特許第6858102号(P6858102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858102
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   H05B6/12 317
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-170786(P2017-170786)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-46726(P2019-46726A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】本間 満
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直人
(72)【発明者】
【氏名】川村 光輝
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−138631(JP,A)
【文献】 特開2016−035861(JP,A)
【文献】 特開2016−024977(JP,A)
【文献】 特開2015−222734(JP,A)
【文献】 特開平11−087039(JP,A)
【文献】 特開2017−041334(JP,A)
【文献】 特開2006−222095(JP,A)
【文献】 特開2003−272819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体上面に設置されるトッププレートと、該トッププレートの下方に設けた複数の加熱コイルと、該複数の加熱コイルに高周波電力を供給する電子部品を実装した複数の基板と、該複数の基板を冷却するファン装置と、前記本体の上下方向に配置した複数の前記基板を収納する基板ケースと、該基板ケースを覆うケース蓋と、を備え、
前記基板ケースに直交流路部の風路壁を一体成形し、前記ファン装置を前記直交流路部に挿入したインペラで構成し
前記基板ケースの後方であって前記基板ケースに吸気口を設け、前記基板ケースに一体成形したスクロール部を複数のリブで前記基板ケース外郭と連結支持し、
前記基板ケースの外郭側の前記リブの端を前記吸気口の左右外方に設けたことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記インペラはモータ台と該モータ台に設けた回転軸が前記本体の上下方向であるモータと接続しており、前記直交流路部を前記スクロール部とベルマウス部で構成し、前記スクロール部に前記インペラを挿入することで、前記モータ台と前記スクロール部を締結し、前記ファン装置を構成することを特徴とする、請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記ベルマウス部を前記基板ケースの底面側に備え、前記モータを前記ケース蓋に固定し、前記直交流路部に前記インペラを挿入することで、前記モータ台と前記スクロール部を締結することを特徴とする、請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記ベルマウス部を前記基板ケースの上面側に備え、前記モータ台を前記直交流路部の下方に配したことを特徴とする、請求項2又は3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記直交流路部を構成する前記モータ台の内側に前記インペラと前記モータを配したことを特徴とする、請求項2からのいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱調理器は、加熱コイルに高周波電流を流して発生する磁力線が、金属製の鍋を通過するときに鍋底に生じる渦電流によるジュール加熱を利用して、加熱調理を行う装置である。加熱時には鍋だけでなく、加熱コイルや加熱コイルを制御する基板などからも熱を生じるため、ファン装置を用いて送風冷却が行われている。
【0003】
誘導加熱調理器には、システムキッチンの台上に設置する据置タイプと、キッチン内に組み込むビルトインタイプがあり、両者ともトッププレートでの調理鍋の誘導加熱とともに、電熱ヒータなどの熱源を備えたグリル庫により魚焼きなどの調理を行う構成を備えている。
【0004】
