特許第6857731号(P6857731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナショナル インスティテュート オブ フォレスト サイエンスの特許一覧

特許6857731紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子
<>
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000002
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000003
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000004
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000005
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000006
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000007
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000008
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000009
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000010
  • 特許6857731-紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857731
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20210405BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/74 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-528538(P2019-528538)
(86)(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公表番号】特表2020-501305(P2020-501305A)
(43)【公表日】2020年1月16日
(86)【国際出願番号】KR2016014242
(87)【国際公開番号】WO2018105767
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年5月24日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0164894
(32)【優先日】2016年12月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519183896
【氏名又は名称】ナショナル インスティテュート オブ フォレスト サイエンス
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL INSTITUTE OF FOREST SCIENCE
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【弁理士】
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】イ ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ サンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン サンジン
(72)【発明者】
【氏名】パク サンボム
(72)【発明者】
【氏名】チェ ドンハ
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1588313(KR,B1)
【文献】 国際公開第2016/182100(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0220408(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/003846(WO,A2)
【文献】 国際公開第2016/047835(WO,A1)
【文献】 特表2010−538953(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0046557(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0043769(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01M 4/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロース繊維を含む繊維層;および
前記繊維層上に形成され、1種以上の導電材を含む導電層を含み、
前記導電材はナノセルロース繊維100重量部に対して5〜1,000重量部であり、
前記ナノセルロース繊維の直径は10nm〜100nmであることを特徴とする、紙集電体。
【請求項2】
紙集電体は、
ナノセルロース繊維を含む繊維層;
第1導電材を含む第1導電層;および
