(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のガスクロマトグラフ質量分析装置およびガスクロマトグラフ質量分析方法の実施の形態を、この順に図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
≪ガスクロマトグラフ質量分析装置≫
図1は、実施形態に係るガスクロマトグラフ質量分析装置1の概略を示す構成図である。
図1に示すガスクロマトグラフ質量分析装置1は、ガスクロマトグラフで分離した試料成分を順次に質量分析するものであって、クロマト分離部10、分岐管20、第1配管21、第2配管22、クロマト検出器30、冷却器40、質量分析計50、および制御部60を備えている。以下、これらの構成要素の詳細を説明する。
【0012】
<クロマト分離部10>
クロマト分離部10は、分析対象となる混合物試料を成分毎に分離する部分である。このクロマト分離部10は、分析対象となる混合物試料を導入するための試料導入部11と、導入された試料を成分毎に分離するための分離カラム12と、これらを収容する加熱オーブン13とを備えている。
【0013】
[試料導入部11]
試料導入部11は、マイクロシリンジ2を用いて混合物試料が導入される部分である。この試料導入部11は、ヒーター(図示せず)によって高温に加熱され、マイクロシリンジ2から導入された混合物試料を加熱する。この際、マイクロシリンジ2から導入される混合物試料が液体であれば、液体の混合物試料が試料導入部11においてガス化され、混合物試料が気体であればそのまま加熱される。
【0014】
また試料導入部11には、任意の流速でキャリアガスが供給され、このキャリアガスを移動相として、ガス状の混合物試料を分離カラム12の一方の端部から分離カラム12内に送り込む。キャリアガスには不活性ガスが用いられる。一例として、試料導入部11に供給されるキャリアガスの流速は、以降に説明する加熱オーブン13による加熱温度が150℃程度である場合、1.7ml/分程度であり、試料導入部11の圧力は277kPa程度である。
【0015】
[分離カラム12]
分離カラム12は、試料導入部11から導入されたガス状の混合物試料を成分毎に分離するものである。この分離カラム12は、キャリアガスと共にカラム中を移動する混合物試料中の各成分を、カラム中の固定相との相互作用(吸着、分配)によって選択的に遅延させて時間的に分離し、各成分に固有の保持時間(Retention Time:RT)で分岐管20に供給する。このような分離カラム12は、一例として内径0.25mm、長さ60mである。
【0016】
[加熱オーブン13]
加熱オーブン13は、温度制御機能を備えたものであって、試料導入部11から分離カラム12内に導入された混合物試料およびキャリアガスを加熱する。加熱オーブン13による分離カラム12および分離カラム12内の混合物試料およびキャリアガスの加熱は、予め設定された温度プログラムにしたがって加熱温度を変更して実施される。
【0017】
<分岐管20>
分岐管20は、分離カラム12の他方の端部である排出端に接続されたもので、分離カラム12で分離された各成分とキャリアガスとを含んで供給されるガス(以下、分離ガスと称する)を、次に説明する第1配管21と第2配管22とに分配して供給するためのものでる。
【0018】
<第1配管21>
第1配管21は、分岐管20によって分配された分離ガスを、以降に説明するクロマト検出器30に導入するための配管であって、分岐管20に接続された状態でクロマト分離部10の加熱オーブン13の内部に収容されている。この第1配管21は、分離ガス中に含有される成分を分離する機能を有しておらず、分離カラム12によって各成分が分離された分離ガスを、そのままクロマト検出器30側に流して導入するものである。
【0019】
このような第1配管21は、次に説明する第2配管22よりも内径が小さい。第1配管21の内径は、クロマト検出器30によって混合物試料中の各成分のピークが確認可能な程度に必要十分な量の分離ガスが導入される程度の大きさであればよい。また第1配管21は、第2配管22よりも短く、次に説明する第2配管22よりも分離ガスの通過時間が短い、つまり第2配管22よりも短時間で分離ガスを排出する。
【0020】
このような第1配管21は、一例として内径が0.15mmであり、長さが0.6mである。この場合、第1配管21内における分離ガスの流速は0.43ml/分となり、第1配管21における分離ガスの通過時間は約0.9秒となる。
【0021】
<第2配管22>
第2配管22は、分岐管20によって分配された分離ガスを、以降に説明する質量分析計50に導入するための配管であって、分岐管20に接続された状態でクロマト分離部10の加熱オーブン13の内部に収容されている。この第2配管22は、分離ガス中の成分を分離する機能を有しておらず、分離カラム12によって各成分が分離された分離ガスを、そのまま質量分析計50側に流して導入するものである。
