(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の蓋体及び燻煙装置について説明する。
<蓋体>
本発明の蓋体は、有底筒状の容器本体の開口部に装着される燻煙装置の蓋体であって、複数の通煙孔を有する天板部を有し、前記天板部は、少なくとも一部の前記通煙孔の周縁に、前記通煙孔を囲んで立上る立上り部を有し、容器本体に装着したときに、前記立上り部が底部側に突出することを特徴とする。
【0011】
図1は蓋体18Aの平面図である。蓋体18Aは複数の通煙孔2Aを有する天板部1Aを有する。
図2は蓋体18Aの断面図である。天板部1Aは平板状である。天板部1Aは少なくとも一部の通煙孔2Aの周縁に、一方の面側に突出した立上り部4Aを有する。天板部1Aは、全ての通煙孔2Aの周縁に立上り部4Aを有するものであってもよい。
立上り部4Aの形状は、通煙孔2Aを周回する円筒状であってもよく、該円筒状の先端が割れた形状であってもよい。また、通煙孔2Aを周回し先端に向かって窄まるテーパ状であってもよく、通煙孔2Aを周回し先端に向かって広がる逆テーパ状であってもよい。なかでも円筒状、又はテーパ状であることが好ましい。
【0012】
立上り部4Aの高さh(蓋体の一方の面から立上り部の先端までの長さ)は、0.1〜1.5mmが好ましく、0.3〜1.2mmがより好ましく、0.6〜0.9mmがさらに好ましい。
立上り部4Aの高さhを上記範囲内とすることで、微粉化した燻煙剤組成物が燻煙装置の外側に漏れるのを防ぎやすくなる。また、蓋体18Aの取扱いも容易となる。
【0013】
通煙孔2Aは平面視で円形、楕円形、多角形(三角形、四角形、六角形等)のいずれの形状でもよい。さらには多角形の隅を曲形にしたものでもよい。製造しやすさの点から円形が好ましい。
通煙孔2Aは、燻煙の均一化、微粉漏れ防止の観点から、蓋体に均等に設けることが好ましく、通煙孔端から隣接する通煙孔端までの距離が1.5〜4.5mmとすることが好ましく、2〜3.5mmとすることがより好ましい。
【0014】
通煙孔の開口径rは、直径0.3〜2mmが好ましく、0.6〜1.5mmがより好ましく、1.1〜1.3mmがさらに好ましい。通煙孔の開口径rを上記範囲内とすることで、微粉化した燻煙剤組成物をより漏れにくくすることができる。また、通煙孔の開口径rとは、通煙孔が平面視で楕円形の場合は、長径と短径の平均値を開口径とする。また、通煙孔が平面視で多角形の場合は、内接する円又は楕円の直径(楕円の場合は長径と短径の平均値)を開口径とする。なお、通煙孔の開口径rは、立上り部の先端において測定する。
【0015】
立上り部の高さ/通煙孔の開口径で表される比は、0.1〜1.5が好ましく、0.3〜0.9がより好ましく、0.4〜0.8がさらに好ましい。
立上り部の高さ/通煙孔の開口径で表される比が上記範囲内であると、微粉化した燻煙剤組成物をより漏れにくくすることができる。
【0016】
燻煙剤組成物の平均粒子径は1mm〜4mmが好ましく、1.5〜3.3mmがより好ましい。燻煙剤の平均粒子径が前記範囲内であれば、薬剤が効率良く煙化されて飛散しやすく、微粉漏れを抑制し易い。燻煙剤組成物の平均粒子径/通煙孔の開口径で表される比は、0.5〜10が好ましく、1.0〜5がより好ましい。燻煙剤組成物の平均粒子径/通煙孔の開口径が上記範囲内であると、微粉漏れの抑制と正常な燻煙を両立しやすくなる。
なお、平均粒子径は以下の方法で測定することができる。
