(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調理容器を用いた加熱調理では、パンやケーキ等のような負荷の小さな調理物だけでなく、グラタンやポトフ等のような負荷の大きな調理物も加熱調理される。それゆえ、調理物の負荷の相違に関わらず、特許文献1のように設定される加熱調理時間のみに基づいてグリルバーナの火力を変更すると、負荷の大きな調理物では、不十分な加熱状態で調理が終了するという問題がある。
【0006】
一方、調理の進行状態を判断するために、グリル庫内に設けられた温度センサで検知される庫内温度に基づき、調理物の負荷を判定し、判定結果に基づき加熱調理中のバーナの火力を制御することが考えられる。
【0007】
しかしながら、調理容器は調理物よりも熱容量が大きいため、調理物の温度が庫内温度に反映され難い。負荷の相違が明確に現れるような長時間の判定時間を設定できれば、庫内温度に基づいて調理物の負荷を判定できるとも考えられるが、調理容器を用いた加熱調理で調理を終了させる加熱調理時間を設定している場合、設定された加熱調理時間よりも一定時間以上前に調理物の負荷を判定する必要がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、本発明の目的は、調理容器に負荷の大きな調理物を収容して加熱調理する場合に、調理容器内の調理物の負荷を判定し、調理物の負荷に応じて、調理物を過不足なく加熱して、食味の良好な調理物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
グリル庫と、
調理物が収容され、グリル庫に出し入れ自在に収納される調理容器と、
調理容器を加熱する上下バーナと、
グリル庫内の庫内温度を検知する少なくとも1つの温度検知部と、
加熱調理時間を設定する調理時間設定部と、
上下バーナの火力を制御する制御装置と、を有する加熱調理器であって、
制御装置は、
加熱調理が開始されると、加熱調理開始から所定の負荷判定開始時間が経過するかまたは庫内温度が所定の負荷判定開始温度に到達する負荷判定開始タイミングまで、上下バーナを所定の初期火力で燃焼させ、
負荷判定開始タイミングが到来すると、初期火力よりも加熱量が低くなるように、下火バーナを燃焼させた状態で、上火バーナを消火させるかまたは上火バーナの火力を弱めて燃焼させる所定の負荷判定火力に切り替え、
負荷判定火力へ切り替え後、少なくとも所定の判定猶予時間が経過するまで、負荷判定火力を維持し、
判定猶予時間が経過した後、負荷判定火力で調理容器を加熱したときの庫内温度が、負荷判定開始タイミング到来時の庫内温度よりも低くなると、上下バーナの火力を所定の判定後火力に切り替える加熱調理器である。
【0010】
上記加熱調理器によれば、加熱調理開始から所定の負荷判定開始時間が経過するかまたは庫内温度が所定の負荷判定開始温度に到達する負荷判定開始タイミングまでは、所定の初期火力で上下バーナを燃焼させるから、グリル庫内の庫内温度及び調理容器の温度を上昇させた状態からの温度特性を評価できる。
【0011】
一方、初期火力による加熱で調理容器の温度をある程度、上昇させれば、パンやケーキ等のように負荷の小さな調理物の場合、上下バーナの火力を初期火力よりも加熱量の低い負荷判定火力に変更しても、庫内温度は負荷判定火力切り替え時よりも下がり難い。これに対し、負荷の大きな調理物の場合、初期火力による加熱で調理容器の温度はある程度、上昇しているが、調理容器内の調理物は内部まで十分に加熱されていない。そのため、上下バーナの火力を初期火力よりも加熱量の低い負荷判定火力に変更すると、それまでの加熱によって庫内温度が一時的に上昇した後、庫内温度が徐々に低下する。従って、負荷の大きな調理物を加熱調理する場合、負荷判定火力切り替え後の庫内温度の低下を検知することにより、加熱調理時間内の適切なタイミングで、調理物の負荷に応じてバーナの火力を調整することができる。
【0012】
しかしながら、負荷の大きな調理物であっても、グラタン等のように負荷判定火力切り替え直後から庫内温度が上昇するものもあれば、多量の水を使用したポトフ等の煮込み料理のように負荷判定火力切り替え時から一定時間、経過するまで、庫内温度が上昇しないものもある。そのため、負荷判定火力切り替え前後の庫内温度を比較して、所定時間内に庫内温度が低下するかどうかから調理物の負荷を判定すると、後者の場合、庫内温度が一定時間、上昇しないため、負荷判定火力切り替え直後で判定が終了してしまう。その結果、実際に庫内温度が上昇した後、低下するよりも十分前の誤ったタイミングでバーナの火力の調整が行われてしまい、調理物が適切に加熱されないという問題がある。
