(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各ブロック体の噴射面における、隣接するブロック体の対向面と重なった部位が、対向面によって遮蔽されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入装置の冷却ジャケット。
前記各ブロック体は、当該ブロック体自身の噴射面が、同一方向を向いた状態で位置を変更できることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波焼入装置の冷却ジャケット。
前記複数のブロック体のうちの少なくとも一つが、当該ブロック体における噴射面と平行方向に移動可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波焼入装置の冷却ジャケット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、
図23に示す様に、冷却ジャケット80の環の内部には小径のワークW2を配置することが可能であり、ワークW2の外周面S2を冷却するのに、冷却ジャケット80を使用することも可能である。この様にすると、大径用の冷却ジャケット80を兼用でき、敢えて小径用の冷却ジャケット90を使用する必要はない様に思える。
【0008】
ところが、実際に冷却ジャケット80でワークW2を冷却してみると、ワークW2は良好に冷却されない。すなわち、
図22(a)、
図22(b)の場合には、外周面S1、S2は良好に冷却することができたが、
図23の場合には、ワークW2の外周面S2は良好に冷却することができない。
【0009】
本発明者は、この原因を次の様に考えた。
図22(a)、
図22(b)の場合では、大径のワークW1の外周面S1から冷却ジャケット80の内周壁80aまでの距離d1と、小径のワークW2の外周面S2から冷却ジャケット90の内周壁90aまでの距離d2は同等であり、噴射された冷却液は、極めて速やかに且つ噴射速度が保たれた状態で外周面S1、S2に達する。換言すると、噴射孔81、91から噴射された際の速度(初速)がほとんど保たれた状態で冷却液は外周面S1、S2に到達する。
【0010】
そのため、外周面S1、S2に最初に到達して昇温した冷却液の一部が外周面S1、S2に付着していても、後続の低温の冷却液は、昇温した冷却液の蒸気膜を突き抜けて外周面S1、S2に到達することができる。その結果、外周面S1、S2は良好に冷却されるのではないかと本発明者は考えた。
【0011】
ところが、
図23の場合には、ワークW2の外周面S2から冷却ジャケット80の内周壁80aまでの距離d3が相当に大きい。そのため、噴射孔81から噴射された冷却液が外周面S2に達するときには減衰し速度が低下している。その結果、最初に噴射されて外周面S2に達した冷却液の一部が外周面S2に付着して昇温すると共に、外周面S2の表面に高温の冷却液の膜を形成してしまい、速度が低下した後続の低温の冷却液では高温の冷却液の蒸気膜を突き抜けて外周面S2に達することができないのではないかと本発明者は考えた。
【0012】
また、冷却液槽に貯留した冷却液中にワークを浸漬させた状態で冷却ジャケットからワークに向けて冷却液を噴射供給する場合には、ワークから冷却ジャケットまでの距離が長過ぎると冷却ジャケットから噴射した冷却液はワーク表面に届きにくく、また、距離が短過ぎる(すなわち接近し過ぎる)と噴射した冷却液の逃げ場がなくなるため、冷却効果を得にくい。すなわち、ワークから冷却ジャケットまでの距離には、好ましい所定の範囲がある。本発明者は、この所定の範囲は、ワークの大きさ毎に相違すると推測している。
【0013】
そこで本発明は、異なる大きさのワークを良好に冷却することができる汎用性のある冷却ジャケットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、誘導加熱されて昇温したワークの外周面に冷却液を噴射供給する高周波焼入装置の冷却ジャケットであって、ワークの周囲に配置され、当該ワークを取り囲む三以上の複数の中空のブロック体を有し、前記各ブロック体は所定の角度を成す二面を有し、前記二面のうちの一面は、冷却液を噴射する噴射孔が設けられた噴射面を構成しており、前記二面のうちの他の一面は、隣接するブロック体の噴射面に重なる対向面を構成しており、各ブロック体によるワークを取り囲む領域の大きさが変化する方向に、隣接する一方のブロック体の噴射面と、他方のブロック体の対向面の相対位置を変更できることを特徴とする高周波焼入装置の冷却ジャケットである。
【0015】
請求項1に記載の発明では、ワークを取り囲む三以上の複数のブロック体が、ワークの周囲に配置されている。すなわち、ワークの周囲には、いずれかのブロック体が対向している。
各ブロック体は所定の角度を成す二面を有し、二面のうちの一面は、冷却液の噴射孔が設けられた噴射面を構成している。すなわち、ブロック体に冷却液が供給されると、噴射孔から冷却液を噴射することができる。
