特許第6858106号(P6858106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858106
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20210405BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20210405BHJP
   B65D 83/00 20060101ALN20210405BHJP
   F04B 9/14 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   B65D47/34 200
   B05B11/00 102E
   !B65D83/00 K
   !F04B9/14 C
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-179795(P2017-179795)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-55787(P2019-55787A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131818(JP,A)
【文献】 特開2011−251218(JP,A)
【文献】 特開2012−096134(JP,A)
【文献】 特開2012−096135(JP,A)
【文献】 特開2017−095168(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3199176(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
B65D 83/00
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動自在に配設されるとともに、前方に向けて開口する吐出孔が形成された吐出ヘッドを有するポンプと、
前記ポンプを前記容器本体の口部に装着する装着キャップと、
前記装着キャップの後部に立設された支持部と、
前記支持部に回転軸回りに回転自在に配設され、前記吐出ヘッドを押下げる押下部材と、を備え、
前記押下部材を前記回転軸回りに下方に向けて回転させることにより、前記吐出ヘッドを下方移動させ、前記内容物を前記吐出孔から吐出させる吐出器であって、
前後方向に揺動可能に配設され、前記吐出ヘッドおよび前記押下部材のうちの少なくとも一方に形成された被係止部に対して前記被係止部の下方から当接若しくは近接する規制部を有するストッパを備え、
前記ストッパは、前記規制部が、前記被係止部に当接若しくは近接し、前記吐出ヘッドの下方移動を規制する規制位置と、前記規制位置から後方に向けて揺動し、前記規制部が前記被係止部から離れ、前記吐出ヘッドの下方移動を許容する規制解除位置と、の間で揺動可能に配設され、
前記ストッパは、前記規制部と、前記押下部材よりも、前後方向および上下方向の双方向に直交する左右方向の外側に位置する指掛部と、前記ストッパが規制位置に位置した状態で前記押下部材に当接した、若しくは、前記ストッパが規制位置に位置した状態で、前記押下部材が前記回転軸回りに下方に向けて回転したときに、前記押下部材に当接する被当接部と、を備え、
前記押下部材において、前記ストッパの前記被当接部が当接する当接部分より後方に位置する部分に、下方に向けて突出する抑止突部が形成されていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
前記被当接部において、前記押下部材の当接部分が当接する上端面のうち少なくとも後端部は、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びていることを特徴とする請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記抑止突部のうちの少なくとも一部は、前記ストッパが規制位置に位置した状態で、前記被当接部の上端面の後端部に対向していることを特徴とする請求項2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動自在に配設されるとともに、前方に向けて開口する吐出孔が形成された吐出ヘッドを有するポンプと、ポンプを容器本体の口部に装着する装着キャップと、装着キャップの後部に立設された支持部と、支持部に回転軸回りに回転自在に配設され、吐出ヘッドを押下げる押下部材と、を備え、押下部材を回転軸回りに下方に向けて回転させることにより、吐出ヘッドを下方移動させ、内容物を吐出孔から吐出させる吐出器が知られている。この種の吐出器として、例えば下記特許文献1に示されるような、前後方向に揺動可能に配設され、押下部材に対して押下部材の下方から当接若しくは近接する規制部を有するストッパを備え、ストッパが、規制部が、押下部材に当接若しくは近接し、吐出ヘッドの下方移動を規制する規制位置と、規制位置から後方に向けて揺動し、規制部が押下部材から離れ、吐出ヘッドの下方移動を許容する規制解除位置と、の間で揺動可能に配設された構成が知られている。
以上の構成において、ストッパを規制解除位置に位置させた状態で、押下部材を回転軸回りに下方に向けて回転させると、吐出ヘッドが下方移動して、内容物が吐出孔から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−209319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出器では、ストッパが規制位置に位置した状態で、押下部材に、例えば押下部材を回転軸回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられたときに、支持部が変形する等して、押下部材からストッパにストッパを後方に揺動させる力が加えられ、ストッパが、不意に規制位置から規制解除位置側に位置ずれするおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、押下部材に、例えば押下部材を回転軸回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられても、規制位置に位置するストッパが、不意に規制解除位置側に位置ずれするのを抑制することができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出器の一つの態様は、内容物が収容される容器本体の口部に、上方付勢状態で下方移動自在に配設されるとともに、前方に向けて開口する吐出孔が形成された吐出ヘッドを有するポンプと、前記ポンプを前記容器本体の口部に装着する装着キャップと、前記装着キャップの後部に立設された支持部と、前記支持部に回転軸回りに回転自在に配設され、前記吐出ヘッドを押下げる押下部材と、を備え、前記押下部材を前記回転軸回りに下方に向けて回転させることにより、前記吐出ヘッドを下方移動させ、前記内容物を前記吐出孔から吐出させる吐出器であって、前後方向に揺動可能に配設され、前記吐出ヘッドおよび前記押下部材のうちの少なくとも一方に形成