に取り付けられている。ハンドル3の回転は、回転伝達機構4を介してスプール2に伝達される。
【0040】
回転伝達機構4は、ハンドル3の回転をスプール2に伝達する機構である。回転伝達機構4は、駆動軸15と、駆動ギア16と、ピニオンギア17と、を有する。
【0041】
駆動軸15は、ハンドル3と連結されており、ハンドル3と一体的に回転する。なお、駆動軸15は、ワンウェイクラッチ18によって、釣糸繰り出し方向への回転が禁止されている。
【0042】
駆動ギア16は、駆動軸15に装着され、駆動軸15と一体的に回転する。ピニオンギア17は、駆動ギア16にかみ合う。ピニオンギア17は、後述するクラッチ機構20を介してスプール軸10と連結されている。
【0043】
クラッチレバー5は、
図2及び
図3に示すように、リール本体1の第1本体部6の外側面に設けられている。クラッチレバー5の先端は、スプール2側に延出しており、第1本体部6の外周に近接した位置に設けられている。クラッチレバー5は、実線で示す第1位置(クラッチオン状態)と2点鎖線で示す第2位置(クラッチオフ状態)との間で、周方向に第1本体部6に沿って揺動可能になっている。
【0044】
クラッチ機構20は、クラッチレバー5が操作されること
によって、クラッチオン状態とクラッチオフ状態との切り替えが行われる。詳細には、クラッチ機構20がオン状態のとき(クラッチレバー5が第1位置のとき)、ピニオンギア17とスプール軸10とは一体的に回転する。一方、クラッチ機構20がオフ状態のとき(クラッチレバー
5が第2位置のとき)は、ピニオンギア17とスプール軸10とは相対回転可能となる。ピニオンギア17が軸方向に移動することによって、クラッチ機構20のオン状態とオフ状態とが切り替えられる。
【0045】
ここでは、クラッチレバー5が揺動可能な第1位置及び第2位置の範囲にわたって切り欠き部9が形成されている。このため、クラッチ操作からサミング操作、又はサミング操作からクラッチ操作をするときに、切り欠き部9を経由することで、親指をスムーズに動かすことができる動線が確保される。また、切り欠き部9は指置き場として用いることができるため、切り欠き部9に載置された親指で、サミング操作またはクラッチ操作を迅速に行うことも可能になる。
【0046】
特に、リール本体1を把持した手の親指でクラッチレバー5を第1位置(クラッチオン状態)から第2位置(クラッチオフ状態)に移動させた後、親指をそのまま横(スプール側)にずらすだけで親指が切り欠き部9に案内される。そして、切り欠き部9を経由して、スプール2の曲面12dに容易に到達することができる。これにより、クラッチ操作からサミング操作までの一連の動作を、迅速かつスムーズに行うことができる。
【0047】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0048】
(a)前記実施形態では、切り欠き部9を第1本体部6のみに設けていたが、切り欠き部9を第2本体部7のみや、第1及び第2本体部6,7の両方に設けてもよい。
【0049】
(b)前記実施形態では、認識部の一例として第1フランジ部12の外周面12bに溝12eが形成されていたが、溝12
eは、外周面12bから径方向外方に突出した突起や、ショット処理などの加工によって形成された微小な凹凸でもよい。また、曲面12dのみ、もしくは曲面12dと外周面12bとに、溝12e、突起、又は微小な凹凸を設けてもよい。
【0050】
(c)前記実施形態では、リール本体1の第1本体部6側に第1フランジ部12を、リール本体1の第2本体部7側に第2フランジ部
13を配置していたが、第1及び第2フランジ部12,13の配置を逆にしてもよい。すなわち、第2フランジ部13側に曲面を設けてもよい。このとき、さらに切り欠き部を第2本体
部7側に形成してもよい。この場合は、より強くサミングをかけたいときに有効である。
【0051】
(d)前記実施形態では、第1フランジ部12の内壁面12aは、糸巻胴部11の先端から徐々に外径が大きくなるように軸方向外側に傾斜した傾斜面で形成されていたが、糸巻胴部11の先端から径方向外方に垂直に延びた垂直面で形成されていてもよい。同様に、第2フランジ部13の内壁面13aも、糸巻胴部11の先端から径方向外方に垂直に延びた垂直面で形成されていてもよい。また、内壁面12a,13aは、傾斜面と垂直面とを組み合わせて形成されていてもよい。
【0052】
(e)前記実施形態では、第1及び第2フランジ部12,13の外周面12b,13bは、内壁面12a,13aの最外径部12a´,13a´から軸方向外方に延びるにしたがって徐々に外径が大きくなるように傾斜して形成されていたが、内壁面12a,13aの最外径部12a´,13a´から軸方向外方にスプール軸
10と平行に延びる平坦面で形成されていてもよい。