(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するレーダ装置および物標検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1Aおよび
図1Bを用いて実施形態に係るレーダ装置による物標検出方法の概要について説明する。
図1Aは、車両に搭載されたレーダ装置と物標との位置関係の一例を示す図である。
図1Bは、物標検出方法の概要を示す図である。
【0012】
図1Aに示すように、実施形態に係るレーダ装置1は、自動車などの自車両MCに搭載されており、前方の物標(例えば、他車両、歩行者、ガードレールなどの静止物など)を検出する。
【0013】
レーダ装置1は、周波数が連続的に増加または減少するチャープ波を送信して検出範囲L内に存在する各物標との距離および相対速度を検出するFCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置である。
【0014】
レーダ装置1は、チャープ波を生成する送信信号と物標によるチャープ波の反射波を受信して得られる受信信号とから生成されたチャープ波毎のビート信号に対して2次元高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)処理(以下、2次元FFT処理と記載する)を行って物標との距離および相対速度を導出する。
【0015】
具体的には、2次元FFT処理において、1回目の高速フーリエ変換(以下、FFT処理と記載する)によって物標との距離を導出し、2回目のFFT処理によって物標との相対速度を導出する。
【0016】
ここで、2回目のFFT処理では、ビート信号毎の位相差に基づいて物標との相対速度を導出する。このため、例えば、チャープ波の送信時において位相雑音(デバイスの持つ固有のランダムな雑音。例えば、熱雑音やチャープ波の送信タイミングのズレ等)が発生した場合、相対速度に関するビート信号には物標との相対速度に基づく位相差に加え、位相雑音に基づく位相差が現れる。
【0017】
そして、ある距離BINの相対速度に関するビート信号で信号強度が所定値以上となる比較的強い信号強度のピーク(反射波のパワーが大きい大型車両(例えば、トラックやバス等)に関するピーク)が検出されている場合、この相対速度に関するビート信号の信号強度(パワー)が相対的に上昇する。このため、従来技術では、相対速度に関するビート信号において位相雑音に基づくノイズピークの信号強度も上昇し、当該ノイズピークを物標のピークとして誤抽出するおそれがあった。
【0018】
そこで、実施形態に係る物標検出方法では、位相雑音の影響により所定の距離周波数ごと(距離BINごと)に導出される相対速度に関するビート信号にノイズピークが発生する点に着目し、所定の距離周波数毎に相対速度に関するビート信号におけるピーク抽出の第1閾値Th1を設定することとした。
【0019】
以下、
図1Bを用いて実施形態に係る物標検出方法の概要について説明する。なお、
図1Bは、2次元FFT処理の結果である周波数スペクトルを示し、物標が存在する特定の距離におけるスペクトルを断面的に示す。
【0020】
また、
図1Bでは、かかる周波数スペクトルにおいて強反射物のピークP1が存在する場合を実線で示し、比較のためにピークP1が存在しない場合の周波数スペクトルを破線で示す。
【0021】
図1Bに示すように、強反射物に基づくピークP1が存在する場合、ピークP1が存在しない場合に比べて相対的に周波数スペクトルのパワーが上昇する。
【0022】
すなわち、ピークP1が存在する場合、位相雑音の影響によりピークP1の近傍距離における周波数スペクトルのパワーが相対的に上昇する。このため、かかる近傍距離における距離BINのパワーの平均値が高くなる。なお、1BINは、468Hzである。
【0023】
一方、ピークP1が存在する場合とは対照的に、近傍距離にピークP1のような強反射物が存在しない場合では、破線で示すように位相雑音の影響を受けたノイズピークのパワーが上昇しない。このため、かかるノイズピークは、パワーが小さく、物標のピークとして抽出されにくい。
【0024】
そこで、物体検出方法では、距離毎のパワーの平均値に基づいて第1閾値Th1を距離毎に設定する。これにより、ピークP1が存在し、ピークP1の近傍周波数(例えば、±5BINの周波数範囲)のパワーが上昇する場合であっても、位相雑音に基づくノイズピークを排除しつつ、ピークP1のみを抽出する第1閾値Th1aを設定することが可能となる。
【0025】
このように、実施形態に係る物標検出方法では、距離BIN毎に相対速度(速度BIN)に対するピーク抽出の第1閾値Th1を設定することで、位相雑音に基づくノイズピークの誤抽出を抑制することが可能となる。
