(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858086
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】送り端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 9/22 20060101AFI20210405BHJP
H01H 73/20 20060101ALI20210405BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
H01R9/22
H01H73/20 B
H02B1/40 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-126138(P2017-126138)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-9068(P2019-9068A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 雄一
【審査官】
井上 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−329533(JP,A)
【文献】
特開2011−210629(JP,A)
【文献】
特開2001−15189(JP,A)
【文献】
特開平7−105820(JP,A)
【文献】
特開平10−326555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/22 − 9/24
H01H 73/20
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電機器の一極に対して複数の端子部を備えた送り端子台であって、前記複数の端子部は、互いに左右にずれた位置に設けられ、一方の端子部を、上面視で、隣接する異極端子部間を仕切る隔壁部に重複するように配置した送り端子台。
【請求項2】
前記隔壁部は、左右にずらした上側隔壁部と下側隔壁部からなり、前記下側隔壁部は、隣接する異極端子側に張り出すように設けられ、前記一方の端子部が上面視で上側隔壁部に重複する位置に配置された請求項1に記載の送り端子台。
【請求項3】
複数の端子部は、前記一方の端子部が下側に位置するように、上下にずらして構成され、下側隔壁部を、隣接する異極の上側端子部に重複するように設けた請求項1又は2に記載の送り端子台。
【請求項4】
隔壁部は下側端子部の上方に傾斜部を備え、下側端子部に向かって延びる切り欠き部を前記傾斜部に設けた請求項1から3に記載の送り端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り端子台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、主幹ブレーカの端子部に複数の端子部を備えた端子板を形成する送り端子台を接続し、電圧を分岐する技術が知られている。送り端子台は1極の1つの端子部に複数の電線を接続することを防止するために、上側端子部と下側端子部を設けるのが一般的である。また、形状を小さくするために上側端子部と下側端子部を重複させるように配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−42918号公報
【0004】
しかしながら、このような構造では、上側端子部に圧着端子などを固定した場合、この圧着端子が障害となり、下側の端子部への圧着端子の接続やねじの増し締めをすることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、送り端子台の大型化を抑制しつつも、端子部への配線やねじの増し締めを行い易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、配電機器の一極に対して複数の端子部を備えた送り端子台であって、前記複数の端子部は、互いに左右にずれた位置に設けられ、一方の端子部を、上面視で、隣接する異極端子部間を仕切る隔壁部に重複するように配置した送り端子台とする。
【0007】
また、前記隔壁部は、左右にずらした上側隔壁部と下側隔壁部からなり、前記下側隔壁部は、隣接する異極端子側に張り出すように設けられ、前記一方の端子部が上面視で上側隔壁部に重複する位置に配置された構成とすることが好ましい。
【0008】
また、複数の端子部は、前記一方の端子部が下側に位置するように、上下にずらして構成され、下側隔壁部を、隣接する異極の上側端子部に重複するように設けた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、隔壁部は下側端子部の上方に傾斜部を備え、下側端子部に向かって延びる切り欠き部を前記傾斜部に設けた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、送り端子台の大型化を抑制しつつも、端子部への配線やねじの増し締めを行い易くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】実施形態の送り端子台が組み込まれた分電盤の内機の正面図である。
【
図4】背面側から見た実施形態の送り端子台の斜視図である。
【
図5】上側端子部と下側端子部が接続された端子板の斜視図である。
【
図6】
図5とは別の角度から見た、上側端子部と下側端子部が接続された端子板の斜視図である。
【
図7】入力側配線と送り側配線が接続された端子台の斜視図である。
【
図8】端子カバーを取り付けた送り端子台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1乃至
図3に示されていることから理解されるように、本実施形態の送り端子台1は、端子ねじである複数の端子部21,22を有する端子板5が配電機器9の一極に対して接続されるものである。この複数の端子部21,22は、各々の端子部21,22が左右にずれた位置に設けられており、一方の端子部22を、上面視で、隣接する異極端子部間を仕切る隔壁部3に重複するように配置している。このため、送り端子台1の大型化を抑制しつつも、端子部21,22への配線(電線に形成した圧着端子75の接続)やねじの増し締めを行い易くすることが可能となる。
【0013】
以下、開閉器である主幹ブレーカの電源側に接続される一次送り端子台1を例にして説明する。複数の端子部21,22を有する端子板5が配電機器9の一極に対して接続されるものであるが、
図1などに示すように、本実施形態では三極分の端子部を備えた構成である。また、隣接する端子部間には隔壁部3を設けており、この隔壁部3が隣接する端子部間を絶縁する。
【0014】
