(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
陰圧式呼吸マスクは、当該技術分野において周知である。このタイプの呼吸マスクでは、着用者の呼吸活動によって、その呼吸マスクの内側と着用者の顔面との間の閉鎖空間内に、濾過システムを通って、濾過された空気が引き込まれる。着用者が息を吸うと、呼吸マスク内に陰圧が生じ、濾過システムを通って空気が引き込まれる。着用者が息を吐き出すと、消耗された空気が、呼気弁を通って、及び/又は濾過システムを逆に通って、その呼吸マスクから出て行く。
【0003】
陰圧式呼吸マスクは、多種多様な構成で利用可能であり、多種多様な利益をもたらすものであるが、それらは全て、呼吸マスクの内側で往々にして生じ得る、熱及び湿気の不快な蓄積という、1つの大きな欠点を有する。この熱及び湿気の蓄積は、呼吸マスクと着用者の顔面との間に作り出された空洞部内に、着用者の呼気が捕捉されることによって引き起こされる。着用者が、より激しく作業するほど、及び/又は、その呼吸マスクを長期間にわたって着用するほど、熱及び湿気の蓄積は増大し得る。
【0004】
この陰圧式呼吸マスクの内側での熱及び湿気の蓄積の問題を解消するために、若しくは少なくとも最小限に抑えるために、先行技術において多種多様な解決策が提案されてきた。例えば、呼気弁を追加して、これらの呼気弁の動作を最適化することである。低圧力損失のフィルタ及び濾材の設計並びに最適化もまた、この問題を軽減するために、並びに/あるいは、フィルタの表面積及びフィルタ材料の圧力損失を制御することによって、提案されてきた。先行技術における別の解決策は、湿気を吸収するためのパッドを含めることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際公開第2014/081788号では、呼吸マスクが、呼気弁と流体連通する送風機を有し、この送風機が、その弁を通じて着用者の呼気を引き出すように動作可能な、更なる解決策が提示されている。この解決策は、利点を提示するものであるが、その送風機が、呼気弁に恒常的な陰圧を加えるという欠点もまた有する。このことにより、吸息努力の増大が引き起こされる恐れがあり、また、フィルタを通過する空気の流れが増大する結果として、フィルタ寿命の低下が引き起こされる恐れがある。
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、フィルタ寿命を過度に低下させることなく、又は吸息努力を過度に増大させることもなく、先行技術の器具の冷却効果に改善を加えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の態様は、着用者の顔面に隣接する濾過空気容量部を画定し、かつ少なくとも1つの呼気弁を備える、個人保護呼吸器具に接続するための、排気装置を提供することであり、この装置は、
少なくとも1つの呼気弁と流体連通する、送風機を備え、この送風機は、着用者の呼吸周期に応じて、少なくとも1つの呼気弁を通じて着用者の呼気の実質的な部分を引き出し、
着用者の呼吸周期に応じて、この送風機は、着用者の呼息の全体にわたって、又はその実質的な期間の全体にわたって動作し、着用者の吸息の全体にわたって、又はその実質的な期間の全体にわたって動作しない。
【0008】
着用者の呼吸周期の呼息部分(又は、その実質的な部分)の間にのみ、実質的に送風機を動作させることにより、以下のように、本発明に著しい利点がもたらされる。
【0009】
第1に、フィルタを通じて引き込まれる空気量が低減される。先行技術の器具では、吸息の間に濾材を通って引き込まれる空気量は、送風機の作用下で増大していたが、これは、肺及び送風機の双方が、そのフィルタを通じて空気を引き込んでいるためであった。本発明では、このことは当てはまらない。このことにより、濾材に対する負荷が低減されるため、所定の負荷の下でフィルタの寿命が増大する。
【0010】
第2に、送風機によって消費される電力は、呼息の間にのみ、又は実質的に呼息の間にのみ動作することによって、著しく低減される。このことは、同様に、所定の動作寿命に関するバッテリのサイズを低減するものであり、それにより、器具の重量が低減される。重量の低減は、その呼吸マスクの知覚される快適性の改善をもたらす。
