(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857995
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】カバーの固定構造、およびモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20210405BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20210405BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20210405BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K7/116
F16H57/031
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-206873(P2016-206873)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-68078(P2018-68078A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】古林 一美
(72)【発明者】
【氏名】樋口 崇
【審査官】
三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−241988(JP,A)
【文献】
特開2007−288900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
F16H 57/031
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に対するカバーの固定構造であって、
前記支持部材は、前記カバーを第1方向の一方側で支持する板部からなる第1支持部と、前記カバーを前記第1方向に対して直交する第2方向の一方側で支持する板部からなる第2支持部と、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部に連結されているとともに前記第1支持部に対して前記第1方向の他方側に向けて屈曲し、
前記カバーは、前記第1方向の他方側および前記第1方向及び前記第2方向に対して直交する第3方向の両側から囲む第1側板部と、前記支持部材の前記第1支持部と当接する第2側板部と、前記第1側板部と前記第2側板部とに接続されるとともに前記第2方向の他方側に設けられた端板部と、を備え、
前記第2側板部および前記第1支持部のうちの一方は、前記第2側板部を前記第1支持部に押し付けたときに、前記第1方向の他方側および前記第2方向の一方側の双方に対して傾いた斜め方向に前記第1側板部を付勢する付勢力を発生させる付勢力発生部を備え、
前記第2支持部は、前記第1側板部に前記第2方向の一方側から当接する第1当接部と、前記第1側板部に前記第1方向の他方側から当接する第2当接部と、を備え、
前記第2側板部を前記第1支持部に押し付けたときに、前記付勢力発生部は、前記第1側板部を、前記第2支持部の前記第1当接部に対して前記第2方向に弾性をもって当接させるとともに、前記第2支持部の前記第2当接部に前記第1方向の他方側から弾性をもって当接させることにより、前記カバーは、前記支持部材の前記第1支持部と前記第2支持部に弾性をもって固定されることを特徴とするカバーの固定構造。
【請求項2】
前記付勢力発生部は、前記カバーを前記第1支持部に押し付けたときに前記第1方向および前記第2方向の双方に対して傾いた斜面を前記カバーと前記第1支持部との接触面にして撓んで前記付勢力を発生する可撓性板部であることを特徴とする請求項1に記載のカバーの固定構造。
【請求項3】
前記可撓性板部は、自由端を前記第2方向の他方側に向けて前記第2方向に延在するように前記第2側板部に形成されており、
前記可撓性板部には、前記斜面が前記第1方向の一方側および前記第2方向の他方側の双方に対して傾いた斜め方向に向くように形成されており、
前記可撓性板部は、前記カバーを前記第1支持部に押し付けたときに前記第1方向の他方側に撓んで前記付勢力を発生させることを特徴とする請求項2に記載のカバーの固定構造。
【請求項4】
前記斜面は、前記可撓性板部から前記第1方向の一方側に向けて突出した凸部に形成されており、
前記第1支持部には、前記第1方向の他方側に向けて開口して前記カバーを前記第1支持部に押し付けたときに前記凸部が嵌る開口部が設けられているとともに、前記開口部の前記第1方向の他方側の開口縁が前記斜面に当接することを特徴とする請求項3に記載のカバーの固定構造。
【請求項5】
前記第2当接部は、前記カバーに形成された凸部が嵌るように前記第2支持部に形成された穴の内周面、および前記カバーに形成された穴に嵌るように前記第2支持部に形成された凸部の外周面からなることを特徴とする請求項1から4までの何れか一項に記載のカバーの固定構造。
