(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の携帯型切断機では、切断機本体に対して保護カバーを所望する位置に固定しようとすると、まず、作業者は、ロックレバーを一方側に回転させてボルトを螺退させることにより座金を切断機本体から離間させて切断機本体に対する保護カバーの固定を解除し、次いで、保護カバーが所望する位置になるように切断刃の中心軸周りに保護カバーを回動させ、しかる後、作業者がロックレバーを他方側に回転させてボルトを螺進させることにより座金と切断機本体とでガイドプレートを挟み込んで保護カバーを固定するといった複数の手順を手作業で行う必要があり、保護カバーの位置変更作業が煩雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保護カバーを所望する位置に簡単に固定させることができる携帯型切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、付勢手段の付勢力を利用して保護カバーを切断機本体に固定するようにしたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、第1の発明では、中心軸周りの回転動作により被切断物を切断する円板状の切断刃と、該切断刃を回転可能に支持する切断機本体と、上記中心軸周りに回動可能に設けられ、上記切断刃を部分的に覆う保護カバーと、上記中心軸に沿って移動可能に設けられ、一方側に移動した際、上記保護カバーを上記切断機本体に押し付けるか、又は、上記切断機本体を上記保護カバーに押し付けて当該保護カバーの回動を規制した状態に維持する押付体と、該押付体が一方側に移動するように付勢する付勢部材とを備え、該付勢部材の付勢力に抗して上記押付体を他方側に移動させることにより、上記保護カバーの回動規制状態を解除するよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、上記押付体は、螺進螺退動作によって上記中心軸に沿って移動するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第3の発明では、第2の発明において、上記押付体は、螺合部を一端側に有する一方、作業者が把持操作可能な操作ハンドルが他端側に固定された棒状部を備え、上記切断機本体には、上記螺合部が螺進螺退可能な被螺合部が上記中心軸に沿って延びるように形成され、上記付勢部材は、一端が上記切断機本体に固定される一方、他端が上記操作ハンドルに固定され、上記螺合部が螺進して上記棒状部が一方側に移動する捩り方向にその付勢力を加えていることを特徴とする。
【0010】
第4の発明では、第3の発明において、上記付勢部材は、上記棒状部に巻装された捩りコイルバネであることを特徴とする。
【0011】
第5の発明では、第4の発明において、上記保護カバーには、上記中心軸周りに円弧状に延びるスリットが形成され、上記棒状部は、上記中心軸に沿う方向に移動可能に上記スリットに挿通され、上記保護カバーが回動する際、上記スリットに沿って移動するよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
第6の発明では、第3から第5のいずれか1つの発明において、上記操作ハンドルは、上記中心軸と直交する方向に延び、一端が上記棒状部の他端に固定される一方、他端に作業者が操作する操作部を有するレバー状をなしていることを特徴とする。
【0013】
第7の発明では、第6の発明において、上記切断機本体には、作業者による上記切断機本体の持ち上げを可能にする把持フレームが取り付けられ、上記操作ハンドルは、上記把持フレームに接近配置され、且つ、上記操作部が上記棒状部より上方に位置しており、上記操作部を上記把持フレームに接近させる上記操作ハンドルの回動操作で上記棒状部が螺退する方向に捩られるよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
