(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような携帯用情報機器の筐体は、その小型化および薄型化が進んでおり、特にノート型PCの場合、いわゆる大画面化・ナローベゼル化によって枠体が細くなりつつある。従ってアンテナやスピーカをディスプレイ筐体に設けることが困難になっており、これらを本体筐体に設けることが検討されている。
【0006】
アンテナは、安定したグランドや他の電子部品に対する安定した電磁波シールド性能を確保することが望ましい。特に、アンテナを本体筐体に設ける場合には、CPUなどの電磁ノイズ源から遮蔽するために専用のシールド壁を設けることが望ましいが、シールド壁はある程度のスペースを要する。アンテナは電波の送受信性能を考慮すると筐体の端部に設けることが望ましい。アンテナの構成要素のうちアンテナ素子は筐体と一体化すると送受信性能が向上するとともにスペース効率がよい。
【0007】
スピーカについては音声品質を考慮して高音再生用と低音再生用とが設けられることがあり、かつステレオ音声を再生するために左右に設けられることがある。つまりノート型PCでは4つのスピーカが設けられる場合がある。このうち低音再生用のスピーカでは、バックチャンバとして機能する大きな空洞部を確保することが望ましいがそれだけスペースを要する。
【0008】
すなわち、アンテナとスピーカとはそれぞれある程度のスペースを必要とし、しかも両者とも筐体の左右端に設けることが望ましいことから設置箇所が重複してしまい、特に、スピーカ空洞部とアンテナのシールド壁とがレイアウト上で干渉しやすい。これを解決するためにはアンテナとスピーカとを一体化することが考えられる。しかしながらアンテナとスピーカとを単純に一体化すると、スピーカ(特に低音用スピーカ)は音声再生に振動を伴うため、該振動がアンテナ素子を介して筐体に伝搬してユーザに違和感を与え、または音響ノイズを発生する懸念がある。また、レイアウト上の干渉回避のためにスピーカの空洞部を小さくすることや、またはシールド壁を省略することも好ましくない。
【0009】
つまり、スピーカは筐体に対して緩衝材を介して固定することが望ましいが、アンテナ素子は筐体と一体することが望ましいためアンテナとスピーカとを単純に一体化することは不都合である。また、スピーカのバックチャンバの空間部を確保するということは難しい。
【0010】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、筐体に対する振動伝搬を抑制し、スピーカのバックチャンバ容量を確保し、さらにアンテナに対する電磁ノイズの影響を抑制することのできる携帯用情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る携帯用情報機器は、携帯用情報機器であって、筐体と、前記筐体内の縁に設けられたアンテナ素子と、前記筐体内に配置され、前記アンテナ素子と前記筐体の内部に配置される電子部品との間に設けられ、前記筐体に対して浮動的に支持されるスピーカボックスと、前記スピーカボックス内に設けられたスピーカユニットと、を備え、前記スピーカボックスにおける前記電子部品と対向する側面の全面に電磁波ノイズをシールド可能な材料で形成されたシールド部材が設けられている。
【0012】
スピーカボックスは浮動的に支持されることから筐体に対する振動伝搬を抑制することができる。シールド部材は電子部品と対向する側面に設けられることからスピーカボックスとシールド部材とに干渉はなく、スピーカのバックチャンバ容量を確保することができ、さらにアンテナに対する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0013】
FPCで構成されるアンテナ回路を備え、前記アンテナ回路は、前記アンテナ素子に対して剛性的に固定されていてもよい。アンテナ回路はスピーカボックスと別体であるからアンテナ素子と剛性的に固定しても、筺体に振動を与えない。
【0014】
前記スピーカボックスの上面及び下面と前記筐体との間に設けられ、前記シールド部材と電気的に接続する導電性緩衝材をさらに有し、前記筐体の少なくとも前記導電性緩衝材と接触する部分は導電性材料で形成され、前記筐体の少なくとも前記導電性緩衝材と接触する部分と前記シールド部材と前記導電性緩衝材とで、前記アンテナ素子に対する前記電子部品からの電磁波がシールドされるように構成されてもよい。このように筺体と導電性緩衝材とシールド部材とによりシールド壁を形成することができる。
