特許第6858077号(P6858077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6858077コントローラ調整システムおよび調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858077
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】コントローラ調整システムおよび調整方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   G05B11/36 503A
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-103410(P2017-103410)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-198032(P2018-198032A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】本橋 勇人
(72)【発明者】
【氏名】高木 亨
(72)【発明者】
【氏名】菅原 文仁
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直俊
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−113724(JP,A)
【文献】 特開2007−193527(JP,A)
【文献】 特開2007−164568(JP,A)
【文献】 特開2006−220408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 1/00− 7/04,11/00−13/04,
17/00−17/02,21/00−21/02,
G05D23/00−23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示するように構成された目標値設定部と、
各ゾーンの中の1つの第1のゾーンの制御量に予め指定された一時オフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する処理を、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行うように構成された一時オフセット設定部と、
前記一時オフセットの印加後に前記第1のゾーン以外の第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量と、前記一時オフセットの印加前に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量とに基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出するように構成された干渉強度測定部と、
オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うように構成されたオフセット算出部と、
前記対象ゾーンの制御量に前記オフセット算出部によって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示するように構成されたオフセット設定部と、
所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記オフセット算出部と前記オフセット設定部の処理を繰り返し実行させるように構成された判定部とを備えることを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項2】
ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示するように構成された目標値設定部と、
前記コントローラが出力する操作量を設定するように構成された操作量設定部と、
各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンの制御量のピークの幅および前記第1のゾーンの制御量のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出するように構成された干渉強度測定部と、
オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うように構成されたオフセット算出部と、
前記対象ゾーンの制御量に前記オフセット算出部によって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示するように構成されたオフセット設定部と、
所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記オフセット算出部と前記オフセット設定部の処理を繰り返し実行させるように構成された判定部とを備え、
前記操作量設定部は、全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示した後に、前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行い、前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項3】
ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示するように構成された目標値設定部と、
前記コントローラが出力する操作量を設定するように構成された操作量設定部と、
各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅および前記第1のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出するように構成された干渉強度測定部と、
オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うように構成されたオフセット算出部と、
前記対象ゾーンの制御量に前記オフセット算出部によって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示するように構成されたオフセット設定部と、
所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記オフセット算出部と前記オフセット設定部の処理を繰り返し実行させるように構成された判定部とを備え、
前記操作量設定部は、全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示した後に、前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行い、前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項4】
請求項1記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記干渉強度測定部は、前記一時オフセットの印加後に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量をAij、前記一時オフセットの印加前に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量をBij、前記一時オフセットをSとしたとき、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を|(Aij−Bij)/S|により算出することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項5】
請求項2記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記干渉強度測定部は、各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第2の値に変更された後に前記第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第4の値に変更された後に前記第5の値に変更されたときの前記第2のゾーンの制御量のピークの幅をPij、前記第1のゾーンの制御量のピークの幅をPiiとしたとき、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度をPij/Piiにより算出することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項6】
請求項3記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記干渉強度測定部は、各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第2の値に変更された後に前記第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第4の値に変更された後に前記第5の値に変更されたときの前記第2のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅をPij、前記第1のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅をPijとしたとき、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度をPij/Piiにより算出することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記オフセット算出部は、各ゾーンについてそれぞれ前記オフセットの調整を複数回行う場合に、直前の調整までの前記オフセットを全て維持した状態で前記対象ゾーンの制御量に更に加えるオフセットを算出することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記判定部は、各ゾーンについて前記オフセットの調整を実行した後の前記温度センサの整定時の測定値同士の差が所定範囲内の場合に、前記オフセット調整終了条件が成立したと判定することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記判定部は、各ゾーンの前記オフセットの調整の実行回数が所定回数に達した場合に、前記オフセット調整終了条件が成立したと判定することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項10】
