特許第6857665号(P6857665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857665
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20210405BHJP
   H02H 7/12 20060101ALI20210405BHJP
   H02H 3/20 20060101ALI20210405BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02H7/12
   H02H3/20 D
   H02M3/155 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-546069(P2018-546069)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2016080844
(87)【国際公開番号】WO2018073892
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進一
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/056719(WO,A1)
【文献】 特開平09−107075(JP,A)
【文献】 特開2014−007909(JP,A)
【文献】 特開2014−121137(JP,A)
【文献】 特開2003−209903(JP,A)
【文献】 特開昭54−108250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02H 3/20
H02H 7/12
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で交流電力を供給する非接触給電部と、
前記非接触給電部に対向できるように配置されて、非接触で前記交流電力を受け取る非接触受電部と、
前記非接触受電部が受け取った前記交流電力の前記交流電圧を整流および平滑して直流受電電圧に変成する整流平滑回路と、
前記直流受電電圧を直流負荷電圧に降圧して電気負荷に供給するとともに、前記電気負荷が電力を回生しているときに逆方向の昇圧動作となる直流降圧回路と、
前記直流降圧回路の前記逆方向の前記昇圧動作によって上昇する前記直流受電電圧が過電圧を判定する所定の閾電圧に達したことを検出して、遮断信号を発生する過電圧検出部と、
前記遮断信号が発生していない通常時に前記直流降圧回路と前記電気負荷の間を導通状態とし、前記遮断信号が発生したときに前記電気負荷から前記直流降圧回路に向かう逆方向を遮断状態にする逆方向遮断部と、を備え
前記整流平滑回路は、4個の整流ダイオードのブリッジ接続によって構成され、入力側に前記非接触受電部が接続され、出力側に正側端子および負側端子をもつ全波整流回路、ならびに、前記正側端子と前記負側端子の間に接続された平滑コンデンサを有し、
前記直流降圧回路は、第1端子が前記正側端子に接続され、第2端子が中間点に接続されたハイサイド側スイッチング素子、第1端子が前記中間点に接続され、第2端子が前記負側端子および前記電気負荷の他端に接続されたローサイド側スイッチング素子、前記中間点と前記逆方向遮断部の間に接続されたチョークコイル、ならびに、前記逆方向遮断部および前記電気負荷に対して並列接続された降圧側コンデンサを有し、
前記過電圧検出部は、前記降圧側コンデンサに発生する前記直流負荷電圧で駆動され、前記平滑コンデンサに発生する前記直流受電電圧を監視し、
前記逆方向遮断部は、前記電気負荷の一端に接続されており、前記遮断信号が発生したときに前記電気負荷から前記チョークコイルおよび前記降圧側コンデンサに向かう逆方向を遮断状態にする、
非接触給電装置。
【請求項2】
前記過電圧検出部は、前記直流受電電圧が前記閾電圧よりも小さい所定の復帰電圧まで下降したときに、前記遮断信号を解消する請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記逆方向遮断部は、前記遮断信号が発生したときに前記直流降圧回路から前記電気負荷に向かう順方向の電力供給を可能としつつ、前記逆方向を遮断状態にする請求項1または2に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記逆方向遮断部は、前記遮断信号によって遮断されるスイッチング素子、および前記順方向の電力供給を可能とするダイオードの並列接続からなる等価回路で表された電力用半導体素子である請求項3に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
