(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クロック信号の前記特徴的な大きさが、該クロック信号のデューティ・サイクル、該クロック信号の振幅、および該クロック信号の前記周波数からなる一群から選択される請求項18に記載のシステム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
概説したことを考慮して、本発明は、電力を電気負荷に無線で伝送するためのシステムを提供し、このシステムの基本的なスキームは、
給電機器と、
給電機器から物理的に離れて独立した受電機器と、
を備える。
【0016】
一般に、受電機器は、給電機器から独立して空間内を自由に移動させることができる任意の機器であり、例えば、2つの機器間でいかなるタイプの物理的制約もなしに、給電機器に近付けたり、給電機器から離したりすることができる。言いかえれば、受電機器は、例えば、ケーブルまたは固定のもしくは取外し可能な機械的接続システムのような、いかなる機械的構成要素によっても給電機器に接続されていない。例として、受電機器は、携帯電話、タブレット、コンピュータ、テレビ、例えばLEDを使用する照明システム、家電機器、ウェアラブル機器、IOT機器、または電力供給を必要とする任意の他の電気/電子機器であってもよい。
【0017】
本発明によると、受電機器は、
−給電される電気負荷と、
−クロック信号を生成する制御回路と、
−電気負荷に接続された電力の受信装置と、
を備える。
【0018】
給電機器は、
−受電機器の受信装置との非導電性の磁気および/または電気結合、例えば、誘導性、容量性、または誘導性と容量性のハイブリッド結合を形成する送信装置と、
−受電機器の制御回路によって生成されたクロック信号を受信するとともに、クロック信号の周波数に比例した周波数を有するパイロット信号を生成する信号管理回路と、
−信号管理回路によって生成されたパイロット信号を受信するとともに、送信装置にパイロット信号の周波数に等しい周波数で、経時的に周期的に可変の電圧波を印加する電源回路と、
を備える少なくとも1つの電力の送信グループを備える。
【0019】
この解決手段により、給電機器の各電源回路の駆動は、受電機器上に配置された制御回路によって生成されたクロック信号を利用することによって効果的に得られ、その結果、給電機器は、クロック信号の発生器を必要としない。述べたように、携帯電話、タブレット、コンピュータなどであってもよい受電機器は、一般に、受電機器の動作のために高周波クロック信号を生成する制御回路を既に備えているため、結果として、この解決手段により、無線電力送信技術を実施するために必要なコストの劇的な低減が達成される。
【0020】
本発明の一態様によると、給電機器は、それぞれが、対応する送信装置、または信号管理回路および電源回路を備えた複数の送信グループを備えることができる。
【0021】
この解決手段により、高い使用柔軟性が有利には得られる。例えば、多数の送信グループがある場合に、送信装置を、給電機器に対する受電機器の異なる相対位置に対して負荷に給電することができるように配置することが有利には可能である。特に、送信装置をマトリックス分布に従って配置して、給電機器に作動面を形成することが可能であり、この作動面上に、受電機器を複数の位置および異なる向きに戴置させることができる。これらの位置のそれぞれにおいて、受電機器に近い送信装置は、したがって効果的に負荷に給電することができるのに対して、電力の伝送に関与しない送信装置は、スイッチがオフにされたままにすることができ、電気的損失および電磁汚染を低減させる。この解決手段の別の利点は、同じ給電機器の前述の作動面上に様々に配置することができる複数の機器に同時に独立して給電することができることにある。また、各送信装置が、それ自身の信号管理回路およびそれ自身の電源回路に接続されているという事実は、局所的損傷に対して給電機器を耐性にし、これにより、せいぜい単一の送信グループだけが破壊され、全体的なシステムを完全に動作可能状態にしておくことができる。この特定の特徴のおかげで、給電機器は、場合によっては、使用に有用な任意の形状を与えるように必要に応じて切断することができるマットの形態で作ることができる。例えば、前述のマットを切断して、机または壁に貼り付けることができ、マットの機能性を損なうことなく、任意の公知のシステムを用いて固定することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、各送信グループの送信装置は、
−対応する電源回路および対応する信号管理回路に接続された少なくとも1つの送信電機子
を備えることができ、
受電機器の受信装置は、
−第1の電気容量を形成するために、第1の送信グループの送信電機子に面する第1の受信電機子と、
−第2の電気容量を形成するために、第2の送信グループの送信電機子に面する第2の受信電機子と、
を備えることができる。
【0023】
この解決手段により、給電機器と受電機器との間で電力を伝送することを可能にする効果的な容量結合が形成される。電力のこの伝送を可能にするために、以降単に「第1の送信電機子」と呼ばれる第1の送信グループの送信電機子に接続された電源回路を、そのような電機子に、受電機器によって受信されたクロック信号に比例した周波数を有する電圧波を印加するように駆動することができるのに対して、以降単に「第2の送信電機子」と呼ばれる第2の送信グループの送信電機子は、基準電位(例えば接地)を参照することができる。このようにして、第1の結合容量と第2の結合容量との間に、受電機器上に配置された負荷に給電することができる経時的に可変の電圧差が形成される。あるいは、電力の伝送は、第1の送信電機子の電源回路を駆動して前述の電圧波を生成すること、および第2の送信電機子の電源回路を駆動して、第1の送信電機子に印加されたものに対して同じ周波数を有するが、位相のずれた電圧波、好ましくは第1の送信電機子に印加されたものに対して逆位相の電圧波を生成することによって得ることができる。
【0024】
本発明の本実施形態の一態様によると、受電機器の制御回路は、第1の受信電機子に接続されて、クロック信号を前記第1の受信電機子に印加することができ、給電機器の各送信装置の信号管理回路は、対応する送信電機子に接続されて、クロック信号を受信することができる。
【0025】
このようにして、受電機器によって生成されたクロック信号は、電力の伝送も可能にする同じ容量結合を介して有利には捕捉され、給電機器を簡略化および合理化することができる。実際には、電圧波は、給電機器から受電機器に向けて容量結合を横切るのに対して、一般に電圧波よりもはるかに高い周波数を有するクロック信号は、受電機器から給電機器に向けて容量結合または逆結合を横切り、電源回路を駆動するために使用され得る。
【0026】
しかしながら、このことは、他の実施形態において、電圧波をクロック信号から分離するために、主電機子の近くに配置された小さな電機子によって独立した容量結合を作り出すこと、したがって可能性のあるフィルタリング動作を簡略化することが可能であるという可能性を排除するものではない。
【0027】
クロック信号の捕捉は、電圧波の生成および印加と同時に行われてもよく、または電圧波の生成が中断された、したがって、電力の送信がない短いステップの間に行われてもよい。この最後の場合では、クロック信号を使用して、その後の電力送信ステップの間に、予め捕捉されたクロック信号に比例した周波数を有するパイロット信号を生成することができる適切なバッファを充電することができる。
【0028】
本発明の一態様によると、受電機器は、
−第1の受信電機子と電気負荷との間に直列に接続されたインダクタンスと、
−第1の受信電機子と制御回路との間に直列に接続された容量と、
を備えることもできる。
【0029】
インダクタンスは、給電機器から来る電圧波が電気負荷に到達することを可能にするが、制御回路によって生成されたクロック信号の通過を阻止する低域通過フィルタとして実質的に動作するため、クロック信号は、受電機器から給電機器の方に通過するように強いられる。一方、容量は、クロック信号が第1の受信電機子に到達することを可能にするが、電圧波の通過を阻止する高域通過フィルタとして動作するため、電圧波は、制御回路に到達することができない。
【0030】
給電機器の各送信グループは、対応する電源回路と対応する送信電機子との間に直列に接続されたインダクタンスを備えることができる。
【0031】
実質的に低域通過フィルタとして動作するこのインダクタンスは、電圧波が送信電機子に到達することを可能にするが、再充電される機器から来るクロック信号が電源回路に到達するのを阻止する。
【0032】
本発明のさらなる態様は、給電機器の各送信グループが送信電機子を対応する電源回路および対応する信号管理回路に、または基準電位(例えば接地)に選択的に接続する作動スイッチを備えることができることを予測する。
【0033】
言いかえれば、この作動スイッチは、送信電機子を接地または別の基準電位に接続する閉構成と、送信電機子を関連する電源回路および関連する信号管理回路に接続する開構成との間で選択的に切り替えることができる。
【0034】
この解決手段により、作動スイッチを有利に使用して、対応する送信電機子が受電機器の第1の受信電機子と結合する瞬間に各送信グループを自動的に作動させることができる。
【0035】
例えば、作動スイッチは、送信電機子が電源回路および信号管理回路の両方から完全に絶縁されるように、通常、閉位置に保持することができる。この構成では、信号管理回路は、電源回路の偶発的な作動を引き起こす可能性があるいかなるクロック信号も、起こり得る外乱も受信することができないため、完全にスイッチがオフにされたままであり、給電機器のエネルギー消費および電磁汚染を低減させる。この構成から、スイッチを周期的に短期間、開構成にして、送信電機子を電源回路および信号管理回路に接続することができる。これらの短期間の間に、送信電機子が、再充電される機器の第1の受信電機子に面していない(すなわち、受電機器が存在しない)場合は、信号管理回路は、いかなる場合も、いかなるクロック信号も受信せず、その結果、電源回路は、スイッチがオフにされたままであり、作動スイッチは、閉構成にされ得る。逆に、作動スイッチの開放時に、送信電機子が受電機器の第1の受信電機子に面している場合、信号管理回路は、クロック信号を自動的に受信し、送信電機子に、したがって負荷に給電するように電源回路に命令する。この場合、作動スイッチは、信号管理回路がクロック信号を受信し続ける限り、開構成に維持され得る。
【0036】
本発明の別の態様によると、給電機器の各送信グループは、同一の電源回路および同一の信号管理回路に接続された複数の送信電機子を備えることができる。
【0037】
この解決手段により、電源回路および信号管理回路を過度に増加させることなく、送信電機子の数を著しく増加させることが有利には可能であり、これによって、コストを抑えることができる。送信電機子の数のそのような複数化は、ひいては送信電機子それぞれのサイズの低下を可能にするという利点を有するため、送信電機子を、受信電機子との非常に精密な容量結合を得ることを可能する非常に密に分割された送信面を形成するように配置することができ、受電機器のいかなる位置に対しても電力の伝送を実質的に可能にし、電磁放射を低減させる。
【0038】
本発明の別の実施形態によると、各送信グループの送信装置は、
−電源回路に接続された少なくとも1つの送信誘導性素子を備える
ことができる一方、
受電機器の受信装置は、
−電気負荷に接続された、給電機器の送信インダクタとの誘導結合を形成する少なくとも1つの誘導性受信素子を備える
ことができる。
【0039】
この解決手段により、給電機器と受電機器との間の電力の伝送を効果的に誘導的に行うことができる。
【0040】
これに関して、給電機器の各送信装置は、誘導型の送信素子(1つまたは複数の誘導性送信素子)のみを備えることができ、このようにして電力の純粋な誘導性伝送を行うことが明記されるべきである。
【0041】
あるいは、給電機器の各送信装置は、容量性送信素子のみ(1つまたは複数の送信電機子)を備えることができ、このようにして電力の純粋に容量性伝送を行う。
【0042】
最後に、別の代替形態は、給電機器の各送信装置が、誘導性と容量性のハイブリッドの電力の伝送を行うように誘導性送信素子(1つまたは複数の誘導性送信素子)および容量性送信素子(1つまたは複数の送信電機子)の両方を備えることができ、これらの2つの技術を代わりにまたは同時に使用して、受電機器上に配置された負荷に給電することができることを予測する。