【0026】
次に、
図2を用いて実施形態に係るレーダ装置1の構成について説明する。
図2は、レーダ装置1のブロック図である。なお、
図2には、レーダ装置1に加え、車両制御装置2を併せて示す。
【0027】
車両制御装置2は、レーダ装置1による物標の検出結果に基づいてPCS(Pre-crash Safety System)やAEB(Advanced Emergency Braking System)などの車両制御を行う。なお、レーダ装置1は、車載レーダ装置以外の各種用途(例えば、飛行機や船舶の監視等)に用いられてもよい。
【0028】
レーダ装置1は、送信部10と、受信部20と、処理部30とを備える。送信部10は、信号生成部11と、発振器12と、送信アンテナ13とを備える。信号生成部11はノコギリ波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発振器12へ供給する。発振器12は、信号生成部11で生成された変調信号に基づいてチャープ信号である送信信号STを生成して、送信アンテナ13へ出力する。
【0029】
送信アンテナ13は、発振器12から入力される送信信号STを送信波SWへ変換し、かかる送信波SWを自車両MCの外部へ出力する。送信アンテナ13が出力する送信波SWは、いわゆるチャープ波である。送信アンテナ13から自車両MCの前方に送信された送信波SWは、他車両などの物標で反射されて反射波となる。
【0030】
受信部20は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ21a〜21d、ミキサ22a〜22dおよびA/D変換器23a〜23dを備える。各受信アンテナ21は物標からの反射波を受信波RWとして受信し、かかる受信波RWを受信信号SRへ変換して受信アンテナ21毎に設けられたミキサ22へそれぞれ出力する。なお、
図2に示す受信アンテナ21の数は、4つであるが3つ以下または5つ以上であってもよい。
【0031】
各受信アンテナ21から出力された受信信号SRは、不図示の増幅器(例えば、ローノイズアンプ)で増幅された後にミキサ22へ入力される。ミキサ22は、送信信号STと受信信号SRとの一部をミキシングし不要な信号成分を除去してビート信号SBを生成し、A/D変換器23へ出力する。
【0032】
これにより、送信信号STの周波数f
ST(以下、送信周波数f
STと記載する)と受信信号SRの周波数f
SR(以下、受信周波数f
SRと記載する)との差となるビート周波数f
SB(=f
ST−f
SR)を有するビート信号SBが生成される。ミキサ22で生成されたビート信号SBは、A/D変換器23でデジタルの信号へ変換された後に処理部30に出力される。
【0033】
図3は、送信周波数f
STと、受信周波数f
SRと、ビート周波数f
SBとの関係の一例を示す図である。
図3に示すように、ビート信号SBは、チャープ波毎に生成される。
【0034】
また、
図3に示す例では、送信周波数f
STは、チャープ波毎に、基準周波数f0から時間に伴って傾きθ(=(f1−f0)/Tm)で増加し、最大周波数f1に達すると基準周波数f0に短時間で戻るノコギリ波状である。なお、送信周波数f
STは、チャープ波毎に基準周波数f0から最大周波数f1へ短時間で到達し、かかる最大周波数f1から時間に伴って傾きθ(=(f0−f1)/Tm)で減少するノコギリ波状であってもよい。
【0035】
図2の説明に戻り、処理部30について説明する。処理部30は、送信制御部31および信号処理部32を備える。信号処理部32は、変換部33、算出部35、ピーク抽出部36、距離・相対速度演算部37および方位演算部38を備える。
【0036】
かかる処理部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート等を含むマイクロコンピュータであり、レーダ装置1全体を制御する。
【0037】
かかるマイクロコンピュータのCPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、送信制御部31および信号処理部32として機能する。なお、送信制御部31および信号処理部32のうち少なくとも一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0038】
送信制御部31は、送信部10の信号生成部11を制御し、信号生成部11からノコギリ状に電圧が変化する変調信号を発振器12へ出力させる。これにより、時間の経過に従って周波数が変化する送信信号STが発振器12から送信アンテナ13へ出力される。
【0039】
