【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、以下に述べる方法および物品によって達成される。
【0011】
移送装置を調節するための改良された方法であって、移送装置は、ロボットにより変位可能な移送アームに固定され、自動分析機での液体容器用のホルダを含み、移送装置は、移送アームによって移動される方法は、
a)ホルダに液体容器を受ける工程と、
b)受けた液体容器を有するホルダに対する第1の力効果をセンサによって測定する工程と、
c)ロボットにより変位可能な移送アームによって、液体容器用の受け位置内で所定の高さにある所定の位置に液体容器を変位し、受けた液体容器を有するホルダに対する第2の力効果をセンサによって測定する工程と、
d)工程b)と工程c)で測定された力効果を比較する工程とを含み、
ここで、工程b)と工程c)で測定された力効果が所定量を超えて互いにずれていない場合、移送装置は、受け位置に対して十分に調節され、
工程b)と工程c)で測定された力効果が所定量を超えて互いにずれている場合、受け位置に対する移送装置の調節が行われる
ことによって達成することができることが発見された。
【0012】
これは、液体容器自体のためのホルダとは別に、追加の調節マークが提供される必要がないという点で有利である。これは、時間およびコストの面で大幅な節約をもたらすことがある。さらに、これは、大幅に分析器が誤差を受けにくくすることができる。さらに、分析器の稼働中に、本発明による方法によって、例えば恒久的にまたは所定の間隔で機械の調節状態が検証される。
【0013】
例として、液体容器用の受け位置は、ホルダまたは凹部であり、これは、嵌合式に液体容器を少なくとも一部、好ましくはその下側部分で取り囲んで保持することが可能である。好ましくは、受け位置は、液体容器と相互作用する壁を含む。好ましくは、受け位置は、ロボット装置によって自動で移動される。
【0014】
力の作用を測定するとき、例えば、力の作用のずれに対する適切な所定量が、生じ得る不正確さよりも大きい。可能であれば、力の作用を測定するとき、所定量が不正確さよりもわずかだけ大きくなるように選択されることが有利である。それによって行うことができることは、調節状態を比較的正確に確認することができることである。しかし、調節状態の確認に関してより低い精度しか要求されない場合、またはより大きい調節誤差が許容される場合、場合により、所定量は、それに対応してより大きく選択することもできる。これは、このとき方法が特にロバストであり誤差を受けにくいという点で有利であり得る。
【0015】
力効果を測定するときに生じ得る不正確さは、非常に様々な原因を有することがある。例として、不正確さは、センサの構造および/または製造プロセスの不備の結果として生じることがある。さらに、不正確さは、例えば、周囲からの影響の変化により生じることがある。例として、そのような変化は、温度、外部電磁場、振動、および/または震動(tremor)に関係することがある。力の作用の測定の不正確さは、例えば、適切な境界条件下での基準条件によって定量化される。
【0016】
さらに、不正確さは、統計プロセスにより生じることがあり、これは例えば、対応するノイズをもたらすことがある。統計プロセスによる力効果の測定の不正確さは、例えば、測定の複数回の反復、および測定結果の統計分析によって定量化される。
【0017】
受け位置に対して移送装置を調節するための方法の好ましい実施形態では、方法はさらに、
e)移送アームによって、液体容器を、受け位置内の経路に沿って、受け位置内で所定の高さにある修正された位置に変位する工程であって、経路は、所定の高さに延びる工程と、
f)受けた液体容器を有するホルダに対する経路に沿った複数の力効果をセンサによって測定する工程と、
g)工程f)で測定された、経路に沿った複数の力効果のプロファイルを評価することによって、正しい位置を確認する工程と
をさらに含む。
【0018】
これは、適切な調節状態からの大幅なずれがある場合に、調節状態の適切な補正が即座に行われるという点で有利である。特に、これは、分析器の稼働中にも可能である。例えば、分析器の動作に関してずれが大きい場合、適切な調節状態からの大幅なずれが存在する。例として、これは、ずれにより、分析器の動作中の誤差および/または不具合がある場合、またはそのようなイベントの発生の確率がそれに対応して上昇した値を取る場合に当てはまることがある。
【0019】
受け位置に対して移送装置を調節するための方法のさらなる好ましい実施形態では、方法は、
h)移送アームによって、液体容器を、受け位置内で所定の高さにある補正された位置に変位する工程と、
i)受けた液体容器を有するホルダに対する第3の力効果をセンサによって測定する工程と、
j)工程b)と工程c)で測定された力効果を比較する工程と
をさらに含み、
ここで、工程b)と工程i)で測定された力効果が所定量を超えて互いにずれていない場合、移送装置は、受け位置に対して十分に調節され、
工程b)と工程i)で測定された力効果が所定量を超えて互いにずれている場合、工程e)〜j)を繰り返すことによって、受け位置に対する移送装置のさらなる調節が行われる。
【0020】
