【実施例】
【0139】
実施例1:免疫賦活抗体抗PD-1と併用の腫瘍崩壊CVA21ウイルス療法
本試験は、悪性メラノーマのB16-ICAM-1マウスモデルにおける、免疫賦活抗体抗PD-1と併用のCVA21腫瘍崩壊ウイルス療法の有効性を調査したものである。マウスに腫瘍を、皮内に埋め込み(2×10
5細胞)、12日間確立させた後、治療を開始した。12、15、18、及び21日目、マウスを、マウス抗PD-1抗体又はマッチさせた対照抗体のいずれかと併用して、食塩水、CVA21、又はUV不活化CVA21のいずれかで処置した。食塩水、CVA21、又はUV不活化CVA21処置は腫瘍内投与し、抗PD-1及び対照抗体は腹腔内投与した。抗PD-1抗体と併用してCVA21で処置した動物は、対照群(食塩水+対照抗体)の動物と比較して、腫瘍の潰瘍化のエンドポイント、又は10%を超える体重の減少に基づいて、わずかな延命効果を示した。12日目から21日目の間の処置期間の間、CVA21+抗PD-1の併用は腫瘍抑制(tumoristatic)効果を示したが、治療を停止すると、腫瘍の体積は徐々に増大した。これにもかかわらず、この群の動物は、食塩水+対照抗体、UV-CVA21+対照抗体、及びUV-CVA21+抗PD-1抗体処置群と比較して、統計学的に有意な生存効果を示した。本試験により、抗CVA21中和抗体レベルはCVA21+抗PD-1対CVA21+対照抗体を投与したマウスにおいてより高レベルで検出されたため、抗PD-1抗体の免疫賦活性の性質も確認された。まとめると、本試験の主な知見は、CVA21+抗PD-1で処置した担癌マウスは、腫瘍成長の減速及び腫瘍の潰瘍化の低減に関する全体的な延命効果を示した。
【0140】
試験材料:ウイルス
試験物品であるコクサッキーウイルスA21(CVA21)[商品名:CAVATAK(商標)]はViralytics Ltdによって提供された。in vitro使用のための研究用株(research stock)は、調製された市販のCAVATAK(商標)のバイアルから作製した。バッチ:CCVA2115、濃度:1×10
9TCID
50/ml (1.1mlバイアル)、再試験日:実施例2及び3に対して2008年12月、2014年1月、貯蔵の推奨:-70℃未満で貯蔵する。
【0141】
UV不活化CVA21を、同じCAVATAK(商標)バッチ:CVA2115製品7mlを、バイオハザードフード中、1時間、UV光線に暴露することによって調製した。ウイルスを最初に、オリジナルの製品バイアルから6ウエルプレートのウエルに移し、およそ10cmの距離のUV光源に1時間暴露した。UV不活性化したウイルスを、次いで、アリコートにし、-80℃で凍結した。
【0142】
抗体
対照抗体
実施例1及び2における対照抗体として、BioXCellからの抗体InVivoMAb Rat IgG2aを用いた。クローン: 2A3。カタログ番号: BE0089。ロット: 4807/0713。内毒素: <0.35EU/mg。製剤: PBS、pH6.5。滅菌: 0.2umろ過。純度: >95%。貯蔵: 希釈せずに暗所で4℃。実施例3における対照抗体として、BioXCellからの抗体InVivoMAb Rat IgG2bを用いた。クローンMPC-11。カタログ番号BE0086。ロット4700-2/0414。内毒素: <2.0EU/mg。製剤: PBS、pH7。滅菌: 0.2umろ過。純度: > 95%。貯蔵: 希釈せずに暗所で4℃。
【0143】
抗PD-1
活性抗マウスPD-1抗体をBioXCellから得た。製品名: InVivoMAb抗m PD-1。クローン: RMP1-14。カタログ番号: BE0416。ロット: 4781/0813。内毒素: <0.61EU/mg。製剤: PBS、pH7。滅菌: 0.2 umろ過。純度: >95%。貯蔵: 希釈せずに暗所で4℃。
【0144】
抗CTLA-4
活性抗マウスCTLA-4抗体をBioXCellから得た。製品名: InVivoMAb抗m CTLA-4。クローン: 9D9。カタログ番号: BE0164。ロット: 5159/0414。内毒素: <2.0EU/mg。製剤: PBS、pH7。滅菌: 0.2um ろ過。純度: >95%。貯蔵: 希釈せずに暗所で4℃。
【0145】
細胞
本試験では、ヒトメラノーマ細胞株SK-Mel-28、並びにマウスメラノーマ細胞株B16及びB16-ICAM-1を用いた。メラノーマ細胞株SK-Mel-28は、ATCC (アメリカ培養細胞系統保存機関)から得た。Mel-RMは、P. Hersey博士(University of Newcastle、New South Wales、Australia)より贈られた。B16マウスメラノーマ細胞は、当初A. Shurbier博士(Queensland Institute for Medical Research、Brisbane、Queensland、Australia)から得、次いで、ヒトICAM-1遺伝子を安定にトランスフェクトしてB16-ICAM-1細胞株を作製した。細胞株は全て、10%ウシ胎児血清(FCS) (SAFC Biosciences(商標)、Australia)、10mM滅菌N-2-ヒドロキシエチルピペラジンN'-2-エタンスルホン酸(HEPES) (ThermoScientific、Australia)、2mM L-グルタミン(ThermoScientific、Australia)、ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、Australia)、及び100IU/mlペニシリン-ストレプトマイシン(Invitrogen、Auckland、NZ)を含むDMEM (Thermo Scientific)中に維持した。細胞は全て、5%CO
2環境中37℃で培養した。
【0146】
動物