第2導電材を含む第2導電層;を含む構造であることを特徴とする、請求項1に記載の紙集電体。
【請求項3】
ナノセルロース繊維は水酸化基(hydroxyl group)、アセチル基(acetyl group)、シラン基(silane group)およびアクリル基(acryl group)からなる群から選択される1種以上の作用基で改質されたことを特徴とする、請求項1に記載の紙集電体。
【請求項4】
ナノセルロース繊維は植物性セルロース繊維を含む紙であることを特徴とする、請求項1に記載の紙集電体。
【請求項5】
導電材は、
炭素繊維、グラフェン、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維および炭素リボンのうち1種以上の炭素系物質;
銅、銀、ニッケルおよびアルミニウムのうち1種以上の金属;および
ポリフェニレンおよびポリフェニレン誘導体のうち1種以上の導電性ポリマー、からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の紙集電体。
【請求項6】
導電材は平均直径が10nm〜100μmであり、
導電材の平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比率(L/D)が平均50以上であることを特徴とする、請求項1に記載の紙集電体。
【請求項7】
紙集電体は550nm波長での光透過度が50%〜99%であることを特徴とする、請求項1に記載の紙集電体。
【請求項8】
ナノセルロース繊維を含む繊維層上に1種以上の導電材を含む放射液を電気放射する段階を含む、請求項1に記載の紙集電体の製造方法。
【請求項9】
電気放射は連続電気放射(sequential electrospinning)または二重電気放射(dual electrospinning)であることを特徴とする、請求項に記載の紙集電体の製造方法。
【請求項10】
電気放射速度は0.1ml/h〜100ml/hであることを特徴とする、請求項に記載の紙集電体の製造方法。
【請求項11】
放射液の使用量は単位面積(1cm)当たり0.01ml〜10mlであることを特徴とする、請求項に記載の紙集電体の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載された紙集電体;および電極活物質を含む、電極。
【請求項13】
請求項12に記載された電極を含む、電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近ロールアップディスプレイ、ウェアラブル電子素子などの多様なデザインが可能なフレキシブルリチウムイオン二次電池(flexible lithium−ion batteries)のようなフレキシブル電気化学素子に対する重要性とデザインの多様性に対する要求が高まっている中、これを構成する柔軟な材料に対する関心が集中している。
【0003】
例えば、大韓民国公開特許第2015−0131505号は定形化されたケース内に正極/分離膜/負極を順次積層した後、電解液を注入して製造されたリチウムイオン二次電池を開示している。しかし、このような構造の電池は物理的な柔軟性が足りないため、フレキシブル電気化学素子で要求されるデザインの多様性を充足させるには多くの限界点を有している。特に、リチウムイオン二次電池の構成要素のうち、正極や負極のような電極は電極活物質を粒子形態の導電材、バインダーおよび溶媒に分散させた電極混合物を、金属基盤の集電体に塗布して製造する。しかし、前記金属基盤の集電体は値段が高くその重さが重いため、電池のエネルギー密度を減少させるだけでなく、機械的柔軟性が低く表面に塗布された電極混合物からなる電極活性層が容易に脱離するため、使用寿命が短い限界がある。
【0004】
これと共に、素材のデザインの多様性の確保のために、次世代太陽電池やディスプレイなどに直接化が可能であり、デザインの制約が相対的に自由な透明素材に対する研究が活発に行われている。しかし、一般的に素材の透明性と電気伝導度などの電気的物性は互いに相反する関係を有するため、電気的物性と透明性をすべて満足させる素材の開発に多くの困難が伴われる。
【0005】
したがって、原料の値段が安くて経済的であり、重さが軽く、電極の製造時に電極のエネルギー密度が高く、機械的柔軟性が高いだけでなく、集電体の電気物性と透明性を容易に調節できる集電体の開発が切に要望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、重さが軽く、電極の製造時に電極のエネルギー密度が高く、機械的柔軟性に優れているだけでなく、電気的物性と素材の透明性をすべて確保できる集電体を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は一実施例において、ナノセルロース繊維を含む繊維層;および前記繊維層上に形成され、1種以上の導電材を含む導電層を含み、前記導電材はナノセルロース繊維100重量部に対して5〜1,000重量部であり、前記ナノセルロース繊維の直径は10nm〜100nmであることを特徴とする、紙集電体を提供する。
【0008】