前記直流降圧回路、前記過電圧検出部、および前記逆方向遮断部を回路基板に実装して構成し、かつ、前記過電圧検出部および前記逆方向遮断部の未実装を可能とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項6】
前記過電圧検出部に代え、前記電気負荷が前記電力を回生しているときに前記遮断信号を発生する回生検出部を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で給電を行う非接触給電装置に関し、より詳細には、給電される電気負荷が電力回生機能を有する構成の非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電部から非接触受電部へと非接触で給電を行う非接触給電装置が開発されている。非接触給電の方式を大別すると、電磁誘導方式、静電結合方式、および電磁界共鳴方式の3方式が有る。非接触給電装置の多数において、非接触給電部の側の電源に交流が用いられ、非接触受電部の側で整流を行う構成が採用されている。また、非接触給電回路の異常を検出して保護する技術も各種提案されている。この種の非接触給電装置の保護技術の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のワイヤレス受電装置は、受電コイルおよび整流回路からなる受電回路を遮断可能な遮断素子と、直列接続された抵抗およびスイッチング素子からなるクランプ回路と、抵抗とスイッチング素子の間の電圧値を検出する手段と、受電回路の異常状態を検出する手段と、制御回路と、を備える。制御回路は、異常状態が検出されたときにスイッチング素子を導通させ、電圧値が基準電圧値を下回ってから遮断素子を遮断制御する。これによれば、大電力投入時に異常が発生しても、電圧値が十分に低下してから電気負荷への電力供給が遮断されるので、回路構成部品の破損が防止され、安全性を高めることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−121137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の保護技術は、大電力投入時に受電回路に異常状態が発生すると機能する。しかしながら、受電回路の過電圧は、異常状態のみに発生するのでなく、電気負荷が電力回生機能を有する場合には頻繁に発生し得る。例えば、電気負荷としてのモータは、減速時に発電機として機能するのが一般的であり、電力を回生する。この回生電力は、モータから受電回路へと逆方向に移送され得るので、回路構成部品に過電圧が発生して破損のおそれが生じる。特許文献1の保護技術は、回生電力の逆方向への移送に対して保護機能を有さない。
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、非接触給電される電気負荷が電力回生機能を有する構成において、回生電力に対する保護機能を有した非接触給電装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する非接触給電装置は、非接触で交流電力を供給する非接触給電部と、前記非接触給電部に対向できるように配置されて、非接触で前記交流電力を受け取る非接触受電部と、前記非接触受電部が受け取った前記交流電力の前記交流電圧を整流および平滑して直流受電電圧に変成する整流平滑回路と、前記直流受電電圧を直流負荷電圧に降圧して電気負荷に供給するとともに、前記電気負荷が電力を回生しているときに逆方向の昇圧動作となる直流降圧回路と、前記直流降圧回路の前記逆方向の前記昇圧動作によって上昇する前記直流受電電圧が過電圧を判定する所定の閾電圧に達したことを検出して、遮断信号を発生する過電圧検出部と、前記遮断信号が発生していない通常時に前記直流降圧回路と前記電気負荷の間を導通状態とし、前記遮断信号が発生したときに前記電気負荷から前記直流降圧回路に向かう逆方向を遮断状態にする逆方向遮断部と、を備え、前記整流平滑回路は、4個の整流ダイオードのブリッジ接続によって構成され、入力側に前記非接触受電