(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記状態判定部は、上記解析対象画像に映る(A)上記容器の位置、(B)上記容器に供給された蒸着材料の湯面位置、および、(C)上記容器における、ビーム出射源から出射された電子ビームの照射位置のいずれかを解析対象として解析することにより上記蒸着装置の状態を判定するものであり、
上記撮像部は、上記解析対象に応じて設定された上記撮像感度および上記シャッター速度で撮像を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の監視装置。
上記状態判定部は、上記解析対象画像に映る(A)上記容器の位置、(B)上記容器に供給された蒸着材料の湯面位置、および、(C)上記容器における、ビーム出射源から出射された電子ビームの照射位置のいずれかを解析対象として解析することにより上記蒸着装置の状態を判定するものであり、
上記画像選択部は、上記解析対象に応じて、上記(a)から(d)の基準画像群のうちの少なくとも1つから、上記解析対象画像を選択するときに用いる基準画像を選択することを特徴とする請求項5に記載の監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の一実施態様について、
図1〜
図13を用いて以下に詳細に説明する。
【0012】
≪監視システムの構成≫
まず、
図2〜
図4を用いて、本実施形態に係る監視システムの一例について説明する。
図2は、本実施形態に係る監視システムの一例を示す図である。
図3は、蒸着装置2が備えるターレット25の構成の一例を示す図である。
図4は、ハースライナー24およびその周辺の概略的な断面図である。なお、
図4は、ハースライナー24が正常な位置にあるときの断面図である。
【0013】
なお、蒸着装置が備える、蒸着材料を保持するための容器としては、例えば坩堝が挙げられる。また、坩堝の内壁にハースライナーが設けられている場合には、上記容器としては、例えばハースライナーが挙げられる。本実施形態では、上記容器がハースライナーである場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図2に示すように、本実施形態に係る監視システムは、監視装置1、蒸着装置2および材料供給装置3を備えている。蒸着装置2は、基板100に蒸着材料MAを蒸着させることにより基板100への成膜を行う装置である。監視装置1は、この蒸着装置2を監視する装置である。また、材料供給装置3は、蒸着装置2が備えるハースライナー24に蒸着材料MAを供給する装置である。蒸着材料MAとしては、例えばアルミワイヤー材等が挙げられるが、これに限らず、蒸着装置2が基板100に成膜を行う種々の材料(例えば金属材料)であってよい。以下では、監視装置1および蒸着装置2の構成をより具体的に説明する。まず、蒸着装置2について説明する。
【0015】
<蒸着装置2>
蒸着装置2は、電子ビーム源(EB(Electron Beam)源)21、ビーム偏向用磁石22、ポールピース23、ハースライナー24、ターレット25、ターレット回転部26、および基板回転部27を備えている。
【0016】
電子ビーム源21は、蒸着装置2が備える制御部(不図示)の制御を受けて、ハースライナー24に供給された(保持された)蒸着材料MAに対して電子ビームEBを出射するビーム出射源である。また、電子ビーム源21は、光子と、電子ビームEBを構成する熱電子とを放出可能なフィラメントを含む。フィラメントに電流とともに加速電圧が印加されることにより、電子ビーム源21は、放出された熱電子を電子ビームEBとして、電子ビーム源21の前方に出射する。
【0017】
また、フィラメントに電流を印加するが、加速電圧を印加しないようにすることにより、フィラメントは光子のみ放出する。この場合、電子ビーム源21は、その周囲を照明する照明光源(白熱灯)として機能する。撮像部11(後述)が撮像するタイミングで電子ビーム源21を照明光源として機能させることにより、撮像のための照明光源を別途設置する必要がない。また、照明光源を別途設置する場合、撮像部11の近傍に設けられることが多い。この場合、ハレーションが生じてしまい、ハースライナー24およびターレット25を鮮明に撮像することができない可能性がある。上記のように、照明光源として電子ビーム源21を用いることにより、ハレーションの発生を防ぎ、ハースライナー24およびターレット25を鮮明に撮像することが可能となる。なお、電子ビーム源21とは別に照明光源を上記ハレーションが生じないような位置に設置してもよい。
【0018】
ビーム偏向用磁石22およびポールピース23は、電子ビーム源21から出射された電子ビームEBの進路を変更する進路変更部である。具体的には、ビーム偏向用磁石22およびポールピース23は、上記制御部の制御を受けて、発生させる磁力を変更することにより、電子ビームEBの進路を変更する。これにより、電子ビームEBは、電子ビーム源21から略円弧の軌跡を描いて、ハースライナー24内の蒸着材料MAに照射される。また、その照射位置は、成膜レートが最大となる位置、すなわちハースライナー24内の蒸着材料MAの湯面(表面)の中心に照射されるように制御される。
【0019】
ハースライナー24は、材料供給装置3により供給された蒸着材料MAを保持するためのるつぼである。ハースライナー24は、ターレット回転部26の駆動により、その位置が変更される。材料供給装置3の近傍(材料供給位置)において、ハースライナー24に蒸着材料MAが供給される。また、基板100と対向する位置(蒸着位置)において、ハースライナー24内の蒸着材料MAは、電子ビーム源21から出射された電子ビームEBを受けて、溶解されるともに蒸発する。そして、蒸発した蒸着材料MAが基板100に蒸着(付着)することで、基板100への蒸着材料MAの成膜が行われる。
【0020】
ターレット25は、ハースライナー24が複数設けられた基台である。本実施形態では、
図3に示すように、その周囲に6つのハースライナー24が設けられている。ターレット25がターレット回転部26の駆動によって回転軸AXの周りを回転することにより、ハースライナー24を上記材料供給位置と上記蒸着位置との間で移動させることができる。そのため、蒸着位置にあるハースライナー24Aに供給された蒸着材料MAを蒸発させることにより基板100への成膜を行うとともに、材料供給位置にある別のハースライナー24Bに蒸着材料MAを供給することができる。すなわち、ハースライナー24への蒸着材料MAの供給と、基板100への蒸着材料MAの蒸着とを、連続的に行うことができる。
【0021】
また、
図4に示すように、ハースライナー24は、ターレット25に対して、断熱材(リフレクター)30を介して設けられている。断熱材30は、ハースライナー24に供給された蒸着材料MAの保温性を高めるものである。断熱材30により、当該蒸着材料MAを効率良く溶解することができる。また、断熱材30により、ハースライナー24をターレット25に対して位置決めすることができる。
【0022】
ターレット回転部26は、ターレット25の略中心に接続され、ターレット25を回転軸AXの周りに回転させるものである。また、基板回転部27は、成膜対象となる基板100がその略中心に取り付けられることにより、成膜中の基板100を回転させる。ターレット回転部26および基板回転部27は、上記制御部によってその駆動が制御される。
【0023】
<監視装置1>
次に、
図1、
図2、
図4〜
図11を用いて、監視装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係る監視装置1の具体的な構成の一例を示すブロック図である。
図5は、基準画像DB141に登録されている基準画像群の一例を示す図であり、(a)はハースライナー24の使用状態が異なる複数の基準画像を含む基準画像群の一例を示し、(b)は湯面位置が異なる複数の基準画像を含む基準画像群の一例を示し、(c)は所定範囲内においてハースライナー24の傾きが異なる複数の基準画像を含む基準画像群の一例を示し、(d)は電子ビームEBの照射位置が異なる複数の基準画像を含む基準画像群の一例を示す。
図6は、ハースライナー24の位置の判定処理について説明するための図である。
図7は、湯面位置の判定処理について説明するための図である。
図8は、照射位置の判定処理について説明するための図である。
図9〜
図11は、撮像された複数の画像の一例を示すである。
