特許第6858084号(P6858084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジーの特許一覧

特許6858084反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法
<>
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000010
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000011
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000012
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000013
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000014
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000015
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000016
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000017
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000018
  • 特許6858084-反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858084
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】反応防止膜を含む高温固体酸化物セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20210405BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20210405BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20210405BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01M8/02
   H01M4/86 T
   H01M4/86 U
   H01M4/88 T
   H01M8/12
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-120357(P2017-120357)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2018-98169(P2018-98169A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2017年6月20日
【審判番号】不服2019-5567(P2019-5567/J1)
【審判請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0169310
(32)【優先日】2016年12月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ユン,キョン ジュング
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン−ファン
(72)【発明者】
【氏名】パク,マンス
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジョンソップ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジ−ウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ビョン クック
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ−ウォン
【合議体】
【審判長】 粟野 正明
【審判官】 亀ヶ谷 明久
【審判官】 平塚 政宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−195281(JP,A)
【文献】 特表2011−507161(JP,A)
【文献】 特開2013−93177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01M 8/00-8/0297, H01M 8/08-8/2495, H01M 4/86-4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)燃料極支持体を準備するステップと、
(b)前記燃料極支持体上に電解質層を塗布するステップと、
(c)前記燃料極支持体と電解質層を同時に焼結するステップと、
(d)前記電解質層上に、セリア系金属酸化物の平均粒径が10〜50nmの粉末及び100nm〜1μmの粉末を含み、焼結助剤を含まないペーストをコーティングして第1コーティング層を形成するステップと、
(e)前記第1コーティング層上に、焼結助剤及び平均粒径が10〜50nm及び100nm〜1μmのセリア系金属酸化物を含む混合ペーストをコーティングして第2コーティング層を形成するステップと、
(f)前記第1コーティング層と前記第2コーティング層を同時に焼結して、
前記セリア系金属酸化物の平均粒径が10〜50nmの粉末及び100nm〜1μmの粉末が焼結されたものであり、前記平均粒径が10〜50nmの粉末が焼結されたものは、第1反応防止膜の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれる第1反応防止膜と、
前記第1反応防止膜上に形成された、前記平均粒径が10〜50nm及び100nm〜1μmのセリア系金属酸化物及び焼結助剤が焼結されたものであり、前記平均粒径が10〜50nmの粉末が焼結されたものは、第2反応防止膜の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれる第2反応防止膜と、を含む二重層の反応防止膜を製造するステップと、