【請求項6】
前記第1側板部には、前記第2方向の一方側に向けて突出して前記第2支持部と弾性をもって係合するフックを有していることを特徴とする請求項1から5までの何れか一項に記載のカバーの固定構造。
【請求項7】
前記第1支持部および前記カバーのうちの一方に形成された凸部と、他方に形成されて凸部が嵌る凹部とによって、前記カバーの前記第1方向および前記第2方向の双方に対して直交する第3方向の位置決めを行う係合部が構成されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載のカバーの固定構造。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のカバーの固定構造を有するモータであって、
前記第2方向に沿ってモータ軸線が延在するモータ本体と、
前記モータ本体の前記第2方向の他方側の端部に固定された第1板部、前記第1板部に前記第2方向の他方側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを前記第1方向の一方側で連結する第3板部を備えたフレームと、
前記第1板部と前記第2板部との間に配置された回転軸と、
前記モータ本体のモータ軸の回転を前記回転軸の歯車部に伝達する歯車伝達機構と、
前記第1板部と前記第2板部との間で前記歯車伝達機構を覆うように前記フレームに固定された歯車カバーと、
を有し、
前記フレームが前記支持部材であり、
前記歯車カバーが前記カバーであり、
前記第3板部が前記第1支持部であり、
前記第1板部が前記第2支持部であることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーの固定構造、および歯車伝達機構が歯車カバーで覆われたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ本体のモータ軸の回転を、歯車伝達機構を介して回転軸に伝達するモータ(ギアードモータ)では、モータ本体の出力側の端部にフレームを設け、フレームの第1板部と第2板部との間に回転軸を回転可能に配置した構造が採用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータでは、歯車伝達機構に異物が付着する等の問題点があるため、歯車伝達機構を歯車カバーで覆うことが好ましい。その場合、フレームにおいて第1板部と第2板部とを連結する第3板部と第1板部とを利用して歯車カバーをフック等の係合機構により固定することになるが、係合機構におけるクリアランスが大きいと、回転軸が回転した際にガタついて異音が発生する。かといって、係合機構のクリアランスを小さくすると、大きな力でフック等の係合機構を変形させる必要がある等、カバーを固定する際の作業性が低下してしまう。かかる問題は、フレームに対して歯車カバーを固定する場合に限らず、支持部材にカバーを固定する際に同様に発生する問題である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、支持部材に対してカバーをガタつきを抑制しつつ容易に固定することができるカバーの固定構造、およびモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するため、本発明は、支持部材に対するカバーの固定構造であって、前記支持部材は、前記カバーを第1方向の一方側で支持する
板部からなる第1支持部と、前記カバーを前記第1方向に対して直交する第2方向の一方側で支持する
板部からなる第2支持部と、を有し、
前記第2支持部は、前記第1支持部に連結されているとともに前記第
1支持部に対して前記第1方向の他方側に向けて屈曲し、
前記カバーは、前記第1方向の他方側および前記第1方向及び前記第2方向に対して直交する第3方向の両側から囲む第1側板部と、前記支持部材の前記第1支持部と当接する第2側板部と、前記第1側板部と前記第2側板部とに接続されるとともに前記第2方向の他方側に設けられた端板部と、を備え、前記第2側板部および前記第1支持部のうちの一方は、
前記第2側板部を前記第1支持部に押し付けたときに、前記第1方向の他方側および前記第2方向の一方側の双方に対して傾いた斜め方向に
前記第1側板部を付勢する付勢力を発生させる付勢力発生部を備え、前記第2支持部は、
前記第1側板部に前記第2方向の一方側から当接する第1当接部と、
前記第1側板部に前記第1方向の他方側から当接する第2当接部と、を備え、
前記第2側板部を前記第1支持部に押し付けたときに、前記付勢力発生部は、前記第1側板部を、前記第2支持部の前記第1当接部に対して前記第2方向に弾性をもって当接させるとともに、前記第2支持部の前記第2当接部に前記第1方向の他方側から弾性をもって当接させることにより、前記カバーは、前記支持部材の前記第1支持部と前記第2支持部に弾性をもって固定されることを特徴とする。
