特許第6857583号(P6857583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6857583-パワーネット経編地 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857583
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】パワーネット経編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20210405BHJP
   D04B 21/12 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   D04B21/18
   D04B21/12
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-180540(P2017-180540)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-56187(P2019-56187A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】396021645
【氏名又は名称】吉田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晃
(72)【発明者】
【氏名】横山 一郎
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−096090(JP,U)
【文献】 実開昭50−087276(JP,U)
【文献】 特開2009−209480(JP,A)
【文献】 特開2013−155463(JP,A)
【文献】 特開2013−234399(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103388236(CN,A)
【文献】 米国特許第04786549(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁ち端のほつれ防止性及びカール発生防止性を有し、ツーウエイ方向に伸びるパワーネット経編地であって、
前記パワーネット経編地にメッシュを形成するための非弾性合成繊維糸からなる開き目糸及びとじ目糸と、
前記パワーネット経編地のカール止めのための非弾性合成繊維糸からなる鎖編糸と、
前記パワーネット経編地のほつれ止めのための弾性糸からなるルーピング糸と、
前記パワーネット経編地のヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸と、タテ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸を含み、
前記ルーピング糸は、前記とじ目糸と重ねて配置されており、
前記各弾性糸は融着していることを特徴とするパワーネット経編地。
【請求項2】
前記鎖編糸は、アルカリ易容性ポリエステル製マルチフィラメント糸及びナイロン製マルチフィラメント糸から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載のパワーネット経編地。
【請求項3】
前記非弾性合成繊維糸は、ナイロン製マルチフィラメント糸である請求項1又は2に記載のパワーネット経編地。
【請求項4】
前記各弾性糸は、スパンデックス裸糸である請求項1〜のいずれかに記載のパワーネット経編地。
【請求項5】
前記タテ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸の繊度は、開き目糸、とじ目糸、ルーピング糸及びヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸の合計繊度より大きい請求項1〜のいずれかに記載のパワーネット経編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地の末端処理が不要でかつカールも発生しないパワーネット経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
経編地はスポーツ用シャツ、女性のインナー衣類等に使用されている。端部処理を不要とする経編地も提案されており、特許文献1〜2にはダブルラッシェル機により表裏編地を接結し、裁断面の縁処理を不要としたラッセル編地が開示されている。特許文献3にはアトラス組織とし、縦、横、斜め方向に裁断してもほつれない経編地が提案されている。特許文献4〜5には熱融着糸を編み込み、熱融着させて編地端のほつれを防止することが提案されている。本発明者らは特許文献6において、特定の位置に配置した経糸挿入糸により編地の末端処理が不要でかつカールも発生しないラッシェル経編地を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−196184号公報
【特許文献2】特開2004−091971号公報
【特許文献3】特開2007−131956号公報
【特許文献4】特開2009−209480号公報
【特許文献5】特開2007−262601号公報
【特許文献6】特開2015−055013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のツーウエイ方向に伸びるパワーネット経編地においては、編地の末端処理が不要でかつカールも発生しない編地は開発されておらず、改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、編地の端にカールが発生せず、フリーカットでき、かつ平坦性が良好でカールの発生もないパワーネット経編地を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパワーネット経編地は、裁ち端のほつれ防止性及びカール発生防止性を有し、ツーウエイ方向に伸びるパワーネット経編地であって、前記パワーネット経編地にメッシュを形成するための非弾性合成繊維糸からなる開き目糸及びとじ目糸と、前記パワーネット経編地のカール止めのための非弾性合成繊維糸からなる鎖編糸と、前記パワーネット経編地のほつれ止めのための弾性糸からなるルーピング糸と、前記パワーネット経編地のヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸と、タテ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸を含み、前記ルーピング糸は、前記とじ目糸と重ねて配置されており、前記各弾性糸は融着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、非弾性合成繊維糸からなる開き目糸及びとじ目糸によりメッシュを形成し、非弾性合成繊維糸からなる鎖編糸と、弾性糸からなるルーピング糸と各弾性糸の融着により相乗的に裁ち端のほつれ防止性及びカール発生防止性を向上し、弾性糸からなる挿入糸によりヨコ方向及びタテ方向に伸びを付与したパワーネット経編地を提供できる。これにより、例えば女性の下着などへの適用が容易となり、通気性も高くデザイン的にも優れたものとなる。また弾性糸の伸びとパワーで着用感を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の一実施形態のパワーネット経編地の編み物組織図である。