(g)前記二重層の反応防止膜上に空気極層を形成するステップとを含み、
前記電解質層はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)またはスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)であり、
前記空気極層は、ランタン−ストロンチウム−コバルト−酸化第二鉄が使用されており、
前記セリア系金属酸化物は、GDC(ガドリニウムドープトセリア)であり、
前記焼結助剤は、Coであり、
前記焼結助剤は、前記第2反応防止膜の総重量に対して1wt%の含量で含まれることを特徴とする、固体酸化物セルの製造方法。
【請求項2】
ステップ(a)の後、前記燃料極支持体上に燃料極機能層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の固体酸化物セルの製造方法。
【請求項3】
ステップ(f)の焼結は、1000〜1250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項に記載の固体酸化物セルの製造方法。
【請求項4】
ステップ(g)は、前記第2反応防止膜上に空気極機能層を形成した後、前記空気極機能層上に空気極集電層を形成することを特徴とする、請求項に記載の固体酸化物セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応防止膜を含む固体酸化物セルに関し、セリア系金属酸化物と焼結助剤を含有した反応防止膜を含む固体酸化物セル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池(solid oxide fuel cell、SOFC)は、燃料ガスの化学的エネルギーを電気的エネルギーに直接変換させる高効率の環境に優しい電気化学的発電技術であって、イオン伝導性を有する固体酸化物を電解質として使用する。そして、その逆方向の反応工程である固体酸化物電気分解セル(solid oxide electrolysis cell、SOEC)は、余剰電力を使用して化学的燃料を生産するのに使用される。
【0003】
固体酸化物燃料電池及び固体酸化物電気分解セルのような固体酸化物セルは、装置及び運用方法など多くの部分において技術共有が可能である。すなわち、燃料電池の素材及び工程技術のうち多くの部分を電気分解セルにそのまま利用することができる。
【0004】
固体酸化物燃料電池と電気分解セルの単電池(single cell)は、酸素イオン伝導性を有する電解質とその両面に備えられた燃料極及び空気極で構成される。固体酸化物燃料電池の場合、空気極及び燃料極に酸素と燃料をそれぞれ供給して、空気極では、酸素の還元反応が起こって酸素イオンが生成され、電解質を介して燃料極に移動し、燃料極では、燃料が酸素イオンと反応して水に酸化しながら電子が発生して電力を生産するようになる。また、固体酸化物電気分解セルの場合、燃料極に高温の蒸気を供給し、電気を印加すると、水が電気分解されて水素と酸素が生成され、酸素イオンは電解質を介して空気極に移動するため、燃料極では純粋な水素、空気極では酸素が分離されて生成される。
【0005】
上述した原理を有する固体酸化物燃料電池及び固体酸化物電気分解セルを構成する基本要素である電解質及び電極は両方とも、耐熱性に優れたセラミックで構成されており、高温で作動するため、低温型燃料電池及び電気分解セルに比べて優れた効率及び性能を有する。
【0006】
しかし、前記固体酸化物燃料電池及び固体酸化物電気分解セルは、セルの製造及び運転時に長時間高温に曝され、この過程で各種劣化現象が発生するため、商用化するのに困難がある。より具体的に、Ba1−xSrCo1−yFe(BSCF)、La1−xSrCo1−yFe(LSCF)などの組成を有する空気極層と、ジルコニア系を含む電解質層との化学反応で不導体反応物を界面に形成して、抵抗が増加し、セルの性能を減少させるだけでなく、空気極/電解質と反応物との熱膨張係数の差によって熱機械的安定性が低下するという問題が発生し得る。
【0007】
したがって、上述した問題を解決し、前記固体酸化物燃料電池及び固体酸化物電気分解セルのような固体酸化物セルの性能及び安定性を向上させるために、空気極層と電解質層との反応を防止するための技術が開発されてきた。これらのうち、空気極と電解質との間に備えられるセリア系列の反応防止層を形成する技術があるが、セリア系列の素材は、焼結性が良くないため、緻密化のためには1400℃以上の高温工程を必要とし、この場合、ジルコニア系列の電解質との化学的反応が起こり得るため、1250℃以下の温度で焼結することが必要であり、この場合には、緻密度が低下し、多数の気孔を生成するため、空気極層から一部の元素が前記気孔を介して電解質層に拡散することを遮断できないという問題があった。
【0008】
したがって、反応防止膜の製造時に、1250℃以下の温度で焼結すると共に、構造を緻密化し、界面結合力を高めた反応防止膜を形成することによって、正極(空気極)からのSrの移動を抑制し、究極的に、固体酸化物セルの効率及び安定性を向上させる技術の開発が必要であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許公報第1052739号
【特許文献2】日本公開特許公報第2013−197036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、構造が緻密であり、界面結合力が高く、電解質との化学反応による二次相の生成を防止できる反応防止膜を、1250℃以下の温度で焼結して製造することによって、これを適用する固体酸化物セルの効率及び安定性を著しく向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によれば、
燃料極層、電解質層及び空気極層を含む固体酸化物セルであって、