【0022】
このような第2配管22は、第1配管21よりも内径が大きい。第2配管22の内径は、できるだけ多量の分離ガスが導入され、これにより第2配管22に接続された質量分析計50において十分な感度が得られる大きさであることとする。また第2配管22は、第1配管21よりも長い。第2配管22の長さは、第1配管21よりも分離ガスの通過時間が長く、第1配管21よりも所定の時間差で遅れて分離ガスが排出される長さである。
【0023】
このような第2配管22の長さは、第1配管21を通過した分離ガス中の成分がクロマト検出器30で検出された後、さらに数秒の時間差を経て、クロマト検出器30で検出された成分を含む分離ガスが第2配管22の先端に達する程度の長さであることとする。ここで、第2配管22の先端とは、第2配管22における質量分析計50との接続端22aである。この時間差は、一例として10秒程度である。
【0024】
このような第2配管22は、一例として内径が0.25mmであり、長さが9mである。この場合、第2配管22内における分離ガスの流速は1.28ml/分となり、第2配管22における分離ガスの通過時間は約11.6秒となる。
【0025】
したがって上記に一例として示した各条件の場合、第1配管21を経た分離ガス中の成分がクロマト検出器30で検出された後、クロマト検出器30で検出された成分を含む分離ガスが第2配管22の接続端22aに達するまでに、約10.7秒の時間差を設けることができる。
【0026】
またこの場合、第1配管21と第2配管22との間の分離ガスの分配比は、約1:3となる。これにより、第1配管21に接続されたクロマト検出器30に対して十分な量の分離ガスを供給しつつ、第2配管22に接続された質量分析計50に対して、感度を損なうことのない量の分離ガスを供給することができる。
【0027】
<クロマト検出器30>
クロマト検出器30は、クロマト分離部10で分離された後に第1配管21から供給される分離ガス中の各成分を検出するための検出器である。クロマト検出器30は、第1配管21の先端に接続された状態で、クロマト分離部10の加熱オーブン13の外側に配置されている。このようなクロマト検出器30は、質量分析計以外の一般的なガスクロマトグラフ用の検出器が適用され、第1配管21から供給される分離ガス中の成分の検出信号を分離カラム12における保持時間[RT]に対して関連付けたクロマトグラムを得る。
【0028】
このようなクロマト検出器30としては、例えば水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector:FID)、熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector:TCD)、電子捕獲型検出器(Electron Capture Detector:ECD)、窒素リン検出器(Nitrogen-Phosphorous Detector:NPD)、フレーム光度型検出器(Flame Photometric Detector:FPD)、および光イオン化検出器(Photo Ionization Detector:PID)等が用いられる。
【0029】
<冷却器40>
冷却器40は、第2配管22から質量分析計50に供給される分離ガスを、第2配管22における接続端22aにおいて一時的に冷却することによってトラップし、分離ガス中に含まれる成分を凝縮した状態で質量分析計50に供給するためのものである。この冷却器40は、第2配管22における接続端22aを加熱する状態で配置されている。また冷却器40は、駆動制御機能を備えたものであって、クロマト分離部10の加熱オーブン13の内部に収容されている。これにより、冷却器40の駆動を停止した状態では、第2配管22における接続端22aが加熱オーブン13によって加熱され、接続端22a内の分離ガスが加熱された状態で質量分析計50に供給される構成となっている。このような冷却器40の駆動は、以降に説明する制御部60によって制御される。
【0030】
なお加熱オーブン13とは別に第2配管22の接続端22aを加熱するための加熱手段が設けられていれば、加熱オーブン13の外側に冷却器40を設けた構成であってもよい。
【0031】
<質量分析計50>
質量分析計50は、クロマト分離部10において時間的に分離された状態で第2配管22から供給される各成分を順次にイオン化し、イオン化した各成分のイオンをさらに質量電荷比[m/z]に応じて分離して検出する部分である。この質量分析計50は、例えばインターフェース50aを介して第2配管22の接続端22aに接続された状態でクロマト分離部10の加熱オーブン13の外側に配置されている。インターフェース50aは、分離ガスを質量分析計50に供給する部分である。このような質量分析計50は、次のようなイオン化部、質量分離部、および検出部を備えている。
【0032】
[イオン化部]
イオン化部は、分離ガス中の成分を順次にイオン化する。このイオン化部では、それぞれの成分の分子イオンと、分子イオンが開裂した複数のフラグメントイオンとが生成される。