【0015】
前記スピーカボックスはLDS材であり、前記シールド部材はLDSメッキであってもよい。LDSメッキによれば小さくかつ複雑な形状の部品に対して、所望の箇所だけにシールド部材を形成することができる。
【0016】
第1緩衝材をさらに備え、前記スピーカボックスは側方に突出するネジ止片を備え、前記第1緩衝材は前記ネジ止片の両面に設けられ、前記スピーカボックスは、前記ネジ止片が前記第1緩衝材を介して前記筐体のボスにネジ止めさることによって固定されていてもよい。ネジ止片によりスピーカボックスを固定しやすい。
【0017】
前記スピーカボックスは、前記筐体の角部に沿って設けられた平面視略L字形状であると、角部近傍の空間を有効利用できる。
【0018】
前記アンテナ素子と前記スピーカユニットとは、前記筐体の縁に沿ってずれた位置に設けられていてもよい。スピーカユニットは金属材料を含んでいるが、アンテナ素子からずれた位置にあると、該アンテナ素子の電波送受信に影響を与えない。
【0019】
前記スピーカユニットは低音再生用であり、高音再生用スピーカが前記筐体内に配置されてもよい。
【0020】
第2緩衝材をさらに備え、前記スピーカボックスは前記スピーカユニットの音を外部に放出する開口部を備え、前記第2緩衝材は、前記スピーカボックスの下面に設けられる前記導電性緩衝材とともに、前記開口部を囲むように配置されていてもよい。
【0021】
前記筐体における前記アンテナ素子の周囲は電波透過性材料で構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の上記態様によれば、筐体に対する振動伝搬を抑制し、スピーカのバックチャンバ容量を確保し、さらにアンテナに対する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる携帯用情報機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10の平面図である。本実施形態では、携帯用情報機器10としてノート型PCを例示する。携帯用情報機器10は、例えばデスクトップ型PCやタブレット型PC等でもよい。
【0026】
図1に示すように、携帯用情報機器10は、キーボード装置12を有する本体筐体14と、ディスプレイ装置16を有するディスプレイ筐体18とを備える。ディスプレイ筐体18は、本体筐体14の後端部に対して左右一対のヒンジ20,20を介して回動可能に連結されている。ディスプレイ筐体18は薄型でありその枠体は細い。ディスプレイ装置16は、例えば液晶ディスプレイである。ヒンジ20は、後壁22dに沿って配置されている。
【0027】
図1は、ヒンジ20によってディスプレイ筐体18を本体筐体14から開いて使用形態とした携帯用情報機器10を上から見下ろした図である。以下、
図1に示す使用形態とされた携帯用情報機器10のディスプレイ装置16を正面から視認する方向を基準とし、本体筐体14について手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。また、本体筐体14やこれに搭載される各部品について、本体筐体14を平面的に見た状態で、外周側よりも中央側を内側、中央側よりも外周側を外側と呼んで説明する。なお、これらの方向は説明の便宜上のものである。従って、製品での各部品の配置や設置姿勢等により、例えば上記の上下方向や左右方向が反転することもある。
【0028】
本体筐体14は、上カバー22と、下カバー24とで形成された薄い箱状の筐体である。本体筐体14は扁平形状で、平面視で略矩形である。上カバー22は、本体筐体14の上面および四周側面を構成したプレート状部材である。下カバー24は、本体筐体14の底面を構成したプレート状部材である。上カバー22および下カバー24の大部分は、マグネシウム等の金属板やカーボン板などの電波遮蔽材で構成されているが、後述するようにアンテナ素子54(
図8参照)の周囲の電波透過部64,66(
図8参照)は樹脂等の電波透過性材料で構成されている。
【0029】
図2は、本体筐体14の内部構造を模式的に示す底面図であり、下カバー24を取り外して本体筐体14内を上カバー22の内面側から見た図である。
【0030】
