(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のパーツキットであって、パートAが、前記酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、前記一又は複数のフィラーと、を含み、パートBが、前記一又は複数のフィラーを含む、パーツキット。
前記一又は複数の遷移金属成分が、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Fe、Zn、又はそれらの組み合わせを含み、前記遷移金属成分は水和物又は非水和物の形態である、請求項1又は2に記載のパーツキット。
前記遷移金属成分が、酢酸銅、塩化銅、安息香酸銅、アセチルアセトナト銅、ナフテン酸銅、カルボン酸銅、ビス(1−フェニルペンタン−1,3−ジオン)銅、銅錯体、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパーツキット。
前記一又は複数の有機ペルオキシドが、式R−O−O−Hにより表され、式中、Rはアルキル、分枝アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、又はアリールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパーツキット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
良好な機械的特性と、可能であれば、審美的特性とを併せ持ち、エナメル質だけでなく象牙質の表面に対しても良好な接着性を示す、二成分、好ましくは二重硬化性の組成物を有することが望ましい。
【0016】
特に、自己硬化型における良好な機械的特性を併せ持ち、エナメル質及び象牙質表面への良好な接着性を示す、二成分組成物を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、パートA及びパートBを含む、本明細書本文に記載のパーツキットによって解決することができ、
パートA(すなわち、触媒パート)は、
・任意に、一又は複数のフィラーと、
・任意に、酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、
・任意に、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、
・アスコルビン酸、アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分と、を含み、
パートB(すなわち、ベースパート)は、
・任意に、一又は複数のフィラーと、
・酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、
・酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、
・一又は複数の遷移金属成分と、
・好ましくは一又は複数のヒドロペルオキシド及び一又は複数のジ−ペルオキシドから選択される一又は複数の有機ペルオキシドと、を含み、
構成成分のそれぞれは、本明細書本文に記載のとおりである。
【0018】
他の一実施形態(例えば、粉末/液体配合物)において、パートAは、
・一又は複数のフィラーと、
・アスコルビン酸、アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分と、を含み、
かつパートBは、
・酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、
・酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、
・一又は複数の遷移金属成分と、
・好ましくは一又は複数のヒドロペルオキシド及び一又は複数のジ−ペルオキシドから選択される一又は複数の有機ペルオキシドと、を含み、
構成成分のそれぞれは、本明細書本文に記載のとおりである。
【0019】
本発明の更なる実施形態は、混合及び/又は混練の工程を含む、前述の「特許請求の範囲」のいずれかに記載の組成物を製造する方法を対象とする。
【0020】
本発明の更なる実施形態は、本明細書本文に記載の、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分を含む歯科用組成物を硬化させるための、アスコルビン酸又は一若しくは複数のその誘導体、一又は複数の遷移金属成分、及び一又は複数の有機ペルオキシドを含むレドックス開始剤系の使用を対象とする。
【0021】
特に、本発明は、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分を含む歯科用組成物を硬化させるための、アスコルビン酸又は一又は複数のその誘導体と、塩を含有する銅又は鉄イオンを含む一又は複数の遷移金属成分と、一又は複数の有機ペルオキシド、特に、ヒドロペルオキシド又はジ−ペルオキシドと、任意に増感剤と、更に還元剤と、を含む、開始剤系の使用を対象とする。
【0022】
本発明の更なる実施形態は、本文書に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を混合し、得られた混合物を硬化させることによって得られるか又は得ることが可能な歯科用組成物を対象とする。
【0023】
本発明の更なる実施形態は、本文書に記載のパーツキットの使用方法、又は本文書に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を混合することによって得られた組成物の使用方法を対象とし、この方法は、組成物を表面に適用する工程と、自己硬化機構によって、又は任意に放射線を適用することによって組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0024】
本発明の他の実施形態、特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」、図面及び「特許請求の範囲」から明らかになるであろう。
【0025】
別途定義がない限り、本明細書では、以下の用語は所与の意味を有するものとする。
「一成分」とは、保存及び使用中に、上記構成成分の全てが組成物中に存在することを意味する。つまり、適用又は使用される組成物は、使用前に組成物の異なるパーツを混合することによって調製されるものではない。一成分組成物に対し、これらの組成物は二成分組成物と呼ばれることが多い(例えば、粉末/液体、液体/液体、又はペースト/ペースト組成物として処方される)。
【0026】
「二成分」とは、パーツキット又は系が、使用前に互いに別々のパーツで提供されるという意味である。「二成分系」とは対照的に、「一成分系」は1パーツのみとして提供される。
【0027】
「歯科用組成物」又は「歯科使用のための組成物」又は「歯科分野で使用するための組成物」は、歯科分野で使用できる任意の組成物である。この点において、組成物は患者の健康にとって有害であってはならず、したがって、組成物から漏出し得る有害成分及び有毒成分を含んではならない。歯科用組成物の例としては、永久及び暫間クラウン及びブリッジ材、人工クラウン、前歯又は奥歯用充填材、接着材、ミルブランク、ラボ材料、合着材、並びに歯科矯正用器具が挙げられる。歯科用組成物は典型的には硬化性組成物であり、約15〜50℃又は約20〜40℃の温度範囲を含む周囲条件において、約30分又は20分又は10分の時間枠内で硬化され得る。これよりも高い温度では、患者に痛みをもたらす恐れがあり、更には患者の健康に有害であり得るため、推奨されない。歯科用組成物は、典型的に同程度の小容量、すなわち、約0.1〜約100mL、又は約0.5〜約50mL、又は約1〜約30mLの範囲の容量で、施術者に提供される。したがって、有用な梱包器具の保存容量は、これらの範囲内である。
【0028】
用語「化合物」又は「構成成分」は、特定の分子的同一性を有する化学物質であるか、又はそのような物質、例えば、ポリマー性物質の混合物から作製される化学物質である。
【0029】
「モノマー」は、オリゴマー又はポリマーに重合することで分子量が増加する、重合可能な基((メタ)アクリレート基を含む)を有する化学式により特徴付けられ得る任意の化学物質である。通常、モノマーの分子量は、与えられた化学式に基づいて単純に計算することができる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す短縮語である。例えば、「(メタ)アクリルオキシ」基は、アクリルオキシ基(すなわち、CH
2=CH−C(O)−O−)及び/又はメタクリルオキシ基(すなわち、CH
2=C(CH
3)−C(O)−O−)のいずれかを指す短縮語である。同様に、(メタ)アクリレートは、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す省略語である。
【0031】
「固化性成分若しくは材料」又は「重合性成分」は、例えば、重合を起こす加熱、化学的架橋、放射線誘発性重合、又はレドックス開始剤の使用による架橋によって硬化又は固化し得る、任意の構成成分である。固化性成分は、1つのみ、2つ、3つ、又はそれ以上の重合可能な基を含有し得る。重合性基の典型例としては、特に、(メタ)アクリレート基中に存在するビニル基等の不飽和炭素基が挙げられる。
【0032】
「エチレン性不飽和酸性化合物」は、エチレン性不飽和官能基並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有する、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを包含することを意図する。酸性前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロリン酸塩が挙げられる。酸性基は、好ましくは、−COOH又は−CO−O−CO−等の1つ以上のカルボン酸残基、−O−P(O)(OH)OH等のリン酸残基、C−P(O)(OH)OH等のホスホン酸残基、−SO
3H等のスルホン酸残基、又は−SO
2H等のスルフィン酸残基を含む。
【0033】
「フィラー」は、固化性組成物中に存在する全てのフィラーを含む。1種類のフィラーのみを用いてもよく、又は異なるフィラーの混合物を用いてもよい。
【0034】
「ペースト」は、液体に分散した、軟らかく、粘稠な固体の塊(すなわち、粒子)を意味する。
【0035】
「粒子」とは、幾何学的に決定され得る形状を有する固体である物質を意味する。形状は規則的又は非規則的であってもよい。粒子は、典型的には、例えば、粒度及び粒度分布に関して分析することができる。
【0036】
「粉末」は、粒子形態中に固体成分のみを含有することを特徴とする。
【0037】
「非表面処理フィラー」は、フィラーの表面を改質して組成物の他の構成成分に対するフィラーの適合性又は反応性をより高くするための、反応性物質への曝露がされていない、表面を有するフィラーである。
【0038】
「接着材」又は「歯科用接着材」とは、「歯科用材料」(例えば、「修復材」、歯科矯正用装具(例えば、ブラケット)、又は歯科矯正用接着材)を歯牙表面に接着させるために、歯構造体(例えば、歯)に対し前処理として使用される組成物を指す。「歯科矯正用接着材」とは、歯牙(例えば、歯)表面に歯科矯正用装具を接着させるために用いられる組成物を指す。一般的に、「歯科矯正用接着材」の歯牙表面への接着力を高めるために、例えば、エッチング、下塗り、及び/又は接着材の適用によって歯牙表面を前処理する。
【0039】
「歯牙表面」又は「歯表面」とは、歯構造体(例えば、エナメル質、象牙質、及びセメント質)及び骨の表面を指す。
【0040】
「自己エッチング性(self-etching)」組成物とは、歯牙表面をエッチング材で前処理せずとも歯牙表面に固着する組成物を指す。好ましくは、自己エッチング性組成物は、別のエッチング材又はプライマーを使用しない自己プライマーとして機能することもできる。
【0041】
「自己接着性」組成物とは、歯牙表面をプライマー又はボンディング材で前処理せずとも歯牙表面に接着できる組成物を指す。好ましくは、自己接着性組成物は、別のエッチング材を使用しない自己エッチング性組成物でもある。
【0042】
