(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)ポリアミド樹脂を構成する全構成単位100質量%に対する芳香族構造を有する構成単位の割合が5〜100質量%である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記(A)ポリアミド樹脂が(a2)脂肪族ポリアミドを任意成分として含み、前記(A)ポリアミド樹脂100質量%に対する前記(a1)芳香族ポリアミドの割合が10質量%以上100質量%以下であり、前記(a2)脂肪族ポリアミドの割合が0質量%以上90質量%以下である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記(a1)芳香族ポリアミドが、ポリアミド4T、ポリアミド4I、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミドMXD12、ポリアミドPXD6、ポリアミドPXD10及びポリアミドPXD12から選ばれる少なくとも1種を構成成分として含む請求項1、2または3に記載のポリアミド樹脂組成物。
前記(a2)脂肪族ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド412、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミドから選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載のポリアミド樹脂組成物。
さらに(D)銅化合物を含有し、該(D)銅化合物が、ハロゲン化銅化合物、チオシアン酸銅、硝酸銅、酢酸銅、ナフテン銅、カプリン酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅、アセチルアセトン銅、酸化銅(I)及び酸化銅(II)から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7いずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
さらに(G)滑剤を含有し、該(G)滑剤が高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜9いずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する前記(B)無機充填材の割合が30質量%以上70質量%以下である請求項1〜10いずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
〔ポリアミド樹脂組成物〕
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂と、(B)無機充填材と、(C)カーボンブラックとを含み、(A)ポリアミド樹脂の少なくとも一部が(a1)芳香族ポリアミドであって、(C)カーボンブラックは、平均一次粒子径が20nm以上、かつ比表面積とDBP吸油量の比である[比表面積/DBP吸油量]が1.0以下であることを特徴とする。
【0020】
以下、ポリアミド樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。
(A)ポリアミド樹脂
(A)ポリアミド樹脂(以下、単にポリアミド樹脂あるいは(A)成分と記載する場合もある)とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。
本発明において(A)ポリアミド樹脂は、低ソリ性、外観を向上させた樹脂組成物とするため、少なくとも一部に(a1)芳香族ポリアミドを含有する。
【0021】
(a1)芳香族ポリアミド
(a1)芳香族ポリアミド(以下、単に(a1)成分と記載する場合もある)は、分子中に芳香環を含んでいるポリアミドを意味し、ポリアミド樹脂を構成する原料として、分子中に芳香環を含むモノマーが含まれていればよい。具体的には、芳香族ジアミン、芳香環を有するジアミン、芳香族ジカルボン酸、及び/又は芳香環を有するジカルボン酸を含んでいればよい。ポリアミドを構成する全原料モノマーを100モル%としたとき、重合の際に分子中に芳香環を含むモノマーを5モル%以上用いることが、低ソリ性、外観を向上させる観点から好ましい。なお、ここでいう全原料モノマーを計算する場合、ジアミンやジカルボン酸は、例えばジアミンが1モル、ジカルボン酸が1モルの場合、全モノマーは2モルとして計算する。
【0022】
分子中に芳香環を含むモノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの芳香環を有するジアミン、p−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これら芳香環を有するジアミン、芳香族ジアミン及び/または芳香族ジカルボン酸は、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ポリアミドをジアミンとジカルボン酸の縮合によって得る場合は、ジアミンとジカルボン酸の少なくともいずれか一方が、芳香環を有するジアミン、芳香族ジアミンまたは芳香族ジカルボン酸であればよい。
【0023】
(a1)芳香族ポリアミドの具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4T(ポリテトラメチレンテレフタラミド)、ポリアミド4I(ポリテトラメチレンイソフタラミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミドMXD6(ポリm−キシリレンアジパミド)、ポリアミドMXD10(ポリm−キシリレンセバカミド)、ポリアミドMXD12(ポリm−キシリレンドデカミド)、ポリアミドPXD6(ポリp−キシリレンアジパミド)、ポリアミドPXD10(ポリp−キシリレンセバカミド)、ポリアミドPXD12(ポリp−キシリレンドデカミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
【0024】
共重合体の構成成分としては、原料として芳香環を有する必要はなく、ポリアミド樹脂の原料である、ラクタム、ω−アミノカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸などを共重合してもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、及びドデカラクタムが挙げられる。
また、ω−アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。上記ラクタム又はω−アミノカルボン酸は、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させたものでもよい。
【0025】
ジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミン及び2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−キシリレンジアミン及びm−キシリレンジアミン等の芳香環を有するジアミン;p−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン及びシクロオクタンジアミン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
【0026】
ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
【0027】