第8の発明では、第3から第7のいずれか1つの発明において、上記棒状部は、一端側に上記螺合部を有する一方、他端側に断面が正多角形状をなす嵌合部を有する軸部と、上記嵌合部に外嵌合可能な嵌合孔を有する一方、外周部分に上記操作ハンドルに係合可能な係合突起を有する取付プレートとを備え、上記嵌合孔は、断面三角形状をなす複数の嵌合凹部が周方向に等間隔に形成され、該各嵌合凹部は、上記嵌合部の各角部が嵌合可能になっており、上記嵌合孔の貫通方向に見て、上記係合突起の中心と上記嵌合孔の中心とを結ぶ直線を境に非対称となるように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、切断機本体に対して保護カバーを所望する位置に固定する際、まず作業者は、押付体を付勢部材の付勢力に抗して移動させて保護カバーの回動規制状態を解除し、次いで、保護カバーを所望する位置となるように回動させた後、押付体から手を離す。すると、付勢部材の付勢力によって押付体が自動で移動して保護カバーの回動が規制されるようになる。このように、作業者は、保護カバーの回動規制状態を解除するときにだけ押付体を操作すればよく、特許文献1の如き保護カバーの回動の規制を行うときと回動規制の解除を行うときとの両方のときに押付体を操作するといった必要がなく、保護カバーを所望する位置に簡単に固定させることができる。
【0016】
第2の発明では、押付体の移動方向に大きな力が加わっても押付体がほとんど動かなくなるので、作業中に押付体が切断機本体から不意に外れてしまうといったことを防ぐことができる。
【0017】
第3の発明では、棒状部の螺合部が螺進する捩り方向に常に付勢部材の付勢力が加わった状態に維持されるので、切断機を作動させると、その振動で棒状部の螺合部が僅かながらに螺進していくようになる。したがって、切断機を用いた作業中において切断機本体に対して保護カバーを強固に固定することができる。
【0018】
第4の発明では、棒状部が捩りコイルバネの内側に位置するようになるので、棒状部周りをコンパクトな形状にすることができる。
【0019】
第5の発明では、保護カバーを切断機本体に固定する際、押付体によって保護カバーを切断機本体に押し付ける位置が保護カバーの回動中心から離れた位置になる。したがって、保護カバーの回動中心側よりも小さな押付力で保護カバーの回転を妨げる力(モーメント)を得ることができ、構造をシンプルなものにしてコストを抑えることができる。
【0020】
第6の発明では、捩りコイルバネの付勢力に抗して作業者が操作ハンドルを回す際、操作部を把持して回すと、操作ハンドルの回動中心側を把持して回すよりも小さな力で操作ハンドルを回すことができるようになり、操作の行い易い操作ハンドルにすることができる。
【0021】
第7の発明では、保護カバーの回動規制状態を解除する際、作業者は、一方の手で把持フレームを把持してその手の人差し指及び中指の少なくとも一方で操作部を把持フレーム側に接近させる(引き寄せる)ことができるようになる。したがって、一方の手で把持フレームを把持して切断機本体を地面に押し付けた状態で他方の手で保護カバーを回動させることができるようになり、手を大きく移動させる必要のある他方の手で操作部を操作する必要が無くなるので、保護カバーの回動作業を効率良く行うことができる。
【0022】
第8の発明では、取付プレートの表裏面を引っくり返して嵌合孔を軸部の嵌合部に外嵌合させると、軸部周りの係合突起の位置を僅かにずらすことができるようになる。したがって、押付体を組み立てる際、付勢部材に適切なテンションがかかるように軸部周りの係合突起の位置を細かく変えて組み立てを行うことができ、組立時に必要な微調整を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0025】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る携帯型切断機1を示す。該携帯型切断機1は、例えば、工事現場でコンクリート等を切断する際に使用するものであり、エンジンE1を搭載する切断機本体2と、中心軸周りの回転動作により被切断物を切断する円板状の切断刃3と、該切断刃3を保護する保護カバー4とを備えている。
【0026】
切断機本体2は、上記エンジンE1を囲うエンジンカバー21と、該エンジンカバー21の上側部分を囲うように設けられたフロントハンドル22(把持フレーム)と、エンジンカバー21の一方の側面から当該エンジンカバー21の前方に向かって略水平に延びるアーム体23と、エンジンカバー21の後側に設けられたリアハンドル24とを備え、該リアハンドル24には、上記エンジンE1の回転数を調整するスロットルレバー24aが配設されている。
【0027】