前記空気極層と電解質層との間に反応防止膜を含み、前記反応防止膜は、前記電解質層上に形成され、焼結助剤を含まないセリア系金属酸化物が焼結されたものを含む第1反応防止膜;及び前記第1反応防止膜上に形成され、セリア系金属酸化物及び焼結助剤が混合されて焼結されたものを含む第2反応防止膜;を含み、前記第1反応防止膜は、セリア系金属酸化物のナノ粉末及び粗大粉末が焼結されたものを含み、前記第1反応防止膜及び第2反応防止膜は同時に焼結されたものである、固体酸化物セルが提供される。
【0012】
前記第1反応防止膜は、セリア系金属酸化物のナノ粉末及び粗大粉末が焼結されたものを含むことができる。
【0013】
前記ナノ粉末が焼結されたものは、第1反応防止膜の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれてもよい。
【0014】
前記セリア系金属酸化物は、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)及びランタン(La)から選択された1種以上であるセリア系金属酸化物であってもよい。
【0015】
前記セリア系金属酸化物は、下記化学式1で表されてもよい。
LnCe1−x2−0.5x 化学式1
前記化学式1において、
Lnは、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)及びランタン(La)から選択されたいずれか1つであり、
xは、0<x=0.4である。
【0016】
前記焼結助剤は、Co、Fe、Ni、Zn、Cu、Mn及びLiから選択された1種以上またはその酸化物であってもよい。
【0017】
前記焼結助剤は、前記第2反応防止膜の総重量に対して0.05〜5wt%の含量で含まれてもよい。
【0018】
前記空気極層はペロブスカイト構造であってもよい。
【0019】
前記空気極層は、ランタン(La)、コバルト(Co)及び鉄(Fe)から選択された1種以上であってもよい。
【0020】
前記電解質層はジルコニア系金属酸化物であってもよい。
【0021】
前記第2反応防止膜は、セリア系金属酸化物のナノ粉末及び粗大粉末が焼結されたものを含むことができる。
【0022】
前記第1反応防止膜または第2反応防止膜の厚さは1〜10μmであってもよい。
【0023】
前記空気極層は、前記第2反応防止膜上に形成される空気極機能層、及び前記空気極機能層上に形成される空気極集電層を含むことができる。
【0024】
本発明の他の側面によれば、
(a)燃料極支持体を準備するステップ;
(b)前記燃料極支持体上に電解質層をコーティングして形成するステップ;
(c)前記燃料極支持体と電解質層を同時に焼結するステップ;
(d)前記電解質層上に、セリア系金属酸化物のナノ粉末及び粗大粉末を含むペーストをコーティングして第1コーティング層を形成するステップ;
(e)前記第1コーティング層上に、セリア系金属酸化物及び焼結助剤を含む混合ペーストをコーティングして第2コーティング層を形成するステップ;
(f)前記第1コーティング層と第2コーティング層を同時に焼結して、第1反応防止膜及び前記第1反応防止膜上に形成された第2反応防止膜を含む二重層の反応防止膜を製造するステップ;及び
(g)前記二重層の反応防止膜上に空気極層を形成するステップ;を含む固体酸化物セルの製造方法が提供される。
【0025】
前記ナノ粉末は、第1コーティング層の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれてもよい。
【0026】
前記ナノ粉末の平均粒径は10〜100nmであってもよい。
【0027】
前記粗大粉末の平均粒径は100nm〜1μmであってもよい。
【0028】
ステップ(a)の後、前記燃料極支持体上に燃料極機能層を形成するステップをさらに含むことができる。
【0029】
ステップ(e)の前記第2コーティング層に含まれるセリア系金属酸化物は、ナノ粉末と粗大粉末との混合物であってもよい。
【0030】
前記ナノ粉末は、第2コーティング層の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれてもよい。
【0031】
前記焼結助剤は、前記第2コーティング層の総重量に対して0.05〜5wt%の含量で含まれてもよい。
【0032】
ステップ(f)の焼結は、1000〜1250℃の温度で行われてもよい。
【0033】
ステップ(g)は、前記第2反応防止膜上に空気極機能層を形成した後、前記空気極機能層上に空気極集電層を形成することであってもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明の固体酸化物セルは、電解質層と接触するナノ粉末を含み、焼結助剤を含まない第1反応防止膜、及び第1反応防止膜上に焼結助剤を含む第2反応防止膜を含み、二重層の反応防止膜が同時に低温で焼結されたことを特徴とするので、緻密で、界面結合力が高く、電解質との化学反応による二次相の生成を防止することによって、固体酸化物セルの効率及び安定性を著しく向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の固体酸化物セルの側断面図である。
図2】本発明の固体酸化物セルの製造方法を順次示したフローチャートである。
図3】(a)比較例2の反応防止膜、(b)素子比較例2の固体酸化物セルのSEMイメージ、(c)素子比較例2の固体酸化物セルのTEMイメージ、(d)素子比較例2の固体酸化物セルのSEMイメージを示したものである。
図4】(a)比較例1、(b)比較例3によって製造された反応防止膜、及び(c)素子比較例3によって製造された固体酸化物セルの側面のSEMイメージである。
図5】(a)比較例2、(b)比較例4、(c)比較例5及び(d)実施例1によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。
図6】比較例7によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。
図7】比較例6によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。
図8】比較例1及び実施例1によって製造された反応防止膜のイメージを示したものである。
図9】素子実施例1及び素子比較例1によって製造された固体酸化物セルの長期評価結果を示したものである。
