(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の紺色は、複数のプロセス色のインキ、複数の特色インキ、特練インキ、またはプロセス色のインキと特色インキによって得られる、請求項2に記載の色分解処理方法。
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の色分解処理方法によって求められた前記第1の紺色、及び前記第1の紺色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の色分解値に基づいて、前記第1の紺色のインキと、該1以上のプロセス色のインキとを掛け合わせる、印刷物の製造方法。
前記第1の茶色は、複数のプロセス色のインキ、複数の特色インキ、特練インキ、またはプロセス色のインキと特色インキによって得られる、請求項7に記載の色分解処理方法。
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の色分解処理方法によって求められた前記第1の茶色、及び前記第1の茶色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の色分解値に基づいて、前記第1の茶色のインキと、該1以上のプロセス色のインキとを掛け合わせる、印刷物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
方法Aの場合には、印刷後に余剰残インキを、特定の指定色以外の色の再現には流用できない場合が多いため、廃棄するか或いは在庫にする場合も、多様な特色インキが在庫スペースを占めることとなり、在庫管理の効率低下という問題が発生する。
方法Bの場合には、掛け合わせるプロセス色インキの組合せによっては、印刷ずれが許容できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、「版」を使用する印刷方式において、指定色に合わせた特色を再現する場合に、余剰残インキを減少させつつ、印刷ずれによる不良品を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の構成を有する。
[1]色分解処理装置によって実行される色分解処理方法であって、2色以上のインキを調色することによって得られる第1の紺色、及び該第1の紺色のインキと1色以上のインキとを掛け合わせることによって得られる第2の紺色を1または複数含む表を用意するステップと、該表から、指定された色見本に該当する第1の紺色、及び第2の紺色を選択するステップと、該選択した第1の紺色に基づいて
、1以上の標準色及び該1以上の標準色の色分解値を求めるステップと、該選択した第2の紺色に基づいて、前記第1の紺色に掛け合わせる前記1以上の標準色及び該1以上の標準色の色分解値を求めるステップとを有する、色分解処理方法。
【0007】
[2]色分解処理装置によって実行される色分解処理方法であって、少なくとも1色以上の標準色によって得られる第1の紺色、及び該第1の紺色のインキと1色以上のプロセス色のインキとを掛け合わせることによって得られる第2の紺色を1または複数含む表を用意するステップと、該表から、指定された色見本に該当する第1の紺色、及び第2の紺色を選択するステップと、該選択した第1の紺色に基づいて
、1以上の標準色及び該1以上の標準色の色分解値を求めるステップと、該選択した第2の紺色に基づいて、前記第1の紺色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の色分解値を求めるステップとを有する、色分解処理方法。
【0008】
[4]前記第2の紺色は、前記第1の紺色のインキに1色以上のプロセス色のインキを所定の網パーセントで掛け合わせたものであり、前記色分解値を求めるステップでは、該選択した第1の紺色、及び第2の紺色に基づいて、前記第1の紺色、及び第1の紺色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色の網パーセントを求める、[2]または[3]に記載の色分解処理方法。
【0009】
[5][2]から[4]のいずれか1項に記載の色分解処理方法によって求められた前記第1の紺色、及び前記第1の紺色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の色分解値に基づいて、前記第1の紺色のインキと、該1以上のプロセス色のインキとを掛け合わせる、印刷
物の製造方法。
【0010】