された被係止部に対して前記被係止部の下方から当接若しくは近接する規制部を有するストッパを備え、前記ストッパは、前記規制部が、前記被係止部に当接若しくは近接し、前記吐出ヘッドの下方移動を規制する規制位置と、前記規制位置から後方に向けて揺動し、前記規制部が前記被係止部から離れ、前記吐出ヘッドの下方移動を許容する規制解除位置と、の間で揺動可能に配設され、前記ストッパは、前記規制部と、前記押下部材よりも、前後方向および上下方向の双方向に直交する左右方向の外側に位置する指掛部と、前記ストッパが規制位置に位置した状態で前記押下部材に当接した、若しくは、前記ストッパが規制位置に位置した状態で、前記押下部材が前記回転軸回りに下方に向けて回転したときに、前記押下部材に当接する被当接部と、を備え、前記押下部材において、前記被当接部が当接する当接部分より後方に位置する部分に、下方に向けて突出する抑止突部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の吐出器の一つの態様によれば、押下部材に抑止突部が形成されているので、ストッパが規制位置に位置した状態で、押下部材に、例えば押下部材を回転軸回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられたときに、押下部材の当接部分からストッパの被当接部に後方に向けた力が加えられ、ストッパが規制解除位置側に位置ずれしようとしても、ストッパの被当接部が、被当接部の後方から抑止突部に当接することで、ストッパが抑止突部に係止されることとなる。これにより、規制位置に位置するストッパが、不意に規制解除位置側に位置ずれするのを抑制することができる。
【0008】
ここで、前記被当接部において、前記押下部材の当接部分が当接する上端面のうち少なくとも後端部は、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びてもよい。
【0009】
この場合、ストッパの被当接部の上端面のうち少なくとも後端部が、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びているので、押下部材に前述の大きな力が加えられたときに、ストッパが規制位置から規制解除位置側に位置ずれしようとしても、被当接部の上端面に、押下部材の抑止突部から前方に向けた力が加えられることとなり、ストッパを規制位置に復帰、若しくは留まらせることができる。
【0010】
また、前記抑止突部のうちの少なくとも一部は、前記ストッパが規制位置に位置した状態で、前記被当接部の上端面の後端部に対向してもよい。
【0011】
この場合、抑止突部のうちの少なくとも一部が、ストッパが規制位置に位置した状態で、被当接部の上端面の後端部に対向しているので、被当接部の上端面と抑止突部との前後方向の距離を抑えることが可能になり、押下部材に前述の大きな力が加えられたときに、ストッパが規制位置から規制解除位置側に位置ずれするのを確実に抑制することができるとともに、被当接部の上端面に、押下部材の抑止突部から前方に向けた力を効果的に加えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る吐出器によれば、押下部材に、例えば押下部材を回転軸回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられても、規制位置に位置するストッパが、不意に規制解除位置側に位置ずれするのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】正倒立両用アダプタを装着し、かつストッパが規制位置に位置した吐出器を左右方向から見た軸方向に沿う縦断面図である。
図2図1に示す吐出器の上半分を示す縦断面図である。
図3図1に示す吐出器において、押下部材を外した状態を示す斜視図である。
図4図1に示す吐出器を前方から見た部分断面図である。
図5】吐出器を示す図であって、図2に示す状態からストッパを規制解除位置に位置させ、かつ押下部材を下方に回転させ吐出ヘッドを押下げた状態を示す縦断面図である。
図6】吐出器のストッパを示す斜視図である。
図7図4のA−A線矢視断面図である。
図8図1に示す吐出器の下半分を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る吐出器の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1に示すように、吐出器1は、内容物が収容される容器本体2の口部3に、上方付勢状態で下方移動自在に配設されるとともに、前方に向けて開口する吐出孔13Aが形成された吐出ヘッド13を有するポンプ14と、ポンプ14を容器本体2の口部3に装着する装着キャップ11と、装着キャップ11の後部に立設された支持部15と、支持部15に回転軸L回りに回転自在に配設され、吐出ヘッド13を押下げる押下部材16と、を備える。この吐出器1では、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させることにより、吐出ヘッド13が下方移動し、内容物が吐出孔13Aから吐出される。
なお図示の例では、吐出器1に、後述する正倒立両用アダプタ200が装着されている。
【0016】
図2に示すように、装着キャップ11は、有頂筒状に形成され、中央に開口部11cが形成された円環状の頂壁部11aと、頂壁部11aの外周縁から下方に向けて延びる円筒状の周壁部11bと、を有する。周壁部11bの内周面には、容器本体2の口部3における外周面に形成された雄ネジに螺着する雌ネジが形成されている。
【0017】
ポンプ14は、下方移動自在に配設されたステム12と、ステム12を上方付勢するコイルバネ95と、ステム12の上端部に装着された吐出ヘッド13と、ステム12の上下動に連係する筒状のピストン41と、ピストン41が上下摺動自在に収容されたシリンダ42と、ステム12から下方に向けて延設されたピストンガイド43と、を備える。
【0018】
ここで、装着キャップ11、ステム12、ピストン41、シリンダ42、およびピストンガイド43は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿う方向を上下方向という。また、上下方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。また、平面視において、径方向のうち、吐出ヘッド13の吐出孔13Aが開口する方向を前方といい、その逆方向を後方といい、上下方向および前後方向の双方向に直交する方向を左右方向という。
【0019】
ステム12は、容器本体2の口部3に上方付勢状態で下方移動自在に立設されている。
ステム12の下部の内径および外径は、ステム12の上部の内径および外径よりも大きい。ステム12の上部と下部との間には、テーパ状の段筒部12Aが形成されている。
ステム12とピストン41との間には、ピストン41に対するステム12およびピストンガイド43の下方移動に伴って、ピストン41およびステム12により上下方向の圧縮力が加えられる弾性片25が配設されている。
【0020】
