特許第6857996号(P6857996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857996
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】表面処理剤、皮膜及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20210405BHJP
   C09D 201/06 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210405BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C09D201/02
   C09D201/06
   C09D7/63
   C23C26/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-208397(P2016-208397)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-70677(P2018-70677A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100131576
【弁理士】
【氏名又は名称】小金澤 有希
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐補
(72)【発明者】
【氏名】川邉 哲司
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−149715(JP,A)
【文献】 特開2002−285140(JP,A)
【文献】 特開平06−300482(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/147782(WO,A1)
【文献】 特開2015−131389(JP,A)
【文献】 特開2015−101609(JP,A)
【文献】 特開2011−89112(JP,A)
【文献】 特開2009−103959(JP,A)
【文献】 特開2003−239099(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165494(WO,A1)
【文献】 特開2010−283198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
C23C 4/00− 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、水性媒体分散型微粒子(A)と、水性媒体溶解型樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有し、前記水性媒体分散型微粒子(A)が、アクリル系樹脂、フェニレンスルフィド系樹脂、及びアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む水性媒体分散型微粒子であり、前記水性媒体溶解型樹脂(B)が、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミド基、及びホスホリルコリン基から選択される1種以上の官能基を有する単量体から構成される重合体若しくは共重合体若しくはそれらの塩、又は、前記重合体、前記共重合体及び前記塩の少なくとも1種以上を含む混合物であり、前記架橋剤(C)が、アルデヒド基を少なくとも1つ有し、
前記架橋剤(C)の固形分質量(M)と、前記水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)及び前記水性媒体溶解型樹脂(B)の固形分質量(M)との比{M/(M+M)}が0.05以上5.67以下であることを特徴とする金属表面処理剤。
【請求項2】
前記水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)と、前記水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)及び前記水性媒体溶解型樹脂(B)の固形分質量(M)の合計との比{M/(M+M)}が0.05以上0.89以下である請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に接触させて、乾燥することにより得られる皮膜。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に接触させる工程と、前記表面処理剤を接触させた前記金属材料の表面を乾燥する工程と、を含む金属材料の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤、該表面処理剤によって形成される皮膜及び金属材料の表面処理方法に関する。詳しくは、自動車ボディー、自動車部品、家庭用製品等の成形加工品;鋳造品;シート;コイル等の金属材料の表面に皮膜を形成させるための表面処理剤及び表面処理方法、並びに、該表面処理剤によって形成される皮膜に関する。
【背景技術】
【0002】
