特許第6857507号(P6857507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857507
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/02 20060101AFI20210405BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20210405BHJP
   F24C 3/00 20060101ALI20210405BHJP
   F24C 3/08 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F24C3/02 J
   A47J37/06 366
   F24C3/00 L
   F24C3/02 Q
   F24C3/02 G
   F24C3/08 V
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-19336(P2017-19336)
(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公開番号】特開2018-128150(P2018-128150A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宏治
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−232945(JP,A)
【文献】 実開昭55−057601(JP,U)
【文献】 実開昭54−077270(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00−3/08
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方開口部を有するグリル庫と、
グリル庫の前方開口部を開閉するグリル扉と、
グリル庫内に収納される調理具の下方に、炎孔がグリル庫の側壁に向かって開口するように配設されたグリルバーナと、を備え、
グリル庫の底壁には、グリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられ
グリル庫内の下方域には、グリルバーナを上方から覆い、調理具の配設部とグリルバーナの配設部とを上下に区画するバーナカバーが設けられており、
炎孔と対向するバーナカバーの側方部には、炎孔からグリル庫の側壁に向かって噴出されるガスの燃焼排気が上方に向かって流れるように熱気導出部が開設されており、
グリル庫の底壁に設けられた通気部は、バーナカバー内に位置する加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
通気部は、グリル庫の底壁であって、炎孔よりも内側方に設けられている加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
グリル庫の底壁よりも下方に、底壁と離間し、且つ通気部と対向するように配設された保護板が設けられている加熱調理器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
グリル庫内のガスの燃焼排気を外部に排出する排気口を有し、
少なくともバーナカバーよりも上方のグリル庫内の上方域を形成する後壁は、グリル庫内の燃焼排気が後壁から排気口に流出しないように閉塞されており、
グリル庫の上壁は、グリル庫内の燃焼排気を排気口へ導出する排気通路が形成されるように二層構造を有し、
調理具に面する下方の第1上壁には、グリル庫内と排気通路とを連通させる熱気排出部が設けられている加熱調理器。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
グリルバーナは、調理具の下方に配設された下火バーナのみからなる加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。特に、本発明は、グリルを備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリル庫内の上壁及び左右の側壁にそれぞれバーナ(上火バーナ、下火バーナ)が配設され、グリル庫内に収納された焼網やグリルプレートなどの調理具上に載置された被調理物を、下火バーナからグリル庫の内方に向かって噴出されるガスの燃焼排気によって下方から加熱するとともに、上火バーナの輻射熱によって上方から加熱するように構成された所謂、両面焼きグリルが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−158290号公報