【0043】
上で概説された実施形態の全てに共通の、本発明の異なる態様によると、各送信グループの電源回路は、信号管理回路によって生成されたパイロット信号を受信するように、ならびにパイロット信号の周波数に等しい周波数で、断続的および周期的なやり方で送信装置を電圧発生器に接続する少なくとも1つのスイッチング回路を備えることができる。
【0044】
この解決手段により、比較的単純で、合理的で、非常に低コストのやり方で、負荷に給電する電圧波を生成することが有利には可能である。
【0045】
送信装置が誘導性送信素子(1つまたは複数の誘導性送信素子)および容量性送信素子(1つまたは複数の送信電機子)の両方を備える場合、対応する電源回路は、それぞれが少なくとも1つのそれぞれの送信素子(容量性または誘導性)に接続されているが、全てが信号管理回路によって生成された同じパイロット信号で制御される複数の前述のスイッチング回路を備えることができる。
【0046】
特にシステムが容量結合を使用する場合、電力の伝送において高性能および高効率を得るために、スイッチング回路が(例えばMHz、数十MHz、または数百MHz程度の)非常に高い周波数を有する電圧波を生成することができることが好ましい。
【0047】
この結果を得る特に有利なやり方は、全共振スキームに従って作られたスイッチング回路を使用することにあり、このスキームでは、回路トポロジーおよびパイロット・システムは、スイッチの動的な損失をほぼ完全に排除することを可能にし、したがって高いスイッチング周波数および低損失を可能にする。これらの目的を有利に達成するスイッチング回路のカテゴリーは、クラスD、E、F、またはE/Fの増幅器の適切な修正から導出される。
【0048】
これに関して、本発明の一態様は、スイッチング回路が電圧発生器と基準電位(例えば接地)との間に直列に接続された1対の電気スイッチを備えることができ、送信装置に接続された中央ノードが前記スイッチ間に備えられていることを予測する。
【0049】
このようにして、単に2つのスイッチをパイロット信号の周波数で交互にオンおよびオフすることによって、電圧波を生成することが有利には可能である。
【0050】
あるいは、スイッチング回路は、(チョークと呼ばれる)インダクタンス、および電圧発生器と基準電位(例えば接地)との間に直列に接続されたスイッチを備えることができ、送信装置に電気的に接続された中央ノードが前記インダクタンスと前記インダクタとの間に備えられる。
【0051】
この解決手段により、単一のスイッチを使用して電圧波を生成することが可能であり、したがってシステムのコストを下げることができる。
【0052】
両方の場合とも、スイッチは、能動スイッチ、例えばBJTおよびIGBTトランジスタ、N型MOSFET、P型MOSFET、CMOS、GaNをベースとする高性能のFET、GaAs、または他のスイッチとすることができる。
【0053】
したがって、回路の共振部分は、電圧波およびクロックを正しく方向付けして、これらを無関係にしておくこと、ならびにスイッチング回路を共振させて、効率および性能を向上させることの二重の機能を有することができる回路において、既に前述したものを備えるインダクタおよび/または容量から効果的に構成することができる。
【0054】
本発明の異なる態様によると、信号管理回路は、クロック信号をフィルタするために高域通過フィルタを備えることができる。
【0055】
このようにして、受電機器の制御回路から来るクロック信号は、クロック信号の品質を悪化させる可能性がある、起こり得る外乱から効果的にフィルタされ得る。特に、高域通過フィルタは、クロック信号を電圧波によって生成された外乱からフィルタして浄化することができるため、クロック信号が容量結合システムの送信電機子を介して捕捉される場合、特にそのような捕捉が電力の伝送と同時に起きる場合に、この規定は、非常に重要である。
【0056】
本発明の別の態様によると、信号管理回路は、クロック信号の周波数を低減させるための分周器を備えることができる。
【0057】
分周器の使用は、受電機器上に配置された制御回路が、最新世代のコンピュータまたは携帯電話の場合のように、周波数が一般に電源回路を効果的に駆動するのに必要な周波数よりも大きい非常に高い周波数のクロック信号を生成するように構成されている場合に有用である。後で分周器によって低減される、特に高い周波数を使用することの利点は、主にクロック信号の搬送波の周波数を電源信号の搬送波から遠ざけることにあり、結果として、分周器に送られるクロック信号から電源波に関連した高調波成分を極めて容易に排除することができるフィルタリング段を簡易化および小型化する。
【0058】
前述の分周器は、例えば、DQフリップフロップ、JKフリップフロップ、Tフリップフロップ、または分周器として構成することができる他の回路のような論理ゲートのカスケードを備えることができる。
【0059】
前述したように、システムが容量結合を使用する場合、電力の伝送は、第1の送信電機子の電源回路を駆動して電圧波を生成すること、および第2の送信電機子の電源回路を駆動して、第1の送信電機子に印加されたものに対して同じ周波数を有するが、位相のずれた、好ましくは逆位相の電圧波を生成することによって得ることができる。
【0060】
この動作を可能にするために、本発明の一態様は、第1に、受電機器の制御回路が第2のクロック信号を生成して第2の受信電機子に印加することができることを予測する。
【0061】
このようにして、第2の送信電機子に接続された電源回路も、前記第2の電機子に関連する電圧波を印加するように効果的に作動させることができる。
【0062】
第2の送信電機子に印加される電圧波は、第1の送信電機子に印加される電圧波に対して、好ましくは逆位相で位相がずれていなければならないため、解決手段は、第2のクロック信号が、第1の受信電機子に印加されるクロック信号に対して同じ周波数を有するが、位相が例えば逆位相でずれているということであってもよい。
【0063】
しかしながら、この解決手段は、例えば、DQフリップフロップのカスケードに基づくもののような一部の分周器が、所定のクロック信号およびこのクロック信号の反転信号(すなわち、等しい周波数であるが逆位相のクロック信号)の両方から開始する同一位相を有する出力信号を返し、したがってどちらの場合とも、結果として生じる電圧波が、同じ位相を有し、非常に高い周波数を有するクロックの1周期に等しい値しか遅延されていないため、必ずしも使用できるとは限らない。
【0064】
この欠点を克服するために、本発明の実施形態は、各送信グループの信号管理回路が、
− クロック信号に対して逆位相の信号を生成するためのモジュールと、
− パイロット信号としてクロック信号または逆位相の信号を選択する制御モジュールと、
を備えることができることを予測する。
【0065】
この解決手段により、各信号管理回路は、受電機器から来る(場合によっては分周された)クロック信号と、反転クロック信号(すなわち逆位相の)と、を常に有し、対応する送信電機子が受電機器の第1の受信電機子に面しているか、それとも第2の受信電機子に面しているかに応じて、電源回路をクロック信号によって駆動すべきか、それともクロック信号の反転信号によって駆動すべきかを選択することができる。
【0066】
これに関して、制御モジュールは、受電機器の相対位置を示す位置信号を生成するセンサに接続することができ、前記位置信号に基づいてパイロット信号を選択するように構成することができる。
【0067】
言いかえれば、制御モジュールは、制御モジュールが受信電機子の1つまたは両方の相対位置を決定することを可能にする信号を生成するように、受電機器上に配置された1つまたは複数の基準素子と相互作用する(例えば、磁気、ホール効果、電界、光、音、RFID送信器、NFC、アンテナなどに基づく)能動または受動センサに接続することができ、どの受信電機子が実際に送信電機子に面しているかを理解し、したがって、電源回路をクロック信号に基づいて駆動すべきか、それともクロック信号の反転信号に基づいて駆動すべきかを選択する。
【0068】
あるいは、制御モジュールは、クロック信号の特徴的な大きさを示すパラメータの値を測定して、測定された値を前記パラメータの基準値と比較して、基準値が基準値よりも高いかまたは低いかに応じて、パイロット信号を選択するように構成することができる。
【0069】
この解決手段により、受電機器の受信電機子に前述の特徴的な大きさに対して異なる値を有する2つのクロック信号を印加することによって、各制御モジュールは、関連する送信電機子が第1の受信電機子に面しているか、それとも第2の受信電機子に面しているかを効果的に自動的に理解することができ、したがって電源回路をクロック信号に基づいて駆動すべきか、それともクロック信号の反転信号に基づいて駆動すべきかを適切に選択することができる。
【0070】
前述の特徴的な大きさは、例えば、クロック信号のデューティ・サイクル、クロック信号の振幅、およびクロック信号の周波数から構成されるグループから選択することができる。
【0071】
これらの特徴的な大きさは、実際に、分周器の下流でも識別することができるという利点を有する。
【0072】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の表に示す図の助けを借りて、非限定的な例として提供される以下の説明を読むことから明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1の一般的なスキームを参照すると、電力を無線で伝送するためのシステム100は、給電機器105と、受電機器110とを備え、受電機器110が給電機器105から物理的に離れて独立している。言いかえれば、受電機器110は、給電機器105から独立して空間内を自由に移動させることができる任意の機器であり、例えば、2つの機器間のいかなるタイプの物理的制約もなしに、給電機器105に近付けたり、または離したりすることができる。
【0075】
例として、受電機器110は、携帯電話、タブレット、コンピュータ、テレビ、例えばLEDを使用する照明システム、家電機器、ウェアラブル機器、IOT機器、車両、あるいは内蔵電池を動作させるためにおよび/または場合によっては再充電するために電力供給を必要とする任意の他の電気/電子機器である。
【0076】
受電機器110は、概略的に、給電される少なくとも1つの電気負荷115(例えば電池)と、電気負荷115に接続された電力の受信装置120と、電気負荷115によって給電されることができ、電気負荷115に印加される電圧および/または電流あるいは他の電気測定値を読み取ることができ、クロック信号を生成することができる制御回路125と、を備えている。
【0077】
制御回路125によって生成されるクロック信号は、典型的には、所定の周波数値およびデューティ・サイクルを有する矩形波電圧信号である。特に、そのようなクロック信号は、例えば数百MHz、さらにはGHz程度の高周波/超高周波である場合がある。
【0078】
受電機器110は、場合によっては、受信装置120に印加される交流電圧を、電気負荷115に給電するのに有用な直流電圧に変換することができるように、受信装置120と電気負荷115との間に直列に接続された整流器130を備えることもできる。
【0079】
給電機器105は、電圧発生器140によって給電可能な複数の電力の送信グループ135を備えている。
【0080】
ここで、電圧発生器140は、経時的に実質的に一定のままの電位差(電圧)を発生させることができる任意の電気機器を意味すると解釈されるべきであることが直ちに明記されるべきである。したがって、そのような機器は、例えば電池のような、機器の両端に一定の電圧を直接発生させる機器であってもよいが、例えば通常の家庭の配電網から来る交流電圧を直流電圧に変換する整流器であってもよく、あるいは開始直流電圧を送信グループ135に給電する適切な電圧に変換するDC/DCコンバータであってもよい。
【0081】
各送信グループ135は、概略的に、電力の送信装置145と、信号管理回路150と、電源回路155と、を備えている。
【0082】
一般に、送信装置145は、受電機器110の受信装置120と、例えば、誘導性、容量性、または誘導性と容量性のハイブリッドの非導電性電気結合を形成することができる装置である。
【0083】
