特許第6857552号(P6857552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857552
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】フィルター付きガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20210405BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F16J15/10 N
   F16J15/12 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-110718(P2017-110718)
(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公開番号】特開2018-204696(P2018-204696A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】天野 琢也
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/125734(WO,A1)
【文献】 特開2005−121164(JP,A)
【文献】 特開2015−200332(JP,A)
【文献】 特開2008−249015(JP,A)
【文献】 特開2001−141069(JP,A)
【文献】 実開平06−030567(JP,U)
【文献】 特開2004−278619(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第01319953(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16J 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に密封接触するループ状の接触部材と、
前記接触部材に内縁が固定された板とを備え、
前記板は、
メッシュが形成された平板状のフィルターと、
前記フィルターの外側にあり、前記フィルターが配置された平面とは異なる平面に配置された平板状の外縁部と、
前記フィルターと前記外縁部との間に介在し、前記フィルターが配置された平面に対して傾斜した傾斜部とを備え、
前記接触部材には、前記フィルターが配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起が互いに間隔をおいて設けられていることを特徴とするフィルター付きガスケット。
【請求項2】
前記突起の端面には、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター付きガスケット。
【請求項3】
前記板における前記フィルターと前記傾斜部との間の部分にループ部が配置され、前記ループ部および前記板は、一体に形成されており、前記フィルターが配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起が互いに間隔をおいて、前記ループ部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルター付きガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター付きガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
流体が通る配管の内部にメッシュすなわちフィルターを備えるガスケットを装着して、配管内部の異物(例えば、塵埃、不純物)を濾過することが行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−39394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスケットに使用されるフィルターは、なるべく薄いことが好ましい。しかし、薄いフィルターを有するガスケットであっても、その取扱いを容易にできることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、取扱いを容易にすることが可能なフィルター付きガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルター付きガスケットの一態様は、軸に密封接触するループ状の接触部材と、前記接触部材に内縁が固定された板とを備え、前記板は、メッシュが形成された平板状のフィルターと、前記フィルターの外側にあり、前記フィルターが配置された平面とは異なる平面に配置された平板状の外縁部と、前記フィルターと前記外縁部との間に介在し、前記フィルターが配置された平面に対して傾斜した傾斜部とを備え、前記接触部材には、前記フィルターが配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起が互いに間隔をおいて設けられている。
【0007】
この態様においては、板が、平板状のフィルターと平板状の外縁部とを接続する傾斜部を有するので、板が薄い場合であっても、フィルター付きガスケットの曲げ剛性を高めることが可能である。このため、フィルター付きガスケットの予期せぬ変形が抑制され、その取扱いを容易にすることが可能である。また、互いに間隔をおいて設けられている複数の突起が、ガスケットを取り付ける構造物へのガスケットの貼り付きを防止または抑制する。また、これらの突起は、例えば、フィルター付きガスケットの製造工程、搬送工程または設置工程においてガスケットを積み重ねた場合、ガスケットの相互の貼り付きを防止または抑制する。