「自己硬化組成物」とは、放射線を適用せずともレドックス反応によって硬化する組成物という意味である。
【0043】
「未処理」の歯牙表面は、自己エッチング性接着材又は自己接着性組成物の適用前にエッチング材、プライマー、又はボンディング材による処理を受けていない歯又は骨表面を指す。
【0044】
「未エッチング」の歯牙表面は、本発明の自己エッチング性接着材又は自己接着性組成物の適用前にエッチング材による処理を受けていない歯又は骨表面を指す。
【0045】
「エッチング材」は、歯牙表面を完全に又は部分的に可溶化する(すなわち、エッチングする)ことができる酸性組成物を指す。エッチング効果は、ヒトの肉眼で見ることができ、かつ/又は機器で(例えば、光学顕微鏡検査によって)検出可能である。典型的には、エッチング材は、約10〜30秒間、歯構造体表面に適用される。
【0046】
かなり長期間(周囲条件下で少なくとも約4週間〜約12ヶ月超)にわたって安定であり続ける場合、組成物を「保存安定性」であると分類することができる。保存安定性組成物は、典型的には、経時的な含有構成成分の分解又は早期重合を示さない。更に、この組成物によって達成を意図する特徴は、所望よりも多く損なわれることはないものとする。
【0047】
「ナノサイズフィラー」は、その個々の粒子が、例えば、平均粒径約200nm未満等のナノメートル範囲の大きさを有するフィラーである。有用な例が、米国特許第6,899,948号及び同第6,572,693号に示されており、これらの特許の、特にナノサイズシリカ粒子に関する内容は、本明細書に参照として組込まれる。
【0048】
「開始剤系」は、本明細書において、「固化性成分を硬化させる」としても記載される、固化性成分の硬化プロセスを始めるか、又は開始することができる、歯科用組成物の構成成分を含むものとする。
【0049】
「硬化(curing)」、「固化(hardening)」、及び「硬化(setting)反応」は互換的に使用され、組成物の粘度及び硬度等の物性が、個々の構成成分間の化学反応によって経時的に変化する(例えば、上昇する)反応を指す。
【0050】
組成物を放射線によって又は放射線なしにレドックス反応によって、すなわち、自己硬化機構によって硬化させる1つ以上の開始剤系を組成物が含有する場合、組成物は「二重硬化」を特徴とする。
【0051】
「放射線硬化性」は、構成成分(又は場合によっては、組成物)が、放射線の適用、好ましくは、周囲条件下及び適切な時間内(例えば、約60、30、又は10秒以内)で、可視光線スペクトルの波長の電磁放射線の適用によって硬化させることができることを意味する。
【0052】
「誘導体」は、対応する参照化合物に密接に関連した化学構造を示し、対応する参照化合物が特徴とする全ての構造的要素を含むが、対応する参照化合物と比較して、例えば、CH
3、Br、Cl、若しくはFのような追加の化学基を更に有するか、又は、例えばCH
3のような化学基を有しない等、軽微な変更を有する化学化合物である。すなわち、誘導体は、参照化合物の構造的類似化合物である。化学化合物の誘導体は、前述の化学化合物の化学構造を含む化合物である。誘導体の他の例は、化学化合物によって、例えば、酸塩基反応において生成される塩である。
【0053】
次の例でこれを説明すると、参照化合物、ビスフェノールに対しては、4つの追加のメチル基を有するテトラメチルビスフェノールAが、及び参照化合物、ビスフェノールに対しては、2つの追加のメチル基を有しないビスフェノールFが、この定義の意味においてビスフェノールの誘導体である。
【0054】
用語「可視光」は、約400〜約800ナノメートル(nm)の波長を有する光を指すために使用される。
【0055】
「周囲条件」とは、本発明の組成物が、保存及び取り扱い中に通常おかれる条件を意味する。周囲条件は、例えば、約900〜約1100mbar(約0.09〜約0.11MPa)の圧力、約−10〜約60℃の温度、及び約10〜約100%の相対湿度であってもよい。実験室では、周囲条件は、約23℃及び約1013mbar(0.1013MPa)に調整される。歯科及び歯科矯正分野では、周囲条件は、約950〜約1050mbar(約0.095〜約0.105MPa)の圧力、約15〜約40℃の温度、及び約20〜約80%の相対湿度として合理的に理解される。
【0056】
組成物は、その組成物が本質的な特徴として特定の構成成分を含有しない場合、本発明の意味内で当該の特定の構成成分を「本質的に又は実質的に含まない」。したがって、当該の構成成分は、それ自体で、又は他の構成成分若しくは他の組成物の成分との組合せのいずれかで、組成物に故意に添加されることはない。特定の構成成分を本質的に含まない組成物は、通常、組成物全体に対して、その構成成分を約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満の量で含有する。理想的には、この組成物又は溶液は、当該の構成成分を全く含有しない。しかしながら、時には、例えば、不純物に起因して、微量の当該構成成分が不可避的に存在する場合がある。
【0057】
「含む(comprise)」は、用語「含有する(contain)」、「本質的に〜からなる(essentially consists of)」及び「からなる(consists of)」を包含する。本明細書で使用する場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に用いられる。用語「含む(comprises)」又は「含有する(contains)」及びこれらの変形は、これらの用語が「明細書」及び「特許請求の範囲」で記載される場合、限定的な意味を有するものではない。また、本明細書において、数値の範囲を端点によって記述する場合、その範囲内に包含される全ての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0058】
用語に「一又は複数の」を付加することは、その用語に単数形及び複数形が包含されるべきであることを意味する。例えば、用語「一又は複数の添加物」は、1つの添加物及びそれ以上の数の添加物(例えば、2、3、4、等)という意味である。
【0059】
別途記載のない限り、「明細書」及び「特許請求の範囲」で使用される成分の量、下記のような物性の測定値等を表す全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されることが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
従来の技術に記載されたレドックス開始剤は、典型的には、ペルオキシド−アミン、ペルオキシド/ヒドロペルオキシド−チオ尿素、過硫酸物−アスコルビン酸、及びバルビツール酸−ペルオキシド−銅−塩化物(いわゆるBredereck系)に基づいた系である。
【0061】
しかしながら、これらの系のほとんどは、酸性条件下では作用せず、硬化が不十分となることがあるため、自己接着性組成物又は自己硬化性接着材の処方には使用することができない。
【0062】
更に、レドックス開始剤系によりもたらされる機械的特性は、光開始系と同程度にまで至らないことが多い。これらの欠点は、本明細書本文に記載の系及び組成物によって回避される。これらの物質は、酸性条件下であっても効率的に硬化することから、自己接着性組成物の処方の象牙質及びエナメル質への接着性を向上させるほか、光開始剤系を使用した際に得ることができる機械的特性に匹敵する特性を有する。
【0063】
最新のレドックス開始剤系とは対照的に、本明細書本文に記載のレドックス開始剤系は、例えば、一又は複数の(メタ)アクリレート等の不飽和成分についても、酸性条件下のフリーラジカル重合によって固化させることができる。この開始剤系は非常に良好な機械的特性(例えば、曲げ強度)によって示される効率的な硬化をもたらすが、エナメル質及び象牙質への接着もまた促進する。したがって、この開始剤系は、自己接着性及び自己硬化性充填材並びに合着材を含む、自己硬化性、自己接着性コンポジットの開発に非常に有用である。
【0064】
よって、本明細書本文に記載の組成物及びパーツキットは、例えば、特に象牙質表面に対して良好な接着特性を有する、二成分、自己エッチング性、自己接着性、任意に二重硬化性の、歯科用組成物を提供するという、上記目的のうちの少なくとも1つを解決するのに好適である。
【0065】
本明細書本文に記載の組成物及びパーツキットは、ジルコニア若しくはアルミナ等の高強度セラミック、ガラスセラミック、コンポジット材料、及び貴金属(例えば、Au)、及び非貴金属(例えば、Ti)、及びそれぞれの合金への固着に好適である。
【0066】
本明細書本文に記載の組成物及びパーツキットは、化学的な前処理工程(シラン、ジルコニア、及び/又は金属プライマーによる処理等)がなくても、これらの材料の表面への固着が可能であることが判明した。
【0067】
しかしながら、更に高い固着強度が要求される場合には、所望により、化学的な前処理工程を適用することができる。
【0068】
更に、驚くべきことに、本明細書本文に記載の配合物は、十分に安定な組成物となったことが判明した。すなわち、合理的な保存期間中、個々のパーツを混合しない限り硬化することのない、個々のパーツに含有された組成物であることが判明したのである。
【0069】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートA又はパートBに含有される組成物は、ペースト、液体、又は粉末形態のいずれかである。したがって、パーツキットはペースト/ペースト、粉末/液体、又は液体/液体処方として提供することができる。
【0070】
パートAに含有される組成物は、典型的には、下記の特徴の1つ以上又は全てを特徴とすることができる。
ペースト、液体又は粉末であること、
水と接触した際のpH値が3〜12又は3〜8であること。
【0071】
パートBに含有される組成物は、典型的には、下記の特徴の1つ以上又は全てを特徴とすることができる。
ペースト又は液体であること
水と接触した際のpH値が7未満又は6未満又は5未満又は4未満であること。
【0072】
十分な保存安定性のほかに、本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られた組成物は、自己エッチング性及び/又は自己接着性である。すなわち、本組成物は、例えば、エッチング材及び/又はボンディング系を用いて前処理せずとも歯牙表面に接着する。
【0073】
自己接着性の特徴のほかに、本組成物は、典型的には、総合的に良好な機械的特性を有する。
【0074】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られた組成物は、典型的には下記の固化前の特徴の少なくとも1つ以上又は全てを特徴とすることができる。
・水と接触させた場合のpH値:混合直後に7未満
・粘度:約0.01〜約1,000Pa
*s、23℃で測定
【0075】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有された組成物を混合することによって得られた組成物は、典型的には下記の硬化後の特徴の少なくとも1つ以上又は全てを特徴とすることができる。
・ISO 4049:2009に準じて測定するとき、少なくとも50MPa又は少なくとも70MPa又は少なくとも90MPaの曲げ強度、
・ワイヤーループ接着(実験の部参照)に準じて測定するとき、少なくとも5MPa又は少なくとも7MPa又は少なくとも9MPaの象牙質への接着性、
・ワイヤーループ接着(実験の部参照)に準じて測定するとき、少なくとも5MPa又は少なくとも7MPa又は少なくとも9MPaのエナメル質への接着性。
【0076】
組成物の粘度は、典型的には、目的とする用途に応じて調整される。
【0077】
組成物を歯裂溝封鎖材又は歯科用フロアブルとして使用する場合、好適な粘度としては、例えば、約1〜約150Pa
*s又は約10〜約120Pa
*sが挙げられる(23℃、剪断速度:100 1/s)。
【0078】
所望により、粘度は、実施例の項で記載されるとおりに測定することができる。
【0079】
本組成物は、本組成物中に含有されたレドックス開始剤系によって、許容できる時間枠内、例えば、温度37℃において、300秒未満又は180秒未満又は120秒未満以内で硬化させることができる。
【0080】