各ブロック体の二面のうちの他の一面は、隣接するブロック体の噴射面に重なる対向面を構成しているので、各ブロック体の噴射面の一部が、隣接するブロック体の対向面に覆われる。また、各ブロック体によるワークを取り囲む領域の大きさが変化する方向に、隣接する一方のブロック体の噴射面と、他方のブロック体の対向面の相対位置を変更できる。そのため、各ブロック体の噴射面におけるワークと対向する領域を変更することができる。換言すると、ワークを取り囲む各ブロック体によって構成される環の大きさを変更できる。すなわち、ブロック体によって囲まれる領域の大きさを変更できる。
その結果、ワークの外面に合わせて各ブロック体を配置し、ワークから噴射面までの距離を適切に調整することができる。すなわち、冷却液がワークに達する際の冷却液の速度が保たれる様に、ワークから噴射面までの距離を任意に調整することができる。よって、噴射面から噴射された冷却液は、ワーク表面に確実に到達し、ワークは良好に冷却される。
本発明の冷却ジャケットによると、高周波誘導加熱されて昇温した異なる大きさのワークを良好に冷却することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、各ブロック体の噴射面における、隣接するブロック体の対向面と重なった部位が、対向面によって遮蔽されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波焼入装置の冷却ジャケットである。
【0017】
請求項2に記載の発明では、各ブロック体の噴射面における、隣接するブロック体の対向面と重なった部位が、対向面によって遮蔽されているので、噴射面における隣接するブロック体の対向面と重なった部位から冷却液が漏れない。そのため、冷却液が冷却ジャケットの周囲に飛散しにくい。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記各ブロック体は、当該ブロック体自身の噴射面が、同一方向を向いた状態で位置を変更できることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波焼入装置の冷却ジャケットである。
【0019】
請求項3に記載の発明では、各ブロック体は、当該ブロック体自身の噴射面が、同一方向を向いた状態で位置を変更できるので、各ブロック体によって囲まれた領域を広げたり、狭めることができる。そのため、各ブロック体によって囲まれた領域内に様々な大きさのワークを配置することができる。換言すると、配置されたワークの大きさに合わせて、各ブロック体の位置を変更し、ワークと各ブロック体の噴射面の距離を適切に調整することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記複数のブロック体のうちの少なくとも一つが、当該ブロック体における噴射面と平行方向に移動可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波焼入装置の冷却ジャケットである。
【0021】
請求項4に記載の発明では、複数のブロック体のうちの少なくとも一つが、当該ブロック体における噴射面と平行方向に移動可能であるので、各ブロック体を容易に移動させることができる。すなわち、各ブロック体で構成される環の大きさを容易に変更できる。
【0022】
冷却液槽に貯留された冷却液中でワークに冷却液を噴射供給することもできる(請求項5)。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高周波焼入装置の冷却ジャケットは、ワークの大きさに合わせて冷却液の噴射面を配置することができ、ワークを良好に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る冷却ジャケットの平面図であり、(a)は、冷却ジャケットを大径のワークの周囲に配置した状態を示し、(b)は、冷却ジャケットを小径のワークの周囲に配置した状態を示す。
【
図2】(a)は、
図1の冷却ジャケットを構成するブロック体の斜視図であり、(b)は、(a)とは別の方向から見た
図1の冷却ジャケットのブロック体の斜視図である。
【
図3】隣接する二つのブロック体の斜視図であり、(a)は、
図1(a)の状態を示し、(b)は、
図1(b)の状態を示す。
【
図4】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、第一ブロック体が内周位置から外周側へ当該第一ブロック体の噴射面と平行に移動した状態を示す平面図である。
【
図5】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図4において移動した第一ブロック体が、さらに矢印で示す当該移動方向と直交する方向に移動した状態を示す平面図である。
【