請求項1記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記一時オフセット設定部は、全てのゾーンについて順に前記一時オフセットの印加を行う際に、予め登録された複数のゾーンを同時に前記第1のゾーンとし、
前記オフセット算出部は、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に前記オフセットの算出を行う際に、前記登録された複数のゾーンを同時に前記対象ゾーンとして、これら対象ゾーンの各々について前記オフセットを算出し、
前記オフセット設定部は、前記登録された複数のゾーンの制御量に、それぞれ前記オフセット算出部によって算出された対応するオフセットを同時に加えるように前記コントローラに対して指示することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項11】
請求項2または3記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記操作量設定部は、全てのゾーンについて順に前記操作量の設定を行う際に、予め登録された複数のゾーンを同時に前記第1のゾーンとし、
前記オフセット算出部は、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に前記オフセットの算出を行う際に、前記登録された複数のゾーンを同時に前記対象ゾーンとして、これら対象ゾーンの各々について前記オフセットを算出し、
前記オフセット設定部は、前記登録された複数のゾーンの制御量に、それぞれ前記オフセット算出部によって算出された対応するオフセットを同時に加えるように前記コントローラに対して指示することを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項12】
請求項1記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記目標値設定部と前記一時オフセット設定部と前記干渉強度測定部と前記オフセット算出部と前記オフセット設定部と前記判定部とは、予め登録された複数の前記目標値の各々について処理を行い、
前記オフセットをゾーン毎および目標値毎に記憶するように構成された記憶部と、
この記憶部に記憶されているオフセットを基に、オフセット調整を行っていない目標値についてオフセットをゾーン毎に線形補間により算出して、前記記憶部に記憶させるように構成された補間部とをさらに備え、
前記オフセット設定部は、前記加熱装置の実稼働時または前記冷却装置の実稼働時に、各ゾーンの制御量と同じ値の目標値に対応するオフセットを前記記憶部から取得して前記コントローラに設定することをゾーン毎に行うことを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項13】
請求項2または3記載のコントローラ調整システムにおいて、
前記目標値設定部と前記操作量設定部と前記干渉強度測定部と前記オフセット算出部と前記オフセット設定部と前記判定部とは、予め登録された複数の前記目標値の各々について処理を行い、
前記オフセットをゾーン毎および目標値毎に記憶するように構成された記憶部と、
この記憶部に記憶されているオフセットを基に、オフセット調整を行っていない目標値についてオフセットをゾーン毎に線形補間により算出して、前記記憶部に記憶させるように構成された補間部とをさらに備え、
前記オフセット設定部は、前記加熱装置の実稼働時または前記冷却装置の実稼働時に、各ゾーンの制御量と同じ値の目標値に対応するオフセットを前記記憶部から取得して前記コントローラに設定することをゾーン毎に行うことを特徴とするコントローラ調整システム。
【請求項14】
ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示する第1のステップと、
各ゾーンの中の1つの第1のゾーンの制御量に予め指定された一時オフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する処理を、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行う第2のステップと、
前記一時オフセットの印加後に前記第1のゾーン以外の第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量と、前記一時オフセットの印加前に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量とに基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出する第3のステップと、
オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行う第4のステップと、
前記対象ゾーンの制御量に前記第4のステップによって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する第5のステップと、
所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記第4のステップと前記第5のステップの処理を繰り返し実行させる第6のステップとを含むことを特徴とするコントローラ調整方法。
【請求項15】
ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示する第1のステップと、
前記コントローラが出力する操作量を設定する第2のステップと、
各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンの制御量のピークの幅および前記第1のゾーンの制御量のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出する第3のステップと、
オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行う第4のステップと、
前記対象ゾーンの制御量に前記第4のステップによって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する第5のステップと、
所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記第4のステップと前記第5のステップの処理を繰り返し実行させる第6のステップとを含み、
前記第2のステップは、
全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示するステップと、
前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行うステップと、
前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除するステップとを含むことを特徴とするコントローラ調整方法。
【請求項16】
ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示する第1のステップと、
前記コントローラが出力する操作量を設定する第2のステップと、
各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅および前記第1のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出する第3のステップと、
オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行う第4のステップと、
前記対象ゾーンの制御量に前記第4のステップによって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する第5のステップと、
所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記第4のステップと前記第5のステップの処理を繰り返し実行させる第6のステップとを含み、
前記第2のステップは、
全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示するステップと、
前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行うステップと、
前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除するステップとを含むことを特徴とするコントローラ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御ループ間に干渉が発生する多入出力制御系におけるコントローラの調整システムおよび調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワークを加熱装置で処理する場合、加熱装置の内部を複数の加熱ゾーンに分けて加熱ゾーン毎に温度制御することが行われている。例えばラミネートコーティングフィルムのように平面的なワークを対象とする場合、ワークの大きさに応じて複数の加熱ゾーンを設ける必要があるが、隣接する加熱ゾーンに温度干渉のような状態量干渉が発生するため、ワークの表面温度を均一にすることは難しい。しかし、ラミネートコーティングフィルムの場合には、温度むらがあるとフィルムの品質が低下してしまうという問題がある。
【0003】