信号管理回路150は、一般に、受電機器110の制御回路125によって生成されたクロック信号を受信するように、および受信したクロック信号の周波数に比例した周波数を有するパイロット信号を生成する回路である。
【0084】
パイロット信号は、所定の周波数値およびデューティ・サイクルを有する矩形波電圧信号とすることもできる。パイロット信号は、例えば、MHz、数十MHz、または数百MHz程度の非常に高い周波数を有することもできる。
【0085】
最後に、電源回路155は、信号管理回路150によって生成されたパイロット信号を受信するように、ならびにパイロット信号の周波数に等しい周波数で、経時的に周期的に可変の、電気負荷115に効果的に給電するのに必要な電力を提供するのに十分な振幅を有する電圧波を送信装置145に印加する回路である。
【0086】
そのような電圧波は、一般に、対応する送信装置145をパイロット信号の周波数に等しい周波数で、断続的および周期的に電圧発生器140に接続することによって、電源回路155によって得られる。
【0087】
このようにして、送信装置145と受信装置120との間に形成された電気および/または磁気結合によって、電圧波は、給電機器105と受電機器110との間にいかなる導電性電気接続も必要とせずに、電気負荷115に到達し給電することができる。
【0088】
複数の送信グループ135によって、給電機器105に対する受電機器110の異なる相対位置に対してこの電力の伝送を得ることができる。特に、異なる送信グループ135の送信装置145をマトリックス分布に従って配置して、給電機器105の作動面160を形成することが可能であり、この作動面上に、受電機器110を複数の位置および異なる向きに戴置させることができ、それぞれの位置および向きにおいて、受電機器110に近い送信装置145が電気負荷115に効果的に給電することができるのに対して、電力の伝送に関与する送信装置145は、スイッチがオフにされたまにすることができ、電気的損失および電磁汚染を低減させる。
【0089】
この解決手段の別の利点は、給電機器105の前述の作動面160上に様々に配置することができる複数の機器110を同時に給電することができることにある。
【0090】
また、各送信装置145がそれ自身の信号管理回路150およびそれ自身の電源回路155に接続されているという事実は、局所的な損傷に対して給電機器105を耐性にし、これにより、せいぜい単一の送信グループ135だけが破壊され、全体的なシステムを完全に動作可能にしておくことができる。
【0091】
この特定の特徴のおかげで、場合によっては、給電機器105は、使用に適した任意の形状が与えられるように、必要に応じて切断することができるマットまたはシートの形態で作ることができる。例えば、前述のマットまたはシートを切断して、机または壁に貼り付けることができ、マットの機能性を損なうことなく、例えばテレビ受像機、ブラケット、フレーム、および照明装置のねじまたは他の固定システムのためのスペースを作るために穴を開けることができる。
【0092】
前述の利点だけでなく、各電源回路155の駆動は、常に、受電機器110上に配置された制御回路125によって生成されるクロック信号を利用することによって得られるため、給電機器105は、クロック信号のいかなる他の発生器(例えば発振器)も備える必要はない。
【0093】
この最後の特徴は、受電機器110(例えば、携帯電話、タブレット、またはコンピュータ)が、一般に、受電機器110の動作のために高周波クロック信号を生成する制御回路125を既に備えているという事実と共に、明らかに無線電力送信技術を実施するのに必要なコストの劇的な低減をもたらす。実際、どの送信グループ135を作動させるべきか、どれをオフにしておくべきかを決定するために使用される複雑な通信システムを有する必要がないため、各送信グループ135に独自のクロック発生回路を備える必要がない。提案されたシステムは、確かに、各送信グループ135のコストを下げ、同時に、受電機器110の近くに配置された送信グループ135のみを作動させるための簡単なやり方を保証する。
【0094】
この一般的なスキームから開始して、システム100の第1の実施形態が
図2に示されており、各送信グループ135の送信装置145が、適切な電気分枝170によって対応する電源回路155に接続することができる少なくとも1つの送信電機子165を備えることができることを予測する。
【0095】
送信電機子165は、例えば、プレート、薄片、シートから、または他の任意の形態の導電性材料から作ることができる。送信電機子165は、例えば三角形、円形、六角形などの他の形状を除外することなく、例えば矩形または正方形の形状とすることができる。
【0096】
様々な送信グループ135の送信電機子165は、前述の作動面160を全体的に画定するように、例えば同一平面上に互いに並んで配置することができ、作動面160を要求に応じて任意の形状およびサイズとすることができる。
【0097】
特に、送信電機子165は、場合によっては、誘電体材料の好ましくは薄い層によって覆われた作動面160と実質的に同一平面上にあってもよい。
【0098】
また、送信電機子165は、互いに近接して、または離れて、多かれ少なかれ規則的なやり方で空間内に相互に(reciprocally)配置されてもよい。例えば、送信電機子165は、一次元分布に従って配置され、すなわち互いに整列して単一の列を形成することができ、または例えばマトリックス構造に従って多次元にわたって分布することができ、送信電機子165が、例えば
図3に示すように、実質的にマトリックスのノードのように行および列に整列する。
【0099】
既に述べたように、送信電機子165は、様々なサイズおよび/または幾何学的形状とすることができる。特に、送信電機子165の形状および/またはサイズは、給電機器105の異なるモデル間および給電機器105の同じモデル内の両方で異なっていてもよい。送信電機子165は、任意の形状、厚さ、またはサイズの、剛性もしくは可撓性の、柔らかいもしくは硬い、平面もしくは非平面の支持体上に配置することができる。例えば、送信電機子165は、局所的に導電性となるように、厚いもしくは薄い誘電体基板上に導電性の薄片を貼り付けることによって、または2層の誘電体材料間に前記導電性の薄片を入れることによって、あるいはさらに非導電性材料の電気的特性を修正することによって作ることができる。
【0100】
受電機器110の受信装置120は、上で概説された送信グループ135と電気的に結合するために、第1の受信電機子175および第2の受信電機子180を備える少なくとも1対の受信電機子を備えることができる。
【0101】
受信電機子175および180は、185および190でそれぞれ示されるそれぞれの電気分枝を介して電気負荷115に接続されており、これらの電気分枝は、整流器130によって遮断されてもよい。
【0102】
また、受信電機子175および180は、プレート、薄片、シート、または他の形態の導電性材料として作ることができ、全体に送信電機子165よりもはるかに大きな寸法のものである。場合によっては、各受信電機子175および180は、例えば電磁汚染の問題を最小限に抑えるために、互いに適切に接続された多くのサイズの小さなプレートから作ることができる。受信電機子175および180は、給電機器105の作動面160と一致する形状を有する受信面195を受電機器110において全体的に画定するように、例えば同一平面上に互いに並んで配置することができる。受信電機子175および180は、場合によっては、好ましくは薄い厚さの誘電体層で覆われた受信面195と実質的に同一平面上に配置される。受信電機子175および180のサイズならびに/または形状は、例えば、機器のサイズ、機器自体に存在する幾何学的な制約、ならびに機器自体の適切な動作に必要な電力に応じて、異なる受電機器110ごとに、およびそれぞれの単一の受電機器110内の両方で異なっていてもよい。
【0103】
重要なことは、受電機器110上の受信電機子175および180の形状、サイズならびに配置と、給電機器105上の送信電機子165の数、形状、サイズおよび配置とが、受電機器110の受信面195を給電機器105の作動面160に向けて戴置させるまたは近付けることによって、給電機器105に対する受電機器110の複数の位置および/または相対的な向きに対して、好ましくは受電機器110の任意の位置および/または向きに対して、第1の受信電機子175が少なくとも1つの第1の送信グループ135の送信電機子165に面し、第2の受信電機子180が第2の送信グループ135の送信電機子165に面するようになっていることである。
【0104】
このようにして、受電機器110の前述の位置および/または向きの全てにおいて、第1の受信電機子175および第2の受信電機子180は、これらに面する送信電機子165と共に、給電機器105と受電機器110との間に容量性無線接続を形成するインピーダンスを構成する少なくとも1対の電気容量を形成する。
【0105】
この容量結合を介して電力の伝送を可能にするために、第1の受信電機子175に面する送信電機子165に接続された電源回路155は、受電機器110から受信したクロック信号に比例した周波数を有する電圧波をそのような電機子に印加するように駆動され得るのに対して、第2の受信電機子180に面する送信電機子165は、基準電位(例えば接地)を参照することができる。
【0106】
このようにして、第1の結合容量と第2結合容量との間には、受電機器110上に配置された電気負荷115に給電することが可能な経時的に可変の電圧差が形成される。
【0107】
したがって、この解決手段によると、受電機器の制御回路125が単一のクロック信号を生成して給電機器105に送信するだけで十分である。
【0108】
このクロック信号は、2つの回路間の任意の非導電性の通信システムを介して、例えば誘導的に、場合によっては小さな独立したアンテナを使用して、第1の受信電機子175に面する送信電機子165に接続された信号管理回路150によって受信され得る。
【0109】
しかしながら、本システムの好ましい態様によると、受電機器110の制御回路125は、第1の受信電機子175にクロック信号を直接印加することができ、各信号管理回路150は、対応する送信電機子165からクロック信号を直接受信することができる。
【0110】
特に、制御回路125は、クロック信号を、第1の受信電機子175と整流器130との間に備えられる接続ノードに一緒に流れ込む例えば電気分枝200(存在する場合は)を介して、第1の受信電機子175を電気負荷115に接続する電気分枝185に印加することができる。
【0111】
典型的には高い値(例えば数十または数百nH程度)のインダクタンス205を、制御回路125の前述の接続ノードと電気負荷115との間に、例えば接続ノードと整流器130との間に電気分枝185に沿って直列に接続することができ、これにより、給電機器105からの電圧波を電気負荷115に到達させることはできるが、制御回路125によって生成されたクロック信号が通過するのを阻止することができ、したがってクロック信号は、受電機器110から給電機器105の方に通過するように強いられる。
【0112】
典型的には小さな値(例えば数十または数百pF程度)の電気容量210を、接続ノードと制御回路125との間に電気分枝200に沿って直列に接続することもでき、これにより、クロック信号を第1の受信電機子175に到達させることはできるが、電圧波が通過するのを阻止し、したがって電圧波は、制御回路125に到達することができない。
【0113】
最後に、受電機器110上に、基準電位(例えば接地)に接続された第3の電機子211があってもよく、この第3の電機子211は、少なくともクロック信号の送信周波数において、受電機器110上に配置された回路の接地と給電機器105上に配置された回路の接地との間に低インピーダンス経路を生成するのに有用である。
【0114】
図4でより詳細に示すように、各送信グループ135の信号管理回路150は、電源回路155を送信電機子165に接続する電気分枝170から、例えば前記電気分枝170から直接分岐する電気分枝215を介して、クロック信号を捕捉してもよい。
【0115】
インダクタンス220は、電源回路155と、電気分枝215が分岐するノードとの間に電気分枝170に沿って配置することができ、このインダクタンス220は、受電機器110上に配置された制御回路125から来るクロック信号が、電源回路155と相互作用することができないようにするのに十分に高い値(例えば数十nHまたは数百nH程度)を有することができ、電圧波が送信電機子165の方に通過することを可能にする。