[6]色分解処理装置によって実行される色分解処理方法であって、2色以上のインキを調色することによって得られる第1の茶色、及び該第1の茶色のインキと1色以上のインキとを掛け合わせることによって得られる第2の茶色を1または複数含む表を用意するステップと、該表から、指定された色見本に該当する第1の茶色、及び第2の茶色を選択するステップと、該選択した第1の茶色に基づいて
、1以上の標準色及び該1以上の標準色の色分解値を求めるステップと、該選択した第2の茶色に基づいて、前記第1の茶色に掛け合わせる前記1以上の標準色及び該1以上の標準色の色分解値を求めるステップとを有する、色分解処理方法。
【0011】
[7]色分解処理装置によって実行される色分解処理方法であって、少なくとも1色以上の標準色によって得られる第1の茶色、及び該第1の茶色のインキと1色以上のプロセス色のインキとを掛け合わせることによって得られる第2の茶色を1または複数含む表を用意するステップと、該表から、指定された色見本に該当する第1の茶色、及び第2の茶色を選択するステップと、該選択した第1の茶色に基づいて
、1以上の標準色及び該1以上の標準色の色分解値を求めるステップと、該選択した第2の茶色に基づいて、前記第1の茶色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の色分解値を求めるステップとを有する、色分解処理方法。
【0012】
[8]前記第1の茶色は、複数のプロセス色のインキ、複数の特色インキ、特練インキ、またはプロセスインキと特色インキによって得られる、[7]に記載の色分解処理方法。
[9]前記第2の茶色は、前記第1の茶色のインキに1色以上のプロセス色のインキを所定の網パーセントで掛け合わせたものであり、前記色分解値を求めるステップでは、該選択した第1の茶色、及び第2の茶色に基づいて、前記第1の茶色、前記第1の茶色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の網パーセントを求める、[7]または[8]に記載の色分解処理方法。
【0013】
[10][7]から[9]のいずれか1項に記載の色分解処理方法によって求められた前記第1の茶色、及び前記第1の茶色に掛け合わせる前記1以上のプロセス色及び該1以上のプロセス色の色分解値に基づいて、前記第1の茶色のインキと、該1以上のプロセス色のインキとを掛け合わせる、印刷
物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
開示の実施の形態によれば、「版」を使用する印刷方式において、指定色に合わせた特色を再現する場合に、余剰インキを減少させつつ、印刷ずれによる不良品を減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られない。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0017】
<色分解処理装置>
図1は一実施の形態に係る色分解処理装置を示す。色分解処理装置100は、顧客(印刷の発注者)などによって色見本が示されたときに、該色見本を再現するために使用する特色と、該特色に掛け合わせるプロセス色及び該プロセス色の色分解値とを出力する。ここで、プロセス色とは、カラー印刷で使用されるシアン(Cyan: C)、マゼンタ(Magenta: M)、イエロー(Yellow: Y)、墨(Key: K)などの4色をいう。さらに、プロセス色にライトシアン(Lightcyan)、ライトマゼンタ(Lightmagenta)などを加えて4色以上としてもよい。また、特色とは、印刷においてプロセス色では再現できない色を表現するために、あらかじめ調合された色をいう。
【0018】
色分解処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)106と、記憶部108とから構成される。記憶部108には、CPU106を色分解処理装置100として機能させるプログラム(色分解処理プログラム)が格納されるとともに、後述する指定色テーブル102が格納される。CPU106は、記憶部108に格納されたプログラムを実行することによって、印刷の発注者などによって示された色見本を特色と、該特色に掛け合わせるプロセス色とに色分解する。
【0019】
指定色テーブル102は、予め構成される特定の指定色を再現する際に用いる汎用性の高い特色(以下、「共通色」という)と、該共通色にプロセス色を掛け合わせることによって得られる指定色とが示されたテーブルである。共通色の数に応じて、指定色テーブル102は、1または複数用意される。本実施の形態に係る色分解処理装置100では、共通色は、シアン、マゼンタ、イエロー、墨などの4色以上のプロセス色から2色以上のプロセス色を選択し、該2色以上のプロセス色を調色することによって得られる紺色とする。なお、共通色を、少なくとも1色以上の標準色を調色することによって得るようにしてもよい。ここで、標準色は、インキメーカが用意する全ての色であってもよい。特色は、標準色中のプロセス色以外の全ての色である。