これら従来の誘導加熱調理器において、冷却対象となる主要部品は複数の加熱コイルと基板であり、構造上、加熱コイルは本体上方のトッププレート近傍、基板はグリル部側方の余剰空間に収納される構成が一般的である。
【0005】
国内における大部分のシステムキッチンは、寸法が規定されているため、誘導加熱調理器のタイプによらず、外形最大寸法もおおよそ定まっており、加熱コイルや基板の冷却には限られた空間内で最適な風路を構成する必要がある。
【0006】
従来一般的な誘導加熱調理器では、金属製の本体外郭との絶縁の為に基板を樹脂製の箱形状或いは平板(基板台)に設置し、本体の上下方向に複数段に重ねて配置し、その基板に流れる風路を構成する一部に、ファン装置を設けている。誘導加熱調理器の組み立て時は、羽根車(インペラ)とケーシングとモータから構成したファン装置が着脱可能に配した構成となっている。また、トッププレートで上面を覆われる本体外郭は、上方が開放された箱状(凹状)であり、内部に配置される基板は本体の底面に沿って配置されている。これは、基板と基板、あるいは基板と加熱コイルへの配線を本体の上方から行うことで作業性を良好にする為である。電子部品を実装した基板のパターン面が上方となる配置では、上から配線コネクタの挿入や着脱、配線端子のネジ固定の作業が行い易くなる。
【0007】
特許文献1においても、「前記ファンユニット(ファン装置)は、 鉛直方向の上下に上吸引口と下吸引口が設けられたファン収納部を有し、さらに、前記調理器本体の背面板の反対側に前記基板ケースの側面と連結された上吐出口及び下吐出口を有し、前記調理器本体の背面板及び底板とで前記吸気口と繋がる風路を形成するファンケースと、前記ファン収納部の上吸引口内に間隙を有して設けられ、回転軸が前記底板側に向けられたモーターと、前記ファン収納部内に設けられ、前記モーターの駆動により外気を冷却空気として前記吸気口から前記風路内に取り込み、前記ファン収納部の上吸引口よりも下吸引口から冷却空気の風量を多く吸引し、それぞれの冷却空気を前記上吐出口と前記下吐出口から前記基板ケース内へ吐出するファンとを有した」構造であり、本体底面に沿った上下に重ねた配置した基板の上流側にファンユニットを備えた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−54864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1など従来の誘導加熱調理器は、グリル庫の側方に複数の基板を分割し、上下方向に重ねて配置した実装密度の高い収納構造となっており、基板と加熱コイルの両方を冷却する空気を効率良く流すことが課題である。このため、加熱コイルや基板を冷却するファンユニット(ファン装置)は狭い空間に収納され、ファンユニットの吸排気部の近傍に、様々な部材を近接して配置することになる。これらの部材の配置により生じた風速分布による吸気流れの乱れや通風抵抗の増大により、ファンユニットの送風性能が悪化し、部品冷却性能の低下や、ファン騒音の増加の要因となる。
【0010】
また、ファンユニットはモーターで回転するファン(インペラ)の微小な振れでも振動が伝達し、回転数の増加により振動も大きくなる。ファンの振動はファンケースに伝達し、本体全体が振動することで生じる異音や故障が課題となる。また、製造コストを下げるために、ファンケースなど部品の肉厚を薄くすれば、振動伝達がより顕著に生じ易い構造となり、より異音や騒音の増大が生じ易くなる。また、構造部品が多いほど、振動伝達経路が複雑化して多岐になり、その締結部分で強度が低下し易く、振動が生じ易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る誘導加熱調理器は、本体と、該本体上面に設置されるトッププレートと、該トッププレートの下方に設けた複数の加熱コイルと、該複数の加熱コイルに高周波電力を供給する電子部品を実装した複数の基板と、該複数の基板を冷却するファン装置と、前記本体の上下方向に配置した複数の前記基板と前記ファン装置を収納する基板ケースと、該基板ケースを覆うケース蓋と、を備えた誘導加熱調理器において、前記基板ケースに直交流路部を一体成形し、前記ファン装置を前記直交流路部に挿入したインペラで構成し、前記基板ケースの後方であって前記基板ケースに吸気口を設け、前記基板ケースに一体成形したスクロール部を複数のリブで前記基板ケース外郭と連結支持し、前記基板ケースの外郭側の前記リブの端を前記吸気口の左右外方に設けたものである。
【0012】