部が接続され、出力側に正側端子および負側端子をもつ全波整流回路、ならびに、前記正側端子と前記負側端子の間に接続された平滑コンデンサを有し、前記直流降圧回路は、第1端子が前記正側端子に接続され、第2端子が中間点に接続されたハイサイド側スイッチング素子、第1端子が前記中間点に接続され、第2端子が前記負側端子および前記電気負荷の他端に接続されたローサイド側スイッチング素子、前記中間点と前記逆方向遮断部の間に接続されたチョークコイル、ならびに、前記逆方向遮断部および前記電気負荷に対して並列接続された降圧側コンデンサを有し、前記過電圧検出部は、前記降圧側コンデンサに発生する前記直流負荷電圧で駆動され、前記平滑コンデンサに発生する前記直流受電電圧を監視し、前記逆方向遮断部は、前記電気負荷の一端に接続されており、前記遮断信号が発生したときに前記電気負荷から前記チョークコイルおよび前記降圧側コンデンサに向かう逆方向を遮断状態にする
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する非接触給電装置において、直流降圧回路は、電気負荷が電力を回生しているときに逆方向の昇圧動作となるので、回生電力の逆方向への移送によって直流受電電圧が上昇し得る。ここで、過電圧検出部は、直流受電電圧が閾電圧に達した過電圧状態を検出して遮断信号を発生し、逆方向遮断部は、遮断信号が発生したときに電気負荷から直流降圧回路に向かう逆方向を遮断状態にする。したがって、以降は回生電力の逆方向への移送が行われず、直流受電電圧は、閾電圧を越えて上昇しない。これにより、回生電力に対する保護機能が働き、回路構成部品の破損のおそれが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の非接触給電装置の電気的な構成を示す回路図である。
図2】電気負荷の電力回生の継続時間が比較的短いときに、直流受電電圧および遮断信号が変化する様子を示すタイムチャートの図である。
図3】電気負荷の電力回生の継続時間が比較的長いときに、直流受電電圧および遮断信号が変化する様子を示すタイムチャートの図である。
図4】第2実施形態の非接触給電装置の電気的な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.第1実施形態の非接触給電装置1の構成)
本発明の第1実施形態の非接触給電装置1について、図1図3を参考にして説明する。図1は、第1実施形態の非接触給電装置1の電気的な構成を示す回路図である。第1実施形態の非接触給電装置1は、給電側装置1Sと受電側装置1Rからなる。給電側装置1Sは、定位置に配置される。受電側装置1Rは、給電側装置1Sに対して位置の変更が可能とされている。図1に示されるように、給電側装置1Sに対して受電側装置1Rが対向配置されると、非接触給電装置1は電磁誘導方式の非接触給電を行う。
【0011】
給電側装置1Sは、非接触で交流電力を供給する非接触給電部2を備える。非接触給電部2は、交流電源21および給電コイル22を有する。交流電源21は、給電コイル22に交流電力を供給する。交流電源21は、例えば、直流電圧を供給する直流電源部と、直流電圧を交流変換する公知のブリッジ回路とを用いて構成される。なお、非接触給電部2は、給電コイル22に直列接続または並列接続された共振用コンデンサを有してもよい。
【0012】
受電側装置1Rは、非接触受電部3、整流平滑回路4、直流変圧回路5、過電圧検出部6、および逆方向遮断部7を備える。受電側装置1Rには、電力回生機能を有する電気負荷9が搭載される。給電側装置1Sに対して受電側装置1Rが対向配置されたときに、非接触受電部3は、非接触給電部2に対向できるように配置される。非接触受電部3は、受電コイル31を有する。受電コイル31は、給電コイル22に対向配置されて電磁結合し、非接触で交流電力を受け取る。非接触受電部3は、受電コイル31に直列接続または並列接続された共振用コンデンサを有してもよい。
【0013】
整流平滑回路4は、非接触受電部3が受け取った交流電力の交流電圧を整流および平滑して直流受電電圧VRに変成する。整流平滑回路4は、全波整流回路41および平滑コンデンサ42からなる。全波整流回路41は、図略の4個の整流ダイオードのブリッジ接続によって構成される。全波整流回路41は、入力側に受電コイル31が接続されて、交流電圧が入力される。全波整流回路41は、出力側に正側端子43および負側端子44をもつ。平滑コンデンサ42は、正側端子43と負側端子44の間に接続される。正側端子43および負側端子44から、直流受電電圧VRが出力される。