【0020】
色分解処理装置100は、CPU106が記憶部108に格納されたプログラムを実行することによって指定色選択部104として機能する。指定色選択部104は、印刷を発注する者によって色見本が指定された際に、指定色テーブル102に含まれる指定色から、該色見本に該当する指定色を選択する。そして、指定色選択部104は、選択した指定色を構成する共通色及び該共通色の色分解値と、該共通色に掛け合わせるプロセス色及び該プロセス色の色分解値とを出力する。以下、共通色及び該共通色の色分解値と、該共通色に掛け合わせるプロセス色及び該プロセス色の色分解値とを表す情報を指定色分解情報という。
【0021】
<指定色テーブル>
図2は、指定色テーブル102の一例を示す。指定色テーブル102は、共通色が示される第1の領域202と、1または複数の指定色が示される第2の領域204とを含む。
【0022】
ここでは、共通色の一例として紺色を適用し、指定色の一例として共通色にプロセス色のうち、シアン及びマゼンタの両方または一方を掛け合わせる場合について示す。つまり、共通色として紺色(以下、「第1の紺色」という)が用意され、該第1の紺色にシアン及びマゼンタの両方または一方を掛け合わせることによって紺色(以下、「第2の紺色」という)が用意される。共通色に掛け合わせるプロセス色は、シアン及びマゼンタに限らず、他のプロセス色を掛け合わせるようにしてもよい。
【0023】
共通色は、国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage: CIE)によって定められたCIELAB(CIE1976L*a*b*表示)空間を用いることによって表される。従って、共通色を測色することによって得られる計測値は(L*,a*,b*)で表すことができる。CIELAB空間を用いて共通色を表す場合、共通色の計測値を(L1,a1,b1)で表すと、第1の紺色の範囲はL1=15〜52、a1=−20〜35、b1=−70〜−50であり、より好ましくはL1=25〜45、a1=−20〜22、b1=−70〜−60である。
【0024】
第1の領域202に対して、横方向及び縦方向のいずれか一方または両方に、第2の紺色が示されることによって第2の領域204が用意される。
図2に示される例では、第1の領域202に対して、横方向及び縦方向の両方向に、第2の紺色が複数示される。第1の領域202に対して横方向に用意される第2の領域204に示される第2の紺色は、第1の紺色にシアンを所定の網パーセント(例えば、10%−100%、10%間隔)で掛け合わせることによって用意される。また、第1の領域202に対して縦方向に用意される第2の領域204に示される第2の紺色は、第1の領域に示される第1の紺色及び該第1の領域に対して横方向に用意される第2の領域に示される第2の紺色の各々に、マゼンタを所定の網パーセント(例えば、10%−100%、10%間隔)で掛け合わせることによって用意される。
【0025】
<色分解処理装置の動作>
色分解処理装置100の動作について、指定色テーブル102を用意する処理と、指定色テーブルから指定色を選択する処理とに分けて説明する。
【0026】
図3は、指定色テーブルを用意する処理を示す。
ステップS302では、例えば、ユーザは、共通色を用意する。ユーザは、4色以上のプロセス色から2色以上のプロセス色を選択し、該2色以上のプロセス色を調合することによって共通色を用意する。例えば、ユーザは、4色以上のプロセス色から選択した2色以上のプロセス色を調合することによって第1の紺色を用意する。第1の紺色を複数用意してもよい。
【0027】
ステップS304では、例えば、ユーザは、指定色を用意する。ユーザは、共通色に1色以上のプロセス色を掛け合わせることによって指定色を用意する。例えば、ユーザは、第1の紺色にシアン及びマゼンタの両方または一方を掛け合わせることによって第2の紺色を用意する。
【0028】
ステップS306では、例えば、ユーザは、指定色テーブル102を作成する。ユーザは、共通色が示される第1の領域202と、1または複数の指定色が示される第2の領域204とを含む指定色テーブル102を作成する。複数の共通色が構成される場合には、複数の指定色テーブルが作成される。
【0029】
