(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を形成し、例示的ないくつかの具体的な実施形態が示されている、添付の図面を参照する。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想定され、実施され得ることを理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されないものとする。
【0011】
本明細書で使用されている全ての科学用語及び技術用語は、特に明記しない限り、当技術分野において一般的に使用されている意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いる特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0012】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用する加工寸法(feature size)、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語により修飾されていると理解すべきである。したがって、そうでない旨が示されない限り、上記の明細書及び添付の特許請求の範囲において示される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする特性に応じて変わり得る近似値である。
【0013】
端点による数値範囲の記載には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、「又は」という用語は、その内容に別段の明確な指示がない限り、一般に、「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0016】
本明細書で使用する場合、「有する(have)」、「有している(having)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「含む/備える(comprise)」、「含んでいる/備えている(comprising)」などは、非限定的な(open ended)意味で使用され、「含むが、それらに限定されない」を通常意味する。「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」などは、「含む/備える(comprising)」などに包含されることが理解されるであろう。
【0017】
用語「ディスプレイフィルム」、「保護フィルム」及び「保護ディスプレイフィルム」は、本明細書において互換的に使用される。
【0018】
「透明な基材」又は「透明な層」は、可視光スペクトル(約380nm〜約750nmの波長)を含む約350nm〜約1600nmの波長を有する光スペクトルの少なくとも一部分にわたって、基材の表面の少なくとも一部分で高い光透過率(典型的には90%を超える)を有する、基材又は層を指す。
【0019】
「ポリウレタン」は、ヒドロキシル官能性材料(ヒドロキシル基−OHを含有する材料)を、イソシアネート官能性材料(イソシアネート基−NCOを含有する材料)と逐次重合させることによって調製されるポリマーを指し、そのため、ウレタン結合(−O(CO)−NH−)(式中、(CO)はカルボニル基(C=O)を指す)を含有する。この用語は、ウレタン結合及び尿素結合の両方が存在する「ポリウレタン−ウレア」を含み得る。
【0020】
本開示は、ディスプレイウィンドウを保護することができ、折り畳み試験を無傷で耐え抜くことができるディスプレイフィルムに関する。保護ディスプレイフィルムは、ディスプレイに耐擦傷性を与えながら、ディスプレイフィルムの光学的特性を維持する。保護ディスプレイフィルムは、透明な脂肪族架橋ポリウレタン材料で形成されている。保護ディスプレイフィルムは、2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下、又は0.5%以下のヘイズ値を示す。保護ディスプレイフィルムは、85%以上、又は90%以上、又は93%以上の可視光透過率を示す。保護ディスプレイフィルムは、98%以上、又は99%以上の透明度(clarity)を示す。脂肪族架橋ポリウレタン材料は、11〜27℃、又は17〜22℃の範囲のガラス転移温度を有し得る。脂肪族架橋ポリウレタン材料は、0.5〜2.5、又は1〜2、又は1.4〜1.8の範囲の誘電正接ピーク値を有し得る。脂肪族架橋ポリウレタン材料は、0.34〜0.65mol/kgの範囲の架橋密度を有し得る。保護ディスプレイフィルムは、室温での耐擦傷性又は傷修復性(scratch recovery)を示し、損傷も目に見える欠陥もなく、少なくとも100,000回の折り畳みサイクルに耐えることができる。こうした保護ディスプレイフィルムは、損傷も、層間剥離、クラック若しくはヘイズなどの目に見える欠陥もなく、5mm以下、又は4mm以下、又は3mm以下、又は2mm以下、又は更には1mm以下の曲げ半径に耐えることができる。本開示内容がそのように限定されるものではないが、下記に示した実施例の説明により、本開示の様々な態様の理解が得られるであろう。
【0021】