なお、詳細については、発明を実施するための形態において説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ファン装置の振動伝達を抑えて信頼性の高い低騒音運転と、部品数の低減による低コスト化を両立した空冷構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の誘導加熱調理器の斜視図
図2図1に示す誘導加熱調理器の分解斜視図
図3図1に示すA−A線で切断した側面断面図
図4図1に示すC−C線で切断した正面断面図
図5図1の基板ケースとケース蓋内に収納した部品の分解斜視図
図6図1の基板ケースの上面断面図
図7図1の基板ケース内に収納した部品の分解斜視図
図8】実施例1における図3の模式図
図9図8の変形例
図10図6の変形例
図11】実施例2の誘導加熱調理器の模式図
図12図11のファン装置の分解斜視図
図13図12の変形例
図14】他の変形例
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、誘導加熱調理器Z(図1参照)に相対したユーザの視線を基準として、図1等に示すように前後・上下・左右を定義する。
【実施例1】
【0016】
<誘導加熱調理器の構成>
図1は、実施例1の誘導加熱調理器Zの斜視図、図2図1の分解斜視図、図3図1に示すA−A線で切断した側面断面図、図4図1に示すC−C線で切断した正面断面図である。
【0017】
まず、一例として、誘導加熱調理器Z(図1参照)が電気ヒータ等で被調理物を加熱するグリル庫5を備えたビルトインタイプのIH(Induction Heating)クッキングヒータである場合について説明する。誘導加熱調理器Zは、金属製である被調理鍋(図示せず)の鍋底で渦電流が発生し、この渦電流によるジュール熱が被調理鍋そのものを発熱する装置である。
【0018】
図2において、前記の渦電流は、加熱コイル3(3a、3b、3c)に例えば20kHz〜40kHz程度の高周波電流を流して磁束が時間的に変化することで発生する。誘導加熱調理器Zは、主に、本体1と、トッププレート2と、加熱コイル3と、基板ケース8およびケース蓋6と、グリル庫5を備えている。
【0019】
本体1は、誘導加熱調理器Zが設置される空間(所定の左右幅・前後幅・高さ)に対応した外郭を有する筐体であり、上方が開放された箱状(凹状)を呈している。この本体1に、左側のグリル庫5、右側の基板ケース8とケース蓋6、及びこれらの上方に位置する加熱コイル3や表示部P1等が設置され、さらに上から蓋をするようにトッププレート2を設置している。
【0020】
基板ケース8に配置した基板7aの本体1背面側には、ファン装置9を設けており、本体1背面に設けた吸気開口部H1から外気を吸い込み、基板7に向かって吹き出す構成となっている。つまり、ファン装置9は吸気開口部H1から排気開口部H2までの風路で最上流側に配置している。
【0021】
加熱コイル3は、トッププレート2の下方に設置され、その中心付近に鍋底の温度を検出する温度センサ34を設置している。また、加熱コイル3は、ファン装置9から離れた下流側に配置しており、ファン装置9から吹き出る冷却風が基板ケース8内の基板7を冷却した後、ダクトD1を介して加熱コイル3を冷却するようになっている。このダクトD1は加熱コイル3(3a、3b、3c)の下面に臨んでいる。つまり、ファン装置9から吹き出された空気が三つの加熱コイル3に向けて分流するように、ダクトD1がケース蓋6に接続されている。これによって、左右と中央奥に設けられた加熱コイル3に対し、ファン装置9からの空気を下側から直接的に吹き付けることができる。
【0022】
加熱コイル3は、基板7のインバータ回路(図示せず)の駆動によって高周波電流が流れるリッツ線を巻いたコイルであり、コイルベース31に載置されている。なお、本実施例では、平面視において右・左・中央奥に一つずつ加熱コイル3を設けるようにした。コイルベース31は、3つの支持部32(例えば、バネ)で支持され、この支持部32によって上向きの付勢力が与えられている。これによって、加熱コイルはトッププレート2の下面に押し付けられ、被調理鍋と加熱コイル3との距離が一定に保たれる。
【0023】