複数の発注者から、それぞれ色相、明度または彩度などの色の属性が異なる紺色の色見本が示された場合には、複数の発注者によって示された紺色の各々は、2以上の標準色を調合することで指定色を再現できる。しかし、複数の発注者によって示された紺色の色見本に応じて指定色のインキを調色すると、印刷後の余剰残インキは、その発注者以外の発注者によって示された紺色のインキには流用できないため、廃棄するか或いは在庫する場合も、多様な特色インキが在庫スペースを占めることとなり、在庫管理の効率低下という問題が発生する。
【0030】
本実施の形態では、異なるプロセス色を掛け合わせることによって複数の発注者から示された紺色(指定色)の各々を構成できる共通色を用意する。共通色を用意することによって、発注者からの色見本の紺色の色の属性が異なる場合であっても、該共通色のインキにプロセス色を掛け合わせることによって各発注者によって示された色見本の紺色を再現できる。共通色のインキは、複数の発注者から示された紺色(指定色)の再現に流用できるため無駄とはならない。
【0031】
図4は、指定色テーブル102から指定色を選択する処理を示す。
ステップS402では、指定色選択部104は、印刷を発注する者によって示された色見本50を再現するために、複数の指定色テーブルの各々に含まれる共通色から、色見本50に近似する共通色を含む指定色テーブルを選択する。例えば、指定色選択部104は、CIELAB空間を用いて、指定色テーブルを選択するようにしてもよい。この場合、指定色選択部104は、複数の指定色テーブルの各々に含まれる共通色を測色することによって得られる計測値(L1,a1,b1)と、色見本50を測色することによって得られる計測値(L2,a2,b2)とに基づいて、色差ΔEを計算する。そして、指定色選択部104は、該色差ΔEが最も小さくなる共通色を含む指定色テーブルを選択する。この場合、色差ΔEは、色差ΔE=√((L1−L2)
2+(a1−a2)
2+(b1−b2)
2)で計算される。また、指定色選択部104は、目視によって、複数の指定色テーブルの各々に含まれる共通色から選択された色見本50に近似する共通色を含む指定色テーブルを取得するようにしてもよい。
【0032】
ステップS404では、指定色選択部104は、ステップS402で選択した指定色テーブルに含まれる指定色から、色見本に該当する指定色を選択する。例えば、指定色選択部104は、CIELAB空間を用いて、指定色を選択するようにしてもよい。この場合、指定色選択部104は、指定色を測色することによって得られる計測値(L3,a3,b3)と、色見本50を測色することによって得られる計測値(L2,a2,b2)とに基づいて、色差ΔEを計算し、色差ΔEが最も小さくなる指定色を選択する。この場合、色差ΔEは、色差ΔE=√((L2−L3)
2+(a2−a3)
2+(b2−b3)
2)で計算される。また、指定色選択部104は、目視によってステップS402で選択した指定色テーブルに含まれる指定色から選択される色見本50に該当する指定色を表す情報を取得するようにしてもよい。
【0033】
ステップS406は、指定色選択部104は、ステップS404で選択した指定色の指定色分解情報を出力する。例えば、指定色選択部104は、指定色を構成する共通色及び該共通色の網パーセントを示す情報と、該共通色に掛け合わされるプロセス色及び該プロセス色の網パーセントなどの色分解値を表す情報を出力する。
【0034】
これによって、印刷の発注者によって示された色見本を、共通色と、プロセス色とに色分解できる。
【0035】
<印刷工程>
図5は、本発明の一実施例に係る印刷装置を示す。ここでは、一例としてグラビア印刷の場合について説明する。グラビア印刷に限らず、「版」を使用する印刷方式に適用できる。
【0036】
印刷装置300は、版胴301と、圧胴302と、ドクター装置306と、ドクターブレード307と、インキパン308と、ファニッシャローラ309とを有する。版胴301と圧胴302は対向して配置され、両者の接触面間にプラスチックフィルム、紙、アルミ箔などの印刷基材303が通される。印刷は、版胴301と圧胴302との間の圧力(印圧)により、版胴301の版面301sのセル中のインキを印刷基材303に転移させる方法によって行われる。
図5では、印刷基材303は矢印Xの方向に進行する。インキパン308中には、流動性の印刷インキ305を満たし、版胴301の下面の一部が印刷インキ305に浸漬するようにして回転させる。
【0037】
ファニッシャローラ309は、版胴301への印刷インキ305の付着を良好にする目的で用いられる。また、インキパン308にインキ循環撹拌装置を連結するようにしてもよい。これによって、均一のインキ粘度とインキ量を維持することができる。
印刷インキ305は、色見本50を再現するために選択された指定色を構成する共通色の印刷インキ、及びプロセス色の印刷インキである。通常、共通色、プロセス色の色順の印刷ユニットにより順次重ね刷りして印刷される。