弾性片25は、表裏面が径方向を向き、上下方向に延びる板状に形成されている。弾性片25は、ステム12の下端開口縁に形成され、周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では6つ)配置されている。弾性片25はステム12と一体に形成されている。複数の弾性片25は、互いに同等の形状かつ同等の大きさに形成されている。弾性片25の径方向の大きさ(厚み)は、ステム12の厚みよりも薄くなっている。なお、ステム12および弾性片25は、弾性片25が一定の力が加えられたときに変形するような、ある程度剛性を有する材質、例えばポリプロピレン等で形成される。
【0021】
吐出ヘッド13は、ステム12の上端部に装着された有頂筒状の装着筒部31と、装着筒部31から前方に向けて突出した筒状のノズル筒部32と、を有する。
装着筒部31は、ステム12内に嵌合されている。装着筒部31の上端部に、後方に向けて突出する第1被係止部120が形成されている。
【0022】
第1被係止部120は、左右方向に開口する一対の肉抜き孔121を有するブロック状に形成されている。第1被係止部120には、後述するストッパ130の規制位置から規制解除位置への移動を抑止するための係合突起122が形成されている。
係合突起122は、第1被係止部120の後端部から下方に向けて突設されている。係合突起122の下端は、ステム12の上端よりも上方に位置する。係合突起122の後部には、後方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる斜面122aが形成されている。
【0023】
装着筒部31の上端部には、左右方向の両側に各別に突出する一対の第2被係止部100Aが形成されている。第2被係止部100Aは左右方向から見て円形状を呈する。第2被係止部100Aの外周面に、下方を向く平坦面100A1と、後方斜め下側を向く傾斜面100A2と、が形成されている。平坦面100A1は、第2被係止部100Aの外周面における下端に形成され、例えば、上下方向と直交する平坦面となっている。傾斜面100A2は、平坦面100A1の後端に接続され、平坦面100A1の後端から後方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びている。
【0024】
ノズル筒部32内には、前後方向に延びる芯棒体35と、芯棒体35の前端部に被着された有頂筒状のチップ36と、が配設されている。
芯棒体35の外周面には、前後方向に延びるとともに、ノズル筒部32の内周面との間で内容液の流動を可能とする複数の流路溝部35Aが形成されている。チップ36は、芯棒体35と同軸上に配設されており、内側に芯棒体35が嵌合された円筒状のチップ筒部37と、チップ筒部37の前端部に設けられた端壁部38と、を有している。
【0025】
チップ筒部37は、ノズル筒部32内に嵌合されている。端壁部38は、芯棒体35の前端面に当接している。端壁部38のうち芯棒体35の前端面に当接する後面には、芯棒体35の流路溝部35Aに連通するスピン流路38Aが形成されている。端壁部38の中央部分には、スピン流路38Aに連通する吐出孔13Aが前方に向けて開口している。
チップ36により、内容液を霧状に吐出することができる。また、チップ36およびノズル先端形状等を変更することで、内容液を泡状および直線状等に吐出することが可能となる。例えば、本実施形態のノズル先端にメッシュ等の発泡部材を設けることで、泡状吐出が可能となる。
【0026】
ピストン41は、シリンダ42内に上下摺動自在に嵌合された外筒ピストン51と、外筒ピストン51における径方向の内側に配置され、ピストンガイド43を径方向の外側から囲繞する内筒ピストン52と、外筒ピストン51と内筒ピストン52とを連結する環状連結部53と、を備える。これら外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53はそれぞれ、中心軸線Oと同軸に配設されている。図示の例では、外筒ピストン51、内筒ピストン52、および環状連結部53は一体に形成されている。
【0027】
外筒ピストン51の下端部は、上方から下方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて反るように湾曲している。外筒ピストン51の下端部は、シリンダ42の内周面に上下動自在に当接する。
内筒ピストン52の下端部は、上方から下方に向かうに従い漸次、径方向の内側に向けて反るように湾曲している。ピストンガイド43の後述するフランジ部43A近傍に形成された当接部43Eに当接している。内筒ピストン52の上端部は、下方から上方に向かうに従い漸次、径方向の外側に向けて反るように湾曲しており、ステム12の下端部の内周面に上下動自在に当接する。
【0028】
内筒ピストン52の外周面において、環状連結部53の上端に接続された部分に、環状連結部53の上端から上方に向かうに従い漸次、縮径したテーパ部52aが形成されている。テーパ部52aは、全周にわたって連続して延びている。なお、テーパ部52aは、全周にわたって断続的に延びてもよい。テーパ部52aと、弾性片25の下端部と、が上下方向で互いに対向している。
【0029】
シリンダ42は、多段の円筒状に形成されている。シリンダ42は、上下方向に延びる上筒部62と、上筒部62の下端部から下方に向けて延び、上筒部62よりも内径および外径が小さい下筒部63と、下筒部63の下端部から下方に向けて延び、下筒部63よりも内径および外径が小さい小径部64と、上筒部62の下端部と下筒部63の上端部とを接続する環状の段部65と、小径部64の下端部から下方に向けて延びる接続筒部69と、を備える。
【0030】
上筒部62の上部には、上筒部62の内外を連通させる空気孔62Bが形成されている。上筒部62の上端部には、径方向の外側に向けて突出する円環状の支持板部61が形成されている。支持板部61の上面における外周部に、装着キャップ11の頂壁部11aの下面が当接している。支持板部61と容器本体2の口部3における上端開口縁との間に、第1パッキン66が配設されている。装着キャップ11の周壁部11bが、口部3に螺着されることにより、支持板部61および第1パッキン66が、装着キャップ11の頂壁部11aと、口部3と、の間に固定される。これら支持板部61、上筒部62、下筒部63、および小径部64は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
段部65は、ピストン41の外筒ピストン51に上下方向で対向している。ピストン41が、図5に示されるように、下降端位置に位置したとき、外筒ピストン51の下端部が段部65の上面に当接する。
【0031】
支持板部61の上面には、上方に向けて延び、かつ装着キャップ11の開口部11cに挿通された立設筒部60が形成されている。立設筒部60の外径および内径は、上筒部62の外径および内径よりも大きくなっている。立設筒部60の上端開口縁は、ステム12の段筒部12Aと上下方向において同等の位置に位置している。
支持板部61の上面は、ピストン41の外筒ピストン51の上端開口縁と上下方向において同等の位置に位置している。支持板部61のうち、立設筒部60より径方向の内側に位置する内周部の上面、および外筒ピストン51の上端開口縁に一体に環状の第2パッキン56が配設されている。