【0007】
本発明において、支持部材は、カバーを第1方向の一方側で支持する第1支持部と、カバーを第2方向の一方側で支持する第2支持部とを有しており、支持部材の第1支持部に向けてカバーを押し付けると、付勢力発生部は、第1方向の他方側および第2方向の一方側の双方に対して傾いた斜め方向にカバーを付勢する。その結果、カバーは、第2支持部に弾性をもって第2支持部に当接するとともに、第2支持部に設けた第2当接部がカバーに第1方向の他方側から弾性を当接する。従って、支持部材の第1支持部に向けてカバーを押し付けるという簡単な操作でカバーを第1支持部および第2支持部に固定することができる。また、カバーは、第1支持部および第2支持部に弾性をもって固定されるため、ガタつきが発生しにくい。
【0008】
本発明において、前記付勢力発生部は、前記カバーを前記第1支持部に押し付けたときに前記第1方向および前記第2方向の双方に対して傾いた斜面を前記カバーと前記第1支持部との接触面にして撓んで前記付勢力を発生する可撓性板部である態様を採用することができる。かかる態様であれば、可撓性板部によって所定方向の付勢力を発生させる付勢力発生部を構成することができる。
【0009】
本発明において、前記可撓性板部は、自由端を前記第2方向の他方側に向けて前記第2方向に延在するように
前記第2側板部に形成されており、前記可撓性板部には、前記斜面が前記第1方向の一方側および前記第2方向の他方側の双方に対して傾いた斜め方向に向くように形成されており、前記可撓性板部は、前記カバーを前記第1支持部に押し付けたときに前記第1方向の他方側に撓んで前記付勢力を発生させる態様を採用することができる。かかる態様によれば、カバー自身に設けた可撓性板部によって付勢力発生部を構成することができるので、付勢力発生部を構成するために他の部材を付加する必要がない。
【0010】
本発明において、前記斜面は、前記可撓性板部から前記第1方向の一方側に向けて突出した凸部に形成されており、前記第1支持部には、前記第1方向の他方側に向けて開口して前記カバーを前記第1支持部に押し付けたときに前記凸部が嵌る開口部が設けられているとともに、前記開口部の前記第1方向の他方側の開口縁が前記斜面に当接する態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1支持部とカバーとの間に大きな隙間が発生することを回避することができる。
【0011】
本発明において、前記第2当接部は、前記カバーに形成された凸部が嵌るように前記第2支持部に形成された穴の内周面、および前記カバーに形成された穴に嵌るように前記第2支持部に形成された凸部の外周面からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、簡素な構成で第2当接部を構成することができる。
【0012】
本発明において、
前記第1側板部には、前記第2方向の
一方側に向けて突出して前記第2支持部と弾性をもって係合するフックを有している態様を採用することができる。かかる構成によれば、カバーに大きな力が加わってもカバーが第2方向の他方側に外れることを抑制することができる、また、カバーは、前記の付勢力発生部、第1当接部および第2当接部によって固定されているので、フックと第2支持部との間のクリアランスが大きくても、ガタつきが発生しにくい。それ故、フックの係合に大きな力を必要としないので、組立作業を効率よく行うことができる。
【0013】
本発明において、前記第1支持部および前記カバーのうちの一方に形成された凸部と、他方に形成されて凸部が嵌る凹部とによって、前記カバーの前記第1方向および前記第2方向の双方に対して直交する第3方向の位置決めを行う係合部が構成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、カバーを第3方向で確実に位置決めすることができる。
【0014】
本発明に係るカバーの固定構造は、例えば、モータに適用することができる。この場合、モータは、前記第2方向に沿ってモータ軸線が延在するモータ本体と、前記モータ本体の前記第2方向の他方側の端部に固定された第1板部、前記第1板部に前記第2方向の他方側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを前記第1方向の一方側で連結する第3板部を備えたフレームと、前記第1板部と前記第2板部との間に配置された回転軸と、前記モータ本体のモータ軸の回転を前記回転軸の歯車部に伝達する歯車伝達機構と、前記第1板部と前記第2板部との間で前記歯車伝達機構を覆うように前記フレームに固定された歯車カバーと、を有し、前記フレームが前記支持部材であり、前記歯車カバーが前記カバーであり、前記第3板部が前記第1支持部であり、前記第1板部が前記第