(a1)芳香族ポリアミドに含まれる共重合体の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド66/4I、ポリアミド66/4I/6、ポリアミド6/4I、ポリアミド66/4T、ポリアミド66/4T/6、ポリアミド6/4T、ポリアミド66/4I/4T、ポリアミド66/4I/4T/6、ポリアミド6/4I/4T、ポリアミド610/4I、ポリアミド610/4I/6、ポリアミド610/4T、ポリアミド610/4T/6、ポリアミド610/4I/4T、ポリアミド610/4I/4T/6、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6I/6、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6T/6、ポリアミド6/6T、ポリアミド66/6I/6T、ポリアミド66/6I/6T/6、ポリアミド6/6I/6T、ポリアミド610/6I、ポリアミド610/6I/6、ポリアミド610/6T、ポリアミド610/6T/6、ポリアミド610/6I/6T、ポリアミド610/6I/6T/6、ポリアミド612/6I、ポリアミド612/6I/6、ポリアミド612/6T、ポリアミド612/6T/6、ポリアミド612/6I/6T、ポリアミド612/6I/6T/6、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6I/6T、ポリアミド6I/6T/6、ポリアミドMXD6/6I、ポリアミドMXD6/6T、ポリアミドMXD6/6I/6T、ポリアミドMXD6/610、ポリアミドMXD6/66、ポリアミドMXD6/610、ポリアミドMXD6/PXD6、ポリアミドPXD6/6I、ポリアミドPXD6/6T、ポリアミドPXD6/6I/6T、ポリアミドPXD6/66、ポリアミドPXD6/610、ポリアミドPXD6/612などが挙げられる。
【0028】
上記で列挙した(a1)芳香族ポリアミドの中でも、外観向上の観点から、ポリアミド4T、ポリアミド4I、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミドMXD12、ポリアミドPXD6、ポリアミドPXD10、ポリアミドPXD12から選ばれる少なくとも1種以上を構成成分として含むポリアミドであることが好ましい。より好ましくは、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6I/6T、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6I/6T/6、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6I/6、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6I/6T、ポリアミド66/6I/6T/6、ポリアミド6/6I/6T、ポリアミド610/6I、ポリアミド610/6I/6、ポリアミド610/6T、ポリアミド610/6T/6、ポリアミド610/6I/6T、ポリアミド610/6I/6T/6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミドMXD12、ポリアミドPXD6、ポリアミドPXD10、ポリアミドPXD12であり、さらに好ましくは、ポリアミド6I/6T、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6I/6T/6、ポリアミド66/6I、ポリアミド66/6I/6、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6I/6T、ポリアミド66/6I/6T/6、ポリアミド6/6I/6T、ポリアミド6T/6I、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミドMXD12、ポリアミドPXD6、ポリアミドPXD10、ポリアミドPXD12であり、特に好ましくは、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6I/6T、ポリアミド6T/6I/6、ポリアミド6I/6T/6、PA66/6I、PA66/6I/6、PA66/6I/6T、PA66/6I/6T/6、ポリアミドMXD6、ポリアミドMXD10、ポリアミドMXD12、ポリアミドPXD6、ポリアミドPXD10、ポリアミドPXD12である。上述した芳香族ポリアミドは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(A)ポリアミド樹脂100質量%に対する(a1)芳香族ポリアミドの割合は、10質量%以上100質量%以下であることが、低ソリ性及び成形品外観の観点から好ましく、より好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0030】
(a2)脂肪族ポリアミド
本発明の(A)ポリアミド樹脂は、(a2)脂肪族ポリアミド(以下、単に(a2)成分と記載する場合もある)を含んでもよい。本発明における(a2)脂肪族ポリアミドは、分子中に芳香環を含まないポリアミドを意味し、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを重合させたポリアミド、脂肪族ジアミンと脂環族ジカルボン酸とを重合させたポリアミド、脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸とを重合させたポリアミド、脂環族ジアミンと脂環族ジカルボン酸とを重合させたポリアミド、脂肪族ラクタム及び/または脂肪族アミノカルボン酸を重合させたポリアミド、及びこれらの共重合体である。上述したようなポリアミド樹脂の原料である、ラクタム、ω−アミノカルボン酸、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸を問題なく用いることができる。
【0031】
ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られる脂肪族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド410(ポリテトラメチレンセバカミド)、ポリアミド412(ポリテトラメチレンドデカミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド1010(ポリデカンセバカミド)、ポリアミド1012(ポリデカンドデカミド)などが挙げられる。
【0032】
ラクタムの開環重合で得られる脂肪族ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)などが挙げられる。
【0033】
また、これらの共重合体も問題なく使用することができる。共重合体としては、以下に限定されるものではないが、ポリアミド46/6、ポリアミド410/6、ポリアミド412/6、ポリアミド66/6、ポリアミド610/6、ポリアミド612/6、ポリアミド1010/6、ポリアミド1012/6、ポリアミド610/11、ポリアミド612/11、ポリアミド1010/11、ポリアミド1012/11、ポリアミド610/12、ポリアミド612/12、ポリアミド1010/12、ポリアミド1012/12などが挙げられる。
上述した(a2)脂肪族ポリアミドは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明における(a2)脂肪族ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012並びにこれらから選ばれる少なくとも1種以上を構成成分として含む共重合ポリアミドが好ましい。
【0035】
(A)ポリアミド樹脂100質量%に対する(a2)脂肪族ポリアミドの割合は0質量%以上90質量%以下であることが、低ソリ性及び成形品外観の観点から好ましく、より好ましくは0質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上50質量%以下である。
【0036】
本発明において(A)ポリアミド樹脂は、外観性を向上させる観点から、(A)ポリアミド樹脂を構成する全構成単位100質量%に対する芳香族構造を有する構成単位の割合が5〜100質量%が好ましく、より好ましくは10〜75質量%であり、さらに好ましくは10〜60質量%であり、さらにより好ましくは10〜50質量%であり、特に好ましくは10〜30質量%である。ここで言う構成単位とは、1つの−CO−NH−(アミド)結合を構成する単位を意味しており、原料がラクタム及び/またはω−アミノカルボン酸の場合は、単独で構成単位となり、ジアミンとジカルボン酸の重縮合によって得られる場合は、1対のジアミンとジカルボン酸で1つの構成単位となる。
【0037】