【0011】
第3に、着用者は、吸息が肺腔への空気の送達を開始する前に、もはや、送風機によって生じる圧力損失を克服する必要がないため、着用者の吸息努力が低減される。このことは、同様に、着用者に対する呼吸負荷の低減を通じて、その呼吸マスク内の温度及び湿度を低減することを更に支援するものである。
【0012】
好ましくは、この排気装置は、
コントローラと、
着用者の呼吸周期によって発生する圧力を感知し、その圧力の指標となる圧力信号をコントローラに送信するための、圧力センサとを更に備え、
コントローラは、圧力センサ及び送風機と通信し、
コントローラは、圧力信号に応じて送風機を動作させる。
【0013】
好ましくは、圧力は、個人保護呼吸器具の濾過空気容量部内で感知される。
【0014】
あるいは、圧力は、呼気弁の下流で感知される。
【0015】
あるいは、圧力は、吸気弁の上流で感知される。
【0016】
好ましくは、コントローラは、圧力センサによって感知された圧力が第1の所定の圧力に達する場合に、送風機を始動させる。
【0017】
好ましくは、コントローラは、圧力センサによって感知された圧力が第2の所定の圧力を下回る場合に、送風機を停止させる。
【0018】
好ましくは、第1の所定の圧力及び第2の所定の圧力は、共通の所定の圧力である。
【0019】
好ましくは、この共通の所定の圧力が、実質的に周囲圧力であることにより、コントローラは、実質的に着用者の呼息の開始時に、送風機を始動させ、実質的に着用者の呼息の終了時に、送風機を停止させる。
【0020】
あるいは、この共通の所定の圧力が、周囲圧力よりも高いことにより、コントローラは、着用者の呼息の開始の一瞬後に、送風機を始動させ、着用者の呼息の終了の一瞬前に、送風機を停止させる。
【0021】
あるいは、この共通の所定の圧力が、周囲圧力よりも低いことにより、コントローラは、着用者の呼息の開始の一瞬前に、送風機を始動させ、着用者の呼息の終了の一瞬後に、送風機を停止させる。
【0022】
あるいは、第1の所定の圧力が、第2の所定の圧力よりも高いことにより、コントローラは、着用者の呼息の開始の一瞬後に、送風機を始動させ、着用者の呼息の終了の一瞬後に、送風機を停止させる。
【0023】
あるいは、第2の所定の圧力が、第1の所定の圧力よりも高いことにより、コントローラは、着用者の呼息の開始の一瞬前に、送風機を始動させ、着用者の呼息の終了の一瞬前に、送風機を停止させる。
【0024】
好ましくは、送風機は、入口、モータ、ファン、及び出口を更に備える。
【0025】
好ましくは、この排気装置は、少なくとも1つの呼気弁に送風機を解除可能に接続するための、取り付け手段を更に備える。
【0026】
好ましくは、この排気装置は、上方に延びる部分及び後方に延びる部分を含む、略L字の形状である。
【0027】
好ましくは、後方に延びる部分は、送風機に電力供給するためのバッテリを収容する。
【0028】
好ましくは、この個人保護呼吸器具は、使い捨て型、再使用可能型、半面式、全面式、微粒子、ガス、及び蒸気用、並びにタイトフィットフード型の呼吸マスクからなる群から選択される。
【0029】
本発明の第2の態様は、先行の請求項のいずれかの排気装置の制御方法を提供するものであり、この方法は、
所定の圧力を設定するステップと、
圧力センサによって感知された圧力が、その所定の圧力に達する場合に、送風機を始動させるステップと、
圧力センサによって感知された圧力が、その所定の圧力を下回る場合に、送風機を停止させるステップとを含む。
【0030】
ここで、単なる例として、かつ以下の添付図面を参照して、本発明を説明するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、全般的に10で示される、本発明による排気装置の分解組立図である。装置10は、この後に更に詳細に説明されるように、恒久的方式で、又は解除可能な方式で、個人保護呼吸器具120に接続若しくは他の方式で係合させることが可能である。
【0033】
図1、
図2、
図5、及び