【0013】
これに対し、上記加熱調理器によれば、負荷判定火力への切り替え後、少なくとも所定の判定猶予時間が経過するまで、負荷判定火力を維持するから、庫内温度が上昇しない場合でも、上下バーナの火力変更が禁止される。そして、上記したように、グラタンやポトフ等のようにある程度以上の負荷の大きな調理物を調理する場合、初期火力よりも加熱量の低い負荷判定火力で調理容器を加熱したときの庫内温度は、初期火力で加熱していた負荷判定開始タイミング到来時の庫内温度よりも低下してくる。そのため、判定猶予時間が経過した後、負荷判定火力で調理容器を加熱したときの庫内温度が、負荷判定開始タイミング到来時の庫内温度よりも低くなれば、負荷の大きな調理物が調理されていると判定できる。従って、判定猶予時間が経過した後、負荷判定火力で調理容器を加熱したときの庫内温度が、負荷判定開始タイミング到来時の庫内温度よりも低くなったときに、上下バーナの火力を所定の判定後火力に切り替えることにより、加熱調理時間内の適切なタイミングで調理物の負荷に応じたバーナの火力に調整して、調理を継続させることができる。
【0014】
上記加熱調理器において、好ましくは、
判定猶予時間は、加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの初期加熱条件または加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの庫内温度の温度勾配に基づいて設定される。
【0015】
加熱調理開始から所定の負荷判定開始時間が経過するかまたは庫内温度が所定の負荷判定開始温度に到達する負荷判定開始タイミングの到来時期は調理物の負荷によって異なるから、加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの初期加熱条件または加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの庫内温度の温度勾配に基づいて判定猶予時間を設定することにより、加熱調理時間内のより適切なタイミングでバーナの火力を所定の判定後火力に切り替えることができる。
【0016】
上記加熱調理器において、好ましくは、
温度検知部は、グリル庫内の上方の温度を検知する第1温度検知部と、グリル庫内の下方であって、調理容器近傍の温度を検知する第2温度検知部とを有し、
制御装置は、負荷判定開始温度を第1温度検知部で検知される庫内温度に基づき判定し、
負荷判定火力で調理容器を加熱したときの庫内温度が負荷判定開始タイミング到来時の庫内温度よりも低くなるかどうかを第2温度検知部で検知される庫内温度に基づき判定する。
【0017】
初期の加熱により調理容器の温度が上昇すると、グリル庫内全体の温度が上昇するから、グリル庫の上方の温度を検知する第1温度検知部で検知される庫内温度に基づいて負荷判定開始温度を判定することにより、調理容器が確実に所定温度以上に加熱されたときに負荷判定を開始させることができる。
【0018】
一方、負荷判定開始タイミングが到来すると、初期火力から上火バーナを消火させるかまたは上火バーナの火力を弱める負荷判定火力に切り替えるため、グリル庫内の上方の庫内温度は温度降下が顕著となり、調理物の負荷が判定し難くなる場合がある。しかしながら、上記加熱調理器によれば、負荷判定火力では下火バーナは燃焼させるから、グリル庫の下方であって、調理容器近傍の庫内温度の温度変化を第2温度検知部でより正確に検知できる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、調理容器内に負荷の大きな調理物を収容した容器調理が可能な加熱調理器において、加熱調理時間内の適切なタイミングで調理物の負荷を判定できるとともに、適切なタイミングで調理物の負荷の判定に基づいて上下バーナの火力を切り替えて調理物を加熱できる。これにより、調理の過不足を低減して、食味の良好な調理物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本実施の形態に係る加熱調理器を具体的に説明する。
図1は、ガスコンロに適用した本実施の形態の加熱調理器の一例を示す概略斜視図であり、