これは、調節状態のチェックおよび場合によっては必要な補正を繰り返し行うことができるので有利である。
【0021】
さらなる好ましい実施形態では、工程e)での経路は、1自由度に沿って、または複数の異なる自由度に沿って延びる。
【0022】
さらなる好ましい実施形態では、この方法は、複数の異なる自由度に関して順次に行われる。
【0023】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、自由度は、並進または回転自由度である。
【0024】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、この方法は、複数の受け位置に関して順次に行われる。
【0025】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、センサは、ホルダおよび/または移送アームに配置される。
【0026】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、工程e)で、移送アームによる液体容器の変位ではなく、受け位置の位置の変化がある。
【0027】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、工程e)で、受け位置の位置の変化と、移送アームによる液体容器の変位との両方が存在する。
【0028】
好ましくは、受け位置の位置の変化は、自動制御されるロボット装置によって行われる。
【0029】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、センサは、測距センサを含む。測距センサは、2つの物体間の距離を捕捉することができる。
【0030】
この方法のさらなる好ましい実施形態では、測距センサは、ホールセンサおよび磁石を含む。
【0031】
ホールセンサ(Edwin Hallにちなんでホールプローブまたはホールトランスデューサとも呼ばれる)は、磁場および磁気の流れを測定するため、または位置を捕捉するためのホール効果を使用する。本発明による装置の場合、好ましい実施形態では、磁石は、液体容器用のホルダに埋め込まれ、その磁石の磁場が、静止ホールセンサによって測定される。ホールセンサの位置での磁石の磁場は、磁石からのホールセンサの距離と共に減少するので、ホールセンサに対する磁石の位置、したがってホールセンサに対する液体容器用のホルダの距離は、ホールセンサの位置での磁場の値から計算することができる。
【0032】
移送装置は、好ましくは、可撓性の中間要素を含む。
【0033】
以下、用語「可撓性の中間要素」は、ホルダとロボットにより変位可能な移送アームとの間に取り付けられたデバイスを表すものとし、このデバイスは、液体容器に対する力効果が及ぼされる場合に変形されるが、それと同時に、移送アームおよびホルダがキュベットを受ける、輸送する、および解放することができるように十分に剛性である。
【0034】
好ましくは、可撓性の中間要素は、例えば、限定はしないが、エラストマー、ウレタンゴム、天然ゴム、ゴム、発泡材、またはばね鋼などの弾性および/または減衰材料からなることが企図される。さらに、ねじれに対する保護を保証するために、複数の別個の中間要素が横並びにまたは上下に使用されることもある。
【0035】
可撓性の中間要素は、液体容器に力が作用するときに、移送アームに対するホルダの特定の撓み性を保証する。しかし、それと同時に、可撓性の中間要素はまた、例えばその厚さおよび弾性特性によって、容器を輸送するときにグリッパの撓みを制限する。
【0036】
以下、用語「ホルダ」は、液体容器を保持することができるデバイスを表すものとする。好ましくは、ホルダは、液体容器を把持、保持、および再解放することもできる。ここで有利なのは、ホルダが液体容器用の一体製造されたグリッパを含む場合である。ホルダは、キュベットホルダとも呼ばれる。
【0037】
基本的には、把持は、取り上げて保持するための基本的な動きであり、ロボットまたは分析機とワークピース、この場合には液体容器との接続を確立する。ここで、相乗効果のタイプおよび接触面の数が、確実な接続のために重要である。相乗効果は、付力式、嵌合式、または接着式の対合によって得ることができる。付力式の対合(forced pairing)を利用するとき、ホルダは、ワークピース表面に対して圧力を及ぼすことによって発生される。これとは対照的に、保持は、等しい形状によってワークピースを取り囲むことによって、嵌合式の対合で成される。ここで、確実な案内中、伝達されるクランプ力は非常に小さい。接着式の対合の場合、ワークピースとの接触は、接着剤を利用することによってもたらされる。
【0038】
さらに、グリッパシステムは、それらの効果に従って、機械的、空気圧式、磁気的、および接着式システムに細分することができる。これらの効果はまた、グリッパシステムの可撓性を高めるために組み合わせて利用することもできる。
【0039】
本発明の範囲では好ましくは機械的グリッパが使用されるが、特に磁気的グリッパも使用することができる。1フィンガ、2フィンガ、または多フィンガグリッパが、剛性、剛性ヒンジ式、または弾性設計を有する機械的グリッパとして存在する。
