(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正マップは、前記第1出力値と前記第2出力値との平均値である平均出力値と、前記変位部材の変位量に対して直線的に変化する基準出力値との差分に基づいて設定されることを特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。
変位検出対象部材に追従して変位する変位部材と、前記変位部材の一端側に配置される磁石と、前記変位部材を変位方向に往復動自在に支持する支持部材と、前記磁石に対向するように前記支持部材に配置され前記磁石の変位に伴う磁界の変化に応じた出力値を出力する磁気センサと、前記磁気センサの前記出力値を補正マップに基づいて補正する出力補正部と、を備える変位検出装置の較正方法であって、
前記磁石と前記磁気センサとが互いに近づく方向に前記変位部材が傾いた状態において前記変位部材を前記変位方向に変位させて前記磁気センサの第1出力値を測定し、
前記磁石と前記磁気センサとが互いに離れる方向に前記変位部材が傾いた状態において前記変位部材を前記変位方向に変位させて前記磁気センサの第2出力値を測定し、
前記磁気センサの前記出力値を前記変位部材の変位量に対して直線的に変化するように補正する前記補正マップを前記第1出力値及び前記第2出力値に基づいて設定することを特徴とする変位検出装置の較正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、磁気センサを用いた変位検出装置において、磁気センサを通過する磁束は計測対象物の変位、すなわち磁石の変位に対して非線形的に変化するため、磁気センサの出力も計測対象物の変位に対して非線形的に変化する。したがって、磁気センサの出力値を計測対象物の変位に対して直線的に変化させるには、予め変位検出可能範囲における計測対象物の変位量に対する磁気センサの出力値を把握し、磁気センサの出力値を直線状に補正する補正マップを設定する較正を行わなければならない。
【0005】
磁気センサの出力値は、磁気センサと磁石との間の距離のわずかな変化に応じて変化するため、特許文献1に記載の変位検出装置において上述の較正を行う場合、径方向における磁気センサと磁石との間隔を常に一定とした状態で磁石を軸方向に移動させることが理想である。しかしながら、特許文献1に記載の変位検出装置では、磁石がケーシングにより片持ち支持される部材に取り付けられているため、構造上、磁石を軸心から一切偏心させずに較正を行うことは困難である。
【0006】
つまり、実際に較正が行われる際には、磁石は、磁気センサに近づく方向または離れる方向のいずれかにある程度偏心する可能性がある。このように磁石が偏心した状態で設定された補正マップは、磁石が一切偏心しない状態で設定される理想的な補正マップに対してずれを生じる。このため、この補正マップによって補正されることで得られた変位量は実際の変位量に対して誤差を有するおそれがある。例えば、磁石が磁気センサに近づく方向に偏心した状態で較正が行われた後、磁石が磁気センサから離れる方向に偏心した状態で変位量の検出が行われると、補正マップによって補正されることで得られた変位量は実際の変位量に対して比較的大きな誤差を有することになる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、変位検出装置の検出誤差を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、磁気センサの出力値を補正する出力補正部が、磁石と磁気センサとが互いに近づく方向に変位部材が傾いた状態で変位部材を変位方向に変位させたときに計測された磁気センサの第1出力値と、磁石と磁気センサとが互いに離れる方向に変位部材が傾いた状態で変位部材を変位方向に変位させたときに計測された磁気センサの第2出力値と、に基づいて設定された補正マップを有し、補正マップに基づいて磁気センサの出力値を変位部材の変位量に対して直線的に変化するように補正することを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、変位部材を支持部材に対して傾斜させ、磁石と磁気センサとが近づいた状態と磁石と磁気センサとが離れた状態との相対する2つの状態において測定された磁気センサの出力値に基づいて補正マップの設定が行われる。このようにして設定された補正マップは、磁石が支持部材の軸心上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなるため、変位検出装置により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0010】
第2の発明は、補正マップが、第1出力値と第2出力値との平均値である平均出力値と、変位部材の変位量に対して直線的に変化する基準出力値との差分に基づいて設定されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、補正マップの設定が、磁石と磁気センサとが互いに近づく方向に変位部材が傾いた状態で計測された磁気センサの出力値と、磁石と磁気センサとが互いに離れる方向に変位部材が傾いた状態で計測された磁気センサの出力値と、の平均値である平均出力値に基づいて行われる。平均出力値は、変位部材の軸心と支持部材の軸心とが一致した状態で計測される磁気センサの出力値にほぼ等しいことから、平均出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石が支持部材の軸心上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなる。この結果、変位検出装置により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0012】
