(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857678
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/24 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
F02B37/24
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-54380(P2019-54380)
(22)【出願日】2019年3月22日
(62)【分割の表示】特願2015-544086(P2015-544086)の分割
【原出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-143633(P2019-143633A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年4月12日
(31)【優先権主張番号】102012022930.5
(32)【優先日】2012年11月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・メッツ
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−180864(JP,A)
【文献】
特開平10−037754(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/066130(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスターボチャージャ(1)であって、
−タービン(2)を有し、
・前記タービンが、流入ダクト(4)によって取り囲まれたタービンホイール(3)を有し、
−VTGカートリッジ(5)を有し、
・前記VTGカートリッジが、前記流入ダクト(4)に配置されかつ回転可能なベーンシャフト(9)によって前記ベーン軸受リング(7)に取り付けられる複数のベーン(8)を有し、前記ベーンシャフトがベーンレバー(10)に接続され、前記ベーンレバーのレバーヘッド(11)が、外側で前記ベーン軸受リング(7)を取り囲む調整リング(13)の関連の溝(12)内に係合し、これによって前記調整リング(13)の回転が前記ベーン(8)を回転させ、
−前記調整リング(13)と前記ベーン軸受リング(7)との間に半径方向軸受を有する排気ガスターボチャージャ(1)において、
−2つの最少流れストッパ(25、26)の各々が、可変タービンジオメトリーの内側レバーから最大の距離に配置されることを特徴とする排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記最少流れストッパ(25、26)がピンの形態であることを特徴とする請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記排気ガスターボチャージャ(1)において、前記半径方向軸受は、前記ベーンレバー(10)のレバーヘッド(11)と、前記調整リングの溝(12)の対向面(15)との間に形成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項4】
前記最少流れストッパ(25、26)と接触する前記調整リング(13)の凹部(29、30)が、平行のストッパ縁部(27、28)を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
排気ガスターボチャージャ(1)のVTGカートリッジ(5)であって、
−流入ダクト(4)を境界付けるディスク(6)及びベーン軸受リング(7)を有し、
−前記流入ダクト(4)に配置されかつ回転可能なベーンシャフト(9)によって前記ベーン軸受リング(7)に取り付けられる複数のベーン(8)を有し、前記ベーンシャフトがベーンレバー(10)に接続され、前記ベーンレバーのレバーヘッド(11)が、外側で前記ベーン軸受リング(7)を取り囲む調整リング(13)の関連の溝(12)内に係合し、これによって前記調整リング(13)の回転が前記ベーン(8)を回転させ、
−前記調整リング(13)を前記ベーン軸受リング(7)に半径方向で取り付けるために前記ベーンレバー(10)が半径方向軸受を形成するVTGカートリッジ(5)において、
−2つの最少流れストッパ(25、26)の各々が、可変タービンジオメトリーの内側レバーから最大の距離に配置されることを特徴とするVTGカートリッジ(5)。
【請求項6】
前記最少流れストッパ(25、26)がピンの形態を有し、
前記最少流れストッパ(25、26)と接触する前記調整リング(13)の凹部(29、30)が、平行のストッパ縁部(27、28)を有することを特徴とする請求項5に記載のVTGカートリッジ(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の排気ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