動物実験は全て、ニューキャッスル大学動物飼育倫理委員会(ACEC)により承認番号: A-2013-327の下に承認された。6から8週齢のC57BL/6メスマウス(n=52)を、ニューキャッスル大学動物サービスユニット(Animal Services Unit)によって得た。マウスを、動物供給施設内の、特定の無病原菌領域における、個別換気ケージ内に維持した。マウスを、PC2実験室内のTechni-Plast Slim Line空気調節システムに接続した、HEPA-filtered Techni-Plast Cages (1145 IVC)内、4匹の群で、12/12時間の明/暗周期で収容した。マウスに、Specialty Feeds、WA、Australia製造のマウスキューブ/ペレットを自由に摂取させた。標準マウス食は、低脂肪含量(およそ5%)に調合され、肉を含んでいない。室内の気流は、1時間あたり12から15回空気交換を行ったが、IVCケージ内の気流は1時間あたり70回交換する割合であった。マウスの尾にマジックで印をつけることにより識別した。動物試験は全て、動物倫理委員会によって承認されたプロトコールにしたがって行った。試験終結時、又はマウスが人道的なエンドポイントに到達した場合、CO
2窒息によりマウスを安楽死させた。
【0147】
方法
ウイルスTCID
50アッセイ
96ウエル組織培養プレート中、コンフルエント単層のSK-Mel-28細胞を、CVA21の10倍の段階希釈(100μL/ウエルを繰返し4つずつ)に接種し、5% CO
2環境中37℃で72時間インキュベートした。マウス血清を、2%ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM中、1:10
2から1:10
8までの範囲で10倍段階希釈した。ウエルを、倒立顕微鏡下、肉眼で細胞変性効果(CPE)に対してスコア付けした。検出可能なCPEを有したウエルを陽性とスコア付けし、ウイルスのエンドポイント力価の50%を、Karber法(Dougherty、1964年)を用いて算出した。
【0148】
ウイルス中和アッセイ
中和抗体の存在に対して試験するために、熱不活化したマウス血清試料を最初に、DMEM (2% FCS)中1:32から1:2048に希釈した。各血清希釈物100マイクロリットルを、CVA21 (100TCID
50) 100μLと、37℃で1時間インキュベートした。この血清/ウイルス混合物50マイクロリットルを、次いで、384ウエルフォーマットにおいてSK-Mel-28細胞上に3つずつプレーティングした。A+IgG (陽性対照)は、Commonwealth Serum Laboratories (Sandoglobulin NF Liquid、バッチ番号:4322800002)から購入した。ウエルを、倒立顕微鏡下、肉眼でウイルス中和の存在(CPEがない)に対してスコア付けした。次いで、中和抗体の力価を、Karber法(Dougherty、1964年)を用いて算出した。
【0149】
メラノーマの免疫適格性B16-ICAM-1マウスモデル
6週齢から8週齢の間のC57BL/6メスマウス(Animal Services Unit、The University of Newcastle、Australia)52匹を、上記に記載したものと同じ条件下で収容した。腫瘍細胞を注射する3日前、マウスの後側腹を、電気バリカンを用いて剪毛して、十分な回復時間を与えた。B16-ICAM-1細胞をトリプシンで回収し、2回洗浄し、無菌PBS中に再懸濁した。調製した細胞の生存性を、トリパンブルー染色及びTC-10自動細胞計数機(Biorad、Hercules、California、USA)で分析することによって評価し、95%超の生存性を有する細胞調製物のみを異種移植に用いた。腫瘍移植前、動物を5%イソフルランで麻酔した。PBS体積50μL中B16-ICAM-1細胞2×10
5個を、マウスの後側腹に腫瘍を単回注射して皮内接種した。
【0150】
実施例1〜3において用いた処置群及びプロトコールの概要は、簡潔に述べると以下の通りである。
【0151】
実施例1において、動物を、対照抗体又は抗PD-1抗体(それぞれ12.5mg/kg)と併用して、食塩水、CVA21 (1×10
8/1回注射)、又はUV-不活化CVA21 (1×10
8/1回注射)のいずれかで処置した。腫瘍細胞埋込み後12日目に処置を開始し、動物に腫瘍内処置(0.1ml)を最初に与え、引き続き、直後に腹腔内抗体(0.2ml)を与えた。12日目に開始し、4コースの治療を3日毎にマウスに与え、腫瘍接種後21日目に終わった。実施例1に用いた処置スケジュールの概要を
図1に示す。
【0152】
実施例2において、動物を、対照抗体又は抗PD-1抗体(それぞれ12.5mg/kg)のいずれかと併用して、食塩水、又はCVA21 (1×10
8TCID
50/1回注射)のいずれかで処置した。腫瘍細胞埋込み後6日目に処置を開始し、動物に腫瘍内処置(0.1ml/1匹)を最初に与え、引き続き、直後に腹腔内抗体(0.2ml/1匹)を与えた。6日目に開始し、4コースの治療を3日毎にマウスに与え、腫瘍接種後15日目に終わった。その後、4週間の期間、毎週の間隔で、動物にCVA21(1×10
8TCID
50/1回注射)の食塩水のさらなる追加の注射を与えた。実施例2に用いた処置スケジュールの概要を
図8に示す。
【0153】
実施例3において、動物を、対照抗体又は抗CTLA-4抗体(それぞれ12.5mg/kg)と併用して、食塩水、CVA21 (1×10
8TCID
50/1回注射)のいずれかで処置した。腫瘍細胞埋込み後7日目に処置を開始し、動物に腫瘍内処置(0.1ml)を最初に与え、引き続き、直後に腹腔内抗体(0.2ml)を与えた。10日目に開始し、間を3日離して4処置をマウスに与え、腫瘍接種後16日目に終わった。実施例3に用いた処置スケジュールの概要を
図12に示す。
【0154】
実施例4において、7、10、13、及び16日目に、マウスを、上記に記載した通り(12.5mg/kg)、マウス抗PD-1、又は抗CTLA-4、又は抗PD-1+抗CTLA-4抗体、又はマッチさせた対照抗体のいずれかと併用して、静脈内食塩水又は静脈内CVA21 (1×10
8TCID
50 [マウス18gと仮定して5.56×10
9TCID
50/kg])のいずれかで処置した。食塩水又はCVA21処置は静脈内投与し、抗CTLA-4、抗PD-1、及び対照抗体は腹腔内投与した(1群あたりn=12〜14)。当業者であれば理解される通り、腹腔内投与は、抗体を血流中に入れる効果的な方法であり、そうして全身投与に好適なモデルを提供する。
【0155】
腫瘍を週2回測定し、腫瘍体積を、球状体の体積V=Π/6.a.b
2に基づいて推定したが、式中、「a」及び「b」はそれぞれ腫瘍の最長及び最短の垂直直径である。毎週ベースで全てのマウスから、伏在静脈の静脈穿刺により採血し、室温で5分間、10000rpmで遠心分離して血清を回収した。血清試料を、さらなる試験まで-80℃で貯蔵した。腫瘍が潰瘍化した場合、又は体重の減少が10%を超えた場合、動物をCO