シート、コイル、成形品等の各種金属材料には、様々な性能を付与するために、表面処理が施される。例として、塗料との密着性を向上させたり、腐食を防止するために耐食性を向上させたり、加工時の傷や摩擦から表面を保護したりするために表面処理が施される。金属材料のうち、アルミニウム材やその合金材料は、一般的に軽量で加工性に優れているため、家電や自動車等に使用されることが多い。その他、熱伝導率が大きいという性質を有するため、各種熱交換器の部品、例えば、放熱フィン等に使用されている。放熱フィン等の部品には、耐食性、親水性及びその持続性が要求され、それらの性能を付与するための表面処理が施されている。
【0003】
耐食性、親水性及びその持続性を付与するための表面処理方法としては、従来、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを主成分とする表面処理剤を用いた表面処理方法が開発されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−302042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、熱交換器におけるフィンの表面に、大気中に浮遊している微粒子や、揮発性有機化合物が衝突し、付着することで、熱交換効率が低下することが明らかになっている。この微粒子には、表面が親水性の砂塵や、表面が疎水性の煤煙等が存在し、揮発性有機化合物にはトルエン、ベンゼンといった一般的な有機溶剤を始め、健康被害を引き起こすホルムアルデヒドや、香料成分など、世界保健機関で定義される多数の物質が存在する。また、調理加熱で発生する油脂の蒸気もフィンの表面に付着し、熱交換効率の低下に寄与する。それゆえ、近年においては、耐食性、親水性及びその持続性を有するだけでなく、親水性及び疎水性の微粒子、揮発性有機化合物の付着を抑制することができる表面処理皮膜の開発が望まれている。
【0006】
本発明の一の目的は、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)、そして、油脂蒸気や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)を有する皮膜を形成することができる表面処理剤、該表面処理剤により得られる皮膜、及び該表面処理剤を用いた表面処理方法等を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、表面処理剤により得られる皮膜が、耐食性、親水性及びその持続性を有していることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、
(1)水性媒体と、水性媒体分散型微粒子(A)と、水性媒体溶解型樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有し、前記水性媒体分散型微粒子(A)が、アクリル系樹脂、フェニレンスルフィド系樹脂、及びアミド系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む水性媒体分散型微粒子であり、前記水性媒体溶解型樹脂(B)が、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミド基、及びホスホリルコリン基から選択される1種以上の官能基を有する単量体から構成される重合体若しくは共重合体若しくはそれらの塩、又は、前記重合体、前記共重合体及び前記塩の少なくとも1種以上を含む混合物であり、前記架橋剤(C)が、アルデヒド基を少なくとも1つ有することを特徴とする金属表面処理剤;
(2)前記水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)と、前記水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)及び前記水性媒体溶解型樹脂(B)の固形分質量(M)の合計との比{M/(M+M)}が0.03以上0.95以下である上記(1)に記載の表面処理剤;
(3)前記架橋剤(C)の固形分質量(M)と、前記水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)及び前記水性媒体溶解型樹脂(B)の固形分質量(M)との比{M/(M+M)}が0.02以上5.99以下である上記(1)又は(2)に記載の表面処理剤;
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に接触させて、乾燥することにより得られる皮膜;
(5)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に接触させる工程と、前記表面処理剤を接触させた前記金属材料の表面を乾燥する工程と、を含む金属材料の表面処理方法;