図1に示したように、本体1の正面左側のグリル庫5には、前後にスライドして被調理物(図示せず)を設置するためのドア部5aを正面に設けている。また、本体1の正面右側には、主にグリル庫5内の加熱具合を調整するための操作パネルP2を設けている。トッププレート2は、被調理鍋が載置される板状ガラス(図示せず)と、板状ガラスの四辺を保持する枠部(図示せず)で構成され、本体1の上から覆うように設置している。トッププレート2は、三つの加熱コイル3a、3b、3cの設置位置に対応した三口の鍋載置部21と、被調理鍋の火加減を調整するための操作部P0と、排気開口部H2とを有している。なお、排気開口部H2には、ファン装置9から吹き出る空気を排出するための複数の孔を設けた排気カバー25をトッププレート2の後方(右側・左側)に載置している。
【0024】
図3は、図1に示すA−A線で切断した側面断面図であり、主に右側の加熱コイル3aと基板7とファン装置9の位置関係を示すものである。本体1の背面側には、ファン装置9の駆動によって外部から空気を取り込むための吸気開口部H1を設けている。また、ファン装置9から本体1内に吹き出る空気は、基板ケース8とケース蓋6内の基板7間を通り、加熱コイル3aを介してトッププレート2の後方に設けた排気開口部H2から排出される。
【0025】
排気開口部H2は、金属板に複数の小径孔を設けた排気カバー25で覆われており、トッププレート上でふきこぼれ等が生じた際に流れ込む液体(図示せず)が直に入り難くなっている。なお、排気カバー25は着脱可能であり、汚れた際に取り外して洗浄できる。また、排気カバー25を通過した液体は、排気カバー25の下方に設けた水受部94により、小径孔を通過して落下した液滴を広い面で受けて緩衝させ、加熱コイル3a側に流れ込まないようにしている。
【0026】
なお、本体1の後方の他に、例えば正面下側にも吸気開口部を設ければ、比較的低温の空気を本体1内に取り込み易くなる。また、左側に位置するグリル庫5から遠い背面側に吸気開口部H1を設けることで(図2参照)、吸気開口部H1を介して温度が高い空気を吸い込み難くなる。或いは、排気開口H2を例えばグリル庫5の下方など本体1の外郭に設ければ、システム全体の通風抵抗が減少し、ファン装置9の負荷が低減できる。
【0027】
本実施例に示すファン装置9のインペラは、吸気口9aを介して基板ケース8内に空気を取り込み、取り込んだ空気を加熱コイル3に向けて吹き出すことで電子部品71や加熱コイル3を冷却する多翼ファンである。
【0028】
なお、本発明のファン装置9の詳細については図5以降で説明する。前記したように、基板ケース8には基板7及びファン装置9を収納しており、基板ケース8とケース蓋6は上下で組み合わせ、吸気開口部H1と加熱コイル3の冷却風路以外の箇所を略密閉した風路を構成している。基板ケース8とケース蓋6の合わせ部6aは、外周の一部或いは全部を、図のように一方をオーバーラップさせてもよいし、或いはフランジ形状にして接触面を広くさせて固定してもよい。これらは、基板ケース8とケース蓋6の合わせ部6aの隙間から空気漏れを抑えるための構造例であり、例えば基板ケース8とケース蓋6の合わせ部6aにスポンジ状のシール部材を配した構造であってもよい。この合わせ部6aによって、基板ケース8内を通流する空気の漏れを抑制し、電子部品71が実装された基板7、及び加熱コイル3の冷却効率を高めることができる。
【0029】
基板台73は、各基板7を固定するための絶縁部材(樹脂部材)である。基板台73は、例えば、基板ケース8の内壁面から内側に向けて突出する複数のリブ(図示せず)に載置した状態で例えばネジで支持し、基板ケース8内に固定している。なお、基板7aの下流に配置する基板7b、7cは、基板ケース8の本体1正面側に開口(図示せず)を設けており、ファン装置から加熱コイル3a下方の吐出部Dまでの風路を構成する。
【0030】
したがって、基板台73は基板3の大きさや形状に合わせた配置となり、基板7aと基板7b、基板7bと7cを連通する開口が前側に形成され、その開口を介して基板7aと基板7bに供給された空気が混合し、基板7c側に流れる。つまり、基板7bを固定する基板台73は、ファン装置9から供給される二つの風路(基板7aと基板7bへの流れ)を仕切る壁として機能している。
【0031】
発熱の大きい高発熱素子72を実装した基板7a、7bには、熱を広い面積に拡散して冷却する為のヒートシンク79を設けている。ヒートシンク79は、発熱性の高い電子部品である高発熱素子72から吸熱し、ファン装置9を介して流入する空気に対して放熱する放熱器である。
【0032】