【0032】
小径部64は、下筒部63の下端部から下方に向けて真っ直ぐ延びる直筒部67と、直筒部67の下端部から下方に向かうに従い漸次、内径および外径が小さくなるテーパ筒部68と、を有する。テーパ筒部68の内側には、弁体44がテーパ筒部68の内周面に離着自在に配設されている。
なお、弁体44は、球状に形成された合成樹脂製のいわゆるボール弁とされている。弁体44を合成樹脂製とすることで、コストを低減できるとともに、廃棄時に弁体44を分別する必要がない。また、弁体44は、金属製等であってもよい。さらに、ボール弁に替わる種々の弁体を用いた逆止弁でもよい。
【0033】
テーパ筒部68の内周面には、径方向の外側から内側に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる規制突部68Aが突設されている。規制突部68Aの上端の内径は、弁体44の外径よりも小さくなっている。これにより、弁体44が規制突部68Aから上方に離脱することを規制している。なお、規制突部68Aには、周方向の延在を分断する間隙が形成されている。
【0034】
ピストンガイド43は、ピストン41の内側を上下方向に貫いている。ピストンガイド43は、ステム12から下方に向けて延びる周筒部43Dおよび底壁部を備える有底筒状に形成されている。ピストンガイド43の底壁部は、ピストン41の内筒ピストン52よりも下方に位置している。底壁部には、径方向の外側に向けて突出する円環状のフランジ部43Aが形成されている。
ピストンガイド43における周筒部43Dの下端部に、外径がフランジ部43Aの上面から上方に向かうに従い漸次、縮径した当接部43Eが形成されている。この当接部43Eに、ピストン41の内筒ピストン52の下端部が当接している。
【0035】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、ピストンガイド43内とシリンダ42内とを連通させる連通孔43Bが形成されている。連通孔43Bは、例えば中心軸線Oを径方向で挟む両側に配置されている。連通孔43Bは、内筒ピストン52の下端部が当接する当接部43Eよりも上方に位置している。これにより、連通孔43Bとシリンダ42の上筒部62内との連通が遮断されている。
【0036】
ピストンガイド43の周筒部43Dには、ピストンガイド43内とステム12内とを連通する貫通孔43Cが形成されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bと同様に、例えば中心軸線Oを径方向で挟む両側に配置されている。貫通孔43Cは、連通孔43Bよりも上方に配置され、ステム12の段筒部12Aにおける内周面に向けて開口している。連通孔43Bおよび貫通孔43Cがピストンガイド43に形成されていることで、ピストンガイド43とピストン41との間、並びにピストンガイド43とステム12との間の空気が滞留するのを防ぐことができる。
ピストンガイド43のうち貫通孔43Cよりも上側に位置する部分は、ステム12内に嵌合している。これにより、ピストンガイド43は、ステム12と共に一体に上下動する。
【0037】
ピストンガイド43の下端部には、下方に向けて突出し、コイルバネ95が外装されるガイド突部43Fが形成されている。ガイド突部43Fは、表裏面が周方向を向く板体が中心軸線O回りに複数配置されて構成されている。ガイド突部43Fは、シリンダ42における上筒部62の下部から下筒部63の上部にわたって配設されている。
コイルバネ95のうち、上端部はフランジ部43Aの下面に当接し、下端部はシリンダ42における直筒部67の上端開口縁に当接している。これにより、ピストンガイド43はコイルバネ95から上向きの付勢力を受けている。
【0038】
支持部15は、シリンダ42の立設筒部60に外装された有頂筒状の囲繞筒部15aと、囲繞筒部15aの頂壁から上方に向けて延びるガイド筒15cと、囲繞筒部15aから後方に向けて突設され、左右方向に間隔をあけて配設された一対の側壁部77と、側壁部77の後端縁同士を左右方向に接続する後壁部78と、を有する。
【0039】
囲繞筒部15aの頂壁は環状に形成され、この頂壁の内周縁部にガイド筒15cが配置されている。ガイド筒15c内には、ステム12が下方移動自在に挿通されている。囲繞筒部15aの頂壁の下面には、内側にステム12が挿通された内側垂下筒部15dと、内側垂下筒部15dと囲繞筒部15aの周壁との間に配置された外側垂下筒部15eと、が形成されている。ガイド筒15c、内側垂下筒部15d、および外側垂下筒部15eは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0040】
囲繞筒部15aの周壁の下端部は、装着キャップ11の頂壁部11aと隙間を介して上下方向に対向している。
外側垂下筒部15eは、立設筒部60内に嵌合されている。外側垂下筒部15eの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、シリンダ42における支持板部61の内周部の上面に押し当てられている。
内側垂下筒部15dは、ステム12の下部に外装されている。内側垂下筒部15dの下端開口縁は、第2パッキン56を介して、ピストン41の外筒ピストン51の上端開口縁に押し当てられている。
第2パッキン56は、ステム12の下端部に外嵌されている。第2パッキン56は、ステム12とガイド筒15cとの間に画成された外気導入路Rと、シリンダ42内のうち、ピストン41の外筒ピストン51より上方に位置する上部空間と、の連通を遮断可能である。
【0041】
側壁部77は、前側から後側に向かうに従い漸次、上側に向けて延びている。側壁部77の上端には、左右方向から見た正面視で上方に向けて突の半円形状に形成された突出片80が形成されている。突出片80には、円柱状の軸体77Aが左右方向の外側に向けて突設されている。軸体77Aは、ステム12より後方に配置されている。軸体77Aの中心を通り、かつ左右方向に延びる仮想の軸線が押下部材16の回転軸Lとなる。これにより、回転軸Lは、ステム12より後方に配置されるとともに左右方向に延びている。
後壁部78の内面には、上方に向かって突出し、一対の側壁部77の内面同士および突出片80同士を左右方向に一体に連結する補強壁78aが形成されている。
【0042】
押下部材16は、軸体77Aを介して支持部15に取り付けられている。これにより、押下部材16は、支持部15に対して回転軸L回りに揺動可能に連結されている。
押下部材16は、吐出ヘッド13を上方から覆う天板部90と、天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる前板部91と、天板部90の左右両側の側端縁から下方に向けて延び、左右方向で互いに対向する一対の側板部92と、を有している。
そして、天板部90と一対の側板部92とで囲まれる内部空間に吐出ヘッド13が配置されている。一対の側板部92は、吐出ヘッド13を左右方向から挟むように配置されている。
【0043】
側板部92の下端縁は、左右方向から見て、上方に向けて突の曲線状を呈する。側板部92の下端縁における上端部は、左右方向から見て、中心軸線Oより後方に位置している。