図7に示される呼吸マスク120は、3M(商標)7500シリーズのガス、蒸気、及び微粒子用呼吸マスクを示すものであるが、本発明の排気装置10は、任意の陰圧式呼吸器具120と共に利用することができる。当業者には、本明細書で互換的に使用される、用語「呼吸マスク」又は「呼吸用マスク」とは、有害な物質、粒子、蒸気、又は有毒ガスの吸入を防止するために着用される、呼吸器具を意味することが意図される点が、理解されるであろう。用語「陰圧式呼吸用マスク」とは、着用者が息を吸い込むと、そのマスクの内側の空気圧が周囲の空気圧よりも低くなる、任意の呼吸マスクを含むことが意図される。
【0034】
本明細書で説明されるような陰圧式呼吸用マスク120は、着用者100の顔面に、実質的な封止構成で適合することにより、着用者100によって吸入及び吐き出される空気を、その呼吸マスク又は呼気弁のフィルタ本体若しくはフィルタ部分に通過させることが意図されている、任意の形態の呼吸マスクを意味するように使用される。陰圧式呼吸用マスク120は、懸念される危険に応じて、全面式面体又は半面式面体のマスクとすることができる。その場合も同様に、これらのマスクは、着用者によって吸入された空気から、汚染物質、粒子、ガス、及び蒸気が吸入されることを防止する、フィルタを利用するものである。このタイプの呼吸マスクの、いくつかの一般的な例は、3M Company(St.Paul,Minnesota所在)によって製造されており、再使用可能型呼吸マスク、又はタイトフィットフード式面体呼吸マスクの、3M(商標)4000、6000、及び6500シリーズが含まれる。
【0035】
カップ形状及び平坦折り畳み式の製品の、3M(商標)8000及び9000シリーズなどの、使い捨て型呼吸マスクは、着用者が息を吸う際に空気流から微粒子及びミストを除去する濾材を用いた、軽量な一体型呼吸マスクである。そのユニット全体が、汚染物質に応じて、ある程度の長い期間、又は単回の使用若しくは単回のシフトの後に、廃棄されるように設計されている。3M(商標)4000、6000、及び6500シリーズなどの濾過面体は、一般に再使用可能型の製品であり、交換可能なフィルタカートリッジを有し得る。典型的には、1つ又は2つのカートリッジが、半面式若しくは全面式の面体に確実に取り付けられ、この面体は、対応する数の吸気用の弁、及び通常は呼気用の1つの弁を、その面体内に組み込んでいる。
【0036】
図1に示されている個人保護呼吸器具20は、バヨネット接続を使用してフィルタを取り付けることが可能な、3M(商標)7500半面式マスクである。
【0037】
図1及び
図2を参照すると、一対のフィルタカートリッジ(明瞭性のために示さず)が、対応の吸気ポート122で、呼吸用マスク120に取り付けられる。吸気ポート122のそれぞれは、着用者100が息を吸う際に開放する、呼吸用マスク120の内側の対応の吸気弁136(
図7に示される)を有する。顔面マスク120は、着用者100が息を吐く際に開放する、一方向性呼気弁ダイヤフラム138(
図7に示される)を備える、呼気弁126を有する。マスク120は、調節可能なストラップ128(
図1及び
図2にのみ示される)によって、着用者の頭部上の所定の位置に保持されている。
【0038】
呼吸用マスク120は、着用者100の口及び鼻を概ね取り囲む、形状適合性のガスケット又はシール124を有する。汚染物質の濾過を確実にするために、良好なシールが必要とされるため、先行技術における1つの欠点は、呼吸マスク120の内側での、熱及び湿気の不快な蓄積に、着用者100が気付く場合がある点である。着用者100が、より激しく作業するほど、及び/又は、呼吸マスク120を長期間にわたって着用するほど、熱及び湿気の蓄積が生じ得る。この熱及び湿気の蓄積は、呼吸マスク120と着用者100の顔面との間に作り出された空洞部内に、呼気が捕捉されることによって引き起こされる。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、また
図3及び
図4で更に詳細に示されるように、本発明は、略L字形状の形態を有するハウジング16を有する、排気装置10を定義するものである。排気装置10は、入口12(
図4を参照)及び出口14(