図2に示すように、本体筐体14の内部には、電子回路基板26と、バッテリ装置28と、左右一対の低音スピーカ30L,30Rと、左右一対の高音スピーカ31L,31Rと、アンテナ32L,32Rとが収納されている。低音スピーカ30L,30Rおよび高音スピーカ31L,31Rはステレオ音声の再生が可能である。以下、低音スピーカ30Lおよび30Rを代表的に低音スピーカ30とも呼び、高音スピーカ31Lおよび31Rを代表的に高音スピーカ31とも呼び、アンテナ32Lおよび32Rを代表的にアンテナ32とも呼ぶ。
【0031】
高音スピーカ31L,31Rは本体筐体14の後壁22dに沿って配列されている。高音スピーカ31はツイーターであって高音出力に適する。低音スピーカ30はウーファーであって低音出力に適する。ただし、低音スピーカ30を低音域から高音域まで出力可能な仕様とすることにより、高音スピーカ31を省略してもよい。
【0032】
低音スピーカ30Lおよびアンテナ32Lは、側壁22bと前壁22aとによって形成される角部40Lに沿って設けられており、それぞれ側壁22bおよび前壁22aに沿った略L字形状となっている。低音スピーカ30Rおよびアンテナ32Rは、側壁22cと前壁22aとによって形成される角部40Rに沿って設けられており、それぞれ側壁22cおよび前壁22aに沿った略L字形状となっている。これにより、角部40L,40R近傍の空間を有効利用できる。
【0033】
低音スピーカ30Lと低音スピーカ30Rとは適度に離れておりステレオ音声の再生に適する。アンテナ32Lとアンテナ32Rとは適度に離れており相互干渉が少ない。低音スピーカ30Lと低音スピーカ30R、およびアンテナ32Lとアンテナ32Rとは基本的に左右対称構造であるがレイアウト上の理由などによっては一部が異なっていてもよい。アンテナ32Lおよびアンテナ32Rは、例えばWWANやWLANの仕様であり、第5世代移動通信システム「5G」にも適応可能である。
【0034】
電子回路基板26は、当該携帯用情報機器10のマザーボードである。電子回路基板26は、例えばCPU26a、電源回路26b、メモリ26c等の各種電子部品が実装されたPCB(プリント基板)である。これらの装置は電磁ノイズの発生源となり得る。本体筐体14の内部には、さらに、図示しない冷却モジュール、SSD(Solid State Drive),ハードディスク装置等が収納されている。これらの装置も電子部品を含んでおり、電磁ノイズの発生源となり得る。
図2中の参照符号37は、ヒンジ20が配置される凹状部である。
【0035】
図3は、低音スピーカ30Lの平面図である。なお、低音スピーカ30Rについては、基本的に低音スピーカ30Lと対称構造であることから詳細な説明を省略する。
図3に示すように、低音スピーカ30Lはスピーカボックス36と、スピーカユニット38とを有する。スピーカユニット38は低音再生用である。スピーカユニット38は矩形である。スピーカボックス36は、例えば上面が開口した有底体に対して上面36dを接着または溶着などにより固定することにより密封構造としている。
【0036】
スピーカボックス36は平面視で略L字形状の箱体であり、前壁22a(
図2参照)に沿った第1延在部36aと、側壁22b(
図2参照)に沿った第2延在部36bとから構成されている。第1延在部36aは第2延在部36bよりもやや長い。スピーカボックス36には他部品との干渉をさけるためのいくつかの狭幅部36hが形成されている。スピーカボックス36には側方に突出する3つのネジ止片40a,40b,40cが設けられている。ネジ止片40a,40bは端部近傍に設けられ、ネジ止片40cは角部に設けられている。ネジ止片40a〜40cはスピーカボックス36を本体筐体14に対してネジ止めする箇所であり、それぞれ上面および下面にラバーブッシュ(第1緩衝材)42(
図8参照)が設けられている。ラバーブッシュ42はネジ止片40a〜40cのそれぞれ両面に設けられていることから、上下両方向の振動を吸収する。ネジ止片40aは箱体から内側に向けて突出し、ネジ止片40bは箱体から右側に向けて突出し、ネジ止片40cは箱体から外側に向けて突出している。ネジ止片40a〜40cはネジ72(
図8参照)によって上カバー22のボス70に固定される。ネジ止片40a〜40cによりスピーカボックス36を固定しやすい。
【0037】
スピーカボックス36は下面36cおよび上面36d(
図7参照)において内側面36e、右端面36fおよび後端面36gに沿ってシールドクッション44が設けられている。なお、内側面36eは本体筺体14を基準とした内側の面でありスピーカボックス36の空洞部の面ではない。シールドクッション44は、電磁波ノイズをシールド可能であって、且つ柔軟性を有する材料、例えば導電性クッション状部材で形成されている。導電性クッション状部材としては、例えば、銅に錫めっきを施した材料で形成したスポンジや、ポリエチレン等の樹脂にカーボンを練り込んだスポンジ等が挙げられる。