個々のペースト又は混合された組成物のpH値は、湿ったpH感応紙を使用して測定することができる。
【0081】
本明細書本文に記載の組成物は、ベースパート及び触媒パートを含有するパーツキットとして提供される。それらのパーツのほかに、パーツキットの使用方法及び個々のパーツ中に含有された組成物を組合せることによって得られた組成物の適用方法に関するヒントを含んでいる使用説明書が典型的には含まれている。
【0082】
個々のパートに含有されるパートAとパートBとを組合せることによって得られた組成物は、
・任意に、一又は複数のフィラーと、
・酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、
・アスコルビン酸、アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分と、
・酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、
・一又は複数の遷移金属成分と、
・一又は複数の有機ペルオキシドと、
・任意に、光開始剤系と、
・任意に、一又は複数の添加物と、を含む。
【0083】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBは一又は複数のフィラーを含有してもよい。所望により、1つ以上のフィラーが存在してもよい。一又は複数のフィラーの性質及び構造は、意図した目的が達成不能とならない限り、特に限定されない。
【0084】
フィラーの添加は、例えば、粘度のようなレオロジー特性を調整するのに有益である。フィラーの含有量もまた、典型的には、硬度又は曲げ強度のような、固化後の組成物の物性に影響する。
【0085】
フィラー粒子の大きさは、レジンマトリックスを形成する固化性成分との均質混合物を得ることができる程度とすべきである。
【0086】
フィラーの平均粒度は、5nm〜100μmの範囲であってもよい。
【0087】
所望により、フィラー粒子の粒度の測定を、TEM(透過型電子顕微鏡検査)法で行うことができ、これによって集合が分析され、平均粒径が得られる。
【0088】
粒径測定の好ましい方法は、下記のように説明することができる。
【0089】
厚さ約80nmの試料を、炭素安定化フォルムバール基板(Structure Probe,Inc.,West Chester,PAの一部門であるSPI Supplies)付き200メッシュの銅グリッド上に配置する。透過型電子顕微鏡写真(TEM)を、200KvでJEOL 200CX(JEOL,Ltd.of Akishima,Japan、及びJEOL USA,Inc.により販売)を使用して得る。約50〜100粒子の集合の大きさを測定することができ、平均径を求める。
【0090】
一又は複数のフィラーは、典型的に非酸反応性フィラーを含む。非酸反応性フィラーは、酸と酸/塩基反応をしないフィラーである。
【0091】
有用な非酸反応性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、並びに非酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス、石英、粉末ガラス、CaF
2等の非水溶性フッ化物、ケイ酸、特に発熱性ケイ酸等のシリカゲル及びその顆粒、クリストバライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、分子篩を含むゼオライトに基づくフィラーが挙げられる。
【0092】
好適なフュームドシリカとしては、例えば、Aerosil(商標)シリーズOX−50、−130、−150、及び−200の商品名で販売されている製品、Degussa AG(Hanau,Germany)から入手可能なAerosil R8200、Cabot Corp(Tuscola,Ill.)から入手可能なCAB−O−SIL(商標)M5、並びにWackerから入手可能なHDKタイプ、例えば、HDK−H2000、HDK H15、HDK H18、HDK H20、及びHDK H30が挙げられる。
【0093】
使用が可能で、本明細書本文に記載の歯科用材料に放射線不透過性をもたらす一又は複数のフィラーとしては、一又は複数の重金属酸化物及び一又は複数のフッ化物が挙げられる。本明細書で使用する場合、「放射線不透過性」は、従来の方法で標準的な歯科用X線装置を使用して、歯構造体と区別される、固化した歯科用材料の能力を表す。歯科用材料における放射線不透過性は、X線を使用して歯牙の状態を診断する、ある特定の場合に有利である。例えば、放射線不透過材料は、充填材を囲んでいる歯組織に形成されている場合がある二次齲蝕の発見を可能とする。特定用途及びX線フィルムを診断する施術者の予測に応じて、所望の放射線不透過性の程度を変えることができる。
【0094】
約28を超える原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が好ましい場合がある。フィラーを分散させた固化レジンに望ましくない色又は濃淡が付与されないように、重金属酸化物又はフッ化物を選択すべきである。例えば、鉄及びコバルトは、歯科用材料の歯の中間色に、黒ずんだ色及び明暗差のある色を付与するので好まれない。より好ましくは、重金属酸化物又はフッ化物は、30を超える原子番号を有する金属の酸化物又はフッ化物である。好適な金属酸化物は、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオビウム、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(すなわち、原子番号57〜71の範囲の元素)、セリウム、及びこれらの組合せの酸化物である。好適な金属フッ化物は、例えば、三フッ化イットリウム及び三フッ化イッテルビウムである。より好ましくは、30超72未満の原子番号を有する重金属の酸化物又はフッ化物が、任意で本発明の材料に含められる。放射線不透過性を付与する特に好ましい金属酸化物としては、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化セリウム、及びこれらの組合せが挙げられる。重金属酸化物粒子は凝集してもよい。この場合、凝集した粒子の平均径は約200nm未満であるのが好ましく、より好ましくは約90nm未満である。
【0095】
放射線不透過性を上昇させる他の好適なフィラーは、バリウム及びストロンチウムの塩、特に、硫酸ストロンチウム及び硫酸バリウムである。
【0096】
使用できる一又は複数のフィラーには、ナノサイズシリカ等のナノサイズフィラーも含まれる。
【0097】
好適なナノサイズ粒子は、典型的には、約5〜約80nmの範囲の平均粒度を有する。
【0098】
好ましいナノサイズシリカは、商品名NALCO COLLOIDAL SILICASとしてNalco Chemical Co.(Naperville,Ill.)から(例えば、好ましいシリカ粒子は、NALCO製品1040、1042、1050、1060、2327、及び2329を使用して得ることができる)、Nissan Chemical America Company,Houston,Texas(例えば、SNOWTEX−ZL、−OL、−O、−N、−C、−20L、−40、及び−50);Admatechs Co.,Ltd.,Japan(例えば、SX009−MIE、SX009−MIF、SC1050−MJM、及びSC1050−MLV);Grace GmbH & Co.KG,Worms,Germany(例えば、商品名LUDOX、例えば、P−W50、P−W30、P−X30、P−T40、及びP−T40ASで入手可能なもの);Akzo Nobel Chemicals GmbH,Leverkusen,Germany(例えば、商品名LEVASIL、例えば、50/50%、100/45%、200/30%、200A/30%、200/40%、200A/40%、300/30%、及び500/15%として入手可能なもの)、及びBayer MaterialScience AG,Leverkusen,Germany(例えば、商品名DISPERCOLL S、例えば、5005、4510、4020、及び3030として入手可能なもの)から市販されている。
【0099】
歯科用材料に入れる前にナノサイズシリカ粒子を表面処理することにより、レジン中に一層安定に分散させることができる。好ましくは、表面処理は、粒子が固化性レジン中に良好に分散されるようにナノサイズの粒子を安定化させ、その結果組成物を実質的に均質にする。更には、シリカの表面の少なくとも一部分が表面処理剤により改質され、このようにして安定化された粒子が、硬化中の固化性レジンと共重合できること、ないしは別の方法で反応できることが好ましい。
【0100】
したがって、シリカ粒子及び他の好適な非酸反応性フィラーを、レジン相溶化表面処理剤で処理してもよい。
【0101】
特に好ましい表面処理剤又は表面改質剤には、レジンと重合し得るシラン処理剤が挙げられる。好ましいシラン処理剤には、Witco OSi Specialties(Danbury、Conn.)から商品名A−174で市販されているガンマ−メタクリルオキシルプロピルトリメトキシシラン、及びUnited Chemical Technologies(Bristol,Pa.)から商品名G6720で入手可能な製品であるガンマ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0102】
あるいは、表面改質剤の組合せが有用である場合があり、表面改質剤の少なくとも1つは、固化性レジンと共重合可能な官能基を有する。例えば、重合性基は、エチレン性不飽和官能基、又は開環重合を起こす環式官能基にすることができる。エチレン性不飽和重合性基は、例えば、アクリレート基若しくはメタクリレート基、又はビニル基であり得る。開環重合を起こす環式官能基は、通常、酸素、硫黄、又は窒素等のヘテロ原子を含有しており、好ましくは、エポキシドのように酸素を含有する3員環である。固化性レジンとは通常反応しない他の表面改質剤を、分散性又はレオロジー特性を増強するために含んでもよい。この種のシランの例としては、例えば、アルキル若しくはアリールポリエーテルシラン、アルキルシラン、ヒドロキシアルキルシラン、ヒドロキシアリールシラン、又はアミノアルキル官能性シランが挙げられる。
【0103】
無機材料のほかに、一又は複数のフィラーはまた、有機材料を原料としてもよい。好適な有機フィラー粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシド等が挙げられる。
【0104】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートAが酸性部分を有する一又は複数の重合性成分を含有しない場合、所望により、酸反応性フィラーをパートAに含有させることができる。
【0105】
本パーツキットのパートA中に存在し得る酸反応性フィラーの例としては、酸反応性フルオロアルミノシリケートガラス(時折GICガラスとも呼ばれる)、カルシウム、マグネシウム、ランタン、ストロンチウム、亜鉛の酸化物、水酸化物、及び炭酸塩、又はこれらの混合物のような塩基性フィラーが挙げられる。これらのフィラーはまた、表面処理することもできる。
【0106】
好適な酸反応性フィラーは、例えば、英国特許第1,316,129号及び国際公開第95/22956号(Wangら)にも記載されている。
【0107】
フィラーマトリックスに使用されるフィラーの量は、通常、組成物が使用されるべき目的によって異なる。
【0108】
フィラーが存在する場合には、典型的には下記の量で存在する。量は、組成物全体の重量に対して与えられたものである。
下限:少なくとも1重量%又は少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%。
上限:最大90重量%又は最大80重量%又は最大70重量%。
範囲:1重量%〜90重量%又は5重量%〜80重量%又は10重量%〜70重量%。
【0109】
フィラーの量が少なすぎると、硬化した組成物の機械的強度が、目的とする用途に対して低すぎる場合がある。
【0110】
フィラーの量が多すぎると、粘度を増大させすぎるなどの望ましくない取り扱い上の特性、又は湿潤性の不足、及び歯牙硬組織の透過が生じる場合がある。