【0024】
監視装置1は、撮像部11が撮像したハースライナー24の画像を解析することにより、蒸着装置2の状態が正常な状態であるか否かを監視するものである。
図1に示すように、監視装置1は、制御部10、撮像部11(
図2にも図示)、報知部13および記憶部14を備える。また、
図2に示すように、監視装置1は、カメラシャッタ12を備える。
【0025】
(撮像部)
撮像部11は、撮像制御部15(後述)の制御により、電子ビームEBが照射される蒸着材料MAを保持するためのハースライナー24(具体的には、ハースライナー24、およびその周辺領域)を被写体とし、複数回撮像するものである。
【0026】
複数回撮像することで、1回の撮像で取得した画像(撮像画像)を解析対象画像とする場合に比べ、その選択の幅を広げることができる。そのため、ハースライナー24(およびその周辺)の鮮明な画像を解析対象画像とする可能性を高めることができるので、蒸着装置2の状態を精度良く判定することができる。
【0027】
監視装置1は、(A)ハースライナー24の位置、(B)ハースライナー24に供給された蒸着材料MAの湯面位置、および(C)ハースライナー24における、電子ビーム源21から出射された電子ビームEBの照射位置、を監視対象とする。換言すれば、監視装置1では、後述の状態判定部17が、解析対象画像に映る上記(A)、(B)、および(C)を解析対象として解析することにより、蒸着装置2の状態が正常な状態であるのか否かを判定する。具体的には、状態判定部17は、解析対象画像に映る各位置を解析することで、各位置が正常な位置(基準位置)にあるのか否かを判定する。
【0028】
ここで、上記解析対象画像とは、撮像部11が撮像した画像であって、上記(A)〜(C)の各監視において、上記各位置が正常な位置にあるか否かを判定するために解析される画像である。また、上記正常な位置(基準位置)とは、上記(A)においては、ハースライナー24の開口部を含む仮想的な表面が、ターレット25の表面に対してほとんど傾いていない状態(所定範囲内の傾きを有する状態)を指す。上記(B)においては、蒸着装置2における基板100への蒸着処理において支障がない程度に、ハースライナー24に蒸着材料MAが供給されているときの、蒸着材料MAの湯面位置である。上記(C)においては、ハースライナー24内の蒸着材料MAの湯面の重心となる。
【0029】
本実施形態では、撮像部11は、上記(A)〜(C)のそれぞれの監視において、連続して複数回撮像する。換言すれば、複数回の撮像が、上記(A)〜(C)の3回の監視のそれぞれにおいて行われる。これにより、上記(A)〜(C)の各監視において、明るさが異なるハースライナー24が映る画像を複数取得することができる。但し、各監視において複数の画像を取得することを考慮しなければ、1回の蒸着処理において、連続した複数回の撮像が1回行われるだけであってもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、監視装置1は、上記(A)〜(C)を監視対象(解析対象)とするが、上記(A)〜(C)の少なくともいずれかを監視対象としてもよい。
【0031】
また、撮像部11は、ハースライナー24を撮像する毎に撮像感度およびシャッター速度の少なくともいずれかを変更する。撮像感度は、撮像時における所定時間あたりの光を取り込む量(能力)を規定するものである。シャッター速度は、撮像時の集光時間を規定するものである。撮像感度およびシャッター速度のいずれか一方を変更することで、明るさが異なる画像を取得することができる。一般に、撮像感度が低いほど、シャッター速度が大きいほど、暗い画像となる。
【0032】
例えば1枚の画像のみを撮像した場合に、その画像が明るすぎた(または暗すぎた)場合には、当該画像において、ハースライナー24または蒸着材料MAを特定することが困難となる可能性がある。明るさが異なる複数の画像を取得することで、明るさが抑制された画像(または明るさが強調された画像)を取得することができる。この場合、当該画像を解析することで、ハースライナー24または蒸着材料MAを特定できる可能性が高まる。
【0033】
撮像感度およびシャッター速度は、それぞれ複数設けられている。撮像感度およびシャッター速度は、実験等により、基準画像との対比が比較的行いやすいコントラストを有するハースライナー24の画像を取得できる可能性が比較的高いと推定される範囲で設定されている。また、撮像感度およびシャッター速度は、互いの相関を考慮して設定されている。なお、基準画像とは、撮像部11によって予め撮像され、記憶部14の基準画像DB(Database)141(後述)に登録されたハースライナー24の撮像結果を示す画像である。
【0034】
本実施形態では、撮像感度は、「1」、「1.5」、「2」、…、「7」、「7.5」および「8」の16段階に設定されている。「1」はISO感度の100に相当する。撮像感度が1上がると、所定時間あたりの光の取り込み量は2倍となる。つまり、撮像感度が0.5上がると、上記取り込み量は√2倍となる。また、シャッター速度は、「1/60」、「1/120」および「1/240」の3段階に設定されている。これらの設定値および設定数は、あくまで一例である。
【0035】
また、撮像感度およびシャッター速度は、上記(A)〜(C)の各監視に応じて設定されていてよい。この場合、撮像部11は、撮像制御部15の制御を受けて、上記(A)〜(C)の各監視において、当該各監視に応じて設定された撮像感度およびシャッター速度で、ハースライナー24を撮像する。
【0036】
また、上記(A)〜(C)の各監視において、撮像部11が複数の画像の撮像を開始してから終了するまでの期間において、当該画像を撮像しない所定期間が設けられていてもよい。所定期間は、実験等により上記(A)〜(C)の監視のそれぞれにおいて適した値が設定されている。例えば、所定期間の始期は、撮像開始から所定枚数撮像完了時(例:4枚撮像完了時)と規定され、所定期間は、当該撮像完了時から数秒間(例:10秒間)と規定される。撮像制御部15は、上記(A)〜(C)の各監視に応じて、所定期間撮像を行わないように、撮像部11を制御する。
【0037】
このように、撮像感度、シャッター速度または撮像タイミングを適宜変更して複数の画像を撮像することで、明るさが異なるハースライナー24(ハースライナー24に含まれる蒸着材料MA、または電子ビームEBが照射された蒸着材料MA)が映る複数の画像を取得することが可能となる。
【0038】
なお、撮像部11が撮像設定を変更して撮像した複数の画像の一例については、後述する。
【0039】
また、撮像部11としては、CCDカメラ等が挙げられる。撮像部11は、正常な位置にあるときのハースライナー24の開口面の中心を通る垂線(中心線CL)から所定の角度αを有した位置に配置されている。この位置から撮像することにより、監視装置1は、撮像部11が撮像したハースライナー24の画像において、ハースライナー24の様々な方向への傾き量を算出することが可能となる。
【0040】
(カメラシャッタ)
カメラシャッタ12は、撮像制御部15の制御により、撮像部11がハースライナー24を撮像するタイミングで、撮像部11の前方を開放状態とするが、それ以外のときには閉鎖状態とする。この制御により、撮像する以外の時間帯において、飛散した蒸着材料MAが撮像部11のレンズ(不図示)に付着することを防止することができる。また、撮像部11のレンズ前方には、当該防止の目的でガラス板が接着されていてもよい。
【0041】
(報知部)
報知部13は、上記監視システムを利用する作業者に対して各種報知を行うものである。報知部13は、例えば、状態判定部17の制御を受けて、ハースライナー24の位置、ハースライナー24における蒸着材料MAの湯面位置、または当該蒸着材料MAにおける電子ビームEBの照射位置がそれぞれ正常な位置から外れている場合に、警告を発する。報知部13は、例えば、各種報知を音にて出力するスピーカー、および/または、各種報知を画像にて出力する表示装置で実現される。
【0042】
(記憶部)
記憶部14は、例えば、制御部10が実行する各種の制御プログラム等を記憶するものであり、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置によって構成される。記憶部14には、例えば、(1)監視処理の工程を示す監視プログラム、(2)撮像部11が撮像した画像を示すデータ、(3)撮像された画像との比較対象となる基準画像を示すデータ、(4)撮像設定を示すデータ、(5)制御部10での判定処理に用いられる各種閾値(所定の範囲を規定する値)が格納されている。撮像設定としては、上記(A)〜(C)の各監視における撮像部11の撮像位置、撮像感度、シャッター速度、および撮像タイミング等が挙げられる。また、記憶部14は、基準画像を登録(記憶)可能な基準画像DB141を備えている。