【0038】
スピーカボックス36における電子部品と対向する側面の全面にはシールド部材46が形成されている。具体的には、シールド部材46は、スピーカボックス36の内側面36e、右端面36fおよび後端面36gと、ネジ止片40a,40bに施されている。シールド部材46は、電磁波ノイズをシールド可能な材料、例えば導電性を持った金属板、導電性塗料、またはメッキ層として形成されている。シールド部材46は、さらに上面36dの内側縁、下面36cの内側縁に設けてもよい。
【0039】
シールド部材46は、例えばLDS(Laser Direct Structuring)メッキである。すなわち、スピーカボックス36は金属触媒が含有されたLDS材で射出成形し作製され、必要な箇所にレーザ照射をすることにより活性化させ、さらに所定の金属をメタライズすることによりシールド部材46が形成される。このような手法によれば小さくかつ複雑な形状の部品に対して、所望の箇所だけにシールド部材46を形成することができる。
【0040】
第1延在部36aの下面36cには横長形状の開口部48が形成されている。開口部48は第1延在部36aにおいて右寄りに形成されており、後端および右端はスピーカボックス36の内側面36eおよび右端面36fに沿っている。スピーカボックス36の下面36cにおいては開口部48の前端および左端に沿ってクッション(第2緩衝材)50が設けられている。クッション50は、スピーカボックス36の下面36cに設けられるシールドクッション44とともに、開口部48を囲むように配置されている。クッション50は、例えば、スポンジ、ポリウレタン、ポロン(登録商標)などである。クッション50は、個々の樹脂発泡部が独立したものにすると音漏れを防止できる。
【0041】
開口部48はスピーカユニット38の音を外部に放出する部分であり、該開口部48からはスピーカユニット38の振動板が露呈している。スピーカユニット38は開口部48を内側から塞ぐように設けられおり、その出力振動体は下方を向いている。スピーカユニット38から出力される音は開口部48を通り、さらに下カバー24に設けられた小孔群53(
図7参照)を通る。こうしてスピーカユニット38の音は本体筐体14の下側から発せられるが、低音は指向性が低いためユーザは十分に聴き取り可能である。また、スピーカユニット38の出力振動体は低周波で振動することからある程度の大きい面積が必要であり、小孔群53もそれに対応した面積が必要であるが、下面に形成することにより意匠上で目立たない。
【0042】
スピーカボックス36は、一般にキャビネットまたはエンクロージャと呼ばれる部分であり、スピーカユニット38が発する低音域の音を響かせるように適度な容積が確保されている。また、スピーカボックス36はスピーカユニット38以外の箇所は空洞であり、該スピーカユニット38のバックチャンバとして機能し、音質が向上する。
【0043】
開口部48はスピーカユニット38で塞がれていることから、低音スピーカ30は密封型スピーカを形成している。ただし、仕様によっては例えばバックロードホーン型やバスレフ型にしてもよい。低音スピーカ30からはスピーカユニット38を駆動するケーブル52が突出している。
【0044】
図4は、アンテナ32Lの平面図である。なお、アンテナ32Rについては、基本的にアンテナ32Lと対称構造であることから詳細な説明を省略する。
図4に示すように、アンテナ32Lは、アンテナ素子54と、アンテナ回路56とを有する。
【0045】
アンテナ素子54は平面視で略L字形状であり、前壁22a(
図2参照)に沿った第1延在部54aと、側壁22b(
図2参照)に沿った第2延在部54bとから構成されており、適度な長さが確保されている。第1延在部54aは第2延在部54bよりも短い。第1延在部54aからは内側に向かって給電片54cが突出している。アンテナ素子54はアンテナ回路56の作用下に電波の送受信を行う。後述するようにアンテナ素子54は上カバー22の一部となっている。
【0046】