等である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)、そして、油脂蒸気や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)を有する皮膜を形成することができ、前記皮膜が、耐食性、耐水密着性、初期親水性及び親水持続性を有している表面処理剤、該表面処理剤により得られる皮膜、及び該表面処理剤を用いた表面処理方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表面処理剤は、水性媒体と、水性媒体分散型微粒子(A)と、水性媒体溶解型樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含む。この表面処理剤を用いることにより、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)、そして、油脂蒸気や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)を有する皮膜を形成することができ、前記皮膜が、耐食性、耐水密着性、初期親水性及び親水持続性を有する皮膜を形成することができる。特に、表面処理剤に含まれる水性媒体分散型微粒子(A)と水性媒体溶解型樹脂(B)の配合比率を最適化したり、水性媒体分散型微粒子(A)の種類を最適化したり、水性媒体分散型微粒子(A)及び水性媒体溶解型樹脂(B)と架橋剤(C)との配合比率を最適化したりすることで、皮膜の各種性能を向上させることが出来る。したがって、本発明の表面処理剤及び皮膜は、例えば、冷房、暖房等の空調機等における熱交換器の部品、より具体的には、アルミニウムフィン材等に有用である。
【0011】
[表面処理剤]
本発明に係る表面処理剤は、水性媒体と、水性媒体分散型微粒子(A)と、水性媒体溶解型樹脂(B)と、架橋剤(C)とを含有する。尚、水性媒体溶解型樹脂(B)に関する「水性媒体溶解型」とは、25℃の水100gに対して0.1g以上樹脂が溶解することを意味する。
【0012】
(水性媒体)
本発明における水性媒体とは、全液体媒体の質量を基準とした際、水を50質量%以上含有するものを意味する。水性媒体に含まれる水以外の液体媒体としては、例えば、ヘキサン、ペンタン等のアルカン系媒体;ベンゼン、トルエン等の芳香族系媒体;エタノール、1−ブタノール、エチルセロソルブ等のアルコール系媒体;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系媒体;酢酸エチル、酢酸ブトキシエチル等のエステル系媒体;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系媒体;ジメチルスルホキシド等のスルホン系媒体;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のリン酸アミド系媒体;等を挙げることができる。これらの水以外の液体媒体は、1種を混合してもよいが、2種以上を組み合わせて混合してもよい。なお、環境上及び経済上の観点から、水のみを用いることが好ましい。
【0013】
(水性媒体分散型微粒子(A))
水性媒体分散型微粒子(A)は、非水溶性の粒子であって、形状は特に制限されるものではない。上記微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂(カルボキシル基含有;ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、アクリル酸系樹脂、ポリアクリル酸エステル等を含む)、フェニレンスルフィド系樹脂(フェニレンスルフィド基含有)、及びアミド系樹脂(アミド基含有)等を挙げることが出来る。微粒子の非水溶性という性質は、微粒子自体が非水溶性であるという性質の他、水溶性の、アクリル系樹脂又はアミド系樹脂が架橋されて非水溶性になるという性質を意味する。ここで、「非水溶性」とは、水に添加した後、目視レベルにて、溶解しておらず、懸濁及び/又は分散した状態となる性質をいう。
【0014】
水性媒体分散型微粒子(A)の平均粒径は、3nm以上4μm以下が好ましく、5nm以上3μm以下がより好ましく、10nm以上1μm以下がさらに好ましい。水性媒体分散型微粒子(A)の平均粒径は5μmを超えると、皮膜から脱離しやすくなる。また、前記表面処理剤における水性媒体分散型微粒子(A)の沈降抑制や再分散性の観点から、水性媒体分散型微粒子(A)のD90は、5μm以下であることが、好ましい。なお、水性媒体分散型微粒子(A)の平均粒径及びD90の測定方法については特に制限はなく、レーザー回折式粒度分布測定装置等を用いた公知の方法により測定することができる。
【0015】
水性媒体分散型微粒子(A)の具体例としては、特に限定するものではないが、東洋紡績株式会社製の、「タフチックF−120」、「タフチックF−167」、「タフチックF−200」、「タフチックHU700E」、「タフチックHU707E」、「タフチックHU720SF」、「タフチックHU720P」、「タフチックHU820E」等;株式会社トーア紡コーポレーション製の、「POMP605」、「POMP610」、「POMP900」、「POMP605−SI01−4」等;積水化学工業株式会社製の、「ADVANCELL HB−2051」、「ADVANCELL HB−4051」、「ADVANCELL N−001」、「ADVANCELL K−001」等;積水化成品工業株式会社製の、「MB−4」、「MB−8」、「MB−4C」、「MB−8C」、「MBP−8」、「ACP−8C」、「ACX−806C」、「AFX−8」等;東レ株式会社製の、「ナイロン6 TR−1」、「ナイロン6 TR−1」、「ナイロン12 SP−500」、「ナイロン12 SP−10」、「トレパール PPS」、「トレパール PAI」等;等を挙げることができる。なお、これらの粒子においては、市販の湿式微粉砕機・分散機(ビーズミル)を使用して湿式粉砕する等して平均粒径を上記範囲内に調整することができる。水性媒体分散型微粒子(A)を使用することで、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0016】
