(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、不純物が弁座に付着するのを防止するため、ボディを加熱しているが、バタフライ弁では、弁座が形成された弾性シール部材が劣化し、内部漏れが生じる恐れがあった。真空圧力制御装置が半導体製造工程で使用される場合、毒性ガスが使用される場合があるため、非常停止のときには、安全を担保するため漏れがあってはならない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、弾性シール部材が劣化しても内部漏れが生じない真空圧力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る真空圧力制御装置は、次のような構成を有している。
(1)弁座が形成された環状の弾性シール部材と、弁座と当接または離間する2重偏心のバタフライ弁体とを有し、真空容器と真空ポンプとを接続する配管上にあってバタフライ弁体を、初期状態である第1弁閉位置から第1方向に回転させることにより真空容器内の真空圧力を変化させる真空圧力制御装置において、バタフライ弁体を第1方向とは逆方向に回転させ、第1弁閉位置とは別の第2弁閉位置に配置させる制御手段を有すること、
真空圧力制御装置は半導体製造工程で使用されること、非常停止のときに、第2弁閉位置で停止すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載の真空圧力制御装置において、弾性シール部材の断面は、一辺に開口する環状溝を備えるU字状に形成され、環状溝には、環状に突出したガイド部材が係合されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載の真空圧力制御装置において、第1弁閉位置に位置するバタフライ弁体によって、経年変化により弾性シール部材がすり減っても、バタフライ弁体を第2弁閉位置に配置させることで、バタフライ弁体と弾性シール部材との間が完全にシールされること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の真空圧力制御装置において、バタフライ弁体は、弁座と当接する周縁部を含む面を有し、該周縁部は、曲面であること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の真空圧力制御装置において、バタフライ弁体の弁座と当接する面と対向する面には、切欠部が形成されていること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の真空圧力制御装置において、バタフライ弁体が取り付けられているボディと継手により弾性シール部材が挟持されていること、を特徴とする。
【0009】
ここで、第1方向とは、2重偏心したバタフライ弁体の外周の半分以上を有する部分を弁座から離間させる方向をいう。したがって、バタフライ弁体の外周の短い部分は弁座に当接する方向となる。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)の態様によれば、真空圧力制御装置は、弾性シール部材が劣化しても、バタフライ弁体を第2弁閉位置に設定することで弁閉状態にすることができるため、内部漏れが生じる恐れがない。真空圧力制御装置が半導体製造工程で使用される場合であっても、非常停止のときには、安全を担保することができる。
上記(2)の態様によれば、弾性シール部材はガイド部材により固定され、脱落しない。
上記(3)の態様によれば、弾性シール部材が劣化しても、第2弁閉位置では、内部漏れが生じる恐れがない。
上記(4)の態様によれば、弾性シール部材との接触面積を大きくとることができるため、弾性シール部材の劣化を遅らせることができ、耐久性を向上できる。
上記(5)の態様によれば、バタフライ弁体の重心の位置を回転軸上にすることができ、回転半径(回転軸とバタフライ弁体の重心との距離)を小さくすることができる。これにより、慣性モーメントを小さくすることができる。
上記(6)の態様によれば、メンテナンスの際、継手を取るだけで容易に弾性シール部材を取り外すことができるため、作業性を向上できる。ボディは、加熱され使用されることが多く、バタフライ弁体と弾性シール部材とが固着する場合があるが、弾性シール部材がボディと継手により挟持されている