図3を参照)を含む。出口14は、ハウジング16の側面に形成されている。入口12と出口14との間の、ハウジング16の内側には、使用時に呼吸器具120から外に空気を引き出す、送風機18が位置決めされている。送風機18は、ファン22を駆動するモータ20を有する。モータ20は、この後に
図6を参照して更に詳細に説明される、バッテリ25によって電力供給される。
【0040】
装置10は、入口12、出口14、及び送風機18を収容する、全般的に24で示される、上方に延びる区画を有する。装置10は、バッテリ25及びコントローラ28(
図6に示される)を収容する、全般的に26で示される、後方に延びる区画を有する。後方に延びる区画26内にバッテリ25(器具10の比較的重い構成要素)を位置決めすることにより、その器具の重心は、頭部の重心に最も近接して位置することが可能となる。このことにより、使用中にユーザ100が自身の頭部を移動させる際の、その器具の慣性モーメントが最小限に抑えられることによって、この装置の快適性が改善される。
【0041】
この装置を動作させるために、スイッチ機構18が、着用者100にアクセス可能である。スイッチ機構18は、単純なオン/オフ動作モードを有し得るものであり、又は、着用者100が、所望の送風機の速度を、またそれゆえ、冷却効果を、環境条件、着用者100が取り組んでいる作業、及び着用者の個人的選択に基づいて最適化することができるような、可変調節を含み得る。あるいは、それらの設定は、USB接続ポート23を介して、PC上の管理ソフトウェアに接続することによって、事前設定することもできる。接続ポート23はまた、バッテリ25用の充電ポートとしての機能も果たす。
【0042】
使用時には、冷却効果は、排気装置10によって以下のように達成される。着用者100が息を吸い込むと、再使用可能型マスクの場合には、
図1並びに
図2に示されるようなフィルタカートリッジ及び入口ポート122を通じて、あるいは、使い捨て型マスクの場合には、例えば、その呼吸マスクのフィルタ部分又は濾過マスク本体を通じて、「より冷たい」周囲空気が呼吸用マスク20内に引き込まれる。次いで、呼吸マスク120と着用者100の顔面との間に作り出された空洞部内に、呼気が捕捉されることによって、熱及び湿気の蓄積が引き起こされる。動作されると、本発明の排気装置10は、以下で説明されるように、呼息の間に、この暖かく湿った空気を、排気弁126を通じて引き出し、呼息の呼吸抵抗を低減する。このことにより、吸息に対して呼吸負担をかけることもなく、又はフィルタの寿命を低下させることもなく、着用者100に対する顕著な冷却効果がもたらされる。
【0043】
ここで
図5を参照すると、呼吸マスク120に接続された、排気装置10が示されている。この接続のための機構を、以下で更に詳細に説明するものとする。
図5は、既知の設計のバヨネット嵌合部132を有するポート壁130によって画定された入口ポート122をより詳細に示す。バヨネット嵌合部132は、3M(商標)2000、5000、又は6000シリーズのフィルタに接続するために設けられている。しかしながら、種々のタイプのフィルタを受け入れるために、DINネジ式フィルタなどの、代替的取り付け機構を設けることもできる点が、理解されるであろう。更には、本発明から逸脱することなく、3M(商標)4000シリーズの半面式マスクに即した、一体型カートリッジを提供することもできる。
【0044】
排気装置10の入口12は、呼吸用マスク120上に位置する対応の排気弁126の形状及び寸法に、締り嵌めによって解除可能に接続するように成形されている。
図5に関して本明細書で説明される排気装置10は、締り嵌めによって接続するものであるが、例えば、ネジ山、スナップ嵌め係合、バヨネット、迅速解除機構などによる接続を含めた、排気弁126に対する任意の形態の解除可能な接続が可能であることが、当業者には理解されるであろう。上記のリストは、限定及び網羅することを決して意図するものではない。
【0045】
上述の解除可能な接続の代替として、器具10と呼吸用マスク120との直接的な永久接続を利用することが望ましい場合がある。そのような接続は、溶接、接着剤、又は、この後に更に詳細に説明されるような、ネジによる取り付けなどの他の既知の取り付け機構によるものとすることができる。