【0043】
(基準画像例)
本実施形態では、基準画像が複数登録されている。基準画像としては、少なくとも複数の画像から解析対象画像を選択するのに適した画像が設けられている必要がある。基準画像としては、例えば、ハースライナー24の輪郭部分、蒸着材料MAの湯面位置(ハースライナー24の内壁と湯面との境界部分)、または湯面に照射された電子ビームEBが鮮明に映る画像が設けられる。または、基準画像を解析(加工)することにより、上記輪郭部分、境界部分または電子ビームEBの位置を推定可能な画像が、基準画像として設けられる。この場合、推定された上記輪郭部分、境界部分または電子ビームEBの位置が基準画像と対応付けられて、記憶部14に記憶されている。
【0044】
本実施形態では、複数の基準画像として、例えば、上記(A)〜(C)の各監視に対してそれぞれ1つの基準画像が、基準画像DB141に登録されている。上記(A)の場合、後述のように、撮像された画像に映るハースライナー24の輪郭部分に基づき、ハースライナー24の位置が監視される。そのため、基準画像には、上記輪郭部分が鮮明に映っていることが好ましく、例えば、新品のハースライナー24が映る画像が基準画像として設けられている。また、上記(B)または(C)の場合には、撮像された画像に映る上記境界部分または照射位置に基づき、上記湯面位置または照射位置が監視される。そのため、例えば、上記境界部分または照射位置が鮮明に映る画像が基準画像として設けられている。
【0045】
このように、基準画像として、上記(A)〜(C)の各監視に応じたものが設定されている場合、基準画像との対比の結果選択された解析対象画像において、上記輪郭部分、境界部分または照射位置の特定が容易となる可能性が高まる。
【0046】
また、複数の基準画像として、例えば、
(a)ハースライナー24の使用状態が互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、
(b)ハースライナー24に供給された蒸着材料MAの湯面位置が互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、
(c)所定基準面に対するハースライナー24の所定範囲における傾きが互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、および、
(d)電子ビーム源21から出射された電子ビームEBの、ハースライナー24における照射位置が互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、
が、基準画像DB141に登録されていてもよい。上記(a)〜(d)の基準画像群の一例が、
図5に示されている。なお、各基準画像は、例えば、ハースライナー24(および蒸着材料MA)が赤熱している状態のものであってもよい。
【0047】
図5の(a)には、上記(a)に対応する基準画像群が示されている。この例では、ハースライナー24の使用状態として、ハースライナー24をほとんど使用していない状態(新品)、ハースライナー24の内壁に蒸着材料MAが付着した状態(新中古)、および、蒸着材料MAがハースライナー24の内壁を伝ってハースライナー24の外部へと漏れ出した状態(「濡れ上がり」が生じた状態)(中古)の3種類が準備されている。
【0048】
図5の(b)には、上記(b)に対応する基準画像群が示されている。この例では、湯面位置がハースライナー24の開口部付近である状態(蒸着材料MAの量(湯量)が多い状態)、中間付近である状態、および、底部付近である状態の3種類が準備されている。
【0049】
図5の(c)には、上記(c)に対応する基準画像群が示されている。この例では、ハースライナー24の位置が正常な位置にある場合の基準画像が3種類準備されている。本実施形態において、上記所定基準面とはターレット25の表面であり、上記所定範囲とは、ターレット25の表面に対する上記仮想的な表面の傾きが、蒸着処理に支障が生じない程度の範囲(数°程度の範囲)であることを意味する。
図5の(c)では、この所定範囲において、ハースライナー24の傾きが0°の場合、ハースライナー24が左上がりの場合、およびハースライナー24が右上がりの場合の3種類の基準画像が準備されている。左上がり、右上がりについては後述する。
【0050】
図5の(d)では、上記(d)に対応する基準画像群が示されている。この例では、照射位置が湯面の中央、左寄り、および右寄りである3種類の基準画像が準備されている。
【0051】
なお、各基準画像群における基準画像の種類は、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよい。例えば、
図5の(c)において、手前上がり、および/または奥上がり(後述)の場合の基準画像が準備されていてもよい。また、上記(a)〜(d)のすべてが準備されている必要は必ずしもなく、監視装置1で監視する監視対象に応じて必要な基準画像群が準備されていればよい。換言すれば、上記(a)〜(d)の少なくとも1つの基準画像群が準備されていればよい。
【0052】
(制御部)
制御部10は、監視装置1を統括的に制御するものである。具体的には、制御部10は、蒸着装置2の状態を精度良く判定するとともに、判定結果に応じた報知、または蒸着処理の停止を行うために、撮像制御部15、画像選択部16、および状態判定部17を備える。
【0053】
撮像制御部15は、撮像部11を制御するものである。上述のとおり、撮像制御部15は、上記(A)〜(C)の各監視において、撮像部11に複数回撮像させる。撮像制御部15は、上記(A)〜(C)の各監視において、上記(A)〜(C)の各監視に対して設定された撮像部11の撮像位置、撮像感度およびシャッター速度を選択する。また、撮像制御部15は、上記(A)〜(C)の各監視において、所定枚数撮像完了後に、タイマー(不図示)を作動させ、上記(A)〜(C)の各監視に対して設定された所定期間を計時させるとともに、撮像部11の撮像を停止させる。そして、タイマーから所定期間経過の通知を受けると、撮像を再開させる。
【0054】
例えば、上記(A)の監視においては、撮像制御部15は、蒸着完了後、成膜レート0であること(蒸着材料MAが飛散していない状態であること)を確認する。撮像制御部15は、当該確認が完了した後(例:蒸着完了から約2〜3分後)、撮像感度を「6」、「5」、「4」および「3」とこの順で変化させ、連続して4回撮像する。撮像制御部15は、上記(A)の監視に対して設定された所定期間(例:10秒)を計時させて、この間の撮像を中断する。撮像制御部15は、所定期間の経過を確認すると、再度、撮像感度を「6」、「5」、「4」および「3」とこの順で変化させ、連続して4回撮像する。このようにして、計8枚の画像を取得する。なお、シャッター速度は「1/60」または「1/120」に設定されている。
【0055】
上記(B)の監視においては、撮像制御部15は、蒸着完了後、成膜レート0であることを確認する。撮像制御部15は、当該確認が完了した
後、撮像感度を「6」、「5」、「4」および「3」とこの順で変化させ、連続して4回撮像する。その後、撮像制御部15は、上記(B)の監視に対して設定された所定期間(例:10秒)を計時させて、この間の撮像を中断する。撮像制御部15は、所定期間の経過を確認すると、再度、撮像感度を「6」、「5」、「4」および「3」とこの順で変化させ、連続して4回撮像する。このようにして、計8枚の画像を取得する。なお、シャッター速度は「1/60」または「1/120」に設定されている。
【0056】
上記(C)の監視においては、撮像感度を「8」、「7.5」、「7」、「6.5」、「6」、「5.5」、「5」、「4.5」とこの順で変化させ、連続して8回撮像する。つまり、本実施形態では、上記(C)の監視に対して設定された所定期間は0秒である。このようにして、計8枚の画像を取得する。なお、シャッター速度は「1/60」、「1/120」または「1/240」に設定されている。
【0057】