2窒息によって人道的に安楽死させ、その他の場合はマウスを試験のエンドポイント時に安楽死させた(実施例1では45日目、実施例2では66日目、実施例3では77日目)。
【0156】
【表1】
【0157】
統計学的分析
データは全て、GraphPad Prism v6.0 (GraphPad Software Inc.)を用いて分析及びプロットした。動物データの分析には、GraphPad Prism v6.0 (GraphPad Software Inc.)を用いて、処置群間の腫瘍体積における差を、二元配置のANOVA(反復測定あり)及びボンフェローニの事後検定を用いて比較した。生存曲線の比較を、ログランク(マンテルコックス)検定を用いて行った。
【0158】
結果
免疫適格性マウスモデルにおける併用の腫瘍崩壊ウイルス療法及び抗PD-1免疫療法のin vivo評価
CVA21及び抗PD-1の併用治療の取組みが、メラノーマの免疫適格性マウスモデルにおいて有効であるか否かを評価するために、C57BL/6マウスの後側腹上にマウスB16-ICAM-1腫瘍細胞(2×10
5)を、皮内に埋め込んだ。腫瘍を確立させた後、腫瘍接種後12、15、18、及び21日目に治療を開始した(
図1を参照されたい)。食塩水又はCVA21は示した時間点に腫瘍内投与し、対照抗体又は抗PD-1抗体は腹腔内投与した。マウスを毎日モニタリングし、1週間に最高3回体重測定し、腫瘍体積を週2回、電気ノギスによって測定した。毎週の間隔で、伏在静脈からの血液サンプリングを行った。腫瘍接種後45日目に試験を終了した。
【0159】
抗PD-1又は対照抗体と併用の、食塩水、CVA21、又はUV不活化CVA21いずれかでの処置後の体重
1週間に最高3回、動物の体重を測り、結果を、FileMaker Pro及び記録保持用の自社開発の動物モニタリングデータベースを用いて電子的に記録した(Internal Ref: Experiment #53)。体重の生データを表2から10に見出すことができる。本発明者らの施設の動物飼育倫理委員会の要求を満たすために、体重を、また、動物モニタリングチェックリスト/記録に書き写した。いかなる時間点に処置群とNTCマウスとの間に、平均体重における統計学的な有意差は観察されなかった(Holm-Sidak法を用いて複数の比較用に補正した複数のt検定)が、31日目のUV-CVA21+抗PD-1群は例外であった(Prism 6 for Mac OS X Version 6.0c、GraphPad Software、La Jolla California USA、www.graphpad.com)。動物はCVA21及び抗PD-1療法に良好に耐容したと思われ、観察できる処置からの毒性はなかった。合計9匹の動物を、腫瘍の潰瘍化及び/又は10%を超える体重減少のため安楽死させた。体重の減少は、殆どの場合、腫瘍の潰瘍化及び関連する腫瘍負荷と関係していた。
【0160】
【表2】
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
【表5】
【0164】
【表6】
【0165】
【表7】
【0166】
【表8】
【0167】
表9、10、及び11は、本明細書の図の項に含まれる。
【0168】
抗PD-1又は対照抗体と併用の、食塩水、CVA21、又はUV不活化CVA21いずれかでの処置後の腫瘍体積データ
腫瘍体積を週2回、電気ノギスを用いて測定した。31日目までに、食塩水+対照抗体で処置したマウスは全て、腫瘍体積腫瘍の潰瘍化によって証明される進行性疾患のため、安楽死させた。
図4に示す通り、UV-CVA21+対照抗体で処置した腫瘍における抗腫瘍活性は殆ど観察されなかった。35日目までに、腫瘍体積は全て増大し、人道的な最大のエンドポイントに到達し、安楽死を必要とした。最初の腫瘍開始体積に高度の変動性が存在し、活性CVA21+抗PD-1に最も好適な対照は、食塩水+抗PD-1よりむしろUV-CVA21+抗PD-1処置群とみなされた(治療が完了する前に3匹が安楽死を必要とした)。UV-CVA21+抗PD-1とCVA21+抗PD-1処置との間の24日目の腫瘍体積の比較により、両側のt検定を用いて有意差があったことが明らかになった(p<0.0039)。処置の活動期の間、UV不活化CVA21と比較して、生のCVA21+抗PD-1群におけるマウス間の腫瘍の有意な低減が最も顕著であり、最終的に殆どの群で腫瘍が再発した。
【0169】
免疫適格性マウスからのウイルスの排除、及び抗CVA21中和抗体のレベルの増大
12日目にウイルスを腫瘍内注射し、およそ45分後、ウイルス処置したマウスの血清中に感染性のCVA21が検出された。CVA21でさらに腫瘍内処置したにもかかわらず、血中を循環するウイルスは、第1週以内19日目までに排除された。生のCVA21で処置した動物は、最高レベルのCVA21中和抗体を生成し、26日目に最大に到達した。これらのマウスが機能的な免疫系を有していたことを考慮すると、血流からのCVA21の排出は予想外ではなかった。驚くべきことに、抗PD-1抗体の投与は抗ウイルス免疫応答を増強すると思われ、これらのマウスは1:228中和単位を超える抗CVA21抗体のレベルの増大を示し、45日目まで続いた。これは、より大きな度合いのウイルス複製及び後続の抗ウイルス抗体の生成を可能にする、抗PD-1抗体の作用の結果であり得る。この知見から、増強されたレベルの抗ウイルス抗体が生成されただけでなく、より高レベルの特異的な抗腫瘍抗体がこのプロセスにおいて産生された可能性が生じ、このような抗腫瘍抗体は、腫瘍負荷を低減する結果として臨床上の利点をもたらし得る(抗体依存的な細胞の細胞毒性)。
【0170】
抗PD-1と併用のCVA21、対、食塩水及び抗PD-1、で処置したマウスにおける生存の増強
抗PD-1抗体と併用のCVA21は、食塩水+対照抗体群と比較して、全生存における統計学的に有意な改善を実証した(p=0.014ログランク[マンテルコックス]検定)(
図7E)。食塩水+抗PD-1と食塩水+対照抗体群とを比較すると、統計学的な有意差はなかった。これは、対照抗体と抗PD-1抗体との間に、生存に対する差がなかったことを示唆する。食塩水+抗PD-1の生存曲線を、CVA21+抗PD-1処置群と比較した場合、統計学的な差はなかった(p=0.4901ログランク[マンテルコックス]検定)(