図10】素子実施例1及び素子比較例1によって製造された固体酸化物セルの長期評価後の構造及び化学分析結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0037】
しかし、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に対して限定するためのものではなく、本発明を説明するにあたり、係わる公知技術についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0038】
本願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されるもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0039】
図1は、本発明の固体酸化物セルの側断面を概略的に示したものである。以下、図1を参照して、本発明の固体酸化物について説明する。
【0040】
本発明の固体酸化物セル100は、燃料極層10、電解質層20及び空気極層50を含み、空気極層50と電解質層20との間に反応防止膜30,40を含み、反応防止膜30,40は、電解質層20上に順次に第1反応防止膜30及び第2反応防止膜40を含むことができる。
【0041】
具体的に、燃料極層10は、燃料の電気化学反応及び電荷伝達の役割を果たすことができる。したがって、燃料極触媒は、燃料酸化の触媒物性が非常に重要であり、電解質層20を形成する材料と接触する場合に、化学的に安定しており、熱膨張係数も類似しているものを使用することが好ましい。
【0042】
燃料極層10の材料としては、Ni/YSZ(yttria−stabilized zirconia)複合体、Ru/YSZ複合体のように、Ni、Co、Ru、Ptなどの純粋な金属触媒を含むジルコニア系金属酸化物であってもよい。また、燃料極層10は、燃料ガスが良好に拡散して入り込むことができるように多孔性構造であることが好ましい。
【0043】
電解質層20はジルコニア系金属酸化物であってもよい。より好ましくは、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)またはスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)であってもよい。
【0044】
また、電解質層20は、空気と燃料が混合されないように緻密でなければならず、酸素イオンの伝導度が高く、電子伝導度が低いことが好ましい。また、電解質層20は、両側に非常に大きな酸素分圧差が存在するため、広い酸素分圧領域で前記の物性を維持する必要がある。
【0045】
燃料極層10と電解質層20は同時に焼結されたものであってもよい。
【0046】
好ましくは、燃料極層10と電解質層20との間に燃料極機能層(図示せず)をさらに含ませることによって、燃料の電気化学反応を促進することができる。
【0047】
第1反応防止膜30は、前記電解質層上に形成され、焼結助剤を含まないセリア系金属酸化物が焼結されたものを含むことができる。前記セリア系金属酸化物は、ナノ粉末と粗大粉末が焼結されたものを含むことができる。
【0048】
前記ナノ粉末が焼結されたものは、第1反応防止膜の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれることが好ましい。
【0049】
第2反応防止膜40は、第1反応防止膜30上に形成され、セリア系金属酸化物及び焼結助剤が混合されて焼結されたものを含むことができる。
【0050】
第1反応防止膜30及び第2反応防止膜40は、組織が緻密であり、イオン伝導性に優れるため、電解質層20と空気極層50との間に配置されて、これらの間の元素の拡散を効果的に防止して不導体反応物の形成を抑制することができる。
【0051】
前記焼結助剤は、Co、Fe、Ni、Zn、Cu、Mn及びLiから選択された1種以上またはその酸化物であってもよい。
【0052】
前記焼結助剤は、第2反応防止膜40の総重量に対して0.05〜5wt%の含量で含まれることが好ましい。前記焼結助剤が0.05wt%未満含まれる場合、液相が形成されないため、反応防止膜が緻密化されず、そのため、空気極層50と電解質層20との間の化学反応を抑制することができず、燃料電池の性能及び安定性を低下させることがある。また。前記焼結助剤が5wt%を超えて含まれる場合、液相が過度に多く形成されて電解質層との反応層を形成してしまい、燃料電池の性能を低下させるという問題が発生し得る。
【0053】
また、前記第1反応防止膜30又は第2反応防止膜40に含まれるセリア系金属酸化物は、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)及びランタン(La)からなる群から選択されるいずれか1つ以上を含むセリア系金属酸化物であってもよい。
【0054】
具体的に、前記セリア系金属酸化物は、下記化学式1で表されてもよい。
LnCe1−x2−0.5x 化学式1
前記化学式1において、
Lnは、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)及びランタン(La)から選択されたいずれか1つであり、
xは、0<x=0.4である。
【0055】
第1反応防止膜30及び第2反応防止膜40は、同時に焼結されて製造されたものである。
【0056】
第2反応防止膜40は、セリア系金属酸化物のナノ粉末及び粗大粉末が焼結されたものを含むことが好ましい。
【0057】
前記第1反応防止膜30及び第2反応防止膜40は、空気極層と電解質層との間に位置して、空気極層のLa又はSrが電解質層のジルコニア系金属酸化物と反応してLaZr又はSrZrOのような不導体反応物が生成されることを防止することができる。
【0058】
このような本発明の固体酸化物セルは、ナノ粉末を含み、焼結助剤が含まれていない第1反応防止膜30及び焼結助剤が含まれた第2反応防止膜40を蒸着した後、2つの層を同時に1000℃〜1250℃で焼結して膜を緻密化することを特徴とする。焼結助剤を含んでいない第1反応防止膜30は、焼結助剤を含んでいる第2反応防止膜40と電解質との直接的な接触を防止して、化学反応による二次相の生成を抑制する役割を果たすことができる。