ワークの表面温度を均一にする方法として、図15に示すように、ワークを加熱する複数の電熱体(ヒータやペルチェ素子など)100−1〜100−9からなる電熱ユニット101と、電熱ユニット101を制御するコントローラ102とを備えた加熱装置において、電熱体100−1〜100−9によってそれぞれ加熱されるゾーンZ1〜Z9に対応するワーク表面の各領域に高精度な温度センサ104−1〜104−9を設けた温度センサ付きワーク(以下、ワークセンサ)103を用いて加熱試験を行い、各ゾーンZ1〜Z9のワーク表面温度を測定し、その測定結果を基にコントローラ102の制御量にオフセットを与えることで、ワークの表面温度を均一にするという方法が考えられる(特許文献1参照)。
【0004】
コントローラのオフセット調整の過程ではゾーン間の干渉度を導く必要がある。しかしながら、特許文献1に開示された温度制御装置では、ゾーン間の干渉度の導出方法が開示されておらず、ワークの表面温度を均一にするためのコントローラの調整方法が実現できていないという問題点があった。
なお、以上のような問題点は、加熱装置に限らず、冷却装置においても同様に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−59371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ゾーン間の干渉強度を求めることができ、加熱装置の実稼働時または冷却装置の実稼働時にワークの表面温度を均一にすることができるコントローラ調整システムおよび調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコントローラ調整システムは、ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示するように構成された目標値設定部と、各ゾーンの中の1つの第1のゾーンの制御量に予め指定された一時オフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する処理を、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行うように構成された一時オフセット設定部と、前記一時オフセットの印加後に前記第1のゾーン以外の第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量と、前記一時オフセットの印加前に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量とに基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出するように構成された干渉強度測定部と、オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うように構成されたオフセット算出部と、前記対象ゾーンの制御量に前記オフセット算出部によって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示するように構成されたオフセット設定部と、所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記オフセット算出部と前記オフセット設定部の処理を繰り返し実行させるように構成された判定部とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のコントローラ調整システムは、ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示するように構成された目標値設定部と、前記コントローラが出力する操作量を設定するように構成された操作量設定部と、各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンの制御量のピークの幅および前記第1のゾーンの制御量のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出するように構成された干渉強度測定部と、オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うように構成されたオフセット算出部と、前記対象ゾーンの制御量に前記オフセット算出部によって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示するように構成されたオフセット設定部と、所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記オフセット算出部と前記オフセット設定部の処理を繰り返し実行させるように構成された判定部とを備え、前記操作量設定部は、全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示した後に、前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行い、前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のコントローラ調整システムは、ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示するように構成された目標値設定部と、前記コントローラが出力する操作量を設定するように構成された操作量設定部と、各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅および前記第1のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出するように構成された干渉強度測定部と、オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うように構成されたオフセット算出部と、前記対象ゾーンの制御量に前記オフセット算出部によって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示するように構成されたオフセット設定部と、所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記オフセット算出部と前記オフセット設定部の処理を繰り返し実行させるように構成された判定部とを備え、前記操作量設定部は、全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示した後に、前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行い、前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記干渉強度測定部は、前記一時オフセットの印加後に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量をAij、前記一時オフセットの印加前に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量をBij、前記一時オフセットをSとしたとき、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を|(Aij−Bij)/S|により算出することを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記干渉強度測定部は、各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第2の値に変更された後に前記第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第4の値に変更された後に前記第5の値に変更されたときの前記第2のゾーンの制御量のピークの幅をPij、前記第1のゾーンの制御量のピークの幅をPiiとしたとき、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度をPij/Piiにより算出することを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記干渉強度測定部は、各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第2の値に変更された後に前記第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が前記第1の値に設定されている状態で前記第1のゾーンの操作量が前記第4の値に変更された後に前記第5の値に変更されたときの前記第2のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅をPij、前記第1のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅をPijとしたとき、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度をPij/Piiにより算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記オフセット算出部は、各ゾーンについてそれぞれ前記オフセットの調整を複数回行う場合に、直前の調整までの前記オフセットを全て維持した状態で前記対象ゾーンの制御量に更に加えるオフセットを算出することを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記判定部は、各ゾーンについて前記オフセットの調整を実行した後の前記温度センサの整定時の測定値同士の差が所定範囲内の場合に、前記オフセット調整終了条件が成立したと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記判定部は、各ゾーンの前記オフセットの調整の実行回数が所定回数に達した場合に、前記オフセット調整終了条件が成立したと判定することを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記一時オフセット設定部は、全てのゾーンについて順に前記一時オフセットの印加を行う際に、予め登録された複数のゾーンを同時に前記第1のゾーンとし、前記オフセット算出部は、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に前記オフセットの算出を行う際に、前記登録された複数のゾーンを同時に前記対象ゾーンとして、これら対象ゾーンの各々について前記オフセットを算出し、前記オフセット設定部は、前記登録された