【0040】
ここで好ましいグリッパは、一部片から製造される。これは、個々の部品が組み立てられる必要がないので、より多数のユニットの再現性のある製造を可能にし、組み立てられたグリッパの適切な動作は、個々のユニット毎にではなく、ランダムにチェックされればよい。
【0041】
一体型グリッパは、弾性変形することができ、張力をかけられた状態であるように設計される。十分な力で障害物に対して移動される場合、これは、スナップ効果をもたらし、グリッパが開く。障害物の方向へのさらなる動きにより、グリッパは障害物を取り囲み、障害物が完全に取り囲まれるとすぐに、上記グリッパは、張力をかけられた状態により、再びカチッと閉じる。さらに、グリッパは、グリッパを再び開くために必要な解放力が克服されたときにのみ、取り囲まれた障害物を解放する。
【0042】
したがって、動作中、例えばまず、移送アームの側方運動または前後運動の結果として、ホルダが液体容器の方向に移動する。この液体容器(好ましくはキュベット)は、例えば、受け位置内で立つ。キュベットに達すると、ホルダは、キュベットフランジによって押されて開き、さらなる変位がある場合には、プラスチック材料のばね作用または張力をかけられた状態により、キュベットを取り囲む。キュベットが取り囲まれた後、ホルダまたは移送アームの上方への運動によって上記キュベットを持ち上げることができる。このとき、キュベットは、保持されており、移送アームの動きによって変位することができる。
【0043】
ホルダ内にキュベットを押し下げるために、上記キュベットは、移送アームの動きによって受け位置に駆動され、ホルダが後退される場合に受け位置に残り、すなわち、ホルダは再び押されて開き、キュベットを解放し、次いで弾性的に再び閉じる。
【0044】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの移送装置を含む自動分析機であって、移送装置は、ロボットにより変位可能な移送アームに固定され、液体容器用のホルダと、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つの制御機械とを含み、ここで、移送装置は、移送アームによって移動され、ホルダに対する力効果は、センサによって測定され、制御機械は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の移送装置を調節するための方法の実施を制御することができるように構成される自動分析機に関する。
【0045】
好ましい実施形態では、自動分析機は、液体容器用の複数の受け位置を含む。
【0046】
分析機のさらなる好ましい実施形態では、調節システムは、ロボットにより変位可能な移送アームを複数含む。
【0047】
本発明のさらなる主題は、自動分析機での本発明による方法の使用に関する。
【0048】
「ロボットにより変位可能な移送アーム」は、駆動機構によって自動的に変位可能な移送アームである。したがって、特に、移送アームは、例えば電動機によってまたは空気圧で駆動されて、能動的に動きを行うことがある。
【0049】
例として、移送アームは、化学的、臨床的、および/または生物学的試料を処理、操作、および分析するためのロボットステーションの一部である。ここで、移送アームは、例えば、ピペットステーションから光度計またはPCRサイクラに例えばキュベットなどの液体容器を輸送する働きをする。
【0050】
好ましくは、移送アームは、例えば微生物学、分析、法科学、または臨床診断用の実験室ロボットまたは実験室システムの一部である。
【0051】
本発明の意味において、「試料」は、検出予定の物質(分析物)をおそらく含む材料を意味するものと理解すべきである。特に用語「試料」は、ヒトまたは動物の生物学的液体、例えば、血液、血漿、血清、唾液、滲出物、気管支肺胞洗浄液、リンパ液、滑液、精液、膣粘液、便、尿、髄液、またはその他、例えば、光測定、好ましくは均質性または細胞溶解による比濁分析決定のために適宜用意された組織もしくは細胞培養試料を含む。さらに、植物液体または組織、法医学試料、水および排水試料、食品、製薬品も試料となることがあり、これらは、場合によっては、決定前に適切な試料前処理を受けるものとする。
【0052】
定量的検出は、試料中の分析物の量、濃度、または活性の測定を含む。表現「定量的検出」は、半定量法も網羅し、半定量法は、試料中の分析物のおおよその量、濃度、または活性のみを検出することができ、または量、濃度、もしくは活性の相対的な標示のみを提供するように働くことができる。定性的検出は、試料中に分析物が実際に存在することの検出、または、試料中の分析物の量、濃度、もしくは活性が1つまたはそれ以上の所定の閾値よりも下または上であることの標示と理解されるものとする。
【0053】
例として、測定キュベットは、ガラス、プラスチック、または金属製のキュベットまたは反応容器である。有利には、測定キュベットは、透光性材料から製造され、これは、特に光学的分析法を使用するときに有利であり得る。
【0054】
用語「測定キュベット」と「キュベット」は、同義として使用される。
【0055】
本発明を、図面に基づいて例示的により詳細に説明する。