特許第6857483号(P6857483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857483
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】アッパサポート用の下クッションゴム
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20210405BHJP
   F16F 1/373 20060101ALI20210405BHJP
   B60G 13/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F16F9/54
   F16F1/373
   B60G13/06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-209918(P2016-209918)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-71602(P2018-71602A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】原 有美
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0103691(KR,A)
【文献】 特開2013−190000(JP,A)
【文献】 米国特許第05456454(US,A)
【文献】 特開2008−223839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
F16F 1/00−6/00
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンション機構を構成するショックアブソーバのピストンロッドに外挿されて、該車両の車体パネルの下方で該ピストンロッドに取り付けられるカップ金具に差し入れられた状態で該車体パネルと該カップ金具の間に介装されて車両に装着される筒状本体部を備えたアッパサポート用の下クッションゴムであって、
前記筒状本体部には外周側へ突出する環状カバー部が一体形成されており、該環状カバー部が前記車両への装着状態において前記カップ金具の開口端部から上方へ離れた位置に配置されるようになっていると共に、
該環状カバー部には下方へ延び出す外周カバー部が一体形成されており、該外周カバー部が該車両への装着状態において該カップ金具に外挿される一方、
前記筒状本体部の外周面に外周段差が形成されており、該外周段差が前記車両への装着状態において該カップ金具の開口端部に重なり合う位置に設けられているようにしたことを特徴とするアッパサポート用の下クッションゴム。
【請求項2】
前記外周カバー部が下方へ行くに従って大径となるテーパ筒形状とされている請求項1に記載のアッパサポート用の下クッションゴム。
【請求項3】
前記筒状本体部の下部が前記カップ金具に差し入れられて該カップ金具が該筒状本体部に取り付けられており、前記外周カバー部が該カップ金具に外挿状態で配されている請求項1又は2に記載のアッパサポート用の下クッションゴム。
【請求項4】
前記環状カバー部が前記車両への装着状態において前記車体パネルと前記カップ金具の開口端部との何れからも離れた上下方向の中間部分に配置されるようになっている請求項1〜の何れか一項に記載のアッパサポート用の下クッションゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドと車両の車体パネルとを防振連結するアッパサポート用の下クッションゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドと車両の車体パネルとを防振連結して、路面側となるピストンロッドから車体パネルに伝達される振動を低減する防振装置として、アッパサポートが知られている。このアッパサポートは、例えば、特許第5860733号公報(特許文献1)などに開示されているように、上クッションゴムが車体パネルの上面とピストンロッドに対して位置決めされる上取付金具の間に配設されると共に、下クッションゴムが車体パネルの下面とピストンロッドに固定される下取付金具の間に配設されており、ピストンロッドが上クッションゴムおよび下クッションゴムを備えるアッパサポートを介して車体パネルに防振連結されるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載されたアッパサポートの下クッションゴムは、ピストンロッドに外挿される筒状のゴム本体部を備えていると共に、ゴム本体部の外周面から径方向外方へ突出する略円環板状のゴムフランジ部と、ゴムフランジ部の外周端部から下方へ延び出す円筒状のゴムカバー部とを、一体的に備えている。そして、アッパサポートの車両への装着状態において、ゴム本体部の下部が下取付金具に嵌め入れられると共に、ゴムカバー部の下端部が下取付金具に固定された逆カップ形状のダストカバー用の取付金具に対して外挿状態で配されており、ゴムカバー部とダストカバー用の取付金具との隙間を小さくした狭窄領域が設定されることで、雨水などが狭窄領域を通過して浸入するのを防止している。