例えば、ポリアミド66/6I/6の共重合ポリアミドの場合は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなる構成単位、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位、ε−カプロラクタムからなる構成単位が存在し、これらの合計100質量%に対する、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位の割合が芳香族構造を有する構成単位である。また、構成単位を特定することが困難な場合、例えば2種以上のジアミンと2種以上のジカルボン酸から構成される場合は、ポリアミド樹脂を構成する全ジアミン100質量%に対する芳香環を有するジアミン及び/または芳香族ジアミンの割合と、全ジカルボン酸100質量%に対する芳香環を有するジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸の割合の合計が、芳香族構造を有する構成単位の割合である。
【0038】
また、(A)ポリアミド樹脂が(a1)芳香族ポリアミドの混合物、(a1)芳香族ポリアミドと(a2)脂肪族ポリアミドの混合物である場合も、(A)ポリアミド樹脂を構成する全構成単位を100質量%とする。例えば、ポリアミド66/6Iとポリアミド6の混合物である場合は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなる構成単位、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位、ε−カプロラクタムからなる構成単位が存在し、これらの合計を100質量%とする。そして、これらの合計100質量%に対する、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなる構成単位の割合が、芳香族を有する構成単位である。
(A)ポリアミド樹脂中の芳香族含有単量体比率の算出方法は、特に制限されないが、核磁気共鳴法(NMR)などにより求めることができる。
【0039】
(A)ポリアミド樹脂の末端基としては、一般にアミノ基又はカルボキシル基が存在する。
ポリアミド樹脂における末端基の比は、アミノ基濃度/カルボキシル基濃度として、好ましくは9/1〜1/9であり、より好ましくは6/4〜1/9であり、さらに好ましくは5/5〜1/9である。末端基の比が上記範囲内である場合、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度を一層向上させることができる。
【0040】
ポリアミド樹脂におけるアミノ基末端の濃度は、好ましくは10〜100μmol/gであり、より好ましくは15〜80μmol/gであり、さらに好ましくは30〜80μmol/gである。ポリアミド樹脂におけるアミノ基末端の濃度が上記範囲内である場合、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度を一層向上させることができる。
【0041】
ポリアミド樹脂におけるカルボキシル基末端の濃度は、好ましくは20μmol/g以上であり、より好ましくは50μmol/g以上であり、さらに好ましくは50〜120μmol/gであり、さらにより好ましくは50〜100μmol/gである。ポリアミド樹脂におけるカルボキシル基末端の濃度が上記範囲内である場合、本発明のポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性を一層向上させることができる。
ここで、ポリアミド樹脂のアミノ基末端及びカルボキシル基末端の濃度は、
1H−NMRにより測定され、各末端基に対応した特性シグナルの積分値によって求めることができる。
【0042】
ポリアミド樹脂の末端基の濃度は、適宜調整することができ、末端基の調整方法としては、公知の方法を用いることができる。以下に限定されるものではないが、例えば、末端調整剤を用いる方法が挙げられる。
具体的には、ポリアミド樹脂の重合時に所定の末端濃度となるように、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物、及びジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上を添加することにより調整することができる。
これらの成分の重合溶媒への添加時期については、末端調整剤として本来の機能を果たす限り特に限定されるものではなく、例えば、上述したポリアミド樹脂の原料を重合溶媒に添加する際に添加する方法が挙げられる。
【0043】
モノアミン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン、並びにこれらの任意の混合物などが挙げられる。
これらのモノアミン化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
特に、反応性、沸点、封止末端の安定性、及び価格などの観点から、モノアミン化合物としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアニリンからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0045】
ジアミン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン及びペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミン及び2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン及びシクロオクタンジアミン等の脂環族ジアミンが挙げられる。
これらのジアミン化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
モノカルボン酸化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
これらのモノカルボン酸化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
ジカルボン酸化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸及びスベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。
これらのジカルボン酸化合物は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明に用いるポリアミド樹脂を製造する方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの塩から溶融重合法、固相重合法、塊状重合法、溶液重合法、またはこれらを組み合わせた方法等、種々の重縮合を利用することができる。また、アジピン酸クロライド、イソフタル酸クロライドとヘキサメチレンジアミンから溶液重合、界面重合等の方法によっても得ることができる。これらの中で好ましくは、溶融重合もしくは溶融重合と固相重合の組み合わせによる方法が経済的にも好ましい。
【0049】
本発明に用いるポリアミド樹脂は、JIS−K6920−2の付属書JAに準じて測定した25℃の蟻酸溶液粘度((ポリアミド5.5g)/(90%蟻酸50mL))で10以上45以下が好ましい。より好ましくは15以上35以下、さらに好ましくは25以上35以下、さらにより好ましくは25以上33以下である。蟻酸溶液粘度が10以上であることで樹脂組成物の脆化を抑えられ、実用上充分な機械的特性を有する成形体が得られ、また成形時にシリンダーのノズル先端からのドローリングが起こりにくくすることができる。蟻酸溶液粘度が45以下であることで、樹脂の溶融粘度が高くなりすぎず、成形時の部分的な無機充填剤の浮き上がりを抑え、表面光沢性を維持できる。
【0050】
(B)無機充填材
(B)無機充填材(以下、無機充填材あるいは(B)成分と記載する場合もある)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記例示した中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度及び剛性を増大させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、フレーク状ガラス、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトよりなる群から選択される1種以上が好ましい。より好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素からなる群より選択される1種以上である。
【0052】