本実施形態では、上記(A)および(B)の監視のための撮像は、蒸着(本蒸着)完了後であって、蒸着によりハースライナー24および蒸着材料MAが赤熱している状態で行われる。この赤熱している状態は、基板100への蒸着が完了して電子ビームEBの照射を停止した後、5分程度継続する。本実施形態では、上記の撮像は、当該停止後、約2〜3分の時点で行われる。また、新品のハースライナー24は、濡れ上がりが発生しているハースライナー24に比べ、画像が明るくなる傾向にある。換言すれば、濡れ上がりが発生している場合、蒸着材料MAがその内壁を被覆しているため、画像が暗くなる傾向にある。特に、蒸着材料MAがアルミニウム、銀などのメタル系のものの場合、顕著に暗くなる。さらに、蒸着材料MAの湯面位置によっても、画像の明るさが異なる。湯面位置が高い場合にはハースライナー24および蒸着材料MAが冷めにくい(赤熱状態が維持されやすい)一方、湯面位置が低い場合には冷めやすい。
【0058】
このように、上記(A)および(B)の監視では、赤熱状態において撮像される上に、ハースライナー24の状態、または湯面位置等によってはその赤熱度合いが異なる。そのため、状況によっては、上記輪郭部分または境界部分を抽出するための画像解析に対しては明るすぎる画像が撮像されてしまう可能性がある。この場合、撮像された画像においては、上記輪郭部分または境界部分が不鮮明となり(当該部分のコントラストが低下してしまい)、当該輪郭部分または境界部分を精度良く取得できない可能性がある。
【0059】
そこで、上記(A)および(B)での撮像では、撮像感度は、蒸着完了からしばらく経過した後に(蒸着による上記赤熱がなくなった状態で)行われる上記(C)の監視のための撮像に比べ、低く設定されている。そのため、明るさを抑制した画像の取得が期待できる。また、時間が経過するにつれ、ハースライナー24等の赤熱状態が沈静化される。連続した複数回の撮像中に所定期間の撮像待機期間を設けることにより、当該所定期間後の撮像においては、赤熱状態が抑えられた画像の取得が期待できる。なお、1回の連続した撮像の中で、所定期間が複数回設けられてもよい。
【0060】
一方、上記(C)の監視のための撮像は、上述のとおり、上記(A)および(B)での撮像に比べ、ハースライナー24等が赤熱していないことが予想される。そのため、上記(C)での撮像では、撮像感度は、上記(A)および(B)での撮像に比べ高く設定されている。
【0061】
各監視において、このように複数の画像を撮像することにより、上記輪郭部分、境界部分または照射位置を精度良く取得できる可能性を高めることができる。
【0062】
なお、上記撮像感度、シャッター速度および所定期間の設定はあくまで一例である。上記撮像感度、シャッター速度および所定期間は、各監視において上記ハースライナー24の位置、湯面位置または照射位置を解析可能な解析対象画像を、撮像された複数の画像から選択することが可能であれば、どのような値に設定されてもよい。また、1回の蒸着処理において、上記(A)〜(C)の監視において撮像される画像の枚数も、8枚に限らず、適宜変更されてよい。
【0063】
画像選択部16は、撮像部11が撮像した複数の画像から、基準画像との相関が最も高い画像を、解析対象画像として選択する。
【0064】
具体的には、画像選択部16は、撮像部11が撮像した各画像の画素値に基づいて、当該各画像の、基準画像に対する相関度合いを示す相関値を算出する。この相関値の算出には、例えば、パターンマッチングを用いて上記各画像と基準画像との間の相関値(類似度)を算出する正規化相関という統計手法が用いられる。
【0065】
正規化相関においては、相関値は、次式によって算出される。次式において、Iは、上記各画像における各画素の画素値(輝度値)、Mは、基準画像における各画素の画素値、nは、上記各画像および基準画像における全画素数である。また、バー(−)は平均値を示す。
【0067】
上記式において、上記各画像が基準画像に類似していればいるほど、100(%)に近い値を示す。画像選択部16は、上記(A)〜(C)の各監視において、撮像された複数の画像のうち相関値が100に最も近い画像を、解析対象画像として選択する。なお、相関値を算出する対象としては、各画像および基準画像における上記輪郭部分または境界部分であってもよい。例えば、画像選択部16が、複数の画像および基準画像における上記輪郭部分の相関により、解析対象画像を選択する場合には、撮像された画像における輪郭部分の誤検出の可能性を抑制することができる。
【0068】
上述のとおり、本実施形態では、上記(A)および(B)の監視時には、赤熱状態であるハースライナー24または蒸着材料MAを撮像することになる。この影響を抑制するために、監視装置1ではまず、撮像部11が、少なくとも撮像感度を変更した複数のハースライナー24を撮像する。これにより、明るさが異なるハースライナー24または蒸着材料MAが映る画像を複数取得することができる。そして、画像選択部16が、撮像部11が取得した明るさが異なる複数の画像と、例えば赤熱しているハースライナー24または蒸着材料MAが映る基準画像(上記輪郭部分または境界部分が取得可能な画像)とを対比して、最も基準画像との相関が高い画像を選択する。これにより、蒸着装置2の状態判定のために解析しやすい画像を解析対象画像として選択することができる。撮像された複数の画像において、上記輪郭部分または境界部分のコントラストが低下していない、または上記輪郭部分または境界部分のコントラストの低下が抑制された画像を、解析対象画像として選択するので、上記ハースライナー24の位置または湯面位置の判定を精度良く行うことが可能となる。
【0069】
また、上記(C)の監視時には、電子ビームEBを照射しながらの撮像となる。そのため、撮像時のハースライナー24の周辺環境の明るさが変動しやすいため、当該変動に起因して、例えば、撮像された画像において、電子ビームEBの照射位置が不鮮明になる可能性がある。この場合であっても、撮像部11が少なくとも撮像感度を変更した複数のハースライナー24を撮像する。そして、画像選択部16は、明るさが異なる蒸着材料MAが映る複数の画像と、例えば赤熱している蒸着材料MAが映る基準画像とを対比して、最も基準画像との相関が高い撮像画像を選択する。これにより、上記と同様、解析しやすい画像を解析対象画像として選択することができるため、上記照射位置の判定を精度良く行うことが可能となる。
【0070】
また、画像選択部16は、所定期間が設けられている場合には、当該所定期間の前後において、基準画像との対比を行ってもよい。例えば、上記(A)および(B)の監視の場合、画像選択部16は、最初の4画像と基準画像との対比を行い、当該4画像のうち、最も基準画像との相関が高い画像を1つ選択する。その後、画像選択部16は、所定期間後の4画像と基準画像との対比を行い、当該4画像のうち、最も基準画像との相関が高い画像を1つ選択する。そして、画像選択部16は、所定期間前の4画像から選択した画像、および所定期間後の4画像から選択した画像のうち、基準画像との相関がより高い画像を、解析対象画像として選択する。
【0071】
また、本実施形態では、上述のとおり、ハースライナー24の状態が異なる基準画像が複数設けられている。そのため、画像選択部16は、複数の基準画像から選択した基準画像を用いて、撮像部11が撮像した複数の画像から解析対象画像を選択する。ハースライナー24の状態としては、例えば、ハースライナー24の使用状態、ハースライナー24内での蒸着材料MAの湯面位置、ハースライナー24の傾き、および、ハースライナー24内の蒸着材料MAにおける、電子ビームEBの照射位置が挙げられる。
【0072】
画像選択部16は、例えば、取得した画像を解析することにより、解析対象画像を選択するための基準画像(解析対象画像選択用の基準画像)を選択する。この場合、画像選択部16は、例えば、ハースライナー24の輪郭部分、内壁、または湯面付近と想定される領域の輝度値を算出し、当該領域の輝度値と、基準画像において対応する領域の輝度値とを対比する。画像選択部16は、解析して取得した領域の輝度値と最も近い輝度値を有する基準画像を、解析対象画像選択用の基準画像として選択する。
【0073】
また、画像選択部16は、例えば、電子ビーム源21に印加される電流値の大きさに基づいてハースライナー24の状態を特定することにより、解析対象画像選択用の基準画像を選択してもよい。この場合、電流値の大きさ(範囲)と複数の基準画像とが対応付けられて、基準画像DB141に記憶されていてもよい。画像選択部16は、撮像部11が画像を取得したときに電流値を取得し、基準画像DB141を参照することで、解析対象画像選択用の基準画像を選択する。