図2は、その概略縦断面図である。
図1に示すように、ガスコンロは、天板30の上面に複数のコンロバーナ31,32,33を備え、コンロ本体3の内部には、グリル庫2が設けられている。グリル庫2内には、例えば、焼網(図示せず)や、ダッチオーブンのような金属製や陶器製の調理容器5等の調理器具が収納される。天板30上面の前方には、運転状態や調理モード、さらに調理条件等を表示する液晶表示部300が配設されており、表示盤が視認できるように構成されている。なお、本明細書では、グリル扉21とグリル庫2の奥側とが対向する方向を前後方向、グリル庫2の幅方向を左右方向、グリル庫2の高さ方向を上下方向という。
【0022】
図2に示すように、グリル庫2の前面開口部100には、前後にスライド開閉するグリル扉21が設けられている。グリル扉21の後面部下方には、グリル庫2内へ向かって連結板210が延設されており、連結板210に、汁受け皿16を載置した金属製の線材からなる支持枠18が連結されている。支持枠18には、前後辺をそれぞれ上方に突出させ、焼網や調理容器5を設置するための容器支持体19を下方から支持する前後の支持部180が設けられている。容器支持体19は、略矩形状の金属製の枠体であり、支持枠18の前後の支持部180に容器支持体19の前後部を載置させた状態で、容器支持体19の枠体内に調理容器5を落とし込み、左右の支持枠部に調理容器5本体の左右の把持部を載置させることにより、グリル庫2内で調理容器5が所定位置に設置される。これにより、グリル扉21を手前に引くことで、調理容器5及び汁受け皿16がグリル庫2の前方に引き出され、グリル扉21を後方に押すことで、調理容器5及び汁受け皿16がグリル庫2内に収納されるように構成されている。
【0023】
グリル庫2内の上壁の中央部には、調理容器5を上方から加熱するための上火バーナ56が設けられている。また、グリル庫2内の左右の側壁の中央部より下方位置には、調理容器5を側方及び下方から加熱するための下火バーナ55が設けられている。なお、下火バーナ55は、一方の側壁にのみ設けられてもよい。グリル庫2の奥端には排気ダクト17が連設されており、排気ダクト17が排気通路13となっている。
【0024】
グリル庫2の後壁の左右中央部には、感熱部がグリル庫2の内方に突出する第1温度センサ(第1温度検知部)14aが配設されており、その下方であって、第1温度センサ14aよりも前方に感熱部が突出するように第2温度センサ(第2温度検知部)14bが配設されている。これら第1及び第2温度センサ14a,14bにより、グリル庫2内の庫内温度が検知され、庫内温度の検知信号は後述する制御装置Cに出力される。
【0025】
図1に戻って、グリル扉21の右側に位置する操作部23には、電源スイッチ29とコンロバーナ31,32,33の点・消火と火力調整機能を兼備した点消火スイッチ24,25,26が配設されている。一方、グリル扉21の左側に形成された操作部36には、上下バーナ56,55の点・消火と火力調整機能を兼備したグリル用スイッチ37と、その下方にカンガルー式の操作ユニット38とが設けられている。
【0026】
図3に示すように、操作ユニット38には、タッチパネル式の操作部380が設けられている。操作部380には、例えば、グリル庫2内に調理物を収容した調理容器5を収納し加熱調理する容器調理モードを選択するためのオートメニュースイッチ381と、容器調理モードの中から加熱調理時間を設定したタイマ調理を行ったり、調理の種類を選択したりするための調理選択スイッチ382と、容器調理モードでタイマ調理を行う場合の加熱調理時間を設定するための調理時間設定スイッチ383と、表示部384とを備えている。例えば、調理容器5としてダッチオーブンを用い、加熱調理時間を設定したタイマ調理を行う場合、使用者がオートメニュースイッチ381を操作すると、複数の調理モードの中からココットやダッチオーブンを用いた容器調理モードが択一的に選択されて表示部384に点灯表示される。また、使用者が容器調理モードを選択した後、調理選択スイッチ382を操作するごとに、タイマ設定の他、グラタン、ケーキ/パン等の調理の種類が択一的に選択されて表示部384に点灯表示される。さらに、使用者がタイマ調理を選択した後、調理時間設定スイッチ383を操作するごとに、加熱調理時間が1分間隔で増減されて表示部384に点灯表示される。従って、本実施の形態では、オートメニュースイッチ381、調理選択スイッチ382、及び調理時間設定スイッチ383が、調理時間設定部として機能する。
