(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857703
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】摩擦調整機構との計時器の表示用可動部品
(51)【国際特許分類】
G04B 13/02 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
G04B13/02 C
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-214071(P2019-214071)
(22)【出願日】2019年11月27日
(65)【公開番号】特開2020-95030(P2020-95030A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2019年11月27日
(31)【優先権主張番号】18212241.6
(32)【優先日】2018年12月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ロシャ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ツァウク
【審査官】
細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−155587(JP,A)
【文献】
特表2017−503181(JP,A)
【文献】
特開2014−153367(JP,A)
【文献】
特開2016−024201(JP,A)
【文献】
実開昭56−084770(JP,U)
【文献】
スイス国特許出願公開第00708553(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 13/02,13/00
G04B 17/32,17/34
G04B 19/04
G04B 35/00
G04D 1/04
G04D 7/02−7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弾性細長材(4)を有する計時器の表示用可動部品(1)であって、
前記弾性細長材(4)は、表示軸線(DA)に近い静止位置に戻るように付勢され、ムーブメント(100)又は計時器用機構の駆動用可動部品(3)が備えるアーバー(2)と前記表示軸線(DA)のまわりに摩擦連係するように構成されており、
前記表示用可動部品(1)は、フランジ(5)を有し、このフランジ(5)には、各弾性細長材(4)に対向するように開口(6)があり、
この開口(6)は、操作者によって操作される道具又はロボット的マニピュレーターによって操作される道具が挿入されガイドされるように構成しており、
これによって、前記道具が、前記弾性細長材(4)を静止位置から離し、前記表示用可動部品(1)が前記アーバー(2)を通すことが可能なように十分に前記弾性細長材(4)が離れているときに前記表示用可動部品(1)に前記アーバー(2)を挿入することを可能にし、前記弾性細長材(4)が前記アーバー(2)と摩擦連係しており前記道具が前記弾性細長材(4)と接しないようになったときに前記アーバー(2)上のすべての前記弾性細長材(4)の摩擦値が一定であることを確実にし、
前記表示用可動部品(1)が備える前記弾性細長材(4)はすべて、共通の一体化された弾性構造(7)の一部であり、
前記一体化された弾性構造(7)は、取り外し可能であり固定位置にて前記フランジ(5)と組み付けられるように構成しているか、又は、前記フランジ(5)に対して回転可能にマウントされるように構成しており、
前記一体化された弾性構造(7)は、前記フランジ(5)が備える相補的インデキシング要素(9)と係合するように構成しているインデキシング要素(8)を有し、
前記弾性細長材(4)が前記アーバー(2)と摩擦連係しており、そして前記道具が前記弾性細長材(4)に接していないときに前記インデキシング要素(8)と前記相補的インデキシング要素(9)が一体的に回転するようにする
ことを特徴とする表示用可動部品(1)。
【請求項2】
前記表示用可動部品(1)は、複数の前記弾性細長材(4)を有し、
前記弾性細長材(4)は、前記弾性細長材が前記アーバー(2)に与える前記表示軸線(DA)を中心とする半径方向の力の前記表示軸線(DA)上における合力がゼロであるように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項3】
前記表示用可動部品(1)は、前記表示軸線(DA)に対して対称に構成している2つの前記弾性細長材(4)を有し、