【特許文献2】特開2015−200460号公報
【特許文献3】特開2015−223454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、グリルを用いて被調理物を調理する場合、厚みのある被調理物を調理したり、一回の調理量を多くするためには、被調理物が載置される調理具の上方の空間をできるだけ広い容積とし、下火バーナが配設される調理具の下方の空間をできるだけ狭い容積とすることが望まれる。そのため、グリルプレートなどの皿状の調理具を用いて加熱調理する場合に放電ミスなどにより下火バーナで点火不良が生じると、グリル庫内の下方の空間に生ガスが充満し、充満した生ガスの濃度が低下し難い。その結果、下方の空間に高濃度の生ガスが滞留している状態で再点火が行われると、爆着の虞がある。特に、下火バーナのみが配設されたグリル庫内で被調理物の上下面を効率的に加熱するためには、上下バーナ両方を用いる場合よりも高い燃焼能力を有するグリルバーナを用いるとともに、燃焼排気がグリル庫内へ噴出されてからグリル庫外へ排出されるまでの時間がより長くなるようにグリル庫の密閉性を向上させる必要がある。それゆえ、点火時の下火バーナへのガス供給量が多くなるだけでなく、点火不良時にグリル庫内に噴出された生ガスの濃度もさらに低下し難くなるため、爆着が生じやすい。このようなグリルで再点火によって爆着が生じると、爆着時の衝撃によりグリル扉が前方に押されて、グリル庫とグリル扉との間の隙間から燃焼炎が漏れる虞がある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、グリル庫内に収納された調理具上の被調理物を効率的に加熱調理できるとともに、再点火時の爆着によるグリル扉への衝撃を抑えることができる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
前方開口部を有するグリル庫と、
グリル庫の前方開口部を開閉するグリル扉と、
グリル庫内に収納される調理具の下方に、炎孔がグリル庫の側壁に向かって開口するように配設されたグリルバーナと、を備え、
グリル庫の底壁には、グリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられ
グリル庫内の下方域には、グリルバーナを上方から覆い、調理具の配設部とグリルバーナの配設部とを上下に区画するバーナカバーが設けられており、
炎孔と対向するバーナカバーの側方部には、炎孔からグリル庫の側壁に向かって噴出されるガスの燃焼排気が上方に向かって流れるように熱気導出部が開設されており、
グリル庫の底壁に設けられた通気部は、バーナカバー内に位置する加熱調理器が提供される。
【0007】
上記加熱調理器によれば、グリル庫の底壁にはグリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられているから、グリルバーナの燃焼時にドラフト効果によりグリル庫外から通気部を介してグリル庫内に流入する二次空気を円滑に上方のグリルバーナに供給することができる。これにより、調理具の下方に配設されたグリルバーナを良好に燃焼させることができる。また、調理具の下方に配設されているグリルバーナの炎孔はグリル庫の側壁に向かって開口しているから、炎孔から噴出されるガスの燃焼排気は通気部から流入する下方からの二次空気の流れに従って上方の調理具の側端部を通ってグリル庫の上方域に供給することができる。そして、グリルバーナの燃焼時、通気部はグリルバーナの炎孔よりも二次空気の流路の上流に位置するから、上方への二次空気の流れによって高温の燃焼排気が通気部からグリル庫外に漏洩することもない。これにより、効率的にグリル庫内に燃焼排気を対流させることができる。
一方、上記加熱調理器では、調理具の下方にグリルバーナが配設されているため、点火不良が生じた場合、生ガスがグリル庫の下方に滞留して、再点火時に爆着が生じやすい。しかしながら、上記加熱調理器によれば、グリル庫の底壁には、グリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられているから、爆着によって生じた衝撃を、グリルバーナよりも下方であって、通気抵抗の低い通気部から器具外部への影響の少ないグリル庫外の
下方に逃がすことができる。これにより、再点火時に爆着が生じた場合でも、グリル扉への衝撃を低減できる。
また、上記加熱調理器によれば、グリル庫内の下方域には、グリルバーナを上方から覆い、調理具の配設部とグリルバーナの配設部とを上下に区画するバーナカバーが設けられており、炎孔と対向するバーナカバーの側方部には、炎孔からグリル庫の側壁に向かって噴出されるガスの燃焼排気が上方に向かって流れるように熱気導出部が開設されているから、燃焼排気を調理具の側端部を通過させて、円滑に上方に導くことができる。これにより、グリル庫内で燃焼排気をより効率的に対流させることができる。