【0116】
このようにして、受電機器110によって生成されたクロック信号は、電力の伝送も可能にする同じ容量結合を介して、第1の受信電機子175に面する送信電機子165からの信号管理回路150によって有利には捕捉することができ、給電機器105を簡略化および合理化することができる。
【0117】
したがって、そのような送信電機子165のそれぞれは、電気負荷115に印加される電力を電気負荷115に伝送する電圧波を有することができるのに対して、給電機器105の他の送信電機子165は全て、スイッチがオフにされたままか、または基準電位(例えば接地)を参照したままである。
【0118】
これに関して、各送信グループ135は、信号管理回路150と送信電機子165との間に電気分枝170に沿って配置された作動スイッチ225を備えることができ、この作動スイッチ225は、送信電機子165を対応する電源回路155および対応する信号管理回路150に、または基準電位(例えば接地)に選択的に接続する。
【0119】
言いかえれば、この作動スイッチ225は、送信電機子165を、接地または別の基準電位を参照する電気分枝230に接続する閉構成と、送信電機子165を、関連する電源回路155および関連する信号管理回路150に接続する電気分枝170に接続する開構成との間で選択的に切り替えることができる。
【0120】
電気容量235は、電気分枝230上に配置されて、例えば、給電機器105上に配置されたデータ回路と受電機器110上に配置されたデータ回路との間の接地接続を生成することができる。
【0121】
この解決手段によれば、作動スイッチ225は、給電機器105の制御回路によって有利に使用されて、対応する送信電機子165が受電機器110の第1の受信電機子175と結合する瞬間に各送信グループ135を自動的に作動させることができる。
【0122】
例えば、各送信グループ135の作動スイッチ225は、通常閉位置に保持されることができ、これにより、送信電機子165は、電源回路155および信号管理回路150の両方から完全に絶縁される。この構成では、信号管理回路150は、電源回路155の偶発的な作動を引き起こす可能性がある、いかなるクロック信号も、起こり得る妨害も受信することができず、したがって、信号管理回路150は、完全にスイッチがオフにされたままであり、給電機器のエネルギー消費および電磁汚染を低減させ、同時に送信回路105の接地と受電機器110の接地との間の信号接続を確実にする。
【0123】
この構成から開始して、作動スイッチ225は、タイマーまたは適切なカウンタの助けを借りて、周期的に短期間の間、開構成にされ、例えば送信電機子165を電源回路155および信号管理回路150に接続することができる。これらの短期間の間、送信電機子165が受電機器110の第1の受信電機子175に面していない場合、信号管理回路150は、いかなる場合もいかなるクロック信号も受信せず、その結果、電源回路155は、スイッチがオフにされたままであり、作動スイッチ225は、閉構成に戻され得る。その逆に、作動スイッチ225の開放時に、送信電機子165が受電機器110の第1の受信電機子175に面している場合、信号管理回路150は、クロック信号を自動的に受信し、送信電機子165に、したがって電気負荷115に給電するように電源回路155に命令する。この場合、作動スイッチ225は、信号管理回路150がクロック信号を受信し続ける限り、開構成に維持され得る。
【0124】
同時に、受電機器110の第2の受信電機子180に面する送信電機子165に接続された作動スイッチ225は、関連する信号管理回路150がいかなるクロック信号も受信しないため、常に閉構成のままであり、第2の送信電機子165を基準電位(例えば接地)に接続されたままにする。
【0125】
システム100の実施形態によると、受電機器110の制御回路125によるクロック信号の生成、したがって信号管理回路150によるクロック信号の捕捉は、電圧波の生成が一時的に停止され、したがって電力の送信がない短いステップの間に行うことができる。この場合、クロック信号を使用して、その後の電力送信ステップの間に電源回路155を駆動するのに必要なパイロット信号を生成することができる適切なバッファ(図示せず)を充電することができる。
【0126】
言いかえれば、傾向的に短いアイドル時間を利用することが可能であり、その間に電源回路155のスイッチがオフに保持されて、クロック信号をバッファに格納することが可能であり、続いて、このバッファを使用して続く電力送信ステップにおいてパイロット信号を生成し、これが終了すると電源回路155のスイッチが再びオフにされて制御信号を再生する。制御信号を再生する必要性は、第1の受信電機子175に面する送信電機子165の全てが、誤動作あるいは電力および/または効率の損失を回避するために互いに同相で電源波を伝送しなければならないため、信号の位相の不変性が保証される精度に由来する。
【0127】
この規定は、クロック信号と電圧波との間に干渉がないため、信号管理回路150および可能性のあるフィルタリング段の設計を簡略化する。一方、この手法では、データ(制御データだけでなく、他の目的のために、例えば、音楽、ビデオ、ファイルなどを送信面に近い多くの機器間で共有するためにユーザが使用することができるデータ)および電力の同時伝送を行うことができず、さらに、バッファを必要とし、レイテンシを増加させ、システムの理論上の最大通過帯域を減少させる。
【0128】
このため、システム100の好ましい実施形態は、クロック信号の生成および捕捉が電圧波の生成および印加と同時に行われることを予測する。
【0129】
この場合、各送信グループ135の信号管理回路150は、好ましくは、送信電機子165に直接接続された電気分枝215上に配置された、クロック信号をフィルタするフィルタ240を備える。
【0130】
特に、フィルタ240は、電源波を阻止または大幅に減衰させることができ、一方で、受電機器110上に配置された制御回路125から来るクロック信号を通過させることができる高域通過特性(例えば数十または数百MHz)を有することができる。
【0131】
また、フィルタ240は、電源回路によって生成された電源波をさらに減衰させるために、適切な低域遮断または帯域遮断特性を有することができる。
【0132】
容量結合を介してデータおよび電力を同時に送信しなければならない場合、フィルタ240は、システム100の本質的な部分を構成することが強調されるべきである。この場合、フィルタ240を簡略化するために、クロック信号の周波数と電圧波の基本高調波の周波数を可能な限り離しておくことが適切な場合がある。
【0133】
一部の実施形態では、フィルタ240は、可能な限りクリーンなクロック信号を受電機器110から得るために、例えば、ベッセル、チェビシェフ、バターワース、楕円、逆チェビシェフフィルタ、または可能な限り電圧波の寄与を減衰させることを目的とした他の適切なフィルタのような、1次よりも高次のフィルタとすることができる。
【0134】
信号管理回路150は、フィルタ240の下流に、クロック信号の周波数を低減させる適切な分周器245も備えることができる。
【0135】
この周波数低減器245の使用は、受電機器110上に配置された制御回路125が、最新世代のコンピュータまたは携帯電話の場合のように、周波数が電源回路155を効果的に駆動するのに必要な周波数よりも一般に大きい非常に高い周波数のクロック信号を生成するように構成されている場合に特に有用である。また、このことは、電源段の周波数とクロック信号の周波数とが非常に離れているため、フィルタ240を実質的に簡略化することを可能にし、したがって、非常に高い周波数のクロック信号のみを分周器245に到達させることが単純な高域通過フィルタ(例えば数pFの容量)で容易である。
【0136】
図5に示すように、分周器245は、例えば、それぞれがデータ(D)用の入力、2つの相補出力(Q、Q’)、および同期入力(CLK)を有するDQフリップフロップのような論理ゲートのカスケードを備えることができる。
【0137】
例えば、DQフリップフロップの使用法を参照すると、これらのフリップフロップは、「元の」クロック信号、すなわちフィルタ240から出力されたものが、第1のDQフリップフロップの同期入力に入るように互いに接続することができる。第1のDQフリップフロップの出力信号Qの反転信号Q’が同じDQフリップフロップの入力ゲートDに接続されているのに対して、出力信号Qは、次のDQフリップフロップの同期ゲートCLKに接続されているなどである。
【0138】
カスケードの第1のDQフリップフロップは、「元の」クロック信号のデューティ・サイクルを修正して、「元の」クロック信号のデューティ・サイクルにかかわらず50%に等しいデューティ・サイクルを有する新しい矩形波クロック信号を出力に供給することに留意されたい。
【0139】
このようにして、カスケードの各DQフリップフロップの出力Qは、デューティ・サイクルが50%に等しく、入力で受信したクロック信号に対して周波数が半分になった矩形波クロック信号である。
【0140】
したがって、分周器245の出力において、電源回路155のパイロット信号として効果的に使用することができるクロック信号を得るために、DQフリップフロップのカスケードの数を適切に選択することによって、「元の」クロック信号の周波数を分割することが可能である。
【0141】
しかしながら、これは、他の実施形態において、分周器245がJKフリップフロップ、Tフリップフロップ、または分周器として構成することができる他の回路に基づくことができるという可能性を排除するものではない。各送信グループ135の電源回路155に関する限り、この回路は、対応する信号管理回路150によって生成されたパイロット信号を、この場合、分周器245から出力された信号を受信するように、ならびにパイロット信号の周波数に等しい周波数で、対応する送信電機子165を電圧発生器140に断続的および周期的に接続する少なくとも1つのスイッチング回路250(
図6および
図7参照)を備えることができる。
【0142】
電力の伝送において高い性能および効率を得るために、スイッチング回路250は、非常に高い周波数(例えばMHz、数十MHz、または数百MHz程度)と、電気負荷115に給電するのに十分な振幅と、を有する電圧波を生成できることが好ましい。
【0143】
この結果を得る特に有利なやり方は、ソフトスイッチング、準共振、または全共振スキームに従って作られたスイッチング回路250を使用することにあり、このスキームでは回路トポロジーおよび駆動システムは、スイッチの動的損失をほぼ完全に排除することを可能にし、したがって高いスイッチング周波数250および低損失を可能にする。これらの目的を有利に達成するスイッチング回路250のカテゴリーは、クラスD、E、F、またはE/Fの増幅器の適切な修正から導出される。
【0144】
一例として、スイッチング回路250は、
図6のスキームに示すように、電圧発生器140と基準電位(例えば接地)との間に直列に接続された1対のスイッチ255および260を備えることができる。
【0145】
特に、第1のスイッチ255は、電圧発生器140に接続されているのに対して、第2のスイッチ260は、(電圧発生器140の電位とは明らかに異なる)基準電位、例えば接地電位に接続されている。
【0146】
第1のスイッチ255と第2のスイッチ260との間には、中央ノード265があり、このノードは、電気分枝170を介して対応する送信電機子165に接続されている。
【0147】
この1対のスイッチ255および260は、本質的に、送信電機子165に給電する高周波電圧波を生成するために使用されるブリッジ手段Hを構成する。
【0148】
1対のスイッチ255および260は、例えば、1対のBJTまたはIGBTトランジスタ、N型MOSFET、P型MOSFET、CMOSペア、GaNをベースとする高性能FET、GaAs、または他のスイッチとすることができる。
【0149】
このようにして、2つのスイッチ255および260を、パイロット信号の周波数で単に交互にオンおよびオフに切り替えることによって電圧波を生成することが有利には可能である。
【0150】