【0004】
また、特許文献1に示された下クッションゴムでは、フランジ状のゴムフランジ部が下取付金具の開口端部に上下方向で重ね合わされており、下取付金具の上端部がゴムフランジ部を介して車体パネルに当接することで、ピストンロッドと車体パネルの相対変位量が上下方向において制限されるようになっている。特に、特許文献1の実施形態では、車両への装着状態において、下取付金具の上端部がゴムフランジ部に当接している。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにゴムフランジ部が下取付金具の上端部に当接していると、上下方向の荷重入力時にゴムフランジ部が下取付金具によって上方へ押し上げられて、ゴムカバー部が変形せしめられるおそれがある。特に、こじり方向の入力と上下方向の入力が同時に作用する場合には、特定の径方向両側においてゴムカバー部の先端が内周側へ変位するように変形すると共に、当該径方向と直交する径方向両側において、ゴムカバー部の先端が外周側へ変位するように変形して、静置状態で略円形とされたゴムカバー部の先端部が略楕円形に変形する場合がある。このような変形がゴムカバー部に生じると、変形したゴムカバー部の短軸方向では、ゴムカバー部の先端がダストカバー用の取付金具などの他部材に擦れて異音などが発生するおそれがある一方、変形したゴムカバー部の長軸方向では、狭窄領域においてゴムカバー部の先端部とダストカバー用の取付金具との隙間が大きくなって、水の浸入が防止され難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5860733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、外周カバー部の歪な変形を防いで、異物の侵入や外周カバー部と他部材の擦れによる異音の発生などを安定して防止することができる、新規な構造のアッパサポート用の下クッションゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、車両のサスペンション機構を構成するショックアブソーバのピストンロッドに外挿されて、該車両の車体パネルの下方で該ピストンロッドに取り付けられるカップ金具に差し入れられた状態で該車体パネルと該カップ金具の間に介装されて車両に装着される筒状本体部を備えたアッパサポート用の下クッションゴムであって、前記筒状本体部には外周側へ突出する環状カバー部が一体形成されており、該環状カバー部が前記車両への装着状態において前記カップ金具の開口端部から上方へ離れた位置に配置されるようになっていると共に、該環状カバー部には下方へ延び出す外周カバー部が一体形成されており、該外周カバー部が該車両への装着状態において該カップ金具に外挿される一方、前記筒状本体部の外周面に外周段差が形成されており、該外周段差が前記車両への装着状態において該カップ金具の開口端部に重なり合う位置に設けられているようにしたことを、特徴とする
【0010】
このような本発明の第一の態様に従う構造とされたアッパサポート用の下クッションゴムによれば、車両への装着状態でカップ金具の開口端部の上方を覆う環状カバー部と外周側を覆う外周カバー部とを備えていることにより、カップ金具に差し入れられる筒状本体部とカップ金具の間などに水等の異物が入り込むのを防ぐことができる。
【0011】
さらに、アッパサポートの車両への装着状態において、環状カバー部がカップ金具の開口端部に対して上方へ離れた位置に配されることから、環状カバー部がカップ金具の開口端部によって上方へ押し上げられるのを防ぐことができる。その結果、外周カバー部が環状カバー部とともに変形するのを防ぐことができて、変形による外周カバー部のカップ金具などへの干渉や、外周カバー部とカップ金具などとの隙間の拡大による異物の侵入などを回避できる。しかも、カップ金具の開口端部と環状カバー部の接触を回避することにより、環状カバー部がカップ金具の開口端部のエッジによって損傷するのを防ぐこともできる。
【0013】