第3の発明は、磁気センサが、通過する磁束の角度に応じて出力値が変化するホール素子であることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、磁気センサとして、ホール素子が用いられる。ホール素子の出力値は、磁石の移動に応じて変化する磁束の変化に応じて応答性よく変化するため、ホール素子の出力値に基づいて、変位部材の変位を精度よく検出することができる。
【0014】
第4の発明は、磁石と磁気センサとが互いに近づく方向に変位部材が傾いた状態において変位部材を変位方向に変位させて磁気センサの第1出力値を測定し、磁石と磁気センサとが互いに離れる方向に変位部材が傾いた状態において変位部材を変位方向に変位させて磁気センサの第2出力値を測定し、磁気センサの出力値を変位部材の変位量に対して直線的に変化するように補正する補正マップを第1出力値及び第2出力値に基づいて設定することを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、変位部材を支持部材に対して傾斜させ、磁石と磁気センサとが近づいた状態と磁石と磁気センサとが離れた状態との相対する2つの状態において測定された磁気センサの出力値に基づいて補正マップの設定が行われる。このようにして設定された補正マップは、磁石が支持部材の軸心上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなるため、変位検出装置により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、変位検出装置の検出誤差を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る変位検出装置100は、スプール弁等の弁体を備える弁装置に取り付けられ、弁体の変位量(ストローク量)を検出するものである。以下、
図1を参照し、変位検出装置100について説明する。
【0020】
変位検出装置100は、変位検出対象部材である弁装置の弁体等に追従して変位する変位部材としてのロッド部材22と、ロッド部材22の一端側に配置されロッド部材22とともに変位する磁石24と、ロッド部材22を変位方向に往復動自在に支持する支持部材としてのケーシング12と、ケーシング12内に配置されロッド部材22を変位検出対象部材に向けて付勢する付勢部材としてのバネ27と、磁石24の変位方向と直交する方向において磁石24に対向するようにケーシング12に配置される磁気検出部32と、を備える。
【0021】
ケーシング12は、真鍮等の非磁性材により形成される有底筒状部材であり、筒状の円筒部12aと、円筒部12aの一端側に設けられる底部12bと、円筒部12aの内部に形成される収容部12cと、を有する。円筒部12aには、磁気検出部32が配置され、収容部12cには、磁石24とともに磁石24が配置されるロッド部材22の一部が収容される。また、底部12bには、ロッド部材22が挿通する貫通孔12dが形成される。
【0022】
貫通孔12dには、ロッド部材22を摺動自在に支持するブッシュ18が軸方向に離間して2カ所に設けられる。ロッド部材22を支持するブッシュ18が2カ所に設けられることで、ケーシング12に片持ち支持されるロッド部材22の軸心が貫通孔12dの軸心であるケーシング12の軸心Oに対して傾くことをある程度抑制することができる。ブッシュ18は、1カ所に設けられてもよく、この場合、ケーシング12の軸方向長さを短縮させることができる。
【0023】
ロッド部材22は、ブッシュ18を介してケーシング12により摺動自在に支持される軸部22aと、軸部22aの先端に形成される半球状の接触部22bと、軸部22aの基端に形成され収容部12cに収容されるフランジ部22cと、を有する。また、フランジ部22cには、軸部22aとは反対側に延びる保持部22dが軸部22aと同軸上に設けられる。なお、設計上では、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが同軸上に配置されるように、ロッド部材22はケーシング12により支持される。
【0024】
ロッド部材22は、ケーシング12と同様に非磁性材により形成されるが、接触部22bには、スプール弁等の弁体が当接するため、ある程度の硬度を有するオーステナイト系ステンレス鋼等により形成されることが好ましい。なお、フランジ部22cの外径は、ロッド部材22がケーシング12に対して傾いた場合であってもフランジ部22cの外縁が円筒部12aに接触しないように、収容部12cの内径よりも小さく設定されている。
【0025】
磁石24は、筒状に形成され、N極24aとS極24bとが保持部22dの軸方向に並ぶように、保持部22dの外周に配置される。また、磁石24は、軸心がロッド部材22の軸心と一致するように保持部22dに組み付けられる。つまり、磁石24の外周面と保持部22dの外周面とは同心状となる。