このような排気ガスターボチャージャの場合、ガイドベーンが調整リングによって調整される可変タービン形状(VTG)が設けられる。可変タービン形状を有する前記タイプの排気ガスターボチャージャが車両に使用されるとき、エンジンの寿命にわたって安定したままである可能な限り最低の排気ガス処理量(「最少流れ処理量」)の精密な較正を達成することが著しく重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この点に関して、本発明の目的は、ターボチャージャの寿命にわたって安定したままである可能な限り最低の排気ガス処理量の精密な較正を可能にする、請求項1の前文に示したタイプの排気ガスターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0005】
しかし、本発明の文脈内で実施された試験によれば、可変タービン形状を通した処理量は、ストッパの用意のみでなく、調整リングの取付け、特に前記取付けの半径方向の遊びの大きさにも左右されることが示されている。
【0006】
したがって、本発明によれば、2つの最少流れストッパが使用され、これらのストッパは、可変タービン形状の内側レバーから可能な限り最大の距離に好ましくは配置され、かつ最少流れストッパの位置における調整リングの角度位置が、小さな
ラジアル振れのために正確に規定されるという利点をもたらし、調整リングの軸受のいかなる摩耗も、可能な限り最低の排気ガス処理量(最少流れ処理量)に対してもはや影響を有しない。
【0007】
従属請求項は、本発明の有利な発展形態を含む。
【0008】
本発明に従って提供される2つの最少流れストッパは、最少流れストッパにおいて、調整リングがその運動自由度に関して確定的な収縮を受けるように平行のストッパ縁部を有することが好ましい。
【0009】
この場合、残留するいかなる他の可能な変位も、処理量の変化をもはやもたらさず、あるいは処理量の大きな変化をもはやもたらさない。
【0010】
請求項4及び5は、独立して市販することができる対象物として、本発明によるVTGカートリッジを規定している。
【0011】
本発明のさらなる詳細、特徴及び利点は、図面を参照して例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による排気ガスターボチャージャの大幅に単純化した概略図である。
【
図3】
図2によるVTGカートリッジの拡大部分図である。
【
図4】
図3に対応するVTGカートリッジの部分図(ストッパは見えない)である。
【
図5】本発明によるVTGカートリッジの下からの図面である。
【
図6】ストッパ縁部の平行の構造を説明するために、
図5に対応する本発明によるVTGカートリッジの下からの図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、チャージャ回転軸線Lを有する本発明による排気ガスターボチャージャ1の大幅に単純化した基本概略図を示している。
【0014】
排気ガスターボチャージャ1はまた、いわゆるVTGカートリッジ5が設けられる流入ダクト4によって取り囲まれたタービンホイール3を備えるタービン2を有する。このVTGカートリッジ5について、
図2〜
図4を参照して以下に詳細に説明する。
【0015】
当然、排気ガスターボチャージャ1はまた、排気ガスターボチャージャの他のすべての共通部分、例えば、軸受ハウジング26に回転可能に取り付けられかつ一方の端部でタービンホイール3を支承し、他方の端部でコンプレッサ27のコンプレッサホイール28を支承するロータ25を有する。これらの部分は、本発明の原理を説明するために重要でないので、同様に、
図1に大幅に単純化した概略形態でのみ示されている。
【0016】
上述したように
図2〜
図4を参照して以下に詳細に説明するVTGカートリッジは、同様に、大幅に単純化した概略形態で示されている。
【0017】
VTGカートリッジは、排気ガスをタービンホイール3に通過させるための流入ダクト4をベーン軸受リング7とディスク6との間で境界付ける構造ユニットを意味すると理解される。さらに、このタイプのVTGカートリッジは、流入ダクト4に配置される複数のベーンを有し、これらのベーンについて、
図4は、対応する参照番号を有するすべてのベーン軸受の代表例として、1つのベーンを参照番号8で示している。ベーン8は、ベーン軸受リング7において閉位置と開位置との間で回転可能に移動させることができる。このために、ベーン8は、各々が回転軸線を有するベーンシャフト9を有する。次に、ベーンシャフト9はベーンレバー10に接続され、これらの内、2つのベーンレバーが各々の場合に
図2の参照番号10で示されている。
図2が示すように、そこに示された実施形態は、好ましくは折り曲げられた各々の場合に同一構造のこのような10のベーンレバーを有する。