また、の態様によれば、アッパサポートの車両への装着状態において、筒状本体部における外周段差よりも上側部分が、カップ金具と車体パネルの上下方向間に配置されることにより、カップ金具の開口端部と車体パネルの上下方向での接近変位量が制限される。これにより、カップ金具の開口端部と環状カバー部との当接がより効果的に防止されて、外周カバー部の干渉による異音や環状カバー部の亀裂などが発生するのを防止することができると共に、カップ金具などと外周カバー部の隙間が広がることによる異物の侵入を回避することもできる。
【0014】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載されたアッパサポート用の下クッションゴムにおいて、前記車両への装着状態において前記外周カバー部が前記カップ金具の開口端部に形成された端部フランジに外挿されるようになっており、異物の通過を制限する狭窄領域が該外周カバー部と該端部フランジの間に構成されるようにしたものである。
【0015】
二の態様によれば、車両への装着状態において、外周カバー部が端部フランジを設けられたカップ金具の開口端部に外挿されることにより、外周カバー部とカップ金具の隙間を狭くされた狭窄領域が、外周カバー部と端部フランジの間に形成される。これにより、外周カバー部の下開口部から入る水や砂塵などの異物が、狭窄領域を通過し難くなっており、異物が筒状本体部の下部とカップ金具の間などへ侵入するのが防止される。
【0016】
加えて、外周カバー部をカップ金具の周壁部の全体に対して接近配置させて狭窄領域を広い範囲に形成する場合に比して、端部フランジが形成されたカップ金具の開口端部において外周カバー部をカップ金具に局所的に接近させて狭窄領域を形成することにより、外周カバー部の変形による外周カバー部とカップ金具の干渉が生じ難くなる。特に、端部フランジを外周カバー部の上下方向中間部分に内挿状態で配置すれば、変形による変位量が大きくなる外周カバー部の先端部分で狭窄領域を構成する場合に比して、外周カバー部のカップ金具に対する干渉が有利に防止される。
【0017】
本発明の第の態様は、第一又は第二の態様に記載されたアッパサポート用の下クッションゴムにおいて、前記外周カバー部が下方へ行くに従って大径となるテーパ筒形状とされているものである。
【0018】
の態様によれば、外周カバー部をカップ金具に対して外挿し易くなる。特に、カップ金具の開口端部が外周カバー部の上下中間部分に挿入状態で配置される構造では、外周カバー部の下端部においてカップ金具の開口端部を容易に挿入可能となると共に、外周カバー部の下端部よりも小径とされる上下中間部分では、カップ金具の開口端部を外周カバー部の内周面に十分に接近させることができて、外周カバー部とカップ金具の開口端部との間に形成される狭窄領域において、異物の通過を有効に防止することができる。
【0019】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載されたアッパサポート用の下クッションゴムにおいて、前記筒状本体部の下部が前記カップ金具に差し入れられて該カップ金具が該筒状本体部に取り付けられており、前記外周カバー部が該カップ金具に外挿状態で配されているものである。
【0020】
の態様によれば、筒状本体部がカップ金具に挿入された状態で取り付けられて、外周カバー部がカップ金具に外挿された状態で配置されることにより、下部と外周カバー部の径方向間に差し入れられるカップ金具と外周カバー部の間で異物の通過が防止される。
【0021】
本発明の第の態様は、第一〜第の何れか1つの態様に記載されたアッパサポート用の下クッションゴムにおいて、前記環状カバー部が前記車両への装着状態において前記車体パネルと前記カップ金具の開口端部との何れからも離れた上下方向の中間部分に配置されるようになっているものである。
【0022】
の態様によれば、アッパサポートの車両への装着状態において、環状カバー部が、カップ金具の開口端部に対して上方に離れた位置に配されるだけでなく、車体パネルに対して下方に離れた位置に配されることから、車体パネルがピストンロッドに対して相対的に傾動する場合に、環状カバー部が車体パネルへの当接によって変形するのを防止することができる。その結果、環状カバー部の変形に伴う外周カバー部の変形に起因する異音の発生や異物の侵入などを、防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両への装着状態でカップ金具の開口端部の上方を覆う環状カバー部と外周側を覆う外周カバー部とを備えていることにより、下クッションゴムとカップ金具の間などへ水等の異物が入るのを防ぐことができる。さらに、アッパサポートの車両への装着状態において、環状カバー部がカップ金具の開口端部から離れた位置に配されることから、環状カバー部とカップ金具の当接に起因する外周カバー部のカップ金具などへの干渉や、外周カバー部とカップ金具の隙間の拡大による異物の侵入などを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一の実施形態としての下クッションゴムを備えるアッパサポートを車両装着状態で示す縦断面図。