【0038】
版胴301は、円周450mm−900mm、印刷幅500mm−1500mm程度のものである。版胴301の回転に伴い版胴301の版面301sに連れて上昇する印刷インキ305は、ドクター装置306のドクターブレード307により余分のインキが掻き落とされ、必要なインキのみがセル中に残るようにされる。版胴301と圧胴302との間において、当該セル中のインキが、印刷基材303に転移する。
【0039】
次に印刷基材303は、乾燥機内を通過する。これによって、インキ中の顔料と樹脂組成以外の溶剤成分が揮散される。続いて、印刷基材303は、次のユニットに移り後続の印刷が行われる。溶剤成分の揮散は乾燥機内に限らず、インキが版面301sに付着している間、すなわちドクターブレード307の通過後、印刷基材303に達する間においても生じている。
【0040】
グラビア印刷の腐食方式によって作製された印刷版では、開口面積が略一定で深さが異なるセルによって印刷の濃淡が表現される。また、電子彫刻機によって彫刻された印刷版では、開口面積も深さも共に変化するセルが形成される。彫刻版の他に網グラビアの場合もセルの開口面積を変化させ、深さも変化するようにされている。セルの開口面積は、インチ当たりの線数により変化し、例えば、包装材印刷では、150線−250線程度の線数が使用される。
【0041】
圧胴302は、鉄芯にゴム巻きして表面を滑らかに研磨したローラである。版胴301に対する圧力(印圧)を油圧シリンダ等により調製できるようにされており、印刷中は一定の印圧がかけられる。圧胴302のゴム硬度や材質は、印刷材料等により適宜選択される。ドクター装置306は、ドクターブレード307を交換可能に支持する機構であり、版面に対するドクターブレード307の接触角度(ドクター角)αや接触圧(ドクター圧)を調製できるようにされている。また、印刷に伴いドクター装置306自体が動いて、ドクターブレード307が一定範囲で版面を左右に平行して動く構造にされている。
【0042】
指定色分解情報に従って、印刷装置300で印刷することによって、共通色のインキと、プロセス色のインキとが掛け合わされ、印刷基材303に、印刷を発注する者によって示された色見本の紺色の印刷を行うことができる。
【0043】
特に、指定色が紺色の場合には、共通色と、プロセス色とを掛け合わせることによって、印刷ずれを目立たなくできる。
グラビア印刷を行う印刷装置300では、2色以上の標準色及びプロセス色のいずれか一方または両方を掛け合わせて文字等の図柄を印刷すると、機械の構造上または印刷基材の伸縮等の影響により、見当ずれ(印刷ずれ)が発生することがある。また、見当ずれが目立つ部分は不良品として除去する必要がある。
【0044】
見当ずれを目立たなくする手段として、一般的に「ニゲ(逃げ)」と呼ばれる手法をとることができる。「ニゲ」とは、掛け合せる2色(2色以上の場合もある)のうち一方の色の図柄を他方の色の図柄よりも予めわずかに小さくしておくことにより、印刷がずれてもはみ出す部分を少なくして目立たなくする方法である。「ニゲ」は、その図形の大きさや色の組合せなどにより、寸法は任意に変動する。
【0045】
ところが、色の組合せによっては「ニゲ」だけでは見当ずれを目立たなくすることが難しい場合がある。具体的には、「紺」系統、「茶」系統などの濃度の高い色を複数のプロセス色の掛け合せで再現する場合が挙げられる。例えば、特色を使わずに「紺」の文字を印刷する場合は、「シアン」と「マゼンタ」とを掛け合わせて所望の「紺」を再現するが、この場合、「シアン」と「マゼンタ」はいずれも濃度を高くする必要があるため、見当ずれによってどちらの色がはみ出したとしても目立ってしまう。また、シアンとマゼンタは、いわば青と赤であり、色相環(color circle)で反対に位置する関係の色の組合せにあるため、シアンとイエローとを掛け合せた場合や、マゼンタとイエローとを掛け合せた場合と違い、見当ずれが目立ちやすい。特に、ズレが大きい場合、青と赤の二重線のようになってしまう。見当ずれを目立たなくするために「ニゲ」をより大きくすることも場合によっては可能だが、「ニゲ」が大きい場合は単色の輪郭が印刷図柄に形成されてしまうので、それ自体が目立ってしまう。また、再現する図柄として細かい文字や図形を印刷する場合は、「ニゲ」の程度にも自ずと限界が生じる。
【0046】
そこで、本実施の形態では、「紺」系統の印刷する場合は、使用頻度の高い「紺」のうち、汎用性の高い色の「紺」を「共通色」とし、各商品の指定色の「紺」との色差は「共通色」とプロセス色及び標準色のいずれか一方または両方を適宜掛け合わせることにより調整する。この場合、ベースに濃度の高い「共通色」があることにより、掛け合わせるプロセス色や標準色の濃度を低くすることが可能となるので、仮に「ニゲ」を設けなかったとしても見当ずれが目立たない。