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の真空圧力制御装置について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0013】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る真空圧力制御装置1の構成について
図1から
図8を用いて説明する。
図5は、第1実施形態に係る真空圧力制御装置1の断面図である。
図1から
図4は、
図5のAA断面図である。
図1は、バタフライ弁体9の第1弁閉位置を示し、
図2は、第2弁閉位置を示す。
図3は、バタフライ弁体9の第1弁開位置を示し、
図4は、第2弁開位置を示す。ここで、第1弁閉位置とは、初期(通常)の弁閉状態にあるときをいい、第2弁閉位置とは、第1方向Eとは逆方向Fに弁が回転した状態にあるときをいう。また、第1弁開位置とは、第1方向Eに回転して第1弁体部91のみが開弁した状態にあるときをいい、第2弁開位置とは、さらに第1方向Eに回転して第1弁体部91と第2弁体部92が両方とも完全に開弁した状態にあるときをいう。
図6は、真空圧力制御装置1の右側面図である。
図7は、
図1のB部拡大図であり、
図8は、
図2のC部拡大図である。
図9は、弾性シール部材7を引きはがす構造を示す図である。
図10は、真空圧力制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0014】
真空圧力制御装置1は、
図5に示すように、駆動部2と、弁本体3を有する。
駆動部2は、モータ11と、減速機12と、エンコーダ26と、制御基板13を有する。制御基板13には、
図10に示すように、記憶手段131を有する。記憶手段131は、後述するバタフライ弁体9の所定の第1弁閉位置と第2弁閉位置の固定値が記憶されている。なお、制御基板13は、本発明における「制御手段」の一例である。
【0015】
弁本体3は、
図10に示すように、真空容器27と真空ポンプ28とを接続する配管30上にある。弁本体3は、
図5に示すように、バタフライ弁体9と、バタフライ弁体9を取り付けた円筒形状のボディ4と、ボディ4の両側にステンレス製の継手5、6を有する。継手5は、流路5aが形成され、フランジ部5bを有する。継手6には、流路6aが形成され、フランジ部6bを有する。継手5は、真空ポンプ28に接続され、継手6は、真空容器27に接続される。フランジ部5b、6bには、
図6に示すように、ボディ4と固定するための8個のネジ24が円形状にそれぞれ配置され、ボディ4と継手5、6を引きはがすためのネジ孔16、17が形成されている。なお、
図6では、継手6しか図示されていないが、継手5も同じ構成を有するため、継手5の図を省略する。なお、本実施形態では、継手5に真空ポンプ28が接続され、継手6に真空容器27が接続されているが、継手5に真空容器27が接続され、継手6に真空ポンプ28が接続されてもよい。
【0016】
図5に示すように、ボディ4には、断面円弧状の内壁からなる弁孔4dが形成され、弁孔4dの軸方向の一方の端部(
図5では、継手5と接する側)において、弁孔4dの径方向外側に凹部4aが形成されている。凹部4aには、ゴム製で環状の弾性シール部材7が係合され、弾性シール部材7はボディ4と継手5により挟持されている。
【0017】
弾性シール部材7には、弁座7aが形成されている。弾性シール部材7の断面は、
図7に示すように、一辺(外周面)に開口する環状溝7bを備えるU字状に形成されている。弾性シール部材7は、環状溝7bが形成されている薄肉部71と、薄肉部71の両側に肉厚部72、73を有する。肉厚部73の軸方向距離Z1と、ガイド部材8(または薄肉部71)の軸方向距離Z2と、肉厚部72の軸方向距離Z3は、同じ距離を有する(Z1:Z2:Z3=1:1:1)。環状溝7bには、径方向外方に環状に突出したガイド部材8が嵌合されている。半導体製造装置では、ガスと接する部材には、耐腐食性のある材料を使用する必要がある。しかし、ガイド部材8は、弾性シール部材7によりガスが接する部分から隔離されているため、材質を問わない。また、弾性シール部材7とガイド部材8との接合方法も接着剤等を使用した一体成型など方法を問わない。メンテナンスなどの弁の分解時、ガイド部材8が支えとなり、ボディ4に弾性シール部材7が固着していても確実にはがすことができる。ガイド部材8がないと、弾性シール部材7は、上記分解時に引きちぎられたり、表面に傷がついてしまったりする。また、ガイド部材8の厚みを変更することで容易に弾性シール部材7のシール性、反力等のシール特性を変更することができる。