ガラス繊維や炭素繊維のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できる観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、及び重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(重量平均繊維長を数平均繊維径で除した値)が10〜100であるものがさらに好ましい。
【0053】
また、ウォラストナイトのうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、ポリアミド樹脂組成物中において、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が10〜500μmであり、及びアスペクト比が3〜100であるものがさらに好ましい。
【0054】
また、タルク、マイカ、カオリン、及び窒化珪素のうち、優れた機械的特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、ポリアミド樹脂組成物中における数平均粒子径が0.1〜10μmであるものがさらに好ましい。
【0055】
ここで、無機充填材における数平均繊維径、数平均粒子径及び重量平均繊維長は、以下の方法により測定される値である。
ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の無機充填材を任意に選択し、SEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)で観察して、これらの無機充填材の繊維径及び粒子径を測定することにより数平均繊維径及び数平均粒子径を測定される。併せて、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長が求められる。
【0056】
無機充填材は、シランカップリング剤などにより表面処理を施してもよい。シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
特に、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0057】
また、ガラス繊維及び炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級または第3級アミンとの塩などを含んでもよい。これらは、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
ガラス繊維及び炭素繊維は、公知のガラス繊維及び炭素繊維の製造工程において、連続的に反応させることにより得られる。具体的には、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、集束剤をガラス繊維及び炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによりガラス繊維及び炭素繊維が得られる。
繊維ストランドはロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を行いチョップドガラスストランドとして使用してもよい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドの乾燥後に切断工程を行ってもよい。
【0059】
ガラス繊維及び炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上相当であることが好ましい。一方、本発明のポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下相当であることが好ましい。
【0060】
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する無機充填材の割合は、好ましくは1質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、さらにより好ましくは50以上60質量%以下である。ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する無機充填材の含有量を1質量%以上とすることにより、本発明のポリアミド樹脂組成物の機械的強度等が向上し、また、含有量を70質量%以下とすることにより、成形性に優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0061】
(C)カーボンブラック
(C)カーボンブラック(以下、単にカーボンブラックあるいは(C)成分と記載する場合もある)としては、その製造方法によりファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等に分類され、その原料の違いにより、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、オイルブラック、ガスブラック等に分類されるが、本発明においては特に限定されずに使用することができる。
【0062】
カーボンブラックの平均一次粒子径は20nm以上であり、好ましくは30nm以上であり、より好ましくは35nm以上であり、さらに好ましくは50nm以上であり、特に好ましくは60nm以上100nm以下である。平均一次粒子径がこの範囲内である場合、耐候性を一層向上させることができるため好適である。平均一次粒子径は、ASTM D3849規格(カーボンブラックの標準試験法−電子顕微鏡法による形態的特徴付け)に記載の手順によりカーボンブラック粒子が分散した画像を取得し、この画像から単位構成粒子として3,000個の粒子径を測定し、この測定値の平均値として求められる値である。
【0063】
カーボンブラックの比表面積は100m
2/g以下が好ましく、より好ましくは85m
2/g以下であり、さらに好ましくは70m
2/g以下であり、特に好ましくは50m
2/g以下であり、最も好ましくは30m
2/g以下である。比表面積がこの範囲内である場合、低ソリ性、表面外観、耐候光沢保持率を一層向上させることができるため好適である。カーボンブラックの比表面積は、JIS K6217に従い、窒素吸着量から測定される値である。
【0064】
カーボンブラックのDBP吸油量(カーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレートの量)は、好ましくは100cm
3/100g以上であり、より好ましくは100cm
3/100g以上300cm
3/100g以下であり、さらに好ましくは100cm
3/100g以上200cm
3/100g以下であり、さらにより好ましくは100cm
3/100g以上150cm
3/100g以下である。DBP吸油量がこの範囲内である場合、低ソリ性、耐候光沢保持率及び耐候性を一層向上させることができる。カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6221に従い測定される値である。
【0065】
カーボンブラックの比表面積とDBP吸油量の比である[比表面積/DBP吸油量]は、1.0以下であり、好ましくは、0.70以下であり、より好ましくは0.50以下であり、さらに好ましくは0.30以下であり、さらにより好ましくは0.20以下である。[比表面積/DBP吸油量]がこの範囲を満たし、かつカーボンブラックの平均一次粒子径が20nm以上であることで、低ソリ性、耐候性及び耐候光沢保持率を一層向上させることができる。
【0066】
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対するカーボンブラックの含有量は、0.02〜3.0質量%であることが好ましい。より好ましくは0.02〜2.0質量%、さらに好ましくは0.1〜1.5質量%であり、さらにより好ましくは0.3〜1.3質量%であり、特に好ましくは0.4〜1.0質量%である。カーボンブラックの含有量がこの範囲内である場合、ポリアミド樹脂組成物において成形品外観を損なうことなく、耐候性を一層向上させることができる。
【0067】
(D)銅化合物