【0026】
磁石24は、保持部22dにC字状の止め輪26が係止されることにより保持部22dに対して固定される。また、磁石24と止め輪26との間には弾性変形する部材により形成される緩衝材25が設けられる。このため、保持部22dに磁石24が組み付けられる際に緩衝材25が変形し、磁石24は、緩衝材25の復元力によってフランジ部22cに押し付けられた状態となる。したがって、磁石24は、軸方向に遊びを有することなく、ロッド部材22に対して所定の位置に固定されることになる。また、組み付け時に磁石24に作用する力は緩衝材25によって吸収されるため、磁石24をロッド部材22に組み付ける際に磁石24が破損することを防止することができる。
【0027】
磁石24及び磁石24が組み付けられるロッド部材22の一部が収容部12c内に収容された状態で、収容部12cの開口端には、蓋部材14が挿入固定される。蓋部材14は、ケーシング12と同様に真鍮等の非磁性材により形成される。蓋部材14と収容部12cとの間には図示しないシール部材が設けられ、シール部材により収容部12cの内部と外部との連通が遮断される。蓋部材14の固定方法としては、圧入や螺合といった一般的な固定方法が用いられる。また、蓋部材14とは別の部材をケーシング12に組み付けることにより、蓋部材14をケーシング12に対して押付固定してもよい。
【0028】
バネ27は、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性材で形成されたコイルスプリングであり、フランジ部22cと蓋部材14との間に圧縮された状態で組み付けられる。このため、接触部22bが変位検出対象部材に当接しているとき、ロッド部材22は、バネ27の付勢力により変位検出対象部材に向けて押圧され、接触部22bと変位検出対象部材とが互いに離れることが防止される。つまり、バネ27が設けられることで、ロッド部材22は、変位検出対象部材に追従して変位することが可能となる。なお、接触部22bに変位検出対象部材が当接していないときには、ロッド部材22は、バネ27の付勢力により押圧され、フランジ部22cが底部12bに当接した状態となる。
【0029】
磁気検出部32は、磁石24の変位に伴う磁界の変化に応じた出力値を出力する磁気センサとしてのホール素子32aと、ホール素子32aの出力値を補正する出力補正部としての補正回路32bと、を有する。磁気検出部32は、基板34に組み付けられており、基板34を介して円筒部12aに組み付けられる。
【0030】
具体的には、円筒部12aには、円筒部12aの外周面に開口し収容部12cに向かって形成される固定孔12eと、固定孔12eからさらに収容部12cに向かって形成される収容孔12fと、が設けられており、固定孔12eと収容孔12fとを接続する段部に基板34が固定されることでホール素子32aが収容孔12f内に収容される。なお、磁気検出部32は、補正回路32b以外に、ホール素子32aの出力値を増幅する増幅回路やホール素子32aの出力値をオフセットするオフセット回路等の図示しない出力値処理回路を有する。
【0031】
ホール素子32aは、ホール効果を利用して磁石24が発生する磁界を検出するものであり、変位検出装置100では、出力値がホール素子32aを通過する磁束の角度に応じて変化する形式のホール素子32aが用いられる。ホール素子32aを通過する磁束の角度は、磁石24が軸方向へ移動することに伴って変化するため、ホール素子32aの出力値は、磁石24の移動に応じて応答性よく変化することになる。つまり、ホール素子32aの出力値に基づいて、ロッド部材22の変位、すなわちロッド部材22に当接する変位検出対象部材の変位を精度よく検出することができる。
【0032】
ホール素子32aとしては、磁束の角度に応じて出力値が変化する形式に限定されず、ホール素子32aを所定の方向、例えば、磁石24の変位方向と直交する方向において通過する磁束の大きさ及び通過方向に応じて出力値が変化する形式のものであってもよい。また、磁気センサとしては、ホール素子32aに限定されず、磁石24の変位に伴う磁界の変化に応じた出力値を出力可能なものであればどのようなものであってもよく、磁気抵抗素子(MR素子)やコイルが用いられてもよい。
【0033】
補正回路32bには、後述の較正方法によって設定される補正マップが格納されており、補正回路32bは、補正マップに基づいてホール素子32aの出力値をロッド部材22の変位量に対して直線的に変化するように補正する。補正された補正出力値は変位検出装置100の検出値として外部へ出力される。なお、補正回路32bやその他の出力値処理回路は、ホール素子32aとともに基板34上に設けられているが、これに代えて、これらの回路はホール素子32aとは別に変位検出装置100の外に設けられてもよい。また、ホール素子32aと補正回路32bとは、1つのチップ上に形成されてもよい。
【0034】
磁気検出部32が固定孔12e内に配置された状態で、円筒部12aの外周には、固定孔12eを覆うようにして円筒状の磁気シールド16が組み付けられる。磁気シールド16は磁性材により形成され、変位検出装置100の外部の磁気がホール素子32aに影響を及ぼすことを抑制している。また、磁気シールド16には図示しない切欠部が形成され、この切欠部を通じて変位検出対象部材としての弁体等の作動を制御する図示しないコントローラと磁気検出部32とを接続する図示しないリード線が配索される。