【0033】
[質量分離部]
質量分離部は、イオン化部から供給された各イオンを質量電荷比[m/z]毎に分離し、特定の質量電荷比[m/z]のイオンのみを通過させて検出部に到達させるためのものである。質量分離部は、SIM(Selected Ion Monitoring)モード、スキャンモード、またはこれらを組み合わせたモードでの質量分離を実施する。
【0034】
SIMモードの質量分離を実施する場合であれば、質量分離部は、予め測定対象となる成分に特有の質量電荷比[m/z]を設定しておき、設定した質量電荷比[m/z]のイオンだけをモニタリングする。スキャンモードの質量分離を実施する場合であれば、質量分離部は、保持時間[RT]に対応する一定時間ごとに、検出部に到達させるイオンの質量電荷比[m/z]をスキャンさせる。またこれらを組み合わせたモードの質量分離を実施する場合であれば、質量分析部は、SIMモードとスキャンモードの両方の質量分離を高速で切り替えて実施する。
【0035】
このような質量分離部は、その方式が限定されることはなく、質量分離のモードとイオン化部との組み合わせによって適宜の方式のものが用いられる。
【0036】
[検出部]
検出部は、質量分離部において質量電荷比[m/z]に応じて分離されたイオンの信号強度を、各保持時間[RT]において検出する。これにより、保持時間[RT]を横軸とし信号強度を縦軸としたクロマトグラムを得る。また特に、質量分離部がスキャンモードでの質量分離を実施する場合、検出部は、質量分離部において質量電荷比[m/z]に応じて分離されたイオンの信号強度を検出し、得られた信号強度を各スキャンに対応させて取り出す。これにより、クロマトグラムの各保持時間[RT]において、質量電荷比[m/z]に応じた質量スペクトルを得る。またこれと共に、質量電荷比[m/z]毎のクロマトグラム(マスクロマトグラム)や、全質量電荷比[m/z]の信号を加算したクロマトグラムを得る。
【0037】
<制御部60>
制御部60は、クロマト検出器30からの信号に基づいて冷却器40の駆動を制御し、また質量分析計50の信号をクロマト検出器30の信号と関連付けしたデータを作成する。このような制御部60は、例えばここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)によって構成され、ピーク検出部61、冷却駆動演算部62、およびクロマトグラム補正部63を備えている。
【0038】
図2は、実施形態に係るガスクロマトグラフ質量分析装置の制御部の機能を説明するための図である。また
図3は、実施形態に係るガスクロマトグラフ質量分析装置の制御部の機能を説明するためのグラフである。以下、これらの
図2および
図3と、先の
図1を参照し、制御部60に備えられた各部の機能を説明する。なお、各部の機能は、制御部60を構成するCPUが、ROMやRAMに記録されたプログラムを実行することにより実現される。
【0039】
[ピーク検出部61]
ピーク検出部61は、クロマト検出器30で検出された信号のピークを検出する。
図2(A)に示すように、このピーク検出部61は、例えばクロマト検出器30で検出される信号強度に閾値[Ith]を設定し、信号強度が設定した閾値[Ith]を越えた場合にピークP1〜P4を検出したと判断する。そしてピークP1〜P4を検出し始めた時間T1と検出し終わった時間T2とを、分離カラム12の保持時間[RT]に対応させたピーク幅Wとして検出する。
【0040】
[冷却駆動演算部62]
冷却駆動演算部62は、ピーク検出部61からの情報と、加熱オーブン13の温度制御機能からの情報とに基づいて、冷却器40を駆動させる時間を算出する。
図2(B)に示すように、冷却器40を駆動させる時間とは、冷却器40による冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とである。ここで算出する冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とは、分離カラム12において同一の保持時間[RT]で他の成分と分離されてピーク検出部61においてピーク検出された成分と同一の成分を、第2配管22の接続端22aにトラップするための時間である。
【0041】
この場合、冷却駆動演算部62は、ピーク検出部61においてピークが検出されると、直ちに加熱オーブン13の温度制御機能からの情報に基づいて加熱オーブン13の温度を算出する。次に、算出した加熱オーブン13の温度と、ピーク検出部61で検出したピーク幅Wとに基づいて、冷却器40における冷却時間を温度の関数として算出し、冷却器40による冷却の開始/終了時間を算出する。
【0042】
また冷却駆動演算部62は、算出した冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とにしたがって、冷却器40に対して冷却制御指令を送信する。
【0043】