一方、上記加熱調理器では、グリルバーナを上方から覆うバーナカバーが設けられているから、点火不良が生じると、バーナカバー内に生ガスが高濃度で滞留し、再点火時に爆着が生じやすい。しかしながら、上記加熱調理器によれば、グリル庫の底壁であって、バーナカバー内に、グリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられているから、爆着によって生じた衝撃をグリルバーナよりも下方であって、通気抵抗の低い通気部から器具外部への影響の少ないグリル庫外の下方に逃がすことができる。
【0008】
好ましくは、上記加熱調理器において、
通気部は、グリル庫の底壁であって、炎孔よりも内側方に位置する。
【0009】
グリルプレートなどの皿状の調理具の下方にグリルバーナが配設されている場合、点火不良が生じると、より多くの生ガスが調理具の下方に滞留する。そして、グリルバーナの炎孔がグリル庫の側壁に向かって開口している場合、再点火によって炎孔から噴出されるガスが点火されて、調理具の下方に滞留していた生ガスが爆着すると、爆着による衝撃は、通気抵抗の低いグリル庫内の側方から調理具よりも上方の空間に向かって流れやすくなる。
しかしながら、上記加熱調理器によれば、グリルバーナの炎孔はグリル庫の側壁に向かって開口しているものの、グリル庫の底壁であって、グリルバーナの炎孔よりも内側方に、グリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられているから、爆着による衝撃を、グリルバーナよりも下方であって、通気抵抗の低い内側方の通気部に向かわせることができる。これにより、再点火時に爆着が生じた場合でも、グリル扉への衝撃をさらに低減できる。
【0010】
好ましくは、上記加熱調理器において、
グリル庫の底壁よりも下方に、底壁と離間し、且つ通気部と対向するように配設された保護板が設けられる。
【0011】
上記加熱調理器によれば、グリル庫の底壁よりも下方に、底壁と離間し、且つ通気部と対向するように保護板が設けられているから、正常燃焼時に底壁と保護板との間に空気導入路を形成でき、通気部から円滑にグリル庫外の空気をグリル庫内に流入させることができる。また、爆着が生じて、燃焼炎が通気部から漏れた場合でも、保護板により加熱調理器の設置部を保護することができる。
【0014】
好ましくは、上記加熱調理器において、
グリル庫内のガスの燃焼排気を外部に排出する排気口を有し、
少なくともバーナカバーよりも上方のグリル庫内の上方域を形成する後壁は、グリル庫内の燃焼排気が後壁から排気口に流出しないように閉塞されており、
グリル庫の上壁は、グリル庫内の燃焼排気を排気口へ導出する排気通路が形成されるように二層構造を有し、
調理具に面する下方の第1上壁には、グリル庫内と排気通路とを連通させる熱気排出部が設けられる。
【0015】
従来の加熱調理器と同様に、グリル庫の後壁に排気筒と連通する熱気排出部が設けられている場合、調理具よりも下方のグリルバーナから噴出されたガスの燃焼排気は調理具の上方に十分に流れず、通気抵抗の少ない後壁側からグリル庫外に排出されやすい。しかしながら、上記加熱調理器によれば、グリル庫の少なくともバーナカバーよりも上方のグリル庫内の上方域を形成する後壁を閉塞させる一方、グリル庫の上壁を二層構造として排気口へ燃焼排気を導出する排気通路を形成するとともに、調理具に面する下方の第1上壁には、グリル庫内と排気通路とを連通させる熱気排出部を形成しているから、後壁側から排気口への燃焼排気の短絡が防止され、燃焼排気を調理具の側端部を通過させて、円滑に上方に導くことができる。これにより、グリル庫の密閉性が高められ、調理具の上方において、燃焼排気の被調理物への接触時間を長くすることができる。また、グリル庫内の上方に排気通路を設けたから、排気通路に排出された燃焼排気が排気口に向かって流れる間に調理具に面する下方の第1上壁が加熱される。これにより、第1上壁からの輻射熱によっても被調理物を加熱できるから、より効率的に被調理物を加熱することができる。
一方、上記のように少なくともグリル庫の上方域の後壁を閉塞させて密閉性の高いグリル庫とした場合、点火不良が生じた時にグリル庫内に滞留する生ガスの濃度が低下し難くなり、爆着が生じやすくなる。しかしながら、上記加熱調理器によれば、生ガスが滞留しやすいバーナカバーより下方のグリル庫の底壁にグリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられているから、爆着によって生じた衝撃を、グリル庫の下方であって、通気抵抗の低い通気部から器具外部への影響の少ないグリル庫外の下方に逃がすことができる。