【0027】
図4は、本実施の形態のガスコンロの回路図である。なお、制御装置Cは、上下バーナ56,55だけでなく、コンロバーナ31,32,33の燃焼も制御するが、以下では上下バーナ56,55についてのみ説明し、コンロバーナ31,32,33については説明を省略する。
【0028】
図4に示すように、上下バーナ56,55にはそれぞれ、ガス供給管550から分岐した分岐管551,561が接続されており、ガス供給管550には、元弁V1、ガバナG、及び電磁安全弁V2が介設されている。分岐管551,561にはそれぞれ、図示しないステッピングモータの作動によってオリフィスを調整して燃料ガスの流量を変更する火力調整板S1,S2が設けられており、火力調整板S1,S2の下流側にはラッチ弁V3,V4が設けられている。これらの元弁V1、電磁安全弁V2、ラッチ弁V3,V4や、ステッピングモータは、制御装置Cでその動作が制御される。具体的には、元弁V1及び電磁安全弁V2を開閉させると、上下バーナ56,55の両方に燃料ガスが供給または停止される。また、ステッピングモータを作動させて火力調整板S1,S2のオリフィスを調整することにより、上下バーナ56,55の火力がそれぞれ強火力と弱火力との間で変更される。さらに、ラッチ弁V3,V4を閉弁させることにより、上下バーナ56,55への燃料ガスの供給がそれぞれ遮断される。また、上下バーナ56,55の各炎孔近傍には、イグナイタ600から高電圧を印加させることによって火花放電する点火電極501,601と、炎センサ502,602とが配設されている。
【0029】
制御装置Cには、上記第1及び第2温度センサ14a,14b、電源スイッチ29、グリル用スイッチ37、元弁V1、電磁安全弁V2、ステッピングモータ、ラッチ弁V3,V4、液晶表示部300、操作部380、イグナイタ600、及び炎センサ502,602等が電気配線を介して接続されている。
【0030】
図示しないが、グリル庫2を制御する制御装置Cには、CPU、ROM、RAM、タイマ等を備え、制御プログラムが格納されたマイクロコンピュータが組み込まれている。マイクロコンピュータは、容器調理モードが選択された場合、制御プログラムに従って、上下バーナ56,55の火力を制御する。また、制御装置Cは、機能構成として、容器調理モードが選択された場合に、元弁V1、電磁安全弁V2、ステッピングモータ、及びラッチ弁V3,V4を作動させて上下バーナ56,55の火力を制御する燃焼制御部、初期温度を判定する初期温度判定部、庫内温度に基づいて調理物の負荷を判定する負荷判定部、判定猶予時間を設定する判定猶予時間設定部等を有している。また、マイクロコンピュータのメモリには、容器調理モードが選択された場合に、選択された条件、初期温度、及び調理物の負荷判定に基づいて設定される上下バーナ56,55の所定の火力や、初期火力切替時間、初期火力切替温度、負荷判定開始時間、負荷判定開始温度、判定猶予時間等のデータテーブルが格納されている。
【0031】
表1は、容器調理モードでダッチオーブンを用いたタイマ調理が選択された場合に設定されている第1及び第2初期火力、初期火力切替時間、初期火力切替温度、負荷判定開始時間、負荷判定開始温度、判定猶予時間、及び調理物の負荷判定後に設定される判定後火力の各設定値を含むデータテーブルの一例である。なお、これらの設定値は、実験により求められたものである。
【0033】
図5及び
図6はそれぞれ、表1の初期温度が低温(20℃)の場合の各設定値を用いて、負荷の異なる調理物を収容したダッチオーブンをグリル庫2内に収納してタイマ調理を行った場合の加熱時間に対する庫内温度の温度変化であり、
図5は、負荷の大きな調理物であるグラタンの場合の温度変化を、
図6は、負荷の非常に大きな調理物であるポトフの場合の温度変化を示す。各図中、実線は、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiの温度変化を、破線は、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjの温度変化を示す。なお、上下バーナ56,55をいずれも消火させる全体の加熱調理時間は、
図5のグラタンの場合、1680秒が設定され、
図6のポトフの場合、1500秒が設定されている。
【0034】