(水性媒体溶解型樹脂(B))
水性媒体溶解型樹脂(B)は、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミド基、及びホスホリルコリン基から選択される1種以上の官能基を有する単量体から構成される重合体若しくは共重合体若しくはそれらの塩、又は、前記重合体、前記共重合体及び前記塩の少なくとも1種以上を含む混合物である。なお、重合体又は共重合体の塩とは、重合体又は共重合体に存在するカルボキシ基及び/又はスルホン酸基における水素原子の全部又は一部が、アルカリ金属又はアンモニウム(アンモニウムイオン)に置換されているものをいう。ここで、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。また、上記共重合体には、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等が含まれる。水性媒体溶解型樹脂(B)は、親水持続性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0017】
水性媒体溶解型樹脂(B)としての重合体は、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミド基、及びホスホリルコリン基を有する単量体の重合物;カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、アミド基、及びホスホリルコリン基からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有する単量体の重合物を挙げることができる。2種以上の官能基を有する単量体としては、例えば、カルボキシ基とスルホン酸基とを有する単量体;カルボキシ基とスルホン酸基とヒドロキシ基とを有する単量体;ヒドロキシ基とアミド基とを有する単量体;ヒドロキシ基とカルボキシ基とを有する単量体;ヒドロキシ基とスルホン酸基を有する単量体;ヒドロキシ基とホスホリルコリン基を有する単量体;ヒドロキシ基とカルボキシ基とアミド基とを有する単量体;カルボキシ基とスルホン酸基とアミド基とを有する単量体等を挙げることができる。
【0018】
水性媒体溶解型樹脂(B)としての共重合体は、2又は3以上の異なる単量体の共重合物であって、少なくとも1つの単量体が、上記単量体のいずれかであれば特に制限されるものではない。共重合体を構成する単量体の組合せとしては、例えば、カルボキシ基を有する単量体の2種以上の組合せ;カルボキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、スルホン酸基を有する単量体の1種又は2種以上との組合せ;カルボキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、スルホン酸基を有する単量体の1種又は2種以上と、ヒドロキシ基を有する単量体の1種又は2種以上との組合せ;カルボキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、スルホン酸基を有する単量体の1種又は2種以上と、アミド基を有する単量体の1種又は2種以上との組合せ;ヒドロキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、アミド基を有する単量体の1種又は2種以上の組合せ;ヒドロキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、スルホン酸基を有する単量体の1種又は2種以上との組合せ;ヒドロキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、スルホン酸基を有する単量体の1種又は2種以上と、カルボキシ基を有する単量体の1種又は2種以上との組合せ;ヒドロキシ基を有する単量体の1種又は2種以上と、スルホン酸基を有する単量体の1種又は2種以上と、アミド基を有する単量体を有する単量体の1種又は2種以上との組合せ等を挙げることができる。
【0019】
水性媒体溶解型樹脂(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のカルボキシ基含有単量体から構成される重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;該カルボキシ基含有単量体と、該カルボキシ基含有単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;カルボキシメチルセルロース又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;アクリル酸と、メタクリル酸と、スルホエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体との共重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;該スルホン酸基含有単量体から構成される重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;ポリビニルアルコール又はその誘導体又はそれらのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;ポリアクリルアミド又はその誘導体、ポリアクリルアミド又はその誘導体(ヒドロキシ基含有)、アミド基含有単量体とヒドロキシ基含有単量体との共重合体、アミド基及びヒドロキシ基含有ポリマー;ホスホリルコリン基含有ポリマー;等を挙げることができる。