【0074】
このように、画像選択部16は、撮像した画像または電流値等の情報から、ハースライナー24の大まかな状態を特定し、解析対象画像選択用の基準画像を選択することができる。なお、画像選択部16は、取得した画像のうちの1つ(例:最初に取得した画像)に対して上記解析または電流値の取得を行うが、これに限らず、複数の画像に対して上記解析または電流値の取得を行ってもよい。
【0075】
また、画像選択部16は、例えば、各監視用としてそれぞれ1つずつ基準画像が設けられている場合、上記(A)〜(C)の各監視で用いられる基準画像(各監視に対応付けられた基準画像)を、解析対象画像選択用の基準画像として選択する。また、画像選択部16は、上記(A)〜(C)の各監視に応じて解析対象画像選択用の基準画像を選択してもよい。
【0076】
本実施形態では、複数の基準画像として、上記(a)〜(d)の基準画像群が設けられている。そのため、画像選択部16は、上記(A)〜(C)の各監視に応じて、上記(a)から(d)の基準画像群のうちの少なくとも1つから、上記解析対象画像選択用の基準画像を選択してもよい。
【0077】
ここで、上記(A)〜(C)の各監視に対応する基準画像群としては、各監視において必要となる部分(例:上記輪郭部分、境界部分または照射位置)が鮮明に映る画像が、撮像した複数の画像から選択されやすいものが設定されていることが好ましい。また、各監視において、選択後の画像について基準画像を用いた処理が行われる場合には、当該処理も加味して上記基準画像群が選択されることが好ましい。
【0078】
上記(A)の監視の場合、撮像された画像において、上記輪郭部分(
図6に示すHL)を取得可能な画像が選択されることが好ましい。そのため、画像選択部16が用いる基準画像群として、例えば上記(a)または(c)が設定されている。
【0079】
上記(B)の監視の場合、撮像された画像において、上記輪郭部分(
図7に示すED
b)および上記境界部分(
図7に示すED
f)を取得可能な画像が選択されることが好ましい。そのため、画像選択部16が用いる基準画像群として、例えば上記(a)〜(c)が設定されている。
【0080】
上記(C)の監視の場合、撮像した画像において、湯面位置および上記照射位置が取得可能な画像が選択されることが好ましい。そのため、画像選択部16が用いる基準画像群として、例えば上記(b)または(d)が設定されている。
【0081】
このように設定されている状態において、画像選択部16は、例えば、上記(A)〜(C)の各監視に応じて(換言すれば上記設定に応じて)、上記(a)から(d)の基準画像群から少なくとも1つの基準画像群を選択し、選択した基準画像群の中から、解析対象画像選択用の基準画像を選択する。解析対象画像選択用の基準画像を選択する場合も、画像選択部16は、上記と同様、取得した画像の解析または電流値の取得により当該基準画像を選択してもよい。また、上記(a)〜(d)の基準画像群において予め選択される基準画像が設定されていてもよく、この場合には、画像選択部16は、当該基準画像を、解析対象画像選択用の基準画像として選択する。
【0082】
このように、画像選択部16は、上記(A)〜(C)の各監視において、最も相関が高いと想定される代表的な基準画像を1つ、解析対象画像選択用の基準画像として選択する。
【0083】
状態判定部17は、画像選択部16が選択した解析対象画像を解析することにより、蒸着装置2の状態を判定するものである。上記(A)〜(C)を監視すべく、状態判定部17は、ハースライナー位置監視部171、湯面位置監視部172および照射位置監視部173を備えている。
【0084】
なお、状態判定部17は、ハースライナー位置監視部171、湯面位置監視部172および照射位置監視部173の全ての機能を有している必要は必ずしもない。状態判定部17は、これらの3つの機能のうち、1つまたは2つの機能のみを有していてもよい。状態判定部17は、監視装置1が監視対象とする機能のみを有していればよい。
【0085】
ハースライナー位置監視部171は、ハースライナー24の位置を監視するものである。具体的には、ハースライナー位置監視部171は、撮像部11が撮像した画像を解析することにより、ハースライナー24の位置が正常な位置にあるか否かを判定する。例えば、ハースライナー位置監視部171は、解析対象画像および基準画像においてハースライナー24の輪郭部分を特定し、特定したハースライナー24の輪郭部分同士の相関値を算出し、当該相関値が所定の範囲内にあるか否かを判定する。また、上記輪郭部分の一部であって対向する2つの位置の距離を算出し、当該距離が所定の範囲内にあるか否かを判定する。そして、相関値または距離が所定の範囲内であれば、ハースライナー24の位置が正常な位置にあると判定する一方、範囲外であれば正常ではない位置にあると判定する。
【0086】
正常ではない位置にあると判定する場合の例として、
図6に示すように、「奥上がり」、「手前上がり」、「左上がり」および「右上がり」といったハースライナー24の状態が挙げられる。
【0087】
「奥上がり」は、ハースライナー24の上側(y=0に近い側)がターレット25の上面方向に傾いた状態を指す。「手前上がり」は、ハースライナー24の下側(y=0から+y方向に離れた側)がターレット25の上面方向に傾いた状態を指す。「左上がり」は、ハースライナー24の左側(x=0に近い側)がターレット25の上面方向に傾いた状態を指す。「右上がり」は、ハースライナー24の右側(x=0から+x方向に離れた側)がターレット25の上面方向に傾いた状態を指す。
【0088】
湯面位置監視部172は、ハースライナー24に供給された蒸着材料MAの湯面位
置を監視する。具体的には、湯面位置監視部172は、撮像部11が撮像した画像を解析することにより、当該湯面位置を検出し、当該湯面位置が正常な位置にあるか否かを判定する。例えば、湯面位置監視部172は、
図7に示すように、互いに対向する上記輪郭部分の一部ED
bと上記境界部分の一部ED
fとを検出する。そして、湯面位置監視部172は、上記輪郭部分の一部ED
bと上記境界部分の一部ED
fとの距離D
sを算出し、当該距離D
sが所定の範囲内であれば、湯面位置が正常な位置にあると判定する一方、範囲外であれば正常ではない位置にあると判定する。
【0089】
また、湯面位置監視部172は、正常ではない位置と判定した場合であって、ハースライナー24内の蒸着材料MAが少ないと判定した場合には、当該ハースライナー24への蒸着材料MAの供給量を算出し、当該供給量を示すデータを材料供給装置3に送信する。材料供給装置3は、当該データを受信すると、当該データが示す供給量分だけ、当該ハースライナー24へ蒸着材料MAを供給する。
【0090】
照射位置監視部173は、電子ビーム源21から出射された電子ビームEBの、ハースライナー24における照射位置の監視するものである。具体的には、照射位置監視部173は、撮像部11が撮像した画像を解析することにより、当該照射位置を検出し、当該照射位置が正常な位置にあるか否かを判定する。例えば、照射位置監視部173は、
図8に示すように、撮像された画像において、所定の画素値以上の画素値を有し、かつ所定の面積以上の面積を有する範囲を、照射位置IA(照射領域)として特定し、当該照射位置の重心位置CPを特定する。そして、照射位置監視部173は、その重心位置CPが所定の範囲内にあれば、照射位置IAが正常な位置にあると判定する一方、範囲外であれば正常ではない位置にあると判定する。なお、照射位置が正常な位置になるか否かの判定は、正常な位置に電子ビームEBが映る基準画像との対比により行われてもよい。
【0091】
また、照射位置監視部173は、範囲外にある場合には、照射位置を正常な位置まで移動させるための移動量(補正量)を算出する。そして、照射位置監視部173は、蒸着装置2に、当該補正量分だけ電子ビームEBの照射位置を変更させる。蒸着装置2では、ビーム偏向用磁石22およびポールピース23が制御されることにより、照射位置が正常な位置となるように、照射位置の補正が行われる。
【0092】
また、状態判定部17は、各監視において、正常ではない位置にあると判定した場合には、蒸着装置2において異常が発生していると判定し、報知部13を制御して警告を発せさせる。また、状態判定部17は、当該判定の場合には、蒸着装置2による蒸着処理を停止する。具体的には、状態判定部17は、蒸着装置2が有する電源(不図示)による、蒸着装置2の各部への電力供給を停止させる。