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)成分〜(C)成分に加え、(D)銅化合物(以下、単に銅化合物あるいは(D)成分と記載する場合もある)として、ハロゲン化銅化合物、チオシアン酸銅、硝酸銅、酢酸銅、ナフテン銅、カプリン酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅、アセチルアセトン銅、酸化銅(I)及び酸化銅(II)から選ばれる少なくとも1種の銅化合物を含有させてもよい。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記で列挙した銅化合物の中でも、好ましくはハロゲン化銅化合物(フッ化銅、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、酸化銅(I)及び酸化銅(II)よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはハロゲン化銅化合物、さらに好ましくはヨウ化銅または臭化第一銅である。これらを用いた場合、低ソリ性並びに耐候性に優れ、かつ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に金属腐食ともいう)を効果的に抑制できるポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0069】
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する銅化合物の含有量は、好ましくは0.001〜0.2質量%であり、より好ましくは0.005〜0.15質量%であり、さらに好ましくは0.005〜0.1質量%であり、さらにより好ましくは0.005〜0.05質量%である。
ポリアミド樹脂組成物中の銅化合物の含有量が上記範囲内である場合、低ソリ性、耐候性並びに耐候光沢保持率を一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食を効果的に抑制することができる。
【0070】
また、ポリアミド樹脂組成物の低ソリ性、耐候性並びに耐候光沢保持率を向上させる観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する銅元素の含有量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.002質量%以上であり、さらに好ましくは0.002〜0.05質量%、さらにより好ましくは0.002〜0.02質量%である。
【0071】
(E)アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物
本発明のポリアミド樹脂組成物は、耐候性の向上及び金属腐食の抑制の観点から(E)アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物(以下、単にハロゲン化物または(E)成分と記載する場合もある)をさらに含んでいてもよい。(E)ハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、ヨウ化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化マグネシウム及び臭化マグネシウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
特に、耐候性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウムであり、より好ましくはヨウ化カリウムまたは臭化カリウムである。
【0073】
ポリアミド樹脂組成物中におけるハロゲン元素の含有量は、ポリアミド樹脂組成物の低ソリ性、耐候性並びに耐候光沢保持率を向上させる観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、好ましくは0.02〜4質量%であり、より好ましくは0.03〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.03〜0.5質量%である。ここで、ハロゲン元素は、例えば(D)成分がハロゲン化銅の場合、ハロゲン化銅に由来するハロゲン元素と、(E)成分に由来するハロゲン元素の合計を意味する。
【0074】
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する(D)銅化合物と(E)ハロゲン化物との合計割合は、好ましくは0.02〜5質量%であり、より好ましくは0.02〜2質量%であり、さらに好ましくは0.03〜0.3質量%である。(D)成分+(E)成分の含有量の合計が上記範囲内である場合、低ソリ性、耐候性及び耐候光沢保持率を一層向上させることができるとともに、銅析出や金属腐食を効果的に抑制することができる。
【0075】
(D)銅化合物と(E)ハロゲン化物との含有割合は、ハロゲン元素と銅元素とのモル比(ハロゲン元素/銅元素)が2/1〜50/1となるように、それぞれ含有させることが好ましく、より好ましくは3/1〜30/1であり、さらに好ましくは3/1〜20/1である。
ここで、ハロゲン元素は、例えば(D)成分がハロゲン化銅の場合、ハロゲン化銅に由来するハロゲン元素と、(E)成分に由来するハロゲン元素の合計を意味する。
【0076】
ハロゲン元素と銅元素とのモル比(ハロゲン元素/銅元素)が2/1以上である場合、耐候性をより一層向上させることができる。
一方、モル比(ハロゲン元素/銅元素)が50/1以下である場合、靭性などの機械的な物性を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため好適である。
【0077】
(F)結晶化遅延剤
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形品外観及び機械的強度をより一層向上させる観点から、(F)結晶化遅延剤(以下、単に結晶化遅延剤あるいは(F)成分と記載する場合もある)をさらに含有させてもよい。
結晶化遅延剤は、ポリアミド樹脂に配合することにより、ポリアミド樹脂の結晶化温度を降下させる作用効果を有する物質である。結晶化温度はJIS K7121に準拠した示差走査熱量測定法(DSC法)によって求めることができる。
【0078】
これら結晶化遅延剤としては、以下に限定されるものではないが、アジン系染料、フタロシアニン系染料などが挙げられる。アジン系染料としては、ニグロシンが好ましく、フタロシアニン系染料としては、銅フタロシアニン系染料が好ましい。
【0079】
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する結晶化遅延剤の含有量は、0.01〜3.0質量%であることが好ましい。より好ましくは0.03〜2.0質量%、さらに好ましくは0.05〜1.5質量%である。(A)ポリアミド樹脂100質量%に対する結晶化遅延剤の含有量を0.01質量%以上とすることにより、本発明のポリアミド樹脂組成物の低ソリ性及び成形品外観等が向上し、また、含有量を3.0質量%以下とすることにより、離型性に優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0080】
(G)滑剤
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形品外観をより一層向上させる観点から、(G)滑剤(以下、単に滑剤あるいは(G)成分と記載する場合もある)をさらに含有させてもよい。
滑剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、ポリオレフィンワックスが挙げられる。
滑剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
高級脂肪酸化合物を構成する高級脂肪酸とは、高級脂肪族モノカルボン酸を示す。特に、炭素数8以上の脂肪酸が好ましい。より好ましくは炭素数8〜40の脂肪酸である。
高級脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐状の、脂肪族モノカルボン酸が挙げられ、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、モンタン酸等が挙げられる。
【0082】
高級脂肪酸エステルとは、高級脂肪酸とアルコールとのエステル化合物である。
アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸−1,3−ブタンジオールエステル、モンタン酸−トリメチロールプロパンエステル、トリメチロールプロパントリラウレート、ブチルステアレート等が挙げられる。
【0083】
高級脂肪酸アミドとは、高級脂肪酸のアミド化物である。