また、本発明は一実施例において、前記紙集電体の製造方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は一実施例において、前記紙集電体を含む電極および前記電極を含む電気化学素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る紙集電体は、ナノセルロース繊維を含む繊維層上にナノセルロース繊維と伝導性ネットワークをなす導電材が含まれた導電層を具備することによって、重さが軽く、電極の製造時に電極のエネルギー密度が高く、機械的柔軟性に優れているだけでなく、素材の電気的物性と透明性をすべて確保できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明で使われる連続電気放射法を概略的に示したイメージ。
図2】本発明で使われる二重電気放射法を概略的に示したイメージ。
図3】本発明により製造された集電体の表面を走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:15kV)で分析したイメージ。
図4】本発明に係る実施例2および比較例2の集電体の絶縁抵抗を測定したイメージ。
図5】本発明により製造された集電体の(a)表面抵抗および(b)電気電導度を示したグラフ。
図6】本発明により製造された集電体の550nm波長の光に対する透過度を示したグラフ。
図7】実施例2で製造された集電体のベンディング直径による抵抗値を示したグラフ。
図8】実施例2で製造された集電体の5mm間隔、5,000回繰り返し曲げ試験遂行時に初期抵抗値の変化率を示したグラフ。
図9】実施例2で製造された集電体の5mm間隔、5,000回繰り返し曲げ試験遂行後(a)走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:15kV)および(b)エネルギー分散型分光(Energy dispersive X−ray spectroscopy、EDX)を分析したイメージ。
図10】本発明により製造された集電体を含む電池の初期放電容量を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は多様な変更を加えることができ、多様な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示して詳細な説明で詳細に説明する。
【0013】
しかし、これは本発明を特定の実施形態について限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0014】
本発明で、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0015】
また、本発明で添付された図面は説明の便宜のために拡大または縮小して図示されたものと理解されるべきである。
【0016】
本発明は紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子に関する。
【0017】
最近ロールアップディスプレイ、ウェアラブル電子素子などの多様なデザインが可能なフレキシブルリチウムイオン二次電池(flexible lithium−ion batteries)のようなフレキシブル電気化学素子に対する重要性とデザインの多様性に対する要求が高まっている中、これを構成する柔軟な材料に対する関心が集中している。
【0018】
例えば、リチウムイオン二次電池は定形化されたケース内に正極/分離膜/負極を順次積層した後、電解液を注入して製造する。しかし、このような構造の電池は物理的柔軟性がたりないため、フレキシブル電気化学素子で要求されるデザインの多様性を充足させるには多くの限界点を有している。特にリチウムイオン二次電池の構成要素のうち、正極や負極のような電極は、電極活物質を粒子形態の導電材、バインダーおよび溶媒に分散させた電極混合物を金属基盤の集電体に塗布して製造する。しかし、前記金属基盤の集電体は値段が高くその重さが重いため、電池のエネルギー密度を減少させるだけでなく、機械的柔軟性が低く表面に塗布された電極混合物からなる電極活性層が容易に脱離するため、使用寿命が短い限界がある。
【0019】
これと共に、素材のデザインの多様性確保のために、次世代太陽電池やディスプレイなどに直接化が可能であり、デザインの制約が相対的に自由な透明素材に対する研究が活発に行われている。しかし、一般的に素材の透明性と電気伝導度などの電気的物性は互いに相反する関係を有するため、電気的物性と透明性をすべて満足させる素材の開発に多くの困難が伴われる。
【0020】
そこで、本発明は紙集電体、その製造方法およびこれを含む電気化学素子を提供する。
【0021】
本発明に係る紙集電体は、ナノセルロース繊維を含む繊維層上にナノセルロース繊維と伝導性ネットワークをなす導電材が含まれた導電層を具備することによって、重さが軽く、電極の製造時に電極のエネルギー密度が高く、機械的柔軟性に優れているだけでなく、素材の電気的物性と透明性をすべて確保できる利点がある。
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明は一実施例において、ナノセルロース繊維と導電材を含む紙集電体を提供する。
【0024】
本発明に係る前記紙集電体は、ナノセルロース繊維を含む繊維層上にナノセルロース繊維と伝導性ネットワークをなす1種以上の導電材を含む導電層が形成された構造を有することができる。
【0025】
一つの例として、前記紙集電体はナノセルロース繊維を含む繊維層;および前記繊維層上に形成され、1種以上の導電材を含む導電層を含む構造を有することができる。
【0026】
他の一つの例として、前記紙集電体はナノセルロース繊維を含む繊維層;前記繊維層上に形成され、第1導電材を含む第1導電層;および第2導電材を含む第2導電層を含む構造を有することができる。