目開きが5600μm、4000μm、3350μm、2800μm、2360μm、2000μm、1400μm、1180μm、1000μm及び100μmの10段の篩を上からこの順に設け、最下段に受け皿を設けた篩い振盪機により分級操作を行う。次いで、各々の篩と受け皿から回収した顆粒の質量を測定する。受け皿に回収した顆粒に対して、目開きが小さい篩上に残存した顆粒から順に質量頻度を加えて積算し、積算の質量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きを「aμm」とし、またaμmよりも目開きが一段大きい篩の目開きを「bμm」とする。また、受け皿から目開きaμmの篩までの質量頻度の積算値を「c%」、目開きaμmの篩上の顆粒の質量頻度を「d%」とする。これらa〜dの値を用いて下式により算出したD
M50(質量50%径)を平均粒子径とする。
【0018】
通煙孔の開口率(天板部1Aの面積に対する通煙孔の開口径rから求められる面積)は、1〜11面積%が好ましく、1.8〜6.2面積%がより好ましく、3.3〜4.7面積%がさらに好ましい。
開口率が上記範囲内であると、燻煙がスムーズに行われ、かつ微粉漏れも抑制しやすくなる。また開口率が大きくなるほど蓋体の強度が弱まり、加工の手間も要するが、上記範囲とすることで製造しやすく、強度も十分な蓋体にすることができる。
【0019】
図2に示すように、天板部1Aはその周縁部に、一方の面側に向かって突出した突出部5Aを有していてもよく、突出部5Aの高さが、立上り部4Aの高さよりも高いことが好ましい。このような突出部5Aを有することにより、蓋体の製造や保管の際に、蓋体同士の接触や保管容器との接触により、立上り部分の変形や、立上り部分により蓋体や容器に傷がつくのを防ぐことができる。
突出部5Aの高さ(天板部の一方の面から突出部の先端までの長さ)は、蓋材の周辺端から中央に向かって1.0〜2.0mmであることが好ましい。突出部5Aの高さが上記範囲内であると、立上り部の変形や、立上り部が蓋体や容器を傷つけるのを防ぐことができる。
【0020】
図2に示すように、天板部1Aはその周縁部に、立上り部4Aとは反対の方向(他方の面側)に突出した壁部6Aを有していてもよい。壁部6Aを有することにより容器本体に蓋体18Aを設置しやすくなる。
【0021】
図3に示すように、蓋体18A’は、天板部1Aの外側に突出したフランジ部3Aを有していてもよい。フランジ部3Aを有することにより、容器本体に蓋体18A’を固定しやすくなる。
【0022】
蓋体18Aは、金属製であることが好ましく、加工が容易であることからブリキ製であることが好ましい。
【0023】
<蓋体の製造方法>
立上り部4Aは、例えば、昭和53年日刊工業新聞社 宮川松男著「図解 プレス加工辞典」などに記載のバーリング加工(穴の周りに立上り加工すること)等により形成することができる。
図4は蓋体の製造方法を示す模式図である。例えばブリキ材をパンチングダイに載せる(
図4(a))。続いて、バーリングパンチを用いて通煙孔2Aと立上り部4Aを形成する(
図4(b))。
通煙孔を作成した後、ブリキ材を絞る工程を経て、天板部の周縁部に設けた突出部5Aや壁部6A等を形成してもよい(
図4(c))。
続いて、ブリキ材から蓋体を切り離して蓋体18Aを得る(
図4(d))。
通煙孔の開口径や立上り部の高さは、バーリングパンチの径や押し込み度合いを変えることで、調整することができる。このバーリング加工は抜きカス(スラグ)が発生せず、潤滑油も必要とせず、型の耐久性がよいため、生産性も良好である。
【0024】
<間接加熱型燻煙装置>
本発明の間接加熱型燻煙装置は、有底筒状の容器本体、及び本発明の蓋体を備える筐体と、前記筐体内に発熱剤が収容されてなる加熱部と、前記筐体内に設けられ前記加熱部の上方に位置する燻煙剤容器とを備え、前記燻煙剤容器に燻煙剤が充填されてなることを特徴とする。
図5は、間接加熱型燻煙装置の断面図である。