図6】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図5で移動した第一ブロック体と隣接する第二ブロック体が、内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図7】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図6で移動した第二ブロック体に続き、第三ブロック体が内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図8】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図7で移動した第三ブロック体に続き、第四ブロック体が、内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図9】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図8で移動した第四ブロック体に続き、第五ブロック体が、内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図10】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図9で移動した第五ブロック体に続き、第六ブロック体が、内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図11】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図10で移動した第六ブロック体に続き、第七ブロック体が、内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図12】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図11で移動した第七ブロック体に続き、第八ブロック体が、内周位置から外周位置へ移動した状態を示す平面図である。
【
図13】冷却ジャケットが、
図1(b)に示す小径ワーク対向状態から
図1(a)に示す大径ワーク対向状態に変化する途上の状態を示し、
図12で移動した第八ブロック体に続き、第一ブロック体が噴射面と平行方向に移動して外周位置に配置され、全てのブロック体が外周位置に配置された状態を示す平面図である。
【
図14】高周波誘導加熱装置の構成を示す系統図である。
【
図15】大径のワークの外周面に移動焼入を実施している状態を示しており、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図16】小径のワークの外周面に移動焼入を実施している状態を示しており、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図17】
図1とは別の形態の冷却ジャケットの平面図であり、(a)は冷却ジャケットが大径のワークの周囲に配置されている状態を示し、(b)は、冷却ジャケットが小径のワークの周囲に配置されている状態を示す。
【
図18】
図1、
図17とは別の形態の冷却ジャケットの平面図であり、(a)は冷却ジャケットが大径のワークの周囲に配置されている状態を示し、(b)は、冷却ジャケットが小径のワークの周囲に配置されている状態を示す。
【
図19】
図1、
図17、
図18とは別の形態の冷却ジャケットの平面図であり、(a)は冷却ジャケットが大径のワークの周囲に配置されている状態を示し、(b)は、冷却ジャケットが小径のワークの周囲に配置されている状態を示す。
【
図20】(a)は、
図2(a)のブロック体とは別のブロック体の斜視図であり、(b)は、(a)のブロック体を(a)とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図21】
図20(a)に示す二つのブロック体が隣接している状態を示す斜視図であり、(a)は、大径のワークを冷却する場合の状態を示し、(b)は、小径のワークを冷却する場合の状態を示す。
【
図22】(a)は、大径のワークを冷却する従来の高周波焼入装置の冷却ジャケットの平面断面図であり、(b)は、小径のワークを冷却する従来の高周波焼入装置の冷却ジャケットの平面断面図である。
【
図23】
図22(a)の大径用の冷却ジャケット内に
図22(b)の小径のワークを配置した状態を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態に係る冷却ジャケット1は、焼入温度まで昇温したワークに冷却液を噴射供給し、ワークを急冷する機能を有するものである。
以下、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1(a)、
図1(b)に示す様に冷却ジャケット1は、複数のブロック体(第一ブロック体2〜第八ブロック体9)を有している。
各ブロック体の構造は同じであるため、第一ブロック体2について説明し、その他のブロック体の重複する説明は省略する。
【0027】