図1は、例示的なディスプレイフィルム10の概略側面図である。ディスプレイフィルム10は、透明なポリマー基材層12と、透明なポリマー基材層12上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14と、を含む。ディスプレイフィルム10は光学的に透明であってもよく、傷修復性を示し、損傷されることも、ディスプレイフィルムの光学的特性を低下させることもなく、少なくとも100,000回の折り畳みサイクルに耐えることができる。ディスプレイフィルム10は粘着性でなくてもよく、1GPa以上の0℃での貯蔵弾性率を示す。
【0022】
ディスプレイフィルム10は、透明なポリマー基材層12と、透明なポリマー基材層12上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14と、を含む。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14は、11〜27℃又は17〜22℃の範囲のガラス転移温度を有し得る。語句「ガラス転移温度」は、本明細書において、DSCによる「立ち上がり(on-set)」のガラス転移温度を指し、ASTM E1256−08 2014に従って測定される。
【0023】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14は、0.5〜2.5、又は1〜2、又は1.4〜1.8の範囲の誘電正接ピーク値を有し得る。誘電正接ピーク値及びピーク温度は、実施例に記載されているDMA分析に従って測定される。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14は、0.34〜0.65mol/kgの範囲の架橋密度を有し得る。
【0024】
ディスプレイフィルム10は、2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下、又は0.5%以下のヘイズ値を有し得る。いくつかの実施形態において、ディスプレイフィルム10は、5%以下のヘイズ値を有し得る。ディスプレイフィルム10は、98%以上、又は99%以上の透明度を有し得る。ディスプレイフィルム10は、85%以上、又は90%以上、又は93%以上の可視光透過率を有し得る。
【0025】
ディスプレイフィルム10は、5以下、又は4以下、又は3以下、又は2以下、又は1以下の黄色度又はb
*値を有し得る。多くの実施形態において、ディスプレイフィルム10は、1以下の黄色度又はb
*値を有し得る。
【0026】
ディスプレイフィルム10は、約3mmの半径での少なくとも100,000回の曲げ又は折り畳みサイクルの後に、2%以下、又は1.5%以下、又は1%以下のヘイズ値を維持し得る。ディスプレイフィルム10は、約5mm半径、又は約4mm半径、又は約3mm半径、又は約2mm半径、又は約1mm半径での少なくとも100,000回の曲げ又は折り畳みサイクルの後に、安定なヘイズ値を維持し得るか、又はクラックも層間剥離もなく無傷の状態であり得る。ディスプレイフィルム10は、約3mm以下の半径での少なくとも100,000回の曲げ又は折り畳みサイクルの後に、無傷の状態であり得る。
【0027】
ディスプレイフィルム10は、任意の有用な厚さを有し得る。多くの実施形態において、ディスプレイフィルム10は、500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下の厚さを有する。ディスプレイフィルム10の厚さは、所望のディスプレイ保護をもたらすのに十分な厚さと、折り畳み及び薄型化設計パラメータを与えるのに十分な薄さとのバランスである。
【0028】
透明なポリマー基材層12は、任意の有用な厚さを有し得る。多くの実施形態において、透明なポリマー基材層12は、10〜100μm又は20〜80μmの範囲の厚さを有する。
【0029】
透明なポリマー基材層12は、ディスプレイフィルム10に所望の機械的特性(寸法安定性など)及び光学的特性(光透過率及び透明度など)を与える、任意の有用なポリマー材料から形成され得る。ポリマー基材層12において使用するのに好適な材料の例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル(PET、PEN)、多環式オレフィンポリマー、及び熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0030】
透明なポリマー基材層12を形成するのに有用なポリマー材料の1つは、ポリイミドである。多くの実施形態において、ポリイミド基材層は無色である。無色ポリイミドは、化学反応を介して、又はナノ粒子の組み込みによって形成することができる。化学反応を介して形成されるいくつかの例示的な無色ポリイミドは、国際公開第2014/092422号に記載されている。ナノ粒子の組み込みによって形成されるいくつかの例示的な無色ポリイミドは、Journal of Industrial and Engineering Chemistry 28(2015)16〜27に記載されている。
【0031】