【0014】
直流変圧回路5は、直流受電電圧VRを直流負荷電圧VLに変圧して電気負荷9に供給する。以降では、直流変圧回路5が降圧動作を行う直流降圧回路とされた場合を例にして説明する。直流変圧回路5は、ハイサイド側スイッチング素子51、ローサイド側スイッチング素子52、チョークコイル53、および降圧側コンデンサ54を有する。ハイサイド側スイッチング素子51およびローサイド側スイッチング素子52として、MOSFET素子やIGBT素子などを用いることができる。以下、MOSFET素子の場合を例にして説明する。
【0015】
ハイサイド側スイッチング素子51は、第1端子に相当するドレインDが正側端子43に接続され、第2端子に相当するソースSが中間点55に接続される。ローサイド側スイッチング素子52は、第1端子に相当するドレインDが中間点55に接続され、第2端子に相当するソースSが負側端子44および負側出力端子57に接続される。チョークコイル53は、一端が中間点55に接続され、他端が正側出力端子56に接続される。降圧側コンデンサ54は、一端が正側出力端子56に接続され、他端が負側出力端子57に接続される。正側出力端子56および負側出力端子57から、降圧された直流負荷電圧VLが出力される。
【0016】
図略の電圧調整部は、ハイサイド側スイッチング素子51のゲートGおよびローサイド側スイッチング素子52のゲートGに、交互に制御信号を送出する。すると、ハイサイド側スイッチング素子51の導通状態と、ローサイド側スイッチング素子52の導通状態とが交互に発生して、降圧動作となる。直流負荷電圧VLが上昇傾向を示したとき、電圧調整部は、ハイサイド側スイッチング素子51の導通時間の比率を小さく制御する。逆に、直流負荷電圧VLが下降傾向を示したとき、電圧調整部は、ハイサイド側スイッチング素子51の導通時間の比率を大きく制御する。これにより、直流負荷電圧VLは、概ね一定に保たれる。
【0017】
ここで、ローサイド側スイッチング素子52をダイオードに置き換えても、降圧動作の機能は維持される。ただし、ダイオードの順方向抵抗の分だけ損失が発生するので、給電効率が低下する。本第1実施形態では、高い給電効率を確保する目的で、ダイオードを用いずにローサイド側スイッチング素子52を用いる。すると、直流変圧回路5は、電気負荷9の側から見ていわゆる昇圧チョッパ回路となる。したがって、直流変圧回路5は、逆方向の昇圧動作となる。
【0018】
過電圧検出部6は、直流負荷電圧VLで駆動され、直流受電電圧VRを監視する。過電圧検出部6は、直流受電電圧VRが過電圧を判定する所定の閾電圧Vlmtに達したことを検出して、遮断信号Scを発生する。遮断信号Scは、逆方向遮断部7の制御に用いられる。閾電圧Vlmtは、整流平滑回路4および直流変圧回路5の回路構成部品に破損が生じないように、適正に設定される。閾電圧Vlmtは、平滑コンデンサ42の許容最大電圧、または、ハイサイド側スイッチング素子51およびローサイド側スイッチング素子52の許容最大電圧に基づいて設定されているが、これに限定されない。
【0019】
また、過電圧検出部6は、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtよりも小さい所定の復帰電圧Vretまで下降したときに、遮断信号Scを解消する。復帰電圧Vretは、非接触給電によって得られる直流受電電圧VRの通常レベルよりも多少高めに設定されることが好ましい。
【0020】
逆方向遮断部7は、遮断信号Scが発生していない通常時に、直流変圧回路5と電気負荷9の間を導通状態とする。逆方向遮断部7は、遮断信号Scが発生したときに、電気負荷9から直流変圧回路5に向かう逆方向を遮断状態にする。逆方向遮断部7には、MOSFET素子やIGBT素子などの電力用半導体素子を用いることができる。以下、MOSFET素子の場合を例にして説明する。
【0021】
逆方向遮断部7は、ドレインDが電気負荷9の一端に接続され、ソースSが正側出力端子56に接続され、ゲートGが過電圧検出部6に接続される。逆方向遮断部7は、スイッチング素子71とダイオード72の並列接続からなる等価回路で表される。スイッチング素子71は、遮断信号ScのゲートGへの入力によって遮断制御される。ダイオード72は、直流変圧回路5から電気負荷9に向かう順方向では、順方向抵抗を介しての電力供給が可能となっている。また、ダイオード72は、電気負荷9から直流変圧回路5に向かう逆方向を常に遮断する。