【0018】
ボディ4には、
図6に示すように、ヒータ14、15を固定する孔4b、4cが設けられている。これにより、ヒータ14、15がボディ4内にあるため、直接ボディ4を温めることができる。ヒータ14、15はボディ4外側表面から止めネジ22、23等で固定され、取り外しが可能である。さらに、ボディ4の外装を断熱材(図示なし。)で巻くことにより、ヒーティングの効率を上げることができると同時に、熱電対やサーモスタットも、ボディ4または断熱材のいずれにも固定することが可能である。
【0019】
弾性シール部材7をボディ4側に固定し、ボディ4を直接ヒータ14、15で温めることができるため、弾性シール部材7自体も冷めることがない。このため、シールさせるために弾性シール部材7に生成物がつきにくくなる。これにより、シール性を保持することができる。
【0020】
図5に示すように、バタフライ弁体9は、駆動部2と同一軸上にある回転軸10が回転することにより弁座7aと当接または離間する。回転軸10は、エンコーダ26により回転角度を把握し、減速機12付のモータ11により回転する。これにより、モータ11を小型化できるとともに、モータ11の電源が断たれても弁の開度を把握することができる。また、2重偏心の弁は、保持する力がないと、バタフライ弁体9は差圧により回転する恐れがある。そのため、電源が断たれた状態でも、この弁が差圧で発生する回転トルクでは回転軸10が回転しない減速機12を選定する。また、モータ11にはディテントトルクなど、モータ11自身の保持トルクもあるため、併用し、電源が断たれたときに弁が動かないようにしている。回転軸10とボディ4の間には、シールのためのOリング18、29、20、21が配置されている。
【0021】
図1に示すように、回転軸10の中心軸Pは、バタフライ弁体9の中心点Qと流路5a、6aの軸心方向において距離Xだけ偏心し、かつ、バタフライ弁体9の中心点Qと流路5a、6aの軸心と直交する方向において距離Yだけ偏心することにより、2重に偏心している。バタフライ弁体9は、回転軸10が設置された第1面9bと、弁座7aと当接する周縁部9cを含む第2面9aを備え、周縁部9cは所定曲率を有する曲面として形成されている。所定曲率を大きくとることにより、弾性シール部材7とバタフライ弁体9との接触面Sを広くとることができるため、ヘリウム等の透過性ガスを使用する際、ガスが透過しにくい。バタフライ弁体9は、
図1及び
図6に示すように、中心軸Pに対し、バタフライ弁体9の外周の半分以上を有する第1弁体部91と、該第1弁体部91より外周が短い第2弁体部92を備える。
【0022】
次に、真空圧力制御装置1の作用効果について、さらに
図11から
図14を用いて説明する。
図11は、バタフライ弁体9の回転角度とCv値の関係を示した図である。横軸は弁の回転角度を示し、縦軸はCv値を示す。また、従来技術のデータを線Gで示し、本実施形態のデータを線Hで示す。
図12は、バタフライ弁体9の回転角度と
図1の第1弁体部91の開度(
図3の矢印Tで示す。)の関係を示した図である。従来技術のデータを線Jで示し、本実施形態のデータを線Kで示す。
図13は、従来技術と比較したバタフライ弁体9の回転角度と
図1の第2弁体部92の開度の関係を示した図である。従来技術のデータを線Lで示し、本実施形態のデータを線Mで示す。
図14は、バタフライ弁体9の回転角度と
図1の第1弁体部91と第2弁体部92の平均開度の関係を示した図である。従来技術のデータを線Nで示し、本実施形態のデータを線Oで示す。なお、
図12から
図14では、横軸が弁の回転角度を示し、縦軸は弁の開度を示す。弁の開度は、プラス側では、弁が開いている状態を示し、マイナス側では弁が閉じており、弾性シール部材7がつぶれている状態を示す。