透明なポリマー基材層12は、任意の有用な引張弾性率又はオフセット降伏応力(offset yield stress)値を有し得る。透明なポリマー基材層12は、50MPaを超える、又は75MPaを超えるオフセット降伏応力値を有し得る。語句「降伏応力」又は「オフセット降伏応力」は、本明細書において、ASTM D638−14において定義されている通りの「0.2%オフセット耐力(offset yield strength)」を指す。ASTM D638−14セクションA2.6は、「オフセット耐力」に関する試験方法を定義しており、ひずみが、応力−ひずみ曲線の初期の比例部分の伸びを規定量(オフセット)だけ超える応力と定義される。これは単位面積当たりの力、通常、メガパスカル(ポンド力/平方インチ)で表される。
【0032】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14は、任意の有用な厚さを有し得る。多くの実施形態において、透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14は、100μm以上、又は100〜300μm若しくは100〜250μmの範囲の厚さを有する。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14の厚さは、ディスプレイ、特に透明なポリマー基材層12に所望の保護をもたらすのに十分な厚さと、折り畳み及び薄型化設計パラメータを与えるのに十分な薄さとのバランスである。
【0033】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14を、透明なポリマー基材層12(これはプライマー処理されていてもよい)上にコーティングし、その後、硬化又は架橋して熱硬化性ポリウレタン層14を形成してもよい。ポリウレタンは、カルバメート(ウレタン)結合によって連結された有機単位で構成されたポリマーである。本明細書に記載されているポリウレタンは、加熱されたときに溶融しない熱硬化性ポリマーである。ポリウレタンポリマーは、ジ又はポリイソシアネートをポリオールと反応させることによって形成させることができる。ポリウレタンを製造するために使用されるイソシアネート及びポリオールは両方とも、1分子当たり平均して2個以上の官能基を含む。本明細書に記載されているポリウレタンは、2.4又は2.5を超える官能価を有し得る。
【0034】
幅広い種類のポリオールを使用して、脂肪族架橋ポリウレタン層を形成することができる。ポリオールという用語は、一般に少なくとも2個の末端ヒドロキシル基を含むヒドロキシル官能性材料を含む。ポリオールは、ジオール(2個の末端ヒドロキシル基を有する材料)、並びにトリオール(3個の末端ヒドロキシル基を有する材料)、及びテトラオール(4個の末端ヒドロキシル基を有する材料)などのより多価のポリオールなどを含む。典型的には、反応混合物は、少なくともいくつかのジオールを含有し、より多価のポリオールもまた含有してもよい。より多価のポリオールは、架橋ポリウレタンポリマーを形成するために特に有用である。ジオールは一般に、構造HO−B−OHで記述することができ、式中、B基は脂肪族基、芳香族基、又は芳香族基と脂肪族基との組み合わせを含む基であり得、更なる末端ヒドロキシル基を含む様々な結合又は官能基を含有してもよい。
【0035】
ポリエステルポリオールは特に有用である。有用なポリエステルポリオールのうち、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンスクシネート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリヘキサメチレンドデカンジオエート、ポリネオペンチルアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリシクロヘキサンジメチルアジペート、及びポリε−カプロラクトンを含む線状及び非線状ポリエステルポリオールが有用である。特に有用なのは、King Industries(Norwalk,Conn.)から「K−FLEX」という商品名で入手可能なK−FLEX 188又はK−FLEX A308などの脂肪族ポリエステルポリオールである。
【0036】
幅広い種類のポリイソシアネートを使用して、脂肪族架橋ポリウレタン層を形成することができる。ポリイソシアネートという用語は、一般に少なくとも2個の末端イソシアネート基を含むイソシアネート官能性材料を含む。ポリイソシアネートは、ジイソシアネート(2個の末端イソシアネート基を有する材料)、並びにトリイソシアネート(3個の末端イソシアネート基を有する材料)、及びテトライソシアネート(4個の末端イソシアネート基を有する材料)などのより多価のポリイソシアネートを含む。典型的には、二官能性ポリオールが使用される場合、反応混合物は、少なくとも1つのより多価のイソシアネートを含有する。多価イソシアネートは、架橋ポリウレタンポリマーを形成するために特に有用である。ジイソシアネートは、一般に構造OCN−Z−NCOで記述することができ、式中、Z基は脂肪族基、芳香族基、又は脂肪族基と芳香族基との組み合わせを含む基であり得る。
【0037】