天板部90は、上方に向けて膨らむように滑らかに湾曲した形状とされ、その後端部は支持部15における後壁部78の上端部に上方から当接している。これにより、押下部材16は、回転軸Lを中心としたこれ以上の上方への回転が規制されている。
天板部90の前側部分には、天板部90を貫通する第1貫通孔93が形成されている。
この第1貫通孔93は、天板部90における左右方向の中央部分に形成されているとともに、前方に開口している。これにより、天板部90の前側部分は、左右方向に二股に分かれた形状とされている。前板部91は、二股に分かれた天板部90の前端縁から前方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。
【0044】
第1貫通孔93内に吐出ヘッド13のノズル筒部32が挿通されている。これにより、ノズル筒部32は、第1貫通孔93を通して前板部91から前方に向けて突出しており、押下部材16と吐出ヘッド13との中心軸線O回りにおける相対的な回転が規制されている。なお、前板部91の下側部分は、指先を掛けるための指掛部分とされている。
【0045】
押下部材16の一対の側板部92は、支持部15の一対の側壁部77における上部を左右方向に挟んでいる。これにより、支持部15と押下部材16との中心軸線O回りにおける相対的な回転が規制されている。一対の側板部92の後部側の内面には、軸体77Aが挿通される軸孔部92Aが形成されている。これにより、押下部材16は、軸体77A回り、すなわち回転軸L回りに回転可能に支持される。
【0046】
押下部材16には、吐出ヘッド13の第2被係止部100Aに係合する係合溝31Aが形成されている。係合溝31Aは、押下部材16の一対の側板部92から左右方向の内側に向けて張り出した板部の下端部に、下方に向けて開口する半円形状に形成されている。この係合溝31A内に第2被係止部100Aが挿入されている。
以上の構成において、押下部材16を回転軸L回りに下方に回転すると、係合溝31Aの内周面が第2被係止部100Aの外周面を下方に向けて押し込むことにより、ステム12およびピストンガイド43が、コイルバネ95の上方付勢力に抗して下降する。
【0047】
さらに本実施形態では、吐出器1は、吐出ヘッド13の下方移動を規制するストッパ130を備える。
ストッパ130は、押下部材16の回転軸Lに平行な軸体131回りに前後方向に揺動可能に配設され、吐出ヘッド13の下方移動を規制する規制位置(図2に示す位置)と、規制位置から軸体131回りに後方に向けて揺動し、吐出ヘッド13の下方移動を許容する規制解除位置(図5に示す位置)と、に切り替え可能になっている。
なお、以下に説明するストッパ130の各部の位置関係は、ストッパ130が規制位置に位置する場合の位置関係とする。
【0048】
ストッパ130は、図6に示すように、左右方向に間隔をあけて配置された一対のストッパ側壁部132と、一対のストッパ側壁部132同士を連結する連結壁部133と、連結壁部133より下方に配設されるとともに、一対のストッパ側壁部132同士を連結する軸体131と、連結壁部133から上方に向けて突出する第1規制部135と、ストッパ側壁部132および連結壁部133のうちの少なくとも一方から前方に向けて突出する左右一対の第2規制部136と、一対のストッパ側壁部132から左右方向の外側に向けてそれぞれ突出し、押下部材16よりも左右方向の外側に位置する指掛部134cを有する摘み部134と、ストッパ130が規制位置に位置した状態で押下部材16に当接した、若しくは、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、押下部材16が回転軸L回りに下方に向けて回転したときに、押下部材16に当接する被当接部138と、を備える。
【0049】
一対のストッパ側壁部132は、表裏面が左右方向を向く板状に形成され、左右方向から見て上下方向に長い長方形状を呈する。
連結壁部133は、表裏面が前後方向を向く板状に形成され、前後方向から見て、一対の辺が左右方向に延び、かつ残り一対の辺が上下方向に延びる矩形状を呈する。連結壁部133の上端面は、ストッパ側壁部132の上端面と面一となっている。連結壁部133の下端部は、ストッパ側壁部132の下端部より上方に位置している。
【0050】
軸体131は、左右方向に延びる丸棒状に形成されている。軸体131は、一対のストッパ側壁部132の下端部同士を連結している。軸体131は、図2に示すように、支持部15における一対の側壁部77に形成された第2支持凹部82に中心軸回りに回転可能に嵌め込まれている。第2支持凹部82は、ステム12よりも後方に配置されている。ストッパ130は、ステム12よりも後方において、軸体131回りに前後方向に揺動可能に支持部15に取り付けられている。
【0051】
第1規制部135は、略直方体状である。第1規制部135は、連結壁部133の上端面から上方に延びている。第1規制部135は、連結壁部133の左右方向の中央部に位置する。第1規制部135の左右方向の寸法は、連結壁部133の左右方向の寸法よりも小さい。第1規制部135の前後方向の寸法は、連結壁部133の前後方向の寸法と略同じである。第1規制部135の上端面のうち、後端部より前方に位置する前側部分には、前方に向かうに従って下方に向けて延びる傾斜面135aが形成されている。
【0052】
第1規制部135は、ストッパ130が図2に示す規制位置に位置したときに、吐出ヘッド13の第1被係止部120に対して第1被係止部120の下方から当接若しくは近接する。第1規制部135の上端部は、ストッパ130が規制位置に位置したとき、係合突起122に対して係合突起122の前側から係合している。ストッパ130が規制位置に位置したときに、第1規制部135が、第1被係止部120の下面に当接若しくは近接し、連結壁部133の下端面が、ガイド筒15cの上端開口縁15fに当接若しくは近接する。
第1規制部135は、ストッパ130が図5に示す規制解除位置に位置したときに、第1被係止部120から後方に離れる。
【0053】
第2規制部136は、図6に示すように、連結壁部133における左右方向の端部およびストッパ側壁部132から一体に前方に向けて突出している。第2規制部136は、表裏面が左右方向を向く板状に形成されている。第2規制部136のうち、下端部136aは、下端部136aより上方に位置する上部より前方に向けて突出している。第2規制部136の上端面136bのうち、後部136cは、前方に向かうに従い漸次、上方に向けて延びる傾斜面とされ、前部136dは、上下方向と直交する平坦面となっている。第2規制部136の上端面136bの後端縁は、連結壁部133の上端面に段差なく連なっている。
第2規制部136の上端面136bの前部136d、および第1規制部135の上端面の後端部それぞれの上下方向の位置は互いに同等になっている。
【0054】
一対の第2規制部136における左右方向で互いに対向する内面、および連結壁部133の前面のうち一対の第2規制部136同士の間に位置する部分に、上下方向から見て前方に向けて開口するC字状を呈する凹曲面状の嵌合面137が一体に形成されている。嵌合面137の半径は、ステム12の外周面における半径とほぼ同じになっている。嵌合面137は、ストッパ130が図2に示す規制位置に位置したときに、中心軸線Oと同軸に配置されるとともに、ステム12にステム12の後方から外嵌する。