フロントハンドル22は、アーム体23と直交する水平方向に延び、且つ、エンジンカバー21の前側上方に位置する把持棒22aと、該把持棒22aの一端から切断機1後側の斜め下方に向かって延びて切断機本体2の下部に固定された第1支持棒22bと、上記把持棒22aの他端から切断機1前側の斜め下方に向かって延びて切断機本体2の下部に固定された第2支持棒22cとを備え、作業者が把持棒22aを把持して切断機本体2を持ち上げることが可能になっている。
【0028】
アーム体23の延出端側における一方の側面には、当該アーム体23の延長方向と直交する水平方向に突出する回転軸23aが設けられている。
【0029】
該回転軸23aには、上記切断刃3が回転一体に着脱可能に取り付けられている。すなわち、切断機本体2は、切断刃3をその中心軸周りに回転可能に支持しており、作業者がスロットルレバー24aを引いてアイドリング状態のエンジンE1の回転数を上昇させることにより、駆動ベルト(図示せず)及び回転軸23aを介して切断刃3が回転するようになっている。
【0030】
アーム体23の回転軸23a周りには、
図1及び
図2に示すように、当該回転軸23aを囲うように切断刃3側に張り出す環状張出部25が形成され、該環状張出部25の張出面には、上記保護カバー4が回転軸23a周りに回動可能となるように取り付けられている。
【0031】
また、アーム体23中途部の保護カバー4側には、
図3及び
図4に示すように、支持プレート26が上方に突設され、該支持プレート26の突出端側には、切断刃3の中心軸に沿う方向に貫通する貫通孔26aが形成されている。
【0032】
支持プレート26の保護カバー4側には、ネジ孔27a(被螺合部)を有する第1ナット27が貫通孔26aに対応するように取り付けられている。
【0033】
保護カバー4は、
図2に示すように、背面視で略V字状をなす第1側壁部4aと、該第1側壁部4aのアーム体23側に並設され、背面視で略半円状をなす第2側壁部4bと、第1側壁部4aと第2側壁部4bとをエンジンE1側で繋ぐ湾曲状の第3側壁部4cとを備えている。
【0034】
第1側壁部4a、第2側壁部4b及び第3側壁部4cで囲まれる部分が切断機1の前側に開口する収容凹部4dとなっており、該収容凹部4dは、切断刃3のエンジンE1側略半分を収容するようになっている。
【0035】
すなわち、保護カバー4は、切断刃3におけるエンジンE1側の略半分を覆うようになっている。
【0036】
また、第3側壁部4cの上部には、作業者が掴むことが可能な略ブロック形状の樹脂部材4eが取り付けられている。
【0037】
第2側壁部4bには、アーム体23側に突出する規制部材41が設けられ、作業者が樹脂部材4eを把持して保護カバー4を切断機1の後側に回動させると、規制部材41がアーム体23に接触してそれ以上の回動ができないようになっている。
【0038】
一方、第2側壁部4bの内側面側には、
図2に示すように、背面視で略樽形状をなす規制プレート42が配設され、該規制プレート42は、第2側壁部4bに形成された貫通孔(図示せず)を介して上記環状張出部25の張出面に固定されている。
【0039】
規制プレート42の上縁部及び下縁部には、互いに離間するように張り出すとともに回転軸23a周りに円弧状に延びる一対の張出円弧部42aが形成されている。
【0040】
第2側壁部4bの内側面には、アーム体23の反対側に突出する一対のピン43が回転軸23aを挟んで切断機1の前側と後側とに離間して設けられている。
【0041】
そして、作業者が樹脂部材4eを把持して保護カバー4を切断機1の前側に回動させると、
図8に示すように、規制プレート42の各張出円弧部42aに各ピン43がそれぞれ接触してそれ以上の回動ができないようになっている。
【0042】
また、第2側壁部4bの外側面側には、
図1及び
図2に示すように、上記回転軸23a周りに円弧状に延びるガイドプレート44が第2側壁部4bの外側面から所定の間隔をあけて取り付けられ、ガイドプレート44には、当該ガイドプレート44に沿って円弧状に延びるスリット44aが形成されている。
【0043】
支持プレート26は、
図3及び
図4に示すように、押付体5を支持している。
【0044】
該押付体5は、第1ワッシャー6、捩りコイルバネ7(付勢部材)、棒状部8、操作ハンドル9、第2ワッシャー10及び第2ナット11で構成されている。
【0045】
棒状部8は、一端側外周面に第1螺合部81aを有する一方、他端側外周面に第2螺合部81bを有する軸部81を備えている。
【0046】