表1並びに
図5〜
図6を参照して、本実施の形態のガスコンロにおける制御動作を概略的に説明すると、加熱調理開始初期には、まず上下バーナ56,55の火力を第1初期火力P1(例えば、上下バーナ56,55いずれも強火力)とし、加熱調理開始からの加熱時間txが所定の初期火力切替時間t1を経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の初期火力切替温度T1に到達すると、上下バーナ56,55の火力を第2初期火力P2(例えば、上火バーナ56を強火力、下火バーナ55を弱火力)に切り替える。このように、負荷判定の開始前に一定条件の加熱を行うことにより、グリル庫2内及び調理容器5の温度がそれぞれ一定温度に上昇した状態からの庫内温度の温度特性を評価できる。また、加熱調理開始初期に上下バーナ56,55をいずれも強火力で燃焼させ、負荷判定開始前に上下バーナ56,55の火力を第2初期火力P2に弱めれば、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiの温度勾配が緩やかになるため、オーバーシュートが防止され、より正確に調理物の負荷を判定できるだけでなく、調理容器5の内壁のコーティングの劣化も防止できる。また、
図5及び
図6では、初期温度T0が低温の場合の温度変化のみが示されているが、初期温度T0が低温の場合と高温の場合とでは、上下バーナを56,55を一定の火力で燃焼させても庫内温度の温度特性が異なってくる。このため、本実施の形態では、表1に示すように、初期温度T0に応じて初期火力切替時間t1等が設定されている。これにより、グリル庫2を用いた加熱調理を連続して行う場合でも、より一層、正確に調理物の負荷を判定できる。
【0035】
また、本実施の形態では、加熱調理開始からの加熱時間txが所定の負荷判定開始時間taを経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の負荷判定開始温度Taに到達する負荷判定開始タイミングが到来すると、上下バーナ56,55の火力を、第2初期火力P2の加熱量よりも低い、負荷判定火力Pa(例えば、上火バーナ56を消火、下火バーナ55を弱火力)に切り替える。このとき、第1温度センサ14aはグリル庫2内の上方の庫内温度Tiを検知しているため、上火バーナ56を消火させた負荷判定火力Paに切り替えることにより、
図5及び
図6に示すように、庫内温度Tiはいずれの負荷の調理物でも顕著に低下する。そのため、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiの低下は、上火バーナ56を消火させたことによる要因が大きく、内部まで加熱されていない調理物がどの程度、庫内温度Tiの低下に影響しているかどうかの判断が難しい。
【0036】
一方、第1温度センサ14aよりも下方に配設され、より調理容器5近傍の温度を検知可能な第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjの温度変化を参照すると、
図5の負荷の大きな調理物では、負荷判定火力Paに切り替えられても、一定時間、継続して庫内温度Tjが上昇し、その後、負荷判定火力Pa切り替え時よりも庫内温度Tjが低下してくる。これに対し、
図6の負荷の非常に大きな調理物では、負荷判定火力Paに切り替えられると、一定時間、経過してから庫内温度Tjが上昇し、その後、負荷判定火力Pa切り替え時よりも庫内温度Tjが低下してくる。従って、いずれの調理物でも、上下バーナ56,55の火力が第2初期火力P2よりも加熱量の低い負荷判定火力Paに切り替えられると、最終的に庫内温度Tjは低下してくる。しかしながら、負荷の非常に大きな調理物の場合、負荷判定火力Paへ切り替えられた後、庫内温度Tjは一定時間、略同一温度で保持されるため、負荷判定火力Pa切り替え前後の庫内温度Tjを比較して、所定時間内に庫内温度Tjが低下するかどうかから調理物の負荷を判定すると、庫内温度Tjが上昇する前の短時間内に判定が終了してしまう。その結果、負荷判定後、上下バーナ56,55の火力を制御する場合、実際の庫内温度Tjが低下するよりも十分前に加熱量が変更されてしまい、調理物が適切に加熱されないという問題が生じてくる。
【0037】