【0035】
次に、
図1〜
図3を参照して、変位検出装置100の較正方法について説明する。ここで、変位検出装置100の較正とは、変位検出対象部材の変位量に対するホール素子32aの出力値を計測し、計測された出力値と基準出力値とのずれが算出され、計測された出力値を基準出力値に補正するための補正値を設定することを意味する。較正に関連する演算等は、補正回路32bにおいて実行される。
【0036】
ここで、ホール素子32aの出力値は、ホール素子32aと磁石24との間の距離のわずかな変化に応じて変化するため、上記構成の変位検出装置100において正確な較正を行うためには、径方向におけるホール素子32aと磁石24との間隔を常に一定にした状態で磁石24をロッド部材22とともに軸方向に移動させることが理想的である。しかしながら、変位検出装置100では、磁石24が取り付けられたロッド部材22がケーシング12により片持ち支持されているため、構造上、磁石24をケーシング12の軸心Oから一切偏心させずに較正を行うことは困難である。
【0037】
つまり、実際に較正を行う際には、磁石24は、ホール素子32aに近づく方向または離れる方向にある程度偏心することとなる。このように磁石24が偏心した状態で設定された補正値は、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動する場合に設定される理想的な補正値に対してずれが生じてしまう。このため、磁石24が何れかの方向に偏心した状態で設定された補正マップに基づいて算出された変位量は、実際の変位量に対して誤差を有する可能性がある。
【0038】
また、例えば、磁石24がホール素子32aに近づく方向に偏心した状態で補正値の設定が行われた後、磁石24がホール素子32aから離れる方向に偏心した状態で変位量の検出が行われるような場合には、設定された補正マップは理想的な補正マップに対してずれている上に、補正マップが設定された状態と変位量が検出される状態とでは磁石24とホール素子32aとの間隔が大きく異なることになる。したがって、このように設定された補正マップに基づいて算出された変位量は実際の変位量に対して比較的大きな誤差を有することになる。
【0039】
そこで本実施形態では、このような誤差を低減させるために、変位検出装置100の較正を行う際に、ロッド部材22をケーシング12に対してあえて傾斜させた状態とし、磁石24とホール素子32aとが最も近づいた状態と磁石24とホール素子32aとが最も離れた状態との相対する2つの状態、すなわち、ホール素子32aを通過する磁束の変化が比較的大きい状態と比較的小さい状態とにおいて測定されたホール素子32aの出力値に基づいて補正値の設定が行われる。
【0040】
具体的には、
図1に示されるように、変位検出装置100の較正を行う際には、ロッド部材22の接触部22bに接触する傾斜面50aを先端に有する円柱状の較正治具50が用いられる。較正治具50は、基端側が図示しない変位計に接続されており、較正治具50の変位量は変位計に表示される。
【0041】
上記形状の較正治具50を
図1の矢印Aで示される方向、すなわちロッド部材22の軸方向に沿って移動させることによって変位検出装置100の較正が行われる。
【0042】
具体的には、まず、
図1に示されるように、較正治具50の傾斜面50aの垂線Pがケーシング12の軸心Oよりもホール素子32aとは反対側に向いた状態で較正治具50を矢印Aで示される方向に移動させる。このとき、ロッド部材22は、ケーシング12により支持される部分を支点として、傾斜面50aに当接する接触部22b側が矢印Bで示される方向に変位し、磁石24が設けられる保持部22d側が矢印Cで示される方向に変位した状態、すなわち、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が最も傾いた接近側傾斜状態となる。換言すると、接近側傾斜状態とは、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが一致した状態から一方の方向、すなわち、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が傾斜し、ホール素子32aを通過する磁束の変化が比較的大きい状態といえる。
【0043】
この接近側傾斜状態において、較正治具50を変位検出装置100の変位検出可能範囲にわたって変位させ、変位検出対象部材(較正治具50)の変位量に対するホール素子32aの第1出力値としての接近側出力値が計測される。計測された接近側出力値は、
図2に示すように、接近側出力線として線状に示される。ホール素子32aを通過する磁束の角度は磁石24の変位に応じて非線形的に変化するため、接近側出力線は、変位検出対象部材の変位に対して非線形的に変化する。
【0044】
