特許第6858020号(P6858020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6858020-ダイヤフラムポンプ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858020
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/04 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   F04B45/04 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-3072(P2017-3072)
(22)【出願日】2017年1月12日
(65)【公開番号】特開2018-112127(P2018-112127A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】応研精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】板原 一毅
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−009838(JP,A)
【文献】 特開2004−060641(JP,A)
【文献】 実開昭57−008385(JP,U)
【文献】 特開2015−031154(JP,A)
【文献】 特開2013−36349(JP,A)
【文献】 特開2008−248794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出通路の壁の一部を構成する板状体と、
前記板状体と協働してポンプ室を形成するカップ状の変形部を有するダイヤフラムと、
前記変形部に取付けられた往復運動部を有し、前記往復運動部が往復運動をすることにより前記変形部内の容積を増減させる駆動機構と、
前記板状体を貫通し、前記吐出通路と前記ポンプ室とを連通する貫通孔と、
前記貫通孔の吐出通路側開口を含む前記板状体の壁面に密着する板状の弁体を有し、前記ポンプ室から前記吐出通路へのみ流体の通過を許容するゴム製の吐出弁と、
ウレタンスポンジによって形成されて前記吐出通路内に設けられ、前記吐出弁の弁体が予め定めた量だけ開いた状態で前記弁体と当接するストッパーとを備え
前記吐出通路は、前記板状体と、この板状体の壁面と対向する通路壁と、前記板状体に突設されて前記通路壁に接続された円筒とによって囲まれて形成され、
前記ストッパーは、前記円筒の内周面に沿う状態で前記通路壁に支持されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムによって形成された吐出弁を有するダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイヤフラムポンプの吐出弁としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1に開示された吐出弁1は、ゴム材料によって略円板状に形成されており、中央に位置するキャップ状の取付部2と、この取付部2から径方向の外側に延びる環状の弁体部3とによって構成されている。取付部2は、板状体4に突設された半球状の凸部4aに固定されている。
【0003】
板状体4は、ポンプ室5と吐出通路6とを仕切るものである。この板状体4には、ポンプ室5と吐出通路6とを連通する貫通孔7が穿設されている。板状体4における、貫通孔7の吐出通路側開口の周囲は、弁体部3が接するシール面8となるように平坦に形成されている。
吐出弁1の弁体部3は、このシール面8に自らのばね力で密着するように形成されている。
【0004】
このように構成された吐出弁1を有するダイヤフラムポンプにおいては、ポンプ室5内の流体圧が上昇すると、図3において右側に示すように、貫通孔7を介して弁体部3に加えられた流体の圧力で弁体部3が押され、流体がポンプ室5から貫通孔7を通って吐出通路6に吐出される。一方、ポンプ室5内の圧力が低下すると、図3において左側に示すように、吐出弁1の弁体部3が自らのばね力でシール面8に当接して貫通孔7を閉じ、吐出通路6からポンプ室5への流体の逆流が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−162472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す吐出弁1では、開閉量を管理することができず、閉じるときに弁体部3がシール面8に衝突して大きな打音が生じるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、吐出弁が閉じるときに生じる打音が小さいダイヤフラムポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係るダイヤフラムポンプは、吐出通路の壁の一部を構成する板状体と、前記板状体と協働してポンプ室を形成するカップ状の変形部を有するダイヤフラムと、前記変形部に取付けられた往復運動部を有し、前記往復運動部が往復運動をすることにより前記変形部内の容積を増減させる駆動機構と、前記板状体を貫通し、前記吐出通路と前記ポンプ室とを連通する貫通孔と、前記貫通孔の吐出通路側開口を含む前記板状体の壁面に密着する板状の弁体を有し、前記ポンプ室から前記吐出通路へのみ流体の通過を許容するゴム製の吐出弁と、ウレタンスポンジによって形成されて前記吐出通路内に設けられ、前記吐出弁の弁体が予め定めた量だけ開いた状態で前記弁体と当接するストッパーとを備え前記吐出通路は、前記板状体と、この板状体の壁面と対向する通路壁と、前記板状体に突設されて前記通路壁に接続された円筒とによって囲まれて形成され、前記ストッパーは、前記円筒の内周面に沿う状態で前記通路壁に支持されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吐出弁の弁体の開く量がストッパーによって制限される。このため、従来のダイヤフラムポンプと較べると、弁体が閉じる際の運動エネルギーを小さくすることができるから、吐出弁の閉弁時の打音が小さくなる。