【0059】
また、第1反応防止膜30は、膜の収縮速度を制御して急激な収縮が起こることを抑制することによって、界面の粗大気孔の発生を防止し、界面結合力を確保する役割を果たすことができる。
【0060】
粗大粉末は、クラスタリング(clustering)を通じて焼結速度が過度に速くならないように制御することができ、ナノ粉末は、粗大粉末間の空き空間を充填して粉末のパッキング(packing)を高め、焼結の駆動力を増加させて最終密度を向上させると同時に、界面結合の形成を低温で誘発して界面結合力を高める役割を果たすことができる。
【0061】
一方、第2反応防止膜40は焼結助剤を含むことを特徴とし、これは、流動性を有する液相を形成し、その一部が下部層に移動することによって粉末の再配列を自由にすることによって、1250℃以下の温度でも膜が緻密化されるようにすることができる。
【0062】
空気極層50は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を使用することができるが、本発明の範囲がこれに限定されず、当該技術分野で通常使用される材料であればいずれも適用可能である。前記ペロブスカイト構造を有する金属酸化物は、イオン伝導性と電子伝導性を同時に有する混合伝導体物質であって、高い酸素拡散係数及び電荷交換反応速度係数を有しているため、三相界面だけでなく電極全体の表面で電気化学反応が起こり得、そのため、低温での電極活性に優れ、固体酸化物セルの作動温度を低下させるのに寄与することができる。本発明では、ランタン(La)、コバルト(Co)、鉄(Fe)などを含むペロブスカイト型金属酸化物を使用することができる。また、酸素ガスが良好に拡散して入り込むことができるように多孔性を有することが好ましい。
【0063】
図2は、本発明の固体酸化物セルの製造方法を順次示したフローチャートである。図2を参照して、本発明の固体酸化物セルの製造方法を説明する。
【0064】
まず、燃料極支持体を準備する(ステップa)。
【0065】
ジルコニア系金属酸化物粉末、ニッケル酸化物(NiO)粉末及び気孔前駆体(PMMA)粉末を混合して、乾燥噴霧器を通じて均一な粒径を有する顆粒を製造し、これを燃料極支持体基板として成形するために、モールディング作業を通じて燃料極支持体を製造することができる。
【0066】
燃料極支持体に使用できる原料粉末及びその平均粒度は、次の通りである。ジルコニア系金属酸化物粉末の平均粒径は0.1〜1μmであり、ニッケル酸化物(NiO)粉末の平均粒径は0.5〜1.5μm、気孔前駆体(例えば:PMMA)粉末の平均粒径は3〜7μmであってもよい。
【0067】
前記原料粉末は、10〜15時間ミリング(milling)した後、可塑剤とバインダーを添加して十分に混合してスラリーとして製造することができる。前記スラリーは、乾燥噴霧器を用いて円形の顆粒を製造し、これを用いて燃料極支持体基板として成形し、前記円形の顆粒のうち40〜150μmの粒径を有するものを使用することが好ましい。40μm未満または150μmを超える粒径を有する粉末で燃料極支持体基板を製造する場合、モールディング(molding)過程で基板の内部に欠陥が生じ、亀裂が発生し得るためである。その後、前記燃料極支持体を、150〜250℃で3〜8時間アニーリングすることによって、添加された可塑剤を蒸発させて機械的強度を増加させることができる。
【0068】
次いで、前記燃料極支持体上に電解質層を形成する(ステップb)。
【0069】
前記電解質層は、前記燃料極支持体上にペーストをコーティングし、乾燥及び焼結することによって製造できる。前記コーティングは、スクリーンプリンティング、テープキャスティング、化学気相蒸着、電気化学気相蒸着、スパッタリングなどの方法によって行われることが好ましく、より好ましくは、スクリーンプリンティングによって行うことができる。
【0070】
場合によって、前記電解質層を前記燃料極支持体上にコーティングする前に、燃料極機能層を形成するステップをさらに行うことができ、関連材料を含むペーストのコーティング、乾燥及び焼結によって燃料極機能層を形成することができる。
【0071】
次いで、燃料極支持体と電解質層を同時に焼結する(ステップc)。
【0072】
1300〜1400℃で燃料極支持体と電解質層を同時に焼結して緻密な電解質層を形成することができる。
【0073】
その後、前記電解質層上に、セリア系金属酸化物のナノ粉末及び粗大粉末を含むペーストをコーティングして第1コーティング層を形成する(ステップd)。
【0074】
前記ペーストは焼結助剤を含まないことを特徴とする。
【0075】
前記コーティングは、電解質層のコーティング方法と同一であるので、詳細な説明は省略し、コーティング後に乾燥し、焼結は別途に行わず、以降、第2コーティング層の形成後に共に焼結過程を経ることを特徴とする。
【0076】
前記ナノ粉末は、第1コーティング層の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれることが好ましく、より好ましくは、20〜40wt%の含量で含まれてもよい。
【0077】
前記ナノ粉末の平均粒径は10〜100nmであってもよく、より好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜30nmであってもよい。
【0078】
前記粗大粉末の平均粒径は100nm以上であってもよく、より好ましくは100nm〜1μm、さらに好ましくは100nm〜500nmであってもよい。
【0079】
前記第1コーティング層の厚さは1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2〜8μmであってもよく、さらに好ましくは3〜6μmであってもよい。
【0080】
次いで、前記第1コーティング層上に、セリア系金属酸化物及び焼結助剤を含む混合ペーストをコーティングして第2コーティング層を形成する(ステップe)。
【0081】
前記セリア系金属酸化物は、ナノ粉末と粗大粉末との混合物であることがさらに好ましく、このとき、前記ナノ粉末は、第2コーティング層の総重量に対して5〜50wt%の含量で含まれることが好ましく、より好ましくは、20〜40wt%の含量で含まれてもよい。