ヒートシンク79は、基板7と略水平に延びる複数のフィン(図示せず)を有しており、空気が流通するようにフィン間を吐出口に向けている。ヒートシンク79は、ファン装置9に近い上流側に設置され、吐出口を介して流入した空気によって、発熱量が大きい高発熱素子72を最初に冷却するように配置している。このように、吐出口の近傍にヒートシンク79を配置することで、高発熱素子72を効率良く冷却している。
【0033】
ここで、各基板7上の電子部品71は、加熱コイル3に高周波電流を供給したり、ファン装置9を駆動したりするために用いられる集積回路、インバータ回路、コンデンサ、抵抗器等である。
【0034】
加熱コイル3に高周波電流を供給するインバータ回路は、スイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を複数個備えている。高発熱素子72として、例えば、ハーフブリッジ回路に用いられる2個のスイッチング素子や、整流回路のダイオードブリッジが挙げられる。
【0035】
図4図1に示すC−C線で切断した正面断面図である。正面左側に位置するグリル庫5内の加熱室50は、例えば、魚などの調理物を配置する空間であり、熱源である電熱ヒータ(上ヒータ51、下ヒータ52)と、魚等を載置する焼き網54と、この焼き網54の下方に配置した受け皿53と、を有している。前記したように、加熱室50を平面視において本体1内の左領域に配置しており、内部の受け皿53などがドア部5aと連動して本体1に対し、前後方向にスライド可能となっている。
【0036】
なお、加熱室50の熱源は電熱ヒータに限らず、マイクロ波、水蒸気、又はこれらの組合せで食品を熱するようにしてもよい。また、温度調節器を備えてオーブン加熱するようにしてもよい。
【0037】
グリル庫5側方の正面右側に位置する基板ケース8とケース蓋6の内側には、本体1の上下方向に重ねて3枚の基板7(7a,7b,7c)を配置している。各基板7は樹脂製の基板台73に載置することで、基板7の充電部(図示せず)を部品に直に触れず、取り扱うことが容易となる。なお、基板ケース8に直に設置できる基板7aには基板台73を設けなくともよい。それぞれ基板7は上下に間隔を開けて配置するため、その隙間が冷却風の風路となる。ケース蓋6の上面には、ダクトD1を設け、各加熱コイル3(3a、3b、3c)下方の吐出部Dまで冷却風を導風する。なお、ファン装置9の吐出口95は、ヒートシンク79を設けた基板7a、7bの後方に配置した。
【0038】
<ファン装置の構成>
図5図1の基板ケース8とケース蓋6内に収納した部品の分解斜視図、図6は基板ケース8の上面断面図、図7は基板ケース8内に収納した部品の分解斜視図である。
【0039】
実施例1ではインペラ91をモータ台90とスクロール部8aとベルマウス部8bで囲んでファン装置9を構成している。モータ台90にはその下側にモータ92を設置しており、モータ92の回転軸にインペラ91を設置している。ここでモータ92の回転軸は基板7の配置面と直角となる本体1上下方向である。ベルマウス部8bは、インペラ91の外径より小さい略円形状の吸気口9aとなっている(図6参照)。
【0040】
インペラ91周りの風路は、基板ケース8底面側となるベルマウス部8bの吸気口9aからスクロール部8aに流入し、その後に吐出口95から吹出す構成となっており、つまり略直角に流れの向きを変える直交流路部93を構成する。ファン装置9は基板ケース8に一体成形した直交流路部93にインペラ91を挿入した構成となっている。
【0041】
本実施例では図6に示すように、基板収納部8eの後方に直交流路部93を一体成形しており、直交流路部93の壁面を構成するスクロール部8aと、基板ケース8の枠部8dを複数のリブ8cで連結支持した構造となっている。基板ケース8内にスクロール部8aを一体成形したことにより、従来のファン装置に有するケーシングという単品の部品が本発明の構造では存在しなくなる。この部品数を低減し単純化された構造が特徴となる。よって、本構造ではインペラ91の微小な偏心、面振れなどで生じる振動伝達の接続経路が少ない構成となる。
【0042】
また、基板ケース8には、基板収納部8eにヒートシンク79が設置される大重量の基板7aが載置されるため、基板ケース8底面側は誘導加熱調理器において剛性が高い部位となる。また、基板7aは広い底面積で本体1底面にネジで締結するため、更に剛性の高い構造となっている。つまりファン振動は、基板7a近傍に設けた直交流路部93から伝達し難く、騒音などが生じ難くなることは言うまでもない。また、振動が生じ難い構造により、嵌合部やネジの緩みが生じ難い本体1を構成でき、故障など不具合が発生し難くなり、誘導加熱調理器全体の信頼性を向上することができる。