図2図1に示すアッパサポートを構成する下クッションゴムの縦断面図であって、図3中のII−II断面に相当する図。
図3図2に示す下クッションゴムの平面図。
図4図2に示す下クッションゴムの底面図。
図5図2のB部を拡大して示す図。
図6図1のA部を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1には、本発明の第一の実施形態としての下クッションゴム14を備えるアッパサポート10が、車両への装着状態で示されている。アッパサポート10は、車両のショックアブソーバを構成するピストンロッド44(後述)に対して外挿状態で配される上クッションゴム12と下クッションゴム14を備えている。以下の説明において、上下方向とは、原則として、軸方向である図1中の上下方向を言う。
【0027】
より詳細には、上クッションゴム12は、筒状のゴム弾性体の下部に対して、後述する車体パネル46に重ね合わされる略円環板状の当接金具16を加硫接着した構造を有している。なお、図1では、アッパサポート10が車両への装着状態で示されていることから、上クッションゴム12が上下方向に圧縮されている。
【0028】
一方、図2〜4に示す下クッションゴム14は、ゴム弾性体で形成された筒状本体部18を備えている。筒状本体部18は、全体として略円筒形状を有しており、外周面に環状の外周段差20を備えていると共に、内周面に環状の内周段差22を備えている。本実施形態では、外周段差20が内周段差22よりも僅かに上方に位置している。尤も、外周段差20と内周段差22は、上下方向で同じ位置に設けられていても良いし、外周段差20が内周段差22よりも下方に位置していても良い。また、外周段差20の径方向幅寸法は、内周段差22の径方向幅寸法よりも小さくされており、後述するカップ金具52の周壁部の厚さ寸法と略同じに設定されている。
【0029】
さらに、筒状本体部18における外周段差20よりも上側が、後述する車両装着状態においてカップ金具52よりも上方に位置する上部24とされていると共に、筒状本体部18における外周段差20よりも下側が、後述する車両装着状態においてカップ金具52に挿入状態で嵌め付けられる下部26とされている。筒状本体部18は、上部24が下部26よりも外径寸法を大きくされており、上部24において下部26よりも外周へ突出して外周段差20を構成する部分が、ストッパゴム部28とされている。また、内周段差22よりも上側において下側よりも内周へ突出した部分は、後述するピストンロッド44に外挿状態で嵌合されるロッド嵌着部30とされている。
【0030】
さらに、図2,4に示すように、筒状本体部18の下部26には、周方向の4か所において外周へ突出する嵌合凸部32が形成されており、それら嵌合凸部32の形成部分において下部26が部分的に大径となっている。この嵌合凸部32は、突出先端面である外周端面が、ストッパゴム部28を備えた上部24の外周面よりも、内周側に位置している。更にまた、嵌合凸部32を周方向で外れた部分では、径方向の両側において外周段差20の下面に開口する連通溝34が、径方向へ直線的に延びて形成されている。なお、本実施形態の下部26は、内周面の下端部が下方へ行くに従って大径となるテーパ形状とされていると共に、少なくとも嵌合凸部32の形成部分では、外周面の下端部が下方へ行くに従って小径となるテーパ形状とされている。要するに、本実施形態の下部26は、下端部が下方へ行くに従って径方向で薄肉となっている。
【0031】
なお、上部24の内周面は、図2,3に示すように、少なくとも上端部分において周方向で小径部分と大径部分を交互に繰り返す波打断面を有しており、上部24の後述するピストンロッド44への外嵌装着状態において、ピストンロッド44に対する上部24の締め代が調節されて、上部24のばね特性が調節されている。
【0032】
また、筒状本体部18は、突出部36を備えている。突出部36は、図3,5に示すように、筒状本体部18の上部24から上方へ突出しており、上方へ行くに従って径方向で狭幅となる略一定の断面形状をもって周方向へ環状に連続して延びている。なお、本実施形態の突出部36は、径方向幅寸法が段階的に変化していることにより、上下方向の圧縮に対して非線形なばね特性を発揮するようになっている。
【0033】