変換部33は、各A/D変換器23から出力されるビート信号SBに対してそれぞれ2次元高速フーリエ変換処理を行う。すなわち、変換部33は、受信部20によって生成されたビート信号を物標との距離および相対速度に対する信号強度(パワー)の分布を示す周波数スペクトルへ変換する。
【0040】
また、変換部33は、受信アンテナ21毎に得られる周波数スペクトルの信号強度を平均化し、平均化した周波数スペクトルを設定部34へ出力する。また、変換部33は、平均化する前の受信アンテナ21毎のそれぞれの周波数スペクトルを算出部35へ出力する処理を行う。
【0041】
ここで、FCM方式のレーダ装置における物標との距離および相対速度の検出原理について説明する。上述したように、送信信号STに基づく送信波SWは、送信アンテナ13から送信され、かかる送信波SWが物標で反射して反射波となり、かかる反射波が受信波RWとして受信アンテナ21で受信されて受信信号SRとして出力される。
【0042】
ビート信号SBの周波数は、物標とレーダ装置1との間の距離に比例して増減し、物標とレーダ装置1との間の距離(以下、物標との距離と記載する)に比例する。
【0043】
このため、ビート信号SBに対してFFT処理を行うことで物標との距離に対応する周波数BIN(以下、距離BINと記載する場合がある)にピークが出現する。かかるピークが存在する距離BINを特定することで、物標との距離を検出することができる。
【0044】
図4は、一つのビート信号SBに対してFFT処理を行った結果を示す図であり、横軸を周波数として、縦軸をパワーの大きさとしている。
図4に示す例では、距離BINfr10にピークが出現しており、距離BINfr10に対応する距離に物標が存在することを示す。
【0045】
ところで、物標とレーダ装置1との間の相対速度がゼロである場合、受信信号SRにドップラ成分は生じず、各チャープ波に対応する受信信号SR間で位相は同じであるため、各ビート信号SBの位相も同じである。
【0046】
一方、物標とレーダ装置1との間の相対速度がゼロでない場合、受信信号SRにドップラ成分が生じ、各チャープ波に対応する受信信号SR間で位相が異なるため、時間的に連続するビート信号SB間にドップラ周波数に応じた位相の変化が現われる。
【0047】
このように、物標とレーダ装置1との間の相対速度がゼロでない場合、ビート信号SB間において同一物標のピークにドップラ周波数に応じた位相の変化が現われる。そこで、各ビート信号SBをFFT処理して得られる周波数スペクトルを時系列に並べて2回目のFFT処理を行うことで、ドップラ周波数に対する周波数BINにピークが出現する周波数スペクトルを得ることができる。かかるピークが出現した周波数BIN(以下、速度BINと記載する場合がある)を検出することで、物標との相対速度を検出することができる。
【0048】
図5は、時間的に連続するビート信号SBのFFT処理結果とビート信号SB間のピークの位相変化の一例を示す図である。
図5に示す例では、距離BINfr10にピークがあり、かかるピークの位相が変化していることを示している。
【0049】
このように、ビート信号SBに対して2回のFFT処理を行い、ピークが存在する距離BINおよび速度BINを検出することで、物標との距離および相対速度を検出することができる。
【0050】
図2の説明に戻り、設定部34について説明する。設定部34は、変換部33によって変換された周波数スペクトルにおいて距離毎の信号強度の平均値に基づいて相対速度に対するピーク抽出の第1閾値Th1を設定する。
また、設定部34は、第1閾値Th1よりも低い第2閾値Th2を距離毎に設定する。設定部34は、設定した第1閾値Th1および第2閾値Th2に関する情報を算出部35へ出力する。
【0051】
ここで、
図6を用いて設定部34による処理の具体例について説明する。
図6は、特定の距離における周波数スペクトルを示す図である。
【0052】
図6に示すように、まず、設定部34は、各速度BINのパワーの平均値Avを算出する。例えば、設定部34は、各速度BINにおけるパワーの総和を算出し、かかる総和を速度BIN数で除算することで距離BIN毎の平均値Avを算出する。なお、平均値Avは、1回目のFFT処理で得られるスペクトルの距離BIN毎のパワーを速度BINの数でそれぞれ除算した値であってもよい。
【0053】
続いて、設定部34は、平均値Avに所定の値α1を加算して第1閾値Th1を設定する。ここで、所定の値α1とは、フロアノイズのバラつきに基づいて設定される値である。フロアノイズは、例えばレーダ装置1において、信号が入力されていない場合でも発生するノイズである。そのため、このようなノイズの値を実験的に算出し、その値を所定の値α1として平均値Avに加算する。