トリイソシアネートなどのより多官能性のポリイソシアネートは、架橋ポリウレタンポリマー層を形成するために特に有用である。トリイソシアネートとしては、ビウレット、イソシアヌレート、及び付加物などから生成されるものなどの多官能性イソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの市販されているポリイソシアネートとしては、Bayer Corporation(Pittsburgh,Pa.)のDESMODUR及びMONDURシリーズの一部、及びDow Chemical Company(Midland,Mich)の企業グループであるDow PlasticsのPAPIシリーズが挙げられる。特に有用なトリイソシアネートとしては、Bayer CorporationからDESMODUR N3300A及びMONDUR 489という商品名で入手可能なものが挙げられる。特に好適な脂肪族ポリイソシアネートの1つは、DESMODUR N3300Aである。
【0038】
透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14を形成するために使用される反応混合物はまた、触媒も含有する。触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとの間の逐次反応を促進する。ウレタンの重合で使用されることが一般に認識されている通常の触媒は、本開示で使用するのに好適であり得る。例えば、アルミニウム系、ビスマス系、スズ系、バナジウム系、亜鉛系、又はジルコニウム系触媒を使用することができる。スズ系触媒が特に有用である。スズ系触媒は、ポリウレタン中に存在するガスの放出量を大幅に低減させることが分かっている。最も望ましいのは、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジメルカプチド、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズアセトニルアセトネート及びジブチルスズオキシドなどのジブチルスズ化合物である。特に、Air Products and Chemicals,Inc.(Allentown,Pa.)から市販されているジブチルスズジラウレート触媒DABCO T−12が特に好適である。触媒は一般に、少なくとも200ppm又は更には300ppm又はそれ以上の濃度で含まれる。
【0039】
図2は、別の例示的なディスプレイフィルム20の概略側面図である。ディスプレイフィルム20は、透明なポリマー基材層12又は透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14上に配置された取り外し可能なライナー22を含み得る。
【0040】
ディスプレイフィルム20は、透明なポリマー基材層12上に配置された光学接着剤層24と、光学接着剤層24上に配置された取り外し可能なライナー26と、透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14上に配置された第2の取り外し可能なライナー22と、を含み得る。光学接着剤層は、アクリレート系又はシリコーン系光学接着剤を含み得る。
【0041】
透明なポリマー基材層12をプライマー処理又は処理して、その表面の1つ以上に、何らかの所望の特性を付与してもよい。特に、透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14と透明なポリマー基材層12との接着を向上させるために、透明なポリマー基材層12をプライマー処理することができる。そのような処理の例としては、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、及びアクリレート又はシラン処理などの化学処理が挙げられる。
【0042】
取り外し可能なライナー22、26は、下にあるディスプレイフィルム10及び場合により存在する光学接着剤層24を輸送時に保護することができる。取り外し可能なライナー22、26は、ライナー22、26をディスプレイフィルム10及び場合により存在する光学接着剤層24からきれいに取り外すことを可能にするために、低表面エネルギーを有する層又はフィルムであり得る。取り外し可能なライナー22、26は、例えば、シリコーンでコーティングされたポリエステルの層であり得る。
【0043】
取り外し可能なライナー26は、場合により存在する光学接着剤層24に、仮構造(temporary structure)を提供し得る。例えば、国際公開第2014/197194号及び国際公開第2014/197368号は、光学接着剤層をエンボス加工する取り外し可能なライナーを記載しており、この取り外し可能なライナーが光学接着剤層から剥がされると光学接着剤はその構造を失う。
【0044】
ディスプレイフィルム20は、透明なポリマー基材層12と透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14との間、又はそれらの上に、1つ以上の更なる層を含むことができる。これらの場合により存在する層としては、ハードコート層(厚さ6μm以下)、透明バリア層(厚さ3〜200nm)、微細構造層、グレア防止(anti-glare)層、反射防止層、又は指紋防止層を挙げることができる。
【0045】