【0027】
本発明に係る前記紙集電体は、基材としてナノセルロース繊維で構成される繊維層を含み、前記繊維層の表面で繊維層のナノセルロース繊維とネットワーク構造をなす導電材を含む導電層を含む構造を有することによって、従来一般的な電気化学素子に使われている金属集電体に比べて軽く、機械的柔軟性に優れているため、電極の製造時に電極のエネルギー密度が高いだけでなく電気電導度のような電気的物性と透明性が優れている。
【0028】
この時、前記繊維層は、重量が軽く柔軟性が高い繊維形態のナノセルロースが互いに絡み合って気孔を形成する網構造を有することができ、このような繊維層に含まれたナノセルロース繊維は、ナノ大きさの木質材料から分離されたセルロースナノ繊維、海藻類ナノ繊維、菌を培養して得たバクテリアセルロース、これらの誘導体およびこれらの混合物から選択される1種以上であり得る。一つの例として、前記ナノセルロース繊維層は植物性セルロース繊維を含む紙であり得る。前記紙の場合、ナノセルロース繊維をアルカリで処理した後に結合剤と混合し、結合剤と混合された繊維を抄紙した後に乾燥させて製造され得る。
【0029】
また、前記ナノセルロース繊維は直径が10nm〜100nmである前記ナノセルロース繊維平均長さは10nm〜10,000nmまたは50nm〜1,000nmであり得る。本発明はセルロース繊維の平均直径と平均長さの範囲を前記範囲で制御することによって、繊維状の形成が容易であり、製造された網構造の表面が均一となって界面特性を向上させることができる。
【0030】
併せて、前記ナノセルロース繊維は水酸化基(hydroxyl group)、カルボキシ基(carboxyl group)、アセチル基(acetyl group)、シラン基(silane group)、アクリル基(acryl group)からなる群から選択される1種以上の作用基で改質されたものであり得る。一つの例として、前記ナノセルロース繊維は、植物性セルロースナノ繊維を2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxyl、TEMPO)で酸化処理してカルボキシ基が導入されたナノセルロース繊維を含む紙であり得る。
【0031】
これと共に、前記導電層は繊維形態の導電材が互いに絡み合って伝導性ネットワークを形成する網構造を有することができる。ここで、前記導電材は繊維形態を有して平均直径が10nm〜100μmであり得、平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比率(L/D)が平均50以上であり得る。具体的には、前記導電材は平均直径が10nm〜10μm、10nm〜1μm、50nm〜500μm、500nm〜1μm、1μm〜10μm、1μm〜100μmまたは1μm〜50μmであり得、平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比率(L/D)が50以上、100以上、50〜10,000、50〜5,000、50〜1,000または50〜500であり得る。本発明は繊維形態を有する導電材の平均直径と、平均直径(D)に対する平均長さ(L)の比率(L/D)を前記範囲で制御することによって、短軸に対する長軸の長さが長い形態を維持してナノセルロース繊維と複合化が有利であり、導電材間の接触抵抗が減少して効果的に伝導性ネットワークを形成することができ、導電層の機械的柔軟性を同時に向上させることができる。従来機械的物性を確保するために集電体に使われる支持体と電子伝導性を確保するために使われる導電材とは混合性が落ちるため、十分な電気電導度が具現されない問題があった。これを解決するためには、導電材の分散を助ける界面活性剤の添加が必須であるが、添加される大部分の界面活性剤は非伝導性を有するため電気電導度の下落が引き起こされる。しかし、本発明の集電体は別途の添加剤を使用することなく、繊維層に含まれたナノセルロース繊維と導電層に含まれた導電材の複合化が容易であるため、伝導性ネットワーク構造を効果的に具現することができる。
【0032】
また、前記導電層は、2種以上の導電材を含む場合、各導電材をそれぞれ別途の層として積層した形態で含むことができる。具体的には、前記導電層は、第1導電材を含む第1導電層;および第2導電材を含む第2導電層を含む構造を有することができる。
【0033】
これと共に、前記導電層に含まれた導電材は電気化学素子に通常的に使われる導電材であれば特に制限されず使われ得る。具体的には、前記導電材としては、炭素繊維、グラフェン、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維および炭素リボンのうち1種以上の炭素系物質;銅、銀、ニッケルおよびアルミニウムのうち1種以上の金属;およびポリフェニレンおよびポリフェニレン誘導体のうち1種以上の導電性ポリマーからなる群から選択される二種以上であり得る。併せて、前記導電材は第1導電層と第2導電層に含まれる各導電材が異なり得る。一つの例として、前記導電層は第1導電層および第2導電層に含まれる場合、第1および第2導電層のうちいずれか一つの層は炭素系物質の導電材を含み、残りの一つの層は金属導電材が含まれ得る。より具体的には、前記導電層は第1導電層に銀(Ag)を含み、第2導電層には炭素ナノチューブを含むことができる。
【0034】