【0055】
第2規制部136の下端部136aにおける前端部に、左右方向の内側に向けて膨出する膨出部136eが形成されている。一対の膨出部136e同士の左右方向の間隔は、ステム12の外径より小さい。
これにより、嵌合面137がステム12に外嵌される際、および嵌合面137がステム12から外される際には、第2規制部136の膨出部136eがステム12の外周面に摺接することにより、一対の第2規制部136における各下端部136aが左右方向の外側に向けて弾性変形して拡げられる。
【0056】
第2規制部136は、ストッパ130が図2に示す規制位置に位置したときに、第2被係止部100Aに対して第2被係止部100Aの下方から当接若しくは近接する。より詳細には、図3に示すように、ストッパ130が規制位置に位置したときに、第2規制部136の上端面136bの前部136dが、第2被係止部100Aの平坦面100A1に下方から当接若しくは近接する。この際、第2規制部136の下端面が、ガイド筒15cの上端開口縁15fに当接若しくは近接する。
第2規制部136は、ストッパ130が図5に示す規制解除位置に位置したときに、第2被係止部100Aから後方に離れる。
【0057】
以上より、ストッパ130は、第1規制部135および第2規制部136が、第1被係止部120および第2被係止部100Aに各別に当接若しくは近接し、吐出ヘッド13の下方移動を規制する規制位置と、規制位置から後方に向けて揺動し、第1規制部135および第2規制部136が、第1被係止部120および第2被係止部100Aから各別に離れ、吐出ヘッド13の下方移動を許容する規制解除位置と、の間で揺動可能に配設されている。
図示の例では、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、押下部材16に、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられても、第1被係止部120および第2被係止部100Aから、第1規制部135および第2規制部136に、ストッパ130を軸体131回りに後方に向けて揺動させる力が加えられることはない。
【0058】
摘み部134は、図6に示すように、ストッパ側壁部132から左右方向の外側に向けて延びる第1腕部134aと、第1腕部134aの左右方向の外端から上方に向けて延びる第2腕部134bと、第2腕部134bの上端から上方に向けて突出する指掛部134cと、を備える。
図4に示すように、第1腕部134aの左右方向の外端は、押下部材16(側板部92)よりも左右方向の外側に位置する。これにより、第2腕部134bおよび指掛部134cは、押下部材16(側板部92)よりも左右方向の外側に位置する。指掛部134cの左右方向から見た正面視形状は、略円形状である。指掛部134cおよび第2腕部134bそれぞれの前後方向の中央部は、前後方向における同じ位置に位置している。指掛部134cの外径は、第2腕部134bの前後方向の寸法よりも大きい。
【0059】
被当接部138は、図4図6および図7に示されるように、ストッパ側壁部132と摘み部134との間に配設され、押下部材16の側板部92における下方を向く下端縁に対して押下部材16の下方から対向している。図示の例では、被当接部138の上端面138cが、押下部材16の側板部92の下端縁に当接若しくは近接している。被当接部138は中心軸線Oより後方に位置する。
図示の例では、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、押下部材16に、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられたときに、被当接部138に、押下部材16の側板部92から、ストッパ130を軸体131回りに後方に向けて揺動させる力が加えられる。
【0060】
被当接部138は、表裏面が前後方向を向く板状に形成され、前後方向から見て、上下方向に長い長方形状を呈する。被当接部138は、ストッパ側壁部132における左右方向の外側を向く外面、摘み部134の第1腕部134aの上面、摘み部134の第2腕部134bにおける左右方向の内側を向く内面、および摘み部134の指掛部134cにおける左右方向の内側を向く内面に一体に連結されている。被当接部138の厚さ(前後方向の大きさ)は、第1腕部134aおよび第2腕部134bの各厚さより薄くなっている。被当接部138は、ストッパ側壁部132および摘み部134それぞれの前後方向の中央部に配設されている。
【0061】
被当接部138の上端面138cのうち少なくとも後端部は、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている。図示の例では、被当接部138の上端面138cの後部138aは、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる傾斜面とされ、前部138bは、上下方向と直交する平坦面となっている。被当接部138の上端面138cのうち、前部138bが、押下部材16の側板部92の下端縁に当接若しくは近接している。被当接部138の上端面138cにおける前端縁は、角が丸められた突曲面状に形成されている。
【0062】
そして、本実施形態では、図7に示されるように、押下部材16において、ストッパ130の被当接部138が当接する当接部分より後方に位置する部分に、下方に向けて突出する抑止突部139が形成されている。
図示の例では、抑止突部139は、押下部材16の側板部92の下端縁に形成されている。抑止突部139は、側板部92の下端縁のうち、中心軸線Oより後方に位置する上端部に形成されている。抑止突部139は、被当接部138に被当接部138の後方から近接している。抑止突部139は、下方に向けて突の曲面状に形成されている。抑止突部139の前後方向の大きさは、被当接部138の前後方向の大きさより大きい。なお、抑止突部139の前後方向の大きさを、被当接部138の前後方向の大きさ以下としてもよい。
【0063】
抑止突部139のうちの少なくとも一部は、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、被当接部138の上端面138cの後端部に上下方向で対向している。図示の例では、抑止突部139のうち、前方から後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びる前端部139aと、被当接部138の上端面138cの後部138aと、が上下方向で対向している。抑止突部139の下端、および被当接部138の上端面138cにおける後端それぞれの上下方向の位置は互いに同等になっている。抑止突部139のうち、最も下方に位置する頂部は、被当接部138の上端面138cより後方に位置している。
【0064】
図8に示すように、正倒立両用アダプタ200は、円筒状の本体筒部210を備える。