該軸部81における中途部の第2螺合部81b寄りの位置には、外側方に環状に突出する環状突条部82(嵌合部)が一体に形成され、該環状突条部82の断面は正六角形になっている。
【0047】
また、棒状部8は、
図3乃至
図5に示すように、操作ハンドル9の内側に係合可能な係合突起83aを外周部分に有する板状の取付プレート83を備えている。
【0048】
該取付プレート83の中心には、切断刃3の中心軸に沿う方向に貫通する嵌合孔84が形成されている。
【0049】
嵌合孔84は、
図5に示すように、断面三角形状をなす複数の嵌合凹部84aが周方向に等間隔に形成され、各嵌合凹部84aには、環状突条部82の各角部が嵌合可能になっている。
【0050】
尚、嵌合凹部84aは、12か所設けることが好ましい。嵌合凹部84aの数は、断面が六角形である環状突条部82における辺の数の2倍とした。
【0051】
各嵌合凹部84aは、嵌合孔84の貫通方向に見て、係合突起83aの中心と嵌合孔84の中心とを結ぶ直線を境に非対称となるように設けられている。具体的には、係合突起83aの中心と嵌合孔84の中心とを結ぶ直線を基準に嵌合孔84周りの一方側に最初に位置する嵌合凹部84aまでの角度αと、嵌合孔84周りの他方側に最初に位置する嵌合凹部84aまでの角度βとが異なる角度になっている。
【0052】
尚、嵌合凹部84aが12か所の場合、角度αは20度、角度βは10度とするのが好ましい。角度βは、計算式:β=360度÷(環状突条部82における辺の数×2)÷3から算出し、角度αは、βの倍の数とした。
【0053】
取付プレート83は、嵌合孔84を環状突条部82に外嵌合させることによって軸部81に取り付けられ、取付プレート83は、その表裏面をひっくり返しても軸部81に取り付けることができるようになっている。
【0054】
そして、軸部81の一端側から第3ワッシャー85と短い筒状をなす間座86とを順に外嵌合させ、且つ、第1螺合部81aに螺合させた第3ナット87と上記環状突条部82とで第3ワッシャー85及び間座86を挟み込むとともに、取付プレート83の嵌合孔84を環状突条部82に外嵌合させることによって棒状部8を得るようになっている。尚、棒状部8における取付プレート83を除く部分は、軸部81、第3ワッシャー85、間座86及び第3ナット87を組み立てることによって形成しているが、一体加工により形成するようにしてもよい。
【0055】
操作ハンドル9は、切断刃3の中心軸と直交する方向に延び、一端側に貫通孔9aが形成される一方、他端に作業者が把持操作可能な操作部9bを有するレバー状をなしている。
【0056】
取付プレート83を軸部81の環状突条部82に外嵌合させた状態で軸部81の第2螺合部81bを操作ハンドル9の貫通孔9aに通過させながら操作ハンドル9を取付プレート83に外嵌合させて当該取付プレート83の係合突起83aを操作ハンドル9の内側に係合させ、且つ、第2ワッシャー10を第2螺合部81bに嵌め込むとともに当該第2螺合部81bに第2ナット11を螺合させることにより、第2ワッシャー10と第3ワッシャー85とが操作ハンドル9及び取付プレート83を挟み込むことで操作ハンドル9の一端側が棒状部8に固定されるようになっている。
【0057】
操作ハンドル9の操作部9bは、操作ハンドル9の一端が棒状部8に固定された状態で当該棒状部8より上方に位置するようになっている。
【0058】
そして、棒状部8にその一端側から捩りコイルバネ7及び第1ワッシャー6を順に巻装させるとともに、棒状部8を一端側からガイドプレート44のスリット44a及び支持プレート26の貫通孔26aに順に挿通させ、且つ、第1螺合部81aを第1ナット27のネジ孔27aに螺合させることにより支持プレート26に押付体5が取り付けられるようになっていて、棒状部8の第1螺合部81aが第1ナット27のネジ孔27aを螺進螺退することにより、押付体5が切断刃3の中心軸に沿って移動するようになっている。
【0059】
また、棒状部8は、保護カバー4が回動する際、ガイドプレート44のスリット44aに沿って移動するようになっている。
【0060】
また、捩りコイルバネ7は、棒状部8に巻装させた状態で、一端が支持プレート26の縁部に固定される一方、他端が操作ハンドル9に固定され、第1螺合部81aが螺進して棒状部8が保護カバー4側(一方側)に移動する捩り方向にその付勢力を加えている。
【0061】
そして、棒状部8が保護カバー4側に移動した際、