燻煙装置10Aは、筐体12Aと、筐体12Aの内部に設けられた加熱部20Aと、筐体12Aの内部に設けられた燻煙剤部32Aとで概略構成されている。筐体12Aは略円筒状の本体14Aと、底部16A(以下、本体14Aと底部16Aを合わせて容器本体という)、本体14Aの上端開口部に設けられた蓋体18Aとで構成されている。筐体12A内には、燻煙剤容器30Aが設けられ、燻煙剤容器30Aには燻煙剤が充填され燻煙剤部32Aが形成されている。
図5に示すように、立上り部4Aは底部16A方向に突出している。このような立上り部4Aを有することで微粉化した燻煙剤組成物が燻煙装置の外側に漏れるのを防ぐことができる。なお、「微粉化」した燻煙剤組成物とは、粒径0.5mm以下の粒子のことを意味する。
【0025】
燻煙剤容器30Aは、燻煙剤部32Aを充填する容器として機能し、加熱部20Aで生じた熱エネルギーを燻煙剤部32Aに伝える伝熱部として機能するものである。燻煙剤容器30Aは、例えば金属製の容器等が挙げられる。
【0026】
加熱部20Aは、特に限定されず、燻煙剤部32Aの煙化に必要な熱量を考慮して決定することができ、例えば、水と接触して発熱する物質(例えば、酸化カルシウム等)を充填しておいてもよいし、鉄粉と酸化剤とを仕切り材で仕切って充填しておいてもよいし、金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを仕切り材で仕切って充填しておいてもよい。中でも、水と接触して発熱する物質を充填しておくことが好ましく、酸化カルシウムを充填しておくことが好ましい。
【0027】
図5において、本体14Aは、円筒状であるが、角筒状であってもよい。
【0028】
底部16Aは、加熱部20Aの機構に応じて決定することができ、例えば、加熱部20Aが水と接触して発熱する物質(酸化カルシウム等)により構成されている場合、底部16Aには不織布や金属製のメッシュ等を用いることができる。底部16Aを不織布やメッシュとすることで、底部16Aから水を加熱部20A内に浸入させ加熱することができる。
【0029】
本発明の間接加熱型燻煙装置の製造方法は、加熱部20Aに酸化カルシウム等の発熱剤を収容し、燻煙剤容器30Aに燻煙剤を充填し、蓋体18Aを燻煙剤容器30Aの上方に設置する方法である。このように製造された燻煙装置が市場に流通する際に振動等により燻煙剤の一部が微粉化する。蓋体18Aに立上り部4Aを設けることにより、微粉化した燻煙剤を燻煙装置10Aから漏れないようにすることができる。
【0030】
<直接加熱型燻煙装置>
本発明の直接加熱型燻煙装置は、燻煙剤が充填された有底筒状の容器本体と、本発明の蓋体と、前記燻煙剤に着火する点火具とを備えることを特徴とする。
図6は、直接加熱型燻煙装置の断面図である。
直接加熱型燻煙装置8Bは、燻煙剤50Bが充填された有底円筒状の容器本体10Bと、通煙孔25Bが形成された蓋体24Bと、点火具30Bとを備え、容器本体10Bと蓋体24Bとで区画された燻煙室11Bが形成されたものである。
【0031】
本発明の直接加熱型燻煙装置8Bは、容器本体10B、及び蓋体24Bを備えるものであり、蓋体24Bの略中央には、蓋体24Bに形成された露出孔を貫通して点火具30Bが設けられている。蓋体24Bには、燻煙剤50Bから揮散した薬剤を通流する複数の通煙孔25Bが形成されている。点火具30Bは、略円柱状の点火剤36Bと、点火剤36Bの上端に設けられた着火部32Bと、点火剤36Bを蓋体24Bに固定する固定部34Bとで構成され、点火剤36Bの下端が燻煙剤50Bに挿入され配置されている。
【0032】
図7は、直接加熱型燻煙装置に用いる蓋体24Bの平面図である。中央に点火具30Bを貫通させる露出孔を有する以外は、蓋体18Aと同様の構成とすることができる。
【0033】
容器本体10Bは、略円筒状の本体と底部とからなる。
図6において、本体は円筒状であるが、角筒状であってもよい。
容器本体10Bは、金属製であってもよく、紙製であってもよい。
蓋体24Bは、金属製であることが好ましく、加工が容易であることからブリキ製であることが好ましい。