【0022】
電気負荷9は、サーボアンプ91およびサーボモータ92からなり、この組合せに限定されない。サーボアンプ91は、CPUを有してソフトウェアで動作する電子制御装置である。サーボアンプ91は、直流負荷電圧VLから三相交流電圧を生成してサーボモータ92に印加する。サーボアンプ91は、三相交流電圧の印加時間帯および実効値を可変に調整することで、サーボモータ92の回転、停止および回転速度を制御する。
【0023】
サーボモータ92は、減速するときに電力を回生する。発生した回生電力は、サーボアンプ91および導通状態の逆方向遮断部7を逆方向に経由して、正側出力端子56および負側出力端子57へと移送される。
【0024】
(2.第1実施形態の非接触給電装置1の動作および作用)
次に、第1実施形態の非接触給電装置1の動作および作用について説明する。給電側装置1Sに対して受電側装置1Rが対向位置に配置されると、非接触給電装置1は非接触給電を開始する。これにより、直流受電電圧VRが発生する。サーボモータ92が停止した状態で、直流受電電圧VRは、閾電圧Vlmtに達しない。したがって、過電圧検出部6は、過電圧を判定せず、遮断信号Scを発生しない。直流変圧回路5は、直流受電電圧VRを直流負荷電圧VLに降圧して出力する。逆方向遮断部7のスイッチング素子71は、遮断信号Scが入力されていないので導通状態となり、直流負荷電圧VLを通過させる。これにより、サーボモータ92の回転が可能となる。サーボモータ92が電力を消費しているときに、直流変圧回路5は、順方向の降圧動作となる。
【0025】
前述したように、サーボモータ92は減速するときに電力を回生し、このとき、直流変圧回路5では逆方向の昇圧動作となる。図2は、電気負荷9の電力回生の継続時間が比較的短いときに、直流受電電圧VRおよび遮断信号Scが変化する様子を示すタイムチャートの図である。また、図3は、電気負荷9の電力回生の継続時間が比較的長いときに、直流受電電圧VRおよび遮断信号Scが変化する様子を示すタイムチャートの図である。図2および図3において、横軸は共通の時間軸tを表す。上段のグラフは、電気負荷9の消費電力Wを表し、回生電力は負値で表される。また、中段のグラフは直流受電電圧VRを表し、下段のグラフは遮断信号Scを表す。
【0026】
図2の時刻t1以前に、サーボモータ92は惰性回転しており、通常レベルの直流受電電圧VRが発生している。時刻t1に、サーボモータ92は、惰性回転から減速に移行する。これにより、サーボモータ92で回生電力W1が発生する。回生電力W1は、サーボアンプ91から正側出力端子56および負側出力端子57へと移送される。時刻t1以降も、直流変圧回路5の電圧調整部は、ハイサイド側スイッチング素子51の導通状態と、ローサイド側スイッチング素子52の導通状態とを交互に発生させる。
【0027】
ローサイド側スイッチング素子52が導通している間、回生電力W1はチョークコイル53にエネルギとして蓄えられる。ローサイド側スイッチング素子52が遮断されてハイサイド側スイッチング素子51が導通すると、チョークコイル53に蓄えられたエネルギは、瞬間的に高い電圧を発生して平滑コンデンサ42に移送される。この動作が繰り返されることにより、平滑コンデンサ42に蓄積される電荷が増加する。結果として、時刻t1以降、直流受電電圧VRは、上昇し続ける。
【0028】
時刻t2に、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtに達すると、過電圧検出部6はこれを検出して、遮断信号Scを発生する。遮断信号Scの発生により、逆方向遮断部7のスイッチング素子71が遮断される。これにより、回生電力W1は、逆方向に移送されなくなり、電気負荷9の内部で熱に変換されるなどの手段により消費される。時刻t2以降、平滑コンデンサ42の電荷は、過電圧検出部6の駆動などに消費される。これにより、直流受電電圧VRは、徐々に下降する。
【0029】
時刻t3に、サーボモータ92は、減速から増速に移行し、消費電力W2が必要となる。このとき、スイッチング素子71が遮断状態であるので、消費電力W2は、直流変圧回路5からダイオード72の順方向抵抗を介して供給される。時刻t3以降、平滑コンデンサ42の電荷の消費が促進され、直流受電電圧VRの下降が進む。