[クロマトグラム補正部63]
クロマトグラム補正部63は、第1配管21および第2配管22の設計値と、冷却駆動演算部62からの情報とに基づいて、質量分析計50の検出部で得られたクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する。
【0044】
すなわちこのガスクロマトグラフ質量分析装置1では、分離カラム12に対して内径および長さが異なる第1配管21と第2配管22とを接続させた構成である。これにより、分離カラム12において同一の保持時間[RT]で他の成分と分離された同一成分は、第1配管21からクロマト検出器30に供給された後、時間差を有して第2配管22の接続端22aに達して質量分析計50に供給される。これにより、質量分析計50の検出部においては、
図2(C)に示すようなクロマトグラムが得られる。したがって、質量分析計50で得られたクロマトグラムのピークP1’〜P4’は、クロマト検出器30で得られたクロマトグラムのピークP1〜P4に対して、同一成分でありながらも保持時間[RT]が遅い方向にずれることになる。
【0045】
また第2配管22の接続端22aには、冷却器40が設けられている。このため、この同一成分が第2配管22の接続端22aに達した際に冷却器40を駆動させると、冷却器40による冷却によって第2配管22の接続端22aに、この同一成分がトラップされ、さらに時間差を拡大させて質量分析計50に供給されることになる。
【0046】
そこで、クロマトグラム補正部63は、クロマト検出器30での分析によって得られるクロマトグラムに合わせて、質量分析計50での分析によって得られるクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する。これにより、
図3に示すように、質量分析計50で得られた各成分のピークP1’〜P4’の保持時間[RT]を、クロマト検出器30で検出されたピークの保持時間[RT]と一致させたピークP1”〜P4”とする。
【0047】
またこれにより、分離カラム12において同一の保持時間[RT]で分離された成分が、クロマト検出器30と質量分析計50とにおいて同一の保持時間[RT]で検出されたものであることを明確にする。
【0048】
またクロマトグラム補正部63は、分離ガスが第1配管21を通過するために必要とする通過時間(上述した一例では約0.9秒)を考慮してクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する必要がある場合には、この通過時間を含めて質量分析計50のクロマトグラムとクロマト検出器30のクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する。
【0049】
なお、制御部60は、クロマトグラム補正部63で補正されたクロマトグラムに従って、クロマト検出器30で得られた検出結果と、質量分析計50で得られた検出結果とを記憶し、必要に応じて表示装置のような出力装置3に出力させる。
【0050】
≪ガスクロマトグラフ質量分析方法≫
図4は、実施形態に係るガスクロマトグラフ質量分析方法を示すフローチャートであって、
図1〜
図3を用いて説明したガスクロマトグラフ質量分析装置1の制御部60において実施されるガスクロマトグラフ質量分析方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は、制御部60を構成するCPUが、ROMやRAMに記録されたプログラムを実行することにより実現される手順であって、質量分析計50による質量分析を実施する手順を示している。
【0051】
以下に、
図4のフローチャートに沿って、
図1〜
図3を参照しつつ、実施形態におけるガスクロマトグラフ質量分析方法を説明する。
【0052】
<ステップS101>
先ずステップS101において、ピーク検出部61は、クロマト検出器30からの信号にピークがあるか否かを判断し、ピーク検出がある(YES)と判断されるまで、判断を繰り返す。ここでピーク検出部61は、例えばクロマト検出器30で検出される信号強度に閾値[Ith]を設定し、信号強度が設定した閾値[Ith]を越えた場合にピークを検出したと判断する。そしてピーク検出がある(YES)と判断された場合に、ステップS102に進む。
【0053】
<ステップS102>
次にステップS102において、ピーク検出部61は、
図2(A)に示すように、クロマト検出器30で検出したピークP1のピーク幅Wを検出する。ここでピーク検出部61は、ピークP1を検出し始めた時間T1と、信号強度が設定した閾値[Ith]Ithを下回ることによってピークP1を検出し終わった時間T2とを、分離カラムの保持時間[RT]に対応させたピーク幅Wとして検出する。
【0054】
<ステップS103>