複数のゾーンの制御量に、それぞれ前記オフセット算出部によって算出された対応するオフセットを同時に加えるように前記コントローラに対して指示することを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記操作量設定部は、全てのゾーンについて順に前記操作量の設定を行う際に、予め登録された複数のゾーンを同時に前記第1のゾーンとし、前記オフセット算出部は、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に前記オフセットの算出を行う際に、前記登録された複数のゾーンを同時に前記対象ゾーンとして、これら対象ゾーンの各々について前記オフセットを算出し、前記オフセット設定部は、前記登録された複数のゾーンの制御量に、それぞれ前記オフセット算出部によって算出された対応するオフセットを同時に加えるように前記コントローラに対して指示することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記目標値設定部と前記一時オフセット設定部と前記干渉強度測定部と前記オフセット算出部と前記オフセット設定部と前記判定部とは、予め登録された複数の前記目標値の各々について処理を行い、前記オフセットをゾーン毎および目標値毎に記憶するように構成された記憶部と、この記憶部に記憶されているオフセットを基に、オフセット調整を行っていない目標値についてオフセットをゾーン毎に線形補間により算出して、前記記憶部に記憶させるように構成された補間部とをさらに備え、前記オフセット設定部は、前記加熱装置の実稼働時または前記冷却装置の実稼働時に、各ゾーンの制御量と同じ値の目標値に対応するオフセットを前記記憶部から取得して前記コントローラに設定することをゾーン毎に行うことを特徴とするものである。
また、本発明のコントローラ調整システムの1構成例において、前記目標値設定部と前記操作量設定部と前記干渉強度測定部と前記オフセット算出部と前記オフセット設定部と前記判定部とは、予め登録された複数の前記目標値の各々について処理を行い、前記オフセットをゾーン毎および目標値毎に記憶するように構成された記憶部と、この記憶部に記憶されているオフセットを基に、オフセット調整を行っていない目標値についてオフセットをゾーン毎に線形補間により算出して、前記記憶部に記憶させるように構成された補間部とをさらに備え、前記オフセット設定部は、前記加熱装置の実稼働時または前記冷却装置の実稼働時に、各ゾーンの制御量と同じ値の目標値に対応するオフセットを前記記憶部から取得して前記コントローラに設定することをゾーン毎に行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のコントローラ調整方法は、ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示する第1のステップと、各ゾーンの中の1つの第1のゾーンの制御量に予め指定された一時オフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する処理を、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行う第2のステップと、前記一時オフセットの印加後に前記第1のゾーン以外の第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量と、前記一時オフセットの印加前に前記第2のゾーンについて温度制御の整定時に前記コントローラから出力される操作量とに基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出する第3のステップと、オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行う第4のステップと、前記対象ゾーンの制御量に前記第4のステップによって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する第5のステップと、所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記第4のステップと前記第5のステップの処理を繰り返し実行させる第6のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のコントローラ調整方法は、ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示する第1のステップと、前記コントローラが出力する操作量を設定する第2のステップと、各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンの制御量のピークの幅および前記第1のゾーンの制御量のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出する第3のステップと、オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行う第4のステップと、前記対象ゾーンの制御量に前記第4のステップによって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する第5のステップと、所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記第4のステップと前記第5のステップの処理を繰り返し実行させる第6のステップとを含み、前記第2のステップは、全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示するステップと、前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行うステップと、前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除するステップとを含むことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のコントローラ調整方法は、ワークを加熱する複数のゾーンのそれぞれに加熱部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される加熱装置、またはワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットとこの電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対し、前記コントローラのオフセットの調整時に前記ワークの表面にゾーン毎に温度センサが固定された状態で、全てのゾーンの目標値を同一の値にするように前記コントローラに対して指示する第1のステップと、前記コントローラが出力する操作量を設定する第2のステップと、各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に前記第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で1つの第1のゾーンの操作量が前記第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に前記第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの前記第1のゾーン以外の第2のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅および前記第1のゾーンに対応する位置にある前記温度センサの測定値のピークの幅に基づいて、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンに与える干渉の強度を、前記第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出する第3のステップと、オフセット調整の対象ゾーンに対応する位置にある前記温度センサの整定時の測定値と前記目標値とに基づいて前記対象ゾーンのオフセットを算出する処理を、前記干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行う第4のステップと、前記対象ゾーンの制御量に前記第4のステップによって算出されたオフセットを加えるように前記コントローラに対して指示する第5のステップと、所定のオフセット調整終了条件が成立するまで前記第4のステップと前記第5のステップの処理を繰り返し実行させる第6のステップとを含み、前記第2のステップは、全てのゾーンの操作量を前記第1の値にするように前記コントローラに対して指示するステップと、前記第1のゾーンの操作量を前記第2の値にした後に前記第3の値にするか、または前記第4の値にした後に前記第5の値にするように前記コントローラに対して指示することを、前記第1のゾーンを変えながら全てのゾーンについて行うステップと、前記干渉の強度の算出が終了した第1のゾーンについて操作量の設定を解除するステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、全てのゾーンの目標値を同一の値にした状態で、第1のゾーンの制御量に一時オフセットを加え、一時オフセットの印加後に第2のゾーンについてコントローラから出力される操作量と、一時オフセットの印加前に第2のゾーンについてコントローラから出力される操作量とに基づいて、第1のゾーンが第2のゾーンに与える干渉の強度を第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出し、対象ゾーンに対応する位置にある温度センサの整定時の測定値と目標値とに基づいて対象ゾーンのオフセットを算出してコントローラに設定する処理を、干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うことにより、ゾーン間の干渉強度を求めることができ、加熱装置の実稼働時または冷却装置の実稼働時にワークの表面温度を均一にすることができる。また、本発明では、制御をした状態で制御量の一時オフセットを加えるので、干渉強度の取得までの期間を短縮することができる。
【0017】