ハードコート層は、透明なポリマー基材層12及び透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14の一方又は両方のいずれの側にも配置することができる。ハードコート層は、少なくとも30重量%のナノシリカ粒子を含む多官能性アクリレート樹脂を含み得る。国際公開第2014/011731号は、いくつかの例示的なハードコートを記載している。
【0046】
透明バリア層は、透明なポリマー基材層12及び透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14の一方又は両方のいずれの側にも配置することができる。透明バリア層は、ディスプレイフィルム10を通過する酸素又は水分の侵入を軽減する又は遅らせることができる。透明バリア層として、例えば、シリカ、アルミナ、又はジルコニアと有機樹脂との交互薄層を挙げることができる。例示的な透明バリア層は、米国特許第7,980,910号及び国際公開第2003/094256号に記載されている。
【0047】
微細構造層は、透明なポリマー基材層12及び透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14の一方又は両方のいずれの側にも配置することができる。微細構造層は、ディスプレイフィルム10の光学的特性を向上させ得る。例示的な微細構造層は米国特許出願公開第2016/0016338号に記載されている。
【0048】
図3は、物品30上の例示的なディスプレイフィルム10の概略側面図である。
図4は、例示的なディスプレイフィルム10を含む例示的な折り畳み式物品40の概略斜視図である。
【0049】
物品30は、光学層32と、光学層32上に配置されたディスプレイフィルム10と、を含む。ディスプレイフィルム10は、上記の通り、透明なポリマー基材層12と、透明なポリマー基材層12上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層14と、を含む。光学接着剤層24は、透明なポリマー基材層12を光学層32に固定する。場合によっては、光学接着剤は、ディスプレイフィルムを物品又は光学層に永久的に固定する。別の場合には、ディスプレイフィルム及び光学接着剤は、消費者がディスプレイフィルムを交換できる又は再配置できるように、熱又は機械的な力をかけることによって光学層又は物品に対して取り外す/剥離する/再配置することができる。
【0050】
光学層32は、光学要素の少なくとも一部分を形成し得る。光学要素は、ディスプレイウィンドウ、又は光学ディスプレイ34などのディスプレイデバイスの要素であり得る。ディスプレイデバイス40は、電話又はスマートフォン、電子タブレット、電子手帳、コンピュータなどの任意の有用な物品であり得る。光学ディスプレイは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイパネルを含んでもよい。光学ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)パネル又は反射型ディスプレイを含んでもよい。反射型ディスプレイの例としては、電気泳動型ディスプレイ、エレクトロフルイディック方式ディスプレイ(エレクトロウェッティング方式ディスプレイなど)、干渉型ディスプレイ又は電子ペーパーディスプレイパネルが挙げられ、米国特許出願公開第2015/0330597号に記載されている。
【0051】
光学ディスプレイの更なる例としては、商業用のグラフィック看板及び大型広告板などのスタティック型ディスプレイが挙げられる。
【0052】
ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34は、
図4に示すように、光学ディスプレイ34がそれ自体に向き合い、ディスプレイフィルム10の少なくとも一部分が保護フィルム10の別の部分に接触するように、折り畳み可能であり得る。ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34は、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の一部分が、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の別の部分に対して接合(articulate)できるように、可撓性であるか又は曲げられるか又は折り畳み可能であり得る。ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34は、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の一部分が、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の別の部分に対して少なくとも90°又は少なくとも170°で接合できるように、可撓性であるか又は曲げられるか又は折り畳み可能であり得る。
【0053】
ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34は、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の一部分が、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の別の部分に対して接合して、曲げ線又は折り線でディスプレイフィルム10に3mm以下の曲げ半径を形成することができるように、可撓性であるか又は曲げられるか又は折り畳み可能であり得る。ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34は、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の一部分が、ディスプレイフィルム10及び接着された光学層32又は光学要素若しくは光学ディスプレイ34の別の部分に対して接合して、ディスプレイフィルム10がそれ自体に重なり合い、互いに10mm以下、若しくは6mm以下、若しくは3mm以下の距離で離れるか、又は互いに接触する曲げ半径を形成することができるように、可撓性であるか又は曲げられるか又は折り畳み可能であり得る。
【0054】
一実施形態において、ディスプレイフィルムは、透明なポリマー基材層(50〜75μmの範囲の厚さを有する)と、透明なポリマー基材層上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層(100〜150μmの厚さを有する)と、を含む。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、17〜22℃の範囲のガラス転移温度、1.4〜1.8の範囲の誘電正接ピーク値、及び2.5未満のb*値を有し得る。ディスプレイフィルムは、1%以下のヘイズ値を有する。
【0055】
別の実施形態において、ディスプレイフィルムは、透明なポリマー基材層(37.5〜70μmの範囲の厚さを有する)と、透明なポリマー基材層上に配置された透明な脂肪族架橋ポリウレタン層(125〜162.5μmの厚さを有する)と、を含む。透明な脂肪族架橋ポリウレタン層は、17〜22℃の範囲のガラス転移温度、1.2を超える誘電正接ピーク値を有し得る。
【0056】
本開示の目的及び利点を、以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例において列挙する特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細が、本開示を必要以上に限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0057】
実施例中の全ての部、百分率、比などは、特に明記しない限り、重量による。使用した溶媒及び他の試薬は、別に指定のない限り、Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,Missouri)から入手した。
【0058】
一連の脂肪族架橋ポリウレタンを、透明なポリマー基材上にコーティングした。耐擦傷性、傷修復率、可撓性、及び動的折り畳み性能(dynamic folding performance)を、下記の通り全て特性評価した。
【表1】
【0059】
プライマー処理したLmPENフィルム(実施例6〜20及び比較例C3〜C9用の基材)の調製
90/10PENコポリマーを、米国特許第8,263,731号の実施例対照Bに例示されているように調製した。水分除去のために真空をかけた二軸押出機を使用して、この材料を溶融押出した。溶融物を525°Fまで加熱し、押出ダイに送り、冷却されたドラム上で急冷した。この急冷したフィルムを、235〜250°Fの温度で、縦方向(machine direction)に3.3−1に延伸し、冷却した。この縦方向に延伸したフィルムを横延伸機(tenter machine)に供給し、これがフィルム両端を把持し、再び255〜300°Fまで加熱し、フィルムを横方向に3.7−1から4.1−1まで延伸した。次に同じ横延伸機においてフィルムを450°Fで8〜30秒間アニーリングした。フィルム両端をトリミングして除去し、フィルムを巻いてロール状にする前に、ポリエチレンプレマスクを適用した。
【0060】
2447.5gのメチルエチルケトン(Fisher Scientific)中で52.5gのVITEL 2200B(Bostik Americas(Wauwatosa,WI))を混合して均質な溶液を作ることによって、プライマー溶液を作製した。スロットダイを通してプライマー溶液を移動するウェブ上に計量供給するロールツーロールプロセスにおいて、コロナ処理した50μmの厚さのLmPENフィルムにプライマー溶液を適用した。定量ポンプ及び質量流量計(mass flow meter)を使用して、厚さを調節した。次に、3ゾーンエアーフローテーションゾーンオーブン(air floatation zone oven)(オーブン温度は全て175°Fに設定した)においてコーティングの揮発性成分を乾燥させた。その後、乾燥したコーティングを巻いてロール状にし、プライマーコーティングの厚さは約81nmであった。
【0061】
ポリウレタン反応混合物の調製及びコーティング手順
触媒を含むポリオールの調製−低せん断ブレードを備えた標準的な混合機に、200lbのK−FLEX 188及び42gのDABCO T−12を入れた。70℃及び28インチの水銀柱で4時間、真空下で成分を混合して、樹脂中の溶存気体を除去した。得られた樹脂を、後で使用するために5ガロンの円筒型容器に入れた。
