【実施例】
【0090】
[粉末の製造例1:第1反応防止膜用GDC(gadolinium doped ceria)粉末の製造]
まず、粗大粉末と3wt%のKD6分散剤を脱イオン水に入れ、24時間ボールミリングを行うことで、粗大粉末溶液を準備した。製造された粗大粉末溶液の組成は、下記の表1に示した通りである。
【0091】
【表1】
【0092】
GNP(glycine−nitrate process)溶液は、硝酸セリウム6水和物(cerium nitrate hexahydrate)、硝酸ガドリニウム6水和物(gadolinium nitrate hexahydrate)、及びグリシン(glycine)を脱イオン水に混合して製造し、その組成を下記の表2にまとめた。
【0093】
【表2】
【0094】
このように製造されたGNP溶液と粗大粉末溶液を、磁気攪拌機(magnetic stirrer)を用いて1時間混合させた。その後、混合した溶液を、400℃以上に加熱した容器に入れ、燃焼させた後、粉末を収集して100μmのふるい(sieve)にかけて濾し、600℃で2時間か焼した。か焼された粉末は、再び乾式ミリングを用いて24時間ミリングした後、100μmのふるいを用いてGDC粉末を製造した。このように製造されたGDC粉末は、ナノ粉末と粗大粉末が3:7の重量比で含まれた。
【0095】
[粉末の製造例2:焼結助剤であるコバルト(Co)を含む第2反応防止膜用GDC(gadolinium doped ceria)粉末の製造]
成分組成を除いては、製造例1と同様の方法で粗大粉末溶液を製造し、成分組成を下記の表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
また、コバルトを含むGNP溶液は、硝酸コバルト(Cobalt nitrate)をさらに含ませた以外は、製造例1でのGNP溶液の製造と同様の方法で製造し、その組成を下記の表4にまとめた。
【0098】
【表4】
【0099】
このように製造されたGNP溶液及び粗大粉末溶液を製造例1と同様の方法で処理して、1wt%のコバルトが含まれたGDC粉末を製造した。このように製造されたGDC粉末は、ナノ粉末と粗大粉末が3:7の重量比で含まれており、GDC粉末の総重量に対して1wt%のコバルトが含まれている。
【0100】
[粉末の製造例3:GDCナノ粉末の製造]
NexTech社のナノ粉末(平均粒径30nm以下)を準備した。
【0101】
[粉末の製造例4:GDC粗大粉末の製造]
Rhodia社のナノ粉末(平均粒径100nm以上)を準備した。
【0102】
[粉末の製造例5:Coが含まれたGDC粗大粉末の製造]
Rhodia社のナノ粉末(平均粒径100nm以上)に1wt%のコバルトを酸化物の形態で混合して準備した。
【0103】
[ペーストの製造例1:第1反応防止膜製造用ペーストの製造]
80mlのナイロン容器(nylon bowl)に3wt%のKD6、α−テルピネオール(α−terpineol)、ボラザン(BH
3)、フタル酸ブチル(DBP)をジルコニアボール(zirconia ball)と共に入れた後、ミリングし、製造例1によって製造されたGDC粉末を25%ずつ分けて1時間間隔で添加した。ミリングは、プラネタリーミリング(planetary milling)器を用いて140rpmで行った。GDC粉末を全て添加し、24時間ミリングした後、バインダーと可塑剤を入れ、再び220rpmで24時間ミリングを行うことで、第1反応防止膜製造用ペーストを製造した。製造された第1反応防止膜製造用ペーストの組成を、下記の表5にまとめた。
【0104】
【表5】
【0105】
[ペーストの製造例2:第2反応防止膜製造用ペーストの製造]
製造例1によって製造されたGDC粉末の代わりに、製造例2によって製造された、コバルトが含まれたGDC粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で第2反応防止膜製造用ペーストを製造した。第2反応防止膜製造用ペーストの組成は、下記の表6にまとめた。
【0106】
【表6】
【0107】
[ペーストの製造例3:GDCナノ粉末ペーストの製造]
製造例1の代わりに製造例3によって製造されたGDCナノ粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で反応防止膜製造用ペーストを製造した。
【0108】
[ペーストの製造例4:GDC粗大粉末ペーストの製造]
製造例1の代わりに製造例4によって製造されたGDC粗大粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で反応防止膜製造用ペーストを製造した。
【0109】
[ペーストの製造例5:Coが含まれたGDC粗大粉末ペーストの製造]
製造例1の代わりに製造例5によって製造されたCoが含まれたGDC粗大粉末を使用した以外は、ペーストの製造例1と同様の方法で反応防止膜製造用ペーストを製造した。
【0110】
[ペーストの製造例6:空気極機能層製造用ペーストの製造]
製造例1によって製造されたGDC粉末の代わりにランタン−ストロンチウム−コバルト−酸化第二鉄(LSCF、Lanthanum−Strontium−Cobalt−Ferric Oxide)粉末を使用した以外は、製造例3と同様の方法で空気極機能層製造用ペーストを製造し、ペーストの組成は表7にまとめた。
【0111】
【表7】
【0112】
[ペーストの製造例7:空気極集電層製造用ペーストの製造]