また、本発明では、各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で第1のゾーンの操作量が第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で第1のゾーンの操作量が第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの第2のゾーンの制御量のピークの幅および第1のゾーンの制御量のピークの幅に基づいて、第1のゾーンが第2のゾーンに与える干渉の強度を、第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出し、全てのゾーンの目標値を同一の値に設定して、対象ゾーンに対応する位置にある温度センサの整定時の測定値と目標値とに基づいて対象ゾーンのオフセットを算出してコントローラに設定する処理を、干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うことにより、ゾーン間の干渉強度を求めることができ、加熱装置の実稼働時または冷却装置の実稼働時にワークの表面温度を均一にすることができる。また、本発明では、第1のゾーンの操作量を第2の値/第3の値で切り替え、第1、第2のゾーンの制御量が整定するまで待たずに、制御量の振れ量から干渉強度を算出するので、干渉強度の取得までの期間を短縮することができる。
【0018】
また、本発明では、各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で第1のゾーンの操作量が第1の値よりも大きい第2の値に変更された後に第2の値よりも小さい第3の値に変更されたとき、または各ゾーンの操作量が第1の値に設定されている状態で第1のゾーンの操作量が第1の値よりも小さい第4の値に変更された後に第4の値よりも大きい第5の値に変更されたときの第2のゾーンに対応する位置にある温度センサの測定値のピークの幅および第1のゾーンに対応する位置にある温度センサの測定値のピークの幅に基づいて、第1のゾーンが第2のゾーンに与える干渉の強度を、第1のゾーンを変えながら第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に算出し、全てのゾーンの目標値を同一の値に設定して、対象ゾーンに対応する位置にある温度センサの整定時の測定値と目標値とに基づいて対象ゾーンのオフセットを算出してコントローラに設定する処理を、干渉の強度が大きいゾーンから順に全てのゾーンについて行うことにより、ゾーン間の干渉強度を求めることができ、加熱装置の実稼働時または冷却装置の実稼働時にワークの表面温度を均一にすることができる。また、本発明では、第1のゾーンの操作量を第2の値/第3の値で切り替え、第1、第2のゾーンに対応する位置にある温度センサの測定値が整定するまで待たずに、測定値の振れ量から干渉強度を算出するので、干渉強度の取得までの期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る加熱装置のコントローラ調整システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る加熱装置の電熱ユニットの加熱部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の第1の実施例に係るコントローラ調整システムの調整装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の第1の実施例に係るコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の第2の実施例に係る加熱装置のコントローラ調整システムの構成を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の第2の実施例に係るコントローラ調整システムの調整装置の構成を示すブロック図である。
図7図7は、本発明の第2の実施例に係るコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。
図8図8は、本発明の第2の実施例における干渉強度の測定処理を説明する図である。
図9図9は、加熱装置のゾーンの別の配置例を示す平面図である。
図10図10は、本発明の第3の実施例に係る加熱装置のコントローラ調整システムの構成を示すブロック図である。
図11図11は、本発明の第3の実施例に係るコントローラ調整システムの調整装置の構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例に係るコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。
図13図13は、本発明の第3の実施例に係る調整装置の補間部の補間処理を説明する図である。
図14図14は、本発明の第3の実施例に係る加熱装置の実稼働時におけるコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。
図15図15は、コントローラのオフセット調整方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る加熱装置のコントローラ調整システムの構成を示すブロック図である。n個(nは自然数で、本実施例ではn=9)のゾーンZ1〜Z9のそれぞれにワーク14を加熱する加熱部1−1〜1−9を備えた電熱ユニット2と、電熱ユニット2を加熱部1−1〜1−9毎(ゾーン毎)に制御するコントローラ3とは、加熱装置を構成している。
【0021】
コントローラ調整システムは、ゾーンZ1〜Z9に対応するワーク表面の各領域にそれぞれ温度センサ5−1〜5−9を設けたワークセンサ4と、温度センサ5−1〜5−9から測定値(ワーク表面温度測定値[℃])を取得する測定器6と、測定器6の測定結果を基にコントローラ3のオフセット調整を行う調整装置7とから構成される。
【0022】
図2は電熱ユニット2の加熱部1−1の構成を示すブロック図である。加熱部1−1は、ヒータやペルチェ素子などの電熱体10と、コントローラ3からの操作量に応じて電熱体10に電力を供給する電力調整器や制御用リレーなどの電力制御器11と、電熱体10の温度[℃]を検出する温度センサ12とから構成される。図2の例では、加熱部1−1の構成のみを示しているが、他の加熱部1−2〜1−9の構成も加熱部1−1と同様である。
【0023】
コントローラ3は、電熱ユニット2の加熱部1−1〜1−9の各温度センサ12が計測した制御量(温度)PV1〜PV9がそれぞれ目標値(温度設定値)SP1〜SP9と一致するように操作量MV1〜MV9を算出する。電熱ユニット2の加熱部1−1〜1−9の各電力制御器11は、それぞれ操作量MV1〜MV9に応じた電力を、加熱部1−1〜1−9の電熱体10に供給する。本実施例の加熱装置においては、制御量PV1〜PV9を制御する制御ループがn=9個形成されていることになる。コントローラ3の制御演算アルゴリズムとしては、例えばPIDがある。このようなコントローラ3の温度制御動作は周知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
なお、各加熱部1−1〜1−9の電力制御器11をコントローラ3の内部に設けるようにしてもよい。
【0024】
ワークセンサ4は、ワーク14の表面にゾーンZ1〜Z9毎に温度センサ5−1〜5−9を設けたものである。ワーク14が例えばラミネートコーティングフィルムである場合、ワーク14への温度センサ5−1〜5−9の固定方法としては、例えばテープによる貼り付けがある。なお、ワークセンサ4はコントローラ3の調整時に使用されるもので、加熱装置の実稼働時のワーク14には温度センサ5−1〜5−9を設けないことは言うまでもない。
【0025】
図3は調整装置7の構成を示すブロック図である。調整装置7は、一時オフセット設定部70と、干渉強度測定部71と、オフセット算出部72と、オフセット設定部73と、判定部74と、目標値設定部75と、記憶部76とから構成される。
なお、コントローラ3の処理能力に余裕があれば、調整装置7をコントローラ3の内部に設けるようにしてもよい。
【0026】
図4は本実施例のコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。最初に、調整装置7の目標値設定部75は、全てのゾーンZ1〜Z9の目標値SP[℃]を同一の値にして、一定の目標値SPで温度制御を行うようにコントローラ3に対して指示する(図4ステップS100)。このとき、コントローラ3に設定する目標値SPは、加熱装置の実稼働時にワーク14を加熱処理するときの目標値であることが望ましい。
【0027】
次に、調整装置7の一時オフセット設定部70と干渉強度測定部71とは、加熱装置の各ゾーンZ1〜Z9が他のゾーンに与える温度干渉の強度Cを測定する(図4ステップS101〜S105)。具体的には、一時オフセット設定部70は、各ゾーンZ1〜Z9の制御量(温度)PV1〜PV9が整定している状況で、ゾーンZ1〜Z9の中の1つの第1のゾーンZi(i=1〜n)の制御量PViに予め指定された量の一時オフセットS[℃]を加えるようにコントローラ3に対して指示する(図4ステップS102)。
【0028】
この場合、コントローラ3は、第1のゾーンZiについては、加熱部1−iの温度センサ12が計測した制御量PViに一時オフセットSを加えた値が目標値SPと一致するように操作量MViを算出する。また、コントローラ3は、第1のゾーンZi以外の第2のゾーンZj(j=1〜nで、i≠j)については、加熱部1−jの温度センサ12が計測した制御量PVjが目標値SPと一致するように操作量MVjを算出する。
【0029】
干渉強度測定部71は、一時オフセットSの印加後の温度制御によって第1のゾーンZi以外の第2のゾーンZjの制御量PVjが整定したときの第2のゾーンZjの操作量MVj=Aijと、一時オフセットSの印加前に制御量PVjが整定していたときの第2のゾーンZjの操作量MVj=Bijとに基づいて、第1のゾーンZiが第2のゾーンZjに与える干渉強度Cijを次式のように算出する(図4ステップS103)。
Cij=|(Aij−Bij)/S| ・・・(1)
【0030】