【0016】
好ましくは、上記加熱調理器において、
グリルバーナは、調理具の下方に配設された下火バーナのみからなる。
【0017】
グリルバーナとして調理具の下方に配設された下火バーナのみを有するグリルで被調理物を効率的に加熱調理するためには、燃焼能力の大きなグリルバーナを使用する必要があるから、点火時にグリルバーナへのガス供給量が多くなって爆着時の衝撃が大きくなる。しかしながら、上記加熱調理器によれば、生ガスが滞留しやすい調理具の下方のグリル庫の底壁にグリル庫内とグリル庫外とを連通させる通気部が設けられているから、爆着によって生じた衝撃を、グリルバーナよりも下方であって、通気抵抗の低い通気部から器具外部への影響の少ないグリル庫外の下方に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、調理具の下方に配設されるグリルバーナによって、被調理物を効率的に加熱することができる。また、本発明によれば、調理具の下方に配設されたグリルバーナに点火不良が生じ、再点火時に爆着が生じたときでも、爆着の衝撃を通気部から器具外部への影響の少ないグリル庫外の下方に逃がすことができ、グリル扉への衝撃を低減できる。これにより、爆着による燃焼炎がグリル扉とグリル庫との間の隙間から器具外部に漏れることを防止できる。従って、本発明によれば、加熱性能に優れるとともに、高い安全性を有するグリルを備えた加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す要部概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す要部概略横断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の一例を示す要部概略断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。図1は、テーブルコンロタイプのガスコンロに適用した本実施の形態の加熱調理器の一例を示す概略斜視図、図2は、要部概略縦断面図、図3は、要部概略横断面図、図4は、後方部分における要部概略断面斜視図である。なお、図4では、煩雑化を避けるため、調理具等の一部の構成は省略している。
【0021】
図1に示すように、ガスコンロは、天板100、前板101、後板104、及び左右の側板105から形成され、下方に開放するコンロ本体10を備える。コンロ本体10の内部には左右方向中央にグリル2が組み込まれており、天板100の上面には2つのコンロバーナ11が配設されている。また、前板101には、コンロバーナ11の点火及び消火を行うための複数のコンロ点消火操作部13、コンロバーナ11の火力調整を行うための複数のコンロ火力調節摘み13a、後述するグリルバーナ21の点火及び消火を行うためのグリル点消火操作部23、グリルバーナ21の火力調整を行うためのグリル火力調節摘み23aや、所定の報知を行うスピーカ80が設けられている。なお、本明細書では、コンロ本体10を前方側から見たときの奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向、高さ方向を上下方向という。
【0022】
グリル2は、肉や魚等の被調理物を載置したグリルプレート26あるいは図示しない焼網、または被調理物を収容した図示しない加熱容器などの調理具を収納可能なグリル庫20と、グリル庫20の前方開口部200を開閉するグリル扉22とを備える。
【0023】
また、図示しないが、コンロ本体10の内部には、コンロ点消火操作部13の点火操作や消火操作に連動して開閉するコンロバーナ11用のバルブユニットや、グリル点消火操作部23の点火操作や消火操作に連動して開閉するグリルバーナ21用のバルブユニット、ガス元管から上記各バルブユニットへガスを導くガス配管等が組み込まれている。
【0024】
コンロ本体10内におけるグリル庫20の後方には、グリルバーナ21からグリル庫20内に噴出されたガスの燃焼排気(以下、「熱気」という)や被調理物から発生した油煙、臭気成分等を、天板100に開設された排気口14へ導く排気筒24が配設されている。より詳細には、排気筒24は、グリル庫20の後壁204の上端部に開設された排気筒入口240から後上方へ向かって略L字状に延設されており、上端の排気筒出口241を排気口14に下方から臨ませている(図2参照)。
【0025】