図2(a)に示す様に、第一ブロック体2は、内部が空洞(中空)の筐体であり、天面13、底面14、及び複数の側面を有している。
図2(a)、
図2(b)に示す様に、第一ブロック体2の側面には噴射面11と遮蔽面12(対向面)が設けられている。
【0028】
噴射面11は、第一ブロック体2の側面を構成する一つの平面であり、多数の噴射孔11aが設けられている。噴射孔11aは、第一ブロック体2の内外を連通させる孔であり、内部の加圧された冷却液を外部に噴射するノズルとして機能する。
【0029】
遮蔽面12は、第一ブロック体2における噴射面11とは別の側面を構成する平面であり、噴射面11と同等の大きさ(面積)を有する面である。
【0030】
図1(a)に示す様に、第一ブロック体2を平面視すると、噴射面11と遮蔽面12は所定の角度Aを成している。すなわち、本実施形態における第一ブロック体2の噴射面11と遮蔽面12の間の角度Aは45度である。
【0031】
第一ブロック体2の底面14には、供給管10が接続されている。供給管10は、図示しない冷却液供給源と第一ブロック体2とをつないでおり、第一ブロック体2に冷却液を導く。また、供給管10には可撓性を有する部位が設けられている。
【0032】
第一ブロック体2は、さらに図示しない支持機構によって支持されていると共に、図示しない移動機構によって位置を変更することができる。すなわち、供給管10は、第一ブロック体2の位置が変わっても、可撓性を有する部位が変形して第一ブロック体2に追従することができる。
【0033】
この様な構成を有する第一ブロック体2と同様の構成を有する第二ブロック体3乃至第八ブロック体9が、
図1(a)や
図1(b)に示す様に、第一ブロック体2と共に環状に配置されて冷却ジャケット1が構成されている。
【0034】
隣接するブロック体同士は、一方のブロック体の噴射面11と他方のブロック体の遮蔽面12とが重なる様に配置されている。具体的には、隣接する一方のブロック体の噴射面11と他方のブロック体の遮蔽面12は平行であり、一方のブロック体の噴射面11と他方のブロック体の遮蔽面12は接している。
【0035】
遮蔽面12は、隣接するブロック体(第一ブロック体2に対する第八ブロック体9)の噴射面11と重なり、他のブロック体の噴射面11の一部又は全部の噴射孔11aを塞ぎ、当該塞いだ噴射孔11aからの冷却液の噴射を阻止する機能を有している。
【0036】
各ブロック体における噴射面11と遮蔽面12は角度A(45度)を成しているため、隣接するブロック体同士は、45度ずつ向きがずれている。冷却ジャケット1は、第一ブロック体2乃至第八ブロック体9の八つのブロック体があり、各ブロック体の向きが45度ずつずれて、全体として環状構造を呈している。
【0037】
図1(a)と
図1(b)とでは、冷却ジャケット1の環の大きさが相違している。すなわち、
図1(a)と
図1(b)とでは、第一ブロック体2乃至第八ブロック体9の互いの相対位置が相違している。
図1(a)では、各ブロック体は外周位置に配置されている状態が示されており、
図1(b)では、各ブロック体が内周位置に配置されている状態が示されている。
【0038】
図1(a)では、隣接するブロック体の噴射面11と遮蔽面12の重なる領域が小さく、各ブロック体が構成する環は大きく、各ブロック体2乃至9によって広い(大きい)領域が囲まれている。その結果、冷却ジャケット1の内部には大径のワークW1を配置可能な空間が形成される。冷却ジャケット1は、環状構造を呈しており、内部にワークW1を配置すると、ワークW1の外周面S1の全周囲が、いずれかのブロック体2乃至9の噴射面11と対向する。
【0039】
また、
図1(a)における隣接する一組のブロック体同士の関係を見ると、
図3(a)の様になる。すなわち、第一ブロック体2の噴射面11と第二ブロック体3の遮蔽面12とが接しており、第一ブロック体2の噴射面11の噴射孔11aの大半が露出している。すなわち、ワークW1は大径であるが、各ブロック体2乃至9の噴射面11の広範囲に渡って露出した噴射孔11aから冷却液が噴射されると、噴射された冷却液は、大径のワークW1の外周面S1の全周囲に渡って供給される。
【0040】
ここで、
図1(a)に示す様に、各ブロック体2〜9から噴射された冷却液は、互いに交錯することなくワークW1の外周面S1に到達している。具体的には、第一ブロック体2から噴射された冷却液C2と、第一ブロック体2と隣接した第二ブロック体3から噴射された冷却液C3は交錯していない。すなわち、第一ブロック体2における最も第二ブロック体3側から噴射された冷却液C2と、第二ブロック体3における最も第一ブロック体2側から噴射された冷却液C3は、ワークW1の外周面S1に到達するまでの間に交錯していない。また、ワークW1の外周面S1には、全周囲に渡って、いずれかのブロック体2〜9から噴射された冷却液が均一に供給されている。
【0041】
さらに、冷却ジャケット1の環の大きさを調整することにより、各ブロック体の噴射面11からワークW1の外周面S1までの距離D1を極めて短い距離(至近距離)に設定することができる。すなわち、大径のワークW1の外周面S1の全周囲に渡って、各ブロック体2乃至9の噴射面11を近接対向させることができる。