したがって、本発明によれば、吐出弁が閉じるときの打音が小さいダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るダイヤフラムポンプの断面図である。図1は吸気行程で吸気弁が開いている状態を示している。
図2】本発明に係るダイヤフラムポンプの断面図である。図2は吐出行程で吐出弁が開いている状態を示している。
図3】従来のダイヤフラムポンプに用いられている吐出弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るダイヤフラムポンプの一実施の形態を図1および図2によって詳細に説明する。
図1に示すダイヤフラムポンプ11は、図1において最も下に位置するモータ12に取付けられ、このモータ12によって駆動されて大気を吸引して吐出するポンプである。このダイヤフラムポンプ11は、モータ12に取付けられたハウジング13と、このハウジング13に保持されたダイヤフラム14を備えている。
【0012】
ハウジング13は、後述する複数の部材をモータ12の軸線方向に組み合わせて円柱状に形成されており、モータ12の回転軸15と同一軸線上に位置付けられている。ハウジング13を構成する複数の部材は、モータ12に取付けられた有底円筒状の底体16と、この底体16の開口部分に一端部が取付けられた円筒部17を有するバルブホルダー18と、円筒部17の他端部に取付けられた有底円筒状の蓋体19などである。
【0013】
バルブホルダー18は、円筒部17内を軸線方向の一方側と他方側とに仕切る円板部21を有している。ダイヤフラム14は、円板部21におけるモータ12側となる壁面に重ねられ、ダイヤフラムホルダー22によって円板部21に固定されている。円板部21は、本発明でいう「板状体」を構成するものである。
【0014】
また、ダイヤフラム14は、バルブホルダー18の円板部21に向けて開口する複数の(図1,2では一つのみが図示されている)カップ状の変形部23を有している。これらの変形部23の開口部分は、円板部21によって閉塞されている。この変形部23と円板部21との間にポンプ室24が形成されている。
ダイヤフラム14の変形部23には、駆動機構25が接続されている。
【0015】
駆動機構25は、モータ12の回転軸15に取付けられたクランク26と、このクランク26に取付けられた駆動子27とを備えている。駆動子27は、クランク26に支軸28を介して回転自在に支持された円柱状の軸部27aと、この軸部27aから径方向の外側に突出する複数の腕部27b(図1においては一つのみが図示されている)とによって構成されている。支軸28は、クランク26における回転軸15とは偏心した部位に接続され、回転軸15に対して傾斜している。支軸28の傾斜する方向は、支軸28の先端部が回転軸15と同一軸線上に位置する方向である。
【0016】
腕部27bは、ダイヤフラム14の変形部23に突設された連結片29が貫通しており、この連結片29を介して変形部23に接続されている。このため、駆動子27は、ダイヤフラム14によって回転が規制されることになり、クランク26が回転軸15とともに回転することにより、この回転を往復運動に変換して変形部23に伝達する。この実施の形態においては、駆動子27が本発明でいう「往復運動部」に相当する。駆動機構25は、駆動子27が往復運動をすることにより、変形部23内の容積を増減させる。
【0017】
バルブホルダー18の円板部21におけるポンプ室24の壁を構成する部分には、吸入弁31が設けられているとともに、吸入用貫通孔32と吐出用貫通孔33とが穿設されている。吸入弁31は、ゴム材料によって形成され、円板部21におけるポンプ室24側の壁面に自らのばね力で密着する弁体31aを有している。この弁体31aは、吸入用貫通孔32の開口部分を開閉する。
【0018】
吸入用貫通孔32は、バルブホルダー18と蓋体19との間に形成された下流側吸気室34と、ポンプ室24とを連通している。下流側吸気室34は、円板部21の中心部に突設されて蓋体19に接続された円筒35と、円板部21の外周部分と、蓋体19の外周部分とによって囲まれて形成されている。この下流側吸気室34は、円板部21の外周部分に設けられた下流側通路孔36を介してハウジング内空間37に連通されている。ハウジング内空間37は、ハウジング13の底体16と、バルブホルダー18とによってハウジング13の外とは仕切られている。また、ハウジング内空間37は、図1において左側に位置する上流側吸気室38を介して大気中に連通されている。
【0019】
上流側吸気室38は、バルブホルダー18の上述した円筒35と、円板部21の外周部分と、蓋体19の外周部分とによって囲まれて形成されている。この上流側吸気室38と、上述した下流側吸気室34とは、図示していない隔壁によって仕切られている。上流側吸気室38は、ハウジング内空間37に上流側通路孔39を介して連通されているとともに、蓋体19の貫通孔40を介して大気中に連通されている。