【0111】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートB及び任意にパートAは、一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分を含有する。
【0112】
所望により、1つ以上の、一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分が存在してもよい。それらの構成成分の性質及び構造は、意図した目的が達成不能とならない限り、特に限定されない。
【0113】
本パーツキットのパートAに含有される一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分は、本パーツキットのパートBに含有される一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と同一であるか又は異なってもよい。
【0114】
この一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分は、典型的には、エチレン性不飽和モノマー、モノマー又はオリゴマー又はポリマーを含むフリーラジカル重合性材料である。
【0115】
好適な一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分は、下記の式を特徴とする。
A
n−B−A
m
式中、Aは、(メタ)アクリル部分等のエチレン性不飽和基であり、
Bは、(i)他の官能基(例えば、ハロゲン化合物(Cl、Br、Iを含む)、OH、又はこれらの混合物)で任意に置換される直鎖又は分岐鎖C1〜C12アルキル、(ii)他の官能基(例えば、ハロゲン化合物、OH、又はこれらの混合物)で任意に置換されるC6〜C12アリール、(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/又はスルホニル結合によって互いに結合している4〜20個の炭素原子を有する有機基から選択され、
m、nは独立して、0、1、2、3、4、5、又は6から選択されるが、ただしn+mは0より大きく、つまり少なくとも1つのA基が存在する。
【0116】
このような重合性材料としては、モノ−、ジ−、又はポリ−アクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)との反応生成物であるUDMA(異性体の混合物、例えば、Roehm Plex 6661−0)と呼ばれるジウレタンジメタクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−(メタ)アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン(BisGMA)、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシ−フェニルジメチルメタン、及びトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート;分子量200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレート及びビス−メタクリレート、アクリル化モノマーの共重合性混合物(例えば、米国特許第4,652,274号を参照のこと)、並びにアクリル化オリゴマー(例えば、米国特許第4,642,126号を参照のこと)と;並びにスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレート等のビニル化合物;ウレタン、尿素、又はアミド基を含む多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。所望により、これらのフリーラジカル重合性材料の2つ以上の混合物を使用することができる。
【0117】
存在してもよい更なる重合性成分としては、エトキシ化ビス−フェノールAのジ(メタ)アクリレート、例えば、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、ウレタン(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。使用するモノマーは、更には、[α]−シアノアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、及びソルビン酸のエステルであり得る。
【0118】
欧州特許第0 235 826号に記載のメタクリルエステル、例えば、ビス[3[4]−メタクリル−オキシメチル−8(9)−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デシルメチルトリグリコレートを使用することも可能である。2,2−ビス−4(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン(ビス−GMA)、2,2−ビス−4(3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニルプロパン、7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザへキサデカン−1,16−ジオキシジメタクリレート(UDMA)、ウレタン(メタ)アクリレート、及びビスヒドロキシメチルトリシクロ−(5.2.1.0
2,6)デカンのジ(メタ)アクリレートも好適である。
【0119】
これらのエチレン性不飽和モノマーは、単独で又は他のエチレン性不飽和モノマーと組合せて一又は複数の歯科用組成物に使用することができる。それらの構成成分に加えて又はそれらの構成成分のほかに添加できる他の固化性成分としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、及びポリウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマー性又はポリマー性化合物が挙げられる。これらの化合物の分子量は、典型的には、20,000g/モル未満、特に15,000g/モル未満、とりわけ10,000g/モル未満である。
【0120】
ヒドロキシル部分及び/又は1,3−ジケト部分を含む重合性モノマーもまた、加えることができる。好適な化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、並びに更に、1,2−又は1,3−及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイル−1,2−ジヒドロキシプロピルアミン、N−(メタ)アクリロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン、フェノール及びグリシジル(メタ)アクリレートの付加物、例えば、1−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ナフトキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0121】
1,3−ジケト基を有する重合性成分の例は、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEMA)である。所望により、これらの構成成分のうちの1つ以上の混合物を用いてもよい。これらの構成成分の添加は、レオロジー特性を調整するため又は機械的特性に影響を及ぼすために使用してもよい。
【0122】
一又は複数の酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分は、典型的には、組成物全体の重量に対するものとして、下記の量で存在する。
下限:少なくとも5重量%又は少なくとも10重量%又は少なくとも20重量%、
上限:最大65重量%又は最大55重量%又は最大45重量%、
範囲:5重量%〜約65重量%又は10重量%〜55重量%又は20重量%〜45重量%。
【0123】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートAは、アスコルビン酸又は1つ以上の、アスコルビン酸の塩及びエステルを含む、アスコルビン酸の誘導体を含有する。
【0124】
好適な塩としては、Na、K等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0125】
アスコルビン酸のエステルとしては、アスコルビン酸のヒドロキシル官能基の1つをカルボン酸、特にC2〜C30カルボン酸と反応させることによって生成されるものが挙げられる。
【0126】
C2〜C30カルボン酸の好適な例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノールエライジン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸のような脂肪酸が挙げられる。
【0127】
アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、アスコルビルステアレート、及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0128】
アスコルビン酸又はその誘導体は、典型的には、組成物全体の重量に対するものとして、下記の量で存在する。
下限:少なくとも0.01重量%又は少なくとも0.05重量%又は少なくとも0.1重量%、
上限:最大5重量%又は最大3重量%又は最大1重量%、
範囲:0.01重量%〜5重量%又は0.05重量%〜3重量%又は0.1重量%〜1重量%。
【0129】
アスコルビン酸又は一又は複数のその誘導体の量が多すぎると、組成物の硬化の進行があまりにも急速になる場合がある。
【0130】
アスコルビン酸又は一又は複数のその誘導体の量が少なすぎると、組成物の硬化に時間がかかりすぎる場合がある。
【0131】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートBは、一又は複数の酸性部分を有する一又は複数の重合性成分を含有する。
【0132】
所望により、一又は複数の酸性部分を有する一又は複数の重合性成分は、本パーツキットのパートAにもまた含有されてもよい。
【0133】
所望により、1つ以上の、一又は複数の酸性部分を有する一又は複数の重合性成分が存在してもよい。それらの構成成分の性質及び構造は、意図した目的が達成不能とならない限り、特に限定されない。
【0134】
酸部分を有する固化性成分は、典型的には下記の式によって表すことができる。
A
n−B−C
m
式中、Aは、(メタ)アクリル部分等のエチレン性不飽和基であり、
Bはスペーサー基であり、例えば、(i)他の官能基(例えば、ハロゲン化合物(Cl、Br、Iを含む)、OH、又はこれらの混合物)で任意に置換される直鎖又は分岐鎖C1〜C12アルキル、(ii)他の官能基(例えば、ハロゲン化合物、OH、又はこれらの混合物)で任意に置換されるC6〜C12アリール、(iii)1つ以上のエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、チオカルボニル、アミド、ウレタン、カルボニル、及び/又はスルホニル結合によって互いに結合している4〜20個の炭素原子を有する有機基等であり、かつ
Cは酸性基、又は酸無水物等の酸性基の前駆体であり、
m、nは独立して、1、2、3、4、5、又は6から選択され、
酸性基は、−COOH又は−CO−O−CO−等の1つ以上のカルボン酸残基、−O−P(O)(OH)OH等のリン酸残基、C−P(O)(OH)(OH)等のホスホン酸残基、−SO
3H等のスルホン酸残基、又は−SO
2H等のスルフィン酸残基を含む。
【0135】
酸部分を有する固化性成分の例としては、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシプロピルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば水と容易に反応して、酸ハロゲン化物又は無水物等の上述の特定の例を形成することができる酸部分を有するこれらの固化性成分の誘導体もまた、企図される。
【0136】