そのため、各ブロック体2乃至9の噴射面11の噴射孔11aから噴射された冷却液は、速度がほとんど減衰することなく外周面S1に到達する。
【0042】
一方、
図1(b)では、隣接するブロック体の噴射面11と遮蔽面12の重なる領域が大きく、各ブロック体2乃至9が構成する環は小さく、冷却ジャケット1は狭い(小さい)領域を囲っている。すなわち、冷却ジャケット1は環状構造を呈しており、内部に形成された領域には小径のワークW2を配置することができる。
【0043】
また、
図1(b)における隣接する一組のブロック体同士の関係を見ると、
図3(b)の様になる。すなわち、第一ブロック体2の噴射面11の噴射孔11aの過半が第二ブロック体3の遮蔽面12によって塞がれている。そのため、露出した噴射孔11aは少ない。
【0044】
冷却ジャケット1の内部に小径のワークW2が配置されると、ワークW2の外周面S2の全周囲が、いずれかのブロック体2乃至9の噴射面11と対向する。すなわち、露出した噴射孔11aの数は少ないが、ワークW2は小径であり、ワークW2の外周面S2の全周囲が、いずれかのブロック体2乃至9の噴射面11と対向する。よって、各ブロック体2乃至9の噴射面11の噴射孔11aから冷却液が噴射されると、噴射された冷却液が小径のワークW2の外周面S2の全周囲に渡って供給される。
【0045】
ここで、
図1(b)に示す様に、各ブロック体2〜9から噴射された冷却液は、互いに交錯することなくワークW2の外周面S2に到達している。具体的には、第二ブロック体3から噴射された冷却液E3と、第二ブロック体3と隣接した第三ブロック体4から噴射された冷却液E4は交錯していない。すなわち、第二ブロック体3における最も第三ブロック体4側から噴射された冷却液E3と、第三ブロック体4における最も第二ブロック体3側から噴射された冷却液E4は、ワークW2の外周面S2に到達するまでの間に交錯していない。また、ワークW2の外周面S2には、全周囲に渡って、いずれかのブロック体2〜9から噴射された冷却液が均一に供給されている。
【0046】
さらに、各ブロック体2乃至9の相対位置を変更し、冷却ジャケット1の環の大きさを調整する(すなわち、各ブロック体2乃至9によって囲まれる領域の大きさを変化させる)ことにより、
図1(b)に示す様に、各ブロック体2乃至9の噴射面11からワークW2の外周面S2までの距離D2を極めて短い距離(至近距離)に設定することができる。すなわち、小径のワークW2の外周面S2の全周囲に渡って、各ブロック体2乃至9の噴射面11を近接対向させることができる。
そのため、各ブロック体2乃至9の噴射面11の噴射孔11aから噴射された冷却液は、速度がほとんど減衰することなく外周面S2に到達する。
【0047】
ここで、冷却ジャケット1の各ブロック体2乃至9のレイアウトを、
図1(b)に示す内周位置(小径の環を構成する位置)から
図1(a)に示す外周位置(大径の環を構成する位置)に変更する手順の一例について
図4乃至
図13を参照しながら説明する。
すなわち、各ブロック体2乃至9は、内周位置から外周位置へ、各ブロック体2乃至9によるワークを取り囲む領域の大きさが変化する方向に、隣接する一方のブロック体の噴射面11と、他方のブロック体の遮蔽面12(対向面)の相対位置を変更することができる。各ブロック体には、図示しない移動機構が設けられており、各ブロック体2乃至9は所定の順でそれぞれ移動する。
【0048】
また、各ブロック体2乃至9は、自身の噴射面11を同一方向に向けた状態で位置を変更できる。そのため、外周位置における各ブロック体2乃至9の噴射面11の向きは、内周位置における各ブロック体2乃至9の噴射面11の向きと同じである。そして、内周位置にある各ブロック体2乃至9が構成する環の中心と、外周位置にある各ブロック体2乃至9が構成する環の中心を一致させることができる。
【0049】
換言すると、以下の様である。
すなわち、大径のワークW1の設置位置と小径のワークW2の設置位置は同じであり、この設置位置に大径のワークW1を設置したときのワークW1の中心と、小径のワークW2を設置したときのワークW2の中心とが一致している。そして、各ブロック体2乃至9が構成する環の中心が、このワークW1、W2の中心と一致するように各ブロック体2乃至9を外周位置又は内周位置に配置することができる。
【0050】
図4に示す様に、まず、八つのブロック体2乃至9の内の一つ(ここでは第一ブロック体2)を破線で示す元の位置から実線で示す外周側の位置へ移動させる。この移動方向は、第二ブロック体3の遮蔽面12と平行方向である。さらに第一ブロック体2を、
図5に示す様に、第二ブロック体2の遮蔽面12から離れる方向(法線方向)に移動させる。すなわち、第一ブロック体2は、同一方向を向いた状態で
図1(b)に示す位置から
図1(a)に示す位置へ、途中、
図4及び
図5に示す位置を経由して移動することができる。
【0051】