【0043】
図7はファン装置9を構成する基板ケース8の直交流路部93に挿入するインペラ91とモータ92、モータ台90の位置関係を示している。図示した構成であれば、モータ台90にモータ92とインペラ91を取り付けた後、基板ケース8の上方から下方のスクロール部8aにインペラ91を挿入することで、インペラ91をスクロール部8aとベルマウス部8bとモータ台90で囲い、直交流路部93を組み立てられる。また、基板ケース8に基板7aをとりつける場合と同様に上方からモータ台90を取り付けられるので、組立て易いとともに部品数が低減するため組立作業性も良好となる。
【0044】
なお、本実施例ではインペラ91を多翼ファンとしたが、吸気方向(吸気部9a)と吐出方向(吐出部95)が直交するインペラであれば例えば遠心ファンであってもよい。多翼ファンは吐出口95の高さを大きくする場合に有効であるが、例えば電子部品71の配置やヒートシンク79の高さなど基板7aの構成によっては吐出口95を狭くして遠心ファンを用いて構成してもよい。
【0045】
図8は本実施例(図3)の概要を示す模式図であり、本実施例の直交流路部93に挿入するインペラ91やモータの配置、主要な冷却風の流れを記載している。
【0046】
<変形例>
図9は本実施例の変形例であり、図8のファン装置9において、モータ92を直交流路部93の外方(上方)に配した構成である。つまり、インペラ91はモータ台90を介して配置され、モータ台90を貫通したモータ92の回転軸に接続される。本構成であれば、モータ台90の形状が簡素化され、製造が容易になりコスト低減できる。また、モータ92の外形寸法の制限が緩和するため、モータ音の低騒音化、モータトルクの増加による高回転化など、設計の自由度が向上する。
【0047】
また、インペラ91の上下高さとスクロール部8aの上下高さの隙間を小さく抑えることが容易となり、インペラ91の送風効率も改善する。直交流路部93の吐出口95の風速分布が乱れ難くなり、基板7の冷却対象となる部品に向けて効率良く送風し、冷却効率も向上できるので、ファン装置9の低風量化や低騒音化など空冷性能を最適化し易くなる。
【0048】
<変形例>
図10は本実施例の変形例であり、基板ケース8により直交流路部93のスクロール部8aの形状を変えたものである。基板7の上流側となる直交風路部93は、基板7の例えばヒートシンクの部品配置などに応じて、吐出口95の配置や吐出口95からの吹出し向きなど、効率良く部品冷却する風路を構成できる。
【0049】
図10(a)は直交流路部93のスクロール部8aを基板ケース8の後方外郭まで広げ、ベルマウス部8bの面積を大きくしたものである。つまり、直交流路部93に対し、インペラ91周りに生じた空間は、吸気口9aと吐出口95を開口とした圧力チャンバとなる。圧力チャンバでは圧力分布が低減するため、吐出口95から出る冷却風の風速分布が緩和され、略一様な流れで基板7に向けて空気を吐き出し、効率良く電子部品71などを冷却できる。なお、インペラ91は図1から図7に示した多翼ファンでなく、シュラウドを設けた遠心ファンであれば、吸気口9aの漏れが生じ難くなり、直交流路部93内の圧力が高め易くなるので、送風効率をより向上できる。
【0050】
また、図10(b)はさらに吐出口95を二ヶ所設けたものである。本構成であれば、基板収納部8eの面方向全体に効率良く冷却風を供給でき、さらに効率良く部品冷却できる。なお、更にリブ8cを短くして、広い圧力チャンバ容積を構成し、吐出口95の自由度を拡大することが容易となる。
【0051】
<加熱操作と基板ケース内の空気の流れ>
図1に示すトッププレート2の右側の鍋載置部21(加熱コイル3aに対応)に、被調理鍋(図示せず)を載置し、ユーザによって操作部P0を操作することで加熱処理を開始する。操作部P0は、例えばタッチキーであり、トッププレート2上に印刷したキーに触れることで操作できる。
【0052】
被調理鍋の下方に位置する加熱コイル3aには、制御装置(例えば表示部P1内に設置)からの指令に応じて基板7aのインバータ回路から高周波電流を供給し、被調理鍋を誘導加熱する。加熱コイル3aで被調理鍋を誘導加熱すると、この加熱コイル3aの他に、前記のインバータ回路を構成する基板7aの高発熱素子72や電子部品71も発熱する。
【0053】