【0034】
容器本体10Bの厚みは、容器本体10Bに求める強度や断熱性等を勘案して決定でき、例えば、1〜5mmとされる。
【0035】
<燻煙方法>
本発明の蓋体を用いた燻煙方法は、公知の方法を採用できる。
間接加熱型燻煙装置10Aを用いた燻煙方法では、まず間接加熱型燻煙装置10Aを対象空間内に設置する。次いで、加熱部20Aの機構に応じて加熱部20Aを発熱させる。例えば、酸化カルシウムを充填した加熱部20Aが設けられている場合、底部16Aを水に浸漬する。加熱部20Aが発熱すると、燻煙剤容器30Aを介して燻煙剤部32Aが加熱される。加熱された燻煙剤部32Aの燻煙剤組成物は、有機発泡剤の分解によってガスが生じ、該ガスと共に薬剤が煙化し、蓋体18Aの通煙孔2Aを通過して噴出する。これにより、対象空間内に薬剤が拡散して、薬剤の効果が得られる。
【0036】
燻煙剤を間接的に加熱することで、直接的に加熱するよりも、燻煙時の薬剤や発泡剤に由来する臭気の低減や、燻煙剤の燃えカス等による屋内汚染を低減しやすい。
対象空間としては、特に限定されず、例えば、浴室、居室、押入れ、トイレ等が挙げられる。
【0037】
燻煙剤を間接的に加熱する方法としては、燻煙剤を燃焼させることなく、発泡剤が熱分解し得る温度まで燻煙剤に熱エネルギーを供給できるものであればよく、間接加熱方式の燻煙方法に通常用いられる公知の加熱方法を採用できる。
具体的には、例えば、水と接触して発熱する物質と水とを接触させ、その反応熱を利用して燻煙剤を加熱する方法(i)、鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等。)との混合による酸化反応、又は金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物もしくは酸化剤との混合による酸化反応により発生する熱を利用して燻煙剤を加熱する方法(ii)等が挙げられる。なかでも、実用性の点から、方法(i)が好ましい。
【0038】
水と接触し発熱する物質としては、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。なかでも、水と接触して発熱する物質としては、実用性の点から、酸化カルシウムが好ましい。
【0039】
次に、直接加熱型燻煙装置8Bを用いた燻煙方法について、発熱性基剤として、加熱により熱分解して熱及びガスを発生するもの(例えば、アゾジカルボンアミド、ニトロセルロース等)を用いた場合について説明する。
まず、直接加熱型燻煙装置8Bを使用する場所に静置し、着火部32Bをマッチ側薬で擦り着火する。
着火部32Bが着火すると、点火剤36Bの内部が加熱され、これに伴い点火剤36Bと燻煙剤50Bとの接触部分から燻煙剤50Bに熱が伝播する。そして、任意の熱量が燻煙剤50Bに伝播すると、燻煙剤50Bは燃焼する。その後、燻煙剤50Bは、燃焼が継続され、燻煙剤50B全体に燃焼熱が伝達される。燃焼熱は、速やかに燻煙剤50B全体に伝達される。
燻煙剤50Bは、任意の温度に達すると、薬剤が気化すると共に、発熱性基剤が分解しガスを発生する。そして、気化した薬剤はガスと共に通煙孔から流出し、空気中に拡散する。
【0040】
<燻煙剤組成物>
本発明品に用いる燻煙剤組成物は特に限定されず、輸送時の衝撃によって微粉化した燻煙剤組成物顆粒が生じる燻煙剤組成物に適用する事が出来、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤として調製したものを用いることが出来る。
固形製剤は、目的とする抗菌、殺菌、殺虫等や剤形に応じて、公知の製造方法を用いて調製することができる。例えば、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒物の製造方法により製造できる。