一時オフセット設定部70と干渉強度測定部71とは、このような干渉強度Cijの測定処理を、i=1、すなわちゾーンZ1を第1のゾーンZiとして行う(図4ステップS101〜S103)。そして、一時オフセット設定部70は、この測定の終了後に、各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cijの測定処理が終わったかどうかを判定する(図4ステップS104)。
【0031】
一時オフセット設定部70は、ステップS104においてi<n、すなわち各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cijの測定処理が終わっていない場合には、i=i+1として(図4ステップS105)、ステップS102に戻り、次の第1のゾーンZiについて干渉強度Cijの測定処理を行う。
このとき、一時オフセット設定部70は、干渉強度Cijの測定処理が終わったゾーンについては、このゾーンの制御量PViに加えていた一時オフセットSを0に戻す。
【0032】
こうして、ステップS104においてi=nとなり、各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cijの測定処理が終わるまで、第1のゾーンZiを変えながらステップS102〜S105の処理を繰り返し実行する。例えばゾーンZ1を第1のゾーンZiとする測定では、C12,C13,C14,C15,C16,C17,C18,C19の8つの干渉強度が得られる。また、ゾーンZ2を第1のゾーンZiとする測定では、C21,C23,C24,C25,C26,C27,C28,C29の8つの干渉強度が得られる。
【0033】
ステップS103においてi=nとなり、各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cの測定処理が終わると、調整装置7のオフセット算出部72は、干渉強度測定部71が測定した干渉強度Cが最も大きいゾーンをオフセット調整の対象ゾーンZk(k=1〜n)とし、この対象ゾーンZkの制御量PVkに加えるオフセットGk[℃]を次式のように算出する(図4ステップS106)。
Gk=a×(Wk−SP) ・・・(2)
【0034】
式(2)のaは漸近収束を早めるための所定の係数(a>0)、Wkは対象ゾーンZkに対応する位置にある、ワークセンサ4の温度センサ5−kの整定時の測定値である。調整装置7の記憶部76は、オフセット算出部72が算出したオフセットGをゾーン毎およびオフセット調整の実施回毎に記憶する。
【0035】
調整装置7のオフセット設定部73は、オフセット算出部72が算出したオフセットGkを対象ゾーンZkの制御量PVkに加えるようにコントローラ3に対して指示する(図4ステップS107)。
【0036】
なお、本実施例のオフセット算出部72とオフセット設定部73とによるオフセット調整では、後述のように複数回のオフセット調整を行う場合、直前の調整までのオフセットGを全て維持した状態で更なるオフセット調整を行う。例えば1回目のオフセット調整の場合、オフセット設定部73は、上記のとおりオフセット算出部72が算出したオフセットGkをゾーンZkの制御量PVkに加えるようにコントローラ3に対して指示する(ステップS107)。
【0037】
これにより、コントローラ3は、ゾーンZkについては、加熱部1−kの温度センサ12が計測した制御量PVkにオフセット設定部73から指示されたオフセットGkを加えた値が、目標値SPと一致するように操作量MVkを算出する。また、コントローラ3は、1回目のオフセット調整が未だ済んでいないゾーンZm(m=1〜n)については、加熱部1−mの温度センサ12が計測した制御量PVmが目標値SPと一致するように操作量MVmを算出する。
【0038】
2回目以降のオフセット調整の場合、オフセット設定部73は、オフセット調整の対象ゾーンZkについては、直前までのオフセット調整で得られた当該ゾーンZkのオフセットの値を記憶部76から全て取得し、直前までのオフセット調整で得られた当該ゾーンZkの総計のオフセットにオフセット算出部72が今回算出した最新のオフセットGkを加えた値を、ゾーンZkの制御量PVkに加えるようにコントローラ3に対して指示する(ステップS107)。
【0039】
これにより、コントローラ3は、ゾーンZkについては、加熱部1−kの温度センサ12が計測した制御量PVkにオフセット設定部73から指示されたオフセットを加えた値が、目標値SPと一致するように操作量MVkを算出する。また、コントローラ3は、今回のオフセット調整が未だ済んでいないゾーンZm(m=1〜n)については、加熱部1−mの温度センサ12が計測した制御量PVmに直前のオフセット調整でオフセット設定部73から指示されたオフセットを加えた値が、目標値SPと一致するように操作量MVmを算出する。
【0040】
オフセット算出部72は、全てのゾーンZ1〜Z9についてオフセットの調整処理が終わったかどうかを判定する(図4ステップS108)。オフセット算出部72は、未処理のゾーンが残っている場合には、ステップS106に戻り、次に干渉強度Cが大きいゾーンを対象ゾーンZkとしてオフセットを調整する。
【0041】
こうして、オフセット算出部72とオフセット設定部73とは、干渉強度Cが大きいゾーンから順にコントローラ3のオフセット調整を行う。なお、1つのゾーンについてオフセットを調整すると、他のゾーンの温度センサ5の測定値が変化するので、次に干渉強度Cが大きいゾーンについてオフセットを調整するには、温度センサ5の測定値が整定するまで待つ必要がある。
【0042】
全てのゾーンZ1〜Z9についてコントローラ3のオフセット調整を実行した後(ステップS108においてYES)、調整装置7の判定部74は、オフセット調整終了条件が成立したかどうかを判定する(図4ステップS109)。
オフセット調整終了条件としては、ワークセンサ温度の要求精度と、オフセット調整の回数とがある。
【0043】
具体的には、判定部74は、オフセット調整実行後の各温度センサ5−1〜5−9の整定時の測定値同士の差が所定範囲(例えば±0.1℃)内の場合に、要求精度が実現されており、オフセット調整終了条件が成立していると判定し、各温度センサ5−1〜5−9の測定値同士の差のうち少なくとも1つが所定範囲外の場合に、オフセット調整終了条件が成立していないと判定すればよい。あるいは、判定部74は、オフセット調整の実行回数が所定回数に達した場合にオフセット調整終了条件が成立していると判定し、オフセット調整の実行回数が所定回数に達していない場合にオフセット調整終了条件が成立していないと判定するようにしてもよい。
【0044】
判定部74は、オフセット調整終了条件が成立していない場合(ステップS109においてNO)、ステップS106に戻り、オフセット算出部72とオフセット設定部73とに再度コントローラ3のオフセット調整を実行させる。
こうして、オフセット調整終了条件が成立するまで、ステップS106〜S109の処理を繰り返し実行することで、ワークセンサ4の各温度センサ5−1〜5−9の測定値を漸近的に揃えることができる。
【0045】
上記のとおり、本実施例のオフセット算出部72とオフセット設定部73とによるオフセット調整では、複数回のオフセット調整を行う場合、直前の調整までのオフセットを全て維持した状態で更なるオフセット調整を行う。したがって、例えばゾーンZ1の1回目のオフセットがG1_1で、2回目のオフセット調整を行う場合には、このオフセットG1_1をゾーンZ1の制御量PV1に加えた状態で、ゾーンZ1の2回目のオフセットG1_2を求め、3回目のオフセット調整を行う場合には、このオフセットG1_2と1回目のオフセットG1_1とをゾーンZ1の制御量PV1に加えた状態で、ゾーンZ1の3回目のオフセットG1_3を求めることになる。オフセット調整を3回実行してオフセット調整終了条件が成立したとすれば、ゾーンZ1の制御量PV1に加える最終的なオフセットはG1_1+G1_2+G1_3となる。
【0046】
オフセット調整終了条件が成立した時点で(ステップS109においてYES)、コントローラ調整システムの動作が終了する。コントローラ調整システムによってコントローラ3に設定されたオフセットの値は、加熱装置の実稼働時においてもそのまま維持される。
【0047】
以上のようにして、本実施例では、ゾーン間の干渉強度を求めることができ、加熱装置の実稼働時にワーク14の表面温度を均一にすることができるコントローラ3のオフセット調整を実現できる。
【0048】
また、本実施例では、制御をした状態で制御量PVの一時オフセットSを加えるので、一時オフセットSが加わった後の制御量PVが整定するまでの時間が短くて済む。このため、本実施例では、干渉強度の取得までの期間を短縮することができる。
【0049】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図5は本発明の第2の実施例に係る加熱装置のコントローラ調整システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例のコントローラ調整システムは、ワークセンサ4と、測定器6と、調整装置7aとから構成される。
【0050】
図6は本実施例の調整装置7aの構成を示すブロック図である。調整装置7aは、干渉強度測定部71aと、オフセット算出部72と、オフセット設定部73と、判定部74と、目標値設定部75と、記憶部76と、操作量設定部77とから構成される。
第1の実施例と同様に、コントローラ3の処理能力に余裕があれば、調整装置7aをコントローラ3の内部に設けるようにしてもよい。
【0051】
図7は本実施例のコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。最初に、調整装置7aの目標値設定部75は、全てのゾーンZ1〜Z9の目標値SP[℃]を同一の値にして、一定の目標値SPで温度制御を行うようにコントローラ3に対して指示する(図7ステップS200)。このとき、コントローラ3に設定する目標値SPは、加熱装置の実稼働時にワーク14を加熱処理するときの目標値であることが望ましい。
【0052】
続いて、調整装置7aの操作量設定部77は、全てのゾーンZ1〜Z9の操作量MV1〜MV9を同一の値MVcom(第1の値)にして、一定の操作量MV1〜MV9の出力で温度制御を行うようにコントローラ3に対して指示する(図7ステップS201)。これにより、ステップS200で設定された目標値SPに応じたコントローラ3の制御演算による操作量出力は無効となる。