高級脂肪酸アミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N−ステアリルステアリルアミド、N−ステアリルエルカアミド等が挙げられる。特に、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN−ステアリルエルカアミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミド及びN−ステアリルエルカアミドがより好ましい。
【0084】
高級脂肪酸金属塩とは、上述した高級脂肪酸の金属塩である。
高級脂肪酸と塩を形成する金属元素としては、元素周期律表の第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。金属元素としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;が好ましい。
【0085】
高級脂肪酸金属塩としては、モンタン酸金属塩、ベヘン酸金属塩及びステアリン酸金属塩が好適に用いられ、特に、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム等が挙げられ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛がより好ましく、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛が、さらに好ましい。
これら高級脂肪酸金属塩は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
ポリオレフィンワックスとしては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス(PEワックス)などが挙げられる。
ポリプロピレンワックスは、一般に、相応して低い分子量を有する、ワックス様の特性を有するポリプロピレンである。本発明に用いるワックスは、2000〜60000、特に5000〜50000、殊に10000〜45000の平均分子量(質量平均)Mw(GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)及び標準ポリスチレンを用いて)であることが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いられるワックスの軟化点は、DIN EN 1427(環球法)により算出され、少なくとも140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0087】
好ましい製品は、Licowax(登録商標)PP、殊にLicowax PP 230及びLicowax VP PPタイプ(Clariant GmbH社)及びCeridust(登録商標)VP 6071ならびにHana Corporation社、韓国、のLC 525 N、LC 502 N、LC 502 NC、LC 503 N、LC 503 NCタイプである。
【0088】
ポリエチレンワックスは、高圧法で、または金属有機触媒の存在下に低圧法で製造された、2000〜20000の平均分子量範囲(質量平均)を有する炭化水素ワックスをラジカル重合することによって得られる。それと共に、ワックス特性を有する低分子量の製品は、熱分解によって高分子量ポリエチレンから取得することができる。
【0089】
一般に、PEワックスは、製造方法により分級されるのではなく、むしろ、HDPE(高密度ポリエチレン)及びLDPE(低密度ポリエチレン)中の密度により分級されるほうがよく、この場合高圧法は、HDPE品質をもたらし、かつ低圧法は、LDPE品質をもたらす。
熱分解PEワックスの性質は、高圧法による製品の性質と類似している。また、方法の実施を変えることにより、低密度の分枝鎖状タイプ(LDPE)が得られる。
空気または酸素での酸化により、高極性の酸化されたPEワックス(ポリエチレンワックス酸化生成物)が得られる。
【0090】
この種の酸化方法のための出発物質として、全ての常用のポリオレフィンワックス、即ち例えばチーグラー触媒反応またはフィリップス触媒反応によって、または高圧法によって製造されたポリオレフィンワックスを使用することができる。基礎となるワックスは、直接、重合法から取り出すことができる他、高分子量のオレフィンポリマーの熱分解によっても得ることができる。
【0091】
好適なワックスとしては、例えばエチレン及び/またはC3〜C10アルケ−1−エン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン及び1−デセンに由来するものである。特に、ポリオレフィンワックスとして、エチレンまたはプロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、特に有利にエチレンのホモポリマーまたはコポリマーが使用される。
【0092】
基礎となるポリオレフィンワックスを製造するには、モノマーを単独重合させるか、または全ての割合で互いに共重合させる。酸化されたワックスを基礎とする、好ましいポリオレフィンは、0.89〜0.98g/cm
3、特に0.90〜0.96g/cm
3の密度及び1000〜40000g/mol、特に2000〜20000g/molの、ポリエチレン標準またはポリプロピレン標準を用いて135℃で1,2,4−トリクロロベンゼン中でGPC法により測定したMwを有するエチレンホモポリマーである。
【0093】
さらに、出発ポリオレフィンとして、コポリマーに対して0.1〜15モル%、特に1〜10モル%の、コポリマー中の単数または複数のアルケ−1−エンに由来する構造単位の全含量を有するエチレン/C3〜C10アルケ−1−エンコポリマーが適している。好ましいエチレン/アルケ−1−エンコポリマーは、コポリマーに対して好ましくは0.1〜10モル%、特に1〜5モル%の、コポリマー中のプロピレンに由来する構造単位の含量を有するエチレン/プロピレンコポリマーである。コポリマーは、一般に、1000〜40000g/mol、特に2000〜20000g/molの、上記したようにGPC法で測定したMwを有する。
【0094】
酸化されたワックスを基礎としてよい他の好ましいポリオレフィンは、90〜98%の範囲内の、
13C−NMR分光法で測定したペンタデン含量(アイソタクチックペンタデン)及び1000〜40000g/mol、特に2000〜20000g/molの、上記したようにGPC法で測定したMwを有するアイソタクチックプロピレンホモポリマーである。
【0095】
さらに、プロピレンとエチレン及び/またはC4〜C10アルケ−1−エンとのコポリマーも基礎ポリオレフィンとして適している。このプロピレンコポリマーは、通常、コポリマーに対して0.1〜15モル%、特に1〜10モル%の、コポリマー中のエチレン及び/またはC4〜C10アルケ−1−エンに由来する構造単位の全含量を有する。好ましいプロピレンコポリマーは、コポリマーに対して0.1〜10モル%、特に1〜5モル%の、コポリマー中のエチレンに由来する構造単位の含量を有するプロピレン/エチレンコポリマーである。プロピレンコポリマーは、一般に、1000〜40000g/mol、特に1000〜20000g/molの、上記したようにGPC法で測定したMwを有する。
【0096】
酸化されたワックスの酸価(DIN 53402またはDIN EN D1386による)は、好ましくは11〜100[mg KOH/g]、特に12〜55[mg KOH/g]、殊に12〜30[mg KOH/g]である。鹸化価は、好ましくは11〜100[mg KOH/g]、特に10〜50[mg KOH/g]、殊に20〜30[mg KOH/g]である(DIN EN D−1387による)。
【0097】
ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する滑剤の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.03〜5質量%であることがより好ましく、0.05〜2質量%であることがさらに好ましい。滑剤の含有量を上記範囲内とすることにより、外観、離型性、機械的強度及び可塑化性に一層優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。