押出し造粒法による製造方法の具体例としては、燻煙剤組成物の各成分を、ニーダー等により混合し、さらに適量の水を加えて混合し、得られた混合物を一定面積の開孔を有するダイスを用い、前押し出しあるいは横押し出し造粒機を用い造粒する。該造粒物は、さらにカッター等を用いて一定の大きさに切断し乾燥してもよい。
例えば特開2014−101348に記載されている燻煙剤組成物を用いることが出来る。
【0041】
以上、説明した通り、本発明の燻煙装置の蓋体は、通煙孔の周縁を囲んで立ち上がる立上り部を有することにより、単純な構造で微粉漏れを防ぐことができ、かつ蓋体を取り付けた状態で燻煙することができる。
本発明の蓋体は、特に居室や浴室用の害虫制御用(殺虫剤等)や、微生物制御用(防カビ、抗カビ等)の燻煙装置の蓋体として好適である。なかでも、浴室用防カビ燻煙装置の蓋材であることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0043】
<使用原料>
(燻煙剤組成物A−1)
・銀担持ゼオライト系無機抗菌剤(商品名:ゼオミックAJ10N、体積平均粒子径2.5μm、真比重2g/cm
3(20℃)、嵩比重0.4g/cm
3(20℃)、銀含量2.5質量%、株式会社シナネンゼオミック製)。
・アゾジカルボンアミド(ADCA)(商品名:ダイブローAC.2040(C)、大日精化工業株式会社製)。
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(商品名:Pluronic RPE1740、長瀬産業株式会社製)。
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(商品名:メトローズ60SH−50、信越化学工業株式会社製)。
・酸化亜鉛(日本薬局方 酸化亜鉛、平均粒径0.6μm、真比重5.6g/cm
3(20℃)、堺化学工業株式会社製)。
・クレー(商品名:NK−300、昭和KDE株式会社製)。
・酸化カルシウム(吉澤石灰工業株式会社製、商品名:CAg、ロータリーキルン炉焼成品(葛生産)、嵩比重0.80g/cm
3(20℃)、残留炭酸ガス0.9%、粒径3〜5mm)。
・香料:表1に記載の香料組成物。
【0044】
【表1】
【0045】
(燻煙剤組成物A−2)
・メトキサジアゾン(商品名:エレミック、住友化学株式会社製)
・d、d−T−シフェノトリン(商品名:ゴキラート−S、住友化学株式会社製)
・プロピレングリコール(試薬1級、純正化学社製)
・ジプロピレングリコール(試薬1級、純正化学社製)
・アスコルビン酸(商品名:L−アスコルビン酸、食品添加物、純正化学社製)
・カオリナイト(商品名:AXカオリン、カナヤ興産社製)
・ヒプロメロース(商品名:メトローズ60SH−50、信越化学工業株式会社製)
【0046】
<燻煙剤組成物の製造方法>
室温(20℃)条件下において、各成分をニーダー(S5−2G型、株式会社モリヤマ製)で攪拌混合した後、組成全量を100部として10部の水を加えて混合し混合物を得た。得られた混合物を直径3mmの開口を有するダイスの前押し出し造粒機(EXK−1、株式会社不二パウダル製)を用い造粒し造粒物を得た。得られた造粒物をフラッシュミル(FL300、株式会社不二パウダル製)により長さ2〜5mmに切断し、70℃に設定した乾燥機(RT−120HL、アルプ株式会社製)により2時間乾燥させ、篩いを用いて粒子径1.18mm以上、5.6mm未満(目開き5.6mmの篩を通過、1.18mmの篩い上に残留)に分級した顆粒状の燻煙剤組成物を得た。