また、(メタ)アクリル酸、芳香族の(メタ)アクリル化された酸(例えば、メタクリレート化されたトリメリット酸)などの不飽和カルボンのモノマー、オリゴマー、及びポリマー、並びにこれらの無水物を使用することもできる。
【0137】
これらの化合物の一部は、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との間の反応生成物として得ることができる。酸官能性成分及びエチレン性不飽和成分の両方を有するこの種の追加の化合物は、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)及び同第5,130,347号(Mitra)に記載されている。エチレン性不飽和部分及び酸部分の両方を含有する多種多様のこのような化合物を使用することができる。所望により、このような化合物の混合物を使用することができる。
【0138】
(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸の使用は、それらの構成成分が歯牙硬組織への接着、均質な層の形成、粘度、又は水分耐性等の特性を改善させるのに有用であることが見出されているため、多くの場合好ましい。
【0139】
一実施形態によれば、組成物は、(メタ)アクリレート官能化ポリアルケン酸、例えば、AA:ITA:IEM(ペンダントメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー)である。
【0140】
これらの構成成分は、例えば、AA:ITAコポリマーを、2−イソシアネートエチルメタクリレートと反応させて、コポリマーの酸基の一部をペンダントメタクリレート基に変換させることにより、作製することができる。これらの構成成分の製造プロセスは、例えば、米国特許第5,130,347号(Mitra)の実施例11に記載されており、並びに米国特許第4,259,075号(Yamauchiら)、同第4,499,251号(Omuraら)、同第4,537,940号(Omuraら)、同第4,539,382号(Omuraら)、同第5,530,038号(Yamamotoら)、同第6,458,868号(Okadaら)、及び欧州特許出願公開第0 712 622(A1)号(Tokuyama Corp.)、及び同第1 051 961(A1)号(Kuraray Co.,Ltd.)に説明されているものがある。
【0141】
一又は複数の酸性部分を有する一又は複数の重合性成分は、典型的には下記の量で存在する。
下限:少なくとも2重量%又は少なくとも3重量%又は少なくとも4重量%、
上限:最大50重量%又は最大40重量%又は最大30重量%、
範囲:2重量%〜約50重量%又は約3重量%〜約40重量%又は約4重量%〜約30重量%であり、
重量%は、本パーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を組合せることによって得られた組成物全体の重量に対するものである。
【0142】
本明細書本文に記載のパーツキットのパートBは、1つ以上の遷移金属成分を含有する。
【0143】
好適な一又は複数の遷移金属成分としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び/又は亜鉛から選択される一又は複数の有機及び/又は無機塩が挙げられるが、銅及び鉄が、時として好ましい。
【0144】
有用な塩としては、一又は複数の酢酸塩、一又は複数の塩化物、一又は複数の硫酸塩、一又は複数の安息香酸塩、一又は複数のアセチルアセトン酸塩、一又は複数のナフテン酸塩、一又は複数のカルボン酸塩、ビス(1−フェニルペンタン−1,3−ジオン)錯体、一又は複数のサリチル酸塩、遷移金属のいずれかのエチレンジアミン四酢酸との錯体、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0145】
一実施形態によれば、遷移金属成分は、酸化段階にあり、これにより、構成成分を還元することができる。有用な酸化段階としては、適宜、+2、+3、+4、+5、+6、及び+7が挙げられる。
【0146】
一又は複数の銅成分が、時として好ましい。一又は複数の銅成分における銅の酸化段階は、好ましくは+1又は+2である。
【0147】
使用できる一又は複数の銅成分の典型例としては、酢酸銅、塩化銅、安息香酸銅、アセチルアセトナト銅、ナフテン酸銅、カルボン酸銅、銅ビス(1−フェニルペンタン−1,3−ジオン)錯体(銅プロセトネート(copper procetonate))、サリチル酸銅、銅とチオ尿素との錯体、エチレンジアミン四酢酸、及び/又はこれらの混合物を含む、銅の塩及び錯体が挙げられる。銅化合物は、水和物形態で用いてもよく、又は水を含まなくてもよい。特に好ましいのは、酢酸銅である。
【0148】
使用できる遷移金属成分の量は、特に限定されない。遷移金属塩は、意図する目的を達成するのに十分な量で用いなければならない。
【0149】
一又は複数の遷移金属成分は、典型的には下記の量で存在する。
下限:少なくとも0.00001重量%又は少なくとも0.0001重量%又は少なくとも0.001重量%、
上限:最大3重量%又は最大2重量%又は最大1.5重量%、
範囲:0.00001重量%〜3重量%又は0.0001重量%〜2重量%又は0.001重量%〜1.5重量%であり、
重量%は、本パーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を組合せることによって得られた組成物全体の重量に対するものである。使用される遷移金属成分の量が多すぎると、組成物の硬化の進行があまりにも急速になる場合がある。
【0150】
使用される遷移金属成分の量が少なすぎると、組成物の硬化に時間がかかりすぎる場合がある。
【0151】
所望の結果を達成するのに好適であれば、概ね全ての一又は複数の有機ペルオキシドを使用することができる。
【0152】
無機ペルオキシドとは対照的に、一又は複数の有機ペルオキシドは金属又は金属イオンを含まない。したがって、有機ペルオキシドは、典型的にはC、O、H、及び任意にハロゲン(例えば、F、Cl、Br)のみを含む。使用できる有機ペルオキシドは、一又は複数のジ−ペルオキシド及びヒドロペルオキシドを含む。
【0153】
一実施形態によれば、有機ペルオキシドはジ−ペルオキシドであり、好ましくは、部分R
1−O−O−R
2−O−O−R
3を含むジ−ペルオキシドであり、ここで、R
1及びR
3は、独立して、H、アルキル(例えば、C1〜C6)、分枝アルキル(例えば、C1〜C6)、シクロアルキル(例えば、C5〜C10)、アルキルアリール(例えば、C7〜C12)、又はアリール(例えば、C6〜C10)から選択され、かつR
2は、アルキル(例えば、C1〜C6)又は分枝アルキル(例えば、C1〜C6)から選択される。
【0154】
他の一実施形態によれば、有機ペルオキシドはヒドロペルオキシド、特に、構造部分R−O−O−Hを含むヒドロペルオキシドであり、
ここで、Rは(例えば、C1〜C20)アルキル、(例えば、C3〜C20)分枝アルキル、(例えば、C6〜C12)シクロアルキル、(例えば、C7〜C20)アルキルアリール、又は(例えば、C6〜C12)アリールである。
【0155】
好適な有機ヒドロペルオキシドの例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、p−ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p−メタンヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0156】
好適な有機ジペルオキシドの例としては、2,2−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−ブタン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)−ヘキサン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0157】
文献に記載されていることが多い他のペルオキシドは、一又は複数のケトンペルオキシド、一又は複数のジアシルペルオキシド、一又は複数のジアルキルペルオキシド、一又は複数のペルオキシケタール)、一又は複数のペルオキシエステル、及び一又は複数のペルオキシジカーボネートである。
【0158】
ケトンペルオキシドの例としては、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、及びシクロヘキサノンペルオキシドが挙げられる。
【0159】
ペルオキシエステルの例としては、クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、2,2,4−トリメチルペンチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、及びt−ブチルペルオキシマレイン酸が挙げられる。
【0160】
ペルオキシジカーボネートの例としては、ジ−3−メトキシペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピル−1−ペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチル−ペルオキシジカーボネート、及びジアリルペルオキシジカーボネートが挙げられる。
【0161】
ジアシルペルオキシドの例としては、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドが挙げられる。
【0162】
ジアルキルペルオキシドの例としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキサンが挙げられる。
【0163】
ペルオキシケタールの例としては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、及び4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)吉草酸−n−ブチルエステルが挙げられる。
【0164】
一又は複数の有機ペルオキシドは、典型的には下記の量で存在する。
下限:少なくとも0.01重量%又は少なくとも0.05重量%又は少なくとも0.1重量%、
上限:最大5重量%又は最大4重量%又は最大3重量%、
範囲:0.01重量%〜5重量%又は0.05重量%〜4重量%又は0.1重量%〜3重量%であり、
重量%は、組成物全体の重量に対するものである。
【0165】
一又は複数の有機ペルオキシドの量が多すぎると、組成物の硬化の進行があまりにも急速になる場合がある。
【0166】
一又は複数の有機ペルオキシドの量が少なすぎると、組成物の硬化に時間がかかりすぎる場合がある。
【0167】
アスコルビン酸又は一若しくは複数のその誘導体、一又は複数の遷移金属成分、及び一又は複数の有機ペルオキシドを含む、上記のレドックス開始剤系のほかに、本明細書本文に記載のパーツキットはまた、光開始剤系も更に含んでもよい。
【0168】
この任意の光開始剤系の性質は、所望の目的が悪影響を受けない限り、特に限定されない。
【0169】
光開始剤系を組込むことによって、「二重硬化性」を特徴とすることができる組成物を得ることができ、すなわち、この組成物は、放射線なしに組成物を固化(「暗硬化又は自己硬化」)するのに好適なレドックス開始剤系を含有し、光開始剤系は、放射線の照射によって組成物を固化(「光硬化」)するのに好適である。
【0170】
フリーラジカル重合に好適な光開始剤は、歯科材料を取り扱う当業者には概ね知られている。典型的な光開始剤系は、増感剤と還元剤との組合せを含む。
【0171】
増感剤としては、390nm〜830nmの波長を有する可視光の作用によって、一又は複数の重合性モノマーを重合させることができるものが好ましい。
【0172】
この例としては、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジルジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。
【0173】