続いて、較正治具50を180°回転し、較正治具50の傾斜面50aの垂線Pがケーシング12の軸心Oよりもホール素子32a側に向いた状態で較正治具50を矢印Aで示される方向に移動させる。このとき、ロッド部材22は、ケーシング12により支持される部分を支点として、傾斜面50aに当接する接触部22b側が矢印Bで示される方向とは反対の方向に変位し、磁石24が設けられる保持部22d側が矢印Cで示される方向とは反対の方向に変位した状態、すなわち、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が最も傾いた離間側傾斜状態となる。換言すると、離間側傾斜状態とは、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが一致した状態から他方の方向、すなわち、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が傾斜し、ホール素子32aを通過する磁束の変化が比較的小さい状態といえる。
【0045】
この離間側傾斜状態においても、接近側傾斜状態と同様に、較正治具50を変位検出装置100の変位検出可能範囲にわたって変位させ、変位検出対象部材(較正治具50)の変位量に対するホール素子32aの第2出力値としての離間側出力値が計測される。計測された離間側出力値は、
図2に示すように、離間側出力線として線状に示される。離間側出力線は、接近側出力線と同様に、変位検出対象部材の変位に対して非線形的に変化する。
【0046】
続いて、接近側出力値と離間側出力値との平均値である平均出力値を算出し、平均出力値を基準出力値に補正するための補正値の設定が行われる。
【0047】
ここで、平均出力値は、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が傾いた状態で計測された接近側出力値と、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が傾いた状態で計測された離間側出力値と、の平均値である。つまり、平均出力値は、ロッド部材22の傾きが中間の状態、すなわち、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが一致した状態で計測されるホール素子32aの出力値にほぼ等しいといえる。したがって、平均出力値に基づいて設定される補正値は、理想的な補正値に近いものとなる。
【0048】
平均出力値は、
図2に示すように、平均出力線として線状に示される。平均出力線は、接近側出力線及び離間側出力線と同様に、変位検出対象部材の変位に対して非線形的に変化する。
【0049】
基準出力値は、変位検出対象部材の変位に対して直線的に変化する値であり、予め設定された傾斜を有するものであってもよいし、平均出力値の最小値と最大値とを直線的に結んだものであってもよい。基準出力値は、
図2に示すように、直線状の基準出力線として示される。
【0050】
補正値は、同一の変位量に対する基準出力値から平均出力値を差し引くことにより算出される。例えば、
図2において、任意の変位量X1に対して平均出力値がY1、基準出力値がY2である場合、補正値は、(Y2−Y1)となる。そして、この補正値(Y2−Y1)は、
図3に示すように、ホール素子32aの出力値がY1となったときの補正値となる。
【0051】
このように算出された補正値は、
図3に示すように、ホール素子32aの出力値に応じて異なる値となる。このため、補正回路32bには、ホール素子32aの出力値毎に設定された補正値が補正マップとして格納される。
【0052】
補正回路32bに補正マップが格納されることで一連の較正は完了する。較正が完了した後、変位検出装置100において変位検出対象部材の変位が検出される際には、上述のようにして設定された補正値がホール素子32aの出力値に対して加算された値が変位検出装置100から検出値として出力される。例えば、
図3に示すように、ホール素子32aの出力値がY1であるとき、Y1に補正値(Y2−Y1)が加算された値であるY2が、変位検出装置100から検出値として出力される。
【0053】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0054】
変位検出装置100では、補正マップの設定が、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が傾いた状態で計測されたホール素子32aの出力値と、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が傾いた状態で計測されたホール素子32aの出力値と、の平均値である平均出力値に基づいて行われる。ここで、平均出力値は、ロッド部材22の傾きが中間の状態、すなわち、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが一致した状態で計測されるホール素子32aの出力値にほぼ等しいといえる。つまり、平均出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものといえる。
【0055】
このように変位検出装置100において設定された補正マップは、磁石24の偏心方向が不明な状態において測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップと比較し、理想的な補正マップに近いものとなる。よって、平均出力値に基づいて設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0056】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0057】