【0046】
ここで
図6及び
図7を参照すると、排気装置10の、上方に延びる区画26内部に取り付けられた、モータ20が示されている。モータ20は、シャフト30を駆動し、このシャフト30は、同様にファン22を駆動する。動作時には、ファン22は、呼吸マスク120の濾過空気空洞部(
図7の140で全般的に示される)から、弁138を通過させて空気を引き出し、出口14に接続されているファンスクロール32を通じて、その空気を排出する。この方式で、モータ20の動作は、空洞部140から空気を引き出し、その空気を雰囲気に排出することが可能である。モータ20は、後方に延びる区画26内に位置するバッテリ25によって、電力供給される。バッテリ25の直上には、PCB上のマイクロプロセッサの形態の、コントローラ25が存在する。コントローラ28は、着用者の呼吸周期に応じてモータ20を制御するようにプログラムされている。
【0047】
着用者の呼吸周期は、濾過空気空洞部140内の、濾過空気容量部の圧力を測定することによって検出される。このことは、呼吸マスク120内の圧力ポート142(
図7を参照)を介して達成される。圧力ポート142は、器具10内の圧力導管34と流体連通している。この圧力導管は、コネクタ36及び管38によって画定されており、この管38の2つの端部38’、38’’が、
図6に示されている。コネクタ36は、圧力ポート142と流体連通するオリフィス37を有する。コネクタ36は、コネクタ36内の穴39を貫通するネジ143(器具120の反対側の第2の対応するネジは、明瞭性のため、及び
図7の断面図により、示されていない)の作用の下で、呼吸マスク120の前方面に対して封止している。ネジ143はまた、器具120に装置10を機械的に取り付けるための、排気装置10と呼吸マスク120との締り嵌めを補完する役割も果たす。管38の第2の端部38’’は、圧力を検出してコントローラ28に信号を送信する、圧力トランスデューサ39(
図7にのみ示される)に接続されている。本出願の範囲内では、着用者の呼吸によって発生する圧力は、濾過空気容量部以外の位置で測定することも可能である点が想定される。例えば、この圧力は、呼気弁の下流で検出することが可能である。このことにより、コネクタ36及び圧力ポート142、並びにそれらの封止境界面が不要となる。あるいは、この圧力は、吸気ポート122の、吸気弁の上流で感知することも可能である。
【0048】
したがって、コントローラは、ファンが、本質的に着用者100の呼息の間にのみ動作していることを確実にするために、継続的に空洞部140内の圧力を監視して、モータ20を介して送風機18を制御することが可能となる。ここで、この動作を更に詳細に説明する。
【0049】
図8は、国際公開第2014/081788号の先行技術の器具における、濾過空気空洞部内の圧力、及び濾過空気空洞部を通過する流量の表示を示すものである。破線150は、この器具のスイッチがオフである場合の、マスクを通過する流量を表し、実線152は、マスク空洞部内の圧力を表す。この流量は、着用者が、吸息Bを通じて冷たい空気を吸い込み、呼息Aを通じて熱い空気を吐き出すため、ゼロを中心として自然に波形をなす。器具のスイッチがオンである場合、この流量は、着用者が、呼吸需要に合致するために必要とされる空気量の呼吸を継続するため、変化することなく維持される。しかしながら、ファンは、吸息及び呼息の双方の全体にわたって、マスク内の陰圧を維持するように動作するため、圧力の線は、延長破線154まで降下する。このことは、吸息行程の間に、フィルタを通じて更に空気を引き込むことによってのみ、達成することができる。この更なる空気量は、斜線区域156に示される、更なる陰圧によって促されるものである。このフィルタを通過する更なる流量により、フィルタ寿命が制限される。更には、同じ流量を維持するべき場合には、更なる呼吸努力によって、この更なる陰圧を克服しなければならない。この更なる呼吸努力は、それ自体が呼吸負荷の増大を引き起こし、呼吸数の増大をもたらす恐れがある。
【0050】
ここで