また、本発明の導電層の含量比は、ナノセルロース繊維層100重量部を基準として5〜1,000重量部であり得、具体的にはナノセルロース繊維層100重量部に対して5〜700重量部、5〜500重量部、5〜200重量部、5〜100重量部、5〜50重量部、5〜30重量部、5〜25重量部、5〜20重量部、5〜15重量部、5〜10重量部、10〜30重量部、15〜25重量部、8〜12重量部、18〜22重量部、50〜1,000重量部、10〜800重量部、50〜800重量部、50〜600重量部、50〜500重量部、50〜300重量部、50〜200重量部、50〜100重量部、100〜300重量部、200〜500重量部、400〜700重量部、500〜900重量部、700〜1,000重量部、100〜300重量部、150〜250重量部または180〜220重量部であり得る。本発明はナノセルロース繊維を含む繊維層と導電層の含量比を前記のように調節することによって、集電体の重さを減らしつつ、集電体の電気電導度と機械的柔軟性を向上させることができる。
【0035】
一方、本発明に係る紙集電体は、透明性が優秀であるため550nm波長の光に対する透過度が50%以上であり得、具体的には50%〜99%、60%〜99%、70%〜99%、70%〜90%、70%〜80%、70%〜75%、73%〜75%、80%〜99%、90%〜99%、95%〜99%または96%〜98%であり得る。
【0036】
さらに、前記紙集電体は機械的柔軟性が優秀であるため、5mm直径のロッド(rod)に巻いたり5,000回の繰り返し曲げ試験の後にも導電層が脱離したり損傷しないため、初期表面抵抗値の変化率が5%以下、具体的には3%以下、2%以下、1%以下、または0.01〜2%であり得る。
【0037】
また、本発明は一実施例において、ナノセルロース繊維を含む繊維層上に導電材を含む放射液を電気放射する段階を含む紙集電体の製造方法を提供する。
【0038】
本発明に係る紙集電体の製造方法は、ナノセルロース繊維を含む繊維層上に導電層を導入する時に電気放射を利用することによって、導電層を構成する導電材を繊維層上に均一に分散させることができるだけでなく、繊維層のナノセルロース繊維と効果的に伝導性ネットワークを形成することができ、2種以上の導電材がそれぞれの導電層を形成する場合、各導電層に含まれた導電材間の伝導性ネットワークを容易に形成できる利点がある。
【0039】
この時、前記電気放射は連続電気放射法(sequential electrospinning)または二重電気放射法(dual electrospinning)であり得る。
【0040】
連続電気放射法とは、図1に示した通り、ナノセルロース繊維を含む繊維層上に第1導電材と第2導電材を共に含む放射液を一つのノズルで電気放射して、第1導電材と第2導電材が繊維層の表面で分散混合される方式をいう。また、二重電気放射法とは、図2に示した通り、ナノセルロース繊維を含む繊維層上に導電層を形成する際に、電気放射機に備えられた第1ノズルと第2ノズルで連続的に第1導電層を構成する第1導電材と第2導電層を構成する第2導電材を放射して、それぞれの導電材が繊維の形態で繊維層上に順次積層されるようにする方式をいう。
【0041】
この時、導電材が放射される電気放射速度は0.1ml/h〜100ml/hであり得、具体的には0.1ml/h〜5ml/h、1ml/h〜10ml/h、5ml/h〜50ml/h、10ml/h〜40ml/h、15ml/h〜30ml/hまたは18ml/h〜22ml/hであり得る。
【0042】
また、電気放射は5kV〜50kVの電圧条件で遂行され得、具体的には5kV〜20kV、20kV〜50kV、10kV〜30kV、30kV〜50kV、15kV〜25kV、15kV〜21kV、16kV〜20kV、15kV〜17kV、17kV〜19kVまたは19kV〜21kVの電圧条件で遂行され得る。
【0043】
さらに、電気放射時の放射液の使用量は単位面積(1cm)当たり0.01ml〜10mlであり得、具体的には単位面積(1cm)当たり0.01ml〜5ml、0.1ml〜2ml、0.1ml〜1ml、1ml〜5ml、5ml〜10ml、3ml〜7ml、0.2ml〜0.8ml、0.4ml〜0.6mlまたは0.5ml〜1.5mlであり得る。
【0044】
本発明は電気放射時に、電気放射速度、電圧条件および放射液の使用量を前記範囲に制御することによって、導電層に含まれる導電材の含量、導電材の形態、導電層の気孔度などの調節が容易であるため、製造される集電体の電気的物性と透明性を容易に調節することができる。
【0045】
また、本発明は一実施例において、前記紙集電体および電極活物質を含む電極およびこれを含んで製造される電気化学素子を提供する。
【0046】
本発明に係る電極は、前述した紙集電体を含んでいて機械的柔軟性および電気伝導性に優れているためエネルギー密度が高く、集電体上に形成された電極活物質層の脱離が抑制されるためフレキシブルリチウムイオン二次電池のようなフレキシブル(flexible)電気化学素子に有用に使われ得る。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0048】
ただし、下記の実施例および実験例は本発明の例示に過ぎず、本発明の内容は下記の実施例および実験例に限定されるものではない。
【0049】
製造例1.
セルロース(cellulose)繊維を水に入れて得たセルロース0.5%濃度懸濁液を20分間撹拌機で撹拌した後、20,000psi圧力のホモジナイザー(homogenizer)を利用して50〜200μm直径のノズルにそれぞれ20回通過させて、繊維の直径が10〜100nm大きさのナノセルロース繊維が分散された分散液を製造した。
【0050】
実施例1.