このとき第一ブロック体2は、
図1(a)に示す第一ブロック体2の外周位置(最終設置位置)に対して、第一ブロック体2の噴射面11(第二ブロック体3の遮蔽面12)と平行方向(右方)に離間した位置にある。
第一ブロック体2は、他の各ブロック体3乃至9が
図1(a)に示す外周位置に移動してから当該第一ブロック体2の最終的な移動先である外周位置(最終設置位置)に移動する。
【0052】
次に、第二ブロック体3を移動させる。
図6に示す様に、第二ブロック体3の遮蔽面12を第一ブロック体2の噴射面11に当接させる。これで第二ブロック体3が外周位置に配置される。
【0053】
第二ブロック体3の移動が終わると、
図7に示す様に、第三ブロック体4を移動させる。第三ブロック体4の遮蔽面12を第二ブロック体3の噴射面11に当接させる。このときの第二ブロック体3の噴射面11と第三ブロック体4の遮蔽面12の重なる領域の大きさによって、冷却ジャケット1の環の大きさが決まる。
ここでは、各ブロック体の噴射面11の全ての噴射孔11aが露出する様に第三ブロック体4の遮蔽面12を第二ブロック体3の噴射面11に重ねる。これにより、第三ブロック体4が外周位置に配置される。
【0054】
第三ブロック体4の移動が終わると、
図8に示す様に、第四ブロック体5を移動させる。第四ブロック体5の遮蔽面12を第三ブロック体4の噴射面11に当接させる。
第四ブロック体5の遮蔽面12と第三ブロック体4の噴射面11の重なる領域の大きさは、第三ブロック体4の遮蔽面12と第二ブロック体3の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。これにより、第四ブロック体5が外周位置に配置される。
【0055】
第四ブロック体5の移動が終わると、
図9に示す様に、第五ブロック体6を移動させる。第五ブロック体6の遮蔽面12を第四ブロック体5の噴射面11に当接させる。
第五ブロック体6の遮蔽面12と第四ブロック体5の噴射面11の重なる領域の大きさは、第四ブロック体5の遮蔽面12と第三ブロック体4の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。これにより、第五ブロック体6が外周位置に配置される。
【0056】
第五ブロック体6の移動が終わると、
図10に示す様に、第六ブロック体7を移動させる。第六ブロック体7の遮蔽面12を第五ブロック体6の噴射面11に当接させる。
第六ブロック体7の遮蔽面12と第五ブロック体6の噴射面11の重なる領域の大きさは、第五ブロック体6の遮蔽面12と第四ブロック体5の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。これにより、第六ブロック体7が外周位置に配置される。
【0057】
第六ブロック体7の移動が終わると、
図11に示す様に、第七ブロック体8を移動させる。第七ブロック体8の遮蔽面12を第六ブロック体7の噴射面11に当接させる。
第七ブロック体8の遮蔽面12と第六ブロック体7の噴射面11の重なる領域の大きさは、第六ブロック体7の遮蔽面12と第五ブロック体6の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。これにより、第七ブロック体8が外周位置に配置される。
【0058】
第七ブロック体8の移動が終わると、
図12に示す様に、第八ブロック体9を移動させる。第八ブロック体9の遮蔽面12を第七ブロック体8の噴射面11に当接させる。
第八ブロック体9の遮蔽面12と第七ブロック体8の噴射面11の重なる領域の大きさは、第七ブロック体8の遮蔽面12と第六ブロック体7の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。これにより、第八ブロック体9が外周位置に配置される。
【0059】
第八ブロック体9の移動が終わると、
図13に示す様に、第一ブロック体2を移動させる。第一ブロック体2は、第一ブロック体2の噴射面11と平行であって、第八ブロック体9に接近する方向(
図13で見て左方)に移動し、第一ブロック体2の遮蔽面12が第八ブロック体9の噴射面11に当接する。
第一ブロック体2の遮蔽面12と第八ブロック体9の噴射面11の重なる領域の大きさは、第八ブロック体9の遮蔽面12と第七ブロック体8の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。これにより、第一ブロック体2が外周位置に配置される。
【0060】
また、このときの第二ブロック体3の遮蔽面12と第一ブロック体2の噴射面11の重なる領域の大きさは、第一ブロック体2の遮蔽面12と第八ブロック体9の噴射面11の重なる領域の大きさと同じである。
【0061】
以上の手順により、各ブロック体が
図13及び
図1(a)に示す外周位置に配置される。各ブロック体の噴射面11の全ての噴射孔11aが露出し、各ブロック体の噴射孔11a(
図3(a))は、冷却ジャケット1の環の中心方向を向いている。
【0062】