変位検出装置100は、変位検出対象部材に追従して変位するロッド部材22と、ロッド部材22の一端側に配置され、ロッド部材22とともに変位する磁石24と、ロッド部材22を変位方向に往復動自在に支持するケーシング12と、磁石24の変位方向と直交する方向において磁石24に対向するようにケーシング12に配置される磁気検出部32と、を備え、磁気検出部32は、磁石24の変位に伴う磁界の変化に応じた出力値を出力するホール素子32aと、ホール素子32aの出力値を補正する補正回路32bと、を有し、補正回路32bは、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が最も傾いた状態でロッド部材22を変位方向に変位させたときに計測されたホール素子32aの接近側出力値と、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が最も傾いた状態でロッド部材22を変位方向に変位させたときに計測されたホール素子32aの離間側出力値と、に基づいて設定された補正マップを有し、補正マップに基づいてホール素子32aの出力値をロッド部材22の変位量に対して直線的に変化するように補正することを特徴とする。
【0058】
この構成では、ロッド部材22をケーシング12に対してあえて傾斜させた状態とし、磁石24とホール素子32aとが最も近づいた状態と磁石24とホール素子32aとが最も離れた状態との相対する2つの状態、すなわち、ホール素子32aを通過する磁束の変化が比較的大きい状態と比較的小さい状態とにおいて測定されたホール素子32aの出力値に基づいて補正マップの設定が行われる。
【0059】
このように相対する2つの状態で測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24の偏心方向が不明な状態において測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップと比較し、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなる。よって、相対する2つの状態で測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0060】
また、変位検出装置100による変位量の検出が、磁石24がホール素子32aに近づく方向またはホール素子32aから離れる方向に偏心した状態で行われる場合であっても、変位検出装置100において設定された補正マップは、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものである。このため、設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を抑制することができる。
【0061】
また、この構成では、たった2回の計測で得られたホール素子32aの出力値に基づいて補正マップが設定される。よって、補正マップを設定するためにホール素子32aの出力値を何度も測定する必要がないため、較正に費やされる時間を短縮させることができる。
【0062】
また、補正マップは、接近側出力値と離間側出力値との平均値である平均出力値と、ロッド部材22の変位量に対して直線的に変化する基準出力値との差分に基づいて設定されることを特徴とする。
【0063】
この構成では、補正マップの設定が、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が傾いた状態で計測されたホール素子32aの出力値と、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が傾いた状態で計測されたホール素子32aの出力値と、の平均値である平均出力値に基づいて行われる。
【0064】
平均出力値は、ロッド部材22の傾きが中間の状態、すなわち、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが一致した状態で計測されるホール素子32aの出力値にほぼ等しいといえる。つまり、平均出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものといえる。
【0065】
このように平均出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24の偏心方向が不明な状態において測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップと比較し、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなる。よって、平均出力値に基づいて設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0066】
また、磁気センサとしては、ホール素子32aが用いられ、ホール素子32aは、出力値がホール素子32aを通過する磁束の角度に応じて変化することを特徴とする。
【0067】
この構成では、磁気センサとして、ホール素子32aが用いられる。ホール素子32aの出力値は、磁石24の移動に応じて変化する磁界の変化に応じて応答性よく変化する。このため、ホール素子32aの出力値に基づいて、ロッド部材22の変位、すなわちロッド部材22に当接する変位検出対象部材の変位を精度よく検出することができる。