また、上部24の上端部分には、環状カバー部38が一体形成されている。環状カバー部38は、図2,4に示すように、薄肉の略円環板形状とされており、筒状本体部18から外周側へ略軸直角方向で広がっている。なお、筒状本体部18の突出部36が、環状カバー部38の上面よりも上方に位置していることから、環状カバー部38は、筒状本体部18の上下方向中間部分で中央よりも上側へ偏倚した位置に配されている。
【0034】
さらに、環状カバー部38の外周端部には、外周カバー部40が一体形成されている。外周カバー部40は、筒状本体部18よりも大径の薄肉略円筒形状とされており、筒状本体部18の周囲を囲むように配されている。更に、外周カバー部40の突出先端である下端は、筒状本体部18の外周段差20よりも下側に位置していると共に、筒状本体部18の下部26の下端よりも上側に位置している。なお、本実施形態の外周カバー部40は、全体が下方へ行くに従って僅かに大径となるテーパ筒形状とされていると共に、外周カバー部40の下端部の内周面には、下方へ行くに従って大径となる案内テーパ面42が形成されている。
【0035】
このような上クッションゴム12と下クッションゴム14を備えるアッパサポート10は、図1に示すように、車両のサスペンション機構を構成するショックアブソーバのピストンロッド44と、車両の車体パネル46の間に介装される。
【0036】
すなわち、上クッションゴム12がピストンロッド44に外挿状態で嵌合されて、当接金具16によって構成される上クッションゴム12の下面が、車体パネル46の上面に重ね合わされると共に、上クッションゴム12の上面に重ね合わされる略円環板形状の取付金具48が、ピストンロッド44に外挿されて、ピストンロッド44の上端部に螺着された端部ナット50,50と、上クッションゴム12との軸方向間で挟持される。そして、上クッションゴム12は、取付金具48と車体パネル46の間で上下方向に圧縮された状態で、車両に対して装着される。なお、端部ナット50,50のピストンロッド44に対する螺着位置を調節することにより、上クッションゴム12と下クッションゴム14の上下方向の圧縮量を適宜に設定することができる。
【0037】
一方、下クッションゴム14は、筒状本体部18がピストンロッド44に外挿状態で嵌合されており、筒状本体部18の突出部36が車体パネル46の下面に押し当てられて、突出部36が上下方向で圧縮されている。
【0038】
また、下クッションゴム14は、車両への装着状態において、筒状本体部18の下部26がカップ金具52に嵌め入れられる。カップ金具52は、上方へ向けて開口する凹状の金具であって、後述するピストンロッド44を挿通される挿通孔が底壁部の中央部分を上下方向に貫通して形成されていると共に、カップ金具52の開口端部(上端部)には、外周側へ突出する端部フランジ54が一体形成されている。そして、下クッションゴム14の下部26の略全体が、カップ金具52の内周側へ差し入れられて、下クッションゴム14が上下方向で圧縮された車両への装着状態において、下部26の嵌合凸部32がカップ金具52に嵌合される。換言すれば、カップ金具52が下部26における嵌合凸部32の形成部分に外嵌されることにより、筒状本体部18にカップ金具52が装着されている。
【0039】
このカップ金具52には、上下逆向きの略カップ形状とされたストッパ支持金具56が固定されている。ストッパ支持金具56は、後述するピストンロッド44が挿通される挿通孔を備えた上底壁部が、カップ金具52の底壁部と重ね合わされており、樹脂製の固着部58がカップ金具52の外周面とストッパ支持金具56の外周面に固着されることにより、それらカップ金具52とストッパ支持金具56が連結されている。更に、カップ金具52の底壁部とストッパ支持金具56の上底壁部には、外周部分を上下方向に貫通する排出孔60が形成されており、カップ金具52の内周へ浸入した水などが排出孔60を通じて下方へ排出されるようになっている。
【0040】
また、ストッパ支持金具56には、ダストカバー62が固着されている。ダストカバー62は、合成樹脂で形成された筒状の部材であって、固着部58と一体形成されて、ストッパ支持金具56の下端部から下方へ延び出している。更に、ストッパ支持金具56には、バンプストッパ64が取り付けられている。バンプストッパ64は、全体として筒状とされていると共に、軸方向の複数箇所に外径寸法を部分的に小さくされた括れ66が形成されている。そして、バンプストッパ64は、上端部がストッパ支持金具56に内嵌状態で支持されている。なお、バンプストッパ64は、弾性変形可能な材料で形成されており、本実施形態では発泡ウレタンなどで形成されている。
【0041】