製造例1で製造された分散液を電気放射機の連続電気放射ノズルに装着させ、電気放射してナノセルロース紙を製造した。この時、印加電圧は20±1kVに調節したし、放射液を20ml/hrの放射速度で単位面積(1cm)当たり1mlずつ放射した。次に1重量%の銀ナノワイヤー(Ag nanowire)が分散されたイソプロピルアルコール溶液を連続電気放射ノズルに装着して製造されたナノセルロース紙の上に電気放射して紙集電体を製造した。この時、印加電圧は15±1kVに調節したし、放射液を20ml/hrの放射速度で単位面積(1cm)当たり0.5mlずつ放射したし、紙集電体に含まれた銀ナノワイヤー層の含量はナノセルロース紙100重量部基準10±5重量部となるように調節した。
【0051】
実施例2.
製造例1で製造された分散液を使って実施例1で製造されたのと同じ方法でナノセルロース紙を製造した。その後、二重電気放射機の第1ノズルに1重量%の銀ナノワイヤー(Ag nanowire)が分散されたイソプロピルアルコール溶液を注入し、第2ノズルには0.01重量%のカーボンナノチューブが分散された水溶液を注入した後、前記にて準備されたナノセルロース紙の上に二重電気放射して、第1導電材を含む第1導電層と第2導電材を含む第2導電層が順次積層された紙集電体を製造した。この時、第1および第2ノズルでの印加電圧はそれぞれ15±1kVおよび18±1kVに調節したし、放射速度はそれぞれ20±1ml/hrおよび10±1ml/hrであり、単位面積(1cm)当たり放射量はそれぞれ0.5mlに制御された。また、紙集電体に含まれた第1および第2導電層の含量はナノセルロース紙100重量部基準20±10重量部となるように調節した。
【0052】
比較例1.
セルロース(cellulose)繊維を蒸溜水に添加して得た0.5重量%のセルロース懸濁液を20分間撹拌機で撹拌し、20,000psi圧力のホモジナイザー(homogenizer)を利用して50〜200μm直径のノズルにそれぞれ20回通過させて、直径10〜100nmのナノセルロース繊維が分散された分散液を製造した。その後、前記分散液に1重量%の銀ナノワイヤー(Ag nanowire)が分散されたイソプロピルアルコール溶液を混合し、このようにして得た混合溶液の溶媒を揮発させてナノセルロース繊維と導電材を含む集電体を製造した。この時、集電体に含まれた銀ナノワイヤー層の含量はナノセルロース100重量部基準20±10重量部となるように調節した。
【0053】
実験例1.紙集電体の性能評価
本発明に係る紙集電体の性能を評価するために、下記のような実験を遂行した。
【0054】
イ.モホロジー分析
実施例1および2と比較例1で製造された集電体を対象に走査電子顕微鏡(SEM)分析を遂行した。この時、加速電圧は15kVであり、測定された結果は図3に示した。
【0055】
図3に示した通り,本発明に係る実施例1および2の集電体はナノセルロース繊維を含む繊維層上に繊維形態の導電材が均一に分散しており、分散された導電材は網構造のネットワークを形成することが分かる。これに反し、比較例1の集電体は表面で導電材の確認が難しいことが分かる。
【0056】
このような結果から、本発明に係る紙集電体は表面に導電材の伝導性ネットワークが形成されていることが分かる。
【0057】
ロ.電気伝導度分析
絶縁抵抗測定機を利用して実施例1および2と比較例1で製造された紙集電体(横3cmおよび縦2cm)を対象に絶縁抵抗を測定した。
【0058】
また、4点探針法(4 point probe)を利用して紙集電体の表面抵抗と電気電導度を測定したし、その結果は図4および図5に示した。
【0059】
図4および図5を詳察すると、本発明に係る実施例2の集電体は電気的物性が優秀であるため11.5±0.1mΩの絶縁抵抗を示すことが確認された。また、実施例1および2の紙集電体は、それぞれ12.5±0.5Ohm/sqおよび3±0.5Ohm/sqの表面抵抗と163±5S/cmおよび375±5S/cmの電気電導度を有するものと示された。これに反し、比較例1の集電体は非絶縁体のように絶縁抵抗が0mΩであるものと示されたし、表面抵抗および電気電導度がそれぞれ25,000Ohm/sqおよび≒0S/cmであることが確認された。
【0060】
このような結果から、本発明に係る紙集電体は表面に導電材の伝導性ネットワークが形成されて表面抵抗、電気伝導度などの電気的物性が優秀であることが分かる。
【0061】
ハ.光透過度分析
赤外線−可視光線分光分析器(UV−Vis spectrophotometer)を利用して実施例1および2と比較例1で製造された紙集電体(横3cmおよび縦2cm)を対象に550nm波長を有する光に対する透過度を測定したし、その結果を図6に示した。