前記開口(6)は、前記表示軸線(DA)に対して対称なオブロング状の溝である
ことを特徴とする請求項2に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項4】
前記開口(6)は、前記表示軸線(DA)を通り抜ける直線に沿ったオブロング状の溝(61、62)である
ことを特徴とする請求項3に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項5】
前記一体化された弾性構造(7)は、回転可能に前記フランジ(5)にマウントされ、前記弾性細長材(4)の前記表示軸線(DA)を中心とする半径方向の広がりを大きくすることができるように構成しており、
前記一体化された弾性構造(7)は、前記フランジ(5)が備える相補的インデキシング要素(9)と係合するように構成しているインデキシング要素(8)を有し、
前記弾性細長材(4)が前記アーバー(2)と摩擦連係し、そして前記道具が前記弾性細長材(4)に接していないときに前記インデキシング要素(8)と前記相補的インデキシング要素(9)が一体的に回転するようにし、
前記フランジ(5)には、各弾性細長材(4)に対向するようにさらにリリーフ部(11)があり、
このリリーフ部(11)は、前記一体化された弾性構造(7)に対する前記弾性細長材(4)の取り付け点(12)又は固定点と、前記表示軸線(DA)の近くの前記弾性細長材(4)にある摩擦領域(13)との間にて、前記弾性細長材(4)の位置に静止状態となるように配置されるように構成しており、
前記フランジ(5)と前記一体化された弾性構造(7)の間の相対的角位置に応じて前記弾性細長材(4)が与える当接力を変える
ことを特徴とする請求項1に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項6】
各弾性細長材(4)は、前記フランジ(5)に又は前記フランジ(5)上に配置された共通の一体化された弾性構造(7)に取り付けられるための少なくとも1つの固定部(41)を有し、
この固定部(41)は、前記表示軸線(DA)から離れており、これによって、前記表示軸線(DA)の近くの前記表示軸線(DA)を中心とする半径方向における前記弾性細長材(4)の最大限の運動が可能になる
ことを特徴とする請求項1に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項7】
各弾性細長材(4)は、その固定部(41)に対してカンチレバー構成にされ、
各弾性細長材(4)には、その遠位端又はその遠位端の近くにおいて、前記アーバー(2)と摩擦連係するように構成している摩擦領域(13)がある
ことを特徴とする請求項6に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項8】
前記開口(6)には、道具の第1の端の挿入を可能にするように構成している少なくとも第1のガイド貫通穴(61)及び道具の第2の端の挿入を可能にするように構成している少なくとも第2のガイド貫通穴(62)があり、
前記フランジ(5)と前記少なくとも1つの弾性細長材(4)の間の少なくとも1つの相対的角位置及び前記少なくとも1つの弾性細長材(4)の静止位置において、前記少なくとも1つの弾性細長材(4)は、前記第1のガイド貫通穴(61)及び/又は前記第2のガイド貫通穴(62)と少なくとも部分的に重なり合っており、
これによって、道具の前記第1の端と前記第2の端の挿入及び/又は前記フランジ(5)と各弾性細長材(4)の間の相対移動の間に、前記少なくとも1つの弾性細長材(4)が前記表示軸線(DA)から離される
ことを特徴とする請求項1に記載の表示用可動部品(1)。
【請求項9】
請求項1に記載の表示用可動部品(1)を少なくとも1つ有する表示調整アセンブリー(200)であって、
当該表示調整アセンブリー(200)は、手動的に又はロボット的マニピュレーターによって用いられる少なくとも1つの道具(201)を有し、
前記道具は、前記少なくとも1つの表示用可動部品(1)に形成された前記開口(6)と相補的な形態で連係する端(202)を有し、
前記少なくとも1つの表示用可動部品(1)には、前記少なくとも1つの表示用可動部品(1)に前記弾性細長材(4)が1つのみあるときに単一の前記弾性細長材(4)に対向する開口とは離れている開口(6)がある
ことを特徴とする表示調整アセンブリー(200)。
【請求項10】
アーバー(2)を有する少なくとも1つの駆動用可動部品(3)を有する計時器用機構(300)であって、
請求項1に記載の表示用可動部品(1)及び/又は請求項9に記載の表示調整アセンブリー(200)と連係するように構成している
ことを特徴とする機構(300)。
【請求項11】