更に、本実施形態に、「ニゲ」を設けることにより、更に見当ずれが目立たない印刷が可能となる。また、濃度の高い「共通色」と濃度の低いプロセスカラーとを掛け合せるので、「ニゲ」自体が目立つこともない。
具体的には、共通色のインキを印刷基材に転移させるときに使用する印刷版のパターンに対して、プロセス色のインキを印刷基材に転移させるときに使用する印刷版のパターンを小さくすることによって、印刷ずれをさらに目立たせないようにできる。
【0047】
図6は、従来の印刷方法に従ってプロセス色を掛け合わせることによって作成した紺色((1)、(2))と、本実施の形態に従って作成した紺色((3))との印刷ずれの比較例を示す。
図6(1)−
図6(2)において、「色a」はシアンであり、「色b」はマゼンタである。
図6(1)によれば、「色a」と「色b」で印刷ずれが起きると、「色a」と「色b」とが重なった部分は紺色に見えるが、「色a」一色の部分は青色、「色b」一色の部分はピンク色ににじんだように見えてしまう。
図6(2)は、印刷ずれを目立たなくするために、一方の色の図形を少し小さくする、いわゆる「ニゲ」を設けたものである。
図6(2)によれば、「色a」と「色b」はともに反対色の濃い色であるため、どちらの色に「ニゲ」を設けたとしても他方が目立ってしまう。具体的には、
図6(2)は、「色a」の縁取りのように見えてしまい見栄えが悪くなる。
図6(3)は、「色a」を共通色の「紺」として、「色b」を「シアン」または「マゼンタ」もしくはその両方とする。
図6(3)によれば、共通色の「紺」と指定色とは、共に濃度が高く、色相が近いため、掛け合せる「色b」の濃度を低くすることができる。したがって、仮に印刷ずれにより「色b」がはみ出したとしても目立つことがなく、また、濃度が高い「色a」の面積が大きいので「ニゲ」自体が目立たない。
【0048】
本実施の形態に係る色分解処理によって、色見本の紺色が、共通色とプロセス色とに分解されることによって、共通色とプロセス色とを掛け合わせた場合に、印刷ずれを目立たせないようにできる。
【0049】
前述した実施の形態では、4色以上のプロセス色のインキから2色以上のプロセス色のインキを選択し、該2色以上のプロセス色のインキを調色することによって共通色のインキを用意する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、少なくとも一色以上の標準色のインキを調色することによって共通色のインキを用意してもよいし、特色のインキとプロセス色のインキとを調色することによって共通色のインキを用意してもよいし、複数の特色のインキを調色することによって共通色のインキを用意してもよいし、予めメーカで特定のユーザ専用に調色された特練インキによって共通色のインキを用意してもよい。ここで、特練インキとは、特色のカテゴリーに含まれるものをいう。
【0050】
本実施の形態に係る色分解処理方法によれば、プロセス色から2色以上のプロセス色を選択し、その2色以上のプロセス色のインキを調色することによって第1の紺色のインキを用意し、該第1の紺色と1色以上のプロセス色とを掛け合わせることによって1または複数の第2の紺色を再現する。印刷を発注する者によって色見本が示された場合には、複数の第2の紺色から該色見本に該当する第2の紺色を選択し、該第2の紺色を再現するための共通色と、プロセス色及び該プロセス色の色分解値を求め、該共通色と、該プロセス色及び該プロセス色の色分解値に基づいて印刷を行う。
【0051】
仮に2以上のプロセス色のインキを調色することによって第2の紺色のインキを再現した場合には、該第2の紺色のインキ以外の色を再現するのには流用できない余剰残インキが発生するおそれがある。しかし、共通色のインキは、第2の紺色のインキ以外の色を再現するのにも流用できるため、第2の紺色のインキ以外の色を再現するのには流用できない余剰残インキを低減できる。
さらに、特に、クラビア印刷で再現される色のうち、紺色は、使用される頻度が高い色であるが、2色以上のプロセス色を掛け合わせることによって再現しようとすると、他の色と比較して印刷ずれなどが目立ってしまう。第2の紺色を再現するための共通色と、プロセス色とを掛け合わせることによって、第2の紺色を再現する際に生じる印刷ずれを目立たせないようにできる。
【0052】