図2図2は本発明の一実施形態のパワーネット経編地の表面観察写真(電子複写装置、倍率4倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパワーネット経編地は伸縮性があり、身体にフィットすることから女性用下着に好適である。このパワーネット経編地は、裁ち端のほつれ防止性及びカール発生防止性を有することから、任意の個所でカットでき、カットした状態のままで例えば女性の下着などへ適用できる。すなわち、縁処理の必要性が無い。またツーウエイ方向に伸びるので、着心地もよい。この経編地の基本構成は、メッシュを形成するための非弾性合成繊維糸からなる開き目糸及びとじ目糸と、カール止めのための非弾性合成繊維糸からなる鎖編糸と、ほつれ止めのための弾性糸からなるルーピング糸(ニッティング糸ともいう)と、前記パワーネット経編地のヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸と、タテ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸を含み、前記各弾性糸は融着している。前記融着とは、ほつれ防止を発揮する程度の軽度な融着であることが好ましい。風合いを柔軟に保つためである。
【0010】
前記において、開き目糸及びとじ目糸は編み方向と直交してジグザグとなるよう対称的に配置される。ルーピング糸はとじ目糸と同様にループを形成して、編み方向と直交する方向を含むようジグザクに配置される。本発明においては、このルーピング糸を配置したことがほつれ防止のために重要である。ルーピング糸はとじ目糸の上に重ねて配置するのが好ましい。挿入糸はループを形成せずに配置される。タテ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸は、編み方向に沿って配置され、ヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸は、編み方向と直交してジグザクに配置される。
【0011】
前記鎖編糸は、アルカリ易容性ポリエステル製マルチフィラメント糸及びナイロン製マルチフィラメント糸から選ばれる少なくとも一つが好ましい。これにより編地がしっかりしたものとなり、カール止め効果がより向上する。鎖編糸がアルカリ易容性ポリエステル糸が鎖編糸の場合は、部分的に溶解されていてもよい。溶解された部分はさらに大きなメッシュとなり、より通気性が高くなる。
【0012】
前記非弾性合成繊維糸は、ナイロン製マルチフィラメント糸であるのが好ましい。ナイロンは伸びがあり、従来からも女性下着の素材として使われている。ナイロン製マルチフィラメント糸は、生糸又はウーリー加工糸を使用できる。
【0013】
前記各弾性糸は、スパンデックス裸糸であるのが好ましい。スパンデックス裸糸も従来から女性下着の素材として使われている。スパンデックス糸を裸糸で使用することにより、経編地の染色加工後のヒートセット(好ましくは180〜185℃)において、スパンデックス糸同士の軽い融着が起こり、ほつれ防止性及びカール発生防止性が相乗的に向上する。
【0014】
前記タテ方向に伸びを付与するための弾性糸からなる挿入糸(タテ方向挿入糸)の繊度は、開き目糸、とじ目糸、ルーピング糸及びヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸(サテン挿入糸)からなる挿入糸の合計繊度より大きいことが好ましい。これにより、タテ方向の伸びと寸法安定性を向上できる。なお、ヨコ方向に伸びを付与するための弾性糸をサテン(satin)挿入糸と呼ぶのは、織物の朱子織に近似した配置をしているからである。
【0015】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を意味する。図1は本発明の実施形態1のパワーネット経編地の編み物組織図である。このパワーネット経編地は、基本的に6コースの糸で形成され、開き目糸(L1)、とじ目糸(L2)、アルカリ易容性ポリエステル糸からなる鎖編糸(L3)、ルーピング糸(L4)、サテン挿入糸(L5)、タテ方向挿入糸(L6)で構成される。開き目糸(L1)及びとじ目糸(L2)は、筬1本入れ、次の1本は開ける1 in,1 outで編みこむのが好ましい。開き目糸(L1)及びとじ目糸(L2)でメッシュが形成される。鎖編糸(L3)は全部の筬に入れるfull setが好ましい。ルーピング糸(L4)及びサテン挿入糸(L5)は1 in,1 outで編みこむのが好ましい。タテ方向挿入糸(L6)はfull setが好ましい。鎖編糸(L3)はアルカリ易容性ポリエステル糸(カチオン染料可染型ポリエステル糸)であり、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水に溶解しやすい。
【0016】
図2は本発明の一実施形態のパワーネット経編地の表面観察写真(電子複写装置、倍率4倍)である。この編地は細かなメッシュ構造をしており、編み目は明瞭である。また、裁ち端も美麗であり、ほつれ防止性及びカール発生防止性を発揮している。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
図1に示す編み物組織図にしたがってパワーネット経編地を編製した。
(1)使用糸
(a)L1,L2
ナイロン6マルチフィラメント、生糸、総繊度:56decitex,フィラメント数:34本、1 in,1 out
(b)L3
アルカリ易容性ポリエステル糸(カチオン染料可染型ポリエステル糸)、総繊度:33decitex,フィラメント数:36本、full set
(c)L4
ポリウレタン系スパンデックス糸、繊度:44decitex、1 in,1 out
(d)L5
ポリウレタン系スパンデックス糸、繊度:78decitex、1 in,1 out
(e)L6
ポリウレタン系スパンデックス糸、繊度:310decitex、full set
(2)編み機及び編み組織
ラッセル経編機、カールマイヤー社製、製品番号"RSE 6EL”を使用し、表1に示す編製表にしたがって編み立てた。編製された編み物の特性は表2に示す。アルカリ処理及び染色は常法で行い、染色後は180〜185℃でヒートセットした。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
得られた編み物は、下記表3に示す特性を示した。
【表3】
【0022】
表3に示すとおり、この編み物は伸度が高く、また図3に示すように、細かなメッシュ構造をしており通気性も良く、編み目は明瞭で、裁ち端も美麗であり、ほつれ防止性及びカール発生防止性に優れていた。この編み物を裁断して婦人用ショーツに縫製した。その結果、ショーツ裾部の折り返処理は不要であり、下着ラインは出ずデザイン上の利点となり、さらに伸縮性糸の伸びとパワーで裾部の着用感を良くすることができた。全体として伸縮性も良好で着心地も良かった。ほつれ防止性及びカール発生防止性は、家庭洗濯を繰り返しても変わらなかった。また、染色時にアルカリ水溶液によりL3の糸を部分的に溶解させた編み物は、さらに通気性が良かった。
【0023】
(実施例2)
図1に示す編み物組織図にしたがってパワーネット経編地を編製した。L3の糸として、アルカリ易容性ポリエステル糸に代えてナイロン6マルチフィラメント、生糸、総繊度:56decitex,フィラメント数:34本、full setとした以外は、実施例1と同様にした。
得られた編み物を染色は常法で行い、染色後は180〜185℃でヒートセットした。この編み物も実施例1と同様の物性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の経編地はショーツ以外にも、ガードル、スリップ、キャミソール、ブラジャー、シャツ、レオタード、コスチューム、スポーツ用衣類、ホームウエア、インナーウェア、レッグウェアなど様々に衣類に適用できる。
図1
図2