グリル扉22は、グリル扉22で後述するグリル庫20の前方開口部200を閉塞させたときに、グリル庫20の前枠203に当接する後枠22aを有しており、後枠22aの下方には、グリル扉22をコンロ本体10に支持する支持枠25が連結されている。支持枠25は、グリル扉22の後枠22aからグリル庫20の底壁202の上面に沿って、後壁204側へ向かって略水平に延出しており、グリル庫20内に設けられた図示しない係合部に前後摺動可能な状態で係合支持されている(図2参照)。
【0026】
支持枠25の前後端の上部にはそれぞれ、左右方向に長い略平板状の板枠部251が設けられている。板枠部251の上面には、プレート上面26Aに載置された被調理物を加熱するグリルプレート26が取り外し可能な状態で載置される。従って、グリルプレート26は、グリル扉22を開くことでグリル庫20内から前方へ引き出され、グリル扉22を閉じることでグリル庫20の内部に収納される。なお、上記グリル2は、グリルプレート26に代えて、蓋付きの加熱容器(例えば、ダッチオーブン鍋)、蓋の無い加熱容器、または焼網を支持枠25に載置して使用することもできるが、本実施の形態では、グリルプレート26をグリル庫20内に設置した場合の構成を中心に説明する。
【0027】
前後の板枠部251の左右方向の中央にはそれぞれ、左右方向に延在する上方へ凸の起立片250が形成されている。一方、グリルプレート26の前後の側端中央部には、起立片250と左右幅が略同一の切欠260が形成されており、グリルプレート26は、切欠260に起立片250を嵌入させることで、板枠部251の上面に位置決め状態で支持される。従って、この状態でグリル扉22を閉じれば、グリルプレート26がグリル庫20内の定位置に収納される。
【0028】
グリルプレート26は、アルミニウム系金属製の板材を平皿状にプレス成形したものであり、表面には、フッ素樹脂加工等の仕上げ塗装が施されている。なお、グリルプレート26は、鋳造や鍛造により成形されたものであってもよい。また、グリルプレート26は、プレート上面26Aに載置される被調理物に対して適切な熱量を伝導可能な素材であれば、鉄系や銅系、ステンレス系などの金属で形成されたものであってもよいし、セラミック系材料で形成されたものであってもよい。
【0029】
グリルプレート26の左右の側端部261は、外側斜め上方に向かって屈曲形成されている。グリルプレート26のプレート上面26Aには、被調理物との接触面積が小さくなるよう、左右方向に延在する上方へ凸の細幅のリブ262が前後方向に略等間隔で複数、並設されている。上記リブ262の形成部周囲には、被調理物から滲出した油や焼き汁を回収するための溝部263が形成されている。
【0030】
図2図4に示すように、グリル庫20は、上壁201、底壁202、前枠203、後壁204、及び左右の側壁205を有し、前方に開放する略矩形状の箱体からなる。グリル庫20は、ガスコンロを所定の設置部に設置したとき、底壁202と設置部との間に所定の高さ(例えば、10〜30mm)の隙間が形成されるように、図示しない締結手段によりコンロ本体10に接続固定されている。これにより、グリル庫20外の下方には、グリルバーナ21の燃焼時にグリル庫20外の空気をグリル庫20内に流入させる空気導入路が形成される。
【0031】
グリル庫20内のグリルプレート26と底壁202との間の空間には、両側壁205に沿って左右一対のグリルバーナ21が配設されている。グリルバーナ21は、二つの樋状体を上下に重ね合わせて形成された直管状のバーナであり、グリル庫20の後壁204から前方へ向かって略水平に延出している。
【0032】
炎孔210は、グリルバーナ21の外側端面に沿って設けられており(図3及び図4参照)、グリルバーナ21に供給されたガスをグリルプレート26の下方で左右方向の外方(側壁205側)に略水平に噴出させるように構成されている。また、グリルプレート26の下方であって、グリル庫20の後方には、後壁204を貫通する点火電極70が前方に突設されており、点火電極70の電極部701は各グリルバーナ21の後方の炎孔210に臨むように配設されている。図示しないが、グリル点消火操作部23で点火操作がなされると、制御ユニットからの制御信号でイグナイタから点火電極70に高電圧が印加されて、炎孔210近傍で電極部701から火花放電を生じさせ、炎孔210から噴出されるガスを着火させる。さらに、グリルプレート26の下方であって、グリル庫20の前方には、燃焼炎を検知するための熱電対(炎検知部)71が各グリルバーナ21の前方の炎孔210に臨むように配設されている(図2参照)。熱電対71の出力(起電圧)は制御ユニットに入力される。
【0033】