図4に示すように、第1ワッシャー6がガイドプレート44を支持プレート26に押し付けるので、保護カバー4の回動を規制した状態に維持できるようになっている。
【0062】
また、操作ハンドル9は、フロントハンドル22の把持棒22aに接近配置され、
図6に示すように、操作部9bが把持棒22aに接近するように捩りコイルバネ7の付勢力に抗して作業者が操作ハンドル9を回動させることにより、第1螺合部81aが螺退する方向に捩られるよう構成されている。
【0063】
第1螺合部81aが螺退する方向に捩られると、棒状部8が保護カバー4の反対側に移動し、
図7に示すように、第1ワッシャー6とガイドプレート44との間に隙間が発生して保護カバー4の回動規制状態が解除され、当該保護カバー4を切断刃3の中心軸周りに回動させることができるようになっている。
【0064】
以上より、本発明の実施形態1によると、切断機本体2に対して保護カバー4を所望する位置に固定する際、まず作業者は、押付体5を捩りコイルバネ7の付勢力に抗して移動させて保護カバー4の回動規制状態を解除し、次いで、保護カバー4を所望する位置となるように回動させた後、押付体5から手を離す。すると、捩りコイルバネ7の付勢力によって押付体5が自動で移動して保護カバー4の回動が規制されるようになる。このように、作業者は、保護カバー4の回動規制状態を解除するときにだけ押付体5を操作すればよく、特許文献1の如き保護カバー4の回動の規制を行うときと回動規制の解除を行うときとの両方のときに押付体5を操作するといった必要がないので、保護カバー4を所望する位置に簡単に固定させることができる。
【0065】
また、押付体5は螺進螺退動作により切断刃3の中心軸に沿って移動するよう構成されているので、押付体5の移動方向に大きな力が加わっても押付体5がほとんど動かなくなり、作業中に押付体5が切断機本体2から不意に外れてしまうといったことを防ぐことができる。
【0066】
また、棒状部8の第1螺合部81aが螺進する捩り方向に常に捩りコイルバネ7の付勢力が加わった状態に維持されるので、切断機1を作動させると、その振動で棒状部8の第1螺合部81aが僅かながらに螺進していくようになる。したがって、切断機1を用いた作業中において切断機本体2に対して保護カバー4を強固に固定することができる。
【0067】
また、捩りコイルバネ7が棒状部8に巻装しているので、棒状部8が捩りコイルバネ7の内側に位置するようになり、棒状部8周りをコンパクトな形状にすることができる。
【0068】
また、切断機1の中心軸周りに円弧状に延びるスリット44aに棒状部8が位置するので、保護カバー4を切断機本体2に固定する際、押付体5によって保護カバー4を切断機本体2に押し付ける位置が保護カバー4の回動中心から離れた位置になる。したがって、保護カバー4の回動中心側よりも小さな押付力で保護カバー4の回転を妨げる力(モーメント)を得ることができ、構造をシンプルなものにしてコストを抑えることができる。
【0069】
また、操作ハンドル9がレバー状をなしているので、捩りコイルバネ7の付勢力に抗して作業者が操作ハンドル9を回す際、操作部9bを把持して回すと、操作ハンドル9の回動中心側を把持して回すよりも小さな力で操作ハンドル9を回すことができるようになり、操作の行い易い操作ハンドル9にすることができる。
【0070】
また、保護カバー4の回動規制状態を解除する際、作業者は、一方の手でフロントハンドル22の把持棒22aを把持してその手の人差し指及び中指の少なくとも一方で操作部9bを把持棒22a側に接近させる(引き寄せる)ことができるようになる。したがって、一方の手で把持棒22aを把持して切断機本体2を地面に押し付けた状態で他方の手で保護カバー4を回動させることができるようになり、手を大きく移動させる必要のある他方の手で操作部9bを操作する必要が無くなるので、保護カバー4の回動作業を効率良く行うことができる。
【0071】
また、嵌合孔84の各嵌合凹部84aが嵌合孔84の貫通方向に見て係合突起83aの中心と嵌合孔84の中心とを結ぶ直線を境に非対称となっているので、取付プレート83の表裏面を引っくり返して嵌合孔84を軸部81の環状突条部82に外嵌合させると、軸部81周りの係合突起83aの位置を僅かにずらすことができるようになる。したがって、押付体5を組み立てる際、捩りコイルバネ7に適切なテンションがかかるように軸部81周りの係合突起83aの位置を細かく変えて組み立てを行うことができ、組立時に必要な微調整を簡単に行うことができる。特に、嵌合凹部84aを12か所設けた場合、取付プレート83を引っくり返して嵌合孔84を軸部81の環状突条部82に外嵌合させことで軸部81周りの係合突起83aの位置を10度ずつ変えて組み立てを行うことができる。