【0053】
次に、調整装置7aの操作量設定部77と干渉強度測定部71aとは、加熱装置の各ゾーンZ1〜Z9が他のゾーンに与える干渉強度Cを測定する(図7ステップS202〜S208)。具体的には、操作量設定部77は、ゾーンZ1〜Z9の中の1つの第1のゾーンZi(i=1〜nで、本実施例ではn=9)の操作量MViを予め指定された第2の値HIGHにするようにコントローラ3に対して指示する(図7ステップS203)。続いて、操作量設定部77は、第1のゾーンZiの操作量MViをHIGHにした後に、第1のゾーンZiの制御量PViが予め指定された第1の閾値TH1を上昇通過したタイミングで、第1のゾーンZiの操作量MViを予め指定された第3の値LOW(LOW<HIGH)にするようにコントローラ3に対して指示する(図7ステップS204)。
【0054】
なお、第1のゾーンZiの操作量MViをHIGHにしてから所定時間後にLOWにするようにしてもよい。操作量MVi=LOWは他のゾーンの操作量MVcomよりも低い値である。操作量MVi=HIGHは他のゾーンの操作量MVcomよりも高い値とする必要がある。
【0055】
干渉強度測定部71aは、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=HIGHに変更された後にMVi=LOWに変更されたときの第1のゾーンZi以外の第2のゾーンZj(j=1〜nで、i≠j)の制御量PVjのピークの上昇幅(MVi=HIGHに変更される前の制御量PVjに対する上昇幅)Pijと、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=HIGHに変更された後にMVi=LOWに変更されたときの第1のゾーンZiの制御量PViのピークの上昇幅(MVi=HIGHに変更される前の制御量PViに対する上昇幅)Piiとに基づいて、第1のゾーンZiが第2のゾーンZjに与える干渉強度Cijを次式のように算出する(図7ステップS205)。
Cij=Pij/Pii ・・・(3)
【0056】
そして、操作量設定部77は、干渉強度Cijの算出が終了した第1のゾーンZiについて操作量MViの設定を解除するようにコントローラ3に対して指示する(図7ステップS206)。具体的には、操作量設定部77は、第1のゾーンZiの制御量PViが予め指定された第2の閾値TH2(TH2<TH1)を下降通過したタイミングで、第1のゾーンZiについて操作量MViの設定を解除するようにコントローラ3に対して指示する。これにより、このゾーンの操作量MVは制御演算に基づく操作量となる。すなわち、コントローラ3は、操作量MVの設定が解除されたゾーンの制御量PVがステップS200で設定された目標値SPと一致するように操作量MVを算出する。
【0057】
操作量設定部77と干渉強度測定部71aとは、このような干渉強度Cijの測定処理を、i=1、すなわちゾーンZ1を第1のゾーンZiとして行う(図7ステップS202〜S206)。そして、操作量設定部77は、この測定の終了後に、各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cijの測定処理が終わったかどうかを判定する(図7ステップS207)。
【0058】
操作量設定部77は、ステップS207においてi<n、すなわち各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cijの測定処理が終わっていない場合には、i=i+1として(図7ステップS208)、ステップS203に戻り、次の第1のゾーンZiについて干渉強度Cijの測定処理を行う。
【0059】
こうして、ステップS207においてi=nとなり、各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cijの測定処理が終わるまで、第1のゾーンZiを変えながらステップS203〜S206の処理を繰り返し実行する。図8は以上の干渉強度Cの測定処理を説明する図である。図8の例では、時刻t1において第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=HIGHに変更され、時刻t2においてMVi=LOWに変更され、さらに時刻t3において操作量MViの設定が解除されている。
【0060】
なお、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=HIGHに変更された後にMVi=LOWに変更されたときの第2のゾーンZjに対応する位置にある、ワークセンサ4の温度センサ5−jの測定値Wjのピークの上昇幅(MVi=HIGHに変更される前の測定値Wjに対する上昇幅)をPijとし、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=HIGHに変更された後にMVi=LOWに変更されたときの第1のゾーンZiに対応する位置にある、ワークセンサ4の温度センサ5−iの測定値Wiのピークの上昇幅(MVi=HIGHに変更される前の測定値Wiに対する上昇幅)をPiiとして、式(3)の干渉強度Cijの算出を行ってもよい。
【0061】
ステップS207においてi=nとなり、各ゾーンZ1〜Z9を第1のゾーンZiとする干渉強度Cの測定処理が終わると、各ゾーンZ1〜Z9の操作量MV1〜MV9をMVcomに固定した状態が全て解除されることになる。上記のとおり、コントローラ3は、電熱ユニット2の加熱部1−1〜1−9の各温度センサ12が計測した制御量PV1〜PV9がそれぞれ目標値SPと一致するように操作量MV1〜MV9を算出する。
【0062】
図7のステップS209〜S212のオフセット調整処理は、第1の実施例のステップS106〜S109の処理と同じなので、説明は省略する。
こうして、本実施例では、第1の実施例と同様の効果を得ることができる。また、第1のゾーンZiの操作量MViをHIGH/LOWで切り替える動作は、リミットサイクル法によるコントローラ3のオートチューニング動作と同様である。したがって、本実施例では、汎用のコントローラを利用できるため、システム構築が容易であり、汎用のコントローラを用いる加熱装置に本実施例を容易に適用することができる。
【0063】
また、本実施例では、第1のゾーンZiの操作量MViをHIGH/LOWで切り替え、制御量PVi,PVjや温度センサ5−i,5−jの測定値Wi,Wjが整定するまで待たずに、制御量PVi,PVjや測定値Wi,Wjの振れ量から干渉強度を算出するので、干渉強度の取得までの期間を短縮することができる。
【0064】
なお、第1、第2の実施例において、加熱装置のゾーンZ1〜Z6が図9に示すような平面配置になっている場合、ゾーンZ2〜Z5はゾーンZ1やゾーンZ6に対して対称に配置されている。この場合、ゾーンZ1〜Z5の加熱部1−1〜1−5の各電熱体10の電熱能力が同程度な場合には、ゾーンZ1〜Z5のそれぞれが他のゾーンに与える干渉の強度も同程度と考えられる。
【0065】
そこで、第1の実施例の一時オフセット設定部70は、ゾーンZ1〜Z5の制御量PV1〜PV5に加える一時オフセットSを同一の値とし、ゾーンZ1〜Z5を第1のゾーンとして、ステップS102の処理をゾーンZ1〜Z5について一度に行うようにしてもよい。第1の実施例で説明したとおり、干渉強度測定部71は第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に干渉強度Cを算出するが、一度のステップS103の処理でゾーンZ1〜Z5を第1のゾーンとしたときの干渉強度Cを算出できることになる。
【0066】
一時オフセット設定部70と干渉強度測定部71とオフセット算出部72とオフセット設定部73には、処理を同時に行うゾーンZ1〜Z5の番号を予め登録しておけばよい。オフセット算出部72とオフセット設定部73とは、干渉強度Cが大きいゾーンから順にステップS106,S107の処理を行うが、予め登録されたゾーンZ1〜Z5のうちいずれかがオフセット調整の対象ゾーンとなった時点で、ステップS106,S107の処理をゾーンZ1〜Z5について一度に行うようにすればよい。こうして、干渉強度の算出とオフセット調整に要する処理時間を短縮することができる。
【0067】
また、第2の実施例の操作量設定部77は、ゾーンZ1〜Z5を第1のゾーンとして、ステップS203〜S206の処理をゾーンZ1〜Z5について一度に行うようにしてもよい。この場合、ゾーンZ1〜Z5の操作量MV1〜MV5のHIGH/LOW切り替えのタイミングを揃える必要があるので、ゾーンZ1〜Z5の操作量MV1〜MV5をHIGHにしてから所定時間後にLOWにすればよい。また、ゾーンZ1〜Z5の操作量MV1〜MV5をHIGHにしてから、ゾーンZ1〜Z5の制御量PV1〜PV5のうちいずれか1つが第1の閾値TH1を上昇通過したタイミングで、ゾーンZ1〜Z5の操作量MV1〜MV5をLOWにしてもよい。第2の実施例で説明したとおり、干渉強度測定部71aは第1のゾーン毎および第2のゾーン毎に干渉強度Cを算出するが、一度のステップS205の処理でゾーンZ1〜Z5を第1のゾーンとしたときの干渉強度Cを算出できることになる。そして、操作量設定部77は、ゾーンZ1〜Z5の制御量PV1〜PV5のうちいずれか1つが第2の閾値TH2を下降通過したタイミングで、ゾーンZ1〜Z5について操作量MV1〜MV5の設定を解除すればよい(ステップS206)。
【0068】
操作量設定部77と干渉強度測定部71aとオフセット算出部72とオフセット設定部73には、処理を同時に行うゾーンZ1〜Z5の番号を予め登録しておけばよい。オフセット算出部72とオフセット設定部73とは、干渉強度Cが大きいゾーンから順にステップS209,S210の処理を行うが、予め登録されたゾーンZ1〜Z5のうちいずれかがオフセット調整の対象ゾーンとなった時点で、ステップS209,S210の処理をゾーンZ1〜Z5について一度に行うようにすればよい。こうして、干渉強度の算出とオフセット調整に要する処理時間を短縮することができる。