【0054】
仮に、所定の値α1を加算せず、平均値Avをそのまま第1閾値Th1に設定した場合を想定する。この場合、フロアノイズが大きいときには、フロアノイズによりノイズピークのパワーが第1閾値Th1よりも上昇する場合があり、かかるノイズピークを物標のピークとして誤抽出するおそれがある。
【0055】
つまり、設定部34は、平均値Avに所定の値α1を加算した値を第1閾値Th1として設定することで、フロアノイズによってノイズピークのパワーが上昇した場合であっても、このようなノイズピークの誤抽出を抑制することが可能となる。
【0056】
ところで、強反射物の近傍の距離BINに例えば、強反射物と相対速度が異なる歩行者などの低反射物が存在する場合、かかる歩行者に対応するピークのパワーが第1閾値Th1よりも小さくなる場合がある。言い換えれば、近傍の距離BINに強反射物と相対速度が異なる低反射物が存在する場合、低反射物のピークが物標のピークとして抽出されないおそれがある。
【0057】
そこで、設定部34は、平均値Avに所定の値α1よりも小さい値である値α2を平均値Avに加算した第2閾値Th2を設定する。第1閾値Th1を超えるピークは、物標のピークである可能性が高く、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満となるピークは、ノイズピークもしくは低反射物のピークのいずれかの可能性がある。
【0058】
このため、レーダ装置1は、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークについて低反射物のピークかノイズピークかを個別に判別することにしている。かかる点の詳細については、
図7を用いて後述する。
【0059】
このように、レーダ装置1では、距離BIN毎の速度BINにおける位相雑音を考慮した閾値(第1閾値Th1および第2閾値Th2)を設定する。つまり、位相雑音の影響が大きい速度BINについては閾値を高く設定し、位相雑音の影響が小さい速度BINについては閾値を低く設定する。これにより、ノイズピークを排除しつつ、物標のピークを抽出することが可能となる。
【0060】
なお、上述した例では、1つの速度BINに対して1つの第1閾値Th1および第2閾値Th2がそれぞれ設定される場合について説明したが、隣接する複数の距離BINのそれぞれの速度BINに対して1つの第1閾値Th1および第2閾値Th2をそれぞれ設定することにしてもよい。
【0061】
図2の説明に戻り、算出部35について説明する。算出部35は、変換部33によって平均化された周波数スペクトルにおいてパワーが第1閾値Th1よりも小さく、第2閾値Th2よりも大きいピークについて受信アンテナ21a〜21d毎の周波数スペクトルにおける信号強度の偏差を算出する。
【0062】
すなわち、算出部35は、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークについて受信アンテナ21a〜21d毎のそれぞれの周波数スペクトルにおける同一距離BINかつ同一速度BINのパワーの偏差を算出する。
【0063】
図7は、算出部35による処理の具体例を示す図である。なお、以下では、受信アンテナ21aの受信信号に基づき、導出される周波数スペクトルのピークについてチャンネルch1のピークと記載し、受信アンテナ21b〜21dの受信信号に基づきの周波数スペクトルのピークについてチャンネルch2〜ch4のピークとそれぞれ記載する。
【0064】
図7に示すように、算出部35は、変換部33によって平均化された周波数スペクトルにおいて、第2閾値Th2以上第1閾値Th1以下となるピークについてチャンネルch1〜ch4のピークのパワーの偏差を算出する。
図7に示す例では、速度BINがx[BIN]およびy[BIN]のピークが該当する。
【0065】
ここで、平均化された周波数スペクトルとは、各チャンネルchの周波数スペクトルの同一距離BINかつ同一速度BINのパワーを平均化したものである。
【0066】
また、偏差とは、平均化された周波数スペクトルのピークを構成する各チャンネルch(ch1〜ch4)のピークのパワーのバラつきを示す。位相雑音に基づくノイズピークであれば偏差が大きくなり、かかるバラつきが大きくなることを示す。
【0067】
すなわち、物標のピークであれば、受信アンテナで受信する反射波のパワーはそれぞれのアンテナで略同じになることから偏差が小さくなり、ノイズピークであればそれぞれの受信アンテナにおける相対速度のビート信号に影響を及ぼす信号強度はランダムであることから偏差が大きくなる。このため、レーダ装置1は、かかる偏差に基づいて物標のピークかノイズピークかを判別することができる。