ペーストにランタン−ストロンチウム−コバルト−酸化第二鉄(LSCF、Lanthanum−Strontium−Cobalt−Ferric Oxide)粉末を追加した以外は、製造例3と同様の方法で空気極機能層製造用ペーストを製造し、ペーストの組成は表8にまとめた。
【0113】
【表8】
【0114】
[実施例1:反応防止膜の製造]
商用負極/イットリア安定化ジルコニア(yttria−stabilized zirconia;YSZ)電解質基板上に、ペーストの製造例1によって製造されたペーストをスクリーンプリンティング法で塗布し、約3μmの厚さで下部層ペースト層を形成した。その後、下部層ペースト層を常温で30分間、60℃のオーブンで1時間順次乾燥させた後、下部層ペースト層上にペーストの製造例2によって製造されたペーストを塗布し、約3μmの厚さで上部層ペースト層を形成し、下部層ペースト層の乾燥条件と同一に乾燥させた。その後、電気炉を使用して上部層及び下部層を同時に1200℃で焼結させることで、二重層の反応防止膜を製造した。
【0115】
[比較例1:GDCナノ粉末の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例3によって製造されたペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成し、1250℃で焼結した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0116】
[比較例2:GDC粗大粉末の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例4によって製造された粗大粉末ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0117】
[比較例3:Coが含まれたGDC粗大粉末の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例5によって製造されたCoが含まれた粗大粉末ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0118】
[比較例4:GDCナノ、粗大粉末混合の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例1によって製造されたナノ粉末と粗大粉末との混合ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0119】
[比較例5:Coが含まれたGDCナノ、粗大粉末混合の単一層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例2によって製造されたCoが含まれたナノ粉末と粗大粉末との混合ペーストを用いて約5μmの厚さで単一層の反応防止膜を形成した以外は、実施例1と同様の方法で反応防止膜を製造した。
【0120】
[比較例6:ナノ粉末を含まない下部層を有する二重層の反応防止膜の製造]
ペーストの製造例1の代わりにペーストの製造例4によって製造された粗大粉末ペーストを用いて下部層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で二重層の反応防止膜を製造した。
【0121】
[比較例7:別途焼結の二重層の反応防止膜の製造]
反応防止膜の下部層と上部層の焼結をそれぞれ別途に行った以外は、実施例1と同様の方法で二重層の反応防止膜を製造した。
【0122】
[素子実施例1]
反応防止膜の焼結後、反応防止膜上にペーストの製造例6によって製造されたペーストをスクリーンプリンティングで4回塗布して空気極機能層を形成し、次いで、製造例7によって製造されたペーストをスクリーンプリンティングで4回塗布して空気極の集電層を形成した。このとき、1回塗布する毎に、常温で30分間平坦化させた後、60℃のオーブンで約2時間乾燥させた。その後、1050℃で空気極を焼結して、5cm×5cmの面積の固体酸化物セルを製造した。
【0123】
[素子比較例1]
比較例1に従って反応防止膜を形成した以外は、素子実施例1と同様の方法で固体酸化物セルを製造した。
【0124】
[素子比較例2]
比較例2に従って反応防止膜を形成した以外は、素子実施例1と同様の方法で固体酸化物セルを製造した。
【0125】
[素子比較例3]
比較例3に従って反応防止膜を形成した以外は、素子実施例1と同様の方法で固体酸化物セルを製造した。
【0126】
〔試験例〕
[試験例1:反応防止膜の構造の確認]
図3は、従来のGDC粗大粉末を含む単一層の反応防止膜及びそれを用いた固体酸化物セルの側断面を示したSEMイメージまたはTEMイメージを示したものである。
【0127】
具体的に、
図3の(a)は、比較例2によって製造されたYSZ電解質上のGDC反応防止膜の側断面のSEMイメージであり、
図3の(b)は、素子比較例2によって製造された固体酸化物セルのSEMイメージであって、LSCF正極から移動したSrが電解質のZrと反応して電解質と反応防止膜との界面に多量のSrZrO
3を形成したことが示されている。
【0128】
また、
図3の(c)は、素子比較例2によって製造された固体酸化物セルにおいて、電解質と反応防止膜との間に形成されたSrZrO
3層のTEMイメージであり、
図3の(d)は、素子比較例2によって製造された固体酸化物セルにおいて、SrZrO
3層によって破壊された電解質と反応防止膜との界面を示すSEMイメージである。このように、電解質と反応防止膜との間に形成されたSrZrO