【0069】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第1、第2の実施例では、目標値SPが1つの値で、オフセット調整の結果が加熱装置の実稼働時にそのまま反映される場合について説明したが、加熱装置では、ワーク14の加熱処理の最中に目標値SPを変更することがあるので、複数の目標値SPのそれぞれについてオフセットを調整できるようにすることが好ましい。しかしながら、複数の目標値SPのそれぞれについてオフセットを調整すると、オフセット調整に時間がかかるという問題がある。そこで、このような場合に処理時間を短縮する例について説明する。
【0070】
図10は本実施例に係る加熱装置のコントローラ調整システムの構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例のコントローラ調整システムは、ワークセンサ4と、測定器6と、調整装置7bとから構成される。
【0071】
図11は本実施例の調整装置7bの構成を示すブロック図である。調整装置7bは、一時オフセット設定部70と、干渉強度測定部71と、オフセット算出部72と、オフセット設定部73bと、判定部74と、目標値設定部75と、記憶部76bと、補間部78とから構成される。
【0072】
図12は本実施例のコントローラ調整システムの動作を説明するフローチャートである。まず、図12のステップS300のオフセット調整処理は、第1の実施例の図4で説明した処理と同様である。調整装置7bの目標値設定部75が、予め登録された複数の目標値SPを順次設定することにより、図4の処理(ステップS300)が目標値SP毎に行われる。
【0073】
本実施例の調整装置7bの記憶部76bは、第1の実施例の記憶部76と同様に、オフセット算出部72が算出したオフセットGをゾーン毎およびオフセット調整の実施回毎に記憶する。ただし、本実施例では、目標値SP毎にオフセット調整を行うため、目標値SP毎にオフセットを記憶することが必要となる。すなわち、記憶部76bは、オフセット算出部72が算出したオフセットGをゾーン毎、オフセット調整の実施回毎、および目標値SP毎に記憶する。
【0074】
本実施例の調整装置7bのオフセット設定部73bは、第1の実施例で説明したオフセット設定部73の機能に加えて、加熱装置の実稼働時に目標値SPに応じたオフセットGをコントローラ3に設定する機能を備えている。
【0075】
予め登録された複数の目標値SPについてステップS300のオフセット調整処理が終了した後(図12ステップS301においてYES)、調整装置7bの補間部78は、記憶部76bに記憶されているオフセットGを基に、オフセット調整を行っていない目標値SPについてオフセットGをゾーン毎に線形補間により算出する(図12ステップS302)。
【0076】
図13は補間部78の補間処理を説明する図である。例えば予め登録された目標値SP=90℃、150℃の2点についてオフセット調整を行った結果として、目標値SP=90℃のときに、あるゾーンの総計のオフセットG=G_90、目標値SP=150℃のときに、同ゾーンの総計のオフセットG=G_150という結果が得られたとする。補間部78は、加熱装置の実稼働時に目標値SPとして90℃、150℃の他に、SP=120℃を用いる場合、SP=120℃のときのオフセットG_120を線形補間で求める。このような補間処理をゾーン毎およびオフセット調整の実施回毎に行えばよい。補間処理でオフセットを導出すべき目標値SPについては予め補間部78に設定しておけばよい。
【0077】
記憶部76bは、補間部78の補間結果をゾーン毎、オフセット調整の実施回毎、および目標値SP毎に記憶する。なお、本実施例では、補間処理を行うために、2点以上の目標値SPでステップS300のオフセット調整処理を行う必要がある。
【0078】
加熱装置の実稼働時には、調整装置7bのオフセット設定部73bは、各ゾーンの制御量PVと同じ値の目標値SPに対応するオフセットGを記憶部76bから全て取得する。そして、オフセット設定部73bは、設定対象のゾーンの総計のオフセットGを当該ゾーンの制御量PVに加えるようにコントローラ3に対して指示することを、ゾーン毎に行う(図14ステップS400)。
【0079】
こうして、コントローラ3による温度制御が終了するまで(図14ステップS401においてYES)、図14の処理が行われる。
本実施例によれば、制御中に変化する制御量PVの時々刻々に適応したオフセット調整が可能となり、ワーク14の高精度な温度制御が可能になると共に、複数の制御量PV(目標値SP)についてのオフセット調整に要する処理時間を短縮することができる。
【0080】
上記の説明では、本実施例を第1の実施例に適用した場合について説明しているが、第2の実施例に適用してもよい。第2の実施例に適用する場合には、オフセット設定部73bと記憶部76bと補間部78とを、第2の実施例の調整装置7に設けるようにすればよい。この場合、図12のステップS300のオフセット調整処理は、第2の実施例の図7で説明した処理と同様である。目標値設定部75が、予め登録された複数の目標値SPを順次設定することにより、図7の処理(ステップS300)が目標値SP毎に行われる。
【0081】
第1〜第3の実施例では、加熱装置に適用する場合について説明しているが、ワークを冷却する複数のゾーンのそれぞれに冷却部を備えた電熱ユニットと、この電熱ユニットをゾーン毎に制御するコントローラとから構成される冷却装置に対して、第1〜第3の実施例を適用するようにしてもよい。
【0082】
第1〜第3の実施例を冷却装置に適用する場合、電熱ユニット2のゾーンZ1〜Z9毎の加熱部1−1〜1−9を、ゾーンZ1〜Z9毎の冷却部に置き換えるようにすれば、第1〜第3の実施例の電熱ユニット2の説明を冷却装置の電熱ユニットに適用することができる。各冷却部の構成は、図2に示した電熱体10として、例えばペルチェ素子などを使用すればよい。
【0083】
第2の実施例を冷却装置に適用する場合、操作量設定部77は、第1のゾーンZiの操作量MViを第4の値LOWにするようにコントローラ3に対して指示し(図7ステップS203に相当)、操作量MViをLOWにした後に、第1のゾーンZiの制御量PViが予め指定された第3の閾値TH3を下降通過したタイミングで、第1のゾーンZiの操作量MViを第5の値HIGHにするようにコントローラ3に対して指示すればよい(図7ステップS204に相当)。上記のように予め登録された複数のゾーンZ1〜Z5を同時に第1のゾーンとする場合には、ゾーンZ1〜Z5の操作量MV1〜MV5をLOWにしてから、ゾーンZ1〜Z5の制御量PV1〜PV5のうちいずれか1つが第3の閾値TH3を下降通過したタイミングで、ゾーンZ1〜Z5の操作量MV1〜MV5をHIGHにすればよい。また、第1のゾーンZiの操作量MViをLOWにしてから所定時間後にHIGHにするようにしてもよい。
【0084】
第2の実施例を冷却装置に適用する場合、干渉強度測定部71aは、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=LOWに変更された後にMVi=HIGHに変更されたときの第2のゾーンZjの制御量PVjのピークの下降幅(MVi=LOWに変更される前の制御量PVjに対する下降幅)をPij、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=LOWに変更された後にMVi=HIGHに変更されたときの第1のゾーンZiの制御量PViのピークの下降幅(MVi=LOWに変更される前の制御量PViに対する下降幅)をPiiとして、式(3)の干渉強度Cijの算出を行えばよい(図7ステップS205に相当)。
【0085】
また、第2の実施例を冷却装置に適用する場合、干渉強度測定部71aは、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=LOWに変更された後にMVi=HIGHに変更されたときの第2のゾーンZjに対応する位置にある、ワークセンサ4の温度センサ5−jの測定値Wjのピークの下降幅(MVi=LOWに変更される前の測定値Wjに対する下降幅)をPijとし、第1のゾーンZiの操作量MViがMVi=LOWに変更された後にMVi=HIGHに変更されたときの第1のゾーンZiに対応する位置にある、ワークセンサ4の温度センサ5−iの測定値Wiのピークの下降幅(MVi=LOWに変更される前の測定値Wiに対する下降幅)をPiiとして、式(3)の干渉強度Cijの算出を行ってもよい。
【0086】
そして、第2の実施例を冷却装置に適用する場合、操作量設定部77は、第1のゾーンZiの制御量PViが予め指定された第4の閾値TH4(TH3<TH4)を上昇通過したタイミングで、第1のゾーンZiについて操作量MViの設定を解除するようにコントローラ3に対して指示すればよい(図7ステップ206に相当)。上記のように予め登録された複数のゾーンZ1〜Z5を同時に第1のゾーンとする場合には、ゾーンZ1〜Z5の制御量PV1〜PV5のうちいずれか1つが第4の閾値TH4を上昇通過したタイミングで、ゾーンZ1〜Z5について操作量MV1〜MV5の設定を解除すればよい。その他の構成は加熱装置に適用する場合と同じである。
【0087】
第1〜第3の実施例で説明した調整装置7,7a,7bは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータにおいて、本発明の調整方法を実現させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供され、記憶装置に格納される。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、多入出力制御系におけるコントローラを調整する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1−1〜1−9…加熱部、2…電熱ユニット、3…コントローラ、4…ワークセンサ、5−1〜5−9,12…温度センサ、6…測定器、7,7a,7b…調整装置、10…電熱体、11…電力制御器、14…ワーク、70…一時オフセット設定部、71,71a…干渉強度測定部、72…オフセット算出部、73,73b…オフセット設定部、74…判定部、75…目標値設定部、76,76b…記憶部、77…操作量設定部、78…補間部。
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