図7B)。この知見は、生存の主な効果は優先的に抗PD-1ベースであったことを示唆するが、抗PD-1を伴った場合、UV不活化CVA21と活性CVA21群との間を比較すると、生のCVA21がさらなる有意な生存時間の利点をもたらしたことが明らかになったのは若干意外であった。開始の腫瘍の変動性が高度であり、初期に安楽死させたため、相対的な延命効果を厳密に分析することは極めて困難であった。しかし、食塩水+抗PD-1群と比較した、生のCVA21+抗PD-1処置群の注目すべき延命効果の傾向が、活性な処置期間の間に観察された。
【0171】
考察
生のCVA21を抗PD-1抗体と併用して使用すると、食塩水+対照抗体処置群と比較して最良の全生存をもたらすことを、結果は示した。CVA21を抗PD-1抗体と併用すると、食塩水+対照抗体群と比較して全生存の統計学的に有意な改善を実証した(p=0.014ログランク[マンテルコックス]検定)(
図7E)。食塩水+抗PD-1と食塩水+対照抗体群とを比較すると、統計学的な有意差はなかった。これは、対照抗体と抗PD-1抗体との間に、生存に対する差がなかったことを示唆する。食塩水+抗PD-1の生存曲線を、CVA21+抗PD-1処置群と比較すると、有意差がなかった(p=0.4901ログランク[マンテルコックス]検定)(
図7B)。この知見は、本発明者らの限られた群のサイズに基づいて、生存の主な効果は優先的に抗PD-1ベースであったが、CVA21を加えても、食塩水ベースと比較して有意に増強しなかったことを示唆する。興味深いことに、抗PD-1を伴った場合、UV不活化CVA21と活性CVA21群との間の比較は、生のCVA21がわずかに長い生存時間をもたらし、統計学的に有意であったことを示した。これは、積極的に複製するCVA21、及び腫瘍細胞の溶解は、不活化したウイルス粒子と比較して、抗腫瘍免疫性を、免疫賦活性抗PD-1抗体の存在下でより有効に刺激し得るという本発明者らの仮説と整合的である。UV不活化CVA21+抗PD-1抗体群の生存は、UV不活化CVA21+対照抗体、又はCVA21+対照抗体群の生存と統計学的に差がなかった。
【0172】
本試験の重要な知見は、CVA21+抗PD-1で処置した担癌マウスは、腫瘍成長の減速及び腫瘍の潰瘍化の低減に関連する全体の延命効果を示したことである。処置の活性期の間、CVA21+抗PD-1抗体で処置した動物は、対照群に対して疾患の進行の緩徐化を示した。
【0173】
実施例2:免疫賦活抗体抗PD-1と併用の腫瘍崩壊CVA21ウイルス療法:腫瘍再負荷試験
本試験は、実施例1に記述した実験の延長であり、悪性メラノーマのB16-ICAM-1マウスモデルにおける、免疫賦活抗体抗PD-1と併用の、コクサッキーウイルスA21(CVA21)腫瘍崩壊ウイルス療法の有効性を調査するものである。実施例2のタイムライン表示を
図8に示す。実施例1と異なり、実施例2の全体のタイムラインは66日であり、以下により詳しく記載する「腫瘍再負荷」が含まれた。実施例2で用いる材料と方法は、別の点では実施例1において記載した通りであったが、実施例2に用いるマウスは4週齢から6週齢の間であった。
【0174】
マウスの右後側腹上にB16-ICAM-1腫瘍を皮内に埋め込み(細胞2×10
5個)、6日間確立させた後、治療を開始した。6、9、12、及び15日目、マウスを、マウス抗PD-1抗体又はマッチさせた対照抗体(12.5mg/kg)のいずれかと併用の、食塩水又はCVA21(1×10
8TCID
50[5.56×10
9TCID
50/kg])のいずれかで処置した。食塩水又はCVA21処置は腫瘍内に投与し、抗PD-1及び対照抗体は腹腔内投与した(1群あたりn=12)。その後、4週間の期間、毎週の間隔で、食塩水又はCVA21(1×10
8TCID
50[5.56×10
9TCID
50/kg])のさらなる追加の注射を投与した。原発のB16-ICAM-1メラノーマ腫瘍を、デジタルノギスを用いて2日から3日毎に定期的にモニタリングし、腫瘍体積の算出は腫瘍のx/y平面における2本の最長の直交軸を用いて球状体に対する式に基づいた。潰瘍化、10%超の体重減少、又は2500mm
3を超える腫瘍体積の徴候を示す腫瘍を有する動物を安楽死させた。
【0175】
31日目、残りの動物にB16マウスメラノーマ細胞(ヒトICAM-1受容体がないもの)1×10
5個を皮内に再負荷して、抗PD-1治療と併用のCVA21ウイルス療法後にマウスが頑強な抗腫瘍免疫応答を発症させたか否かを決定した。再負荷した動物37匹中、全動物が触知できる腫瘍を最終的に発症したが、B16腫瘍成長の開始が、既存のB16-ICAM-1腫瘍のCVA21+抗PD-1治療により遅れたことが示される傾向があった。
【0176】
抗PD-1抗体と併用のCVA21で処置した動物は、食塩水+抗PD-1抗体及び食塩水+対照抗体群における動物と比較して、生存における統計学的に有意な延長を示し(それぞれ、生存の中間値60日対45日対28日)、CVA21+抗PD-1は臨床上の設定において有益であり得ることが示唆された。CVA21+抗PD-1の使用は、メラノーマのこの免疫適格性マウスモデルにおいて良好に耐容されることが見出され、試験した薬剤に関する有害事象はなかった。
【0177】
抗PD-1又は対照抗体と併用の、食塩水又はCVA21いずれかでの処置後の体重
個々の動物の体重を収集し、実施例1に記載した通りに分析した。あらゆる時間点で、処置群とNTCマウスとの間に、平均体重における統計学的な有意差は観察されなかった(結果は示さず、Holm-Sidak法を用いて複数の比較用に補正した複数のt検定)[Prism 6 for Mac OS X Version 6.0c、GraphPad Software、La Jolla California USA、www.graphpad.com]。動物はCVA21及び抗PD-1治療に良好に耐容したと思われ、処置からの観察できる毒性はなかった。体重の減少は大多数の場合、腫瘍の潰瘍化及び関連する腫瘍負荷と関係していた。
【0178】
B16-ICAM-1一次小節の腫瘍体積
腫瘍体積を週3回、電気ノギスを用いて測定した。42日目までに、食塩水+対照抗体で処置したマウスは全て、腫瘍体積腫瘍の潰瘍化によって証明される進行性疾患のため、安楽死させた。