【0030】
時刻t4に、直流受電電圧VRが復帰電圧Vretまで下降すると、過電圧検出部6はこれを検出して、遮断信号Scを解消する。遮断信号Scの解消により、逆方向遮断部7のスイッチング素子71が導通される。これにより、電気負荷9の電力回生が終了していれば、通常時の受電回路構成に迅速に復帰できる。以降、消費電力W2は、導通状態のスイッチング素子71を介して供給される。したがって、時刻t3から時刻t4までのわずかな時間帯に限り、ダイオード72の順方向抵抗の分だけ給電効率が低下する。この後の時刻t5に、直流受電電圧VRは、通常レベルに戻る。
【0031】
なお、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtに達する以前に(時刻t2以前に)、サーボモータ92の電力回生の継続時間が終了する場合もある。この場合、遮断信号Scは発生せず、スイッチング素子71は遮断されない。
【0032】
次に、図3の時刻t1以前に、サーボモータ92は惰性回転しており、通常レベルの直流受電電圧VRが発生している。時刻t1に、サーボモータ92は惰性回転から減速に移行する。これにより、サーボモータ92で回生電力W3が発生する。回生電力W3は、サーボアンプ91から正側出力端子56および負側出力端子57へと移送される。したがって、図2の場合と同様に、時刻t1以降、直流受電電圧VRは、上昇し続ける。
【0033】
時刻t2に、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtに達すると、過電圧検出部6はこれを検出して、遮断信号Scを発生する。遮断信号Scの発生により、逆方向遮断部7のスイッチング素子71が遮断される。これにより、回生電力W3は、逆方向に移送されなくなり、電気負荷9の内部で熱に変換されるなどの手段により消費される。時刻t2以降、平滑コンデンサ42の電荷は、過電圧検出部6の駆動などに消費される。これにより、直流受電電圧VRは、徐々に下降する。
【0034】
回生電力W3が発生している途中の時刻t13に、直流受電電圧VRが復帰電圧Vretまで低下すると、過電圧検出部6はこれを検出して、遮断信号Scを解消する。遮断信号Scの解消により、逆方向遮断部7のスイッチング素子71が導通される。これにより、回生電力W3の逆方向への移送が再開され、直流受電電圧VRは、再び上昇に転じる。
【0035】
時刻t14に、直流受電電圧VRが再び閾電圧Vlmtに達すると、過電圧検出部6はこれを検出して、遮断信号Scを発生する。遮断信号Scの発生により、逆方向遮断部7のスイッチング素子71が遮断される。これにより、回生電力W3は、逆方向に移送されなくなり、電気負荷9の内部で熱に変換されるなどの手段により消費される。時刻t14以降、平滑コンデンサ42の電荷は、過電圧検出部6の駆動などに消費される。これにより、直流受電電圧VRは、徐々に下降する。
【0036】
時刻t15に、サーボモータ92は、減速から増速に移行し、消費電力W4が必要となる。このとき、スイッチング素子71が遮断状態であるので、消費電力W4は、直流変圧回路5からダイオード72の順方向抵抗を介して供給される。時刻t15以降、平滑コンデンサ42の電荷の消費が促進され、直流受電電圧VRの下降が進む。
【0037】
時刻t16に、直流受電電圧VRが復帰電圧Vretまで低下すると、過電圧検出部6はこれを検出して、遮断信号Scを解消する。遮断信号Scの解消により、逆方向遮断部7のスイッチング素子71が導通される。これにより、電気負荷9の電力回生が終了していれば、通常時の受電回路構成に迅速に復帰できる。以降、消費電力W4は、導通状態のスイッチング素子71を介して供給される。したがって、時刻t15から時刻t16までのわずかな時間帯に限り、ダイオード72の順方向抵抗の分だけ給電効率が低下する。
【0038】
なお、サーボモータ92の電力回生の継続時間がさらに長期化する場合もある。この場合、直流受電電圧VRは、閾電圧Vlmtと復帰電圧Vretとの間で昇降を繰り返す。また、スイッチング素子71は、遮断信号Scの発生および解消に対応して、遮断状態と導通状態とを繰り返す。
【0039】
以上説明したように、第1実施形態において、回生電力W1や回生電力W3の発生する継続時間の長短に関わらず、直流受電電圧VRは、閾電圧Vlmtを越えて上昇しない。したがって、整流平滑回路4および直流変圧回路5の回路構成部品が破損するおそれが生じない。