2支持部である。かかる態様によれば、フレームと歯車カバーとの間にガタつきが発生しにくいので、モータの回転によって振動が発生した場合でも、異音の発生等を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明において、支持部材は、カバーを第1方向の一方側で支持する第1支持部と、カバーを第2方向の一方側で支持する第2支持部とを有しており、支持部材の第1支持部に向けてカバーを押し付けると、付勢力発生部は、第1方向の他方側および第2方向の一方側の双方に対して傾いた斜め方向にカバーを付勢する。その結果、カバーは、第2支持部に弾性をもって第2支持部に当接するとともに、第2支持部に設けた第2当接部がカバーに第1方向の他方側から弾性を当接する。従って、支持部材の第1支持部に向けてカバーを押し付けるという簡単な操作でカバーを第1支持部および第2支持部に固定することができる。また、カバーは、第1支持部および第2支持部に弾性をもって固定されるため、ガタつきが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したモータを回転軸の側からみたときの説明図である。
【
図2】
図1に示す状態から歯車カバーを外した状態の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示すモータにおいてフレームに歯車カバーを固定した様子をフレームの第1板部の側からみた様子を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す状態から歯車カバーを外した状態の分解斜視図である。
【
図5】
図3に示す状態で歯車カバーの可撓性板部を通る位置で歯車カバー等を切断した様子を示すXZ断面図である。
【
図6】
図5に示す状態から歯車カバーを外した状態の断面図である。
【
図7】
図3に示す状態で歯車カバーの凸部を通る位置で歯車カバー等を切断した様子を示すYZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明を適用したカバーの固定構造を説明する。以下の説明では、支持部材へのカバーの固定構造として、モータ1のフレーム3(支持部材)に対して歯車カバー7(カバー)を固定する場合を中心に説明する。
【0018】
なお、以下に説明するモータ1では、モータ本体10のモータ軸50の回転中心軸線、および回転軸8の回転中心軸線は平行であり、いずれをもモータ軸線とみなすことができる。以下の説明では、回転軸8の回転中心軸線をモータ軸線Lとして説明する。また、以下の説明では、モータ軸線Lが延在している方向(モータ軸線L方向)のうち、モータ軸50がモータ本体10から突出している一方側を出力側L1とし、モータ軸50がモータ本体10から突出している側とは反対側(他方側)を反出力側L2として説明する。
【0019】
また、モータ軸線Lに直交する方向のうち、フレーム3において、第3板部33に直交する方向を第1方向Xとし、モータ軸線Lが延在している方向を第2方向Zとし、第1方向Xおよび第2方向Zに対して直交する方向を第3方向Yとする。また、第1方向Xのうち、フレーム3において第3板部33が位置する側を一方側X1とし、第3板部33から第1板部31および第2板部32が突出している側を他方側X2とする。また、第2方向Zのうち、反出力側L2を一方側Z1とし、出力側L1を他方側Z2とする。また、第3方向Yの一方側にY1を付し、他方側にY2を付して説明する。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したモータ1を回転軸8の側からみたときの説明図である。
図2は、
図1に示す状態から歯車カバー7を外した状態の分解斜視図である。
【0021】
図1および
図2に示すように、モータ1は、モータ本体10と、モータ本体10のモータ軸線L方向の一方側(出力側L1)の端部11に固定されたフレーム3とを有している。フレーム3は、モータ本体10の出力側L1の端部11に溶接等の方法で固定された第1板部31と、第1板部31に出力側L1で対向する第2板部32と、第1方向Xの一方側X1で第1板部31と第2板部32とを連結する第3板部33とを備えている。従って、第1板部31および第2板部32は、第3板部33から第1方向Xの他方側X2に向けて屈曲した構造になっている。モータ本体10の側面には給電部2が設けられている。第1板部31には穴30が形成されており、モータ本体10のモータ軸50は、穴30を介して第1板部31より出力側L1に突出している。モータ軸50において、第1板部31より出力側L1に突出している部分にはモータピニオン55が固定されている。
【0022】
第1板部31と第2板部32との間には、歯車伝達機構9が設けられており、モータピニオン55の回転(モータ軸50の回転)は、歯車伝達機構9を介して回転軸8に伝達される。第1板部31と第2板部32との間に、歯車伝達機構9を出力側L1で覆う歯車カバー7が配置されており、歯車カバー7はフレーム3に固定されている。