【0008】
好ましくは、前記突起の端面には、凹凸が形成されている。これらの微小な凹凸は、ガスケットを取り付ける構造物へのガスケットの貼り付きを防止または抑制することに役立ち、またガスケット相互の貼り付きを防止または抑制することに役立つ。
【0009】
好ましくは、前記板における前記フィルターと前記傾斜部との間の部分にループ部が配置され、前記ループ部および前記板は、一体に形成されており、前記フィルターが配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起が互いに間隔をおいて、前記ループ部に一体に形成されている。この場合には、接触部材に設けられた突起に加えて、ループ部に設けられた突起が、構造物へのガスケットの貼り付きを防止または抑制し、ガスケットを積み重ねた場合、ガスケットの相互の貼り付きを防止または抑制する。また、ループ部を板と同じ材料から形成することができるので、製造コストを低減することが可能である。
【0010】
本発明に係るフィルター付きガスケットの他の一態様は、軸に密封接触するループ状の接触部材と、前記接触部材に内縁が固定された板と、前記板に固定されたループ部とを備え、前記板は、メッシュが形成された平板状のフィルターと、前記フィルターの外側にあり、前記フィルターが配置された平面とは異なる平面に配置された平板状の外縁部と、前記フィルターと前記外縁部との間に介在し、前記フィルターが配置された平面に対して傾斜した傾斜部とを備え、前記ループ部は、前記板における前記フィルターと前記傾斜部との間の部分に固定され、前記接触部材と前記ループ部の少なくとも一方には、前記フィルターが配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起が互いに間隔をおいて設けられている。
【0011】
この態様においては、板が、平板状のフィルターと平板状の外縁部とを接続する傾斜部を有するので、板が薄い場合であっても、フィルター付きガスケットの曲げ剛性を高めることが可能である。このため、フィルター付きガスケットの予期せぬ変形が抑制され、その取扱いを容易にすることが可能である。また、互いに間隔をおいて設けられている複数の突起が、ガスケットを取り付ける構造物へのガスケットの貼り付きを防止または抑制する。また、これらの突起は、例えば、フィルター付きガスケットの製造工程、搬送工程または設置工程においてガスケットを積み重ねた場合、ガスケットの相互の貼り付きを防止または抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るフィルター付きガスケットを示す断面図である。
図2図1のフィルター付きガスケットの使用状態を示す図である。
図3図1のフィルター付きガスケットの平面図である。
図4図1のフィルター付きガスケットの底面図である。
図5図1のフィルター付きガスケットの接触部材の拡大断面図である。
図6図1のフィルター付きガスケットのループ部の拡大断面図である。
図7図1のフィルター付きガスケットを複数、積み重ねた状態を示す図である。
図8】変形例のフィルター付きガスケットを複数、積み重ねた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係るフィルター付きガスケットは、例えば、自動車の無段変速機(CVT)、鉄道車両用ブレーキ制御弁、自動車の燃料噴射装置に接続される燃料供給管に使用されるが、これらの用途には限定されない。
【0015】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態に係るフィルター付きガスケット1は、固定された円柱状の軸(例えばボス)2に密封接触する円ループ状の接触部材4と、接触部材4に内縁が固定された板6と、板6に固定されたループ部8とを備える。板6は、メッシュが形成された平板状のフィルター(スクリーン)10と、フィルター10の外側にあり、フィルター10が配置された平面とは異なる平面に配置された平板状の外縁部12と、フィルター10と外縁部12との間に介在し、フィルター10が配置された平面に対して傾斜した傾斜部14とを備える。
【0016】
図1および図2は、フィルター付きガスケット1の左側部分のみを示す。図3および図4に示すように、板6は円形の輪郭を有し、接触部材4と同心に配置されている。板6のフィルター10、外縁部12および傾斜部14は、互いに同心に配置されている。ループ部8もこれらと同心に配置されている。図1および図2にこれらの共通軸線Cを示す。
【0017】
この実施の形態では、軸2は、設置の後は、回転も直線運動もせず、接触部材4は、軸2に対して相対移動することなく、軸2の外周面に密着する。接触部材4は、弾性体、例えばエラストマーから形成されている。接触部材4には、軸2の全周にわたってその外周面に密着するリップ4Aが形成されている。図2は、リップ4Aの軸2に接触していない状態を示し、軸2に接触するとリップ4Aは弾性変形する。
【0018】
板6は、剛体、例えば金属または樹脂から形成されている。板6のフィルター10には、多数の貫通孔が形成されている。貫通孔は例えばプレス加工またはエッチングで形成することができる。図3および図4において、斜線はフィルター10のメッシュ部分を示す。但し、貫通孔の形状は図3および図4には示されてはいない。
【0019】