【0062】
DESMODUR N3300の調製−低せん断ブレードを備えた標準的な混合機に、200lbのDESMODUR N330を入れた。140°F及び28インチの水銀柱で4時間、真空下で成分を混合して、樹脂中の溶存気体を除去した。得られた樹脂を、後で使用するために5ガロンの円筒型容器に入れた。
【0063】
実施例1〜5及び比較例C1〜C3の調製
触媒を含むポリオール及びDESMODUR N3300を、質量流量制御器(mass flow controller)を備えた別々のポンプカート(pump cart)に添加した。触媒を含むポリオールを60℃まで加熱して粘度を低下させた。2つの成分を、制御された化学量論で、ポンプカートから質量流量制御器を介してKenicsスタティックミキサー(長さ355mm、32個のエレメントを有する)に送った。ポリウレタン反応混合物を12”幅のT−50ライナーの間に入れ、約3mil厚さのポリウレタンコーティングを生じるようにギャップを設定して、ノッチバーの下からフィルムを連続的に引き出した。このアセンブリを熱板上で高温で加熱して、ポリウレタンフィルムをゲル化し、70℃のオーブン中に16時間入れて硬化させた。試験の前に、両方のライナーを取り外した。
【0064】
Macromolecules,Vol.9,No.2,pages 206〜211(1976)に記載されている方法を使用して、硬化したポリウレタンコーティングの架橋密度を算出した。このモデルを実行するためには、化学官能価の整数値が必要である。DESMODUR N3300は、3.5の平均官能価、及び193g/当量のイソシアネート当量重量を有することが報告されている。この材料は、47.5重量%のHDI三量体(168.2g/当量)、25.0重量%のHDI四量体(210.2g/当量)、及び27.5重量%のHDI五量体(235.5g/当量)の混合物として、数学的モデルで表された。この混合物の平均当量重量は193g/当量であり、平均官能価は3.5である。
【表2】
【0065】
実施例6〜20及び比較例C4〜C9の調製
触媒を含むポリオール及びDESMODUR N3300を、質量流量制御器を備えた別々のポンプカートに添加した。触媒を含むポリオールを60℃まで加熱して粘度を低下させた。2つの成分を、制御された化学量論で、ポンプカートから質量流量制御器を介してKenicsスタティックミキサー(長さ355mm、32個のエレメントを有する)に送った。2成分ポリウレタン反応混合物を12”COPライナーと、上述のプライマー処理したLmPENフィルムとの間でコーティングした。反応混合物を、連続的に、フィルム間で所望の厚さのポリウレタンコーティングに配置した。このアセンブリを熱板上で高温で加熱して、ポリウレタンフィルムをゲル化し、70℃のオーブン中に16時間入れて硬化させた。試験の前に、COPライナーを取り外した。硬化したポリウレタンコーティングの架橋密度を、実施例1〜5のように算出した。
【表3】
【0066】
比較例C11〜C16の調製
Leistritz ZSE 18 HPe 18mm二軸及び単層ダイにおいて、製造者の推奨する押出温度及びダイ温度特性プロファイル(die temperature profiles)を使用して、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を押し出した。ESTANE TPUはLubrizolから市販されており、TEXIN TPUはBayer Material Science LLCから市販されている。押出機条件は表4に示す。単層ダイ及びフィードブロック条件は表5に示す。
【表4】
【表5】
【0067】
ポリウレタンコーティング特性評価
ガラス転移温度
TA Instruments Model Q2000 Differential Scanning Calorimeterを使用して、架橋密度に応じたポリウレタンコーティングのガラス転移温度を特性評価した。2℃/分の昇温速度で走査を行った。空のサンプルパンを標準として使用した。結果を下記の表4に示す。C3では、プライマー処理したLmPENのフィルム片を標準パンに入れた。ガラス転移の開始及び中点を、ASTM E1356−08(2014)に従って決定した。
【0068】
動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)試験方法
実施例1〜5並びに比較例C1、C2、及びC3のサンプルを、幅6.35mm及び長さ約4cmのストリップに切断した。各フィルムの厚さを測定した。TA Instruments製のQ800 DMAの引張グリップに、6mm〜9mmの初期グリップ間隔で、フィルムを取り付けた。次に、2℃/分の速度での−20℃〜200℃の温度勾配の全体にわたって、0.2%ひずみ及び1Hzの振動で、サンプルを試験した。誘電正接シグナルが最大に達した温度を、ピーク誘電正接温度として記録した。
【表6】
【0069】
透過率、ヘイズ、及び透明度
調製した実施例の光学的特性は、Hazegard測定器を使用して測定した。光透過率(luminous transmission)、透明度、及びヘイズは、Gardner Haze−Guard Plusモデル4725(BYK−Gardner(Columbia,MD)から入手可能)を使用して、ASTM D1003−00に従って測定した。表7の各結果は、所与のサンプルにおける3回の測定の平均である。