【0023】
初期の弁閉状態では、バタフライ弁体9は、
図1に示す第1弁閉位置にある。大気圧付近で弁開する際、バタフライ弁体9を第1方向Eに回転し、
図3に示す第1弁開位置となる。このとき、第1弁体部91のみ弁座7aから離間した弁開状態であり、第2弁体部92では弁座7aに当接した弁閉状態である。ここで、第1方向Eとは、2重偏心した第1弁体部91を弁座7aから離間させる方向をいう。したがって、第2弁体部92は弁座7aに当接する方向となる。バタフライ弁体9は、ボディ4の弁孔4dの円弧状内壁に沿って動作する。開度Tが小さいときは、
図3に示すように、バタフライ弁体9の周縁部9cの曲面の頂点Wが流路5a、6aの高さ(線Vで示す)より上方(外側)に位置するため、流路5a、6aを絞ることができる。このため、開度Tが小さいところで急激にガスが流れることがなく、制御性が向上する。
【0024】
バタフライ弁体9をさらに第1方向Eに回転すると、
図4に示すように、第1弁体部91と第2弁体部92を弁開させる完全な弁開状態となる。通常の真空圧力制御装置1の運転では、バタフライ弁体9の開度は第1弁閉位置、第1弁開位置、第2弁開位置、もしくはその間の位置で使用する。
【0025】
第1、第2弁閉位置の決め方は、はじめに、エンコーダ26を用い、回転軸10の回転角度を把握し、この角度を基準に弁閉位置を把握する。次にモータ11であるステッピングモータなどを用い、第2弁閉位置にメカストップ(ステッピングモータの脱調位置)を設け、止まった地点を基準にエンコーダ26で計測した角度信号で弁閉位置を管理・把握する。なお、エンコーダ26ではなく、ポテンションメータを用いても良い。
【0026】
大気圧で弁閉する際、弁閉じ切り付近において、2重偏心でない弁を使用すると、弁体が急激に閉まってしまい、制御性が悪かった。しかし、2重偏心のバタフライ弁体9を用いることで、
図12の線K、
図13の線M、
図14の線Oに示すように、それぞれ従来技術の線J、線L、線Nと比べて弁の開度の変化量が緩やかであり、弁閉じ切り付近で行われる大気圧付近での圧力制御に第1弁体部91のみの開度を調整し圧力を制御することができるため、第1弁体部91と第2弁体部92の両方の開度で圧力を制御するよりも微妙な圧力制御が可能となる。
【0027】
ここで、通常、不純物が弁座7aに付着するのを防止するため、ボディ4を加熱しているが、バタフライ弁体9では、弁座7aが形成された弾性シール部材7が経年変化により劣化し、内部漏れが生じる恐れがあった。真空圧力制御装置が半導体製造工程で使用される場合、毒性ガスが使用される場合があるため、非常停止のときには、安全を担保するため漏れがあってはならない。
【0028】
第1弁閉位置では、
図7に示すように、弾性シール部材7とバタフライ弁体9とがシールする弾性シール部材7とバタフライ弁体9の接触面S2の大部分は弾性シール部材7の肉厚部72にあり、少しだけ薄肉部71にかかるように配置する。このとき、接触面S2は、弾性シール部材7の肉厚部72の端面S(即ち、ボディ4の凹部4aと接する面)より距離S1aの位置にある。圧力制御弁等の動作により弾性シール部材7が経年変化し、弾性シール部材7はすり減ってしまい、シール性が低下する。
【0029】
第2弁閉位置は、
図2に示すように、第1弁閉位置からバタフライ弁体9を第1方向Eとは逆方向Fに距離Dだけ回転させた、第1弁閉位置とは別の位置とする。
図8に示すように、バタフライ弁体9が回転して接触面S2は肉厚部72から薄肉部71方向へ移動する。接触面S2は、弾性シール部材7の肉厚部72の端面Sより距離S1bの位置にある。距離S1bは、第1弁閉位置の時の距離S1aよりも大きい(S1a<S1b)。第2弁閉位置に位置するときの弾性シール部材7とバタフライ弁体9の接触面S2の一部(距離S1bと距離S1aの差分)は、第1弁閉位置に位置するときの弾性シール部材7とバタフライ弁体9の接触面S2としては使用しておらず、経年変化していない状態である。そのため、第1弁閉位置に位置するときの弾性シール部材7とバタフライ弁体9の接触面S2が経年変化してしまっても、第2弁閉位置でシールすることで完全にシールすることができる。また、第2弁閉位置では、薄肉部71でのシールのため、弾性シール部材7をつぶす(押圧する)ことによる反力が大きく得られ、シール性能が上がる。