そして、カップ金具52の底壁部の挿通孔とストッパ支持金具56の上底壁部の挿通孔にピストンロッド44が挿通されて、ピストンロッド44の軸方向中間に設けられた中間フランジ部68とピストンロッド44の軸方向中間に螺着される中間ナット70の間で、カップ金具52の底壁部とストッパ支持金具56の上底壁部が挟持されることにより、カップ金具52とストッパ支持金具56がピストンロッド44に装着される。なお、中間ナット70は、下クッションゴム14における下部26の内孔に収容されており、中間ナット70の上方に内周段差22が位置している。更に、バンプストッパ64がピストンロッド44に対して隙間を有する外挿状態で配されており、中間フランジ部68がバンプストッパ64の内孔に収容されている。
【0042】
カップ金具52とストッパ支持金具56がピストンロッド44に固定された状態で、取付金具48がピストンロッド44に対して軸方向で位置決めされることにより、上クッションゴム12が上下方向に圧縮された状態で取付金具48と車体パネル46の間に介装されると共に、下クッションゴム14が上下方向に圧縮された状態で車体パネル46とカップ金具52の間に介装される。これにより、上クッションゴム12と下クッションゴム14を備えるアッパサポート10が車両に装着される。
【0043】
なお、車両への装着状態において、下クッションゴム14の下部26の略全体がカップ金具52に差し入れられることによって、カップ金具52の開口端部が、筒状本体部18の外周段差20に対して、上下方向で近接して重なり合う位置に位置決めされている。更に、下クッションゴム14の下部26に設けられた嵌合凸部32が、カップ金具52に嵌め合わされていると共に、下クッションゴム14の下部26において嵌合凸部32を周方向に外れた部分が、カップ金具52の内周面に対して内周側へ離れている。
【0044】
かくの如きアッパサポート10の車両への装着状態において、下クッションゴム14の筒状本体部18から突出する環状カバー部38は、車体パネル46とカップ金具52の上下方向の中間に位置している。これにより、それら車体パネル46とカップ金具52の何れに対しても上下方向で離れて配置されて、環状カバー部38の上側に上部空間72が設けられると共に、環状カバー部38の下側に下部空間74が設けられる。本実施形態では、環状カバー部38がカップ金具52よりも上方に位置する上部24の上端部に一体形成されていることから、上下方向でカップ金具52の開口端部よりも車体パネル46に近い位置に配置されており、下部空間74の上下寸法が上部空間72の上下寸法よりも大きくされている。
【0045】
さらに、環状カバー部38から下方へ延び出す筒状の外周カバー部40は、図6に示すように、カップ金具52の開口端部に形成された端部フランジ54に対して、軸方向の中間部分が外挿された状態で配設される。そして、外周カバー部40とカップ金具52の径方向間の隙間が、外周カバー部40の端部フランジ54への外挿部分において狭窄されており、狭窄された領域が下方から上方への水等の異物の通過を制限する狭窄領域76とされる。更に、外周カバー部40の下端は、カップ金具52の下端よりも上方に位置している。なお、本実施形態の外周カバー部40は、全体が下方へ向けて僅かに大径となっていると共に、下端部の内周面がより大きな傾斜角度で下方へ向けて大径となる案内テーパ面42とされていることにより、カップ金具52の端部フランジ54に対して容易に外挿可能とされている。また、本実施形態では、外周カバー部40の内周面が端部フランジ54に対して外周へ離れて対向配置されており、外周カバー部40の内周面と端部フランジ54の外周端面の径方向間の隙間によって狭窄領域76が構成されている。
【0046】
図1に示すアッパサポート10の車両への装着状態において、上下方向の振動が入力されると、上クッションゴム12と下クッションゴム14の弾性変形によって、振動の減衰作用や絶縁作用などの防振効果が発揮される。
【0047】
このような本実施形態に従う構造とされた下クッションゴム14によれば、カップ金具52の上側が環状カバー部38によって覆われていると共に、カップ金具52の外周側が外周カバー部40によって覆われていることから、上側や外周側から雨水や砂塵などが吹き付けても、カップ金具52の内周側への侵入が防止される。
【0048】
しかも、本実施形態では、カップ金具52の開口端部に外周へ突出する端部フランジ54が形成されており、外周カバー部40が端部フランジ54に外挿されることにより、外周カバー部40とカップ金具52の隙間を軸方向で局所的に狭くした狭窄領域76が、外周カバー部40と端部フランジ54の径方向間に形成される。これにより、外周カバー部40とカップ金具52を狭窄領域76において十分に接近して配置し易くなることから、外周カバー部40の下開口部から入り込む水や砂塵などの異物が、狭窄領域76をより通過し難くなっており、下部26とカップ金具52の間などへの異物の侵入が防止される。