【0068】
また、ホール素子32aとして、出力値がホール素子32aを通過する磁束の角度に応じて変化するものを採用した場合、ホール素子32aを通過する磁束の角度は、磁石24が軸方向へ移動することに伴って変化するため、ホール素子32aの出力値は、磁石24の移動に応じてさらに応答性よく変化することになる。したがって、ホール素子32aの出力値に基づいて、ロッド部材22の変位、すなわちロッド部材22に当接する変位検出対象部材の変位をさらに精度よく検出することができる。
【0069】
また、変位検出対象部材に追従して変位するロッド部材22と、ロッド部材22の一端側に配置される磁石24と、ロッド部材22を変位方向に往復動自在に支持するケーシング12と、磁石24の変位方向と直交する方向において磁石24に対向するようにケーシング12に配置され磁石24の変位に伴う磁界の変化に応じた出力値を出力するホール素子32aと、ホール素子32aの出力値を補正マップに基づいて補正する補正回路32bと、を備える変位検出装置100の較正方法は、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が最も傾いた状態においてロッド部材22を変位方向に変位させてホール素子32aの接近側出力値を測定し、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が最も傾いた状態においてロッド部材22を変位方向に変位させてホール素子32aの離間側出力値を測定し、ホール素子32aの出力値をロッド部材22の変位量に対して直線的に変化するように補正する補正マップを接近側出力値及び離間側出力値に基づいて設定することを特徴とする。
【0070】
この構成では、ロッド部材22をケーシング12に対してあえて傾斜させた状態とし、磁石24とホール素子32aとが最も近づいた状態と磁石24とホール素子32aとが最も離れた状態との相対する2つの状態、すなわち、ホール素子32aを通過する磁束の変化が比較的大きい状態と比較的小さい状態とにおいて測定されたホール素子32aの出力値に基づいて補正マップの設定が行われる。
【0071】
このように相対する2つの状態で測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24の偏心方向が不明な状態において測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップと比較し、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなる。よって、相対する2つの状態で測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0072】
また、変位検出装置100による変位量の検出が、磁石24がホール素子32aに近づく方向またはホール素子32aから離れる方向に偏心した状態で行われる場合であっても、変位検出装置100において設定された補正マップは、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものである。このため、設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を抑制することができる。
【0073】
また、この構成では、たった2回の計測で得られたホール素子32aの出力値に基づいて補正マップが設定される。よって、補正マップを設定するためにホール素子32aの出力値を何度も測定する必要がないため、較正に費やされる時間を短縮させることができる。
【0074】
また、変位検出装置100の較正方法は、接近側出力値と離間側出力値とを平均して平均出力値を算出し、平均出力値と、ロッド部材22の変位量に対して直線的に変化する基準出力値と、の差分に基づいて補正マップを設定することを特徴とする。
【0075】
この構成では、補正マップの設定が、磁石24とホール素子32aとが互いに近づく方向にロッド部材22が傾いた状態で計測されたホール素子32aの出力値と、磁石24とホール素子32aとが互いに離れる方向にロッド部材22が傾いた状態で計測されたホール素子32aの出力値と、の平均値である平均出力値に基づいて行われる。
【0076】
平均出力値は、ロッド部材22の傾きが中間の状態、すなわち、ロッド部材22の軸心とケーシング12の軸心Oとが一致した状態で計測されるホール素子32aの出力値にほぼ等しいといえる。つまり、平均出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものといえる。
【0077】
このように平均出力値に基づいて設定された補正マップは、磁石24の偏心方向が不明な状態において測定されたホール素子32aの出力値に基づいて設定された補正マップと比較し、磁石24がケーシング12の軸心O上を移動した場合に設定される理想的な補正マップに近いものとなる。よって、平均出力値に基づいて設定された補正マップによりホール素子32aで検出された値を補正し変位量を算出すれば、変位検出装置100により検出された変位量と実際の変位量との誤差を低減させることができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。