2つのスイッチ(例えばMOSFET)を駆動するために、信号管理回路150から出力されたパイロット信号を受信して、そのような信号を、2つの典型的には高周波のスイッチを交互にオンおよびオフに切り替えるのに十分な(典型的には電圧および/または電流で増幅された)適切な波に変換する適切なドライバ270を有することが必要な場合がある。
【0151】
インダクタンス220、電機子175に近接させた電機子165から構成される容量、インダクタンス205、および回路の適切な調整のためにシステムに挿入される可能性のある他のリアクタンス素子などの、回路内に分散されたリアクタンス素子を備えるシステムが、全システムが直列または並列のLC共振器を構成するように、調整される場合、回路全体を、実質的に損失を制限し、動作周波数を大幅に増加させことができるゼロ電圧スイッチ(ZVS)またはゼロ電流スイッチ(ZCS)タイプの共振回路のようにすることができ、したがって回路の低コストおよび低容積、ならびに送信される高電力密度を確実にする。
【0152】
そのような目的は、送信電気分枝170上の適切な整合回路網、場合によってはさらなるリアクタンス素子の追加の両方によって追求することができる。
【0153】
しかしながら、このタイプのスイッチング回路250は、典型的には高周波で動作する2つのスイッチ255および260の存在によってペナルティが課せられる。これらのスイッチのうち、スイッチ255は、典型的にはフローティングノードを参照し、したがって高周波であまり機能的でも高価でもないブートストラップ回路を必要とするため、最も重要である。あるいは、第1のスイッチ255は、例えばP−MOSから構成することができるが、この場合、性能が典型的には低下し、P−MOSによって占有される面積は、同様の性能のN−MOSよりも大きい。
【0154】
この欠点を回避し、システム100をさらに簡略化するために(
図7参照)、スイッチング回路250は、電圧発生器140と基準電位(例えば接地)との間に直列に接続されたインダクタンス275(チョークと呼ばれる)およびスイッチ280を備えることができ、ここでインダクタンスは、電圧発生器140に直接接続されているのに対して、スイッチ280は、基準電位に接続されている。
【0155】
実際には、インダクタンス275は、前の実施形態の第1のスイッチ255を置き換えている。
【0156】
この場合も、スイッチ280は、例えば、BJTもしくはIGBTトランジスタ、N型MOSFET、P型MOSFET、CMOS、GaNをベースとする高性能FET、GaAs、または別のスイッチとすることができる。
【0157】
インダクタンス220が存在することができる電気分枝170を介して送信電機子165に接続される中央ノード285は、前記インダクタンス275とインダクタ280との間に備えられている。
【0158】
スイッチ280と並列に、適切な値の容量290がさらに導入されてもよく、この容量は、スイッチ280の寄生容量の全てまたは一部から構成することもできる。
【0159】
このようにして、パイロット信号の周波数で単一のスイッチ280を単にオンおよびオフに切り替えることによって、電圧波を生成することが有利には可能である。
【0160】
スイッチを駆動するために、信号管理回路150から出力されたパイロット信号を受信して、そのような信号を、スイッチ280を高周波でオンおよびオフに切り替えるのに適した適切な波に変換する適切なドライバ295を有することが必要な場合がある。
【0161】
スイッチング回路250のこの第2の実施態様は、適切に調整される場合は、特に効率的なZVSまたはZCS回路を構成することができ、したがって損失が極めて限られ、非常に高い周波数でさえ駆動することが容易であるという特徴がある。
【0162】
本実施態様では、それぞれが対応する送信電機子165に、場合によってはインダクタンス220を介して接続された複数のスイッチング回路250が並列に存在しているため、上で提案されたスイッチング回路は両方とも、例えばクラスD(場合によっては共振)またはクラスEもしくはFの古典的な増幅器とどのように区別されるかが強調されるべきである。したがって、提案された回路の解析的モデリングおよびサイズ設定は、公知のスキームとは実質的に異なるが、それでもなお、全体的にプラスの効果(特に、共振スキームに典型的な低損失および高周波)を再現する。
【0163】
提案された実施態様は、最新技術に対して実質的な利点を有し、特に、提案された実施態様は、クラスEもしくはFの公知の増幅器または他の公知のZVSもしくはZCS共振回路と区別される一方で、いかなる場合も、実質的に損失なしに、または極めて限られた損失で、スイッチのオンからオフへのおよびその逆の遷移を可能にするアーキテクチャを利用するため、特に有効である。
【0164】
複数のスイッチング回路250が並列に存在することは、出力電力が複数のスイッチ間に、例えばN型MOSFET間に割り振られ、したがって、スイッチのそれぞれが総電力の割合しか管理せず、したがってより小さなサイズにすることができ、こうして、例えば集積回路に集積することがより容易になり、高い動作周波数にすることがより容易になり、提案された無線システムによって送信される電力を最大化するのと同時にリアクタンス素子を小型化するのに有用なため、さらなる利点を構成する。
【0165】
システムが容量結合を使用する場合、電気負荷115への電力の伝送は、前述したことに対する代替のやり方で、例えば第1の受信電機子175に面する送信電機子165に所定の電圧波を印加し、同時に第2の受信電機子180に面する送信電機子に、送信電機子165に印加される電圧波に対して同じ周波数を有するが、位相のずれた、好ましく逆位相の電圧波を印加することよっても得ることができる。
【0166】
この動作を得るために、他の全ての特性を実質的に変わらないままにして、前述のシステム100を以下に示すように修正することができる。
【0167】
特に、
図8の回路図に示すように、受電機器110の制御回路125が第2のクロック信号を生成して第2の受信電機子180に印加することができることが予測される。
【0168】
例えば、制御回路125は、第1の受信電機子175に対して予測されたものと実質的に類似したやり方で、第2のクロック信号を、第2の受信電機子180と整流器130との間に備えられる接続ノードに一緒に流れ込む例えば電気分枝300を介して、第2の受信電機子180を電気負荷115に接続する電気分枝190に印加することができる。
【0169】
特に、典型的には高い値(例えば数十または数百nH程度)のさらなるインダクタンス305を、制御回路125の前述の接続ノードと電気負荷115との間、例えば接続ノードと整流器130との間に電気分枝190に沿って直列に接続でき、このインダクタンス305は、給電機器105から来る電圧波が電気負荷115に到達することを可能にするが、制御回路125によって生成された第2のクロック信号の通過を阻止し、したがってこの第2のクロック信号は、受電機器110から給電機器105の方に通過するように強いられる。
【0170】
インダクタンス205および305は、受信容量と共に共振器を構成し、したがって電気負荷115へのより大きな電力伝送を可能にするばかりでなく、例えばZVSまたはZCSタイプのコンバータを作るのに有用なインピーダンス整合の目的も有する(したがってこれにより、損失を最小限に抑え、極めて高い周波数で動作することができる)。
【0171】
インダクタンス205および305は、制御回路125から見込んだ、通常は制限されている電気負荷115のインピーダンスを実質的に増加させるさらなる目的も有し、制御回路125は、負荷と実質的に相互作用しないため、このようにして高周波で動作することができる。
【0172】
次に、典型的には小さな値(例えば数十または数百pF程度)の電気容量310を接続ノードと制御回路125との間に電気分枝300に沿って直列に接続することができ、この電気容量310は、クロック信号が第2の受信電機子180に到達することを可能にするが、電圧波の通過を阻止し、したがって電圧波は、制御回路125に達することができない。
【0173】
本システムは、電気負荷115に給電する電圧波と、制御回路125によって注入される信号の搬送波との間の周波数の差が増大するとともに、ますます良好に動作する。
【0174】
第2の受信電機子180が1つまたは複数の送信電機子165に面しているとき、第2のクロック信号は、対応する信号管理回路150によって捕捉され、第1の受信電機子175に面する送信電機子165に印加されたもの対して等しい周波数であるが、位相のずれた、好ましくは逆位相の電圧波を前記送信電機子165に印加するように、対応する電源回路155を適切に駆動するために使用される。
【0175】
この効果は、受電機器110の制御回路125が、第1の受信電機子175に印加されるクロック信号に対して同じ周波数を有するが、好ましくは逆位相でずれた第2のクロック信号を生成して、第2の受信電機子180に印加するように受電機器110の制御回路125を構成することによって理論上得ることができる。
【0176】
しかしながら、この解決手段は、例えば、DQフリップフロップのカスケードに基づくもののような一部の分周器245は、所定のクロック信号およびこのクロック信号の反転信号(すなわち、等しい周波数であるが逆位相のクロック信号)の両方から、同一位相を有する出力信号を返し、したがってどちらの場合とも、結果として生じる電圧波が、同じ位相を有し、非常に高い周波数波の1サイクルしか遅延されていないため、必ずしも使用できるとは限らない。
【0177】
この欠点を克服するために、分周器245の出力信号が
図9に示すように2つの独立したチャネルに印加されるように、各送信グループ135の信号管理回路150を修正することができ、出力信号のうちの1つが分周器245から来るクロック信号をネゲートするモジュール315に接続され、等しいが逆位相のクロック信号を得ることができる。モジュール315は、例えば、入力で受信した信号をネゲートする単純なNOT論理ゲートを備えている。
【0178】
このようにして、分周器245は、常に2つの潜在的なパイロット信号を供給し、そのうちの1つは、元のクロック信号の周波数を単に低減させることによって得られる「直接」パイロット信号であり、その1つは、元のクロック信号の周波数を低減させて、元のクロック信号の位相を反転することによって得られる「逆位相の」パイロット信号である。
【0179】
この場合、各送信グループ135の信号管理回路150は、
図10に示すように、セレクタ320をさらに備えることができ、このセレクタ320は、分周器245に接続されて、対応する送信電機子165が第1の受信電機子175に面しているか、それとも第2の受信電機子180に面しているかに応じて、それぞれ、「直接」パイロット信号または「逆位相の」パイロット信号を電源回路155に選択的に送信する。
【0180】
セレクタ320は、送信電機子165が第1の受信電機子175に面しているか、それとも第2の受信電機子180に面しているかを理解するために、異なる方策を実施することができる適切な制御モジュール325によって命令されてもよい。
【0181】
第1の方策は、受電機器110の制御回路125が、著しく異なるデューティ・サイクル(例えば、20%および80%にそれぞれ等しい)を有する2つの矩形波クロック信号を第1の受信電機子175および第2の受信電機子180に印加することを予測する。例えば、デューティ・サイクルの第1の値(例えば20%)を「第1の受信電機子175」の情報に関連付けることができるのに対して、デューティ・サイクルの第2の値(例えば80%)を「第2の受信電機子180」の情報に関連付けることができる。
【0182】
この情報を利用することによって、制御モジュール325は、
図11で与えられるスキームに示すように、クロック信号の電圧の実効値の検出回路として効果的かつ簡単に形成することができ、例えば、そのような信号の二乗平均RMSを測定または検出する。
【0183】
特に、制御モジュール325は、フィルタ240から出力されたクロック信号を、例えば分周器245の上流で受信し、出力されたクロック信号のRMS値を検出する初段330を備えることができる。
【0184】
例えば、そのような初段330は、フィルタ240の出力をダイオード335のアノードに接続することによって十分迅速に作ることができる。一方、ダイオード335のカソードは、コンデンサ340の一端部に接続されてもよく、コンデンサ340のもう一方の端部は、基準電圧(例えば接地)に接続されている。初段330は、コンデンサ340と並列に、入力信号が停止すると、コンデンサ340自体を放電するのに有用な抵抗345を備えることもできる。