還元剤としては、第三級アミン等が概ね用いられる。第三級アミンの好適な例としては、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、メチル4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、及びイソアミル4−ジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。他の還元剤としては、スルフィン酸ナトリウム誘導体及び有機金属化合物もまた使用できる。これらの化合物は、単独又は組合せて使用してもよい。
【0174】
更に、米国特許第6,187,833号、同第6,025,406号、同第6,043,295号、同第5,998,495号、同第6,084,004号、同第5,545,676号、及び国際公開第2009151957号及び米国特許出願第10/050218号に記載の、増感剤、電子供与体、及びオニウム塩からなる三元光重合開始剤系を使用することができ、参照により、本明細書に含まれる。
【0175】
三元光反応開始剤系では、第1の構成成分は、ヨードニウム塩、すなわち、ジアリールヨードニウム塩である。ヨードニウム塩は、増感剤及び供与体の存在下でモノマー中に溶解されるとき、好ましくはモノマー中に可溶性であり、また貯蔵安定性がある(即ち、自発的には重合を促進しない)。それ故に、特定のヨードニウム塩の選択は、選択された特定のモノマー、ポリマー又はオリゴマー、増感剤及び供与体によってある程度異なってもよい。好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号、及び同第4,394,403号に記載されており、該特許のヨードニウム塩に関する開示は、参照により本明細書に援用される。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl
−、Br
−、I
−、又はC
4H
5SO
3−等のアニオンを含有する)又は金属錯塩(例えば、SbF
5OH
−又はAsF
6−を含有する)であり得る。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。好ましいヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0176】
三元光開始剤系の第2の構成成分は、増感剤である。増感剤は、望ましくは、モノマー中に可溶性であり、かつ400超〜1200nm、より好ましくは400超〜700nm、最も好ましくは400超〜約600nmの波長範囲内のいずれかで光吸収することができる。増感剤はまた、参照により本明細書に援用される、米国特許第3,729,313号に記載の試験手順を用いて、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを増感することが可能であり得る。好ましくは、この試験に合格することに加えて、増感剤はまた、貯蔵安定性をある程度考慮して選択される。したがって、特定の増感剤の選択は、選択された特定のモノマー、オリゴマー又はポリマー、ヨードニウム塩及び供与体によってある程度異なってもよい。
【0177】
好適な増感剤としては、以下の範疇の化合物:ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリルメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料及びピリジニウム染料を挙げることができる。ケトン(例えば、モノケトン又はアルファ−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp−置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。高度の硬化(例えば、高度充填コンポジットの硬化)を必要とする用途の場合、光重合に望ましい照射波長で、約1000未満、より好ましくは約100未満の減衰係数を有する増感剤を使用するのが好ましい。あるいは、照射の際の励起波長において光吸収の低減を呈する染料を使用することができる。
【0178】
例えば、ケトン増感剤の好ましい部類は化学式:ACO(X)
bBを有し、式中、XはCO又はCR
5R
6であり、R
5及びR
6は同じか又は異なってもよく、かつ水素、アルキル、アルカリール、又はアラルキルであってもよく、bは0又は1であり、かつA及びBは異なってもよく、かつ置換されていてもよく(1つ以上の非干渉置換基を有する)、同じであるか、又は非置換アリール基、アルキル基、アルカリール基、若しくはアラルキル基であってよく、又はA及びBは共に、置換又は非置換脂環式、芳香族、複素芳香族、又は縮合芳香族環であり得る環状構造を形成してよい。
【0179】
上記式の好適なケトンとしては、モノケトン(b=0)、例えば、2,2−、4,4−又は2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−又は2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−又は9−アセチルフェナントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−又は4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリン等が挙げられる。好適なジケトンとしては、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−及びp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−及び1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−及び9,10−ジアセチルアントラセン等のアラルキルジケトンが挙げられる。好適なα−ジケトン(b=1及びX=CO)としては、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−3,3’−及び4,4’−ジヒドロキシルベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン等が挙げられる。
【0180】
三元開始剤系の第3の構成成分は、供与体である。好ましい供与体としては、例えば、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランを含む)、アミド(ホスホルアミドを含む)、エーテル(チオエーテルを含む)、尿素(チオ尿素を含む)、フェロセン、スルフィン酸及びそれらの塩、フェロシアン酸塩、アスコルビン酸及びその塩、ジチオカルバミン酸及びその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミン四酢酸の塩、並びにテトラフェニルボロン酸の塩が挙げられる。供与体は、非置換であってもよく、又は1つ以上の非干渉置換基により置換されていてもよい。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リン、又はイオウ原子のような電子供与体原子、及び電子供与体原子に対してα位置にある炭素原子又はケイ素原子に結合された引抜き可能な水素原子を含有する。様々な種類の供与体が、参照により本明細書に援用される米国特許第5,545,676号に開示されている。
【0181】
あるいは、本発明に有用なフリーラジカル開始剤は、アシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドの部類を含む。
【0182】
好適なアシルホスフィンオキシドは一般式によって記述することができ、
(R
9)
2−P(=O)−C(=O)−R
10
式中、各R
9は個々に、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキル等のヒドロカルビル基であってもよく、そのいずれもがハロ−、アルキル−、若しくはアルコキシ基で置換されてもよく、又は2つのR
9基が結合してリン原子と共に環を形成することができ、R
10はヒドロカルビル基、S−、O−、若しくはN−含有5若しくは6員複素環基、又は−Z−C(=O)−P(=O)−(R
9)
2基であり、式中、Zは2〜6個の炭素原子を有するアルキレン又はフェニレン等の二価のヒドロカルビル基を表す。
【0183】
好ましいアシルホスフィンオキシドは、R
9及びR
10基が、フェニル、又は低級アルキル−若しくは低級アルコキシ−置換フェニルであるものである。「低級アルキル」及び「低級アルコキシ」とは、1〜4個の炭素原子を有するこのような基を意味する。また、例えば米国特許第4,737,593号に例を見出すことができる。
【0184】
好適なビスアシルホスフィンオキシドは一般式によって記述することができ、
【0185】
【化1】
式中、nは1又は2であり、R
4、R
5、R
6、及びR
7はH、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシル、F、Cl、又はBrであり、同じか又は異なるR
2及びR
3は、F、Cl、Br、I、C1〜4アルキル、及び/若しくはC1〜4アルコキシルで置換されたシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル、又はビフェニリルラジカル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ナフチル、若しくはビフェニルラジカル、又はS若しくはN−含有5員若しくは6員複素環を表し、あるいは、R
2及びR
3は結合して4〜10個の炭素原子を含有し、かつ任意に1〜6個のC1〜4アルキルラジカルで置換される環を形成する。
【0186】
更なる例としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−クロロフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4−ジメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)デシルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−オクチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジクロロ−3,4,5−トリメトキシベンゾイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メチル−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルホスフィンオキシド、ビス−(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−エトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2−メトキシ−1−ナフトイル)−4−ビフェニリルホスフィンオキシド、ビス−(2−メトキシ−1−ナフトイル)−2−ナフチルホスフィンオキシド及びビス−(2−クロロ−1−ナフトイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0187】
アシルホスフィンオキシドビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(商標)819、Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)が時として好ましい。
【0188】
第三級アミン還元剤を、アシルホスフィンオキシドと組合せて使用してもよい。本発明で有用な第三級アミンの具体例としては、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0189】
