(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
有用な特性の独特の組合せを有する無水マレイン酸グラフト化直鎖状低密度ポリエチレン(MAH−g−LLDPE)が、驚いたことに発見されている。これらの有用な特性には、低密度、高いメルトインデックス、および広い温度範囲にわたるより高い接着性が含まれる。添加剤としてのMAH−g−LLDPEは、既存のホットメルト接着剤配合物の特性を向上させることもできる。
したがって、一態様では、本発明は、無水マレイン酸でグラフト化した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を提供する。MAH−g−LLDPEは、250〜800g/10分のメルトインデックス(MI)を有し、MAH−g−LLDPEの質量に対して0.01〜3質量パーセントの無水マレイン酸を含む。
【0006】
グラフト化の前には、LLDPEは一般に、0.880〜0.930g/cm
3の範囲の密度を有する。好ましくは、LLDPEは、0.880〜0.928g/cm
3、0.880〜0.925g/cm
3、0.880〜0.923g/cm
3、0.880〜0.920g/cm
3、0.880〜0.918g/cm
3、0.890〜0.930g/cm
3、0.890〜0.928g/cm
3、0.890〜0.925g/cm
3、0.890〜0.923g/cm
3、0.890〜0.920g/cm
3、0.890〜0.918g/cm
3、0.900〜0.930g/cm
3、0.900〜0.928g/cm
3、0.900〜0.925g/cm
3、0.900〜0.923g/cm
3、0.900〜0.920g/cm
3、または0.900〜0.918g/cm
3の密度を有する。グラフト化後、MAH−g−LLDPEの密度は、LLDPEの初期密度から僅かに増大することがある(例えば、+0.001〜0.010g/cm
3)。
【0007】
LLDPEは一般に、エチレンと3〜10個の炭素原子を有する1種または複数のα−オレフィンとのコポリマーである。このようなオレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンなどが含まれる。好ましいLLDPEには、エチレンと1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンから選択される1種または複数のα−オレフィンとのコポリマーが含まれる。コポリマーは一般に、50〜99.5質量%、70〜99.5質量%、または80〜99.5質量%の範囲であるエチレン含有量を有する。
グラフト化する前には、本発明に有用であるLLDPEは一般に、0.1〜10g/10分、0.5〜10g/10分、0.5〜5g/10分、または0.5〜1g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。
【0008】
これらの特徴を有するLLDPEは、Westlake Chemical CorporationおよびDow Chemical Companyなどの製造業者から市販されている。あるいは、それらは米国登録特許第7,652,113号に記載されているもののような当技術分野で既知の方法によって製造することができる。
好ましくは、MAH−g−LLDPEは、0.1〜2質量%または0.5〜1.5質量%の無水マレイン酸含有量を有する。グラフト化するMAHの量は、時々酸価と呼ばれ、その場合1質量%のグラフト化するMAHは、約5.67の酸価に相当する。
【0009】
好ましくは、本発明によるMAH−g−LLDPEは、300〜800g/10分、350〜800g/10分、400〜800g/10分、450〜800g/10分、500〜800g/10分、300〜750g/10分、350〜750g/10分、400〜750g/10分、450〜750g/10分、500〜750g/10分、300〜700g/10分、350〜700g/10分、400〜700g/10分、450〜700g/10分、500〜700g/10分、300〜600g/10分、325〜600g/10分、350〜600g/10分、375〜600g/10分、400〜600g/10分、300〜550g/10分、325〜550g/10分、350〜550g/10分、375〜550g/10分、400〜550g/10分、425〜550g/10分、または450〜550g/10分の範囲のMIを有する。
本発明によるMAH−g−LLDPEは、
(a)押出機中でLLDPEを溶融させて、溶融LLDPEを形成するステップと、
(b)押出機中に無水マレイン酸を導入するステップと、
(c)LLDPEのメルトインデックス(MI)を増大させかつMAH−g−LLDPEを形成するのに有効な条件で、押出機中で溶融LLDPEを無水マレイン酸と接触させるステップと
を含む方法によって調製することができる。
【0010】
0.880〜0.930g/cm
3、0.880〜0.925g/cm
3、0.880〜0.920g/cm
3、0.900〜0.920g/cm
3、または0.900〜0.918g/cm
3の密度を有するLLDPEを含む、本明細書に記載された任意のLLDPEは、ステップ(a)で使用することができる。
本発明による方法は、連続またはバッチ方式で行なうことができ、連続方式が好ましい。この方法は、ポリエチレンを加工するのに通常使用される、一軸または多軸スクリュー押出機などの任意の押出機で実施することができる。多軸スクリュー押出機が一般に好ましく、二軸スクリュー押出機が最も好ましい。一般に、二軸スクリュー押出機は、好ましくは噛み合っていて、共回転または逆回転のいずれかであってよい、2本のシャフトを有している。本明細書では、用語「噛み合い(intermeshing)」は、シャフトが機械的に干渉することなく近接して互いに協調して回転するように嵌合するシャフトを表す。用語「共回転」は、同じ方向に回転するシャフトを表す。さらに用語「逆回転」は、反対方向に回転するシャフトを表す。