燻煙剤組成物A−1では、銀担持ゼオライト系無機抗菌剤:3質量%、アゾジカルボンアミド:70質量%、酸化亜鉛:1質量%、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー:8質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:4質量%、香料:0.2質量%、さらに賦形剤としてクレーを全体が100質量%になる量を含むものとなるように各成分の添加量を調整した。平均粒子径は2.6mmであった。
燻煙剤組成物A−2では、メトキサジアゾン:20質量%、d、d−T−シフェノトリン:5質量%、プロピレングリコール:5質量%、ジプロピレングリコール:10質量%、アスコルビン酸:32質量%、カオリナイト:27質量%、ヒプロメロース:1質量%を含むものとなるように各成分の添加量を調整した。平均粒子径は2.3mmであった。
得られた燻煙剤組成物5gを用いて、各種評価試験を行った。
【0047】
<微粉漏れ防止効果の評価>
各燻煙剤組成物をライオン株式会社製、商品名「ルックおふろの防カビくん煙剤」の燻煙装置の発熱剤充填部に酸化カルシウム(吉澤石灰工業株式会社製 CAg)40g充填し、燻煙剤組成物収納部に燻煙剤組成物5gを充填し、表2〜3の実施例比較例に記載の蓋を圧着挿入し、燻煙剤収納部と一体化した。この燻煙装置をアルミ積層フィルム製の袋に封入し、「ルックおふろの防カビくん煙剤」付属の給水用プラスチック容器に収め、個装箱(L×W×D=83.0×83.0×90mm紙製)に入れた後、ダンボール(L×W×D=450.0×276.0×237.0mm、厚さ5mm)に個装箱30箱を充填した。
これを振動試験(JIS Z 0232)に規定する振動試験機にて試験した。
・振動数:7.5Hz
・ピーク加速度:±7.35m/s
2(±0.75G)
・振動方向:垂直
・加振時間:正立40分
振動試験後、燻煙装置30個を取り出し、アルミ積層フィルム製の袋の上部をはさみで切り取り、燻煙装置の蓋の上面(外側の面)及びアルミ積層フィルム製の袋の内部を目視で評価した。
【0048】
(評価基準)
◎◎:燻煙装置の蓋の上面及びアルミ積層フィルム製の袋の内部に微粉化した燻煙剤組成物顆粒が見られるのが30個中0個。
◎:燻煙装置の蓋の上面及びアルミ積層フィルム製の袋の内部に微粉化した燻煙剤組成物顆粒が見られるのが30個中1〜2個。
○:燻煙装置の蓋の上面及びアルミ積層フィルム製の袋の内部に微粉化した燻煙剤組成物顆粒が見られるのが30個中3〜5個。
△:燻煙装置の蓋の上面及びアルミ積層フィルム製の袋の内部に微粉化した燻煙剤組成物顆粒が見られるのが30個中6〜15個。
×:燻煙装置の蓋の上面及びアルミ積層フィルム製の袋の内部に微粉化した燻煙剤組成物顆粒が見られるのが30個中16個以上。
【0049】
<燻煙評価>
微粉漏れ防止効果評価にて製造した各実施例比較例の燻煙剤組成物、蓋を用いた燻煙装置を用いて、23mLの水を入れた給水用プラスチック容器内に燻煙装置を入れ、燻煙させた。発煙が正常(燻煙開始から1分以内に発煙、破裂、異常音などは生じない)に行われているか確認した。
(評価基準)
◎:正常に燻煙が行われた。
○:問題なく燻煙が行われたが、燻煙時に僅かに異常音が発生した(燻煙剤収納部の圧上昇の為、薬剤が揮散時に異常音発生)。
△:燻煙は行われたが、異常音が発生し燻煙が不均一になっていた。
×:燻煙できなかった(破裂、燻煙装置内に煙が滞留)。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
以上の結果から、本発明を適用した実施例1〜15は、微粉漏れを防ぎ、かつ蓋体を取り付けた状態でも問題なく燻煙することができた。
一方、立上り部を有さない蓋を使用した比較例1〜2は、微粉漏れ、及び燻煙評価のいずれかが「×」であった。
以上のことから、本発明を適用することにより、単純な構造で、燻煙剤組成物の微粉漏れを防ぐとともに、蓋体を取り付けた状態で燻煙可能な燻煙装置の蓋体を提供できることが判った。