また、底壁202上には、グリル庫20内をグリルプレート26が配設される上方域と、グリルバーナ21が配設される下方域とに上下に区画する前方視略コ字状のバーナカバー28が設けられている。バーナカバー28は、略矩形状の上板61と、上板61の側端部から底壁202に向かって延在する左右の側板62とを有し、前後方及び下方に開放している。バーナカバー28の前方開放部は、前枠203の下辺の左右方向中央部から上方に突設する蓋部203aで覆われ、後方開放部は、後壁204で覆われており、グリルバーナ21の全体が上方からバーナカバー28で覆われている。なお、グリルプレート26は、バーナカバー28の上板61の上方に所定の間隔20Bを存して配設されている。
【0034】
バーナカバー28の側板62には、グリルバーナ21の炎孔210に対向して熱気導出口(熱気導出部)63が開設されている。グリルプレート26の下方で、上記側板62の外側には、上方の空間20Eに繋がる空間20Fが画成されており、グリルバーナ21から噴出された熱気は、熱気導出口63を通って上記バーナカバー28の側方の空間20Fに導出される。そして、熱気は、グリルプレート26の側端部261の外側を通り、側壁205に沿って上昇する。これにより、グリルプレート26は通過する熱気で側端部261側から加熱され、グリルプレート26上の被調理物はグリルプレート26からの伝導熱によって下方から加熱される。
【0035】
底壁202は、平面視略長方形状を有し、前枠203、後壁204、及び側壁205はそれぞれ、底壁202の前後左右の端部から立設している。図3及び図4に示すように、グリルバーナ21の炎孔210よりも左右方向で内側方の底壁202の略全面には、通気孔(通気部)208が複数、開設されており、グリル庫20内の下方は、通気孔208を介してグリル庫20外と連通している。従って、グリルバーナ21の燃焼時にドラフト効果によって通気孔208を介してグリル庫20外の空気がグリル庫20内に流入し、二次空気としてグリルバーナ21の炎孔210に供給される。そして、グリルバーナ21の炎孔210に供給された二次空気は、熱気として熱気導出口63を介して上方の空間20Eに供給される。
【0036】
上壁201は、調理具26に面する下方の第1上壁201aと、第1上壁201aを上方から覆うように配設された第2上壁201bとからなる二層構造を有する。第1上壁201aは、両側端部がグリル庫20の左右の側壁205に支持固定されており、第1上壁201aと第2上壁201bとの間には、排気筒入口240を通じて排気筒24に繋がる排気通路20Cが形成されている。
【0037】
第1上壁201aは、グリル庫20の左右方向中央部に配設される下向きに凸の前方視略逆台形状の膨出部51と、両側壁205から膨出部51の外側端縁へ向かって斜め上方に延出する傾斜部52とを備える。膨出部51及び傾斜部52はいずれも、第1上壁201aの前端部から後端部にわたって形成されている。従って、グリル庫20内の側壁205に沿って上昇する熱気は、上記傾斜部52の下面に沿って膨出部51の周辺に導かれ、さらに膨出部51の下面に沿って下方、即ち、プレート上面26A側へ導かれる。これにより、グリルプレート26上の被調理物は、グリル庫20内を外側から上方を回って中央下方へ流れる熱気(対流熱)によって上方から加熱される。
【0038】
第1上壁201aの後端部は、後壁204における排気筒入口240の下縁部に沿って当接しており、グリルプレート26の上方の空間20Eと排気筒入口240とを分離している。また、膨出部51及び傾斜部52の前後方向の中央よりも前寄りの位置及び後寄りの位置にはそれぞれ、上方の空間20Eと排気通路20Cとを連通させる複数の熱気排出口(熱気排出部)53が開設されている。
【0039】
バーナカバー28よりも上方の後壁204は、上方の空間20Eを対流する熱気がグリル庫20内の後方から排気筒入口240へ直接流出しないよう閉塞形成されている。即ち、グリル庫20内の上方域を形成する後壁204には、グリル庫20外から空気の流入可能な開口は設けられておらず、上方の空間20Eは、熱気排出口53から排気通路20Cを通じて排気筒入口240に繋がっている。
【0040】
上記グリル庫20の構成によれば、グリルプレート26よりも下方のグリルバーナ21から噴出され、上方の空間20Eへ導かれる熱気やグリルプレート26上の被調理物から発生する油煙や臭気成分は、熱気排出口53を通じて排気通路20Cに導出され、さらに排気通路20Cを通って排気筒入口240へ導かれ、排気筒24から排気筒出口241を通じて排気口14からコンロ本体10の外部に排出される。また、第1上壁201aの前寄りの位置に設けられた熱気排出口53を通じて排気通路20Cへ導出された熱気中の熱は、熱気が排気通路20Cを流れる間に第1上壁201aによって回収され、グリルプレート26の上面側へ向けて輻射される。これにより、第1上壁201aを伝熱性に優れる金属板から形成すれば、排気通路20Cの下面を形成する第1上壁201aは集熱板としても機能し、グリルプレート26上の被調理物は第1上壁201aからの輻射熱によっても上方から加熱される。