少なくとも1つの前記アーバー(2)には、前記表示軸線(DA)の方向における前記表示用可動部品(1)の縦方向の遊びを制限する遊び制限手段を形成する溝又は肩部がある
ことを特徴とする請求項10に記載の機構(300)。
【請求項12】
請求項1に記載の表示用可動部品(1)を少なくとも1つ有する
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(100)。
【請求項13】
請求項10に記載の機構(300)を少なくとも1つ、及び/又は請求項1に記載の表示用可動部品(1)を少なくとも1つ、及び/又は請求項9に記載の表示調整アセンブリー(200)を少なくとも1つ有する
ことを特徴とする携行型時計(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弾性細長材を有する計時器の表示用可動部品に関し、この弾性細長材は、表示軸に近い平穏位置に戻されて、前記表示軸のまわりにてムーブメント又は計時器用機構の駆動用可動部品が備えるアーバーと摩擦駆動するように連係するように意図されている。
【0002】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記表示用可動部品を有する表示調整アセンブリーに関する。
【0003】
本発明は、さらに、前記表示用可動部品及び/又は前記表示調整アセンブリーと連係するように構成しているアーバーを有する少なくとも1つの駆動用可動部品を有する計時器用機構に関する。
【0004】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記機構及び/又は少なくとも1つの前記表示用可動部品及び/又は1つの前記表示調整アセンブリーを有する計時器用ムーブメントに関する。
【0005】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記ムーブメント及び/又は少なくとも1つの前記機構及び/又は1つの前記表示用可動部品及び/又は少なくとも1つの前記表示調整アセンブリーを有する、計時器、特に、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、に関する。
【0006】
本発明は、計時器の表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0007】
インデント車や摩擦車のような計時器における通常の摩擦システムには、以下のようないくつかのよく知られている課題がある。
− 摩擦トルクを制御することが難しい。
− 時間が経過するにしたがって摩擦トルクの安定性が落ちる。
− 組み付けと分解が難しい。
【0008】
SEIKO INSTRUMENTS INC.による日本国特許出願JP2018155587Aは、位置を摺動可能に調整可能な可動部品を開示しており、この可動部品は、実質的に半径方向のアームを担持している環状胴体を有し、同じアーバーをその異なる軸方向の位置において弾性的にクランプするように構成している。
【0009】
ETA Manufacture Horlogere Suisseによる欧州特許出願EP2957963A1は、いくつかの部分によって構成している計時器の可動部品を開示しており、この可動部品はアーバーを有し、このアーバーには、第1の回転軸のまわりに、単一の軸方向の位置にあるプレートによって構成している第2の部品を受けるように構成しているハウジングがある。このプレートには、第2の回転軸を基準とする周部面がある。アーバーには、このハウジングの両側において、前記第1の回転軸の方向に、アーバーに当接するようにプレートを保持するように構成している軸方向の当接面がある。このプレートは、第2の回転軸に対して半径方向に弾力がある第1のアームと、及び堅固である又は第2の回転軸に対して半径方向に弾力がある少なくとも第2のアームとを有する。この第1の弾性アーム及び第2のアームはともに、軸方向の当接面の近くのアーバーにある半径方向の支持面をクランプするように構成しているクランプを形成する。このアーバーは、各第1の弾性アーム、そして、プレートにあれば各第2の弾性アーム、を半径方向に押し戻すように構成しているエントリー傾斜ランプを有し、これによって、プレートをアーバー上に配置することを可能にする。
【0010】
ETA Manufacture Horlogere Suisseによる欧州特許出願EP2765462A1は、車の回転軸に対して非ゼロの非平衡がある部品を駆動する耐衝撃性計時器用車を開示している。この車は、この車を回転軸のまわりに回転可能にガイドするためのアーバーと、この車のフランジ上に配置された駆動手段とを有する。この車は、アーバーとフランジの間に少なくとも1つのフレキシブル要素を有する。フランジには、円筒状の肩部があり、この円筒状の肩部は、アーバーにある相補的な円筒状の肩部とセンタリング目的で当接連係して、アーバーとの駆動手段の完全な同心性を確実にする。