アンテナ回路56は、FPC(Flexible Printed Circuits)で構成されていて可撓性があり、一部が給電片54cに接続されている。アンテナ回路56は、給電片54cよりもやや右側から内側に向かって延在する第1部分56aと、アンテナ素子54の第2延在部54bに沿って延在する第2部分56bと、第1部分56aと第2部分56bとを接続する略L字状の接続部56cとを有する。
【0047】
第1部分56aおよび第2部分56bは左右方向寸法よりも前後方向寸法が長い形状である。第1部分56aの横方向寸法は、第2部分の横方向寸法よりもやや短い。第2部分56bの前後方向寸法は第1部分56aの前後方向寸法の2倍程度である。第1部分56aの右端とアンテナ素子54の第1延在部54aの右端はほぼ同じ位置まで延在しており、第2部分56bの後端と第2延在部54bの後端はほぼ同じ位置まで延在している。アンテナ32Lは、全体として前後方向寸法が左右方向寸法の2倍程度である。
【0048】
第1部分56aには左右方向に延在する段差部56aaが形成され、第2部分には前後方向に延在する段差部56baが形成され、接続部56cには左右方向に延在する段差部56caが形成されている。段差部56aa,56ba,56caは高さ方向(
図4で紙面垂直方向)の段差である。第2部分56bには2つのネジ孔56bbが設けられている。ネジ孔56bbのうち一方は長孔である。
【0049】
アンテナ回路56は角部40L(
図2参照)の近傍の狭所に設けられているが、前壁22aに沿った第1部分56aと側壁22bに沿った第2部分56bとを接続部56cで直角に接続し、さらに段差部56aa、56baによってスピーカボックス36との干渉を避けることができ、適度に広い面積を確保している。アンテナ32Lには給電片54cに対して給電線58が接続されている。
【0050】
図5は、低音スピーカ30Lとアンテナ32Lとを実レイアウト上の相互位置に合わせた状態の平面図であり、
図6は、低音スピーカ30Lとアンテナ32Lとを実レイアウト上の相互位置に合わせた状態の斜視図である。具体的には平面視で、スピーカボックス36の第1延在部36aの左側基端部はアンテナ回路56の第1延在部36aの一部と重なり合い、第2延在部36bはほぼ全長に亘って第2延在部36bと重なり合っている。このように、低音スピーカ30Lとアンテナ32Lとは平面視で一部が重なり合っているが、接触はしていない。スピーカボックス36はアンテナ回路56よりも下側(
図5で紙面垂直上方)に配置されている。アンテナ回路56は適度に広く、その一部はクッション44を超えて内側にまで広がっている。アンテナ回路56は、クッション44と重なる部分では該クッション44と上カバー22とによって挟まれており、この部分でクッション44と導通がある。
【0051】
スピーカボックス36の第2延在部36bとアンテナ素子54の第2延在部54bとは、後に向かってはほぼ同じ位置まで延在している。スピーカボックス36の第1延在部36aはアンテナ素子54の第1延在部54aよりも右方向に長く延在している。これにより、アンテナ素子54の第1延在部54aとスピーカボックス36に設けられているスピーカユニット38とは本体筐体14の縁である前壁22a(
図2参照)に沿ってずれた位置に設けられている。スピーカユニット38は金属材料を含んでいるが、アンテナ素子54からずれた位置にあり、該アンテナ素子54の電波送受信に影響を与えない。また、スピーカボックス36の第1延在部36aはアンテナ32Lからずれた位置にあることからスペース的な余裕があって前後方向幅を大きく確保でき、大きいサイズのスピーカユニット38を収納することができる(
図7参照)。
【0052】
スピーカボックス36の第2延在部36bは、アンテナ素子54の第2延在部54bに沿って長く延在しており、内側面36eに設けられたシールド部材46がアンテナ素子54に対する電磁シールドとなる。また、第2延在部36bはアンテナ素子54の第2延在部54bに応じて長くなっていることからバックチャンバ容量を相当に大きく確保することができる。
【0053】
図7は、
図2におけるVII〜VII線視による断面図である。
図7に示すように、スピーカボックス36は上カバー22と下カバー24との間に配置されており、上面36dは上カバー22に沿った平面であり、下面36cは下カバー24の曲面に沿っている。スピーカボックス36には、他の部品60との干渉を避ける逃げ部36iが形成されている。
【0054】
スピーカユニット38はスピーカボックス36の内腔部に固定されており、振動板は下を向いている。上記のとおりスピーカボックス36にはスピーカユニット38の振動板を露呈させる開口部48が設けられている。下カバー24における開口部48と対向する領域には小孔群53が形成されており、低音スピーカ30Lが発生する音響を外部に通過させる。