【0041】
各側壁205の内面における上下方向の略中央位置、即ち、グリルプレート26の側端部261との側方対向位置には、外側方に凹没する凹面部30が形成されている。凹面部30は、側壁205の内面に沿ってグリル庫20の前後方向に延在しており、グリルプレート26がグリル庫20の定位置に収納された状態において、グリルプレート26の側端部261の外側方に、前後略一定幅(例えば、20mm)の間隙を画成している。従って、グリルバーナ21からバーナカバー28の側方の空間20Fに噴出された熱気は、上記間隙を通って上方の空間20Eへ導かれる。
【0042】
凹面部30の中央部31は、上下及び前後方向に広がる平面状に形成されている。また、凹面部30の周縁は、中央部31が最も外側方に位置するように傾斜面で形成されている。従って、グリルバーナ21からバーナカバー28の側方の空間20Fに噴出された熱気は、凹面部30の周縁の下方の傾斜面に沿ってグリルプレート26と凹面部30との間隙へ導かれ、上方の傾斜面に沿って第1上壁201aの傾斜部52の下面側へ導かれる。これにより、より効率的にグリル庫20内に熱気を対流させることができる。
【0043】
グリル庫20の側壁205の外側には、少なくとも凹面部30の形成部を外側から覆う略平板状の遮熱壁29が設けられている。即ち、グリル庫20の側面部は、グリル庫20の側壁205と、上記遮熱壁29とからなる二重構造をなしている。遮熱壁29は、上端部が側壁205の上端部に支持固定されており、遮熱壁29と側壁205との間に、空気の層を画成している。これにより、側壁205の熱がコンロ本体10内に組み込まれた電気配線や部品類に直接伝達されるのを防止できる。
【0044】
本実施の形態のガスコンロのグリル2を用いて加熱調理を行う場合、肉や魚等の被調理物を載置したグリルプレート26をグリル庫20内に収納して、グリル扉22で前方開口部200を閉塞させ、グリル点消火操作部23で点火操作が行われると、グリルバーナ21にガスが供給されるとともに、所定時間、点火電極70から火花放電を生じさせる点火処理が行われる。
【0045】
グリルバーナ21の燃焼炎により熱電対71が炙られ、所定時間(例えば、10秒間)内に熱電対71から出力される起電圧が所定の着火検知レベル以上となってグリルバーナ21が点火されると、ドラフト効果によってグリル庫20外の空気が通気孔208を介して下方からグリル庫2内に流入する。通気孔208はグリルバーナ21の炎孔210よりも下方で、且つ炎孔210よりも内側方の底壁202に設けられている一方、グリルバーナ21の炎孔210は側壁205に向かって開口するように設けられているとともに、グリルバーナ21を上方から覆うように配設されるバーナカバー28の側板62には炎孔210と対向する位置に熱気導出口63が開設されているから、通気孔208を介してグリル庫20外からバーナカバー28内に流入する空気は、左右方向に広がりながら炎孔210周辺を通って、上方の空間20Eに繋がる側方の空間20Fに流れる。これにより、円滑にグリルバーナ21の炎孔210に二次空気が供給される。
【0046】
そして、上方の空間20Eは第1上壁201aに設けられた熱気排出口53を介して排気通路20Cに連通しており、排気通路20Cは排気筒24を介して排気口14に連通しているから、燃焼時にドラフト効果によってグリル庫20内には通気孔208からグリルプレート26の側端部261を通過して上方に向かう上向きの二次空気の流路が形成される。その結果、炎孔210から側方の空間20Fに噴出された熱気は、二次空気の流路に従いグリル庫20内の側壁205に沿って上昇するが、上記傾斜部52の下面に沿って膨出部51の周辺に導かれ、さらに膨出部51の下面に沿って下方、即ち、プレート上面26A側へ導かれる。これにより、グリルプレート26上の被調理物は、グリルプレート26の側端部261を通過する熱気によってグリルプレート26が加熱され、その伝導熱によって下方から加熱されるとともに、グリル庫20内を外側から上方を回って中央下方へ流れる熱気(対流熱)によって上方から加熱される。このとき、本実施の形態では、従来の加熱調理器と異なり、上方の空間20Eを形成する後壁204が閉塞されてグリル庫20内の熱気を外部に導く排気筒24が後壁204に開口していないから、グリル庫20内の下方の空間20A及び上方の空間20Eの熱気は、後壁204側から排気口14に短絡して排出されない。このように、グリル庫20の密閉性を向上させているから、熱気を長時間、グリル庫20内に対流させることができる。また、ドラフト効果によって、通気孔208は炎孔210よりも二次空気の流路の上流に位置するから、高温の熱気が逆流して通気孔208からグリル庫20外に漏洩することもない。従って、本実施の形態によれば、高い密閉性を有するグリル庫20を構成することができ、グリルプレート26下方に配設されたグリルバーナ21のみからの熱気により、上火バーナを用いることなく、被調理物を効率的に加熱することができる。