本体筒部210は、中心軸線Oと同軸に配設されている。本体筒部210は、シリンダ42に外嵌された円筒状の外側筒部材211と、外側筒部材211内に嵌合された内側筒部材212と、を有する。内側筒部材212の下端部内には、下端開口が容器本体2内に向けて開口する円筒状のパイプ213の上端部が嵌合されている。これら外側筒部材211、内側筒部材212、およびパイプ213は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0065】
外側筒部材211は、上端部内にシリンダ42の直筒部67が嵌合された円筒状の外筒部214と、外筒部214の上下方向の中間部分に配設され、外筒部214の内部を上下に仕切る仕切壁部215と、仕切壁部215から下方に延設され内側筒部材212の上端部が連結される円筒状の連結筒部217と、を有する。
【0066】
仕切壁部215には、上下方向に貫く通液孔219が形成されている。連結筒部217の上端部のうち、一部の外周面は、外筒部214の内周面に接続され、他の部分の外周面は、外筒部214の内周面から径方向の内側に離間している。そして、外側筒部材211には、連結筒部217の前記一部および外筒部214を一体に径方向に貫く倒立時導入孔221が形成されている。倒立時導入孔221は、吐出器1の倒立時に容器本体2内の内容液を連結筒部217内に導入可能に設けられている。
【0067】
内側筒部材212は、上端部が連結筒部217に連結された円筒状の上側筒部222と、上側筒部222よりも下方に配設され、かつ下端部が外側筒部材211の下端部よりも下方に位置する円筒状の下側筒部223と、上側筒部222と下側筒部223とを結合する円筒状の結合筒部224と、を有する。
【0068】
上側筒部222の上端部は、連結筒部217に外嵌されている。そして、上側筒部222の外周面と外筒部214の内周面との間には、内容液を流通させる第1流路r1が形成されている。この第1流路r1は、通液孔219に連通している。上側筒部222の下端部は、内径および外径が下方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状をなしている。上側筒部222の下端部内に、球状の切替弁225が上方に向けて離反自在に配設されている。切替弁225は金属材料で形成されている。
【0069】
結合筒部224の外周面と、外筒部214の内周面と、の間には、内容液を流通させる第2流路r2が形成されている。この第2流路r2は、第1流路r1に連通している。結合筒部224には、その内部と第2流路r2とを連通する連絡孔226が形成されている。連絡孔226は、結合筒部224に周方向に間隔をあけて複数形成されている。
ここで連絡孔226、第2流路r2、第1流路r1および通液孔219は、内側筒部材212の下端の正立時導入孔229および倒立時導入孔221と、シリンダ42の接続筒部69における下端開口と、を連通する連通路r3を構成している。正立時導入孔229は、倒立時導入孔221より下方に配置されている。
【0070】
下側筒部223は、外側筒部材211の下端部内に嵌合されている。パイプ213の上端部は、下側筒部223内に嵌合されており、パイプ213の下端開口は、容器本体2内の底部に向けて開口する。パイプ213の下端開口および正立時導入孔229は、吐出器1の正立時に、容器本体2内の内容液を内側筒部材212内に導入可能に設けられている。正立時導入孔229には、パイプ213を通して内容液が導入される。
【0071】
次に、上述のように構成された吐出器1の使用方法について説明する。
吐出器1を使用する際、まず、ストッパ130を規制位置から後方の規制解除位置へと揺動させて、押下部材16および吐出ヘッド13が下方移動可能な状態とする。次に、押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる。この際、例えば押下部材16の前板部91の指掛部分に指先を掛けながら、コイルバネ95の付勢力に抗して押下部材16を下方に向けて回転させる。押下部材16を下方に向けて回転させると、吐出ヘッド13が下方移動し、弁体44によってシリンダ42のテーパ筒部68内を閉塞した状態で、ステム12およびピストンガイド43がシリンダ42に対して押下げられる。
【0072】
ステム12がピストンガイド43とともに押下げられると、ステム12に加えられた押下げ力が、弾性片25を介してピストン41に伝えられ、ピストン41がステム12およびピストンガイド43と一体となって、シリンダ42に対して下方移動する。これにより、ピストン41の内筒ピストン52の下端部がステム12内とシリンダ42内との連通を遮断したままの状態で、シリンダ42内が加圧される。この状態でステム12をさらに押下げると、シリンダ42の上昇した内圧によりピストン41の下方移動が抑止されることとなり、ステム12およびピストンガイド43が、ピストン41に対して下方移動する。
【0073】
このため、ステム12およびピストンガイド43は、ステム12とピストン41との間に配設された弾性片25に上下方向の圧縮力を加えて弾性片25を弾性変形させながら、ピストン41に対して下方移動する。この際、ピストン41の内筒ピストン52の下端部が、ピストンガイド43の当接部43Eから上方に離間し、内筒ピストン52の下端部とピストンガイド43の外周面との間に、径方向の間隙が形成される。そのため、連通孔43Bは、この間隙を通してシリンダ42内に対して開放される。なお、連通孔43Bがシリンダ42内に対して開放されるまで、シリンダ42の内圧はさらに上昇する。
【0074】
これにより、シリンダ42内の内容液は、内筒ピストン52の内周面とピストンガイド43の外周面との間の間隙、並びに連通孔43Bを通ってピストンガイド43内に流入する。そして、ピストンガイド43内に流入した内容液は、ステム12の上部内を流動してノズル筒部32に至り、ノズル筒部32の吐出孔13Aから吐出される。この結果、容器本体2内に収容された内容液を、吐出孔13Aを通じて外部に吐出することができる。
【0075】
その後、押下部材16の操作を解除すると、ステム12およびピストン41が、コイルバネ95からの付勢力に基づいてシリンダ42に対して復元移動する。このとき、シリンダ42内が負圧になり、この負圧が、弁体44に作用してテーパ筒部68内を開放し、図8に示す切替弁225に連通路r3を通して作用する。すると、吐出器1の正立時には、切替弁225が倒立時導入孔221と連通路r3との連通を遮断した状態に維持する。その結果、容器本体2内の内容液が、正立時導入孔229、本体筒部210内および連通路r3を通してシリンダ42の下端開口に到達してシリンダ42内に流入する。
【0076】
一方、吐出器1の倒立時には、容器本体2内の底部に開口するパイプ213の下端開口が、容器本体2内の内容液の液面から突出する。しかも、倒立時導入孔221が、容器本体2内の内容液中に位置した状態で、切替弁225がその自重により上側筒部222の下端部の内周面から離反しており、倒立時導入孔221と連通路r3とが本体筒部210内を通して連通している。したがって、シリンダ42内で負圧が発生することで、容器本体2内の内容液が、倒立時導入孔221、本体筒部210内および連通路r3を通してシリンダ42の下端開口に到達してシリンダ42内に流入する。