【0082】
前記焼結助剤は、上述した金属酸化物セルでの説明と同一であるので、具体的な内容はその部分を参照する。
【0083】
前記焼結助剤の含量は、前記第2コーティング層の総重量に対して0.05〜5wt%の含量で含まれることが好ましく、より好ましくは、20〜40wt%の含量で含まれてもよい。
【0084】
その後、前記第1コーティング層と第2コーティング層を同時に焼結して、第1反応防止膜及び前記第1反応防止膜上に形成された第2反応防止膜を含む二重層の反応防止膜を製造する(ステップf)。
【0085】
前記焼結は、1000〜1250℃の温度で行われることが好ましい。
【0086】
前記焼結するステップでの焼結温度は1000〜1250℃である。前記焼結温度が1000℃未満であると、反応防止膜が十分に焼結されないため、多孔性構造で形成され、界面接合力が不足し、1250℃を超えると、電解質層と化学反応して不導体反応物を含む反応層が形成されてしまい、セルの性能を低下させることがある。
【0087】
最後に、前記二重層の反応防止膜上に空気極層を形成する(ステップg)。
【0088】
前記空気極層は、前記第2反応防止膜上に空気極機能層を形成した後、前記空気極機能層上に空気極集電層を形成する方法で行われてもよい。
【0089】
以下では、本発明に係る製造例及び実施例を、添付の図面と共に具体的に説明する。
【実施例】
【0090】
[粉末の製造例1:第1反応防止膜用GDC(gadolinium doped ceria)粉末の製造]
まず、粗大粉末と3wt%のKD6分散剤を脱イオン水に入れ、24時間ボールミリングを行うことで、粗大粉末溶液を準備した。製造された粗大粉末溶液の組成は、下記の表1に示した通りである。
【0091】
【表1】
【0092】
GNP(glycine−nitrate process)溶液は、硝酸セリウム6水和物(cerium nitrate hexahydrate)、硝酸ガドリニウム6水和物(gadolinium nitrate hexahydrate)、及びグリシン(glycine)を脱イオン水に混合して製造し、その組成を下記の表2にまとめた。
【0093】
【表2】
【0094】
このように製造されたGNP溶液と粗大粉末溶液を、磁気攪拌機(magnetic stirrer)を用いて1時間混合させた。その後、混合した溶液を、400℃以上に加熱した容器に入れ、燃焼させた後、粉末を収集して100μmのふるい(sieve)にかけて濾し、600℃で2時間か焼した。か焼された粉末は、再び乾式ミリングを用いて24時間ミリングした後、100μmのふるいを用いてGDC粉末を製造した。このように製造されたGDC粉末は、ナノ粉末と粗大粉末が3:7の重量比で含まれた。
【0095】
[粉末の製造例2:焼結助剤であるコバルト(Co)を含む第2反応防止膜用GDC(gadolinium doped ceria)粉末の製造]
成分組成を除いては、製造例1と同様の方法で粗大粉末溶液を製造し、成分組成を下記の表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
また、コバルトを含むGNP溶液は、硝酸コバルト(Cobalt nitrate)をさらに含ませた以外は、製造例1でのGNP溶液の製造と同様の方法で製造し、その組成を下記の表4にまとめた。
【0098】
【表4】
【0099】
このように製造されたGNP溶液及び粗大粉末溶液を製造例1と同様の方法で処理して、1wt%のコバルトが含まれたGDC粉末を製造した。このように製造されたGDC粉末は、ナノ粉末と粗大粉末が3:7の重量比で含まれており、GDC粉末の総重量に対して1wt%のコバルトが含まれている。
【0100】
[粉末の製造例3:GDCナノ粉末の製造]
NexTech社のナノ粉末(平均粒径30nm以下)を準備した。
【0101】
[粉末の製造例4:GDC粗大粉末の製造]
Rhodia社のナノ粉末(平均粒径100nm以上)を準備した。
【0102】
[粉末の製造例5:Coが含まれたGDC粗大粉末の製造]
Rhodia社のナノ粉末(平均粒径100nm以上)に1wt%のコバルトを酸化物の形態で混合して準備した。
【0103】
[ペーストの製造例1:第1反応防止膜製造用ペーストの製造]
80mlのナイロン容器(nylon bowl)に3wt%のKD6、α−テルピネオール(α−terpineol)、ボラザン(BH)、フタル酸ブチル(DBP)をジルコニアボール(zirconia ball)と共に入れた後、ミリングし、製造例1によって製造されたGDC粉末を25%ずつ分けて1時間間隔で添加した。ミリングは、プラネタリーミリング(planetary milling)器を用いて140rpmで行った。GDC粉末を全て添加し、24時間ミリングした後、バインダーと可塑剤を入れ、再び220rpmで24時間ミリングを行うことで、第1反応防止膜製造用ペーストを製造した。製造された第1反応防止膜製造用ペーストの組成を、下記の表5にまとめた。
【0104】
【表5】
【0105】
[ペーストの製造例2:第2反応防止膜製造用ペーストの製造]
製造例1によって製造されたGDC粉末の代わりに、製造例2によって製造された、コバルトが含まれたGDC粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で第2反応防止膜製造用ペーストを製造した。第2反応防止膜製造用ペーストの組成は、下記の表6にまとめた。
【0106】
【表6】
【0107】
[ペーストの製造例3:GDCナノ粉末ペーストの製造]
製造例1の代わりに製造例3によって製造されたGDCナノ粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で反応防止膜製造用ペーストを製造した。
【0108】
[ペーストの製造例4:GDC粗大粉末ペーストの製造]
製造例1の代わりに製造例4によって製造されたGDC粗大粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で反応防止膜製造用ペーストを製造した。
【0109】