【0011】
ETA Manufacture Horlogere Suisseによる欧州特許出願EP2977829A1は、制動用可動部品を備える計時器アセンブリーを開示している。この制動用可動部品は、アーバーに回転可能にマウントされた車の第2の面と回転ガイダンス目的で連係する第1の面を有するアーバーを有し、第1の面又は第2の面はそれぞれ、アーバーで又は前記車と一体化された、少なくとも第1の弾性戻し手段の作用が与えられる少なくとも第1のアーム上に、少なくとも1つの制動用の面を有し、これは、第2の面又は第1の面に対して回転軸を中心とした半径方向の力をはたらかせるように構成している。この制動用可動部品のアセンブリーは、前記制動用の表面によって第2の面又は第1の面に対して与えられる摩擦の離散的な値を調整するビルトインされた手段を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、計時器用ムーブメントにおいて、任意の表示用可動部品、特に、時間をセットするためのもの、を調整するための、摩擦システムを備える調整機構を定めることを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このために、本発明は、請求項1に記載の摩擦調整機構を備える計時器の表示用可動部品に関する。
【0014】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記表示用可動部品を有する表示調整アセンブリーに関する。
【0015】
本発明は、さらに、前記表示用可動部品及び/又は前記表示調整アセンブリーと連係するように構成しているアーバーを有する少なくとも1つの駆動用可動部品を有する計時器用機構に関する。
【0016】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記機構及び/又は少なくとも1つの前記表示用可動部品及び/又は1つの前記表示調整アセンブリーを有する計時器用ムーブメントに関する。
【0017】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記ムーブメント及び/又は少なくとも1つの前記機構及び/又は1つの前記表示用可動部品及び/又は少なくとも1つの前記表示調整アセンブリーを有する計時器、特に、携行型時計、に関する。
【0018】
添付図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことで、本発明の他の特徴及び利点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】互いに組み付けられたフランジ及び一体化された弾性ばね構造を有する本発明に係る表示用可動部品の概略斜視図である。
【
図2】駆動用可動部品のアーバーと整列している表示用可動部品の部品の概略分解斜視図である。
【
図3】一体化された弾性ばね構造を上から見た概略図である。
【
図5】
図1と同様な形態で、この表示用可動部品と連係して、その表示用可動部品が備える弾性細長材を離すように構成している道具を示している。
【
図6】
図1と同様な形態で、細長材の離れた位置において、表示用可動部品との
図5の道具の連係を示している。
【
図7】同じ連係位置における
図6の部品の側面図である。
【
図8】
図7と同様な図であり、駆動用可動部品のアーバーに近づいている、形成されたアセンブリーを示している。
【
図9】駆動用可動部品のアーバーをクランプする表示用可動部品の断面図である。
【
図10】
図4の変種であり、細長材どうしを離すための付加的なリリーフ部と、及び一体化された弾性ばね構造との相対的インデキシングのための要素とを備える。
【
図11】
図4の変種であり、細長材どうしを離すための付加的なリリーフ部と、及び一体化された弾性ばね構造との相対的インデキシングのための要素とを備える。
【
図12】
図1と同様な形態で、細長材がカンチレバー構成とはなっておらず、フランジの周部に近いそれらの2つの端の間で張っている。
【
図13】駆動用可動部品を有する機構を備えたムーブメントを有する携行型時計を表すブロック図であり、本発明に係る表示用可動部品を有する表示調整アセンブリー。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、計時器用ムーブメントにおいて調整を行うための摩擦システムに関し、特に(これに限定されない)、時間をセットするための摩擦システムに関する。