400nmを超え、1200nmまでの波長で照射されたときにフリーラジカルを開始できる市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの25:75重量混合物(IRGACURE(商標)1700,Ciba Specialty Chemicals)、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURE(商標)369,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタン(IRGACURE(商標)784 DC,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの1:1重量混合物(DAROCUR(商標)4265,Ciba Specialty Chemicals)、及びエチル−2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN(商標)LR8893X,BASF Corp.,Charlotte,NC)が挙げられる。
【0190】
増感剤及び還元剤は、典型的には、本明細書本文に記載のパーツキットの1つのパートに共に存在する。あるいは、光開始剤系の構成成分をパートAとパートBとの間で配分することができる。
【0191】
安定性の理由により、光開始剤系がパートA、すなわち、アスコルビン酸又は一若しくは複数のその誘導体を含有しているパートに含有されていることが好ましい場合がある。
【0192】
上記の構成成分のほかに、本明細書本文に記載の構成成分又はパーツキットのパートは、1つ、2つ又はそれ以上の添加物を含んでもよい。使用できる補助剤の添加物としては、促進剤、阻害剤又は遅延剤、吸収剤、安定剤、色素、染料、表面張力抑制剤、及び湿潤助剤、酸化防止剤、並びに当業者に周知の他の成分が挙げられる。組成物中の各成分の量及び種類は、重合前後の望ましい物理的特性及び取り扱い特性をもたらすように調節すべきである。
【0193】
使用できる染料又は色素の例としては、二酸化チタン又は硫化亜鉛(リトポン)、赤色酸化鉄3395、Bayferrox 920 Z Yellow、Neazopon Blue 807(銅フタロシアニン系染料)又はHelio Fast Yellow ERが挙げられる。これら添加物は、歯科用組成物の個々の着色剤として使用することができる。
【0194】
存在し得る光漂白性着色剤の例としては、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセイン、及びこれらのブレンドが挙げられる。光漂白性着色剤の更なる例は、米国特許第6,444,725号に見出すことができる。本発明の組成物の色は、増感化合物によって更に付与され得る。
【0195】
存在し得るフッ化物剥離剤の例としては、天然又は合成フッ化物鉱物が挙げられる。これらフッ化物源は、任意に、表面処理剤で処理してよい。
【0196】
添加できる更なる添加物としては、安定剤、特にフリーラジカルスカベンジャー、例えば、置換及び/又は非置換のヒドロキシ芳香族化合物(例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エトキシフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノ)メチルフェノール又は2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(UV−9)、2−(2’−ヒドロキシ−4’,6’−ジ−tert−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、フェノチアジン、及びHALS(ヒンダードアミン光安定剤)が挙げられる。このような補助剤は、任意に、レジンと共重合するように反応性部分を含んでもよい。
【0197】
添加することのできる更なる添加物には、抑制剤、(例えば1,2−ジフェニルエチレン)、可塑剤(ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール、低分子量ポリエステル、ジブチル、ジオクチル、ジノニル及びフタル酸ジフェニル、ジ(イソノニルアジパート)、リン酸トリクレシル、パラフィン油、三酢酸グリセロール、ビスフェノールAジアセテート、エトキシル化ビスフェノールAジアセテート、並びにシリコーン油を含む)、風味料、抗菌剤、芳香剤、蛍光及び/又は乳白光を付与する作用剤が挙げられる。
【0198】
歯科用材料の可撓性を増大させるために、ポリ酢酸ビニル等の可溶性有機ポリマー、及びそれらのコポリマーを添加することも可能である。
【0199】
これらの補助剤又は添加物は絶対に存在する必要があるというものではなく、補助剤又は添加物は、全く存在しなくてもよい。しかし、これらが存在する場合、典型的には、意図する目的にとって有害ではない量で存在する。
【0200】
一又は複数の添加物が存在する場合には、典型的には下記の量で存在する。量は、組成物全体の重量に対して与えられたものである。
下限:少なくとも0.01重量%又は少なくとも0.05重量%又は少なくとも0.1重量%、
上限:最大15重量%又は最大10重量%又は最大5重量%、
範囲:0.01重量%〜15重量%又は0.05重量%〜10重量%又は0.1重量%〜5重量%。
【0201】
更なる実施形態によれば、本明細書本文に記載のパーツキットは下記のパートA及びパートBを含む。
パートAは、
・一又は複数のフィラーと、
・酸性部分を有する一又は複数の重合性成分(任意)と、
・酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、
・アスコルビン酸、アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分と、
・αジ−ケト部分を含む一又は複数の増感剤と、
・第三級アミン部分を含む一又は複数の還元剤と、を含み、
パートBは、
・一又は複数のフィラーと、
・酸性部分を有しない一又は複数の重合性成分と、
・酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、
・塩を含有する銅又は鉄イオンを含む一又は複数の遷移金属成分と、
・上記の構造R−O−O−Hを有する一又は複数の有機ペルオキシドと、を含み、
パートAとパートBとの混合直後に得られる組成物は、水との接触に際し、7未満のpH値を有する組成物で、
・パートAとパートBのいずれもが、スルフィネート部分を含む一又は複数の構成成分から選択される構成成分、
・バルビツール酸部分を含む一又は複数の構成成分、
・チオバルビツール酸部分を含む一又は複数の構成成分、
・ホウ酸アリール部分を含む一又は複数の構成成分、
・チオ尿素部分を含む一又は複数の構成成分、を含まず、
パートA及びパートBに含有される組成物は、組合せることにより、自己接着性、自己エッチング性、自己硬化性、又は任意に二重硬化性の歯科用組成物を形成する。
【0202】
本明細書本文に記載の組成物は、組成物の個々の成分を、好ましくは「安全な光」条件下で組合せる(混合及び混練を含む)ことにより得ることができる。
【0203】
混合物を提供する際、必要に応じて、好適な不活性溶媒を使用してもよい。本発明の組成物の成分と、感知し得るほどには反応しない、任意の溶媒を使用することができる。
【0204】
溶媒の例としては、直鎖、分枝鎖、又は環状の飽和又は不飽和アルコール、ケトン、エステル、又は2〜10個のC原子を有する前記種類の溶媒の2以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアルコール性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソ−プロパノール及びn−プロパノールが挙げられる。
【0205】
他の好適な有機溶媒は、THF、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、トルエン、アルカン、及び酢酸アルキルエステルであり、特に酢酸エチルエステルである。
【0206】
上記溶媒を単独で使用することができ、又は溶媒混合物が、所望の結果が得られなくなるほど接着特性を損なわない場合、これら溶媒のいずれかの2つ以上の混合物として使用することができる。
【0207】
本明細書本文に記載の組成物は、充填されていてもされていなくてもよい広範な歯科用材料として使用するのに特に適している。
【0208】
このような歯科用材料としては、直接審美的修復材料(例えば、前歯用及び奥歯用修復材)、口腔硬組織用の接着材、シーラント、キャビティライナー、任意の種類のブラケット(例えば、金属、プラスチック、及びセラミック)と使用するための歯科矯正用ブラケット用の接着材、クラウン及びブリッジセメント等が挙げられる。
【0209】
これらの歯科用材料は口内で使用され、天然歯に隣接して配置される。本明細書で使用する場合、成句「隣接して配置される」は、歯科用材料を天然歯と、一時的又は永久的に固着させるため(例えば、接着)、又は接触させるため(例えば、咬合又は近位側に)に配置することを指す。用語「コンポジット」は、歯科用材料の文脈で本明細書で使用する場合、充填歯科用材料を指す。用語「修復材」は、本明細書で使用する場合、歯に隣接して配置された後に重合される歯科用コンポジットを指す。本明細書で使用する場合、用語「プロテーゼ」は、歯に隣接して配置される前に、その最終用途(例えば、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー等)に応じて成形及び重合されるコンポジットを指す。用語「シーラント」は、本明細書で使用する場合、歯に隣接して配置された後に硬化される、軽く充填された歯科用コンポジット又は未充填歯科用材料を指す。
【0210】
歯科分野における本明細書本文に記載の組成物の可能な用途としては、前歯用又は奥歯用充填材、接着材、キャビティライナー、フロアブル、セメント、コーティング組成物、根管充填、根管シーラント、又はコアビルドアップ材料としての使用が挙げられる。
【0211】
本明細書本文に記載の歯科用組成物は、歯牙硬組織の表面に適用することができ、自己硬化機構によって、又は任意に放射線を適用することによって硬化させることができる。
【0212】
本明細書本文に記載の組成物のための典型的な適用方法は、典型的には、所望の順序での下記の工程を含む。
・本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を組合せる(例えば、混合する)ことによって得られる組成物を提供する工程、
・歯牙硬組織、特にその表面と接触させて組成物を配置する工程、
・自己硬化機構によって、又は任意に、重合プロセスを開始するのに十分な時間(例えば、約5〜約20秒間)、組成物に放射線(例えば、可視光線)を適用することによって、その組成物を硬化させる工程。
【0213】
組成物は自己接着性であるので、予めエッチング工程を行ったりボンディング材/プライマーを使用したりする必要はない。したがって、本明細書本文に記載の組成物は、自己接着性、自己エッチング性セメントとして使用することができる。
【0214】
しかしながら、所望により、予めエッチング工程を適用するか、又は接着材/プライマー系を使用することもまた可能である。したがって、本明細書本文に記載の組成物は、接着セメント合着処置(すなわち、接着材と組合せたセメント組成物)においても使用することができる。
【0215】
驚くべきことに、例えば、本明細書本文に記載の組成物が適用される前に、歯の表面が自己エッチング性接着材によって処理されていると、本明細書本文に記載の硬化性組成物の物理的/機械的特性は悪影響を受けないことが判明した。しかしながら、予めエッチング及び/又は接着結合工程を実施すると、本明細書本文に記載の硬化性組成物の接着強さは、典型的には更に向上される。
【0216】
したがって、一実施形態によれば、本明細書本文に記載の組成物のための適用方法は、下記の工程を含む。
・自己エッチング性接着材を歯牙硬組織の表面に適用する工程、
・任意に、自己エッチング性接着材を硬化させる工程、
・本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を組合せる(例えば、混合する)ことによって得られる組成物を提供する工程、
・その組成物を、硬化性自己エッチング性接着材で予め処理された歯牙硬組織と接触させる工程、
・自己硬化機構によって、又は任意に、重合プロセスを開始するのに十分な時間(例えば、約5〜約20秒間)、組成物に放射線(例えば、可視光線)を適用することによって、その組成物を硬化させる工程。
【0217】