【0018】
各々のベーンレバー10は、調整リング13の関連の溝12内に係合するレバーヘッド11を有する。
図2は、この点に関して、調整リング13が外側で、すなわちベーン軸受リング7の外周に沿ってベーン軸受リングを取り囲むことを示している。
【0019】
調整リング13を半径方向に取り付けるために、ベーンレバー10によって形成される半径方向軸受が設けられる。このために、ベーンレバー10は転がりレバーとして形成され、これらのレバーヘッド11は調整リング13の溝12に支持される。
【0020】
図2及び
図3では、レバーヘッド11には、各々が丸い形状を有する端面14が設けられる。これらの丸い端面14は、それぞれ関連の溝12の対向面15と転がり接触し、この転がり接触は、
図3の矢印KWで示されている。
【0021】
図2及び
図3に示した実施形態では、溝の対向面15は、各々の場合に平坦形状を有する。
【0022】
図3の2つの別の矢印KS
1及びKS
2は、レバーヘッド11と、それぞれ関連の溝12との間の横方向接触点を示している。これらの接触点KS
1及びKS
2は、レバーヘッド11の側壁16及び17と、溝12の対応する関連の側壁18及び19との間に現れ、これらの側壁18及び19の各々は対向面15に隣接する。
図2に示したように、溝12の各々は後壁24によって閉じられ、次に、この後壁24は側壁18及び19に隣接し、対抗面15に対して略平行に延びる。
【0023】
図4は、好ましくは折り曲げられたベーンレバー10が次に転がりレバーの形態である実施形態を示しており、転がりレバーのレバーヘッド11は溝12に支持されるが、この支持は、
図4から詳細に明らかなように、横方向の転がり軸受支点KW
1及びKW
2に設けられる。レバーヘッド11のこれらの転がり軸受支点KW
1及びKW
2は、
図4から同様に明らかなように溝12の縁部領域20、21に支持される。
【0024】
さらに、この実施形態のレバーヘッド11の各々は中央凹部23を有し、この中央凹部23内に調整リング13の関連の突起部22が係合し、この結果、ベーンを調整するために力が伝達される。
【0025】
両方の実施形態に共通することは、ベーンレバー10の各々が、好ましくは折り曲げられたレバーの形態であり、打ち抜かれた又は形成された部品の形態で製造できることである。
【0026】
さらに、両方の実施形態では、調整リング13はベーン軸受リング7を介して軸方向に取り付けられる。このために、ベーン軸受リング7は、調整リング13に位置する軸受セグメント24(
図2参照)を有する。
【0027】
図5は、本発明によるVTGカートリッジ5の下からの斜視図を示しており、前記図面は、カートリッジ5を通して可能な限り最低の処理量を設定するための2つのストッパ25、26の配置を示しており、前記ストッパ25及び26は、通常「最少流れストッパ」と称される。
【0028】
図5に示したように、最少流れストッパ25及び26はベーン軸受リング7に配置される。ベーン軸受リング7の中心点M
7から最少流れストッパの中心点M
25及びM
26に観測されるように、前記ストッパ25及び26は互いに角度αを囲み、この角度は、構造的な条件又は他の要求に従って設計の観点から自由に選択することが可能である。
【0029】
図6に示した別の実施形態では、調整リングのストッパ縁部27、28は、それらが最少流れストッパ25、26と接触するとき、調整リング13の大きな
ラジアル振れが発生されず、したがって、ベーン軸受リング7に対する同軸の位置が維持されるように平行であるように形成される。この場合、ストッパ縁部27及び28は、
図6から詳細に見ることできるように、最少流れストッパ25及び26それぞれと接触する調整リング凹部29及び30のそれらのストッパ縁部である。前記ストッパ縁部27及び28の平行の構造は、
図6の平行線P
27及びP
28によって示されている。
【0030】
上述の開示に加えて、この場合、本発明の開示を補完するために
図1〜
図5の本発明の例示的な図面が明示的に参照される。
【符号の説明】
【0031】
1 排気ガスターボチャージャ
2 タービン
3 タービンホイール
4 流入ダクト
5 VTGカートリッジ
6 ディスク
7 ベーン軸受リング
8 ベーン
9 ベーンシャフト
10 ベーンレバー
11 レバーヘッド
12 溝
13 調整リング
14 丸い端面
15 対向面
16、17 側壁
18、19 側壁
20、21 縁部領域
22 突起部
23 凹部
24 軸受セグメント
25、26 最少流れストッパ
27、28 ストッパ縁部
29、30 調整リング凹部
KS
1及びKS
2 ベーンを調整するための横方向接触点
KW 転がり軸受用の接触点
KW
1及びKW
2 転がり軸受用の接触点
L チャージャの長手方向軸線
M
7 ベーン軸受リングの中心点
M
25、
26 最少流れストッパの中心点
P
27、P
28 平行線