【0049】
また、環状カバー部38がカップ金具52の開口端部に対して上方へ離れた位置に配されていることから、上下方向の振動入力時などに、環状カバー部38がカップ金具52の開口端部によって押し上げられて変形するのを回避することができる。その結果、環状カバー部38の変形による外周カバー部40の楕円化などの意図しない変形を防ぐことができて、外周カバー部40の他部材への干渉や、外周カバー部40と端部フランジ54の隙間が拡大することによる水の浸入防止機能の低下などが防止される。
【0050】
加えて、外周カバー部40をカップ金具52に軸方向の一部(端部フランジ54を備える開口端部)で接近させて、軸方向寸法の小さい狭窄領域76を形成することから、軸方向の全体で接近させる場合に比して、外周カバー部40の変形による外周カバー部40とカップ金具52の干渉が生じ難くなる。特に、端部フランジ54が外周カバー部40の上下方向中間部分に挿入状態で配されることから、変形による変位量が大きくなる外周カバー部40の先端部分で狭窄領域76を構成する場合に比して、外周カバー部40のカップ金具52に対する干渉がより有利に防止される。
【0051】
さらに、本実施形態では、筒状本体部18のストッパゴム部28がカップ金具52の開口端部と車体パネル46の軸方向間に差し入れられており、カップ金具52の環状カバー部38に対する軸方向の接近変位量がストッパゴム部28によって制限されている。これにより、上下方向の振動入力時にも、カップ金具52が環状カバー部38に当接することはなく、環状カバー部38がカップ金具52によって押し上げられることによる環状カバー部38および外周カバー部40の変形が防止される。しかも、カップ金具52の開口端部と環状カバー部38の接触を回避することにより、環状カバー部38がカップ金具52の開口端部のエッジによって損傷するのを防ぐこともできる。
【0052】
また、外周カバー部40が下方へ行くに従って大径となるテーパ筒形状とされていることから、下クッションゴム14をカップ金具52に取り付ける際に、外周カバー部40をカップ金具52に外挿状態で配設し易くなっている。特に、端部フランジ54が外周カバー部40の上下中間部分に挿入状態で配置されることから、端部フランジ54を外周カバー部40の内周へ容易に挿入することができると共に、外周カバー部40の下端部よりも小径とされる上下中間部分では、端部フランジ54の外周端面を外周カバー部40の内周面に十分に接近させることができる。これにより、下クッションゴム14とカップ金具52の組付け作業性を向上させながら、外周カバー部40と端部フランジ54の間の狭窄領域76において、異物の通過を有効に防止することができる。
【0053】
しかも、本実施形態では、外周カバー部40の下端部の内周面が、下方へ向けて拡径する案内テーパ面42とされていることから、端部フランジ54を外周カバー部40により容易に挿入することが可能とされており、下クッションゴム14とカップ金具52の組付け作業がより容易になる。加えて、案内テーパ面42は、外周カバー部40における狭窄領域76の構成部分を下方へ外れた位置に設けられていることから、案内テーパ面42が狭窄領域76における異物の侵入防止機能に影響を及ぼすこともない。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、外周カバー部40をカップ金具52よりも下方まで延び出させて、外周カバー部40とストッパ支持金具56との間で水や砂塵などの異物の通過を制限する狭窄領域を構成することもできる。このような場合には、カップ金具52の端部フランジ54は、必須ではなく省略可能であるし、外周への突出寸法が小さくされて外周カバー部40から大きく離れて配置されるようにしても良い。
【0055】
外周段差20は必須ではなく省略可能であり、その場合にはストッパゴム部28も省略され得る。このようなストッパゴム部28が形成されない構造では、筒状本体部18が上下に圧縮される際に、筒状本体部18の上部24が外周側へ膨らんでカップ金具52の開口端部と車体パネル46の上下方向間へ入り込むことで、ストッパゴム部28と同様の変位制限機能が発揮されるようにもできる。
【符号の説明】
【0056】
10:アッパサポート、14:下クッションゴム、18:筒状本体部、20:外周段差、24:上部、26:下部、36:突出部、38:環状カバー部、40:外周カバー部、44:ピストンロッド、46:車体パネル、52:カップ金具、54:端部フランジ、72:上部空間、74:下部空間、76:狭窄領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6