【0023】
第1板部31と第2板部32との間には固定軸35が設けられており、固定軸35は、回転軸8をモータ軸線L回りに回転可能に支持している。固定軸35において、反出力側L2の軸端部(図示省略)は、第1板部31に形成された固定軸支持穴310(
図3および
図4参照)に保持されている。固定軸35の出力側L1の軸端部352は、第2板部32に形成された貫通穴37に嵌った状態で第2板部32に固定されている。かかる固定には、溶接、カシメ、接着等の方法を採用することができる。
【0024】
(回転軸8および歯車伝達機構9の構成)
回転軸8は、固定軸35が貫通する軸穴81が形成された軸状部材であり、外周部分には、反出力側L2から出力側L1に向かって歯車部85および螺旋溝83が順に形成されている。本形態において、回転軸8は、螺旋溝83によって送りねじやウォームとして構成されている。回転軸8は、樹脂製であり、歯車部85および螺旋溝83が一体に形成されている。
【0025】
回転軸8において歯車部85は、モータピニオン55と噛み合って歯車伝達機構9を構成している。ここで、歯車部85の外径は、モータピニオン55の外径より大である。従って、モータ軸50の回転は、歯車伝達機構9(モータピニオン55および歯車部85)を介して回転軸8に減速して伝達される。
【0026】
(歯車カバー7の構成)
図3は、
図1に示すモータ1においてフレーム3に歯車カバー7を固定した様子をフレーム3の第1板部31の側からみた様子を示す斜視図である。
図4は、
図3に示す状態から歯車カバー7を外した状態の分解斜視図である。
【0027】
図1、
図2、
図3、および
図4に示すように、歯車カバー7は、歯車伝達機構9を出力側L1で覆う端板部71と、歯車伝達機構9の周りを第1方向Xの他方側X2および第3方向Yの両側から囲む第1側板部72とを有している。端板部71には、回転軸8において螺旋溝83が設けられている部分を第1板部31の側(出力側L1)に突出させる貫通穴710が形成されている。
【0028】
歯車カバー7は、さらに、歯車伝達機構9を第1方向Xの一方側X1から覆う第2側板部73と、第1側板部72の第2方向Zの一方側Z1の端部のうち、第3板部33とは反対に位置する部分から第3方向Yの両側に突出した2つのフランジ部74とを有している
。フレーム3の第3板部33は、歯車カバー7の第2側板部73に当接して歯車カバー7を第1方向Xの一方側X1で支持している。フレーム3の第1板部31の第2方向Zの他方側Z2の面318は、歯車カバー7のフランジ部74を含む第1側板部72の第2方向Zの一方側Z1の端部に当接して歯車カバー7を第2方向Zの一方側Z1で支持している。
【0029】
(歯車カバー7およびフレーム3の詳細構成)
図5は、
図3に示す状態で歯車カバー7の可撓性板部735を通る位置で歯車カバー7等を切断した様子を示すXZ断面図である。
図6は、
図5に示す状態から歯車カバー7を外した状態の断面図である。
図7は、
図3に示す状態で歯車カバー7の凸部741を通る位置で歯車カバー7等を切断した様子を示すYZ断面図である。
【0030】
図3、
図4、
図5、
図6および
図7に示すように、フレーム3の第3板部33の第3方向Yの略中央部分には、Z方向で離間する2か所に第1方向Xの他方側X2に突出した凸部331が形成されている。これに対して、歯車カバー7の第2側板部73の第3方向Yの略中央部分には、2つの凸部331と重なる位置で第2方向Zに延在する溝状の凹部731が形成されており、凹部731に2つの凸部331が嵌っている。
【0031】
歯車カバー7の第2側板部73において、凹部731に対して第3方向Yの両側には、第2方向Zの一方側Z1の端部を残して溝732によって3方が切り欠かれた可撓性板部735が形成されており、可撓性板部735は、第2方向Zの他方側Z2が自由端になっている。このため、可撓性板部735は、第2方向Zの他方側Z2が第1方向Xに弾性変形可能である。
【0032】
可撓性板部735の第1方向Xの一方側X1の面において、第2方向Zの他方側Z2の端部付近には、第1方向Xの一方側X1に突出した凸部736が形成されている。凸部736の第2方向Zの他方側Z2の端部は、第1方向Xの一方側X1および第2方向Zの他方側Z2の双方に対して傾いた斜面737になっている。なお、凸部736の第2方向Zの一方側Z1の端部も斜面738になっている。これに対して、フレーム3の第3板部33において2つの凸部736の各々と重なる位置には四角形の開口部336が形成されており、2つの開口部336の各々に凸部736が嵌っている。2つの開口部336は、第1方向Xの他方側X2の開口縁は、全体が第1方向Xの他方側X2および第2方向Zの一方側Z1の双方に対して傾いた斜面337になっている。
【0033】