【0020】
円板部21に設けられた吐出用貫通孔33は、バルブホルダー18の円板部21によって仕切られたポンプ室24と吐出室41とを連通している。吐出室41は、円板部21の中心部分の壁面と、この壁面と対向する蓋体19の通路壁19aと、上述した円筒35とによって囲まれて形成されており、蓋体19に突設された吐出パイプ42を介して大気中に連通されている。この実施の形態においては、吐出室41が本発明でいう「吐出通路」に相当する。
【0021】
吐出室41内であって、バルブホルダー18の円板部21の中心部分には、吐出弁43が設けられている。吐出弁43は、ゴム材料によって形成され、円板部21の半球状を呈する突起44に嵌合したキャップ部43aと、キャップ部43aの一側部に接続された板状部43bと、キャップ部43aの他側部に接続された弁体部43cとを備えている。板状部43bおよび弁体部43cは、図1および図2においては一つずつしか描かれていないが、実際にはダイヤフラム14の変形部23の数と同数だけ設けられており、円板部21の周方向に所定の間隔をおいて並んでいる。
【0022】
板状部43bは、円板部21と蓋体19の突起19bとの間に挟まれて固定されている。弁体部43cは、板状に形成されており、円板部21における吐出室41側の壁面に自らのばね力で密着し、吐出用貫通孔33の開口部分を開閉する。すなわち、吐出弁43は、ポンプ室24から吐出室41へのみ流体の通過を許容する。この実施の形態においては、弁体部43cが本発明でいう「弁体」に相当する。
【0023】
吐出室41における弁体部43cの近傍にはストッパー45が設けられている。このストッパー45は、例えばウレタンスポンジなどの柔軟性を有する材料によって形成されており、上述した円筒35の内周面に沿う状態で蓋体19における円板部21と対向する通路壁19aに支持されている。
このストッパー45は、吐出弁43の弁体部43cが予め定めた量だけ開いた状態で弁体部43cと当接するように、予め定めた大きさに形成されて所定の位置に配置されている。
この実施の形態によるストッパー45は、弁体部43c毎に形成され、個々の弁体部43cと対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0024】
このように構成されたダイヤフラムポンプ11においては、モータ12が回転し、駆動子27の支軸28がモータ12の回転軸15を中心にして回転することにより、駆動子27の腕部27bが回転軸15の軸線方向に往復してダイヤフラム14の変形部23が押されたり引かれたりする。変形部23が腕部27bによってモータ12側に引かれることにより、図1に示すように、ポンプ室24の容積が増大し、吸入弁31が開いて下流側吸気室34内の流体(空気)が吸入用貫通孔32を通ってポンプ室24内に吸入される。このときは、ハウジング内空間37の空気が下流側通路孔36を通って下流側吸気室34内に吸入され、上流側吸気室38内の空気が上流側通路孔39を通ってハウジング内空間37に吸入される。また、大気が蓋体19の貫通孔40を通って上流側吸気室38内に吸入される。
【0025】
一方、ダイヤフラム14の変形部23が腕部27bによってバルブホルダー18の円板部21側へ押されることにより、図2に示すように、変形部23が圧縮されてポンプ室24の容積が減少し、吐出弁43が開いてポンプ室24内の空気が吐出用貫通孔33を通って吐出室41内に吐出される。このとき、吐出弁43の弁体部43cは、先端部分が円板部21から離間する方向に自らのばね力に抗して揺動する。弁体部43cの揺動(開く量)は、弁体部43cの先端部分がストッパー45に当接することによって制限される。この結果、弁体部43cが過度に大きく揺動することはなく、吐出弁43が閉じる際の運動エネルギーは、無制限に開く従来の吐出弁43に較べると小さくなる。
したがって、この実施の形態によれば、吐出弁43が閉じる際の運動エネルギーを小さくすることができるから、吐出弁43の閉弁時の打音が小さいダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0026】
この実施の形態による吐出室41は、弁体部43cが密着する円板部21の壁面と、この壁面と対向する蓋体19の通路壁19aとの間に形成されている。ストッパー45は、この通路壁19aに支持されている。
このため、吐出用貫通孔33から吐出室41に流出した空気をストッパー45が遮ることがないから、ストッパー45を備えているにもかかわらず、吐出室41内を流れる空気の抵抗を可及的小さくすることができる。したがって、この実施の形態によれば、吐出弁43から生じる打音が小さくなるとともに、空気が効率よく吐出されるダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0027】
上述した実施の形態による吐出弁43の弁体部43c(弁体)は、自らのばね力で円板部21に密着するものである。しかし、本発明に係る吐出弁の弁体は、このような限定にとらわれることはない。例えば、弁体としては、自然状態で円板部21に密着して吐出用貫通孔33が閉じられる状態に保持され、ポンプ室24と吐出室41との圧力差で開く構成のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…ダイヤフラムポンプ、14…ダイヤフラム、19a…通路壁、21…円板部(板状体)、23…変形部、24…ポンプ室、25…駆動機構、27…駆動子(往復運動部)、33…吐出用貫通孔、41…吐出室(吐出通路)、43…吐出弁、43c…弁体部(弁体)、45…ストッパー。
図1
図2
図3