図9に示す通り、食塩水+対照抗体処置した腫瘍における抗腫瘍活性は殆ど観察されなかった。腫瘍体積は全て増大し、人道的な最大のエンドポイントに到達し、安楽死を必要とした。CVA21+抗PD-1処置群は最良の応答を示し、腫瘍開始は顕著に遅延し、6匹だけが、試験の後半に向けて原発腫瘍の成長の徴候を示した。
【0179】
B16二次小節の腫瘍体積
抗PD-1処置と併用のCVA21治療後に、頑強な抗腫瘍の免疫応答が発生したか否かを確立するために、B16マウスメラノーマ細胞をマウスに再負荷した。B16細胞にはヒトICAM-1受容体がなく、したがってCVA21治療に抵抗性である。これらの細胞は、B16-ICAM-1細胞株を産生するのに用い、原発腫瘍の後続の腫瘍崩壊を生じた可能性がある抗腫瘍の免疫応答の存在を同定するのに用いたB16細胞に抗原性が似ている。
図10に見られる通り、B16腫瘍は、B16細胞を再負荷した全てのマウスに最終的に発症したが、45日目、食塩水+対照抗体群の平均腫瘍体積は、食塩水+抗PD-1、CVA21+対照抗体、及びCVA21+抗PD-1抗体群より統計学的に大きかった(二元配置のANOVA)。
【0180】
抗PD-1と併用のCVA21、対、食塩水及び抗PD-1、で処置したマウスにおける生存の増強
抗PD-1抗体と併用のCVA21は、食塩水+対照抗体群と比較して、全生存における統計学的に有意な改善を実証した(p<0.0001ログランク[マンテルコックス]検定)(
図11)。CVA21+対照抗体及び食塩水+対照抗体群を比較すると、統計学的な有意差はなかった。食塩水+抗PD-1の生存曲線をCVA21+抗PD-1処置群と比較した場合、統計学的な差が存在した(p=0.0026ログランク[マンテルコックス]検定)(
図11)。この知見は、CVA21は抗PD-1抗体と併用して使用すると、有意な生存効果をもたらしたことを示唆する(食塩水+抗PD-1及びCVA21+抗PD-1に対してそれぞれ生存の中間値は、45日対60日)。
【0181】
考察
実施例2の結果は、CVA21を抗PD-1抗体と併用して使用すると、食塩水+抗PD-1抗体処置を投与した動物群と比較して、担癌マウスの全生存を改善したことを示した。CVA21を抗PD-1抗体と併用すると、食塩水+対照抗体群と比較して、全生存における統計学的に有意な改善を実証した(p<0.0001ログランク[マンテルコックス]検定)(
図11)。CVA21の抗PD-1との併用の処置レジメンは良好に耐容され、試験物品に起因する有害事象はなかった。本試験の主な知見は、CVA21+抗PD-1で処置した担癌マウスは、腫瘍成長の減速に関連する全体の延命効果を示したことであった。CVA21+抗PD-1抗体で処置した動物は、対照群に対して疾患の進行の緩徐化を示し、二次性B16腫瘍での再負荷に対して、より抵抗性であった。
【0182】
実施例3:免疫賦活抗体抗CTLA-4と併用の腫瘍崩壊CVA21ウイルス療法:腫瘍再負荷試験
本試験は、悪性メラノーマのB16-ICAM-1マウスモデルにおける免疫賦活抗体抗CTLA-4と併用の、コクサッキーウイルスA21(CVA21)腫瘍崩壊ウイルス療法の有効性を調査するものである。
【0183】
マウスの右後側腹上にB16-ICAM-1腫瘍を皮内に埋め込み(細胞2×10
5個)、7日間確立させた後、治療を開始した。7、10、13、及び16日目、マウスを、マウス抗CTLA-4抗体又はマッチさせた対照抗体(12.5mg/kg)のいずれかと併用の、食塩水又はCVA21のいずれか(1×10
8TCID
50[マウス18gと仮定して、5.56×10
9TCID
50/kg])で処置した。食塩水又はCVA21処置は腫瘍内に投与し、抗CTLA-4及び対照抗体は腹腔内投与した(1群あたりn=12)。原発B16-ICAM-1メラノーマ腫瘍を、デジタルノギスを用いて2日から3日毎に定期的にモニタリングし、腫瘍の体積を腫瘍のx/y平面における2本の最長の直行軸を用いて球状体に対する式に基づいて算出した。潰瘍化、10%超の体重減少、又は2500mm
3を超える腫瘍体積の徴候を示す腫瘍を有する動物を安楽死させた。B16-ICAM-1担癌マウスにおけるCVA21+抗CTLA-4治療は、他の処置群全てと比較して耐久性のある腫瘍の退行をもたらした。
【0184】
37日目、残りの動物にB16マウスメラノーマ細胞(ヒト-ICAM-1受容体がない)2×10
5個を皮内に再負荷して、抗CTLA-4治療と併用のCVA21ウイルス療法後にマウスが頑強な抗腫瘍免疫応答を発症したか否かを決定した。再負荷した動物34匹中、6匹以外の全ての動物が最終的に触知できる腫瘍を発症した(食塩水+抗CTLA-4、2匹、及びCVA21+抗CTLA-4、4匹は依然として腫瘍なしであった)。
【0185】
抗CTLA-4抗体と併用してCVA21で処置した動物は、食塩水+対照抗体群における動物と比較して、生存における統計学的に有意な延長を示し(生存の中間値72日対39日)、CVA21及び抗CTLA-4抗体単独の単一薬剤も同様であった。CVA21+抗CTLA-4と抗CTLA-4単一薬剤との間に統計学的な差はなかったが、CVA21+抗CTLA-4併用は、CVA21単独に対して生存の改善をもたらし(生存の中央値72日対56.5日)、この併用は臨床上の設定において有益であり得ることが示唆された。CVA21+抗CTLA-4の使用は、このメラノーマの免疫適格性マウスモデルにおいて良好に耐容されることが見出され、試験した薬剤に関する有害事象はなかった。
【0186】
抗CTLA-4又は対照抗体と併用の、食塩水又はCVA21いずれかでの処置した後の体重
個々の動物の体重を収集し、実施例1に記載した通りに分析した。あらゆる時間点で、処置群とNTCマウスとの間に、平均体重における統計学的な有意差は観察されなかった(結果は示さず、Holm-Sidak法を用いて複数の比較用に補正した複数のt検定) [Prism 6 for Mac OS X Version 6.0c、GraphPad Software、La Jolla California USA、www.graphpad.com]。動物はCVA21及び抗CTLA-4治療に良好に耐容したと思われ、処置からの観察できる毒性はなかった。体重の減少は大多数の場合、腫瘍の潰瘍化及び関連する腫瘍負荷と関係していた。
【0187】
B16-ICAM-1一次小節の腫瘍体積
腫瘍体積を週2回、電気ノギスを用いて測定した。45日目までに、腫瘍体積及び腫瘍の潰瘍化によって証明される進行性疾患のため、食塩水+対照抗体処置したマウスは全て安楽死させた。