上述した実施の形態に係る色分解処理方法では、プロセス色から2色以上のプロセス色を選択し、その2色以上のプロセス色のインキを調色することによって第1の紺色のインキを用意し、該第1の紺色と1色以上のプロセス色とを掛け合わせることによって1または複数の第2の紺色を再現する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、標準色のインキから2色以上の標準色のインキを選択し、その2色以上の標準色のインキを調色することによって第1の紺色のインキを用意し、該第1の紺色と1色以上の標準色とを掛け合わせることによって1または複数の第2の紺色再現するようにしてもよい。この場合、印刷を発注する者によって色見本が示された場合には、複数の第2の紺色から該色見本に該当する第2の紺色を選択し、該第2の紺色を再現するための共通色と、標準色及び該標準色の色分解値を求め、該共通色と、該標準色及び該標準色の色分解値に基づいて印刷を行う。
【0053】
<変形例>
上述した実施の形態に係る色分解処理方法では、色見本の色の一例として紺色について説明した。本変形例においては、色見本に示される色の他の例として、茶色について説明する。
【0054】
色分解処理装置は、
図1を参照して説明した実施の形態に係る色分解処理装置100を適用できる。指定色テーブルは、
図2を参照して説明した指定色テーブル102を適用できる。本変形例では、共通色の一例として茶色が適用され、指定色の一例として共通色にプロセス色のうち、シアン及びイエローの両方または一方を掛け合わせる。つまり、共通色として茶色(以下、「第1の茶色」という)が構成され、該第1の茶色にシアン及びイエローの両方または一方を掛け合わせることによって茶色(以下、「第2の茶色」という)が構成される。共通色に掛け合わせるプロセス色はシアン及びイエローに限らず、他のプロセス色を掛け合わせるようにしてもよい。
【0055】
CIELAB空間を用いて共通色を表す場合、共通色の計測値を(L4,a4,b4)で表すと、第1の茶色の範囲はL4=16〜30、a4=24〜39、b4=−12〜32であり、より好ましくはL4=20〜28、a4=30〜37、b4=5〜32である。
【0056】
色分解処理装置の動作については、
図3、及び
図4を適用でき、印刷工程については、
図5を参照して説明した印刷装置300を適用できる。
【0057】
指定色分解情報に従って、印刷装置300で印刷することによって、共通色のインキと、プロセス色のインキとが掛け合わされ、印刷基材に、印刷を発注する者によって示された色見本の茶色の印刷を行うことができる。
【0058】
特に、指定色が茶色の場合には、共通色と、プロセス色とを掛け合わせることによって、印刷ずれを目立たなくできる。
本実施の形態では、「茶」系統の印刷する場合は、使用頻度の高い「茶」のうち、汎用性の高い色の「茶」を「共通色」とし、各商品の指定色の「茶」との色差は「共通色」とプロセス色及び標準色のいずれか一方または両方を適宜掛け合わせることにより調整する。この場合、ベースに濃度の高い「共通色」があることにより、掛け合わせるプロセス色や標準色の濃度を低くすることが可能となるので、仮に「ニゲ」を設けなかったとしても見当ずれが目立たない。
更に、本実施形態に、「ニゲ」を設けることにより、見当ずれが目立たない印刷が可能となる。また、濃度の高い「共通色」と濃度の低いプロセスカラーとを掛け合せるので、「ニゲ」自体が目立つこともない。
具体的には、共通色のインキを印刷基材に転移させるときに使用する印刷版のパターンに対して、プロセス色のインキを印刷基材に転移させるときに使用する印刷版のパターンを小さくすることによって、印刷ずれをさらに目立たせないようにできる。
【0059】
図7は、従来の印刷方法に従ってプロセス色を掛け合わせることによって作成した茶色((1)、(2))と、本変形例に従って作成した茶色((3))との印刷ずれの比較を示す。茶色をプロセス色で再現する場合は、シアン、マゼンタ、イエローを掛け合わせることによって作成されることが多い。そして、グラビア印刷において、プロセス色のイエローとその他の色との印刷ズレは、イエローの色の濃度が低いため殆ど目立たず、また、見た目の影響が少ないといえるため、イエローについては特にニゲを設けずに版設計することが多い。但し、シアン、マゼンタ、イエローの三色の印刷ズレを図で表現するのは非常に難しいので、
図7(1)及び
図7(2)では、説明の便宜上、印刷ズレの影響の小さいイエローを省略して説明する。つまり、シアン、マゼンタの二色を掛け合わせる場合について説明する。
図7(1)及び
図7(2)において、「色c」はマゼンタであり、「色d」はシアンである。
図7(1)によれば、「色c」と「色d」で印刷ずれが起きると、「色c」と「色d」とが重なった部分は紫色(実際にはイエローが掛け合せられるので茶色)に見えるが、「色c」一色の部分はピンク色、「色d」一色の部分は青色にじんだように見えてしまう。
図7(2)は、印刷ずれを目立たなくするために、一方の色の図形を少し小さくする、いわゆる「ニゲ」を設けたものである。