【0030】
さらに、第1弁開位置では、
図3に示すように、第2弁体部92は肉厚部73に接しているため、肉厚部73からの反力が小さくても回転軸10の回転トルクを小さくすることができる。
【0031】
本実施形態の真空圧力制御装置1は、メンテナンスの際、継手5をボディ4から外すだけで容易に弾性シール部材7を取り外すことができるため、作業性を向上できる。継手5と、継手6と、弾性シール部材7と、バタフライ弁体9と、回転軸10は、容易に分解することができる。継手5と継手6のフランジ固定用のネジ24を外すだけで容易に分解が可能なため、分解し、生成物等をクリーニングし、真空圧力制御装置1の再利用が可能である。消耗品である弾性シール部材7や、回転軸10をシールしている各Oリング18、29、20、21も容易に交換が可能である。
【0032】
また、熱等により固着した弾性シール部材7を、メンテナンスなどの分解時に容易にボディ4から引きはがすことができる。ボディ4を加熱すると、弾性シール部材7は、ボディ4と継手5の間で固着する恐れがある。この固着力は大きく、簡単にはがすことができない場合がある。このため、
図9に示すように、継手5のフランジ部5bにネジ孔16を設け、ネジ25を挿入することで、ボディ4と継手5を引きはがすことができるようにした。なお、ネジ孔16とネジ孔17は同じ構成であるため、
図9では、ネジ孔16のみを示している。また、これに用いるネジ孔16、17は継手5のフランジ固定用の8個のネジ24をはずし、そのまま使用できるため、新たに専用のネジを用意する必要がない。継手5とボディ4の間にあらかじめ隙間を設け、てこの原理でこじ開ける方法をとっても良い。
【0033】
以上、説明したように、第1実施形態の真空圧力制御装置1によれば、下記の作用効果が得られる。
(1)弁座7aが形成された環状の弾性シール部材7と、弁座7aと当接または離間する2重偏心のバタフライ弁体9とを有し、真空容器27と真空ポンプ28とを接続する配管30上にあってバタフライ弁体9を、初期状態である第1弁閉位置から第1方向Eに回転させることにより真空容器27内の真空圧力を変化させる真空圧力制御装置1において、バタフライ弁体9を第1方向Eとは逆方向Fに回転させ、初期の第1弁閉位置とは別の第2弁閉位置へと位置させる制御基板13を有すること、を特徴とするので、経年変化により弾性シール部材7が劣化しても、バタフライ弁体9を第2弁閉位置に設定することで弁閉状態にすることができるため、内部漏れが生じる恐れがない。また、初期段階においても、非常停止のときには、第2弁閉位置に設定することで漏れがなく、安全性を強化することができる。
【0034】
(2)(1)に記載の真空圧力制御装置1において、弾性シール部材7の断面は、一辺に開口する環状溝7bを備えるU字状に形成され、環状溝7bには、環状に突出したガイド部材8が係合されていること、を特徴とするので、バタフライ弁体9は、弾性シール部材7に対して回転方向に力を加えるが、十分な高さ(全体の2分の1以上)のあるガイド部材8がその加わった力を受けるため、弾性シール部材7がガイド部材8により固定され、脱落しない。
【0035】
(3)(2)に記載の真空圧力制御装置において、第1弁閉位置に位置するバタフライ弁体9によって、経年変化により弾性シール部材7がすり減っても、バタフライ弁体9を第2弁閉位置に配置させることで、バタフライ弁体9と弾性シール部材7との間が完全にシールされることを特徴とするので、弾性シール部材7が劣化しても、第2弁閉位置では、内部漏れが生じる恐れがない。
【0036】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の真空圧力制御装置1において、バタフライ弁体9は、弁座7aと当接する周縁部9cを含む面を有し、該周縁部9cは、曲面であること、を特徴とするので、弾性シール部材7との接触面積を大きくとることができるため、その分弾性シール部材7の潰し量を減らしシールに必要な反力を低減させることができるため、弾性シール部材7の劣化を遅らせることができ、耐久性を向上できる。