【0021】
本発明は、特に、少なくとも1つの弾性細長材4を有する計時器の表示用可動部品1に関する。この弾性細長材4は、表示軸DAの近くの平穏位置に戻されて、前記表示軸DAのまわりにて摩擦駆動するように、ムーブメント100又は計時器用機構の駆動用可動部品3が備えるアーバー2と連係するように意図されている。
【0022】
本発明によると、表示用可動部品1は、フランジ5を有し、このフランジ5には、各弾性細長材4に対向するように開口6があり、この開口6は、操作者によって操作される道具(ピンセットなど)又はロボット的マニピュレーターによって操作される道具の挿入とガイドのために形成されており、これによって、この道具が、弾性細長材4を平穏位置から別の状態に移行させて、表示用可動部品1をアーバー2に通すことができるように十分に弾性細長材4が離れているときに、表示用可動部品1にアーバー2を挿入し、弾性細長材4がアーバー2と摩擦連係しており前記道具が弾性細長材4と接していないときに、アーバー2上のすべての弾性細長材4の摩擦値が一定であることを確実にすることができる。
【0023】
特に、表示用可動部品1は、複数の弾性細長材4を有し、これらの弾性細長材4は、アーバー2に与える半径方向の力の表示軸DAにおける合力がゼロであるように構成している。
【0024】
特に、図に示している実施形態(これに限定されない)に示しているように、表示用可動部品1は、表示軸DAに対して対称に構成している2つの弾性細長材4を有し、開口6は、表示軸DAに対して対称なオブロング状の溝である。特に、これらの開口6は、表示軸DAを通り抜ける直線に沿ったオブロング状の溝61、62である。
【0025】
特に、表示用可動部品1が備える弾性細長材4はすべて、フランジ5に回転可能にマウントされるように、又はフランジ5とともに固定された固定位置に組み付けられ、又はフランジ5を形成するように構成している共通の一体化された弾性構造7の一部である。
【0026】
特に、一体化された弾性構造7は、フランジ5に回転可能にマウントされて、表示軸DAに対する弾性細長材4の半径方向の広がりを大きくすることを可能にするように構成しており、インデキシング要素8を有する。これらのインデキシング要素8は、フランジ5が備える相補的インデキシング要素9と連係して、弾性細長材4がアーバー2と摩擦連係しているとき、及び道具200が弾性細長材4に接しなくなったときに、それらのインデキシング要素8が一体的に回転するように構成している。
【0027】
特に、
図10に示しているように、フランジ5には、各弾性細長材4に対向するようにリリーフ部11がある。このリリーフ部11は、一体化された弾性構造7に対する取り付け点又は固定点と、表示軸DAの近くの弾性細長材4にある摩擦領域13との間にて、弾性細長材4上に平穏状態となるように配置されるように構成しており、これによって、フランジ5と一体化された弾性構造7との間の相対的角位置に応じて弾性細長材4が発生させる当接力を変える。
【0028】
特に、図に示しているように、共通の一体化された弾性構造7は、取り外し可能であり、固定位置にてフランジ5と組み付けられるように構成している。この固定位置を、特定の相対的角位置において、ピンなどによって、インデキシング要素81と相補的インデキシング要素91との連係を通してインデキシングすることができる。
【0029】
図示していない特定の実施形態において、共通の一体化された弾性構造7は、フランジ5を形成する。
【0030】
特に、弾性細長材4はそれぞれ、フランジ5、又はフランジ5上に配置された共通の一体化された弾性構造7に、取り付けられるための少なくとも1つのアタッチメント41を有し、このアタッチメント41は、表示軸DAを中心とする半径方向における表示軸DAの近くの運動をする弾性細長材4の最大限の運動を可能にするように、表示軸DAから離れている。
【0031】
図1〜11に示している実施形態(これに限定されない)において、弾性細長材4はそれぞれ、そのアタッチメント41に対するカンチレバー構成にされ、その遠位端において又はその遠位端の近くにおいて、アーバー2と摩擦連係するように構成している摩擦領域13を有する。
【0032】
特に、開口6には、道具の第1の端の挿入を可能にするように構成している少なくとも第1のガイド貫通穴61と、及び道具の第2の端の挿入を可能にするように構成している少なくとも第2のガイド貫通穴62とがある。そして、フランジ5と前記少なくとも1つの弾性細長材4の間の少なくとも1つの相対的角位置及び少なくとも1つの弾性細長材4の平穏位置において、前記少なくとも1つの弾性細長材4は、第1のガイド貫通穴61及び/又は第2のガイド貫通穴62に対して少なくとも部分的に重なり合い、これによって、前記道具の第1の端と第2の端を挿入している間に及び/又はフランジ5と各弾性細長材4の間の相対回転の間に、その挿入の後にユーザーによって前記道具が行う回転の影響の下で、表示軸DAから離される。