【0055】
上面36dにおける後端と上カバー22との間、および下面36cにおける後端と下カバー24との間にはそれぞれシールドクッション44が弾性圧縮された状態で介挿されている。また、下面36cにおける前端近傍と下カバー24との間にはクッション50が弾性圧縮された状態で介挿されている。シールドクッション44およびクッション50は、例えば導電性テープで固定されている。スピーカボックス36の第1延在部36aにはスピーカユニット38が設けられていることからやや重量が重いが、断面視で3か所をシールドクッション44,44およびクッション50で支持されており安定する。
【0056】
上記のとおり、スピーカボックス36は、アンテナ素子54と本体筐体14の内部に配置される電子部品(CPU26a等)との間に設けられ、本体筐体14に対して浮動的に支持される。また、スピーカボックス36の内側面36eにはシールド部材46が形成されている。シールド部材46と2つのシールドクッション44とはそれぞれ接触している。一方のシールドクッション44は上カバー22の電波遮蔽部65に接触し、他方のシールドクッション44は下カバー24の電波遮蔽部67に接触して導通している。電波遮蔽部65,67は導電性材料の電波遮蔽材で形成されており、携帯用情報機器10の電気的グランドとなっている。すなわち、上カバー22と下カバー24との間は、2つのシールドクッション44およびシールド部材46を介して導通し、シールド壁71を形成してグランドとなっている。さらに換言すれば、シールドクッション44は、スピーカボックス36の上面36d及び下面36cと本体筐体14との間に設けられており、シールド部材と電気的に接続する。したがって、
図7における右方に配置されているCPU26aなどから発生する電磁ノイズはこのシールド壁71によってシールドされ、それよりも左方には漏洩せず、電子部品からの電磁波がシールドされるように構成される。電波遮蔽部65,67は、少なくともシールド壁44を接触する部分に設けられているとよい。
【0057】
図8は、
図2におけるVIII〜VIII線視による断面図である。
図8に示すように、上カバー22はアンテナ素子54の周囲に設けられた電波透過部64と、それ以外の電波遮蔽部65とから構成されている。下カバー24はアンテナ素子54の周囲に設けられた電波透過部66と、それ以外の電波遮蔽部67とから構成されている。上カバー22および下カバー24において電波透過部64,66はアンテナ素子54近傍の限られた部分だけに設けられ、それ以外の部分は電波遮蔽部65,67である。電波透過部64と電波遮蔽部65とは同一平面を形成している。電波遮蔽部67は平面状であるが、電波透過部66は前方に向かって上向きとなる曲面状となっている。
【0058】
アンテナ素子54は本体筐体14内の縁に設けらているが、設計条件によっては電波透過部64にはアンテナ素子54がインサート成型によって埋め込まれており、該アンテナ素子54は、前壁22aおよび側壁22b(
図2参照)の一部を形成してもよい。アンテナ素子54は、電波透過部64の上方には露呈せず、下方には露呈している。電波透過部66とアンテナ素子54の下面とは滑らかで連続的な曲面を形成している。アンテナ素子54は載置面となる電波遮蔽部67よりは上方にずれた位置にある。アンテナ素子54はこのような配置によりユーザが直接に触れることがほとんどない。
【0059】
前壁22aの下部から下カバー24にわたって傾斜形状となっており、鋭角的なイメージがあり意匠上の効果がある。また、上方からは上カバー22と下カバー24との接続部が目立たなくなる。アンテナ素子54の周囲は電波透過部64,66で構成されていることから、該アンテナ素子54は広い角度範囲に対して電波の送受信が可能である。めっきや印刷によって前壁22aの一部に対してアンテナパターンを形成し、アンテナ素子54の代用としてもよい。
【0060】
アンテナ32Lのアンテナ回路56はアンテナ素子54の給電片54cに対してネジ72によって剛性的(緩衝材を介さず非弾性的)に固定されている。このネジ止め部にはアンテナ回路56の一部56dが固定されており、その表面は導通がとれるようになっている。アンテナ回路56は段差部56caによって低音スピーカ30Lを避けながら上カバー22に達している。
図8で示されるアンテナ回路56は接続部56cの部分である。