上記カルボキシ基含有単量体と、該カルボキシ基含有単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体としては、例えば、該カルボキシ基含有単量体と、該スルホン酸基含有単量体との共重合体;アクリル酸とメタクリル酸との共重合体等の、該カルボキシ基含有単量体のうち2種の単量体から構成される共重合体;等を挙げることができる。
【0020】
水溶性媒体溶解型樹脂(B)の具体例は以下の通りである。(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のカルボキシ基含有単量体から構成される重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩の具体例としては、日本純薬株式会社製の「ジュリマーAC−10NH」、「ジュリマーAC−10S」;アクリル酸と、メタクリル酸と、スルホエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体と、の共重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩の具体例としては、東亜合成株式会社製の「アロンA−12SL」;ポリビニルアルコール又はその誘導体又はそれらのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩の具体例としては、クラレ株式会社製の「クラレポバールPVA105」;ポリアクリルアミド又はその誘導体(ヒドロキシ基含有)の具体例としては、ハリマ化成グループ株式会社製の「ハリコート1057」;ホスホリルコリン基含有ポリマーの具体例としては、日油株式会社製の、「LIPIDURE(リピジュア)−MF」、「LIPIDURE−CF72」、「LIPIDURE−AF」、「LIPIDURE−NS」、「LIPIDURE−CM5206」、「LIPIDURE−BL103」、「LIPIDURE−BL203」、「LIPIDURE−BL206」、「LIPIDURE−BL405」、「LIPIDURE−BL802」、「LIPIDURE−BL1002」;等を挙げることが出来る。
【0021】
(架橋剤(C))
架橋剤(C)は、表面処理剤により形成される皮膜と金属材料表面との間に高い耐水密着性を付与できるという特徴があり、アルデヒド基を少なくとも1つ有するモノマーであれば特に限定されず、2つ以上有するモノマー(たとえば、ジアルデヒド)であってもよく、公知のものを用いることが出来る。アルデヒド基を1つ有するモノマーは、アルデヒド基以外に架橋反応に供することが出来る官能基、例えば、カルボキシ基、及びヒドロキシ基から選択される1種以上の官能基を有することが望ましい。アルデヒド基は、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、ホスホリルコリン基等の官能基と架橋反応をすることができる。架橋剤(C)の具体例としては、例えば、グリオキサール、マロンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、トリホルミルメタン等の脂肪族アルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フタルジアルデヒド、テレフタルアルデヒド、1,3,5−ベンゼントリカルボアルデヒド等の芳香族アルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤(C)は、耐水密着性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0022】
なお、水性媒体溶解型樹脂(B)及び架橋剤(C)は、公知の方法によって製造することができる。
【0023】
(成分比率)
表面処理剤に含まれる水性媒体分散型微粒子(A)含有量は、表面処理剤の固形分総量に対して、5.0質量%以上85.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以上55.0質量%以下であることがより好ましい。水性媒体分散型微粒子(A)の含有量がこの範囲にあると、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0024】