【0185】
したがって、この初段330の出力は、入力信号のRMS値に比例した電圧信号であり、このRMS値は、デューティ・サイクル、したがって「第1の受信電機子175」または「第2の受信電機子180」の情報に応じて変化し、送信電機子165の適切なパイロット位相を選択することを可能にする。
【0186】
したがって、制御モジュール325は、初段330から出力された信号を受信して、出力された信号のRMS電圧値を基準電圧と比較するコンパレータ350を備えることができる。初段330から出力されたRMS電圧が、基準値よりも小さい場合、これは、クロック信号のデューティ・サイクルが小さかったこと(例えば20%)、またはその逆の場合は、クロック信号のデューティ・サイクルが大きかったこと(例えば80%)を意味する。実際に、クロック信号のデューティ・サイクルが増大するとともに、出力された信号のRMS値が、第1の基準電圧によって課されたしきい値を超えるまで、増加することは明らかである。
【0187】
初段330から出力された信号は、RMS電圧値を、典型的には接地電圧に近い第2の基準電圧と比較する第2のコンパレータ355にも印加され得る。初段330から出力されたRMS電圧が第2の基準値よりも小さい場合、これは、送信電機子165がクロック信号を受信していないこと、したがって、受電機器110の受信電機子175または180が接近していないことを意味する。
【0188】
また、第1のコンパレータ350および第2のコンパレータ355の出力は、セレクタ320のパイロット信号を生成することができる、典型的には、必ずしもそうとは限らないが、組合せ論理を有する極めて単純な論理モジュール360に送信され得る。
【0189】
このようにして、RMS信号が第1の基準値よりも大きい場合は、セレクタ320は、「直接」パイロット信号を用いて電源回路155を駆動するように命令され、RMS信号が第1の基準値と第2の基準値との間に含まれる場合は、セレクタ320は、逆位相のクロック信号を用いて電源回路155を駆動するように命令され、最後に、RMS信号が第2の基準値よりも小さい場合は、セレクタ320は、電源回路155を駆動せず、論理回路も、送信電機子165を電気分枝230に、したがって基準電位(例えば接地)に接続するように、作動スイッチ225を開構成にするように処理する。
【0190】
送信電機子165が第1の受信電機子175に面しているか、それとも第2の受信電機子180に面しているかを理解するための第2の方策は、受電機器110の制御回路125が、同じデューティ・サイクルであるが異なる振幅を有する2つのクロック信号を、第1の受信電機子175および第2の受信電機子180に印加するように構成されることを予測することができる。
【0191】
この場合、各送信グループ135の信号管理回路150のアーキテクチャは、信号の振幅が、信号電圧の実効値、したがって信号電圧のRMSにも直接影響を与えるため、前述した、
図10および
図11に示したものと厳密に等しくてもよい。
【0192】
送信電機子165が第1の受信電機子175に面しているか、それとも第2の受信電機子180に面しているかを理解するための第3の方策は、受電機器110の制御回路125が、異なる周波数を有する2つのクロック信号を第1の受信電機子175および第2の受信電機子180に印加するように構成されることを予測することができる。
【0193】
好ましくは(必ずしもそうとは限らないが)、第2の受信電機子180に印加されるクロック信号の周波数は、第1の受信電機子175に印加されるクロック信号の2倍に等しくなければならず、またはその逆でなければならない。
【0194】
どの受信電機子175または180が送信電機子165に近いかの表示を送信する周波数の使用は、電圧制御信号(デューティ・サイクル、または振幅の変調)に基づくシステムに比べて外乱からのより良好な耐性を保証するが、各送信グループ135の信号管理回路150は、異なっていなければならない。
【0195】
まず第1に、分周器245は、セレクタ320に送信される「直接」パイロット信号および「逆位相の」パイロット信号を供給するように構成されていなければならず、
図12に示すようにこれらのパイロット信号を2つの異なる段から取得する。例えば、第2の受信電機子180に印加されるクロック信号の周波数が、第1の受信電機子175に印加されるクロック信号の周波数の2倍である場合を考えると、「直接」パイロット信号は、分周器245の最終段から取得されなければならないのに対して、「逆位相の」パイロット信号は、例えばNOT論理ゲート315を用いて、分周器の最後から2番目の段から出て来る信号を「ネゲートする」ことによって取得されなければならない。このようにして、「直接」パイロット信号および「逆位相の」パイロット信号は、両方とも、同じ周波数を有し、電源回路155を駆動するために使用することができる。もちろん、第2の受信電機子180に印加されるクロック信号の周波数が、第1の受信電機子175に印加されるクロック信号の周波数の半分である場合は、接続は、逆になる。
【0196】
同時に、セレクタ320の制御モジュール325は、
図13に示すように修正することができ、送信電機子165から来るクロック信号を入力で受信する積分回路365(例えば単純なRCフィルタ、または任意の能動もしくは受動積分回路)を備えることができる。
【0197】
入力での波は、典型的には矩形波であるため、積分回路365から出力された、入力での波の積分された信号は、三角波であり、この三角波は、入力での波の周波数が小さいほど、ますます大きなピーク値を有する。前の例によると、捕捉されたクロック信号が第1の受信電機子175に関連付けられた低周波クロック信号である場合は、積分された信号は、したがって、捕捉されたクロック信号が第1の受信電機子175に関連付けられた高周波クロック信号であった場合に存在したであろうものと比べてより大きなピーク値を有する。もちろん、第2の受信電機子180に印加されるクロック信号の周波数が、第1の受信電機子175に印加されるクロック信号の周波数の半分である場合は、対応は、逆になる。
【0198】
この特性を利用することによって、積分回路365から出力された信号は、したがって、この信号のピーク電圧を基準電圧と比較するコンパレータ370に入力で印加されてもよい。次いで、コンパレータ370の出力は、例えば、より高い周波数波に対してはコンパレータ370から出力されたインパルスを検出せず、より低い周波数波に対して一連の等間隔インパルスを検出する論理モジュール375によって処理される。典型的には、必ずしもそうとは限らないが、組合せ論理を有する論理モジュール375は、セレクタ320を駆動する信号を生成する。
【0199】
例えば、積分された信号のピーク値が基準値よりも大きい場合は、セレクタ320は、「直接」パイロット信号、すなわち、受電機器110上に配置された制御回路125によって生成されたものと同じ位相を有する信号を用いて電源回路155を駆動するように命令されるが、一方、積分された信号のピーク値が基準値よりも小さい場合は、セレクタ320は、「逆位相の」パイロット信号を用いて電源回路155を駆動するように命令される。もちろん、動作は、逆のやり方で行うこともできる。
【0200】
最後に、積分された信号のピーク値が実質的にゼロの場合(クロック信号がない場合)、セレクタ320は、電源回路155を駆動せず、論理回路375も、前の回路と同様のやり方で、送信電機子165を電気分枝230に、したがって基準電位(例えば接地)に接続するように、作動スイッチ225を開構成にするように処理する。
【0201】
ここで、制御モジュール325の積分回路365は、フィルタ240の出力から、またはより有利には分周器245の適切な段の出力から直接、クロック信号を受信するように構成されてもよく、これによりシステムが概念的に修正されることはないことが強調されるべきである。
【0202】
また、提案されたシステムは、情報が、デューティ・サイクルの値、または分周段によって失われる振幅の値によるではなく、1つの受信電機子を示す信号ともう1つの受信電機子を示す信号との間の周波数の差から与えられるため、分割された信号を使用して動作する。
【0203】
既に分周された周波数で積分回路365に入る信号の使用に関連した利点は、その場合、本質的に、元の信号を処理するのに必要なものに比べて、より遅いコンパレータ370を使用することができ、したがって、費用対効果がより大きいことにある。積分回路365に入る前に信号が受ける周波数の分割が大きいほど、三角波を基準電圧と比較するために使用されるコンパレータ370の必要な速度がより遅くなり、コンパレータのコストを大幅に下げる。正確には、制御回路のコストをさらに下げるために、セレクタ320に至る出力の後にさらなる分割段を予測することも可能である。さらなる利点は、フィルタから出力されたものに比べて、分周段から出力された信号の品質がより高いことに関連する。
【0204】
送信電機子165が第1の受信電機子175に面しているか、それとも第2の受信電機子180に面しているかを理解するための第4の方策が
図14に示されており、この方策は、受信電機子175および180の1つまたは両方の相対位置を示す位置信号を生成するように、受電機器110上に配置された1つまたは複数の基準素子385と相互作用する(例えば、磁気、ホール効果、電界、光、音、RFID送信器、NFC、アンテナなどに基づく)能動または受動の独立したセンサ380を各送信グループ135に備えることにある。また、各送信グループ135は、対応する送信電機子165が第1の受信電機子175に近いのか、第2の受信電機子180に近いのか、それともどちらでもないのかを理解し、次いで、結果としてセレクタ320に命令するように、センサ380によって生成された位置信号を受信する論理モジュール390を備えることができる。
【0205】
この場合、「直接」パイロット信号または「逆位相の」パイロット信号の選択に基づく原理は、制御回路125によって送信されるクロック信号に対して独立していることは明らかである。したがって、この場合の後者の信号は、クロックを送信するために、場合によってはユーザ・データを独立して転送するために使用されるだけである。
【0206】
送信電機子165が第1の受信電機子175に面しているか、それとも第2の受信電機子180に面しているかに応じて、位相のずれた(典型的には逆位相の)電圧波を送信電機子165に印加することを可能にする上で提案したスキームは、電力の伝送をより効果的にし、効率の点で多くの利益を得るという利点を有する。
【0207】
例えば、電源回路155が
図7のスキームを使用する場合、各スイッチング回路250のチョーク・インダクタンス275の寸法を、例えばクラスEまたはFの共振増幅器のサイズ設定に関して文献に記載されているものに比べて、実質的に低減させる可能性がある。
【0208】
実際に、通常、チョーク・インダクタンスが電流発生器を理想的に構成するために特に高い値のものでなければならない場合、提案されたスイッチング回路250では、チョーク・インダクタンス275のサイズを実質的に小さくすることが可能であり、電流の符号を反転することさえ可能にする。
【0209】
実際に、全体として、回路全体は、プッシュプル方式を構成し、これにより、受電機器110の給電分岐における各反転電流が、ミラーリング分岐における(例えば、第2の受信電機子に面するプレートを駆動する)類似しているが反転した反転電流に対応する。
【0210】
このようにして、送信回路に給電する電圧発生器140は、全体として、実質的に抵抗性の挙動を有する回路を見込むことになり、したがって力率の補正段を必要とすることなく最適化された力率を有する。これは、特に、必要とされる小型化が、入力において大きな値および大きな容積のフィルタ容量の使用を許容しないようなものである場合に、スイッチング回路が存在する状態では自動的でない、特に実質的な利点を構成する。
【0211】
図15に示すように、給電機器105を修正して、多くの受電機器110間に高速通信チャネルを構成することもできる。
【0212】
特に、各受電機器110の制御回路125は、受信電機子175および/または180にクロック信号だけでなく、受電機器110から来る他のデータ(
図15に矢印で概略的に示す)も含む信号を印加するエンコーダ395を備えることができる。
【0213】