【0068】
例えば、算出部35は、各チャンネルchのピークのパワーの差分の総和を偏差として算出する。つまり、チャンネルch1とチャンネルch2〜ch4のピークのパワーのそれぞれの差分、チャンネルch2とチャンネルch3、ch4のピークのパワーのそれぞれの差分、チャンネルch3とチャンネルch4のピークのパワーの差分の総和が偏差となる。
【0069】
図2の説明に戻り、ピーク抽出部36について説明する。ピーク抽出部36は、設定部34によって設定された第1閾値Th1を超えるピークを平均化された周波数スペクトルから抽出する。かかるピークは、物標のピークとして処理されることとなる。
【0070】
また、ピーク抽出部36は、平均化された周波数スペクトルにおいて第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークについて算出部35によって算出された偏差に基づき、物標のピークかノイズピークかの判別を個別に行う。
【0071】
具体的には、ピーク抽出部36は、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークの偏差が偏差閾値Thd未満であれば、物標のピークとして判別し、偏差が偏差閾値Thd以上であれば、ノイズピークとして判別する。偏差閾値Thdとは、後述の方位演算部38の演算結果に基づき設定される値である。このため、ピーク抽出部36は、第2閾値Th2を超えるピークを一旦全て抽出し、距離・相対速度演算部37へ出力する。
【0072】
その後、ピーク抽出部36は、方位演算部38の演算結果に基づいて偏差閾値Thdを設定し、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークについて物標のピークかノイズピークかを判別する。なお、かかる点の詳細については、
図8Aおよび
図8Bを用いて後述する。
【0073】
距離・相対速度演算部37は、ピーク抽出部36によってピークが存在するとして特定された距離BINおよび速度BINの組み合わせに基づいて物標との距離および相対速度を導出する。また、距離・相対速度演算部37は、導出した物標との距離および相対速度に関する情報およびピーク抽出部36から入力されるピークに関する情報を方位演算部38へ出力する。
【0074】
方位演算部38は、所定の角度演算処理により、ピーク抽出部36において特定されたピークが存在する各距離BINの信号から、同一の距離BINに存在する複数の物標についての情報を分離し、それら複数の物標それぞれの角度を推定する。
【0075】
方位演算部38は、4つの受信アンテナ21a〜21dの受信信号SRに基づく4つのビート信号SBの全ての周波数スペクトルにおいて同一周波数BINの信号(以下、ピーク信号という)に注目し、それらピーク信号の位相情報に基づいて物標の角度を推定する。方位演算部38における方位の推定は、例えば、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、DBF(Digital Beam Forming)、または、MUSIC(Multiple Signal Classification)などの所定の方位推定方式を用いて行われる。
【0076】
方位演算部38は、第1閾値Th1を超えるピークに関する情報(距離・相対速度、角度等)を車両制御装置2へ出力する。また、方位演算部38は、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークに対する演算結果をピーク抽出部36へ出力する。
【0077】
これにより、ピーク抽出部36は、上記の偏差閾値Thdを設定し、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークについて物標のピークかノイズピークかを判別することになる。
【0078】
ここで、
図8Aおよび
図8Bを用いて偏差閾値Thdの具体例について説明する。
図8Aおよび
図8Bは、偏差閾値Thdの設定処理の具体例を示す図である。
【0079】
図8Aおよび
図8Bに示す扇の中央が自車両MC(レーダ装置1)の正面であることを示す。例えば、ピーク抽出部36は、
図8Aに示すように、自車両MCの正面であるほど偏差閾値Thdを小さい値に設定し、自車両MCの正面から広角であるほど偏差閾値Thdを大きい値に設定する。
【0080】
これは、物標のピークである場合、自車両MCの正面に近いほど、各チャンネルchのピークのパワーにバラつきが生じにくく、広角側に行くにしたがって、各チャンネルchのパワーにバラつきが生じやすいためである。言い換えれば、物標のピークであっても、自車両MCの正面であるほど、偏差が低くなり、広角側に行くにしたがって偏差が大きくなりやすいためである。