【0040】
(3.受電側装置1Rの構造上の特徴)
次に、受電側装置1Rの構造上の特徴について説明する。直流変圧回路5、過電圧検出部6、および逆方向遮断部7は、回路構成部品が1枚または複数枚の回路基板に実装されて構成される。かつ、過電圧検出部6および逆方向遮断部7の回路構成部品の未実装が可能となっている。さらに、整流平滑回路4も、回路構成部品が回路基板に実装されて構成される。
【0041】
非接触給電装置1を製造する際に、電気負荷9が電力回生機能を有して、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtまで上昇するおそれのある仕様の場合がある。この場合、生産管理者は、全部の回路構成部品を回路基板に実装する。また、電気負荷9の電力回生機能が無い場合や有っても小さく、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtまで上昇しない仕様の場合がある。この場合、生産管理者は、過電圧検出部6および逆方向遮断部7の回路構成部品を未実装とし、残りの回路構成部品を回路基板に実装する。逆方向遮断部7を未実装とする場合には、正側出力端子56と電気負荷9の一端とを直結する。このようにすれば、電気負荷9の電力回生機能の有無や大小に関わらず、同種の回路基板を使用できる。換言すれば、電気負荷9の種類や容量などに関係なく、同種の回路基板を使用できる。
【0042】
(4.第1実施形態の非接触給電装置1の態様および効果)
第1実施形態の非接触給電装置1は、非接触で交流電力を供給する非接触給電部2と、非接触給電部2に対向できるように配置されて、非接触で交流電力を受け取る非接触受電部3と、非接触受電部3が受け取った交流電力の交流電圧を変成して得た直流受電電圧VRを、直流負荷電圧VLに変圧して電気負荷9に供給するとともに、電気負荷9が電力を回生しているときに逆方向の昇圧動作となる直流変圧回路5と、直流変圧回路5の逆方向の昇圧動作によって上昇する直流受電電圧VRが過電圧を判定する所定の閾電圧Vlmtに達したことを検出して、遮断信号Scを発生する過電圧検出部6と、遮断信号Scが発生していない通常時に直流変圧回路5と電気負荷9の間を導通状態とし、遮断信号Scが発生したときに電気負荷9から直流変圧回路5に向かう逆方向を遮断状態にする逆方向遮断部7と、を備える。
【0043】
これによれば、直流変圧回路5は、電気負荷9が電力を回生しているときに逆方向の昇圧動作となるので、回生電力の逆方向への移送によって直流受電電圧VRが上昇し得る。ここで、過電圧検出部6は、直流受電電圧VRが閾電圧Vlmtに達した過電圧状態を検出して遮断信号Scを発生し、逆方向遮断部7は、遮断信号Scが発生したときに電気負荷9から直流変圧回路5に向かう逆方向を遮断状態にする。したがって、以降は回生電力の逆方向への移送が行われず、直流受電電圧VRは、閾電圧Vlmtを越えて上昇しない。これにより、回生電力に対する保護機能が働き、回路構成部品の破損のおそれが生じない。
【0044】
さらに、過電圧検出部6は、直流受電電圧VRが閾電圧よりも小さい所定の復帰電圧Vretまで下降したときに、遮断信号Scを解消する。これによれば、電気負荷9の電力回生が終了したときに、通常時の受電回路構成に迅速に復帰できる。
【0045】
さらに、逆方向遮断部7は、遮断信号Scが発生したときに直流変圧回路5から電気負荷9に向かう順方向の電力供給を可能としつつ、逆方向を遮断状態にする。これによれば、逆方向が遮断状態であっても、電気負荷9が消費電力W2および消費電力W4を必要とする場合に、遅滞なく順方向の電力供給を行える。
【0046】
さらに、逆方向遮断部7は、遮断信号によって遮断されるスイッチング素子71、および順方向の電力供給を可能とするダイオード72の並列接続からなる等価回路で表された電力用半導体素子である。これによれば、逆方向遮断部7を1個の電力用半導体素子で実現できるので、回路構成が簡素であるとともに、コストも低廉となる。
【0047】
さらに、第1実施形態の非接触給電装置1は、非接触受電部3が受け取った交流電力の交流電圧を整流および平滑して直流受電電圧VRに変成する整流平滑回路4をさらに備え、直流変圧回路5は、直流受電電圧VRを直流負荷電圧VLに降圧する直流降圧回路である。これによれば、受電側装置1Rの回路構成を簡易にできる。
【0048】