図13に示す通り、食塩水+対照抗体処置した腫瘍における抗腫瘍活性は殆ど観察されなかった。腫瘍体積は全て増大し、人道的な最大のエンドポイントに到達し、安楽死を必要とした。CVA21+抗CTLA-4処置群は最良の応答を示し、腫瘍開始における注目すべき遅延があり、試験の後半の間原発腫瘍の成長の徴候を示した動物はなかった。完全な腫瘍の退行とそれに続く永続的な応答が、いずれかの単独療法で処置した動物の60%に観察された。より興味深いことに、CVA21+抗CTLA-4併用治療で処置した動物全てが、原発腫瘍に対する完全な拒絶反応を実証した。
【0188】
B16二次小節の腫瘍体積
抗CTLA-4処置と併用のCVA21治療後に、頑強な抗腫瘍の免疫応答が発生したか否かを確立するために、B16マウスメラノーマ細胞をマウスに再負荷した。B16細胞にはヒトICAM-1受容体がなく、したがってCVA21治療に抵抗性である。これらの細胞は、B16-ICAM-1細胞株を得るのに用い、原発腫瘍の後続の腫瘍崩壊を生じた可能性がある抗腫瘍の免疫応答の存在を同定するのに用いたB16細胞に抗原性が似ている。77日目、抗CTLA-4+CVA21併用治療で処置した動物は、腫瘍の再負荷に対して40%の保護を実証し、それに比べて単一薬剤の抗CTLA-4抗体で処置した動物では25%の保護だった(
図14)。
【0189】
抗CTLA-4と併用のCVA21、対、食塩水及び抗CTLA-4、で処置したマウスにおける生存の増強
試験中の動物の全生存。食塩水で処置した動物に対して比較した場合、全処置群が動物の全生存を有意に延長した。単一薬剤の抗CTLA-4(p=0.0068)、単一薬剤のCVA21(p=0.0067)、及びCVA21+抗CTLA-4+CVA21(p=<0.0001)。抗CTLA-4抗体と併用のCVA21は、食塩水+対照抗体群と比較して、全生存における統計学的に有意な改善を実証した(p<0.0001ログランク[マンテルコックス]検定)(
図15)。CVA21+対照抗体と食塩水+対照抗体群とを比較すると、統計学的な有意差はなかった。食塩水+抗CTLA-4の生存曲線をCVA21+抗CTLA-4処置群と比較すると、統計学的な差があった(p=0.0026ログランク[マンテルコックス]検定)(
図15)。この知見は、CVA21を、抗CTLA-4抗体と併用して使用すると、有意な延命効果をもたらしたことを示唆する(食塩水+抗CTLA-4及びCVA21+抗CTLA-4それぞれに対して生存の中間値45日対60日)。試験中の動物の生存の中間値を
図15(B)に示す。CVA21+抗CTLA-4の併用治療を投与した動物は、生存の中間値が最長であった(72日)。
【0190】
考察
実施例3の結果は、CVA21を抗CTLA-4抗体と併用して使用すると、CVA21+対照抗体処置を投与した動物群と比較して、担癌マウスの全生存を改善したことを示した。CVA21+抗CTLA-4処置したB16-ICAM-1腫瘍は全て、77日までに退行した。CVA21を抗CTLA-4抗体と併用すると、食塩水+対照抗体群と比較して、全生存における統計学的に有意な改善を実証した(p<0.0001ログランク[マンテルコックス]検定)(
図15)。45日目までに、食塩水+対照抗体処置したマウスは全て、腫瘍の進行及び/又は潰瘍化のため、安楽死させた。抗CTLA-4抗体と併用のCVA21の処置レジメンは良好に耐容され、試験物品に起因する明らかな有害事象はなかった。
【0191】
実施例3において提示する本試験の主な知見は、CVA21+抗CTLA-4で処置した担癌マウスは、B16-ICAM-1腫瘍成長の減速に関連する全体の延命効果を示したことであった。CVA21+抗CTLA-4抗体で処置した動物は、対照群に対して疾患の進行の阻害を示し、単一薬剤で処置した群と比較してB16二次腫瘍での再負荷に対して、より抵抗性であった。
【0192】
実施例4:免疫賦活抗体抗PD-1、抗CTLA-4、及び抗PD-1+抗CTLA-4腫瘍試験と併用の、静脈内腫瘍崩壊CVA21ウイルス療法
本試験は、悪性メラノーマのB16-ICAM-1マウスモデルにおける、免疫賦活抗体抗PD-1、抗CTLA-4、及び抗PD-1+抗CTLA-4と併用の、コクサッキーウイルスA21(CVA21)腫瘍崩壊ウイルス療法の有効性を調査する。
【0193】
マウスの右後側腹上に、B16-ICAM-1腫瘍を皮内に埋め込み(細胞2×10
5個)、7日間確立させた後、治療を開始した。7、10、13、及び16日目、マウスを、マウス抗PD-1又は抗CTLA-4又は抗PD-1+抗CTLA-4抗体又はマッチさせた対照抗体いずれか(12.5mg/kg)と併用の、静脈内食塩水又は静脈内CVA21のいずれか(1×10
8TCID
50[マウス18gと仮定して、5.56×10
9TCID
50/kg])で処置した。食塩水又はCVA21処置は腫瘍内投与し、抗CTLA-4及び対照抗体は腹腔内投与した(1群あたりn=12〜14)。原発B16-ICAM-1メラノーマ腫瘍を、デジタルノギスを用いて2日から3日毎に定期的にモニタリングし、腫瘍の体積を腫瘍のx/y平面における2本の最長の直行軸を用いて球状体に対する式に基づいて算出した。潰瘍化、10%超の体重減少、又は2500mm
3を超える腫瘍体積の徴候を示す腫瘍を有する動物を安楽死させた。
【0194】
B16-ICAM-1一次小節の腫瘍体積
腫瘍体積を週2回、電気ノギスを用いて測定した。
図16に示す通り、試験27日目、食塩水+対照抗体処置した腫瘍における抗腫瘍活性は殆ど観察されなかった。単一薬剤群は全て(CVA21、抗PD-1、及び抗CTLA-4)、食塩水群と比較して有意な腫瘍の低減を示した。併用処置群は全て、食塩水群と比較して腫瘍の低減を示したが、全般的に単一薬剤処置に関して有意にレベルが高かった。
図16Bにおいて、試験の時間経過全体を通して平均腫瘍体積を分析することで、食塩水の対照動物と比較して、単一薬剤及び併用群の両方に有意な腫瘍の低減がやはり示された。注目すべき傾向が同定され、抗PD-1及びCVA21の併用は、単一薬剤のCVA21及び抗PD-1処置単独と比較して、腫瘍発生の動態の低減を示した。腫瘍発生の個々のスパイダープロットを