【0093】
なお、上記判定の場合に、状態判定部17は、上記警告報知および蒸着装置2の電力供給停止の両方を実行する必要は必ずしもない。例えば、状態判定部17は、正常な位置からのずれ量がある程度の範囲内である場合には、蒸着処理に支障をきたす可能性があり、継続的な蒸着処理の実行は回避した方が良い状態(メンテナンスが必要な状態、所謂「軽故障」)であると判定し、警告報知のみを行ってもよい。一方、状態判定部17は、上記ずれ量がある程度の範囲をも超えた場合には、蒸着処理に支障をきたすばかりでなく、安全性を担保できなくなる状態(所謂「重故障」)であると判定し、少なくとも蒸着処理を停止させる。
【0094】
(撮像画像例)
図9〜
図11に、上記(A)〜(C)の各監視において撮像された複数の画像の一例を示す。
図9がハースライナー24の位置監視時に撮像された画像の一例、
図10が湯面位置監視時に撮像された画像の一例、
図11が照射位置監視時に撮像された画像の一例である。
図9〜
図11において、斜線にて囲まれた画像が、画像選択部16が解析対象画像として選択した画像である。
【0095】
なお、
図9および
図10の例では、シャッター速度「1/60」および「1/120」で撮像した場合を挙げている。また、
図11の例では、シャッター速度「1/60」、「1/120」および「1/240」で撮像した場合を挙げている。しかし、各監視においては、上記のうちのいずれか1つのシャッター速度(例:「1/60」)が設定されていればよい。換言すれば、本例では、複数の画像として、撮像感度および撮像タイミングが異なる8枚の画像が取得できればよい。
【0096】
但し、基準画像との相関がより高い画像を選択する可能性を高めるために、基準画像と対比する複数の画像の数を増やす目的で、各監視において、複数のシャッター速度のそれぞれに対応する画像を取得してもよい。換言すれば、
図9〜
図11に示す画像の全てを基準画像との対比対象としてもよい。
【0097】
図9および
図10の例では、画像選択部16は、シャッター速度「1/60」の場合も、シャッター速度「1/120」の場合も、相関が最も高い画像No.1を、解析対象画像として選択している。
図11の例では、画像選択部16は、シャッター速度「1/60」の場合には、相関値が最も高い画像No.2を解析対象画像として選択し、シャッター速度「1/120」および「1/240」の場合には、相関が最も高い画像No.1を解析対象画像として選択している。
【0098】
なお、各シャッター速度における8枚の画像において、相関が最も高い画像として2つ以上の画像が選択可能な場合には、画像選択部16は、予め取り決められた方法にて解析対象画像として1つの画像を選択してもよい。当該方法としては、例えば、相関が最も高い複数の画像のうち、画像No.が最も小さい画像(最先に撮像された画像)を解析対象画像とするといった方法が挙げられる。
【0099】
≪監視システムの処理フロー≫
次に、
図12を用いて、監視システムにおける処理フローの一例について説明する。
図12は、監視システムにおける処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0100】
まず、蒸着装置2は、基板100への蒸着材料MAの蒸着前に、電子ビーム源21から電子ビームEBを出射して、ハースライナー24内の蒸着材料MAに照射することにより、当該蒸着材料MAの溶かし込みを行う(処理ステップ(以降Sと称する)1)。次に、蒸着装置2は、光強度を上げて電子ビームEBを蒸着材料MAへ照射することでハースライナー24内の蒸着材料MAを蒸発させることにより、基板100への成膜(本蒸着)を行う(S2)。
【0101】
次に、監視装置1は、蒸着装置2による成膜処理が完了すると、成膜レート0を確認後、ハースライナー24内の蒸着材料MAの湯面管理を行う(S3;上記(B)の監視に対応)。具体的には、湯面位置監視部172は、撮像設定を湯面位置監視用の設定(湯面位置撮像設定)とする。撮像部11は、撮像制御部15の制御を受けて、当該撮像設定下において複数の画像を撮像する。画像選択部16は、湯面位置監視用の基準画像を用いて、当該複数の画像から、湯面位置を監視するために適した解析対象画像を選択する。そして、湯面位置監視部172は、解析対象画像を解析することにより、湯面位置が正常な位置にあるか否かを判定する。湯面位置監視部172は、湯面位置が正常ではない位置にあると判定した場合には、報知部13からの警告報知、および/または蒸着装置2の停止を行う。また、湯面位置監視部172は、正常ではない位置と判定した場合であって、ハースライナー24内の蒸着材料MAが少ないと判定した場合には、当該ハースライナー24への蒸着材料MAの供給量を算出し、当該供給量を示すデータを材料供給装置3に送信する。
【0102】
また、監視装置1は、蒸着装置2による成膜処理が完了すると、成膜レート0を確認後、ハースライナー24の位置管理を行う(S4;上記(A)の監視に対応)。ハースライナー位置監視部171は、成膜レート0を確認してから所定期間経過後(例:数秒後。但し、湯面管理開始後。)に、当該位置管理の処理を開始する。なお、ハースライナー位置監視部171は、S3の処理において撮像部11が複数の画像を撮像したことを示す通知を湯面位置監視部172から受けることにより、当該位置管理の処理を開始してもよい。
【0103】
ハースライナー位置監視部171は、まず、蒸着装置2に対し、電子ビーム源21のフィラメントから光子のみを放出させるよう指示を行う。蒸着装置2は、当該指示を受けると、電子ビーム源21を照明光源として機能させる。また、ハースライナー位置監視部171は、複数の画像の撮像前に、撮像設定を、湯面位置撮像設定から、ハースライナー24の位置監視用の撮像設定(ハース位置撮像設定)に切り替える。撮像部11は、撮像制御部15の制御を受けて、当該撮像設定下において複数の画像を撮像する。画像選択部16は、ハースライナー24の位置監視用の基準画像を用いて、当該複数の画像から、ハースライナー24の位置を監視するために適した解析対象画像を選択する。そして、ハースライナー位置監視部171は、解析対象画像を解析することにより、ハースライナー24の位置が正常な位置にあるか否かを判定する。ハースライナー位置監視部171は、ハースライナー24の位置が正常ではない位置にあると判定した場合には、報知部13からの警告報知、および/または蒸着装置2の停止を行う。
【0104】
また、監視装置1では、ハースライナー位置監視部171は、ハースライナー位置監視用の複数の画像の撮像が完了すると、その旨を湯面位置監視部172に通知する。湯面位置監視部172は、撮像設定を、ハース位置撮像設定から、湯面位置撮像設定に切り替える。なお、当該処理タイミングは、ハースライナー24の撮像前(後述のS6の処理前)であればよい。
【0105】
また、S3の処理において、湯面位置監視部172が上記供給量を示すデータを材料供給装置3に送信した場合には、材料供給装置3は、当該供給量の算出対象となったハースライナー24へ蒸着材料MAを供給する(S5)。
【0106】
次に、蒸着装置2は、材料供給装置3による蒸着材料MAの供給処理が完了すると、S1と同様に、ハースライナー24内の蒸着材料MAの溶かし込みを行う。監視装置1は、蒸着装置2による当該溶かし込み処理が完了すると、ハースライナー24内の蒸着材料MAの湯面管理を行う(S6;上記(B)の監視に対応)。この処理は、S3における湯面位置監視部172による処理と同様である。
【0107】
なお、S3の処理は、基板100への成膜後の湯面状態を管理するために行われ、S6の処理は、蒸着材料MAの供給後の湯面状態を管理するために行われる。
【0108】
また、監視装置1では、湯面位置監視部172は、湯面位置監視用の複数の画像の撮像が完了すると、その旨を照射位置監視部173に通知する。照射位置監視部173は、撮像設定を、湯面位置撮像設定から、照射位置監視用の撮像設定(照射位置撮像設定)に切り替える。なお、当該処理タイミングは、ハースライナー24の撮像前(S7の処理前)であればよい。
【0109】