自己エッチング性接着材は、典型的には、歯科用セメントに比べると、より低い粘度を有する。使用可能な、好適な自己エッチング性接着材としては、例えば、Scotchbond(商標)Universal Adhesive又はAdper(商標)Prompt(商標)L−Pop(両者とも3M ESPEより)が挙げられる。自己エッチング性接着材は、別のエッチング工程(例えば、リン酸によるもの)を必要としない接着材である。
【0218】
他の一実施形態(全エッチング手順)によれば、本明細書本文に記載の組成物のための適用方法は、下記の工程を含む。
・歯牙硬組織の表面のエッチング(例えば、リン酸を使用することによる)及び水による洗口工程、
・接着材を、エッチングを施した歯牙硬組織の表面に適用する工程、
・任意に、接着材を硬化させる工程、
・本明細書本文に記載のパーツキットのパートA及びパートBに含有される組成物を組合せる(例えば、混合する)ことによって得られる組成物を提供する工程、
・その組成物を、接着材で予め処理された歯牙硬組織と接触させる工程、
・自己硬化機構によって、又は任意に、重合プロセスを開始するのに十分な時間(例えば、5〜約20秒間)、組成物に放射線(例えば、可視光線)を適用することによって、組成物を硬化させる工程。
【0219】
接着材は、典型的には、歯科用セメントに比べると、より低い粘度を有する。好適な全エッチング接着材としては、例えば、Adper(商標)Scotchbond(商標)1XT及びAdper(商標)Scotchbond(商標)Multipurpose(両者とも3M ESPEより)が挙げられる。
【0220】
放射線を提供するのに好適なツールには、歯科用硬化光が挙げられる。好適な歯科用硬化光は、例えば、米国特許出願公開第2005/0236586号に記載されている。この文書の内容は、参照により本明細書に援用される。好適な歯科用硬化光は、例えば、Elipar(商標)S10(3M ESPE)の商品名で市販もされている。
【0221】
本明細書本文に記載のパーツキットは、複室容器又はカートリッジに入れて保管し、使用前に混合する。配合に応じて、様々な容器を使用することができる。
【0222】
使用できるカートリッジは、例えば、米国特許出願公開第2007/0090079号又は米国特許第5,918,772号に記載されており、この開示は参照により本明細書に援用される。使用できるカートリッジは、例えば、SulzerMixpac AG(スイス)から市販されている。使用できる静的混合チップは、例えば、米国特許出願公開第2006/0187752号又は米国特許第5,944,419号に記載され、この開示は参照により本明細書に援用される。使用できる混合チップは、SulzerMixpac AG(Switzerland)から市販されている。
【0223】
容器は、ノズルを備える前端部と、後端部と、筐体内を移動可能な少なくとも1つのピストンとを有する筐体を含んでもよい。
【0224】
あるいは、より好ましくはないが、本明細書本文に記載のペースト/ペースト組成物を、2つの個々の注射器に入れて提供することができ、個々のペーストを使用前に手で混合することができる。
【0225】
低粘度組成物は、バイアル又は瓶に入れて保存することができる。好適なバイアルは、例えば、欧州特許第0 944 364(B1)号及び国際公開第2011/056814(A1)号に記載されている。バイアル又は瓶の説明に関するこれらの文書の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0226】
低粘度組成物はまた、熱シールによって相互連結し、液体を受け取るためのコンパートメントと、ブラシを受け入れるためのポケットとを協働して形成する2枚のシートによって形成される、容器中に保存してもよい。これらの種の器具は、例えば、米国特許第6,105,761号に記載されている。
【0227】
組成物を歯科用混合用カプセル中に保存することも、また可能である。歯科用混合用カプセルの例としては、例えば、欧州特許第1 759 657号(3M)、米国特許第4,674,661号(Herold)、欧州特許第0 783 872号(Voco)、又は米国特許第2003/0176834号(Horthら)に記載されている。これらの参考文献の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0228】
所望により、本明細書本文に記載のレドックス開始剤系の一部をもまた、適用器具(例えば、ブラシ)に配してもよい。使用に際し、それぞれのレドックス開始剤成分(例えば、還元剤)を含有するブラシを、ブリスター、瓶、又はバイアルに含有されるレドックス開始剤系の残りの部分と接触させる。この適用形態は、低粘度組成物、例えば、歯科用接着性組成物に対して特に有用である。
【0229】
容器の容量は、典型的には、約0.1〜約100mL又は約0.5〜約50mL又は約1〜約30mLの範囲である。
【0230】
選択された配合に応じて、本明細書本文に記載の組成物を、液体/液体、ペースト/ペースト、又は液体/粉末の配合物として提供することができる。
【0231】
本発明はまた、下記を含む開始剤系をも対象とする。
・アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分、
・塩を含有する銅又は鉄イオン、
・好ましくは、ヒドロペルオキシド又はジ−ペルオキシド部分を有する構成成分を含む一又は複数の有機ペルオキシド。
【0232】
本発明はまた、下記を含む開始剤系をも対象とする。
・アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分、
・好ましくは、塩を含有する銅又は鉄イオンを含む一又は複数の遷移金属成分、
・ヒドロペルオキシド又はジ−ペルオキシド部分を有する構成成分。
【0233】
本発明はまた、下記を含む開始剤系をも対象とする。
・アスコルビン酸部分又は一若しくは複数のその誘導体を含む一又は複数の構成成分、
・塩を含有する銅又は鉄イオン、
・ヒドロペルオキシド部分又はジ−ペルオキシドを有する構成成分、
・任意に、増感剤及び還元剤。
【0234】
このような開始剤系は、酸性組成物を硬化させるのに特に有用であり、また、自己接着材、自己エッチング性歯科用組成物、又は自己硬化性接着材を処方するために特に有用である。
【0235】
したがって、本発明はまた、本明細書本文に記載の、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分を含む組成物を硬化させるために、本明細書本文に記載の開始剤系を使用すること、あるいは本明細書本文に記載の、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分及び開始剤系を含む組成物、をも対象とする。
【0236】
本発明はまた、本明細書本文に記載の酸性部分を有する一又は複数の重合性成分を含む歯科用組成物を、本明細書本文に記載のレドックス開始剤系を使用して固化する方法をも対象とする。
【0237】
本発明はまた、本明細書本文に記載の、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、20重量%を超えるフィラーと、開始剤系と、を含む組成物をも対象とする。このような組成物は、歯科用充填材又はコンポジット材料として特に有用である。
【0238】
本発明はまた、本明細書本文に記載の、酸性部分を有する一又は複数の重合性成分と、15重量%未満のフィラーと、開始剤系と、を含む組成物をも対象とする。このような組成物は、歯科用接着材として特に有用である。
【0239】
開始剤系の個々の構成成分は、本明細書本文のパーツキットについての記載のとおりである。
【0240】
本発明の組成物は、典型的には、スルフィネート部分(特に、トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸塩)、バルビツール酸部分、チオバルビツール酸部分、ホウ酸アリール部分、チオ尿素部分、又はこれらの組合せを含む成分を含有しない。
【0241】
したがって、更なる実施形態によれば、本発明の組成物は、下記の構成成分又はこれらの組合せのいずれをも含んではならない。
バルビツール酸部分又はチオバルビツール酸部分を含む構成成分、
ホウ酸アリール部分を含む構成成分、
スルフィネート部分を含む構成成分、
チオ尿素部分、
ホウ酸アリール部分を含む構成成分、及びスルフィネート部分を含む構成成分。
【0242】
一実施形態によれば、本明細書本文に記載の組成物は、Bis−GMAを、組成物全体の重量に対するものとして、1又は3又は5重量%を超える量では含まない。一実施形態によれば、本明細書本文に記載の組成物は、Bis−GMAを本質的に含まない。
【0243】
更なる実施形態によれば、本明細書本文に記載の組成物は、HEMAを、組成物全体の重量に対するものとして、1又は3又は5重量%を超える量では含まない。一実施形態によれば、本明細書本文に記載の組成物は、HEMAを本質的に含まない。
【0244】
これらの成分は、(例えば、用いられる原材料中の不純物に起因して)微量が不可避的に存在する場合がある。しかし、それらの成分は、典型的には、硬化反応に関与する量で故意に添加されることはない。
【実施例】
【0245】
別途記載のない限り、全ての割合及び百分率は重量基準であり、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示がない限り、全ての実験は、周囲条件(23℃、1013mbar(0.1013MPa))下で実施した。更に、ほとんど全ての方法工程を乾燥空気の雰囲気下で実施する。
【0246】
測定法
粘度
所望により、粘度は、円錐/平板形CP25−1を搭載したPhysica MCR 301 Rheometer(Anton Paar,Graz,Austria)を使用し、23℃において制御された剪断速度下で測定することができる。直径は25mmであり、円錐角1°、かつ円錐頂部と平板の間の隙間は49μmである。剪断速度は、100秒
−1から0.001秒
−1まで、対数的に低下させる。
【0247】
曲げ強度及びE−弾性率
この測定は、ISO 4049:2000に従って実施した。
【0248】
接着性(ワイヤーループ法)
この測定は、下記のとおり実施した。
基材として、ウシの歯を冷硬化エポキシレジンに埋め込み、320グリットのSiCペーパーで研磨して象牙質又はエナメル質を露出させた。最後に、各歯の表面を水ですすぎ、穏やかに風乾した。
【0249】
試験材料を、歯表面上に直接固定された試験型(直径:5mm)に充填し、36℃及び相対湿度100%で自己硬化させるか、又は20秒間光硬化した。
【0250】
固着された試料を、それぞれ水道水中(光硬化)、相対湿度100%(自己硬化)、36℃にて、万能試験機(Zwick)内で、クロスヘッド速度2mm/分で24時間保管した後に試験した。試験ボタンを削ぎ取るために、ループ状歯科矯正用ワイヤーを用いた。
【0251】
曲げ強度並びにエナメル質及び象牙質への接着性を測定するため、それぞれ触媒ペースト及びベースペーストを1:1の比(容量)で混合した。混合したペーストの自己硬化型の硬化は、約10分間以内(28℃において)に発生した。
【0252】
【表1】
【0253】
【表2】
【0254】
【表3】
【0255】
【表4】
【0256】
【表5】
【0257】
【表6】
【0258】
【表7】
【0259】
【表8】
【0260】
【表9】
【0261】
本明細書本文に記載の本発明によるベースペースト及び触媒ペーストに含有される組成物を混合した際に得られた組成物のみが、自己硬化及び光硬化モードの両方において、十分な機械的特性(例えば、曲げ強度)と、それに加えてエナメル質及び象牙質への接着性の向上とを示した。
【0262】
本明細書本文に記載の、しかし銅成分を含有しない組成物は自己硬化することができず、光硬化させた場合にも、曲げ強度が低く、象牙質への接着性がなかった。
【0263】
アスコルビン酸又は一又は複数のその誘導体を還元剤として含有せず、他の還元剤(例えば、チオ尿素又はトルエンスルホン酸ナトリウム)を含有する組成物は、不十分な性能を示した。
【0264】
また、特に、R−O−O−H部分(ヒドロペルオキシド)を有する有機ペルオキシドを含有する組成物が、曲げ強度及び接着性において、硬化モードに関係なく、優れた結果を示すことが判明した。