図9を参照すると、この図表は、呼吸マスク120と共に使用されている本発明の排気装置10の、濾過空気空洞部内の圧力、及び濾過空気空洞部を通過する流量の表示を示すものである。破線150は、この場合もまた、マスク100を通過する流量を表し、実線158は、マスク空洞部140内の圧力を表す。中心線X−X左側では、排気装置10のスイッチがオフにされており、右側では、スイッチがオンにされている。排気装置10のスイッチがオフである場合、この圧力は、フィルタにわたる圧力損失からもたらされる、より大きい最大陰圧を受けて、ゼロを中心として波形をなす。装置のスイッチがオンである場合、この圧力の線は、着用者がフィルタを通じて吸息する際に、その最低点Zからゼロに向けて上昇する。着用者が、フィルタを通じて息を吸う際、コントローラ28は、圧力導管34を介して、空洞部140内の圧力の上昇を監視する。コントローラが、空洞部140内の所定の圧力、この場合にはP
0(ゼロに等しい)を検出すると、コントローラ28は、モータ20を制御して、送風機12を始動させる。このことは、着用者の呼吸を支援するために、空洞部140から空気を引き出すものである。送風機12は、空洞部140内の圧力が所定のP
0を下回るような時まで、動作を継続し、その時点で、コントローラはモータ20を停止させる。
【0051】
この呼息の支援の程度は、P
Dによって示されるように、所定の圧力を低下させることによって、又は、P
Iによって示されるように、所定の圧力を上昇させることによって、変化させることができる。P
Dは、より冷たい感触を着用者にもたらし、P
Iは、より暖かい感触をもたらす。この冷却効果の変化は、動作条件に応じて、着用者によって制御することが可能であることが想定される。
【0052】
図9では、呼息の開始時及び終了時で同じ所定の圧力が、すなわち、例えばP
Dが、その呼息の全体にわたって一定のまま維持されていることが示されているが、本発明の範囲内では、送風機12を、第1の所定の圧力で始動させ、第2の所定の圧力で停止させることも可能である点が想定されることが、理解されるであろう。第1の所定の圧力が、第2の所定の圧力よりも高い状況であれば、コントローラは、着用者の呼息の開始の一瞬後に、送風機を始動させ、着用者の呼息の終了の一瞬後に、送風機を停止させることになる。第2の所定の圧力が、第1の所定の圧力よりも高い状況であれば、コントローラは、着用者の呼息の開始の一瞬前に、送風機を始動させ、着用者の呼息の終了の一瞬前に、送風機を停止させることになる。
【0053】
図9は、圧力プロットの理想的な表示を示すものである。実際には、送風機は、所望される所定の圧力値に最良に近似するように、リアルタイムで制御される。この制御には、いくつかの要因が影響を及ぼす。第1に、呼気弁にわたる圧力損失は、弁によって異なるものとなる。したがって、モータは、狭い呼気弁のオリフィスにわたって、所定の値、例えばP
Iを達成するためには、より大きいオリフィスの呼気弁にわたる場合よりも、激しく動作することが必要とされる可能性がある。
【0054】
本発明の意図は、着用者の呼息にわたってのみ呼吸支援を実施する装置を提供することである点が、理解されるであろう。しかしながら、達成されるべき所定の圧力に応じて、送風機は、吸息の終了の若干前のT
Dで(所定の圧力P
Dでの、より多くのファン支援を達成するために)、又は若干後のT
Iで(所定の圧力P
Eでの、より少ないファン支援を達成するために)始動させることができる点が、
図9から理解されるであろう。同様に、送風機12は、呼息の終了の若干後に(所定の圧力P
Dでの、より多くのファン支援を達成するために)、又は若干前に(所定の圧力P
Eでの、より少ないファン支援を達成するために)停止させることもできる。それゆえ、この呼息以外での送風機12の動作は、極めて短い期間のみにわたるものであり、着用者の快適性を改善するために提供される制御技術である。このことは、吸息の開始又は終了の間に瞬間的に送風機を動作させることによって、システムヒステリシス及び快適性の改善に配慮する制御方式を提供するという、明確な利点を考慮すると、吸息の間にモータを駆動することを回避したいという要望に、完全に一致するものである。