次に、監視装置1は、ハースライナー24内の蒸着材料MAに対する、電子ビームEBの照射位置管理を行う(S7;上記(C)の監視に対応)。具体的には、撮像部11は、撮像制御部15の制御を受けて、照明位置撮像設定下において複数の画像を撮像する。画像選択部16は、照射位置監視用の基準画像を用いて、当該複数の画像から、照射位置を監視するために適した解析対象画像を選択する。そして、照射位置監視部173は、解析対象画像を解析することにより、照射位置が正常な位置にあるか否かを判定する。照射位置監視部173は、照射位置が正常ではない位置にあると判定した場合には、報知部13からの警告報知、および/または蒸着装置2の停止を行う。
【0110】
また、この場合には、照射位置監視部173は、照射位置に応じた補正量を決定し、蒸着装置2に当該補正量を示すデータを送信する。蒸着装置2は、当該データに基づき、照射位置が正常な位置となるように、照射位置の補正を行う。
【0111】
また、監視装置1では、照射位置監視部173は、照射位置監視用の複数の画像の撮像が完了すると、その旨を湯面位置監視部172に通知する。湯面位置監視部172は、撮像設定を、照射位置撮像設定から、湯面位置撮像設定に切り替える。なお、当該処理タイミングは、次回のハースライナー24の撮像前(S3の処理前)であればよい。
【0112】
なお、ハースライナー位置監視部171、湯面位置監視部172および照射位置監視部173の処理順は、上記順序に限らない。
【0113】
≪監視装置の処理フロー≫
次に、
図13を用いて、監視装置1における処理フロー(監視方法)の一例について説明する。
図13は、監視装置1における処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0114】
まず、上記(A)〜(C)の各監視(
図12のS3、S4、S6およびS7の各処理)において、撮像制御部15は、撮像部11を制御して、状態判定部17で設定された撮像設定で、複数回、ハースライナー24を撮像する(S11;撮像工程)。撮像制御部15は、複数の画像を取得すると、その旨を画像選択部16に通知する。
【0115】
画像選択部16は、当該通知を受けて、複数の基準画像(基準画像群)から、上記(A)〜(C)の各監視に対応する1つの基準画像(解析対象画像選択用の基準画像)を選択する(S12)。各監視に対応付けられた基準画像が1つ設けられている場合には、当該基準画像を、解析対象画像選択用の基準画像として選択する。そして、画像選択部16は、各監視において、撮像された複数の画像と選択した基準画像とを対比して、各画像について相関値を算出する(S13)。画像選択部16は、各監視において、算出した相関値のうち、最大の相関値(最大相関値)を有する画像を、解析対象画像として選択する(S14;画像選択工程)。画像選択部16は、解析対象画像を選択した旨を、状態判定部17に通知する。
【0116】
状態判定部17は、各監視に対応する処理(ハースライナー位置監視部171、湯面位置監視部172、または照射位置監視部173による処理)を実行することにより、蒸着装置2の状態が正常な状態であるか否かを判定する(S15;状態判定工程)。状態判定部17は、上記(A)〜(C)の監視の全てにおいて蒸着装置2の状態が正常であると判定した場合には(S15でYES)、当該処理フローを終了する。一方、状態判定部17は、上記(A)〜(C)の監視のいずれかにおいて蒸着装置2の状態が正常ではないと判定した場合には(S15でNO)、報知部13から警告を報知させる(S16)。また、状態判定部17は、重故障の場合には、蒸着装置2を停止させる(S17)。
【0117】
≪主たる効果≫
監視装置1では、撮像部11が複数回、ハースライナー24を撮像する。また、撮像部11は、撮像感度、シャッター速度および撮像タイミングの少なくともいずれかを変更して撮像を行う。そのため、明るさが異なる複数の画像を取得することができる。
【0118】
そして、画像選択部16は、撮像部11が撮像した複数の画像から、ハースライナー24が映る基準画像との相関が最も高い画像を解析対象画像として選択する。そのため、画像解析が行いやすい明るさを有する画像を選択することが可能となる。状態判定部17は、このように選択された解析対象画像を解析して、蒸着装置2の状態を判定する。
【0119】
1回だけ撮像して解析対象画像とする場合に、明るすぎるまたは暗すぎる画像が撮像された場合には、当該画像を解析しても、上記輪郭部分等の解析対象を特定できない可能性がある。この場合、撮像設定を調整しながらの再度の撮像が必要となる。また、上述のとおり、ハースライナー24の状態または湯面位置等によっては、ハースライナー24および蒸着材料MAの赤熱度合いまたは赤熱時間が異なるため、解析対象画像としては明るすぎる画像を取得してしまう可能性がある。この場合も、解析対象を特定できない可能性がある。
【0120】
一方、監視装置1によれば、赤熱状態を考慮した上で、撮像した中で最も解析しやすい画像を解析対象画像として選択することができる。そのため、上記の場合に比べ、ハースライナー24の周辺環境に依存することなく、蒸着装置2の状態を精度良く判定することができる可能性を高めることができる。また、監視装置1によれば、再度の撮像の可能性を低減することができる。そのため、再度の撮像を行う手間、または時間を削減することが可能となる。
【0121】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0122】
実施形態1では、複数の基準画像の中から、解析対象画像選択用の基準画像が1つ選択される場合について説明したが、複数選択されてもよい。
【0123】
例えば、上記(A)〜(C)の各監視において、選択される解析対象画像選択用の基準画像の数が2以上に予め設定されており、画像選択部16は、その数の分、基準画像を選択してもよい。この場合、例えば、画像選択部16は、実施形態1で述べたように取得した画像を解析し、当該画像に含まれる領域(例:上記輪郭部分と想定される領域)の輝度値に近い輝度値(当該領域に対応する基準画像における領域の輝度値)を有する基準画像から順に、上記設定された数の分、選択する。電流値を用いて選択する場合には、画像選択部16は、例えば、取得した電流値に対応する基準画像を選択するとともに、その電流値近傍の値に対応する基準画像を、上記設定された数を超えない範囲で選択する。
【0124】
また、各監視用としてそれぞれ複数の基準画像が設けられている場合、各監視において、撮像された複数の画像のそれぞれと、複数の基準画像のそれぞれとにおいて相関値が算出されてもよい。換言すれば、この場合には、撮像部11が撮像した全ての画像と、基準画像DB141に格納された全ての基準画像との間での相関値が算出される。
【0125】
また、画像選択部16は、撮像部11が撮像した画像のそれぞれを、複数の基準画像の一部とだけ対比してもよい。例えば、画像選択部16は、上記(A)〜(C)の各監視に応じて、基準画像DB141に格納された複数の基準画像から、撮像部11が撮像した画像と対比する基準画像を選択してもよい。
【0126】
例えば、画像選択部16は、上記(A)〜(C)の各監視に応じて、上記(a)から(d)の基準画像群のうちの少なくとも1つを、各監視において撮像した画像と対比する複数の基準画像として選択してもよい。実施形態1で述べたように、上記(A)〜(C)の各監視に対して、上記(a)から(d)の基準画像群が対応付けられている場合、画像選択部16は、各監視において対応する基準画像群を選択する。
【0127】
画像選択部16は、上述のように解析対象画像選択用の基準画像として選択した複数の基準画像のそれぞれを、撮像部11が撮像した複数の画像のそれぞれと対比し、それぞれの相関値を算出する。そして、画像選択部16は、算出した相関値のうち、最も高い相関値を有する画像を、解析対象画像として選択する。換言すれば、画像選択部16は、撮像部11が撮像した複数の画像から、複数の基準画像の少なくとも一部の各々との相関が最も高い画像を、解析対象画像として選択する。
【0128】
このように、解析対象画像選択用の基準画像が複数ある場合であっても、実施形態1と同様、複数の画像から、各監視における画像解析において必要となる部分を最も取得しやすい画像を、解析対象画像として選択することができる。そのため、各監視において、蒸着装置2の状態を精度良く判定することが可能となる。また、解析対象画像選択用の基準画像が複数あるため、撮像部11が撮像した画像と基準画像との相関をより幅広く確認することができる。
【0129】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0130】
実施形態1および2では、基準画像DB141には、基準画像が複数登録されている。これに限らず、上記(A)〜(C)の監視に共通の1つの基準画像のみが、基準画像DB141に登録されていてもよい。