【0098】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上述した(A)成分〜(G)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてさらに他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料などを添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。
ここで、その他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本発明の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0099】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、以下に制限されないが、例えば、単軸又は多軸の押出機によって(A)成分を溶融させた状態で、(B)成分、(C)成分を混練する方法を用いることができる。中でも上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口から(A)成分、(C)成分を供給して溶融させた後、下流側供給口から(B)成分を供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラス繊維及び炭素繊維などのロービングを用いる場合も、公知の方法で複合化することができる。
【0100】
〔成形体〕
本発明の成形体は、上述した本発明のポリアミド樹脂組成物を成形してなり、例えば、ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより得られる。
【0101】
〔用途〕
本発明の成形体は、例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、住設用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用等の種々の成形体や部品として好適に使用できる。特に屋外に曝露される自動車用、住設用等の部品に好適であり、自動車外装部品により好適に使用できる。
【実施例】
【0102】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で行った評価の方法について説明する。
【0103】
〔評価方法〕
<低ソリ性>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、100×100×2mm厚(鏡面加工)の平板状成形品に製造した。その際、充填時間を1秒、保圧時間を9秒、冷却時間15秒、金型温度90℃、溶融樹脂温度290℃に設定した。得られた平板成形品を23℃、50%相対湿度下で24時間静置した後、定盤の上で成形品の4角のうち、1角を定盤に押し付けたときに持ち上がった角それぞれに対して、下面と定盤との距離をノギスで0.1mmの精度で測定した。持ち上がった角のうち最も定盤との距離が大きいものを反りとした。反り値の小さいものが優れる。
【0104】
<成形品外観>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、80×80×3mm厚の鏡面平板試験片に製造した。その際、充填時間を1秒、保圧時間9秒、冷却時間15秒、溶融樹脂温度290℃に設定した。また、金型温度は実施例に応じて以下のように設定した。実施例1〜9、比較例1〜9:90℃、実施例10〜11、比較例10:130℃。得られた平板試験片の表面光沢を、光沢計(VG7000:日本電色工業株式会社製)を用いてJIS Z8741に準拠して、入射角60度で測定した。
【0105】
<耐候光沢保持率>
上記により表面光沢を測定した平板成形片を、キセノンアーク式促進耐候試験機(Ci4000:アトラス社製)を用いてISO 4894−2に準拠し、ブラックパネル温度63℃、水噴霧時間18分、水噴霧停止時間102分のサイクルで促進耐候試験を実施した。試験時間1,000時間後の平板試験片の表面光沢を測定し、光沢保持率を算出した。
【0106】
<耐候変色性>
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、80×80×3mm厚(片面シボ加工:棚澤八光製TH113)の平板試験片に製造した。その際、充填時間を1秒、保圧時間9秒、冷却時間15秒、溶融樹脂温度290℃に設定した。また、金型温度は実施例に応じて以下のように設定した。実施例1〜9及び比較例1〜9:90℃、実施例10〜11及び比較例10:130℃。得られた平板試験片のシボ面を試験面とし、キセノンアーク式促進耐候試験機(Ci4000:アトラス社製)を用いてISO 4894−2に準拠し、ブラックパネル温度63℃、水噴霧時間18分、水噴霧停止時間102分のサイクルで促進耐候試験を実施した。試験前、試験時間1,000時間後及び1,500時間後の平板試験片を、色差計(SE6000:日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS Z8722に準拠して色調を測定し、試験前から試験後の色調変化ΔEを求めた。
【0107】
<25℃の蟻酸溶液粘度>
JIS−K6920−2の付属書JAに準じて測定した。実施例及び比較例に用いたポリアミド樹脂について、90%蟻酸を用いて、ポリマー溶解液((ポリアミド5.5g)/(90%蟻酸50mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
【0108】
〔原材料〕
(A)ポリアミド樹脂(PA)
(A−1)ポリアミド66/6I、下記製造例1のポリアミド
25℃の蟻酸溶液粘度:27
ポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位:20質量%
(A−2)ポリアミド6I/6T、EMS(株)製ポリアミド「グリボリーG21」
ポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位:100質量%
(A−3)ポリアミドMXD6、下記製造例2のポリアミド
ポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位:48質量%
(A−4)ポリアミド66、旭化成ケミカルズ(株)製ポリアミド「1300」
ポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位:0質量%
(A−5)ポリアミド6、DSM(株)製ポリアミド「K122」
ポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位:0質量%
【0109】
(B)ガラス繊維(以下、GFと略記)日本電気硝子株式会社製ECS03T−275H
【0110】
(C)カーボンブラック(CB)
(C−1)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:85nm、
比表面積/DBP吸油量:0.18
窒素吸着比表面積:20m
2/g、DBP吸油量:110cm
3/100g
(C−2)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:55nm、
比表面積/DBP吸油量:0.25
窒素吸着比表面積:32m
2/g、DBP吸油量:130cm
3/100g
(C−3)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:29nm、
比表面積/DBP吸油量:0.25
窒素吸着比表面積:110m
2/g、DBP吸油量:440cm
3/100g
(C−4)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:30nm、
比表面積/DBP吸油量:0.65
窒素吸着比表面積:74m
2/g、DBP吸油量:113cm
3/100g
【0111】
(C−5)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:24nm、
比表面積/DBP吸油量:1.8
窒素吸着比表面積:115m
2/g、DBP吸油量:65cm
3/100g
(C−6)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:14nm、
比表面積/DBP吸油量:0.74
窒素吸着比表面積:460m
2/g、DBP吸油量:620cm
3/100g
(C−7)以下の特性を示すカーボンブラック
平均一次粒子径:19nm、
比表面積/DBP吸油量:1.2