また、水性媒体溶解型樹脂(B)の含有量は、表面処理剤の固形分総質量に対して、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以上83.0質量%以下であることがより好ましい。水性媒体溶解型樹脂(B)の含有量がこの範囲内にあると、親水持続性や、初期親水性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0025】
また、架橋剤(C)の含有量は、表面処理剤の固形分総質量に対して、5.0質量%以上85.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上58.0質量%以下であることがより好ましい。架橋剤(C)の含有量がこの範囲内にあると、耐水密着性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0026】
なお、表面処理剤に含まれる、水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)と、水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)及び水性媒体溶解型樹脂(B)の固形分質量(M)の合計との比{M/(M+M)}は、0.03以上0.95以下であることが好ましく、0.05以上0.89以下であることがより好ましく、0.09以上0.47以下であることが更に好ましい。M/(M+M)がこの範囲内にあると、初期密着性を一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0027】
なお、表面処理剤に含まれる、架橋剤(C)の固形分質量(M)と、水性媒体分散型微粒子(A)の固形分質量(M)及び水性媒体溶解型樹脂(B)の固形分質量(M)の合計との比{M/(M+M)}は、0.02以上5.99以下であることが好ましく、0.05以上5.67以下であることがより好ましく、0.1以上1.4以下であることが更に好ましい。M/(M+M)がこの範囲内であると、耐水密着性、親水持続性及び耐食性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0028】
(他の成分)
本発明の表面処理剤は、水性媒体分散型微粒子(A)と水性媒体溶解型樹脂(B)と架橋剤(C)とを有するものであれば特に制限されるものではなく、その他、塗装性、作業性、塗膜物性等を改善するために、各種の水性媒体や塗料添加剤等の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、界面活性剤、表面調整剤、湿潤分散剤、沈降防止剤、酸化防止剤、消泡剤、防錆剤、抗菌剤、防カビ剤等を挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を配合してもよい。
【0029】
[表面処理剤の製造]
本発明の表面処理剤は、水性媒体分散型微粒子(A)と水性媒体溶解型樹脂(B)と架橋剤(C)と、必要に応じて各種添加剤を水性媒体に添加して混合することにより製造することができる。その他、水性媒体分散型微粒子(A)と水性媒体溶解型樹脂(B)を水性媒体に添加し、常温でもしくは加温しながら混合した後、架橋剤(C)、又は架橋剤(C)の水性媒体分散体を添加して混合し、必要に応じて各種添加剤を添加してさらに混合することにより製造することもできる。
【0030】
[金属材料の表面処理方法及び皮膜の製造方法]
本発明に係る金属材料の表面処理方法(例えば、皮膜付金属材料の製造方法)は、上記表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に接触させる接触工程と、前記表面処理剤を接触させた金属材料の表面を乾燥する乾燥工程とを含み、これらの工程により皮膜を製造することができる。
【0031】
(接触工程)
表面処理剤の接触方法は、処理される金属材料の形状等によって適宜最適な方法が選択される。接触方法としては、例えば、ロールコート法、浸漬法、スプレーコート法等が挙げられる。より具体的には、例えば、金属材料がシート状であれば、ロールコート法やスプレーコート法を適用することが好ましい。また、金属材料が成形品であれば、浸漬法を適用することが好ましい。
【0032】
上記接触工程における、表面処理剤の接触条件は特に限定されない。例えば、表面処理剤を接触する際の該表面処理剤及び金属材料の温度は、5℃以上50℃以下であることが好ましく、20℃以上40℃以下であることがより好ましいが、これらの温度に制限されるものではない。なお、接触時間は適宜設定することができるが、通常、2秒以上180秒以内である。
【0033】
(乾燥工程)
乾燥方法は特に限定されず、例えば、熱風、インダクションヒーター、赤外線、近赤外線等を用いた方法を挙げることができる。また、乾燥時間は、表面処理剤の組成によって適宜最適な条件を選択することができるが、生産性と皮膜形成性の観点から、1秒以上、1800秒以下の範囲内が好ましく、10秒以上、1200秒以下の範囲内がより好ましい。
【0034】
乾燥温度は、金属材料の最高到達温度(PMT)として60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、150℃以上(170℃)であることが特に好ましい。乾燥温度の上限は、生産性との兼ね合いで200℃、250℃又は300℃であるのが一般的である。乾燥温度が60℃以上であると、表面処理剤の主溶媒である水分が充分に揮発して、皮膜が金属材料表面上に固定されるため、耐食性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0035】