【0131】
解析対象画像としては、上記(A)の監視であれば上記輪郭部分、上記(B)の監視であれば上記輪郭部分および境界部分、上記(C)の監視であれば上記照射位置が精度良く抽出できる画像が選択されることが好ましい。そのため、基準画像としては、上記輪郭部分、境界部分および照射位置が鮮明に映る画像であることが好ましい。この場合、基準画像として、例えば、新品のハースライナー24が映る画像であって、正常な位置にある湯面位置の重心付近に照射された電子ビームEBが映る画像であればよい。
【0132】
また、画像選択部16が、例えば、撮像された各画像におけるハースライナー24の輪郭部分と、基準画像におけるハースライナー24の輪郭部分との相関により、解析対象画像を選択する場合、基準画像において上記輪郭部分が鮮明に映っていることが好ましい。この場合、基準画像としては、新品のハースライナー24が映る画像であればよい。
【0133】
このように、登録された基準画像が1つであっても、複数の画像から、各監視における画像解析において必要となる部分を最も取得しやすい画像を、解析対象画像として選択することができる。そのため、各監視において、蒸着装置2の状態を精度良く判定することが可能となる。
【0134】
〔ソフトウェアによる実現例〕
監視装置1の制御ブロック(特に制御部10の各機能ブロック)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0135】
後者の場合、監視装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0136】
〔まとめ〕
(1)上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る監視装置は、基板に蒸着材料を蒸着させることにより当該基板への成膜を行う蒸着装置の監視を行う監視装置であって、上記蒸着装置が備える、上記蒸着材料を保持するための容器を被写体とし、複数回の撮像を行う撮像部と、上記撮像部が撮像した複数の画像から、上記容器が映る画像である基準画像との相関が最も高い画像を、解析対象画像として選択する画像選択部と、上記画像選択部が選択した解析対象画像を解析することにより、上記蒸着装置の状態を判定する状態判定部と、を備える。
【0137】
上記の構成によれば、複数回撮像した容器の画像から、基準画像との相関が最も高い画像を解析対象画像として選択する。そして、当該解析対象画像を用いて、蒸着装置の状態を判定する。それゆえ、蒸着装置の状態を精度良く判定することが可能となる。
【0138】
(2)さらに、本発明の一態様に係る監視装置では、上記(1)の構成において、上記撮像部は、上記画像を撮像する毎に撮像感度およびシャッター速度の少なくともいずれかを変更してもよい。
【0139】
一般に、容器自体、またはその周辺の明るさによっては、撮像した画像に映る容器のコントラストが低下し、基準画像との対比が困難になる場合がある。上記の構成によれば、撮像する毎に撮像感度および/またはシャッター速度を変更するため、明るさの異なる容器を撮像することができる。そのため、基準画像との対比に適した容器の画像を解析対象画像として選択することが可能となる。
【0140】
(3)さらに、本発明の一態様に係る監視装置では、上記(2)の構成において、上記複数の画像の撮像を開始してから終了するまでの期間において、画像を撮像しない所定期間が設けられていてもよい。
【0141】
上記の構成によれば、画像を撮像しない所定期間を設けることで、基準画像との対比に適した明るさを有する容器の画像を取得する可能性を高めることができる。
【0142】
(4)さらに、本発明の一態様に係る監視装置では、上記(2)または(3)の構成において、上記状態判定部は、上記解析対象画像に映る(A)上記容器の位置、(B)上記容器に供給された蒸着材料の湯面位置、および、(C)上記容器における、ビーム出射源から出射された電子ビームの照射位置のいずれかを解析対象として解析することにより上記蒸着装置の状態を判定するものであり、上記撮像部は、上記解析対象に応じて設定された上記撮像感度および上記シャッター速度で撮像を行ってもよい。
【0143】
上記の構成によれば、上記(A)〜(C)の解析対象に応じた撮像感度および/またはシャッター速度で、容器を撮像することができる。換言すれば、各解析対象に応じた、基準画像との対比に適した容器の画像を取得する可能性を高めることができる。
【0144】
(5)さらに、本発明の一態様に係る監視装置では、上記(1)〜(4)のいずれかの構成において、上記容器の状態が異なる複数の上記基準画像が設けられており、上記画像選択部は、複数の上記基準画像から選択した基準画像を用いて、上記複数の画像から上記解析対象画像を選択してもよい。
【0145】
上記の構成によれば、撮像した複数の画像を、容器の状態が異なる複数の基準画像の少なくとも1つと対比することができる。そのため、容器の状態を加味して、解析対象画像を選択することが可能となる。
【0146】
(6)さらに、本発明の一態様に係る監視装置では、上記(5)の構成において、上記複数の基準画像は、(a)上記容器の使用状態が互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、(b)上記容器に供給された上記蒸着材料の湯面位置が互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、(c)所定基準面に対する上記容器の所定範囲における傾きが互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、および、(d)ビーム出射源から出射された電子ビームの、上記容器における照射位置が互いに異なる複数の基準画像を含む基準画像群、のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0147】
上記の構成によれば、撮像した画像を、上記(a)〜(d)の基準画像群の少なくとも1つと対比することができる。上記容器の使用状態、蒸着材料の湯面位置、容器の傾き、または電子ビームの照射位置を加味して、解析対象画像を選択することが可能となる。
【0148】
(7)さらに、本発明の一態様に係る監視装置では、上記(6)の構成において、上記状態判定部は、上記解析対象画像に映る(A)上記容器の位置、(B)上記容器に供給された蒸着材料の湯面位置、および、(C)上記容器における、ビーム出射源から出射された電子ビームの照射位置のいずれかを解析対象として解析することにより上記蒸着装置の状態を判定するものであり、上記画像選択部は、上記解析対象に応じて、上記(a)から(d)の基準画像群のうちの少なくとも1つから、上記解析対象画像を選択するときに用いる基準画像を選択してもよい。
【0149】
上記の構成によれば、上記(A)〜(C)の解析対象に応じて、上記(a)〜(d)の基準画像群の少なくとも1つに含まれる基準画像を選択し、撮像した画像と対比することが可能となる。そのため、各解析対象について、蒸着装置の状態を精度良く判定することが可能となる。
【0150】
(8)さらに、本発明の一態様に係る監視方法は、基板に蒸着材料を蒸着させることにより当該基板への成膜を行う蒸着装置の監視を行う監視方法であって、上記蒸着装置が備える、上記蒸着材料を保持するための容器を被写体とし、複数回の撮像を行う撮像工程と、上記撮像工程で撮像した複数の画像から、上記容器が映る画像である基準画像との相関が最も高い画像を、解析対象画像として選択する画像選択工程と、上記画像選択工程で選択した解析対象画像を解析することにより、上記蒸着装置の状態を判定する状態判定工程と、を含む。
【0151】
上記の方法によれば、上記(1)の構成に係る効果と同様の効果を奏する。
【0152】
なお、本発明の各態様に係る監視装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記監視装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記監視装置をコンピュータにて実現させる監視装置の監視制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0153】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。