【0037】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の真空圧力制御装置において、バタフライ弁体9が取り付けられているボディ4と継手5により弾性シール部材7が挟持されていること、を特徴とするので、メンテナンスの際、継手5を取るだけで容易に弾性シール部材7を取り外すことができるため、作業性を向上できる。ボディ4は、加熱され使用されることが多く、バタフライ弁体9と弾性シール部材7とが固着する場合があるが、弾性シール部材7がボディ4と継手5により挟持されているため、開閉により弾性シール部材7が引っ張られて脱落することはない。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の真空圧力制御装置1の構成について、
図15から
図18を用いて説明する。
図15は、第2実施形態に係る真空圧力制御装置1のバタフライ弁体19が第1弁閉位置にある状態を示す断面図である。
図16は、バタフライ弁体19が第2弁閉位置にある状態を示す断面図であり、
図17は、第1弁開位置にある状態を示す断面図であり、
図18は、第2弁開位置にある状態を示す断面図である。
【0039】
第1実施形態と第2実施形態の主な相違点は、バタフライ弁体の形状である。なお、以下の説明において、第1実施形態に係る真空圧力制御装置1と同じ構造には、同じ引用番号を付すことにより、その説明を省略する。
【0040】
第2実施形態のバタフライ弁体19には、
図15に示すように、弁座7aと当接する曲面状の周縁部19dを含む第2面19aと、第2面19aと対向する第1面19b、すなわち、回転軸10がある第1面19bであって、第1弁体部191に凹状の切欠部19cが形成されている。
【0041】
ここで、第1実施形態のバタフライ弁体9では、
図1に示すように、その重心の位置はバタフライ弁体9の中心点Qにある。この場合、慣性モーメントが大きくなる。慣性モーメントが大きくなると、バタフライ弁体9が弾性シール部材7に当接しているときに振動があると、これによりパーティクルが発生する恐れがある。また、バタフライ弁体9を停止させるときに慣性力でオーバーシュートしてしまい、停止の応答性が悪いという問題があった。
【0042】
しかし、第2実施形態のバタフライ弁体19では、回転軸10のある面19bに切欠部19cが形成されているため、
図15に示すように、バタフライ弁体19の重心の位置を回転軸10の軸上の点Rにすることができる。これにより、バタフライ弁体19の慣性モーメントを小さくすることができる。慣性モーメントが小さいと、バタフライ弁体19の開閉時、慣性モーメントによる振動が小さく、パーティクルが発生を抑えることができる。また、バタフライ弁体19を停止させるときにオーバーシュートせず、応答性が向上する。
【0043】
以上、説明したように、第2実施形態の真空圧力制御装置1によれば、バタフライ弁体19の弁座7aと当接する第2面19aと対向する第1面19bには、切欠部19cが形成されていること、を特徴とするので、バタフライ弁体19の重心の位置を回転軸上の点Rにすることができ、回転半径(回転軸とバタフライ弁体の重心との距離)を小さくすることができる。これにより、慣性モーメントを小さくすることができる。
【0044】
なお、上記各実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、弾性シール部材7の当接面を本実施形態では直線状としているが、曲面形状でも良い。
【0046】
例えば、上記実施形態では、ガイド部材8は弾性シール部材7にガイド部材8が嵌合されており、肉厚部73の軸方向距離Z1と、ガイド部材8の軸方向距離Z2と、肉厚部72の軸方向距離Z3は、同じ距離を有する(Z1:Z2:Z3=1:1:1)が、ガイド部材8と、肉厚部72、73の厚みは、シール性を確保できるのであれば任意の厚みで良い。場合によっては、
図19に示すようにガイド部材8はなくても良い。この場合、弾性シール部材7の材質を選択することにより、例えば、硬度の高い弾性シール部材7を選択することにより反力を高めることができるため、シール性を保つことができる。弾性シール部材7の材質は、例えば、FKM、FFKM、NBRを用いることができる。