(前処理工程)
本発明に係る表面処理方法は、接触工程前に、必要に応じて、金属材料の表面の油分や汚れを除去する目的で前処理を施してもよい。金属材料には、防錆目的で防錆油が塗られている場合や、作業中に加工油等の油分や汚れが付着する場合がある。したがって、前処理を施すことにより、金属材料の表面を清浄にし、表面処理剤を金属材料上に均一に接触させることができるようになる。なお、金属材料の表面に油分や汚れ等が無く、表面処理剤を均一に接触させることができる場合は、特に前処理を行う必要はない。前処理方法は特に限定されず、湯洗、溶剤洗浄、アルカリ脱脂洗浄、酸洗等の方法が挙げられる。
【0036】
(耐食皮膜形成処理工程)
また、耐食性を向上させる目的で、接触工程の前に、金属材料上に耐食性を有する皮膜を形成する処理を施してもよい。その処理方法としては特に限定されないが、クロム酸クロメート、りん酸クロメート、りん酸ジルコニウム等の化成処理剤を用いた化成処理や、クロム含有或いは非含有の表面処理剤を用いて耐食性を有する皮膜を形成する処理等が挙げられる。
【0037】
(金属材料)
使用される金属材料の形状や構造等には特に限定されず、例えば、板状、箔状等を挙げることが出来る。使用される金属材料は、アルミニウム材(A1050P等)、マグネシウム材(MP1B等)、銅材(C1020等)、鉄材、チタン材及びそれぞれの合金材(例えば、各種SUS材:SUS304等)等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム材及びアルミニウム合金材が好適である。さらに、該金属材料とは異なる金属材料、セラミックス材料、有機材料等の基材上に、例えば、めっき、蒸着、クラッド等の手法によって、上記の、アルミニウム材、銅材、鉄材、チタン材及びそれぞれの合金材等を被覆したものであってもよい。尚、上記では、基材として金属材料上に皮膜を形成させることを一例に挙げて説明したが、本発明の基材はこれに限定されるものではなく、例えば、ガラス材料等といった、非金属基材上に皮膜を形成させてもよい。
【0038】
[皮膜]
上記表面処理剤を用いて製造された皮膜の乾燥質量(皮膜量)は、0.1〜3.0g/mの範囲内であることが好ましく、0.2〜1.5g/mの範囲内であることがより好ましく、0.3〜1.3g/mの範囲内であることが特に好ましい。当該範囲内にあると、耐食性をより一層向上させた皮膜を製造することができる。
【0039】
以上のように、本発明に係る表面処理剤、皮膜、及び表面処理方法によれば、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)、油脂蒸気や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)に優れ、かつ、耐食性、初期親水性、親水持続性及び耐水密着性に優れた親水性皮膜を形成可能となる。このため、本発明の親水性皮膜が形成されたアルミニウムフィン材を用いて製造された熱交換器(例えば、冷房、暖房等の空調機に組み込まれる熱交換器等)は、初期親水性、親水持続性等の性能だけでなく、固体微粒子及び有機物蒸気の付着を防止する性能を有するため、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0040】
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明に包含される。
【0041】
[試験片の作製]
(金属材料)
金属材料として、JIS H4000:2014で規格されたアルミニウム材料(A1050P)、JIS G4305:2012で規格されたステンレス材料(SUS304)、JIS H3100:2012で規定された銅材料(C1020P)、及びJIS 4201:2011で規定されたマグネシウム材料(MP1B)を使用した。各種金属材料の大きさは、縦300mm×横150mm×厚さ0.1mmである。
【0042】
(金属材料に対する前処理)
各種金属材料を、アルカリ脱脂剤(商品名:ファインクリーナー315E、日本パーカライジング株式会社製)の30g/L水溶液に40℃で60秒間浸漬し、各種金属材料の表面上における油分や汚れを取り除いた。次に、金属材料の表面を水洗し、100℃で乾燥した。
【0043】
(アルミニウム材料に対するりん酸クロメート処理)
上記前処理を施したアルミニウム材料の表面に、Cr付着量が所定量となるように、りん酸クロメート表面処理剤(商品名:アルクロムK702、日本パーカライジング株式会社製)の47g/L水溶液を50℃で2〜10秒間スプレーした後、水洗し、80℃で3分間乾燥させ、りん酸クロメート皮膜を形成させた。
【0044】
(表面処理剤)
水性溶媒として水を用い、攪拌しながら、表1(表1−1〜表1−3)に示す固形分質量割合で各成分を順次添加し、各実施例及び各比較例の表面処理剤を調製した。なお、表1における各成分の種類欄に記載の各記号は、表2〜4にそれぞれ示す物質を意味する。また、表面処理剤における固形分は全て10質量%とした。
【0045】
【表1-1】
【0046】
【表1-2】
【0047】
【表1-3】