歯車カバー7の2つのフランジ部74の各々には、第2方向Zの一方側Z1に突出した丸棒状の凸部741が形成されている。これに対して、フレーム3の第1板部31には、2つの凸部741の各々と重なる位置に円形の穴311が形成されており、2つの穴311の各々に凸部741が嵌っている。
【0034】
歯車カバー7の第1側板部72において第3方向Yで対向する部分の各々の外面からは、第2方向Zの一方側Z1に斜めに突出した後、さらに第2方向Zの一方側Z1に延在するフック721が形成されている。かかる2つのフック721の第2方向Zの一方側Z1の端部には、第1板部31の第2方向Zの一方側Z1の面319に重なる爪722が形成されており、爪722は第1板部31と係合している。
【0035】
(モータ1の製造方法)
再び
図1および
図2において、本形態のモータ1を製造する際には、モータ本体10にフレーム3を固定した後、モータ軸50にモータピニオン55を取り付ける。次に、フレーム3の第1板部31と第2板部32との間に向けて、第1方向Xの他方側X2から回転軸8を差し込む。本形態では、歯車カバー7の貫通穴710に回転軸8を通し、第1板部
31と第2板部32との間に向けて、第1方向Xの他方側X2から回転軸8および歯車カバー7を一緒に差し込んで歯車カバー7をフレーム3に固定する。
【0036】
次に、第2板部32の貫通穴37から回転軸8の軸穴81に固定軸35を差し込んだ後、固定軸35を固定する。その結果、回転軸8が固定軸35に回転可能に支持される。その際、回転軸8の歯車部85とモータピニオン55とを噛み合わせる。
【0037】
(フレーム3への歯車カバー7の固定構造)
本形態では、歯車カバー7をフレーム3に固定する。このため、歯車カバー7を本発明における「カバー」としたとき、フレーム3は、本発明における「支持部材」に相当する。本形態では、歯車カバー7をフレーム3に固定する際、歯車カバー7を第3板部33に押し付けるとともに、歯車カバー7を第1板部31に押し付ける。その結果、
図1、
図3、
図5、
図7に示すように、歯車カバー7の可撓性板部735の凸部736が第3板部33の開口部336の内側に嵌り、第3板部33の凸部331が歯車カバー7の凹部731に嵌り、歯車カバー7の凸部741が穴311に嵌り、歯車カバー7のフック721が第1板部31と係合する。
【0038】
その際、以下に説明するように、フレーム3の第3板部33が本発明における「第1支持部」として作用し、第1板部31が本発明における「第2支持部」として作用する。また、歯車カバー7の可撓性板部735および第3板部33の開口部336が、第1方向Xの他方側X2および第2方向Zの一方側Z1の双方に対して傾いた斜め方向に歯車カバー7を付勢する付勢力を発生させる本発明における「付勢力発生部」として機能する。また、第1板部31の第2方向Zの他方側Z2を向く面318が歯車カバー7に第2方向Zの一方側Z1から当接する本発明における「第1当接部」として機能し、第1板部31に形成された穴311の内周面312のうち、第1方向Xの他方側X2に位置する部分は、歯車カバー7に第1方向Xの他方側X2から当接する本発明における「第2当接部」として機能する。
【0039】
より具体的には、
図1、
図3、
図5、
図7に示す状態で、歯車カバー7の可撓性板部735に形成されている凸部736の斜面737は、歯車カバー7と第3板部33との接触面となって、第3板部33の開口部336の開口縁の斜面337に押圧され、可撓性板部735が第1方向Xの他方側X2に撓む。このため、可撓性板部735が撓んだ際の反力によって、
図5に矢印Fで示すように、歯車カバー7は、第3板部33から第1方向Xの他方側X2および第2方向Zの一方側Z1の双方に対して傾いた斜め方向の付勢力を受ける。その結果、第1板部31の第2方向Zの他方側Z2の面318は、第1当接部として、歯車カバー7に第2方向Zの一方側Z1から弾性をもって当接し、第1板部31に形成された穴311の内周面312のうち、第1方向Xの他方側X2に位置する部分は、第2当接部として、歯車カバー7の凸部741に第1方向Xの他方側X2から弾性をもって当接する。
【0040】
この状態で、歯車カバー7はフレーム3に固定されているため、歯車カバー7のフック721が第1板部31と係合するが、フック721は、歯車カバー7に大きな力が加わった際に第2方向Zの他方側Z2に外れることを防止する機能を担い、フレーム3に対して歯車カバー7を固定するのに直接は関与しない。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のモータ1において、フレーム3(支持部材)に対して歯車カバー7(カバー)を固定するにあたって、フレーム3は、歯車カバー7を第1方向Xの一方側X1で支持する第3板部33(第1支持部)と、歯車カバー7を第2方向Zの一方側Z1で支持する第1板部31(第2支持部)とを有している。また、歯車カバー7は