このため、本実施の形態では、上下バーナ56,55の火力が負荷判定火力Paに切り替えられる負荷判定開始タイミング到来時の庫内温度Tjを基準判定温度Tkとして設定するとともに、負荷判定火力Paへの切り替え後、所定の判定猶予時間t3を設定し、判定猶予時間t3が経過するまで負荷判定火力Paを維持して上下バーナ56,55の火力変更を禁止し、判定猶予時間t3が経過した後、負荷判定火力Paで加熱されているときの庫内温度Tjが基準判定温度Tkよりも低くなるかどうかから調理物の負荷を判定する。これにより、負荷判定火力Pa切り替え後、継続して庫内温度Tjが上昇する負荷の大きな調理物や、負荷判定火力Pa切り替え時から一定時間、経過した後、庫内温度Tjが上昇する負荷の非常に大きな調理物であっても、第1及び第2初期火力P1,P2よりも加熱量の低い負荷判定火力Paに切り替えることに起因した実際の庫内温度Tjの低下を検知してから、上下バーナ56,55の火力を調整することができる。
【0038】
そして、判定猶予時間t3を経過した後、負荷判定火力Paで加熱されているときの庫内温度Tjが基準判定温度Tkよりも低くなると、負荷の大きな調理物または負荷の非常に大きな調理物が調理されていると判定できるから、上下バーナ56,55の火力を、負荷判定火力Paよりも加熱量の高い所定の判定後火力Pb(例えば、上火バーナ56を強火力で再点火、下火バーナ55を弱火力)に切り替える。これにより、加熱調理時間内の適切なタイミングで上下バーナ56,55の加熱量を増加させて、調理を継続させることができる。
【0039】
なお、負荷判定火力Paに切り替えられた後、庫内温度Tjが基準判定温度Tkよりも低くなるまでの時間は、調理物の負荷によって変化する。そのため、判定猶予時間t3を固定すると、判定猶予時間t3よりも前に庫内温度Tjが基準判定温度Tkよりも低くなり、判定猶予時間t3経過時には調理物の温度が低下し過ぎて、判定後火力Pbで加熱を継続させても、調理物の加熱が不十分となる場合がある。一方、
図5及び
図6に示すように、加熱調理開始から負荷判定開始時間taが経過するかまたは庫内温度Tiが負荷判定開始温度Taに到達する負荷判定開始タイミングの到来時期は、調理物の負荷によって異なる。このため、表1に示すように、本実施の形態では、判定猶予時間t3は、加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの初期加熱条件、すなわち加熱調理開始から負荷判定開始時間taが経過するか、または第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが負荷判定開始温度Taに到達するかどうかに基づいて異なる時間が設定される。例えば、
図5の負荷の大きな調理物では、負荷判定開始時間taが経過する前に、庫内温度Tiが負荷判定開始温度Taに到達しているため、負荷判定開始温度Ta基準の判定猶予時間t3(例えば、60秒)が設定されており、
図6の負荷の非常に大きな調理物では、庫内温度Tiが負荷判定開始温度Taに到達する前に、負荷判定開始時間taが経過しているため、負荷判定開始時間ta基準の判定猶予時間t3(例えば、270秒)が設定されている。このように、加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの初期加熱条件に基づき判定猶予時間t3を変更することにより、適切なタイミングで調理物の負荷を判定できるとともに、上下バーナ56,55の火力を判定後火力Pbに切り替えることができる。
【0040】
図7及び
図8は、本実施の形態のガスコンロにおける、容器調理モードでダッチオーブンを用いたタイマ調理が選択された場合の制御動作の一例を示すフローチャートである。
まず、オートメニュースイッチ381で容器調理モードの選択を受け付け、さらに調理選択スイッチ382でダッチオーブンを用いたタイマ調理が選択され、調理時間設定スイッチ383で加熱調理時間が設定されて、グリル用スイッチ37がオンされると、上下バーナ56,55が点火されて、所定の第1初期火力P1で加熱が開始される(ステップST1〜ST5)。
【0041】
加熱が開始されると、タイマを起動させるとともに、初期温度T0が取得され、初期温度T0に応じた、初期火力切替時間t1、初期火力切替温度T1、負荷判定開始時間ta、負荷判定開始温度Ta、第2初期火力P2、負荷判定火力Pa、判定猶予時間t3、判定後火力Pb等の各種設定値が読み込まれる(ステップST6〜ST7)。
【0042】