【0070】
黄色度又はb
*
黄色みは、D65光源を用いてb
*を測定することによって評価した。Konica Minolta SpectrophotometerモデルCM3700dにおいて透過率で測定を行った。
【表7】
【0071】
静的折り畳み復元性(static fold recovery)
保護フィルムの2.125”×4.0”サンプルを、支柱間の間隔を1cmにして試験管立てに配置し、それによって、5mmの有効な曲げ半径を作り出した。温度60℃相対湿度93%に制御されたチャンバーにサンプルを24時間入れ、その後、その試験管立てから取り出し、24時間垂直に吊した。その後、水平面に対して保護フィルムサンプルが開いた角度を記録した。180°は、サンプルが完全に折り畳まれた状態であったことを意味する。0°は、サンプルが完全に開いて水平なフィルムに戻ったことを意味する。結果を表8に示す。熱可塑性ポリウレタン(比較例C11〜16)は開かないことが分かる。架橋ポリウレタンコーティングを有するサンプルは全て、50〜70°の角度まで開いた。
【表8】
【0072】
マンドレル屈曲試験
ASTMメソッドD522/522M−13「Mandrel Bend Test of Attached Organic Coatings」の修正版、試験方法B、円筒形マンドレル試験を使用して、保護フィルムの曲げ特性を試験した。ASTM法で指示されているように90°まで曲げる代わりに、全てのサンプルをマンドレルの周囲に180°巻きつけ、その後損傷を評価した。全てのサンプルは、コーティングを外径側にして(すなわち、コーティングは伸張状態になる)、試験した。クラックが認められなかった最小の円筒サイズを、最小曲げ半径として報告した(合否判定方式)。試験開始前に、サンプルを21±2℃及び50±5%の相対湿度で少なくとも24時間前処理した。結果を表9に示す。
【0073】
動的折り畳み試験
複数回の折り畳み動作に対する保護フィルムの耐久性を、動的折り畳み試験機を使用して評価した。動的折り畳み試験機は、2つの同一平面上のプレートを有し、プレートの一方は固定されており、他方のプレートは回転して互いに重なり合って向き合う。閉じているときのプレート間の間隙は、約6mmに調節されており、それによって曲げ半径は約3mmとなる。7”×1.75”の各サンプル片を、ロータリーカッターを使用して切断し、ライナーを取り外した。両面Scotchパーマネントテープを使用して、コーティング側を上にして折り畳みプレートにサンプルを貼り付けた(コーティングは圧縮状態になる)。フィルムが圧迫されない(unconstrained)折り畳み軸の両側に約6mm幅の空き領域ができるように、テープをプレートに貼った。折り畳み速度は折り畳み約20回/minとし、試験は200,000サイクル行った。コーティングクラック、層間剥離又はヘイズなどの損傷の痕跡に関して、10,000〜25,000サイクル毎にサンプルを目視で検査した。結果を表9に示す。動的折り畳み損傷は、各実施例につき全部で3つのサンプル試験のうちの数である。
【表9】
【0074】
耐擦傷性試験
1mm直径の100Cr6ステンレス鋼ボールチップを取り付けたRevetest RSTを備えたスクラッチ試験機(Anton Paar(USA))を使用して、コーティングされた基材の耐擦傷性を特性評価した。各実施例をガラススライドに固定し、次に、一定の垂直荷重及び60mm/minの速度で、サンプルに一連の長さ8mmのスクラッチを形成する。次にサンプルを離して、21±2℃及び50±5%相対湿度で修復させた。24時間の修復後に肉眼で圧痕(デント)が見えなかった最も高い垂直荷重を、限界垂直荷重(N)として記録し、表10において報告した。
【0075】
1mm直径の炭化タングステンチップを取り付けたErichsenペン、モデル318 S(T.J.Bell(Akron,OH))を使用して、傷修復速度を更に特性評価した。9Nの垂直抗力をかけるようにスプリングを調整し、次にペンを、約10mm/sの速度で、サンプルを横切るように移動させる。次に、最初の1時間は10min毎に、その後はより長い間隔でサンプルを検査して、スクラッチが肉眼で見えなくなるまでにかかったおおよその時間を測定し、表10において報告した。
【表10】
このように、保護ディスプレイフィルムの実施形態が開示されている。
【0076】
本明細書に引用されている全ての参考文献及び刊行物は、それらが本開示と直接矛盾し得る場合を除き、それらの全容を参照によって本開示に明確に援用するものである。具体的な実施形態を本明細書において例示し記述したが、様々な代替及び/又は等価な実施により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者により理解されるであろう。本出願は、本明細書において論じた具体的な実施形態のいかなる適合例又は変形例であっても包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるものとする。開示された実施形態は例示目的で提示されており、限定を目的とするものではない。