【0047】
一方、グリルプレート26の下方に配設されたグリルバーナ21のみにより被調理物を加熱する場合、上下バーナ両方が配設される場合よりも高い燃焼能力を有するグリルバーナ21を使用するとともに、グリル庫20の密閉性を向上させる必要があるため、点火不良が生じたときにグリル庫20内に多量の生ガスが噴出されるだけでなく、グリル庫20内から生ガスも排出され難くなって、グリル庫20内に生ガスが高濃度で滞留した状態が形成されやすい。しかも、本実施の形態では、グリルバーナ21を上方から覆うようにバーナカバー28を設け、グリル庫20内を上下に区画させているため、グリル庫20の下方域により高濃度で生ガスが滞留する。その結果、複数回、点火不良が生じると、再点火時に爆着が生じて、衝撃によりグリル庫20とグリル扉22との間隙から燃焼炎が漏洩する虞がある。
【0048】
しかしながら、上記ガスコンロによれば、グリルバーナ21の炎孔210よりも下方であって、炎孔210よりも内側方の底壁202には、グリル庫20内とグリル庫20外とを連通させる通気孔208が設けられているから、爆着によって生じた衝撃を、グリル庫20の下方であって、グリルバーナ21に近接している通気抵抗の低い通気孔208から器具外部への影響の少ないグリル庫20外の下方に逃がすことができる。即ち、爆着が生じると燃焼時の二次空気の流路と逆向きの下向き方向に燃焼炎を導くことができる。特に、上記ガスコンロでは、効率的に被調理物を加熱するためにグリル庫20の密閉性を向上させているから、爆着時の衝撃は上方の空間20Eに向かうよりも、通気孔208に向かいやすくなる。さらに、上記ガスコンロによれば、通気孔208は炎孔210よりも内側方に設けられているから、グリル庫20の側方にバルブユニットなどの機器が配設される場合でも、燃焼炎による影響を防止できる。これにより、再点火時に爆着が生じた場合でも、グリル扉22への衝撃が低減され、グリル庫20とグリル扉22との間隙からの燃焼炎の漏洩を確実に防止できる。従って、上記ガスコンロによれば、加熱性能に優れ、高い安全性を有するグリルを備えたガスコンロを提供することができる。
【0049】
なお、グリル庫20の側壁205に通気孔を形成すると、グリルバーナ21の燃焼時に側方の空間20Fに噴出された熱気が側壁205からグリル庫20外に漏洩して、加熱性能が低下するだけでなく、爆着時に衝撃が側壁205に設けられた通気孔に向かうため、燃焼炎によってグリル庫20の側方に設けられた機器が損傷する虞がある。
【0050】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、グリル庫の底壁にグリル庫外の空気が流入する通気孔が設けられているが、さらに器具外部の空気をグリル庫内に流入させる空気取り込み部をグリル扉に設けてもよい。これにより、さらに効率的にグリル庫内に空気を流入させることができる。なお、空気取り込み部をグリル扉の底部に設けることにより、爆着時に空気取り込み部から燃焼炎が漏洩する場合でも、器具外部への影響を低減することができる。
(2)上記実施の形態では、左右一対のグリルバーナが用いられているが、外側端面に炎孔が設けられた1本のU字状のグリルバーナや両側端面に炎孔が設けられた1本の直管状のグリルバーナを用いてもよい。
(3)上記実施の形態では、下方に開放するコンロ本体内にグリル庫が収容されているが、グリル庫の底壁よりも下方に、底壁と離間し、且つ少なくとも通気部と対向するように保護板を設けてもよいし、コンロ本体に保護板となる底板を設けてもよい。これによれば、上記と同様に、正常燃焼時に底壁と保護板との間に空気導入路を形成でき、通気部から円滑にグリル庫外の空気をグリル庫内に流入させることができるとともに、爆着が生じて、燃焼炎が通気部から漏れた場合でも、保護板により加熱調理器の設置部を保護することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 グリル
20 グリル庫
22 グリル扉
200 前面開口部
21 グリルバーナ
26 グリルプレート(調理具)
28 バーナカバー
53 熱気排出口(熱気排出部)
63 熱気導出口(熱気導出部)
208 通気孔(通気部)
図1
図2
図3
図4