【0048】
【表2】
【0049】
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製「LA−920」)を用いて以下の条件で測定したメジアン径値を平均粒子径の値とした。
分散液:水
屈折率:1.33
粒子径基準:体積
測定温度 :25℃
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
(表面処理)
前処理を施したアルミニウム材料、前処理及びりん酸クロメート処理を施したアルミニウム材料、ステンレス材料、銅材料及びマグネシウム材料の表面に、バーコーターを用いて、各種表面処理剤(実施例1〜187及び比較例1〜7の表面処理剤)を塗布した後、水洗することなく、表5(表5−1〜表5−3)に示す乾燥温度で10秒間乾燥することにより、各種表面処理剤による皮膜を形成させ、各試験片を作製した。なお、各試験片の皮膜の形成は、表5に示す皮膜量となるように、各種表面処理剤の濃度を調整したり、使用するバーコーターの種類を変えたりすることによって実施した。このようにして作製した各試験片を用いて以下の性能評価を行った。なお、表5中の乾燥温度は、試験片の最高到達温度(PMT)を示す。
【0053】
【表5-1】
【0054】
【表5-2】
【0055】
【表5-3】
【0056】
[性能評価]
実施例1〜187及び比較例1〜7の表面処理剤に対して各種性能評価を行った。性能評価の結果、1以上が合格(所定基準を満たす)と判断し、0が不合格(所定基準を満たさない)と判断した。
【0057】
(耐粉塵性(耐固体微粒子付着性))
耐固体微粒子付着性評価は、特開2009−229040号公報に記載の方法に準じて行った。疎水性固体微粒子と親水性固体微粒子とをエアーで表面処理金属材の皮膜表面に吹きつけて、各微粒子の付着による着色を目視観察にて6段階評価した。以下の評価基準に基づいて耐食性を評価した。その結果を表5に示す。
(評価基準)
5:微粒子の付着はほとんどなし
4:微粒子の付着は僅かに有り
3:微粒子の付着は少ない
2:微粒子の付着は比較的多い
1:微粒子の付着はかなり多い
0:未表面処理金属材料に対する微粒子の付着と同等(非常に多い)
ここで、金属材料とは、アルミニウム材料(A1050P)を意味する。
【0058】
(耐汚染性(耐有機物蒸気付着性))
耐有機物蒸気付着性評価は、試験片をイオン交換水流水中に1時間浸漬した後、室温で乾燥させ、次いで、その試験片をステアリン酸2g、モノテルペン2gが入ったビーカーに設置して密閉状態で暴露させ、95℃の温度下で72時間保管して表面を汚染させた。ここで、モノテルペンとは香気成分であり、特にその種類に制限は無い。その後、試験片表面に2μLの水滴を滴下し、30秒後の接触角を測定した。その後、以下の評価基準に基づいて測定結果を評価した。その結果を表5に示す。
(評価基準)
5:45°以下の接触角
4:45°超、50°以下の接触角
3:50°超、55°以下の接触角
2:55°超、60°以下の接触角
1:60°超、70°以下の接触角
0:70°超の接触角
【0059】
(初期親水性)
親水性は、接触角計(型名:DIGIDROP D−S、仏国 GBX社製)を用い、液滴法により接触角を測定した。具体的には、試験片表面に2μLの水滴を滴下し、30秒後の接触角を測定した。その後、以下の評価基準に基づいて測定結果を評価した。その結果を表5に示す。
(評価基準)
5:10°以下の接触角
4:10°超、15°以下の接触角
3:15°超、20°以下の接触角
2:20°超、30°以下の接触角
1:30°超、40°以下の接触角
0:40°超の接触角
【0060】
(耐水密着性:wetラビング試験)
耐水密着性は、試験片上に純水で湿らせた不織布を乗せ、その上からガラス棒にて1kgの加重をかけ、試験片の面に対して平行に10cmの幅を5往復摺動させ、摺動部位の外観変化を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表5に示す。
(評価基準)
5:全く変化無し
4:光を当てることで摺動痕が微かに分かる
3:摺動痕が微かに分かる
2:摺動痕が分かるが皮膜の剥離は見られない
1:明らかな皮膜の剥離が見られる(素地が見える)
0:皮膜が完全に剥離する
【0061】
(親水持続性:乾湿サイクル試験)
乾湿後の親水持続性は、試験片を流れのないイオン交換水を満たした水槽に、静かに浸漬して10分間保持し、静かに取り出して10分間風乾する作業を1サイクルとし、100サイクル繰り返し行った。その後、試験片表面に2μLの水滴を滴下し、30秒後の接触角を測定した。その後、以下の評価基準に基づいて測定結果を評価した。その結果を表6に示す。
6:10°以下の接触角
5:10°超、15°以下の接触角
4:15°超、20°以下の接触角
3:20°超、30°以下の接触角
2:30°超、40°以下の接触角
1:40°超、50°以下の接触角
0:50°超の接触角
【0062】
以上の評価結果より、本発明の表面処理剤、皮膜、及び表面処理方法によれば、親水性及び疎水性の両方の固体微粒子に対する防汚性(耐固体微粒子付着性)、油脂蒸気や、揮発性有機化合物に対する防汚性(耐有機物蒸気付着性)に優れ、かつ、耐食性、初期親水性、親水持続性及び耐水密着性に優れた皮膜を形成することができることが示された。