加熱処理の開始とともに、制御装置からの指令に応じてファン装置9が駆動する。ファン装置9が駆動すると、インペラ91の流入側(吸気口9a)で負圧が発生し、吸気開口部H1からベルマウス部8bに向かって空気を吸引する。ファン装置9の吐出口95から吐出した空気は、基板7bの基板台で上下に分かれて流れ、基板7a、7bのヒートシンク79に向かって吹き出し、加熱コイル3aのインバータ回路を実装した基板7a上のヒートシンク79から吸熱する。
【0054】
ヒートシンク79を介した放熱によって高発熱素子72を冷却し、基板7aに実装した他の電子部品71も空気との熱交換によって冷却される。基板7aを冷却した空気は、基板7bを介して基板7c上方の吐出部Dまで導風され、加熱コイル3aに向かって流れる。加熱コイル3aを冷却した空気は、フィルター基板7dを冷却し、排気開口部H2を介して排出される。
【0055】
<効果>
本発明によれば、ファン装置の振動伝達を抑えた信頼性の高い低騒音運転と、部品数の低減による低コスト化を両立した空冷構造を有する誘導加熱調理器を提供できる。
【実施例2】
【0056】
実施例2は、第1実施例と比較して基板ケース8およびファン装置9の構成が異なるが、その他については第1実施例と同様である。したがって、当該異なる部分について説明し、第1実施例と重複する部分については説明を省略する。
【0057】
図11は第2実施例に係る誘導加熱調理器の模式図、図12図11のファン装置の分解斜視図である。本実施例のファン装置9は、スクロール部8aとベルマウス部8bで構成した直交流路部93に、インペラ91を基板ケース8の下方から挿入している。なお、図12に示すように、モータ92をモータ台90の上方、つまり直交流路部93内に配置しており、インペラ91の回転により、発熱が生じるモータ92が冷却でき、高速回転において信頼性の高い動作となる。
【0058】
また、重量の大きいモータ92を、基板ケース8の底面側、つまり本体底面側の剛性の高い部分に配置できることから、より振動が生じ難い構造となる。ここで、図9に示した例のように、モータ92をモータ台90の下方に配置しても同様な効果があることは言うまでもない。
【0059】
<変形例>
図13図12の変形例であり、モータ92が基板ケース8のスクロール部8aの下側であっても、実施例1と同様に、上方からインペラ91(モータ台90)を組み込む構造にしたものである。
【0060】
本構成では部品組立性を向上するために、モータ台90やモータ92に設置したインペラ91をスクロール部8aの上方からモータ92が下方になるように挿入し、別途部材で構成したベルマウス部8bをスクロール部8aに設置した構成となっている。なお、スクロール部8aを上方から通過したモータ台90は、例えばクロール部8a下面に内側に向かってフランジ8fを設けることで容易に設置できるようになる。このような部品で構成した直交流路部93であっても、剛性の高い風路壁を用いたファン装置9を構成でき、良好な組立作業性と低振動伝達性の両方を備えた誘導加熱調理器を提供できる。
【0061】
<変形例>
図14は他の変形例であり、本実施例の構成とした本体1高さの低い据置タイプの誘導加熱調理器に適用したものである。図14に示すように、本発明のファン装置9は基板7の枚数が少なくとも構成でき、誘導加熱調理器の鍋載置部21や加熱コイル3の数、それらに伴う基板7の枚数によらず、本発明が適用できる。
【0062】
<効果>
本発明によれば、本体1底面側の高剛性部位にファン装置を構成することにより、振動伝達がより生じ難い低騒音構造となる。また、組立作業性と部品数の低減による低コスト化を両立した空冷構造を有する誘導加熱調理器を提供できる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・本体、2・・・トッププレート、3(3a、3b、3c)・・・加熱コイル、5・・・グリル庫、6・・・ケース蓋、7(7a、7b、7c)・・・基板、7d・・・フィルター基板、71・・・電子部品、72a、72b・・・高発熱素子、73・・・基板台、8・・・基板ケース、8a・・・スクロール部、8b・・・ベルマウス部、8c・・・リブ、79・・・ヒートシンク、9・・・ファン装置、90・・・モータ台、91・・・インペラ、92・・・モータ、93・・・直交流路部、D・・・吐出部、D1・・・ダクト、H1・・・吸気開口部、H2・・・排気開口部
図1
図2
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図6
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図14