図7(2)によれば、「色c」と「色d」はともに反対色の濃い色であるため、どちらの色に「ニゲ」を設けたとしても他方が目立ってしまう。具体的には、
図7(2)は、「色c」の縁取りのように見えてしまい見栄えが悪くなる。
図7(3)は、「色c」を共通色の「茶」として、「色d」をプロセス色とする。
図7(3)によれば、共通色の「茶」と指定色とは、共に濃度が高く、色相が近いため、掛け合せる「色d」の濃度を低くすることができる。したがって、仮に印刷ずれにより「色d」がはみ出したとしても目立つことがなく、また、濃度が高い「色c」の面積が大きいので「ニゲ」が目立たない。
【0060】
本変形例に係る色分解処理によって、色見本の茶色が、共通色とプロセス色とに分解されることによって、共通色とプロセス色とを掛け合わせた場合に、印刷ずれを目立たせないようにできる。
【0061】
前述した実施の形態では、4色以上のプロセス色のインキから2色以上のプロセス色のインキを選択し、該2色以上のプロセス色のインキを調色することによって共通色のインキを用意する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、少なくとも一色以上の標準色のインキを調色することによって共通色のインキを用意してもよいし、特色のインキとプロセス色のインキとを調色することによって共通色のインキを用意してもよいし、複数の特色のインキを調色することによって共通色のインキを用意してもよいし、特練インキによって共通色のインキを用意してもよい。
【0062】
本変形例に係る色分解処理方法によれば、プロセス色から2色以上のプロセス色を選択し、その2色以上のプロセス色のインキを調色することによって第1の茶色のインキを用意し、該第1の茶色と1色以上のプロセス色とを掛け合わせることによって1または複数の第2の茶色を再現する。印刷を発注する者によって色見本が示された場合には、複数の第2の茶色から該色見本に該当する第2の茶色を選択し、該第2の茶色を再現するための共通色と、プロセス色及び該プロセス色の色分解値を求め、該共通色と、該プロセス色及び該プロセス色の色分解値に基づいて印刷を行う。
【0063】
仮に2以上のプロセス色のインキを調色することによって第2の茶色のインキを再現した場合には、該第2の茶色のインキ以外の色を再現するのには流用できない余剰残インキが発生するおそれがある。しかし、共通色のインキは、第2の茶色のインキ以外の色を再現するのにも流用できるため、第2の茶色のインキ以外の色を再現するのには流用できない余剰残インキを低減できる。
さらに、特に、クラビア印刷で再現される色のうち、茶色は、使用される頻度が高い色であるが、2色以上のプロセス色を掛け合わせることによって再現しようとすると、他の色と比較して印刷ずれなどが目立ってしまう。第2の茶色を再現するための共通色と、プロセス色とを掛け合わせることによって、第2の茶色を再現する際に生じる印刷ずれを目立たせないようにできる。
【0064】
上述した実施の形態に係る色分解処理方法では、プロセス色から2色以上のプロセス色を選択し、その2色以上のプロセス色のインキを調色することによって第1の茶色のインキを用意し、該第1の茶色と1色以上のプロセス色とを掛け合わせることによって1または複数の第2の茶色を再現する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、標準色のインキから2色以上の標準色のインキを選択し、その2色以上の標準色のインキを調色することによって第1の茶色のインキを用意し、該第1の茶色と1色以上の標準色とを掛け合わせることによって1または複数の第2の茶色を再現するようにしてもよい。この場合、印刷を発注する者によって色見本が示された場合には、複数の第2の茶色から該色見本に該当する第2の茶色を選択し、該第2の茶色を再現するための共通色と、標準色及び該標準色の色分解値を求め、該共通色と、該標準色及び該標準色の色分解値に基づいて印刷を行う。
【0065】
上述した実施の形態及び変形例において、指定色テーブルは表の一例である。
【0066】
本発明は特定の実施例、変形例を参照しながら説明されてきたが、各実施例、変形例は単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例などを理解するであろう。説明の便宜上、本発明の実施例に従った装置は機能的なブロック図を用いて説明したが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアでまたはそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が包含される。