【0062】
図6を詳察すると、本発明に係る実施例1および2の集電体は550nm波長を有する光に対してそれぞれ97±1%および74±1%の光透過度を有するものと示された。反面、比較例1の集電体は35±1%の光透過度を有するものと確認された。
【0063】
これは、本発明に係る集電体がナノセルロース繊維を含む繊維層上にナノセルロース繊維と伝導性ネットワーク構造を形成する導電材を含む導電層が備えられることによって、電気的物性はもちろん光学的物性も共に向上したことを意味する。
【0064】
二.機械的柔軟性分析
本発明に係る集電体の機械的柔軟性を確認するために、まず実施例2で製造された集電体の初期抵抗を測定し、0〜20mmの直径を有するアクリル棒に巻いた後の抵抗を測定して抵抗値の変化を観察した。
【0065】
また、実施例2で製造された集電体の初期抵抗を測定し、5mm間隔で5,000回繰り返し曲げ試験を遂行しながら抵抗を測定して抵抗値の変化を観察した。併せて、5,000回繰り返し曲げ試験を遂行した後の集電体のモホロジーを走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:15kV)と第1導電層に含まれた銀ナノワイヤーに対するエネルギー分散型分光(Energy dispersive X−ray spectroscopy、EDX)を分析したし、測定された結果は図7〜9に示した。
【0066】
図7〜9を詳察すると、本発明に係る集電体は機械的柔軟性が優秀であるためベンディングの程度による初期抵抗値の変化は現れなかったし、5,000回ベンディング後にも初期抵抗値が一定に維持され、導電層が脱離したり損傷が発生しないことが確認された。
【0067】
このような結果は本発明に係る紙集電体が電気放射工程を通じて製造されることによって、繊維層のナノセルロース繊維と導電層の導電材の伝導性ネットワークが効果的になされたということが分かる。
【0068】
実験例2.電極および電池性能評価
本発明により紙集電体を含む電極および前記電極を含む電池の性能を評価するために,前記電極を含むコイン形リチウム二次電池を製造した。
【0069】
具体的には、正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物(LiMn、95重量%)、導電剤であるカーボンブラック(2重量%)、および結合剤のポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF、3重量%)をN−メチル−2ピロリドン(NMP)に添加し混合して正極製造用スラリーを製造した。同様に負極活物質であるリチウムチタン酸化物(LiTi12、88重量%)、結合剤のポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride、PVDF、10重量%)および導電剤であるカーボンブラック(2重量%)をN−メチル−2ピロリドン(NMP)に添加し混合して負極製造用スラリーを製造した。このように製造された各スラリーを、実施例1および2と比較例1でそれぞれ製造された集電体に塗布し乾燥して正極および負極を製造した。有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1(v:v))の濃度が1Mとなるように溶解して非水性電解液を製造し、先立って製造された正極および負極と商業的に入手した分離膜(セルガード3501、Celgard3501、厚さ=25μm)を入れてコイン形セルを形成した後、非水性電解液を注入してコイン形リチウム二次電池を製造した。製造された各リチウム二次電池を対象に初期容量を測定したし、その結果を図10に示した。
【0070】
図10に示した通り、本発明に係る実施例1および2の集電体を含む電池は、それぞれ約100±1mAh/gおよび104±1mAh/gの初期容量を有するものと示されたが、比較例2の集電体を含む電池の場合、約12±1mAh/gの初期容量を有するものと確認された。
【0071】
これは、本発明に係る紙集電体を含む電池は電気的物性が優秀であることを意味する。
【0072】
本発明に係る紙集電体は、ナノセルロース繊維を含む繊維層上にナノセルロース繊維と伝導性ネットワークをなす導電材が含まれた導電層を具備することによって、重さが軽く、電極の製造時に電極のエネルギー密度が高く、機械的柔軟性に優れているだけでなく、素材の電気的物性と透明性をすべて確保できるため、電気化学素子の電極集電体として有用に使われ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10