その後ステップS103において、冷却駆動演算部62は、ステップS102でピーク検出部61が検出したピーク幅W(T1,T2)と加熱オーブン13の温度とに基づいて、冷却器40による冷却の開始時間T1’と終了時間T2’とを算出する。ここで算出する冷却の開始時間T1’と終了時間T2’は、クロマト検出器30で検出したピークP1の成分と同一の成分を、第2配管22の接続端22aにトラップするための時間である。
【0055】
<ステップS104>
次にステップS104において、冷却駆動演算部62は、算出した冷却の開始時間T1’と終了時間T2’にしたがって、冷却器40に対して冷却の開始と終了の指令を送信する。
【0056】
これにより、冷却器40の駆動制御機能は、
図2(B)に示すように、冷却駆動演算部62からの指令にしたがって、冷却の開始時間T1’に冷却器40を駆動させて、冷却を開始する。このような冷却の開始により、第2配管22における接続端22aに達していた分離ガスを冷却し、分離ガスに含有されている成分、すなわちクロマト検出器30で検出したピークP1の成分と同一の成分を、接続端22aにトラップして凝縮する。
【0057】
また冷却器40の駆動制御機能は、冷却駆動演算部62からの指令にしたがって、冷却の終了時間T2’に冷却器40の駆動を停止し、冷却器40による接続端22aの冷却を解除する。冷却の解除により、接続端22aを加熱オーブン13によって加熱し、接続端22aにトラップされていた成分、すなわちピークP1の成分と同一の成分を加熱脱着して、接続端22aから質量分析計50に供給する。
【0058】
これにより、
図2(C)に示すように、質量分析計50においては、クロマト検出器30で検出したピークP1の成分と同一の成分のピークP1’が検出される。
【0059】
<ステップS105>
ステップS105において、ピーク検出部61は、全保持時間についてのピーク検出が終了したか否かを判断する。ここで全保持時間とは、分離カラム12で分離した全成分の保持時間[RT]の範囲である。そして、終了した(YES)と判断された場合にはステップS106に進む。終了していない(NO)と判断した場合には、ステップS101に戻り、
図2(A)に示した全ての保持時間[RT]の範囲について、ピークP2〜P4が検出される毎に、ステップS101〜ステップS104の処理を繰り返す。
【0060】
<ステップS106>
ステップS106において、クロマトグラム補正部63は、クロマトグラムの保持時間[RT]の補正を実施する。ここでクロマトグラム補正部63は、第1配管21および第2配管22の設計値と、冷却駆動演算部62からの情報とに基づいて、質量分析計50の検出部で得られたクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する。ここでは、
図3に示す質量分析計50で得られた各成分のピークP1’〜P4’の保持時間[RT]を、
図2(A)に示したクロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4の保持時間[RT]と一致させる。そして、クロマト検出器30と質量分析計50とにおいて同一の保持時間[RT]で検出されたことを示すデータを作成する。これにより、質量分析計50の検出部で得られたピークP1’〜P4’の保持時間[RT]を、クロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4の保持時間[RT]と一致させたピークP1”〜P4”を得る。
【0061】
なおこのステップS106は、ステップS105と順番を入れ替えてもよく、ステップS105において全ての保持時間[RT]の範囲の分析が終了したか否かを判断する前で、ステップS104において冷却制御指令を送信した後に、質量分析計50の検出部で得られたクロマトグラムの保持時間[RT]を補正する手順としてもよい。
【0062】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、クロマト検出器30でピーク検出された後に、ピーク検出された成分を冷却によって凝縮して質量分析計50で検出するため、1回の成分分離でありながらも質量分析計においての感度の向上を図ることが可能である。
【0063】
なお、上述した実施形態においては、クロマトグラム補正部63は、質量分析計50で得られた各成分のピークP1’〜P4’の保持時間[RT]を、
図2(A)に示したクロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4の保持時間[RT]と一致させることとして説明を行った。しかしながら、クロマトグラム補正部63は、質量分析計50で得られた各成分のピークP1’〜P4’と、クロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4との相関関係を明確にすればよい。したがってクロマトグラム補正部63は、質量分析計50で得られた各成分のピークP1’〜P4’の保持時間[RT]と、クロマト検出器30で検出されたピークP1〜P4の保持時間[RT]とを関連付けして記憶させる構成であってもよい。