エンコーダ395は、例えば、マンチェスター差動、バイフェーズマーク符号(BMC)、8b/10b符号化、64b/66b符号化、64b/67b符号化などの符号化によってデータを符号化することができる。線路上で厳密にゼロの平均電圧値を保証する符号化が特に有利である。
【0214】
同時に、給電機器105の各送信グループ135の制御モジュール325は、前述したように電源回路155を駆動するためのクロック信号を処理するだけでなく、受電機器110の制御回路125によって生成された信号によって運ばれる他のデータを復号するデコーダ400を備えることができ、このデータが共有バス410、例えばUSB3.0バス、HDMI(登録商標)バスにおいてアドレスされ得る。
【0215】
また、給電機器105上に第2のデータエンコーダ、および受電機器110上に第2のデコーダを導入することによって、通信を明らかに双方向にすることができる。
【0216】
システムのコストが過度に悪化するのを回避するために、給電機器105の一部の送信グループ135のみがデータ信号を受信および/または送信することができ、これにより、送信グループ135の大半が低コストのままであり、電力の伝送の管理のみが可能なままであることを予測することが可能である。データは、非常に高い周波数(数十MHz、数百MHz、さらにはGHz)で伝搬するため、実際には、いくつかの送信電機子165(理想的には1つだけ)の容量結合がデータ信号を送信するのに十分であり、その場合、このデータ信号は、復号されて、作動面160上に配置された受電機器110の全てに対してデータを利用可能にする適切な通信バス410上でルーティングされ得る。
【0217】
電磁汚染を回避するために、通信バス410は、放射を制限するような形状およびサイズのものとすることができ(したがって、貧弱なアンテナとして動作するようにサイズ調整されなければならず)、ならびに差動とすることができ、例えば2つの並置された近接したデータプレーンから構成され、このプレーン上を差動信号が伝搬し、このプレーンにユーザデータ・インターフェースを備えた主要な回路の全てが接続され、したがって、受電機器110上に配置されたコントローラによって送信されたデータを受信電機子から読み取ること、および受信電機子によって捕捉され、受電機器110上に配置されたコントローラによって復号されるのに有用なデータを送信電機子に送信することの両方を行うことができる。
【0218】
前述した実施形態の全てに共通の態様によると、各送信グループ135の送信電機子165は、例えば、作動面160の単位面積当たりのコストを下げるために、同じ電源回路155および同じ信号管理回路150に接続された複数の送信電機子165Aに分割されてもよい。
【0219】
この場合、各送信グループ135の回路図は、実質的に変わらないままであるが、各送信電機子165Aは、例えば
図16に示すように、それぞれの作動スイッチ225Aを介して電気分枝170に接続され得る。
【0220】
各作動スイッチ225Aは、それぞれの送信電機子165Aを、接地または別の基準電位を参照した電気分枝230Aに接続する閉構成と、送信電機子165Aを、関連する電源回路155および関連する信号管理回路150に接続する電気分枝170に接続する開構成との間で選択的に切り替えることができる。
【0221】
場合によっては、電気容量235Aを各電気分枝230A上に配置して、例えば、給電機器105上に配置されたデータ回路と受電機器上に配置されたデータ回路との間の接地接続を生成すること、ならびに/または回路のインピーダンスを制御し、電気負荷115と電圧発生器140との間の動的インピーダンス整合を生成することができる。
【0222】
各作動スイッチ225Aは、給電機器105の制御回路によって制御することができ、この制御回路は、前述したものと同様の論理回路を使用して、受電機器110の電機子によって受信された信号に応じてどの送信電機子165Aを電気分枝170に接続するかを選択する。
【0223】
例えば、スイッチは、通常、閉位置に保持され、例えばタイマーまたはカウンタの助けを借りて、周期的に、次々と順番に開位置にすることができる。このようにして、サブグループのどの送信電機子165Aが受電機器110の第1の受信電機子175に面しているかを識別することが可能であり、その後識別されたものだけに電圧波を印加するのに対して、他は全てスイッチをオフにしておくか、または電気分枝235Aに接続しておくことができる。
【0224】
この解決手段により、給電機器105の作動面160の同じ全体的な寸法に対して、送信電機子165Aの数を増やして、その寸法を減らし、これによって、受電機器の受信電機子175および180との非常に精密な容量結合を得ることが有利には可能である。
【0225】
一方、送信電機子の同じ全体的な数に対して、信号管理回路150および電源回路155の数を実質的に減らすことが有利には可能であり、これによって、システム100の全体的なコストを下げる。
【0226】
もちろん、送信電機子165Aは、場合によっては、規則的でさえない任意の形状を有することができる。しかしながら、三角形、円、矩形、正方形、または六角形などの規則的な幾何学形状は、特に単純で効果的である可能性がある。
【0227】
特に、(限定されないが)特に有利な実施形態は、
図3に示す送信電機子165のそれぞれを、例えば
図17に示すように、三角形の形状であるが、送信電機子165の正方形/矩形の形状を再現するように、相互に配置された送信電機子165Aのグループで置き換えることを実質的に予測し、この図では、各送信電機子165が対角線および二等分線に沿って8つの送信電機子165Aのグループに分割されている。
【0228】
送信電機子165Aのグループそれぞれに接続された信号管理回路150および電源回路155は、グループの各送信電機子165Aから実質的に等距離になるように、したがって、分布寄生リアクタンスに関連した問題を最小限に抑えるように、矩形/正方形の中心に配置されたチップ415の形態で作ることができる。
【0229】
送信電機子165Aの三角形の形状により、受電機器110の形状(典型的には矩形)をより良く近似することが可能になり、受電機器110は、作動面160上にランダムに配置され、したがって正方形の辺に対して位置合わせされない可能性がある。45度の対角線のおかげで、受信電機子175および180をより良く近似する送信電機子165Aの構成を見つけることが確かにより可能性が高い。したがって、この構成は、
図3の送信電機子165の一部が受信電機子175または180によって完全に覆われていない間に作動するのを防止し、損失を低減させる。
【0230】
前述した実施形態の全てに共通の別の態様は、例えば
図18に示すように、各送信グループ135の送信装置145が、それぞれが対応する送信電機子165の同じ信号管理回路150および同じ電源回路155に接続されている1つまたは複数の誘導性送信素子420をさらに備えることができることを予測する。
【0231】
このようにして、ハイブリッドの容量性および誘導性の電力送信システムを得ることが実際に可能である。
【0232】
各送信誘導性素子420は、例えば、送信電機子165のそばに同一平面上に配置することができる1つまたは複数の直線誘導性ストリップのような、主に誘導性の挙動を有する1つまたは複数の導電性素子から作ることができる。
【0233】
例えば、送信電機子165が矩形もしくは正方形の形状を有しているか、または正方形もしくは矩形を形成するように配置された送信電機子165Aに分割されている場合を考えると、各送信グループ135は、例えば
図19に示すように、正方形または矩形の辺のそばに同一平面上に配置された、辺に平行に延在する誘導性ストリップ420Aを備えることができる。このようにして、連続する送信電機子165の各対(または送信電機子165Aのグループ)間に、少なくとも1つの誘導性ストリップ420Aも配置され、各送信電機子165(または送信電機子165Aのグループ)は、一組の誘導性ストリップ420Aによって全ての辺で囲まれる。可能性のあるもののうちの1つに過ぎない、示された特定の実施態様が、作動面160上に誘導性ストリップ420Aの均一のマトリックス分布も形成するという利点をどのように達成するかが強調されるべきである。
【0234】
しかしながら、もちろん、これは、誘導性送信素子420を、コイルまたは送信アンテナの形状を有する誘導性導体、例えば対応する送信電機子165(または送信電機子165Aのグループ)を取り囲む単一のコイルから作ることができるという可能性を排除するものではない。
【0235】
図18に戻ると、電源回路155は、各送信インダクタ420に対して、送信電機子165に関連付けられたスイッチング回路250と実質的に同じタイプのさらなる2つのスイッチング回路425を備えることができ、この2つのスイッチング回路425は、電圧発生器140を送信インダクタ420に接続する。
【0236】
これらのスイッチング回路425は、電圧発生器140によって生成された給電電圧を、送信誘導性素子420に印加される典型的には高周波(数百kHz、MHz、数十MHz、さらには数百MHz)の交流電圧波に変換するように、信号管理回路150から出て来るパイロット信号によって駆動される。適切な整合回路網をスイッチング回路425と送信インダクタ420との間に配置することができる。
【0237】
図20に示すように、受電機器110の受信装置120は、受電機器110の1つまたは複数の誘導性送信素子420と誘導結合を行う少なくとも1つの誘導性受信素子435を対応して備えることができる。
【0238】
一般に、誘導性受信素子435の数、形状、サイズ、および配置は、受電機器110の受信面195を給電機器105の作動面160に向けて戴置させるまたは近付けることによって、少なくとも1つの誘導性受信素子435と給電機器105の少なくとも1つの送信誘導性素子420との間に、好ましくは、各誘導性受信素子435と、受電機器110の給電機器105に対する複数の位置および/または相対的な向きについて、好ましくは、受電機器110の任意の位置および/または向きについて、形状およびサイズを良好な近似で再現するように配置された複数の誘導性送信素子420との間に、誘導結合を生成することが可能になるように選択されなければならない。
【0239】
一実施形態によると、誘導性受信素子435は、コイルまたは受信アンテナの形状を有する誘導性導体から作ることができる。例えば、受信装置120は、
図21に示すように、受信電機子175および180の両方の周りに同一平面上に延在するコイルのように成形された誘導性受信素子435を備えることができる。
【0240】
この誘導性受信素子435は、例えば第2の整流器440を介して、受信電機子175および180に対して独立に、電気負荷115に接続することができる(
図20参照)。
【0241】
受信インダクタ435と第2の整流器440との間に直列に、誘導性受信部分をZVS(ゼロ電圧スイッチング)またはZCS(ゼロ電流スイッチング)モードで動作させることもできる共振器を生成するのに有用な容量445を挿入することが可能である。
【0242】
あるいは、直列の容量445の代わりに、直列共振回路に比べて送信誘導性素子420と受信器435との間の距離がより大きくても、共振主誘導性回路との結合を容易にすることができる共振タンクを形成するのに有用な容量450を誘導性受信素子435と並列に挿入することが可能である(
図22参照)。
【0243】
誘導性受信素子435と、これに関係する各送信誘導性素子420との間の誘導結合を介して電力を伝送するためには、送信誘導性素子420の端部に配置された2つのスイッチング回路425が、信号管理回路150によって生成されたパイロット信号によって、同じ周波数で、しかし互いに逆位相で駆動されれば十分である。
【0244】
この解決手段は、受信インダクタ435のスイッチング回路425を、送信電機子165のスイッチング回路250を駆動するために既に利用可能な同じ信号によって、したがって、特に有利で、単純で、機能的な制御システムで駆動することができるため、信号管理回路150が、例えば
図10の解決手段のように、逆位相の2つのクロック信号を供給するように既に構成されている場合は、特に有利である。
【0245】
あるいは、スイッチング回路425の一方が任意の位相で駆動され、もう一方が、送信誘導性素子420の第2の端部を基準電位、例えば適切な接地に常に接続しておくように命令されれば十分である。
【0246】