また、逆に
図13に示す状態から
図4に示す状態に各ブロック体2乃至9の相対位置を変更することもできる。すなわち、各ブロック体2乃至9を、外周位置から内周位置へ、各ブロック体2乃至9によるワークを取り囲む領域の大きさが変化する方向に、隣接する一方のブロック体の噴射面11と他方のブロック体の遮蔽面12の相対位置を変更することができる。
【0063】
さらに、内周位置よりは外周側で、外周位置よりは内周側の任意の位置に、各ブロック体2乃至9を移動させることもできる。すなわち、ワークの大きさに応じて、各ブロック体2乃至9によって形成される環の大きさ(領域の大きさ)を調整することができる。
【0064】
冷却ジャケット1は、
図14に示す高周波誘導加熱装置21と共に高周波焼入装置40(
図15)を構成し、ワークW1を高周波焼入することができる。
図14に示す様に高周波誘導加熱装置21は、周知の従来の高周波誘導加熱装置と同様の高周波発振器23、変圧器24、加熱コイル25を有している。高周波誘導加熱装置21では、交流電源22の交流から高周波電力が生成され、加熱コイル25には高周波電流が通電される。
【0065】
図15(a)、
図15(b)に示す様に、高周波誘導加熱装置21の加熱コイル25がワークW1の周囲に配置されており、冷却ジャケット1は、加熱コイル25に隣接した位置でワークW1の周囲に配置されている。
【0066】
ワークW1は長尺状の部材であり、加熱コイル25及び冷却ジャケット1は、ワークW1の下方から上方に相対移動する。すなわち、ワークW1の外周面S1には、加熱コイル25に通電される高周波電流によって高周波の誘導電流が励起され、その結果生じたジュール熱によって焼入温度まで昇温する。そして、ワークW1の加熱された部位が冷却ジャケット1に対向すると、当該部位は冷却ジャケット1の各ブロック体2乃至9の噴射面11(噴射孔11a)から噴射された冷却液によって急冷され、焼入される。ワークW1は、下方の部位から上方の部位まで順に焼入される。
【0067】
冷却ジャケット1の各ブロック体の噴射面11は、ワークW1の外周面S1の全周囲に渡って近接対向しており、ワークW1の外周面S1に対して一様に冷却液を噴射供給することができる。そのため、ワークW1の昇温した外周面S1は、偏りなく一様に冷却され、良好に高周波焼入される。
【0068】
すなわち、ワークW1の外周面S1から冷却ジャケット1の各ブロック体2乃至9の噴射面11までの距離D1(
図1(a))は極めて短く、各ブロック体2乃至9の噴射面11の噴射孔11aから噴射された冷却液は、ほとんど速度が減衰することなく外周面S1に到達する。そのため、ワークW1の外周面S1は、良好に冷却される。
【0069】
仮に、外周面S1の表面に付着して昇温した冷却液によって膜が形成されたとしても、速度がほとんど減衰しない低温の冷却液はこの膜を突き抜けて外周面S1に到達することができる。よって、外周面S1と低温の冷却液の間で良好に熱交換が行われ、外周面S1は良好に冷却される。
【0070】
また、
図16(a)、
図16(b)に示す様に、高周波焼入装置40は、小径のワークW2も同様に高周波焼入することができる。
本実施形態では、移動焼きによって長尺状のワークW1、W2を順に高周波焼入する場合について説明したが、加熱コイル25及び冷却ジャケット1をワークW1、W2と同等以上の長さを有する様に構成し、高周波焼入の冷却工程で加熱コイル25と入れ替わってワークW1、W2に近接対向させる様にすることもできる。
【0071】
昇温したワークW1、W2を冷却液槽に貯留した冷却液に浸漬させ、冷却液槽の冷却液中で冷却ジャケット1を使用する場合には、冷却ジャケット1は特に良好に機能する。すなわち、冷却ジャケット1では、各ブロック体の噴射面11(噴射孔11a)をワークW1、W2の外周面S1、S2に近接させることができるため、ワークW1、W2を良好に冷却することができる。
【0072】
図4乃至
図13では、内周位置から外周位置へ、各ブロック体2乃至9によるワークを取り囲む領域の大きさが変化する方向に各ブロック体2乃至9の位置を変更する際に、最初と最後に移動させる第一ブロック体2を同一平面内で移動させて他のブロック体3乃至9の外周位置への移動の障害とならない様にしたが、第一ブロック体2は、
図4乃至
図13の紙面と直交する方向に待避させ、他のブロック体3乃至9の移動が完了した後に所定の外周位置へ移動させてもよい。
【0073】
噴射面11における遮蔽面12で遮蔽された領域にある噴射孔11aは、冷却液が噴射できないように遮蔽されるのが好ましいが、液漏れは容認できる。すなわち、遮蔽面12によって覆われた噴射孔11aから冷却液が漏れても差し支えない。
【0074】
次に、別の実施形態に係る冷却ジャケット30について説明する。
図17(a)、
図17(b)に示す冷却ジャケット30は、六つのブロック体31乃至36を有している。すなわち、六つのブロック体31乃至36が環状に連接されている。
第一ブロック体31乃至第六ブロック体36は、