[ペーストの製造例5:Coが含まれたGDC粗大粉末ペーストの製造]
製造例1の代わりに製造例5によって製造されたCoが含まれたGDC粗大粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で反応防止膜製造用ペーストを製造した。
【0110】
[ペーストの製造例6:空気極機能層製造用ペーストの製造]
製造例1によって製造されたGDC粉末の代わりにランタン−ストロンチウム−コバルト−酸化第二鉄(LSCF、Lanthanum−Strontium−Cobalt−Ferric Oxide)粉末を使用した以外は、製造例3と同様の方法で空気極機能層製造用ペーストを製造し、ペーストの組成は表7にまとめた。
【0111】
【表7】
【0112】
[ペーストの製造例7:空気極集電層製造用ペーストの製造]
ペーストにランタン−ストロンチウム−コバルト−酸化第二鉄(LSCF、Lanthanum−Strontium−Cobalt−Ferric Oxide)粉末を追加した以外は、製造例3と同様の方法で空気極機能層製造用ペーストを製造し、ペーストの組成は表8にまとめた。
【0113】
【表8】
【0114】
[実施例1:反応防止膜の製造]
商用負極/イットリア安定化ジルコニア(yttria−stabilized zirconia;YSZ)電解質基板上に、ペーストの製造例1によって製造されたペーストをスクリーンプリンティング法で塗布し、約3μmの厚さで下部層ペースト層を形成した。その後、下部層ペースト層を常温で30分間、60℃のオーブンで1時間順次乾燥させた後、下部層ペースト層上にペーストの製造例2によって製造されたペーストを塗布し、約3μmの厚さで上部層ペースト層を形成し、下部層ペースト層の乾燥条件と同一に乾燥させた。その後、電気炉を使用して上部層及び下部層を同時に1200℃で焼結させることで、二重層の反応防止膜を製造した。
【0115】
[比較例1:GDCナノ粉末の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例3によって製造されたペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成し、1250℃で焼結した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0116】
[比較例2:GDC粗大粉末の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例4によって製造された粗大粉末ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0117】
[比較例3:Coが含まれたGDC粗大粉末の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例5によって製造されたCoが含まれた粗大粉末ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0118】
[比較例4:GDCナノ、粗大粉末混合の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例1によって製造されたナノ粉末と粗大粉末との混合ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0119】
[比較例5:Coが含まれたGDCナノ、粗大粉末混合の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例2によって製造されたCoが含まれたナノ粉末と粗大粉末との混合ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0120】
[比較例6:ナノ粉末を含まない下部層を有する二重層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例1の代わりにペーストの製造例4によって製造された粗大粉末ペーストを用いて下部層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で二重層の反応防止膜を製造した。
【0121】
[比較例7:別途焼結の二重層の反応防止膜の製造]
反応防止膜の下部層と上部層の焼結をそれぞれ別途に行った以外は、実施例1と同様の方法で二重層の反応防止膜を製造した。
【0122】
[素子実施例1]
反応防止膜の焼結後、反応防止膜上にペーストの製造例6によって製造されたペーストをスクリーンプリンティングで4回塗布して空気極機能層を形成し、次いで、製造例7によって製造されたペーストをスクリーンプリンティングで4回塗布して空気極の集電層を形成した。このとき、1回塗布する毎に、常温で30分間平坦化させた後、60℃のオーブンで約2時間乾燥させた。その後、1050℃で空気極を焼結して、5cm×5cmの面積の固体酸化物セルを製造した。
【0123】
[素子比較例1]
比較例1に従って反応防止膜を形成した以外は、素子実施例1と同様の方法で固体酸化物セルを製造した。
【0124】
[素子比較例2]
比較例2に従って反応防止膜を形成した以外は、素子実施例1と同様の方法で固体酸化物セルを製造した。
【0125】
[素子比較例3]
比較例3に従って反応防止膜を形成した以外は、素子実施例1と同様の方法で固体酸化物セルを製造した。
【0126】
〔試験例〕
[試験例1:反応防止膜の構造の確認]
図3は、従来のGDC粗大粉末を含む単一層の反応防止膜及びそれを用いた固体酸化物セルの側断面を示したSEMイメージまたはTEMイメージを示したものである。
【0127】
具体的に、図3の(a)は、比較例2によって製造されたYSZ電解質上のGDC反応防止膜の側断面のSEMイメージであり、図3の(b)は、素子比較例2によって製造された固体酸化物セルのSEMイメージであって、LSCF正極から移動したSrが電解質のZrと反応して電解質と反応防止膜との界面に多量のSrZrOを形成したことが示されている。
【0128】