【0033】
図12は、2つの弾性細長材4を有する別の実施形態を示しており、その各弾性細長材4は、その2つの端42及び43において保持され、それらの動作位置において張っている。特に、これらの2つの細長材4は、表示軸DAに対して対称である。特に、これらの2つの細長材は、取り付け点に近い第1の区画においては互いに平行となっており、その次に、それらの中心部において実質的に表示軸DAの方に集まっている。
【0034】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記表示用可動部品1を有する表示調整アセンブリー200に関する。特に、この調整アセンブリー200は、手動的に又はロボット的マニピュレーターを用いて使用する少なくとも1つの道具201を有し、これは、前記少なくとも1つの表示用可動部品1に形成された開口6と相補的な形態で連係するように構成している端202を有する。前記少なくとも1つの表示用可動部品1に弾性細長材4が1つだけしかない場合には、その表示用可動部品1には、単一の弾性細長材4に対向する開口とは離れた開口6がある。
【0035】
本発明は、さらに、前記表示用可動部品1及び/又は前記表示調整アセンブリー200と連係するように構成しているアーバー2を有する少なくとも1つの駆動用可動部品3を有する計時器用機構300に関する。特に、少なくとも1つのアーバー2には、表示軸DAの方向にて表示用可動部品1の縦方向の遊びを制限する遊び制限手段を形成する溝又は肩部がある。
【0036】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記機構300及び/又は少なくとも1つの前記表示用可動部品1及び/又は少なくとも1つの前記表示調整アセンブリー200を有する計時器用ムーブメント100に関する。
【0037】
本発明は、さらに、少なくとも1つの前記ムーブメント100及び/又は少なくとも1つの前記機構300及び/又は少なくとも1つの前記表示用可動部品1及び/又は少なくとも1つの前記表示調整アセンブリー200を有する計時器500、特に、携行型時計、に関する。
【0038】
短く書くと、当該機構は、任意の表示用可動部品のために設計されており、時車の摩擦において特に利用可能である。本発明は、改善された筒かなを提供する。
【0039】
一体化された弾性ばね構造7は、特に、フランジ5と一体的に、そして、フランジ5の下に、マウントされる。
【0040】
一体化された弾性構造7とフランジ5によって形成されるアセンブリーは、ピンセットのような手動的な道具を用いて又は自動道具200によって、駆動用可動部品3のアーバー2にマウントされる。道具の端又は道具が備えるピン202の端は、フランジ5の開口6内にポジショニングされ、このフランジ5は、弾性細長材4によって形成される一体化された弾性ばね構造7のアームを離す。一体化された弾性構造7とフランジ5によって形成されるアセンブリーがアーバー2上にポジショニングされ、道具が取り除かれる。したがって、ばねのアームは、動作状態になり、アーバー2に対して摩擦トルクを発生させる。分解時にも、当該道具が同じ形態で用いられる。
【0041】
摩擦トルクは、ばねアームの作用量又はそれらの寸法構成(幅/厚み)を大きくしたり小さくしたりすることによって、容易に調整することができる。
【0042】
一体化された弾性構造7及びフランジ5によって形成されるアセンブリーを軸方向に制限するために、アーバー2に肩部を作ることは有利である。
【0043】
本発明には、以下のような様々な利点がある。
− 組み付けを力づくで行わず塑性変形させずに行うこと
− サイジングの計算やシミュレーションが容易であること
− 摩擦トルクを容易に制御可能であること
− 時間が経過しても安定性が良好であること
【符号の説明】
【0044】
1 表示用可動部品
2 アーバー
3 駆動用可動部品
4 弾性細長材
5 フランジ
6 開口
7 一体化された弾性構造
8 インデキシング要素
9 相補的インデキシング要素
11 リリーフ部
12 取り付け点
13 摩擦領域
41 アタッチメント
61 第1のガイド貫通穴
62 第2のガイド貫通穴
100 計時器用ムーブメント
200 表示調整アセンブリー
201 道具
300 計時器用機構
500 携行型時計
61、62 オブロング状の溝
DA 表示軸