、歯車カバー7を第3板部33に押し付けたときに、第1方向Xの他方側X2および第2方向Zの一方側Z1の双方に対して傾いた斜め方向に歯車カバー7を付勢する付勢力を発生させる可撓性板部735(付勢力発生部)を備えている。これに対して、第1板部31は、歯車カバー7に第2方向Zの一方側Z1から弾性をもって当接する面318(第1当接部)と、歯車カバー7の凸部741に第1方向Xの他方側X2から弾性をもって当接する内周面312(第2当接部)を備えた穴311とを備えている。従って、フレーム3の第3板部33に向けて歯車カバー7を押し付けるという簡単な操作で歯車カバー7を第3板部33および第1板部31に固定することができる。また、歯車カバー7は、第3板部33および第1板部31に弾性をもって固定されるため、ガタつきが発生しにくい。
【0042】
また、可撓性板部735には、斜面737が第1方向Xの一方側X1および第2方向Zの他方側X2の双方に対して傾いた斜め方向に向くように形成されている。このため、歯車カバー7自身に設けた可撓性板部735によって付勢力発生部を構成することができるので、付勢力発生部を構成するために他の部材を付加する必要がない。
【0043】
また、斜面737は、可撓性板部735から第1方向Xの一方側X1に向けて突出した
凸部736に形成されており、第3板部33において第1方向Xの他方側X2に向けて開口した開口部336の開口縁(斜面
337)に当接する。このため、歯車カバー7を第3板部33に押し付けたときに、第1方向Xの他方側X2および第2方向Zの一方側Z1の双方に対して傾いた斜め方向に歯車カバー7を付勢する付勢力を確実に発生させることができるとともに、第3板部33と歯車カバー7との間に大きな隙間が発生することを回避することができる。
【0044】
また、第2当接部は、歯車カバー7に形成された凸部741が嵌るように第1板部31に形成された穴311の内周面312であるため、簡素な構成で第2当接部を構成することができる。
【0045】
また、歯車カバー7には第1板部31と弾性をもって係合するフック721が形成されているため、歯車カバー7に大きな力が加わっても歯車カバー7が第2方向Zの他方側Z2に外れることを抑制することができる、また、歯車カバー7は、可撓性板部735、第1板部31(第1当接部)、および穴311によって固定されているので、フック721と第1板部31との間のクリアランスC(
図7参照)が大きくても、ガタつきが発生しにくい。それ故、フック721の係合に大きな力を必要としないので、組立作業を効率よく行うことができる。
【0046】
また、第3板部33に形成された凸部331と、歯車カバー7に形成された凹部731とによって歯車カバー7の第3方向Yの位置決めを行う係合部が構成されているため、歯車カバー7を第3方向Yで確実に位置決めすることができる。しかも、第3板部33に形成された2つの凸部331が歯車カバー7に形成された溝状の凹部731に嵌っているため、歯車カバー7の傾きを抑制することができる。
【0047】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、可撓性板部735(付勢力発生部)が歯車カバー7の側に形成されていたが、フレーム3の第3板部33の側に可撓性板部735が形成されていてもよい。上記実施の形態では、貫通穴からなる穴311の内周面によって第2当接部が構成されていたが、穴311が有底の凹部になっている態様を採用してもよい。上記実施の形態では、凸部741が歯車カバー7の側に形成されていたが、凸部741がフレーム3の第1板部31の側に形成され、歯車カバー7の側に貫通穴あるいは有底の穴311が形成されていてもよい。この場合、凸部741の外周面によって第2当接部が構成される。上記実施の形態では、凸部331がフレーム3の
第3板部33の側に形成されていたが、凸部331が歯車カバー7の側に形成され、凹部731がフレーム3の
第3板部33の側に形成されていてもよい。
【0048】
上記実施の形態では、フレーム3に対して歯車カバー7を固定する構造を中心に説明したが、他の支持部材にカバーを固定する場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…モータ、3…フレーム(支持部材)、7…歯車カバー(カバー)、8…回転軸、9…歯車伝達機構、10…モータ本体、311…穴、31…第1板部(
第2支持部)、32…第2板部、33…第3板部(第1支持部)、35…固定軸、50…モータ軸、55…モータピニオン、71…端板部、72…第1側板部、73…第2側板部、74…フランジ部、311…穴、312…内周面(第2当接部)、318…面(第1当接部)、331、736、741…凸部、336…開口部、337、737…斜面、721…フック、722…爪、731…凹部、735…可撓性板部(付勢力発生部)、C…クリアランス、L…モータ軸線、L1…出力側、L2…反出力側、X…第1方向、Y…第3方向、Z…第2方向、X1…第1方向の一方側、X2…第1方向の他方側、Z1…第2方向の一方側、Z2……第2方向の他方側