図16Cに表す。データは、食塩水対照群と比較して、全処置群における触知できる腫瘍発生の発生率における有意な低減を示す。特に注目すべきは、単一薬剤の抗PD-1又は抗CTLA-4で処置した動物における検出できる腫瘍の存在と比較した、静脈内CVA21投与と併用した場合の抗PD-1及び抗CTLA-4両方における腫瘍の発生率の低下である。CVA21+抗PD-1+抗CTLA-4の併用治療で処置した動物は全て、試験27日目に原発腫瘍の発生に対する完全な拒絶を実証したという観察は、より驚くべきことである。
【0195】
実施例5:遠位腫瘍に対するCVA21の腫瘍内注射の全身効果
腫瘍内(i.t.)注射後、CVA21はICAM-1発現性腫瘍細胞に優先的に感染し、腫瘍細胞の溶解、及び全身性の免疫媒介性抗腫瘍応答をもたらす。進行メラノーマ患者における、i.t.送達されるCVA21のフェーズII試験は、注射した病変及び遠位の非注射の病変の両方における抗腫瘍活性を強調した(
図17)。
【0196】
CALM試験(後期メラノーマにおけるCAVATAK(商標))は、処置又は非処置の切除不能ステージIIIC-IVM1cメラノーマを有する患者57人において、CVA21の腫瘍内投与の有効性及び安全性を調査するものであった。各患者に、最大体積4.0mL中、合計用量最高3×10
8.0TCID50のCVA 21(70kgの患者に対して約4.5×10
6TCID50/kg)を、1、3、5、8、22、43、64日目及びさらなる
3週間間隔で(最大10セットの注射まで)、疾患の進行又は過剰の毒性の発生が確認されるまで、i.t.投与により投与した。計画された各来所時の注射で、可能であれば、最大病変(複数可)から始めて(CVA21 2.0mLを2.5cm超の腫瘍中に注射、CVA21 1.0mLを1.5から2.5cm中に、CVA21 0.5mLを0.5から1.5cm中に)最大4.0mLまで、必要であれば超音波ガイドを用いて、用量多分割(hyper-fraction)のパターンで複数の病変に注射した。注射しようとする各腫瘍の長さを測定し、各腫瘍中に注射しようとするCVA21の体積を決定する。これらの体積の和が、投与に必要なCVA21の合計体積である。投与しようとするCVA21の最大体積は4.0mLである。CVA21での開始の注射後、直径<0.5cmまで低減したあらゆる注射病変に、病変が完全に消散するまで、記載した処置スケジュールにしたがってCVA21 0.1mLを注射した。6か月に免疫関連の無増悪生存期間(irPFS)を示す患者又はそれより良好な患者を、さらなる9シリーズの注射に適格とした。主要な適格基準は、18歳以上、ECOG 0〜1、及び少なくとも1つの注射可能な皮膚の、scの、又は結節状の腫瘍>1.0cmであった。主要エンドポイントが、処置後6か月のirPFSを有する評価できる患者54人中9人超で達成され、二次エンドポイントには1年生存及び観察可能な奏功率が含まれた。2段階のSimonのミニマックスデザインを使用した。ステージ1の患者35人を処置し、無意味条項(futility clause)は、これらの患者をステージ2に進行させる基準である、固形腫瘍における修正された応答評価 (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) (RECIST 1.1;Eisenhauerら、2009年) 基準によって評価された3以上の客観的な応答の観察を必要とした(完全又は部分的、それぞれCR又はPR)。さらなる患者22人をステージ2に登録した。
【0197】
試験の主要エンドポイントは、6か月目にirPFSを示す評価できる患者57人中21人(38.6%)で実現され、irPFSの中央値は4.2か月(mos)であった。全奏功率(irRECIST)は28.1%(評価できる患者57人中16人)、6か月以上の耐久性の応答率は19.3%(57人中11人)であった。応答までの時間の中央値は2.8か月、1年生存率は75.4%であった(57人中43人)。フォローアップの中間値およそ16.5か月後、応答者における応答期間の中間値、及び全患者に対する全生存(OS)の中央値には到達しなかった。最も一般的な有害事象(AE)はグレード1の疲労、悪寒、局所注射部位反応、及び発熱であった。製品関連のグレード3又は4のAEは観察されなかった。
【0198】
患者における、注射した病変及び遠位の非注射の病変両方における抗腫瘍活性は明らかであり(
図17)、後者の観察は特に、全身性の免疫媒介性抗腫瘍応答と一致した。CVA21媒介性の非注射の遠位の転移病変活性は、血清IL-8及びg-IFNの上昇したレベルという新規の血清サイトカインシグナチャーの可能性と関連付られたが、このことから、潜在的な活性全身性抗腫瘍免疫応答が生じたことが示される。
【0199】
転移性メラノーマを有する患者におけるプログラム死1(PD-1)及びCTLA-4の遮断は、腫瘍誘発性T細胞抑制の逆転に関与するメカニズムを介した実質的な腫瘍応答をもたらす。本明細書において実証する通り、CVA21及びPD-1又は抗CTLA-4の併用の遮断は抗腫瘍応答を増強し、それにより臨床活性の改善をもたらす。
【0200】
実施例6:静脈内投与したCVA21は腫瘍細胞の遺伝子発現変化を誘発する
Balb-C SCIDマウスの左側腹上にSK Mel28細胞を埋め込んだ(0日目)。尾静脈中への注射により、マウスにCVA21又は食塩水のいずれかを静脈内投与した(14日目)。処置後3時間、6時間、24時間、及び72時間にマウスを安楽死させ、ウイルス及び細胞の遺伝子プロファイリング用に腫瘍を切除した。CVA21で処置したマウスからの腫瘍細胞に、インターフェロンg誘導性タンパク質10(IP-10)及びPD-L1の上方制御が観察された(
図19)。
【0201】
細胞、培養条件、及びウイルスは、全般的に実施例1に記載した通りであった。6〜8週齢のSCID-BALB/cメスマウスをARC(Perth、Australia)から得、大学の動物維持施設内で、SPF条件下で収容した。SK-Mel-28細胞を、10%FCSを含むDMEM中で増殖させた。細胞を収集し、滅菌PBS中で2回洗浄した。細胞生存性>95%には異種移植が必要であったため、細胞の生存性をトリパンブルー染色によって評価した。細胞を滅菌PBS中に再懸濁し、氷上に維持して生存性を維持した。異種移植前、マウスをイソフルラン吸入によって麻酔した(4L/分、2%に維持)。マウスの後側腹中に、SK-Mel-28細胞2×10