【0077】
吐出器1の正立時および倒立時いずれの場合であっても、吐出ヘッド13、ステム12およびピストン41をシリンダ42に対して一体的に押下させると、シリンダ42内のうちピストン41より下方に位置する下部空間が加圧され、この下部空間内の内容液がステム12内を上昇して吐出孔13Aから吐出される。この過程において、第2パッキン56が外気導入路Rの下端開口を開放し、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間とが連通し、外気がシリンダ42内の上部空間に導入される。
【0078】
吐出ヘッド13、ステム12およびピストン41の押下げを解除して、これらを上方に復元変位させると、シリンダ42内の下部空間が負圧になり、容器本体2内の内容液がシリンダ42内の下部空間に導入される。この過程において、上部空間の空気は、空気孔62Bを通してシリンダ42内の上部空間と容器本体2内とが連通することで、容器本体2内に導入される。
【0079】
その後、ステム12およびピストン41が元に戻ると、第2パッキン56により、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間との連通が遮断され、外気導入路Rを通した容器本体2内と外部との連通が遮断される。
なお、外気導入路Rとシリンダ42内の上部空間との連通を遮断する第2パッキン56が配設されているので、吐出器1が倒立等して、容器本体2内の内容液がシリンダ42内の上部空間に到達しても、この内容液が外気導入路Rを通して外部に漏出するのを防ぐことができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出器1によれば、押下部材16に抑止突部139が形成されているので、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、押下部材16に、例えば押下部材16を回転軸L回りに下方に向けて回転させる大きな力が加えられたときに、押下部材16からストッパ130の被当接部138に後方に向けた力が加えられ、ストッパ130が規制解除位置側に位置ずれしようとしても、ストッパ130の被当接部138が、被当接部138の後方から抑止突部139に当接することで、ストッパ130が抑止突部139に係止されることとなる。これにより、規制位置に位置するストッパ130が、不意に規制解除位置側に位置ずれするのを抑制することができる。
【0081】
被当接部138の上端面138cのうち少なくとも後端部が、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びているので、押下部材16に前述の大きな力が加えられたときに、ストッパ130が規制位置から規制解除位置側に位置ずれしようとしても、被当接部138の上端面138cに、押下部材16の抑止突部139から前方に向けた力が加えられることとなり、ストッパ130を規制位置に復帰、若しくは留まらせることができる。
また、被当接部138の上端面138cのうち少なくとも後端部が、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びていることから、前述のように、ストッパ130が規制位置から規制解除位置側に位置ずれしようとしたときに、被当接部138の上端面138cが、抑止突部139に当接しやすくなるとともに、抑止突部139から被当接部138の上端面138cに加えられた下方に向けた力を前方に向けた力に変換しやすくなる。
【0082】
抑止突部139のうちの少なくとも一部が、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、被当接部138の上端面138cの後端部に上下方向で対向しているので、被当接部138の上端面138cと抑止突部139との前後方向の距離を抑えることが可能になり、押下部材16に前述の大きな力が加えられたときに、ストッパ130が規制位置から規制解除位置側に位置ずれするのを確実に抑制することができるとともに、被当接部138の上端面138cに、押下部材16の抑止突部139から前方に向けた力を効果的に加えることができる。
【0083】
さらに、押下部材16に前述の大きな力が加えられたときに、ストッパ130の被当接部138の上端面138cに、押下部材16の抑止突部139から前方に向けた力が加えられると、ストッパ130の嵌合面137が、ステム12の外周面に前方に向けて押し付けられるとともに、ストッパ130が、ガイド筒15cの上端開口縁15fと、押下部材16の側板部92の下端縁と、により上下方向に圧縮されることとなり、ストッパ130が規制位置から後方の規制解除位置側に位置ずれするのを確実に抑制することができる。
【0084】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
例えば、前記実施形態では、ストッパ130の規制部に当接若しくは近接することで、吐出ヘッド13の下方移動が規制される被係止部が、吐出ヘッド13に備えられた構成を示したが、被係止部を、押下部材16に備えさせてもよいし、吐出ヘッド13および押下部材16の双方に備えさせてもよい。
前記実施形態では、被当接部138において、押下部材16の当接部分が当接する上端面138cのうち少なくとも後端部が、後方に向かうに従い漸次、下方に向けて延びている構成を示したが、これに限らず例えば、被当接部138の上端面138cを全域にわたって上下方向に直交する平坦面にする等適宜変更してもよい。
前記実施形態では、抑止突部139のうちの少なくとも一部が、ストッパ130が規制位置に位置した状態で、被当接部138の上端面138cの後端部に上下方向で対向している構成を示したが、抑止突部139を、被当接部138の上端面138cよりも後方に位置させてもよい。
抑止突部139の形状、大きさ、および形成位置等の形態は、前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。
【0086】
前記実施形態では、ストッパ130が規制位置に位置したとき、第1被係止部120および第2被係止部100Aに当接すると説明したが、ストッパ130は第1被係止部120および第2被係止部100Aに当接せずとも近接していればよく、この場合であっても吐出ヘッド13の下方移動を規制することができる。
また、吐出器1は、正倒立両用アダプタ200を備えていなくてもよい。この場合、パイプ213はシリンダ42の下端に取り付けられる。
【0087】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 吐出器
2 容器本体
3 口部
11 装着キャップ
13 吐出ヘッド
13A 吐出孔
14 ポンプ 15 支持部
16 押下部材
100A 第2被係止部(被係止部)
120 第1被係止部(被係止部)
130 ストッパ
134c 指掛部
135 第1規制部(規制部)
136 第2規制部(規制部)
138 被当接部
138c 被当接部の上端面
139 抑止突部
L 回転軸
図1
図2
図3
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図8