また、図3の(c)は、素子比較例2によって製造された固体酸化物セルにおいて、電解質と反応防止膜との間に形成されたSrZrO層のTEMイメージであり、図3の(d)は、素子比較例2によって製造された固体酸化物セルにおいて、SrZrO層によって破壊された電解質と反応防止膜との界面を示すSEMイメージである。このように、電解質と反応防止膜との間に形成されたSrZrO層は、固体酸化物セルの性能及び熱的安定性を低下させ、電解質と反応防止膜との界面の破壊を起こすものと示された。
【0129】
図4の(a)は、比較例1によって製造された反応防止膜のSEMイメージである。図4の(a)によれば、平均粒径30nm以下のナノ粉末を使用したにもかかわらず、1250℃での焼結時に十分な焼結度を得ることができず、多量の気孔が依然として存在するものと示された。したがって、セリア系金属酸化物粉末のサイズを減らすだけでは、1250℃以下の温度で反応防止膜を緻密化することができないということを確認できる。
【0130】
図4の(b)は、比較例3によって製造された反応防止膜のSEMイメージであり、図4の(c)は、素子比較例3の固体酸化物セルの評価後のSEMイメージを示したものである。図4の(b)及び(c)によれば、コバルトを含む反応防止膜は、液相焼結によって焼結度が上昇するようになり、局部的には非常に緻密な構造が形成されることがわかる。しかし、界面との結合が形成される前に膜内での焼結が速く進行することによって、界面構造が非常に脆弱であり、部分的に焼結速度が不均一であるため、焼結速度が相対的に遅い部分で垂直方向の大きな気孔が形成されることがわかる。また、コバルト焼結助剤が含有される場合、反応防止膜(GDC)と電解質層(YSZ)との反応性が上昇して界面に相互拡散が激しくなり、これは、セル抵抗を上昇させ得る。このような構造の反応防止膜をセルに適用する場合、界面反応物によって性能が低いだけでなく、図示のように、界面剥離及び垂直方向の破壊が発生するものと示された。したがって、単に焼結助剤を添加するだけでは、緻密で且つ安定した反応防止膜を製造できないことを確認できる。
【0131】
図5は、(a)比較例2、(b)比較例4、(c)比較例5及び(d)実施例1によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージを示したものである。
【0132】
図5によれば、比較例2及び4によって製造された反応防止膜は、焼結助剤を含まないため、両方とも焼結度が不足して多量の気孔が存在するものと示された。一方、比較例5のコバルトを追加した単一層の場合には、局部的に膜の密度は増加するが、垂直方向の大きな気孔及び界面に多くの工程欠陥が存在することを確認できる。その一方、実施例1によって製造された反応防止膜は、工程欠陥が存在せず、優れた界面結合力を有し、非常に緻密な反応防止膜が形成されたことを確認できる。
【0133】
図6は、比較例7によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。図6によれば、粗大粉末とナノ粉末が7:3で混合された下部層を蒸着した後、1200℃で焼結し、その後、Coを焼結助剤として含有した上部層を蒸着した後、別途に再び1200℃で焼結した場合の微細構造を確認できる。上部層と下部層を別途に焼結する場合、上部層の焼結助剤によって下部層の追加的な焼結が制限的に行われるため、2つの層を同時に焼結した図5の(d)の実施例1による反応防止膜に比べて、非常に多い残留気孔が存在することがわかる。このような結果によれば、上部層と下部層を蒸着した後、同時に焼結する本発明の実施例1の場合、緻密な構造の反応防止膜を形成できることを確認できる。
【0134】
図7は、比較例6によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。図7によれば、粗大粉末のみからなる下部層、及び1wt%のCoを焼結助剤として含有した上部層を蒸着した後、1200℃で焼結した場合、反応防止膜の微細構造を確認できる。下部層にナノ粉末が含まれない場合、実施例1(図5(d))に比べて、膜内に多くの気孔が残留しており、界面にも相対的に多くの気孔が形成されていることを確認できる。下部層に含まれるナノ粉末は、充填密度を高め、焼結駆動力を向上させて膜の緻密化を達成し、界面結合の形成にも寄与することを確認できる。
【0135】
[試験例2:反応防止膜の外観確認]
図8は、比較例1及び実施例1によって製造された反応防止膜のイメージを示したものである。図8を参照すると、従来の比較例1の反応防止膜は、膜内に多くの気孔が存在するため、不透明な白色を示す反面、二重層を使用した場合、緻密な膜が形成されて透明に見えることが目視で確認できた。
【0136】
[試験例3:固体酸化物セルの長期評価]
図9は、素子実施例1及び素子比較例2によって製造された固体酸化物セルの800℃での長期評価の結果を示したものである。
【0137】
図9によれば、二重層の緻密な反応防止膜を含む素子実施例1の固体酸化物セルの場合、正極と電解質との化学反応を抑制して、素子比較例2の固体酸化物セルの場合に比べて劣化が遅く発生することが確認できた。
【0138】
図10は、素子実施例1及び素子比較例2によって製造された固体酸化物セルの長期評価後のSEM及びTEMイメージ分析による反応防止膜の構造及び化学分析の結果を示したものである。
【0139】
図10によれば、素子比較例2での反応防止膜は、気孔が多く、反応防止膜と電解質との界面で多量のSrが検出された。その一方、素子実施例1での二重層の反応防止膜は、膜が非常に緻密であり、界面でSrがほとんど検出されなかった。したがって、長期評価及び事後分析結果を通じて、二重層の反応防止膜を適用する場合、セルの製造及び運転過程の間、正極からSrの移動を効果的に防止して長期安定性を向上させることを確認できる。
【0140】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を様々に修正及び変更させることができ、これもまた本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【符号の説明】
【0141】
10:燃料極層
20:電解質層
30:第1反応防止膜
40:第2反応防止膜
50:空気極層
100:固体酸化物セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10