6個を皮下注射した。マウスを毎日肉眼でモニタリングし、3日から4日毎に体重測定した。腫瘍の発生を、触知により3日から4日毎にモニタリングした。電気ノギスを用いて腫瘍を測定し、腫瘍体積の推定値は上記に記載した通りであった(実施例1)。
【0202】
腫瘍が触知可能になったら(体積およそ50mm
3)、マウスをイソフルランで麻酔し(4L/分、2%に維持)、CVA21 1×10
7TCID
50又は滅菌PBS(合計体積100μL)を眼窩後の経路によって投与した。各腫瘍モデルからのマウス4匹(そのうち2匹はPBSで処置し、2匹はCVA21で処置した)を引き続き、処置後3、6、24、及び72時間に、CO
2窒息によって安楽死させた。心穿刺によって血液を採取した。腫瘍を切除し、RNAを安定化させるために4℃のRNALater(QIAGEN)中に貯蔵した。血清(開始時の希釈1:10〜1:100)を、以下の通り、3回ずつ、エンドポイントウイルス感染性アッセイによって感染性ウイルスの存在に対してアッセイした。
【0203】
感染した試料中のCVA21の力価を決定するために、SK-Mel-28細胞を96ウエルプレートに接種し、2%FCSを含むDMEM中、50〜80%の培養密度で増殖させた。細胞の単層を、精製したCVA21の10倍段階希釈で、2%FCSを含むDMEM中3つずつ又は4つずつ接種し、5%CO
2環境中、37℃で72時間インキュベートした。鏡検時にCPEを示したウエルを陽性とスコア付けした。50パーセント感染のエンドポイント力価を、Karber法(Dougherty、1964年)を用いて算出した。全RNAを、RNEasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて、製造元のプロトコールにしたがって、異種移植片組織から抽出した。ウイルスRNAを、Viral RNA Mini Kit(QIAGEN)を用いて、製造元のプロトコールにしたがって、血清から抽出した。
【0204】
腫瘍及び血清試料から抽出したRNAを分析して、リアルタイム定量RT-PCRを用いて存在するCVA21 RNAのレベルを決定した。1ステップRT-PCRを、SuperScript III Platinum One-Step qRT-PCR Kit (Invitrogen)を用いて行った。プライマー及びプローブは、CVA21(Kuykendall)ゲノムのVP3領域に特異的であり、Primer Express 1.5 Software (Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いてデザインされた。フォワードプライマー(KKVP3fwd)に対する配列は5'-GAGCTAAACCACCAACCAATCG-3'であり、リバースプライマー(KKVP3rev)は5'-CGGTGCAACCATGGAACAA-3'であった。使用した、FAM標識化したプローブ(KKVP3)は6FAMCACACACATCATCTGGGA-MGBであった。25μLの体積中、反応混合物は、1×SuperScript反応混合物、フォワードプライマー500nM、リバースプライマー500nM、プローブ250nM、ROX 500nM、SuperScript III RT/Platinum Taq Mix 0.5μL、及び抽出したRNA 5μLを含んでいた。RT-PCR反応は、ABI Prism 7000 Sequence Detection System (Applied Biosystems)を用いて行った。サイクル条件は、60℃30分、引き続き95℃5分、次いで95℃5秒及び60℃1分を50サイクルであった。試料を、既知濃度の予め確認したCVA21 RNA標準に対して定量し、結果を、血清RNAに対して等価のTCID
50/mL又は異種移植組織RNAに対してTCID
50/mgとして記録した。
【0205】
cRNAを増幅し、ビオチン-dUTP標識を組み入れた。SK-Mel-28異種移植片から得たビオチン化cRNA試料を、製造元のプロトコールにしたがって、22000超の転写物に対応しているHumanRef-8 v2 Expression BeadChips (Illumina)にハイブリダイズさせた。ビーズチップアレイを、BeadStation 500 System (Illumina)を用いてスキャニングした。マイクロアレイのデータを、GeneSpring 7.0ソフトウエア(Silicon Genetics、USA)を用いて分析した。データセットを、測定値<0.01から0.01を設定することによって変換し、次いでチップ毎に50パーセンタイルに、及び遺伝子毎に中央値に、さらに標準化した。各異種移植片モデル内で、各処置(PBS及びCVA21)並びに時間点(3、6、24、及び72時間)に対して得た各ペアのマウスからのデータセットを、複製-試料として分析した。複製-試料の少なくとも一方において、遺伝子を、陽性遺伝子発現(シグナル強度)に基づいてフィルターにかけた。
【0206】
細胞内ウイルス複製は、宿主の免疫系活性の微妙なバランスの標的化破壊(targeted disruption)を開始させる、魅力的なプロセスである。
図19において、CVA21の、マウスモデルにおけるヒトメラノーマ異種移植片への全身送達は、特に全身投与後24時間に始めて眼窩後の経路により、試験の期間を通して腫瘍組織内のCVA21特異的RNAのレベルを増大することによって証明される通り、著しい標的化ウイルス複製を誘発した。CVA21後3、6、24、及び72時間に遺伝子発現を分析することで、腫瘍の微小環境内のインターフェロン応答遺伝子の、特に、IFN-gに暴露された細胞から分泌されるケモカインであり、活性化T細胞を組織炎症部位中にリクルートする上で重要な役割を果たす、インターフェロン誘導タンパク質-10(IP-10)の著しい上方制御が明らかになった。活性化T細胞により提供されるIFN-gは免疫チェックポイント分子を上方制御することが分かっているので、PD-L1遺伝子の発現レベルをモニタリングした。
図19に示す通り、CVA21の複製は全身投与後24〜72時間にピークに到達し、平行してIP-10及びPD-L1発現の増大が伴い、IFN-g活性が示された。メラノーマ腫瘍組織における標的化CVA21複製によって誘発される免疫アジテーション(immune agitation)に基づいて、本発明者らは、この免疫賦活性の事象は、両薬剤を併用して用いた場合に、免疫チェックポイント遮断の抗腫瘍活性を増大し得ることを予測する。
【0207】
参考文献