3層は、固体酸化物セルの性能及び熱的安定性を低下させ、電解質と反応防止膜との界面の破壊を起こすものと示された。
【0129】
図4の(a)は、比較例1によって製造された反応防止膜のSEMイメージである。
図4の(a)によれば、平均粒径30nm以下のナノ粉末を使用したにもかかわらず、1250℃での焼結時に十分な焼結度を得ることができず、多量の気孔が依然として存在するものと示された。したがって、セリア系金属酸化物粉末のサイズを減らすだけでは、1250℃以下の温度で反応防止膜を緻密化することができないということを確認できる。
【0130】
図4の(b)は、比較例3によって製造された反応防止膜のSEMイメージであり、
図4の(c)は、素子比較例3の固体酸化物セルの評価後のSEMイメージを示したものである。
図4の(b)及び(c)によれば、コバルトを含む反応防止膜は、液相焼結によって焼結度が上昇するようになり、局部的には非常に緻密な構造が形成されることがわかる。しかし、界面との結合が形成される前に膜内での焼結が速く進行することによって、界面構造が非常に脆弱であり、部分的に焼結速度が不均一であるため、焼結速度が相対的に遅い部分で垂直方向の大きな気孔が形成されることがわかる。また、コバルト焼結助剤が含有される場合、反応防止膜(GDC)と電解質層(YSZ)との反応性が上昇して界面に相互拡散が激しくなり、これは、セル抵抗を上昇させ得る。このような構造の反応防止膜をセルに適用する場合、界面反応物によって性能が低いだけでなく、図示のように、界面剥離及び垂直方向の破壊が発生するものと示された。したがって、単に焼結助剤を添加するだけでは、緻密で且つ安定した反応防止膜を製造できないことを確認できる。
【0131】
図5は、(a)比較例2、(b)比較例4、(c)比較例5及び(d)実施例1によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージを示したものである。
【0132】
図5によれば、比較例2及び4によって製造された反応防止膜は、焼結助剤を含まないため、両方とも焼結度が不足して多量の気孔が存在するものと示された。一方、比較例5のコバルトを追加した単一層の場合には、局部的に膜の密度は増加するが、垂直方向の大きな気孔及び界面に多くの工程欠陥が存在することを確認できる。その一方、実施例1によって製造された反応防止膜は、工程欠陥が存在せず、優れた界面結合力を有し、非常に緻密な反応防止膜が形成されたことを確認できる。
【0133】
図6は、比較例7によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。
図6によれば、粗大粉末とナノ粉末が7:3で混合された下部層を蒸着した後、1200℃で焼結し、その後、Coを焼結助剤として含有した上部層を蒸着した後、別途に再び1200℃で焼結した場合の微細構造を確認できる。上部層と下部層を別途に焼結する場合、上部層の焼結助剤によって下部層の追加的な焼結が制限的に行われるため、2つの層を同時に焼結した
図5の(d)の実施例1による反応防止膜に比べて、非常に多い残留気孔が存在することがわかる。このような結果によれば、上部層と下部層を蒸着した後、同時に焼結する本発明の実施例1の場合、緻密な構造の反応防止膜を形成できることを確認できる。
【0134】
図7は、比較例6によって製造された反応防止膜の側断面のSEMイメージである。
図7によれば、粗大粉末のみからなる下部層、及び1wt%のCoを焼結助剤として含有した上部層を蒸着した後、1200℃で焼結した場合、反応防止膜の微細構造を確認できる。下部層にナノ粉末が含まれない場合、実施例1(
図5(d))に比べて、膜内に多くの気孔が残留しており、界面にも相対的に多くの気孔が形成されていることを確認できる。下部層に含まれるナノ粉末は、充填密度を高め、焼結駆動力を向上させて膜の緻密化を達成し、界面結合の形成にも寄与することを確認できる。
【0135】
[試験例2:反応防止膜の外観確認]
図8は、比較例1及び実施例1によって製造された反応防止膜のイメージを示したものである。
図8を参照すると、従来の比較例1の反応防止膜は、膜内に多くの気孔が存在するため、不透明な白色を示す反面、二重層を使用した場合、緻密な膜が形成されて透明に見えることが目視で確認できた。
【0136】
[試験例3:固体酸化物セルの長期評価]
図9は、素子実施例1及び素子比較例2によって製造された固体酸化物セルの800℃での長期評価の結果を示したものである。
【0137】
図9によれば、二重層の緻密な反応防止膜を含む素子実施例1の固体酸化物セルの場合、正極と電解質との化学反応を抑制して、素子比較例2の固体酸化物セルの場合に比べて劣化が遅く発生することが確認できた。
【0138】
図10は、素子実施例1及び素子比較例2によって製造された固体酸化物セルの長期評価後のSEM及びTEMイメージ分析による反応防止膜の構造及び化学分析の結果を示したものである。
【0139】
図10によれば、素子比較例2での反応防止膜は、気孔が多く、反応防止膜と電解質との界面で多量のSrが検出された。その一方、素子実施例1での二重層の反応防止膜は、膜が非常に緻密であり、界面でSrがほとんど検出されなかった。したがって、長期評価及び事後分析結果を通じて、二重層の反応防止膜を適用する場合、セルの製造及び運転過程の間、正極からSrの移動を効果的に防止して長期安定性を向上させることを確認できる。
【0140】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を様々に修正及び変更させることができ、これもまた本発明の権利範囲内に含まれると言える。