フィルター10の内縁は、接触部材4に固定されている。固定の方式は限定されないが、例えば、下記の方式であってよい。図5に示すように、フィルター10の内縁には、複数の貫通孔10Aが形成されている。貫通孔10Aは例えば等角間隔で配置されている。また、フィルター10の最内縁には、プレス加工によって曲折部10Bが形成されている。フィルター10の内縁をプレス型に入れておき、接触部材4の材料であるエラストマーが、曲折部10Bを含むフィルター10の内縁を覆い、かつ貫通孔10Aに侵入するように、接触部材4をプレス成形する。エラストマーがフィルター10の内縁を覆い、かつ貫通孔10Aを通じてフィルター10の両面側のエラストマーがつながることにより、フィルター10は強固に接触部材4に固定される。
【0020】
ループ部8は、円環状の部材であり、弾性体、例えばエラストマーから形成されている。ループ部8は、板6におけるフィルター10と傾斜部14との間の部分に固定されており、板6の両面に配置されている。
【0021】
ループ部8の固定の方式は限定されないが、例えば、下記の方式であってよい。図1および図2に示すように、フィルター10と傾斜部14との間には、フィルター10と同一平面にある延長部16がある。傾斜部14は、この延長部16と外縁部12とを接続する。図6に示すように、延長部16には、複数の貫通孔16Aが形成されている。貫通孔16Aは例えば等角間隔で配置されている。板6をプレス型に入れておき、ループ部8の材料であるエラストマーが、貫通孔16Aに侵入するように、ループ部8をプレス成形する。貫通孔16Aを通じて延長部16の両面側のエラストマーがつながることにより、ループ部8は強固に板6に固定される。
【0022】
図4から図6に示すように、接触部材4には、フィルター10が配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起4Bが互いに間隔をおいて設けられており、ループ部8にも、フィルター10が配置された平面に対して垂直な方向に突出する複数の突起8Aが互いに間隔をおいて設けられている。図4に示すように、4つの突起4Bが等角間隔で配置され、4つの突起8Aが等角間隔で配置されているが、突起の数および配置は図示に限られない。また突起の形状も図示に限られない。
【0023】
図2に示すように、フィルター付きガスケット1は、板6の外縁部12が構造物Sに接合された状態で使用される。図2において、矢印は、流体、例えばオイルの流れる方向を示す。フィルター10は、流体中の異物(例えば、塵埃、不純物)を濾過する。フィルター10を通過した液体は、軸2と構造物Sの隙間を通り抜ける。
【0024】
この実施の形態においては、板6が、平板状のフィルター10と平板状の外縁部12とを接続する傾斜部14を有するので、板6が薄い場合であっても、フィルター付きガスケット1の曲げ剛性を高めることが可能である。このため、フィルター付きガスケット1の予期せぬ変形が抑制され、その取扱いを容易にすることが可能である。
【0025】
また、流体の力を受けて板6が大きく変形したとしても、等間隔に配置された複数の突起4B,8Aが、ガスケット1を取り付ける構造物Sへの接触部材4およびループ部8の面接触を防止し、これらの構造物Sへの貼り付きを防止または抑制する。仮に複数の突起8Aが構造物Sに接触しても、突起8A同士の間を流体が通過することができる。
【0026】
また、これらの突起4B,8Aは、例えば、フィルター付きガスケット1の製造工程、搬送工程または設置工程において、図7に示すように、ガスケット1を積み重ねた場合、ガスケット1の相互の貼り付きを防止または抑制する。
【0027】
これらの突起4B,8Aの端面(すなわちガスケット1を積み重ねたときに、他のガスケット1に接触する面)には、微小な凹凸(例えばドットパターン)が形成されていると好ましい。これらの微小な凹凸は、ガスケット1を取り付ける構造物Sへのガスケット1の貼り付きを防止または抑制することに役立ち、またガスケット1相互の貼り付きを防止または抑制することに役立つ。
【0028】
変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
【0029】
例えば、図8に示す変形例のように、突起4B,8Aと反対側に突起4C,8Bを設けてもよい。突起4A,4Bの両方を接触部材4に設けてもよいし、突起8A,8Bの両方をループ部8に設けてもよい。
【0030】
上記の実施形態では、接触部材4とループ部8の両方に突起が設けられているが、接触部材4とループ部8の一方に突起を設けてもよい。さらにはループ部8自体がなくてもよい。
【0031】
上記の実施形態では、ループ部8および板6は、異なる材料から形成されている別個の部材である。しかし、ループ部8および板6は、例えば樹脂から一体に形成され、突起8A(および/または8B)は、ループ部8に一体に形成されていてもよい。この場合には、ループ部8を板6と同じ材料から形成することができるので、製造コストを低減することが可能である。
【0032】
上記の実施形態では、軸2の断面、接触部材4の形状、ループ部8の形状、板6の輪郭、および板6を構成する各部分の輪郭は円形であるが、これらの形状は円形でなくてもよく、例えば矩形、正方形であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 フィルター付きガスケット
2 軸
4 接触部材
4A リップ
4B,4C 突起
6 板
8 ループ部
8A,8B 突起
10 フィルター
12 外縁部
14 傾斜部
10A 貫通孔
10B 曲折部
16 延長部
16A 貫通孔
S 構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8