【0061】
スピーカボックス36のネジ止片40cは上カバー22のボス70に対してネジ72によってネジ止めされている。ボス70は上カバー22の一部であり下向きに突出している。上記のとおりネジ止片40cの上下面には、ラバーブッシュ42が設けられている。つまり、ネジ72のヘッドとネジ止片40cの下面との間に1つ、そしてボス70の座面とネジ止片40cの上面との間に1つのラバーブッシュ42がそれぞれ介在している。他のネジ止片40a,40bについても同様である。
【0062】
また、上面36dにおける後端と上カバー22との間、および下面36cにおける後端と下カバー24との間にはそれぞれシールドクッション44が介挿されていることから、
図8に示す断面部においては、スピーカボックス36は3か所をシールドクッション44,44およびボス70で支持されており安定する。また、低音スピーカ30Lが音を発する際に発生する振動はシールドクッション44,44,ラバーブッシュ42およびクッション50(
図7参照)で吸収され、本体筐体14にはほとんど伝達されることがなく、該本体筐体14が共振したり不要な振動を発生することがなく、ユーザに違和感を与えず、さらに音響ノイズ(Squeak and Rattle)が発生しない。
【0063】
図8におけるシールド壁71が電磁ノイズをシールドする作用は、
図7における断面部分と同様である。
図7および
図8は前後方向の断面を示すが、左右方向の断面についてもシールド壁71が形成され右方からの電磁ノイズを遮蔽する。また、右端面36fおよび後端面36g(
図6参照)と上カバー22とおよび下面36cとの間にもそれぞれシールド壁71が形成され、右方および後側からの電磁ノイズを遮蔽する。また、ノイズ発生源(CPU26a等)の上下面は電波遮蔽部65,67で覆われていることから、結局ノイズ発生源は全面が電波遮蔽性材料で覆われており、外部に対する電磁ノイズが漏洩は極めて小さい。また、アンテナ32Lは電波遮蔽部65,67およびシールド壁71で囲われた空間の外に配置されていることから電磁ノイズの影響を受けることがほとんどない。
【0064】
シールド壁71を構成するシールド部材46およびシールドクッション44は、アンテナ32Lではなくてスピーカボックス36に設けられていることから、アンテナ32Lは簡易構成となって前壁22a、側壁22cの近傍に配置可能となり、しかもアンテナ回路56はFPCで構成されていることからその可撓性により配置の自由度が高く、その分だけスピーカボックス36のバックチャンバ容積を増加させて音響効果を高めることができる。
【0065】
またアンテナ32Lと低音スピーカ30Lとは別体であり、アンテナ32Lは給電片54cに対して確実に固定する一方、低音スピーカ30Lはシールドクッション44,44およびボス70で支持されており安定する。また、低音スピーカ30Lは、緩衝材であるシールドクッション44,44,ラバーブッシュ42およびクッション50を介して固定されることから、浮動的に支持されており本体筐体14に不要な振動を与えることがなくしかも音響効果が高まる。仮に緩衝材を設けない場合には、本体筐体14は振動防止のために相当に頑丈にする必要があり重量増および高コストになる。本実施形態では、緩衝材による振動吸収作用のために本体筐体14を軽量かつ低コストにすることができる。すなわち、携帯用情報機器10によれば本体筐体14に対する振動伝搬を抑制し、低音スピーカ30Lのバックチャンバ容量を確保し、さらにアンテナ32Lに対する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0066】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【解決手段】携帯用情報機器10は、本体筐体14と、本体筐体14内の縁に設けられたアンテナ素子54と、筐体内に配置され、アンテナ素子と筐体の内部に配置される電子部品との間に設けられ、筐体に対して浮動的に支持されるスピーカボックス36と、スピーカボックス36内に設けられたスピーカユニット38と、FPCで構成されるアンテナ回路56とを備える。スピーカボックス36における電子部品と対向する側面の全面にシールド部材46が設けられている。スピーカボックス36におけるシールド部材46と本体筐体14との間には導電性緩衝材であるシールドクッション44が設けられている。アンテナ回路56はアンテナ素子54とともに本体筐体14に対してネジ止めされている。