加熱時間txが所定の初期火力切替時間t1を経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の初期火力切替温度T1に到達すると、上下バーナ56,55の火力を、第1初期火力P1よりも加熱量が低い第2初期火力P2に弱める(ステップST8〜ST10)。
【0043】
次いで、加熱時間txが所定の負荷判定開始時間taを経過するかまたは第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の負荷判定開始温度Taに到達する負荷判定開始タイミングが到来すると、上下バーナ56,55の火力を、第2初期火力P2よりも加熱量が低い負荷判定火力Paに弱めるとともに、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjを基準判定温度Tkとして記憶する(ステップST11〜ST14)。
【0044】
また、負荷判定開始タイミングが到来すると、初期加熱条件に基づいて判定猶予時間t3を設定するとともに、判定猶予時間t3を計時するための別タイマをスタートさせる。具体的には、加熱時間txが所定の負荷判定開始時間taを経過する前に、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の負荷判定開始温度Taに到達し、負荷判定火力Paへの切り替えが負荷判定開始温度Taに基づく場合、判定猶予時間t3(Ta基準)が設定され、第1温度センサ14aで検知される庫内温度Tiが所定の負荷判定開始温度Taに到達する前に加熱時間txが所定の負荷判定開始時間taを経過し、負荷判定火力Paへの切り替えが負荷判定開始時間taに基づく場合、判定猶予時間t3(ta基準)が設定される(ステップST15〜ST17)。
【0045】
次いで、上下バーナ56,55の火力を負荷判定火力Paへ切り替えてからの経過時間tyが判定猶予時間t3を経過すると、設定された加熱調理時間が終了するまでに、第2温度センサ14bで検知される庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満になるかどうかが判定される(ステップST18及びST19)。加熱調理時間が終了するまでに庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満になった場合(ステップST19で、Yes)、負荷の大きな調理物または負荷の非常に大きな調理物が調理されていると判定できるから、上下バーナ56,55の火力を負荷判定火力Paよりも加熱量を増加させた判定後火力Pbに切り替える(ステップST20)。なお、加熱調理時間が終了するまでに庫内温度Tjが基準判定温度Tk未満にならなければ(ステップST19で、No、ステップST23で、Yes)、加熱量を低下させた負荷判定火力Paで加熱しても庫内温度Tjが上昇しない負荷の小さな調理物であると考えられるから、加熱調理時間が終了するまで上下バーナ56,55の火力は負荷判定火力Paで維持される。
【0046】
以上のように、本実施の形態のガスコンロによれば、調理物を収容した調理容器5をグリル庫2内に収容して加熱調理する場合に、負荷の大きな調理物でも、負荷の非常に大きな調理物でも適切なタイミングで調理物の負荷を判定できるとともに、適切なタイミングで上下バーナ56,55の火力を判定後火力に調整できる。これにより、調理の過不足を低減し、食味の良好な調理物を提供できる。
【0047】
(その他の実施の形態)
(1)上記実施の形態では、判定猶予時間を加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの初期加熱条件に基づいて設定しているが、初期火力での加熱時間における調理物の負荷の相違は、加熱調理開始から負荷判定開始タイミング到来時までの温度勾配にも現れる。従って、判定猶予時間を加熱調理開始から負荷判定開始タイミングが到来するまでの庫内温度の温度勾配に基づいて設定してもよい。
(2)上記実施の形態では、加熱調理時間をタイマ設定により行っているが、オートメニュー調理で調理の種類を選択することにより加熱調理時間が設定されてもよい。これによれば、同一種類の調理であっても、調理量の相違による調理の過不足を低減できる。
(3)上記実施の形態では、温度検知部として第1及び第2温度センサが用いられているが、いずれか一方の温度センサを用いてもよいし、単一の温度センサを用いてもよい。