図1の冷却ジャケット1の第一ブロック体2と同様の構造を有しているが、噴射面37と遮蔽面38の成す角度Bだけが冷却ジャケット1の第一ブロック体2と相違している。すなわち、冷却ジャケット1の第一ブロック体2の噴射面11と遮蔽面12の成す角度Aは45度であったが、
図17(a)に示す冷却ジャケット30の各ブロック体31乃至36の噴射面37と遮蔽面38の成す角度Bは60度である。冷却ジャケット30のその他の構成は、冷却ジャケット1と同じであるため、重複する説明は省略する。
【0075】
冷却ジャケット30においても、第一ブロック体31乃至第六ブロック体36が、
図17(a)に示す外周位置と、
図17(b)に示す内周位置に配置され、大径のワークW3と小径のワークW4に対応することができる。
【0076】
図17(a)に示す外周位置に配置された各ブロック体31乃至36の噴射面37からワークW3の外周面S3までの距離D3と、
図17(b)に示す内周位置に配置された各ブロック体31乃至36の噴射面37からワークW4の外周面S4までの距離D4は、極めて短い。そのため、各ブロック体31乃至36の噴射面37から噴射された冷却液は、速度がほとんど減衰することなくワークW3、W4の外周面S3、S4に到達することができる。よって、高周波誘導加熱されて昇温した外周面S3、S4は良好に冷却される。
【0077】
本発明に係る冷却ジャケットは、ブロック体の数が偶数個であっても奇数個であってもよく、三個以上のブロック体があればよい。
すなわち、本発明に係る冷却ジャケットは、
図18(a)、
図18(b)や、
図19(a)、
図19(b)に示す様にブロック体の数を四個や三個にすることも可能である。
換言すると、使用するブロック体の数によって、噴射面と遮蔽面の成す角度を選定し、当該角度とブロックの数との乗算が360度となるようにすればよい。
【0078】
図18(a)、
図18(b)に示す冷却ジャケット50では、四つのブロック体51乃至54を有しているので、噴射面55と遮蔽面56の成す角度Cは90度である。
また、
図18(a)に示す外周位置において各ブロック体51乃至54に囲まれた大径ワークW5の外周面S5から噴射面55までの距離D5と、
図18(b)に示す内周位置において各ブロック体51乃至54に囲まれた小径ワークW6の外周面S6から噴射面55までの距離D6は極めて短い。そのため、噴射面55から噴射された冷却液は、速度がほとんど減衰することなくワークW5、W6に到達することができる。よって、高周波誘導加熱されて昇温したワークW5、W6の外周面S5、S6は良好に冷却される。
【0079】
図19(a)、
図19(b)に示す冷却ジャケット60では、三つのブロック体61乃至63を有しているので、噴射面64と遮蔽面65の成す角度Dは120度である。
また、
図19(a)に示す外周位置において各ブロック体61乃至63に囲まれた大径ワークW7の外周面S7から噴射面64までの距離D7と、
図19(b)に示す内周位置において各ブロック体61乃至63に囲まれた小径ワークW8の外周面S8から噴射面64までの距離D8は極めて短い。そのため、噴射面64から噴射された冷却液は、速度がほとんど減衰することなくワークW7、W8に到達することができる。よって、高周波誘導加熱されて昇温したワークW7、W8の外周面S7、S8は良好に冷却される。
【0080】
また、
図2(a)、
図2(b)に示すブロック体(第一ブロック体2)の代わりに、
図20(a)、
図20(b)に示すブロック体42で冷却ジャケットを構成することもできる。
ブロック体42は、
図2(a)に示すブロック体2と同様の構造を有している。ブロック体42には、ブロック体2の遮蔽面12の部位に、遮蔽部材18が設けられている。遮蔽部材18は、遮蔽面部16と受け部17を有している。
遮蔽面部16は、ブロック体2における遮蔽面12と同様の遮蔽面を構成している。
受け部17は、遮蔽面部16と交差する面を構成しており、遮蔽面部16の上部に設けられている。すなわち、遮蔽部材18は、板状の部材の上部が折り曲げられたような構造を呈しており、天面13とは反対側へ屈曲している。
【0081】
このような複数のブロック体42が環状に配置されて冷却ジャケットが構成されている。
図21(a)、
図21(b)では、この冷却ジャケットにおける隣接する二つのブロック体42、43のみが描写されている。
【0082】
図21(b)に示す場合では、ブロック体42の噴射面11の過半がブロック体43の遮蔽部材18の遮蔽面部16で覆われている。ブロック体42の噴射面11(噴射孔11a)から噴射された冷却液は、遮蔽面部16で遮蔽される。ここで、噴射された冷却液が遮蔽面部16に衝突し、さらに上方に飛散した場合、遮蔽部材18の受け部17によってそれ以上の飛散が阻止される。すなわち、冷却液が受け部17を超えて上方へ飛散することが防止される。
【0083】
冷却ジャケットの上方には加熱コイル25(
図15(b))が配置されているが、受け部17によって冷却液の上方への飛散が阻止され、加熱コイル25に冷却液が付着することが阻止されている。