【0072】
《発明の実施形態2》
図9は、本発明の実施形態2に係る携帯型切断機1を示す。この実施形態2では、切断機本体2の一部構造と押付体5の構造とが実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0073】
実施形態2の押付体5は、第1ワッシャー6、捩りコイルバネ7(付勢部材)、棒状部8、操作ハンドル9、第2ワッシャー10及び第2ボルト12で構成されている。
【0074】
実施形態2の支持プレート26には、第1ボルト28(被螺合部)がその軸部28aを保護カバー4側から切断刃3の中心軸に沿って延びるように貫通孔26aに通過させた状態で貫通孔26a周縁に溶着により固定され、上記軸部28aには、第1ワッシャー6が嵌められている。
【0075】
実施形態2の棒状部8は、切断刃3の中心軸に沿って延びる円筒部8aを備え、該円筒部8aの内周面は一端から他端に亘って螺合部8bが形成されている。
【0076】
円筒部8aの他端部分は、断面が正六角形の嵌合部8cとなっており、取付プレート83の嵌合孔84を嵌合部8cに外嵌合させることができるようになっている。
【0077】
また、円筒部8aにおける嵌合部8cに連続する部分には、外側方に環状に延出する円板部8dが一体に形成されている。
【0078】
そして、取付プレート83の嵌合孔84を嵌合部8cに外嵌合させた状態で係合突起83aが操作ハンドル9の内側に係合するように当該操作ハンドル9を取付プレート83に外嵌合させ、且つ、第2ボルト12の軸部12aを第2ワッシャー10と操作ハンドル9の貫通孔9aとに順に通過させて円筒部8aの螺合部8bに螺合させることにより、第2ワッシャー10と円板部8dとが操作ハンドル9及び取付プレート83を挟み込むことで操作ハンドル9の一端側が棒状部8に固定されるようになっている。尚、操作ハンドル9の棒状部8への固定は、その他の方法で固定する構造であってもよい。
【0079】
また、円筒部8aにその一端側から捩りコイルバネ7を巻装させるとともに、円筒部8a一端側の螺合部8bに第1ワッシャー6が嵌められた状態の第1ボルト28の軸部28aを螺合させることにより支持プレート26に押付体5が取り付けられるようになっていて、棒状部8の螺合部8bが第1ボルト28の軸部28aを螺進螺退することにより、押付体5が切断刃3の中心軸に沿って移動するようになっている。
【0080】
捩りコイルバネ7は、円筒部8aに巻装させた状態で、一端が支持プレート26の縁部に固定される一方、他端が操作ハンドル9に固定され、螺合部8bが螺進して棒状部8が保護カバー4側(一方側)に移動する捩り方向にその付勢力を加えている。
【0081】
そして、棒状部8が保護カバー4側に移動した際、第1ワッシャー6がガイドプレート44を支持プレート26に押し付けるので、保護カバー4の回動を規制した状態に維持できるようになっている。
【0082】
以上より、本発明の実施形態2によると、押付体5における螺進螺退構造の一部に第1ボルト28を用いるようにしても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0083】
尚、本発明の実施形態1,2では、押付体5が保護カバー4側に移動してガイドプレート44(保護カバー4)を支持プレート26(切断機本体2)に押し付けて保護カバー4の回動を規制するようになっているが、押付体5が保護カバー4側に移動して支持プレート26(切断機本体2)をガイドプレート44(保護カバー4)に押し付けて保護カバー4の回動を規制する構成であってもよい。
【0084】
また、本発明の実施形態1,2では、付勢部材として捩りコイルバネ7を用いているが、これに限らず、例えば、引張コイルバネ等であってもよい。
【0085】
また、本発明の実施形態1,2では、押付体5が螺進螺退動作によって切断刃3の中心軸に沿って移動する構成となっているが、押付体5がスライド動作によって切断刃3の中心軸に沿って移動する構成であってもよい。
【0086】
また、本発明の実施形態1,2では、軸部81の他端側に一体に形成された環状突条部82及び嵌合部8cの断面を正六角形にしているが、これに限らず、軸部81の他端側の断面が正多角形状になるようにすればよい。