【0081】
このように、ピーク抽出部36は、ピークの存在する角度に基づいて偏差閾値Thdを設定することで、偏差に含まれる角度に基づくバラつき分を相殺することができる。そして、ピーク抽出部36は、上記した偏差が偏差閾値Thd未満となるピークを物標のピークとし、偏差閾値Thd以上となるピークをノイズピークとして判別する。
【0082】
つまり、ピーク抽出部36は、ピークが存在する角度に基づいて偏差閾値Thdを設定することで、物標のピークかノイズピークかを精度よく判別することが可能となる。
【0083】
ところで、ピーク抽出部36は、
図8Bに示すように、物標の数に応じて偏差閾値Thdを設定することもできる。具体的には、ピーク抽出部36は、方位演算部38によって同一の距離・相対速度を有するピークが複数のピークに分離された場合、かかるピークの偏差閾値Thdを大きい値に設定する。
【0084】
これは、同一の距離・相対速度を有する複数の物標が有った場合、すなわち、同一距離BINおよび同一速度BINに複数のピークが重なっていた場合、各チャンネルchのピークのパワーにバラつきが生じやすいためである。
【0085】
一方、ピーク抽出部36は、方位演算部38の演算結果により同一の距離・相対速度を有するピークが単一であったならば、かかるピークの偏差閾値Thdを同一距離BINおよび同一速度BINに複数のピークが重なっていた場合よりも小さい値に設定する。
【0086】
このように、レーダ装置1では、方位演算部38の演算結果に基づいて偏差閾値Thdを設定する。これにより、偏差に含まれる角度に基づくバラつきや、複数のピークの重なりに基づくバラつきを相殺することができる。
【0087】
したがって、ピーク抽出部36による物標のピークか位相雑音に基づくノイズピークかの判別を精度よく行うことが可能となる。なお、偏差閾値Thdは、方位演算部38の演算結果によらず、常に一定の値であってもよい。この場合の偏差閾値Thdは、実験等により導出することができる。かかる場合に、偏差閾値Thdをピーク毎に設定する処理を省略することができるため、レーダ装置1の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0088】
また、レーダ装置1では、全てのピークに上記の判別処理を行うのではなく、物標のピークかノイズピークかが疑わしいピーク(第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満)のみに対してかかる判別処理を行う。これにより、全てのピークに対して上記の判別処理を行う場合に比べて、処理負荷を軽減することができる。
【0089】
次に、
図9Aおよび
図9Bを用いて実施形態に係るレーダ装置1が実行する処理手順について説明する。
図9Aおよび
図9Bは、レーダ装置1が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、かかる処理手順は、処理部30によって繰り返し実行される。
【0090】
まず、
図9Aを用いてレーダ装置1が実行する全体的な処理手順について説明する。
図9Aに示すように、まず、変換部33は、ビート信号を周波数スペクトルへ変換する(ステップS101)。
【0091】
続いて、設定部34は、第1閾値Th1および第2閾値Th2を距離毎に設定する(ステップS102)。次に、ピーク抽出部36は、ピーク抽出処理を行う(ステップS103)。
【0092】
続いて、処理部30は、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークが有るか否かを判定する(ステップS104)。処理部30は、かかる判定において該ピークが有る場合(ステップS104,Yes)、ピーク判別処理を行う(ステップS105)。なお、ステップS105のピーク判別処理の処理手順については、
図9Bを用いて後述する。
【0093】
続いて、距離・相対速度演算部37は、距離・相対速度演算を行って(ステップS106)、方位演算部38は、方位演算処理を行い(ステップS107)、処理を終了する。
【0094】
また、処理部30は、ステップS104の判定において第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満となるピークがなかった場合(ステップS104,No)、ステップS105の処理を省略し、ステップS106の処理を行う。
【0095】
次に、
図9Bを用いてピーク判別処理に関する処理手順について説明する。なお、かかる所定手順は、
図9Aに示すステップS106に対応し、第2閾値Th2以上第1閾値Th1未満のピークを対象に行うものとする。