提案された両方の解決手段のおかげで、送信誘導性素子420は、磁気誘導的なやり方で誘導性受信素子435に伝送される電圧波によって横切られ、したがって整流器440を介して電気負荷115に給電するために使用され得る。
【0247】
2つの整流器130および440の出力は、電気負荷115に独立して給電し、誘導性受信部分および容量性受信部分の実質的に自律した動作を保証する。
【0248】
電気負荷115に必要な電力、回路の簡単さ、効率、送信器からの距離および受電機器の形状に関する要求事項に応じて、もっぱら誘導性またはもっぱら容量性の受信器を実装することができ、これにより提案された解決手段の実質的な修正が構成されることはないことが強調されるべきである。
【0249】
提案された回路の特に有利な変形形態が
図23に与えられている。この特定の実施態様では、受電機器110は、誘導性部分および容量性部分の両方が相乗的に作用する整流器130のみを備える。
【0250】
これは、誘導性受信素子435を2つの別個の誘導性受信素子435Aで置き換えることによって得られ、その一方が、第1の受信電機子175と整流器130との間に直列に電気分枝185上に挿入されるのに対して、もう一方が、整流器130と第2の受信電機子180との間に直列に電気分枝190上に挿入されている。
【0251】
これらの誘導性受信素子435Aのそれぞれは、例えば
図24に示すように、第1の受信電機子175および第2の受信電機子180の周りに、それぞれ、例えば同一平面上に延在するコイルのように構成され得る。
【0252】
このようにして、誘導性受信素子435Aは、複数の機能、すなわち、電源回路のLC共振器を形成するのに有用な直列インダクタンス、容量性のやり方での電力受信に誘導性のやり方で受信された電力を加えて、電気負荷115に送信される電力を増加させるのに有用な誘導性受信素子、および制御回路によって注入された信号が負荷と相互作用するのを防止するのに有用な低域通過フィルタ、の機能を有する。
【0253】
本実施態様は、受電機器110に接続される必要な構成要素の数、容積およびコストを最小限に抑え、同時にシステムの多用性および送信可能な電力を増加させるため、特に有利である。
【0254】
誘導性受信素子435Aとこれらに関係する各送信誘導性素子420との間の誘導結合を介して電力を伝送するために、送信誘導性素子420の端部に配置された2つのスイッチング回路425を、前述と同じやり方で駆動することができる。
【0255】
しかしながら、そのようなシステムが正しく動作するような条件は、受信電機子175および180によって受信される電圧波と、誘導性送信素子420と誘導性受信素子435Aとの間の磁気結合によって誘導される電圧波とが、適切な位相およびインピーダンスを有することである。
【0256】
特に、誘導性受信素子435Aならびに受信電機子175および180が全て、同じ整流器130に接続されているため、誘導性送信素子420の励起電圧は、誘導性受信素子435Aに誘起される波と受信電機子175に誘起される波との相乗動作を確実にするように選択されなければならない。
【0257】
もちろん、この場合も、送信グループ135の選択的な作動は、作動スイッチ225の適切な制御によって制御され得る。
【0258】
この方法に対する代替として、誘導性分枝上および容量性分岐上の両方で相乗的なデータ交換を予測することができ、典型的には、誘導結合に基づく分岐は、低域通過特性、または比較的低い周波数(電力伝送の周波数)に帯域中心を有する帯域通過特性を有するため、誘導性分岐は、受電機器110上に配置された制御回路125による、送信グループ135上に配置された制御回路125への単純な最初のハンドシェイクの送信を可能にする。誘導性回路を介してハンドシェイクを受信すると、制御モジュール322は、送信電機子165を信号管理回路150に接続する作動スイッチ225を開くことができ、したがって、容量性チャネル上で非常に高い周波数で、したがって高いビットレートでデータを受信することを可能にする。場合によっては、電力伝送を誘導結合に委ねて、容量結合をもっぱらデータ・ストリームに使用することが有利な場合がある。
【0259】
図25は、受電機器110が、誘導性部分および容量性部分の両方が相乗的に作用する単一の整流器130を備えることを可能にする別の変形形態を示す。
【0260】
このさらなる変形形態は、誘導性受信素子435を受信電機子175および180に並列に接続すること、例えば、誘導性素子435の第1の端部を、整流器130を第1の受信電機子175に接続する電気分枝185に接続し、かつ誘導性素子435の第2の端部を、整流器130を第2の受信電機子180に接続する電気分枝190に接続することを予測する。
【0261】
この場合、データ交換システム125が負荷115と相互作用するのを防止するのに有用な直列インダクタ205および305を挿入することも有利な場合があり、インダクタ205は、整流器130と誘導性受信素子435との接続ノードとの間の電気分枝185に挿入することができるのに対して、インダクタ305は、整流器130と誘導性受信素子435との接続ノードとの間の電気分枝190に挿入することができる。
【0262】
一部の実施形態は、
図22に示されたものと
図24に示されたものとの中間のハイブリッド解決手段、すなわち、受電機器110が、
図22に示される直列の誘導性素子435A、さらに
図24に示される並列の誘導性素子435の両方を備える解決手段を予測することができることも明記されるべきである。
【0263】
上述した実施形態の全てに、または少なくともハイブリッド誘導/容量結合を形成することができることを予測する実施形態の全てに適用可能な変形形態によると、各送信グループ135は、
図26に示すように作られてもよい。
【0264】
図4以降に示す実施形態に対して、本実施形態は、送信誘導性素子420が、関連するスイッチング回路250と関連する送信電機子165との間に直列に電気分枝170上に配置されていることを予測する。
【0265】
実際には、本実施形態は、
図4以降の実施形態で既に予測されていたインダクタンス220を誘導性素子420で直接置き換えることを予測する。
【0266】
図26の回路解決手段を利用することによって、システム100の好ましい実施形態は、最終的に、例えば、
図3に示す送信電機子165のそれぞれが、送信電機子165Bのグループ、例えば
図27に示すような実質的に三角形の形状を有する4つの送信電機子165Bのグループによって置き換えられ得ることを予測し、各送信電機子165Bは、それぞれの送信誘導性素子420に、例えば各送信電機子165Bに隣接するものに関連付けられて、それぞれの送信誘導性素子420と共に単一の送信グループ135の送信装置145を画定する。
【0267】
もちろん、送信電機子165のこの分割は、送信グループが
図4以降の実施形態に従って作られている場合にも採用することができる。
【0268】
ハイブリッド容量性/誘導性タイプの送信装置145を有する送信グループ135を使用する実施形態がどのようにして多用途の使用を可能にするかに留意されたい。
【0269】
特に、単一の給電機器105を用いて、例えば容量性、誘導性、磁気、共振、RFなどの異なる受信原理に基づいて、異なる独立した動作周波数で、さらに適切な受動もしくは能動整合回路網を給電機器105の二次回路および/または回路に挿入することができることによって、異なる距離に配置された複数の異なる受電機器110との多くの再充電結合を生成することが可能である。
【0270】
例えば、給電機器105と受電機器110との間の距離が非常に短い(例えば、ラップトップまたは携帯電話が給電機器105の作動面160上に直接戴置されている)場合、システムは、有利にはおよび好ましくは、容量結合を利用することができ、場合によっては、さらなる電力の寄与としてのみ誘導結合を利用することができる。
【0271】
その逆に、より大きな距離にわたっては、誘導結合が有利である可能性があり、距離が増加するにつれ、磁気共鳴結合を介して動作するように、さらにより長い距離では1つまたは複数の受信アンテナと結合された送信アンテナとして作用するように、システムを動的に再構成することが有用な場合がある。
【0272】
したがって、これにより、作動面160上の受電機器110の任意の位置に対してだけでなく、直交/垂直方向の様々な距離(数cm〜数メートル)に対しても電力伝送を行うことが可能になり、容量性、誘導性、磁気共鳴性および/またはアンテナに基づくものとの間で優先的に結合されるタイプを動的に変化させることもできる。
【0273】
誘導性および容量性の両方の送信素子は、例えば、特に精密な指向性ビームを用いてターゲット・アンテナに到達するのに有用な空間内で強め合う干渉および弱め合う干渉を生成するように、高周波(例えばRF)で駆動される多重アンテナとして、特に長距離において、利用することができることも強調されるべきである。
【0274】
送信グループ135を制御するためのシステムが、受信電機子175および180ならびに受信インダクタ435/435Aに近接する、受電機器110の形状を極めて効果的に近似する送信電機子165および誘導性送信素子420のみをどのように作動させることができるかも強調されるべきである。
【0275】
また、ハイブリッド容量性/誘導性タイプの送信装置145を有する送信グループ135の存在が誘導性受信装置のみまたは容量性受信装置のみを有する受電機器110とどのように両立することができるかということ、そして送信器ならびに受信器のサイズおよび数に応じて、システムの動作周波数を数百kHzから最大GHzまで変化させることが可能であることも強調されるべきである。
【0276】
したがって、提案されたシステムは、容量性/誘導結合に基づいて、アンテナまたはハイブリッドに基づいて、作動面160を介して高速に、高電力および信号を無線で送信するのに特に適している。作動面160は、適切な電源回路155ならびに信号管理回路150によって命令される送信電機子165および誘導性送信素子420から構成される送信装置145のマトリックスから構築することができる。受電機器110、例えば、スマートフォン、ラップトップ、ディスプレイ、コンピュータ、およびテレビを作動面160に近付けると、受電機器110に挿入された、典型的には送信電機子165よりも大きなサイズの受信電機子175および180が送信電機子165との容量を決定し、この容量を介して、電力およびデータを同時に送信することさえできる。同時に、誘導性送信のために、誘導性受信回路の形状およびインピーダンスに応じて動的に再構成することができる送信回路を生成することもできるという、公知の技法に対する利点によって、対応する誘導性受信素子435/435Aと送信素子420との間に誘導結合も生成することができる。
【0277】
工業化コストをさらに下げるために、LCDディスプレイの世界で首尾よく利用されているような薄膜(TFT)に基づく技法を使用して、上述した給電機器105の任意の実施形態をどのように作ることができるかを強調することは、特に重要である。そのような技法によって、能動部品、特に各電機子を駆動するのに有用な電力スイッチ、例えばN型MOSFETを基板上に直接設計して、システムのコストを実質的に下げることが可能である。
【0278】
同様に、受動部品(特にインダクタンスおよび容量)を膜が構成される導電層中に直接設計することが可能である。このようにして、電源回路(スイッチおよび受動素子)全体ならびに多くの信号回路(特に、限定されないが受動素子およびフィルタ)を、実質的にコストゼロで導電層上に設計することができるため、給電機器105は、供給するのが極めて単純で、切断可能で、可撓性があり、極めて費用対効果が大きい集積回路によって命令される一種のマットまたは薄膜になる。
【0279】
したがって、このマットまたは薄膜は、テーブル、壁、机、種々雑多な家具、または床などの家具のアイテムに挿入するのが容易であり、費用対効果が大きく効率的なやり方で、ディスプレイ、テレビ、コンピュータ、ラップトップ、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル機器、家電、ならびに他の電気および電子機器などの機器に無線で給電ならびに相互接続することを可能にする。
【0280】
もちろん、当業者は、上述したものに対して多くの技術的/応用的変更をもたらすことができるが、この理由のために以下で特許請求される本発明の範囲から逸脱することはできない。