窒素吸着比表面積:140m
2/g、DBP吸油量:114cm
3/100g
【0112】
(D)ヨウ化銅(以下、CuIと略記)和光純薬工業社製の試薬
(E)ヨウ化カリウム(以下、KIと略記)和光純薬工業社製の試薬
(F)結晶化遅延剤
銅フタロシアニン系染料:C.I.ソルベントブルー67
アジン系染料:ニグロシン、オリヱント化学工業株式会社製NUBIAN(登録商標)BLACK TH−807
(G)滑剤 モンタン酸金属塩:クラリアント社製リコモントNaV101
【0113】
〔製造例1〕
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の等モル塩をそれぞれ80:20の質量比で投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大2.0MPa(G)に調整しながら最終到達温度は270℃とし、水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位の割合は20質量%で、25℃の蟻酸溶液粘度:27であった。
【0114】
〔製造例2〕
攪拌機、分縮機、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積2Lのセパラブルフラスコに、精秤したアジピン酸600gを入れ、充分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で190℃まで加熱し、均一に溶融した後、20分そのまま撹拌し、メタキシリレンジアミン562gを撹拌下に120分をかけて滴下した。この間、反応温度は連続的に250℃まで昇温させた。ジアミンの滴下により生じる縮合水は分縮器及び全縮器を通して系外に除いた。ジアミン滴下終了後、内温258℃で60分反応を継続した。得られたポリアミド樹脂100質量%中の芳香族構造を有する構成単位の割合は48質量%であった。
【0115】
〔実施例1〜11〕、〔比較例1〜10〕
押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、かつ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを300℃、スクリュー回転数250rpm、及び吐出量25kg/時間に設定した。
【0116】
かかる条件下で、下記表1〜3の上欄に記載された割合に従い、上流側供給口より、(A)PA、(C)CB、(D)CuI、(E)KI、(F)結晶化遅延剤、並びに(G)滑剤をそれぞれ供給し、下流側供給口より(B)GFを供給した。そして、これらを溶融混練することでポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。得られたポリアミド樹脂組成物を、上記の溶融樹脂温度及び金型温度で成形し、成形品外観、耐候光沢保持率、耐候変色性、及び引張強度を評価した。
【0117】
これらの評価(計数)結果などを下記表1、表2、表3に示す。なお、表1、表2及び表3において、低ソリ性は数値が小さいほど、低ソリ性に優れることを示す。成形品外観(表面光沢)は数値が大きい程、成形品外観に優れることを示す。耐候光沢保持率は数値が大きい程、色調変化ΔEは数値が小さい程、耐候性に優れることを示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
表1に示すように、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含み、(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0以下、かつ平均一次粒子径が20nm以上である実施例1〜4においては、低ソリ性、成形品外観が良好で、耐候光沢保持率ならびに耐候性に優れるポリアミド樹脂組成物が得られた。一方で、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含んでいても(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0を超えている、あるいは(C)カーボンブラックの平均一次粒子径が20nm未満である比較例1〜3は、実施例に比べて低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性に劣った。また、比較例4〜6のように、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含まない場合は、実施例に比べて低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性が劣った。さらにいえば、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含まない場合は、実施例1において優れた低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性を示した比表面積/DBP吸油量が1.0以下、かつ平均一次粒子径が20nm以上の(C)カーボンブラックを用いたとしても、比較例4に示す通り、低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性が劣った。
【0122】
また、表2に示すように、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含み、(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0以下、かつ平均一次粒子径が20nm以上である実施例5〜8は、(D)銅化合物、(E)ハロゲン化物、(F)結晶化遅延剤の含有可否によらず、いずれも優れた低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性を示した。一方で、(D)銅化合物、(E)ハロゲン化物を含まず、(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0を超えている場合には、比較例7のように(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含んでいても低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性が劣った。(D)銅化合物、(E)ハロゲン化物を含まず、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含まない場合は、(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0以下、かつ平均一次粒子径が20nm以上であっても、比較例8のように低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性が劣った。なお、実施例7はGFの含有量が他の実施例に比べて多いため、実施例8は(F)結晶化遅延剤を含まないため成形品外観が若干下がったものの、低ソリ性や耐候性は他の実施例と遜色がなかった。
【0123】
表3に示す実施例9〜11は(A)ポリアミド樹脂を変更した場合であるが、(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含む場合には、実施例10のように(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0以下、かつ平均一次粒子径が20nm以上であれば、低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性に優れていた。また、実施例9及び11のように、(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0以下、かつ平均一次粒子径が20nm以上であれば、脂肪族アミドとのブレンドであっても低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性に優れることがわかった。逆に比較例9及び10のように(A)ポリアミド樹脂中に芳香族ポリアミドを含んでいても、(C)カーボンブラックの比表面積/DBP吸油量が1.0超で、平均一次粒子径が20nm未満であると、低ソリ性、外観、耐候光沢保持率及び耐候性に劣ることがわかった。
【0124】
以上のことから、本発明のポリアミド樹脂組成物は、低ソリ性と耐候性に優れ、さらに良好な外観を持った成形品が得られることがわかった。