本実施形態の送り端子台1は、配電機器9である主幹ブレーカに接続されており、分電盤の一部となっている。この主幹ブレーカの一次側には送り端子台1の端子部21を介して入力側配線71が接続されている。この入力側配線71は商用電源に接続されている。
図3に示すことから理解されるように、本実施形態の分電盤は主幹ブレーカの二次側に複数の分岐ブレーカ62が取り付けられている。また、主幹ブレーカの一次側に接続される一次送り用ブレーカ63を備えており、主幹ブレーカと一次送り用ブレーカ63は送り端子台1の端子部22を介して送り側配線72により接続されている。
【0015】
図4に示すように、送り端子台1は、開閉器と対向する位置に通気孔19となる開口部を複数形成し、開閉器の排気口から開閉器の接点開離時に発生するアークガスの排気を可能としている。
【0016】
図5及び
図6に示すように、本実施形態の端子部は端子板5に接続されている。端子板5は上側端子部21と下側端子部22が接続されるように後方向視で略ユ字状に構成されている。より詳しくは、端子板5は上側端子部21が接続される上側端子座51と、下側端子部22が接続される下側端子座52と、上側端子座51と下側端子座52とを連結する連結部53を備えている。なお、本実施形態では、上側端子座51と下側端子座52が平行となるように構成されている。
【0017】
連結部53は送り端子台1の通気孔19を塞がないように形成されている。本実施形態では
図1及び
図2に示すことから理解されるように、平板を屈曲させた端子板5は平板状の面が前後方向に向かないように配置され、開閉器の排気口からの排気を可能としている。
【0018】
端子板5には略U字状の接続部54を備えている。この接続部54は上側端子座51から突出するように設けられている。
図3に示す例では、この接続部54が主幹ブレーカの一極に接続されている。
【0019】
上側端子部21と下側端子部22は、それぞれ、上下、左右、前後にずらして配置されている。また、上側端子部21と下側端子部22は前後方向にのみ重複するように配置されている。つまり、上側端子部21と下側端子部22は左右方向に重複しないように配置されているため、
図7に示すように、上側端子部21に圧着端子75が接続された場合でも、圧着端子75を回避しながら工具を下側端子部22に接近させて操作することができる。なお、上側端子部21と下側端子部22は前後方向には重複しているため、送り端子台1が前後方向に長くなることを抑えることが可能となる。
【0020】
図1などに示すことから理解されるように、本実施形態では、上側端子部21は下側端子部22よりサイズの大きいねじとしている。したがって上側端子部21は、許容電流が大きい電線を接続することが可能となる。なお、下側端子部22は、送り用のものであり、例えば、感震リレーや計測装置や主幹ブレーカがトリップした場合でも電灯が消えないようにするための非常用電灯用のブレーカ等が接続される。このように、主幹ブレーカの負荷側に接続される複数の分岐ブレーカ62よりも容量が大きい配電機器が接続されないため、上側端子部21に接続される電線よりも許容電流の小さい電線が接続されるものであっても構わない。
【0021】
図9に示すように、本実施形態の隔壁部3は、上面視で、上側端子部21から下側端子部22の左右を囲うように設けられている。また、上面視で、下側端子部22の側方に位置する部位は、下側端子部22に向かう方向に傾斜するように傾斜部31が構成されている。例えば、傾斜部31を形成していない場合には上端部には角部が生じるが、この角部は一番強度が弱くなる部分である。太いケーブルに備えられた圧着端子75を端子部に接続する際、ケーブルが、この角部を破損させてしまう虞がある。このため、開放端部を傾斜状に構成している。
【0022】
また、隔壁部3の傾斜部31には、上面視で、下側端子部22の側方に位置する部位に切り欠き部32を備えている。この切り欠き部32は下側端子部22の締め付けを行うドライバなどの工具を挿入させるスペースを確保するために設けられたものであり、下側端子部22に向かって延びるように設けられている。この切り欠き部32があることで、下側端子部22の締め付けなどを行う際、工具を切欠部32の上方または後側から挿入し下側端子部22に近づけることが容易となる。このように、下側端子部22を隔壁部3の切り欠き部32から露出させることで、電線を接続するための工具を通過可能としているため、電線の接続または接続後の増し締めの確認をする際のアクセスが可能となっている。
【0023】
隔壁部3は上側隔壁部3aと下側隔壁部3bからなり、互いに左右にずらして形成してなり、下側隔壁部3bは、隣接する異極の上側端子部21側に張り出すように設けられ、詳しくは、異極の上側端子部21の下方に位置するように延びている。つまり、上面視では、隔壁部3の下側隔壁部3bと隣接する異極の上側端子部21が上下方向、または、前後方向に一部重複するように配置される。このような構成とする為、隔壁部3は、後方向視で略クランク形状としている。下側端子座52はクランク状の隔壁部3まで延びるように配置されており、下側隔壁部3bが下側端子座52の一部を覆うような構成となる。このため上面視では、下側端子部22と上側隔壁部3aとが上下方向または前後方向に一部重複する位置に配置される。なお、下側端子部22を覆うように形成される下側隔壁部3bが異極の上側端子部21と一部重複するような構成とすることで、送り端子台1の左右方向のサイズの拡大を抑制することが可能となる。また、本実施形態の傾斜部31は上側隔壁部3aに形成されているものである。
【0024】
隔壁部3には下側端子座52の上下方向の移動を規制する押さえ部34を備えている。なお、上下の端子座は隔壁部3に当接して左右方向への移動が規制されている。また、接続部54が通過される孔部69により端子部の浮き上がり等が防止できる。なお、前後方向に対しては端子ねじの端子部21、端子部22を上側端子座51、下側端子座52を介して送り端子台1に固定することによって移動を防止している。
【0025】
本実施形態の送り端子台1は、
図8に示すように、上側端子部21などを上方から覆う端子カバー8を取り付けることができる。本実施形態では送り端子台1の端部に設けた端子カバー支持部18などを用いることで、端子カバー8が抜け落ちることを抑制している。なお、この端子カバー支持部18は端子カバー8を差し込むことができる凹部を備えている。
【0026】
以上、一つの実施形態を中心に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、実施形態では送り端子台は主幹ブレーカの電源側に接続する一次送り端子台であるが、負荷が接続される負荷側に形成する二次送り端子台としても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 送り端子台
3 隔壁部
3a 上側隔壁部
3b 下側隔壁部
9 配電機器
21 上側端子部
22 下側端子部
31 傾斜部
32 切り欠き部