さらに、逆方向遮断部7は、電気負荷9の一端に接続されており、整流平滑回路4は、4個の整流ダイオードのブリッジ接続によって構成され、入力側に非接触受電部3が接続され、出力側に正側端子43および負側端子44をもつ全波整流回路41、ならびに、正側端子43と負側端子44の間に接続された平滑コンデンサ42を有し、直流変圧回路5は、第1端子(ドレインD)が正側端子43に接続され、第2端子(ソースS)が中間点55に接続されたハイサイド側スイッチング素子51、第1端子(ドレインD)が中間点55に接続され、第2端子(ソースS)が負側端子44および電気負荷9の他端に接続されたローサイド側スイッチング素子52、中間点55と逆方向遮断部7の間に接続されたチョークコイル53、ならびに、逆方向遮断部7および電気負荷9に対して並列接続された降圧側コンデンサ54を有する。これによれば、直流変圧回路5のローサイド側にダイオードを用いず、ローサイド側スイッチング素子52を用いたことにより、通常時の給電効率が高められる。
【0049】
さらに、第1実施形態の非接触給電装置1は、直流変圧回路5、過電圧検出部6、および逆方向遮断部7を回路基板に実装して構成し、かつ、過電圧検出部6および逆方向遮断部7の未実装を可能とする。これによれば、電気負荷9の電力回生機能が無い場合や有っても小さい場合に、過電圧検出部6および逆方向遮断部7を未実装とすることができる。したがって、電気負荷9の種類や容量に関係なく同種の回路基板を使用でき、多量使用によるコストメリットが生じる。
【0050】
(5.第2実施形態の非接触給電装置1A)
次に、第2実施形態の非接触給電装置1Aについて、第1実施形態と異なる点を主にして説明する。図4は、第2実施形態の非接触給電装置1Aの電気的な構成を示す回路図である。第2実施形態では、過電圧検出部6に代え、回生検出部93を備える。回生検出部93は、サーボアンプ91の機能の一部として実現されている。
【0051】
サーボアンプ91はサーボモータ92を制御しているので、回生検出部93は、サーボモータ92が電力回生を行う回生時間帯を把握できる。回生検出部93は、回生時間帯の開始時に遮断信号Srを発生して、逆方向遮断部7のスイッチング素子71を遮断制御する。これにより、回生電力の逆方向への移送が防止され、直流受電電圧VRの上昇が未然に防止される。
【0052】
また、回生検出部93は、回生時間帯の終了時に遮断信号Srを解消して、スイッチング素子71を導通制御する。これにより、スイッチング素子71を経由した順方向の消費電力の供給を行えるので、ダイオード72の順方向抵抗による供給効率の低下は生じない。なお、回生検出部93は、サーボアンプ91と別体で構成することもできる。例えば、回生検出部は、サーボモータ92の回転速度を検出して、速度微分値から回生時間帯を推定してもよい。
【0053】
第2実施形態の非接触給電装置1Aは、第1実施形態の過電圧検出部6に代え、電気負荷9が電力を回生しているときに遮断信号Srを発生する回生検出部93を備える。これによれば、回生時間帯に逆方向遮断部7のスイッチング素子71が遮断制御されるので、回生電力の逆方向への移送が防止され、直流受電電圧VRの上昇が未然に防止される。したがって、回生電力に対する保護機能が働き、回路構成部品の破損のおそれは生じない。
【0054】
(6.実施形態の応用および変形)
なお、本発明は、第1実施形態で説明した電磁誘導方式の非接触給電装置1に限定されない。つまり、本発明は、非接触で交流電力を給電する静電結合方式や電磁界共鳴方式の装置にも応用できる。また、整流平滑回路4や直流変圧回路5の回路構成は、適宜変形することができる。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:非接触給電装置 1A:非接触給電装置 2:非接触給電部 3:非接触受電部 4:整流平滑回路 41:全波整流回路 42:平滑コンデンサ 43:正側端子 44:負側端子 5:直流変圧回路 51:ハイサイド側スイッチング素子 52:ローサイド側スイッチング素子 53:チョークコイル 54:降圧側コンデンサ 6:過電圧検出部 7:逆方向遮断部 71:スイッチング素子 72:ダイオード 9:電気負荷 91:サーボアンプ 92:サーボモータ 93:回生検出部 VR:直流受電電圧 VL:直流負荷電圧 Vlmt:閾電圧 Vret:復帰電圧 Sc:遮断信号 Sr:遮断信号
図1
図2
図3
図4