【0096】
図9Bに示すように、まず、算出部35は、各チャンネルchのピークのパワーの偏差を算出する(ステップS201)。続いて、ピーク抽出部36は、方位演算部38の演算結果に基づいてピーク毎に偏差閾値Thdを設定する(ステップS202)。
【0097】
続いて、ピーク抽出部36は、ピーク毎に偏差が偏差閾値Thd未満か否かを判定する(ステップS203)。かかる判定において、ピーク抽出部36は、偏差が偏差閾値Thd未満である場合(ステップS203,Yes)、かかるピークを物標のピークとして判別し(ステップS204)、処理を終了する。
【0098】
一方、ピーク抽出部36は、偏差が偏差閾値Thd以上である場合(ステップS203,No)、かかるピークをノイズピークとして判別し(ステップS205)、処理を終了する。
【0099】
上述したように、実施形態に係るレーダ装置1は、送信部10と、受信部20と、変換部33と、設定部34と、ピーク抽出部36とを備える。送信部10は、周波数が連続的に増加または減少する送信信号によってチャープ波を送信する。受信部20は、物標によるチャープ波の反射波を複数の受信アンテナ21a〜21dで受信した受信信号と送信信号とから受信アンテナ21a〜21d毎にビート信号を生成する。
【0100】
変換部33は、受信部20によって生成されたビート信号を物標との距離および相対速度に対する信号強度の分布を示す周波数スペクトルへ変換する。設定部34は、変換部33によって変換された周波数スペクトルにおいて距離毎の信号強度の平均値Avに基づいて相対速度に対するピーク抽出の第1閾値Th1を距離毎に設定する。ピーク抽出部36は、設定部34によって設定された第1閾値Th1を超えるピークを物標のピークとして周波数スペクトルから抽出する。したがって、実施形態に係るレーダ装置1によれば、位相雑音に基づくピークの誤抽出を抑制することができる。
【0101】
ところで、上述した実施形態では、方位演算部38の演算結果に基づいて偏差閾値Thdを設定する場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0102】
すなわち、レーダ装置1は、方位演算部38の演算結果に基づいて偏差自体の算出方法を変更することも可能である。ここで、
図10を用いてかかる点の詳細について説明する。
図10は、変形例に係る偏差の算出処理の具体例を示す図である。
【0103】
なお、ここでは、方位演算部38の演算結果により、
図10に示すピークPの位置に物標が検出された場合を示し、ピークPが
図10に示す各チャンネルch1〜ch4のピークから構成されるものとする。例えば、算出部35は、方位演算部38の演算結果に基づき、ピークP(物標)から遠いチャンネルchのピークのパワーの値を補正した後に偏差を算出する。
【0104】
図10に示す例では、ピークPが正面よりも右側に存在し、かかるピークに最も近い受信アンテナ21に対応するチャンネルchがチャンネルch4であり、チャンネルch3〜ch1の順にピークPから遠のく場合について示している。
【0105】
ピークPに最も近いチャンネルch4のパワーは、他のチャンネルchのパワーよりも大きく観測されやすく、ピークPに最も遠いチャンネルch1のパワーが最も弱く観測されやすい。
【0106】
すなわち、上記の例では、チャンネルch4と、チャンネルch1との間でパワー差が生じやすい。このため、算出部35は、例えば、ピークPから遠いチャンネルch1およびチャンネルch2のパワーについて補正する。
【0107】
例えば、算出部35は、チャンネルch1のパワーに補正値d1を加算し、チャンネルch2のパワーに補正値d1よりも小さい補正値d2を加算した後に、各チャンネルchのパワーの偏差を算出する。
【0108】
つまり、物標と各受信アンテナ21との距離差に基づく各チャンネルch間に生じるパワーのバラつきを補正する。そして、補正した各チャンネルのパワーに基づいて偏差を算出する。これにより、かかる偏差には、位相雑音に基づくバラつきがより顕著に反映されることとなる。
【0109】
したがって、レーダ装置1では、かかる偏差に基づいて物標のピークかノイズピークかを判別することで、かかる判別の精度を向上させることが可能となる。
【0110】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な様態は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲および、その均等物によって定義される統括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変化が可能である。