【0011】
押出機は通常、様々な温度を有する複数のバレルおよびゾーンを含有する。各ゾーンは、1種または複数のバレルを有していてよい。いくつかのゾーンは、主としてポリエチレンを溶融するように操作されるが、他の後続のゾーンは、主としてポリエチレンの粘度を低減(ビスブレーク)させるため、かつ/またはポリエチレンへの無水マレイン酸のグラフト化を促進するために操作される。これらの後者のゾーンは、時々反応ゾーンと呼ばれる。無水マレイン酸(MAH)は、液体または固形形態のいずれかで、溶融ゾーンもしくは反応ゾーンのいずれか、または溶融ゾーンと反応ゾーンの任意の組合せに導入することができる。好ましくは、MAHは、液体として押出機のバレル中に導入され、ここで、ポリエチレンは、主に、大部分が、または完全に溶融形態である。このために、MAHは、押出機中に供給される前に溶融されてもよい。
【0012】
押出機中に供給されたLLDPEは、ペレットまたは反応器粉末/フラフ/顆粒の形態であってよい。
通常、所望のグラフト化レベルをもたらすために、十分なMAHを押出機に加える。本発明において、所望のグラフト化レベルには、グラフト化ポリマーの質量に対して0.01〜3質量パーセント、0.1〜2質量パーセント、および0.5〜1.5質量パーセントの無水マレイン酸が含まれる。
LLDPEのMIを増大させるため、および本発明のMAH−g−LLDPEを形成するために、押出機は通常、80〜600℃またはより一般的には80〜450℃の範囲の温度プロファイルで操作される。押出機は普通、毎分300〜600回(rpm)のスクリュー速度を有し、LLDPEは通常、1〜5分またはより一般的には2〜4分の押出機中平均滞留時間を有する。
【0013】
生成物のMIは、スクリュー速度、LLDPEの供給量、および/またはポリマーに行なわれた剪断混合の程度によって制御することができる。
ステップ(c)中のグラフト化反応は、他のグラフト化プロセスで一般に使用されているとしても、フリーラジカル開始剤を添加せずに実施することが好ましい。
好ましい実施形態では、本発明の方法は、押出機の出口近くで揮発物を排出することを含む。排気は、真空下など、大気圧よりも低い圧力で行なわれることが好ましい。
グラフト化ポリマー生成物は、溶融生成物を水中ペレタイザーに通すことにより、またはダイに通して押し出してストランドにし、それを水浴中で冷却し、続いてペレットにすることにより、当技術分野で既知の手段によって回収することができる。
【0014】
本発明によるMAH−g−LLDPEは、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、エポキシ樹脂、および金属(例えば、アルミニウムおよび鉄)を含むいくつかの表面への良好な接着性を有する。これはまた、粉砕されたタイヤゴム、ガラスおよび他の二酸化ケイ素基材、ならびに機能性結合剤としての金属酸化物基材への良好な接着性を有する。さらに、本発明の材料は、紙、板紙、厚紙、およびクラフト紙などの包装産業で一般に使用される典型的な基材への優れた接着性を有する。そのように、MAH−g−LLDPEは、単独で接着剤として特に有用であるか、またはホットメルト接着剤組成物などの接着剤組成物を製造するために従来の添加剤とブレンドしてもよい。ホットメルト接着剤のベースポリマーとして特に適していることに加えて、本発明によるMAH−g−LLDPEは、カーペット裏地、ポリマー混合物中の相溶化剤、および多層構造のタイ層などの広範囲の用途を有する。多層構造は、1種または複数の層のチップボード、アルミニウム箔、ポリエチレン、マイラー、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル、およびクラフト紙を含んでいてもよい。
【0015】
その上、MAH−g−LLDPEは、アスファルト乳剤およびアスファルトブレンドの界面接着性を改善するためのアスファルト改質剤として使用することができ、ならびにプロピレンポリマーおよびコポリマーと内部貫通ネットワークを形成することもできる。
本発明のMAH−g−LLDPEは、1種または複数の従来の添加剤と有用な組成物を調製するのに典型的な量でブレンドしてもよい。添加剤の例には、成核剤、熱安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤、架橋剤、粘度増強剤、紫外線吸収剤、光安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤、およびゴムが含まれる。
本発明によるMAH−g−LLDPEは、容器、フィルム、ラミネート、およびコーティングなどのいくつかの製造品で使用するのに適している。一実施形態では、製造品は、包装材である。包装材は、本発明による接着剤組成物によって互いに接合した厚紙または板紙などの包装材料の2つの表面を含むことができる。包装物品は、カートン、ケース、またはトレーであってよい。
【0016】
言及したように、本発明によるMAH−g−LLDPEは、ホットメルト接着剤(HMA)に特に有用である。
したがって、別の態様では、本発明は、MAH−g−LLDPEと、粘着付与樹脂と、ワックスとを含むHMAを提供する。
HMAは通常、ベースポリマーと、粘着付与樹脂と、ワックスとを含有する。本発明によるMAH−g−LLDPEは、ベースポリマーの全部または一部として使用することができる。あるいは、MAH−g−LLDPEは、HMAの添加剤として使用することができる。ベースポリマーの一部もしくは全部として、または添加剤として使用されようと、MAH−g−LLDPEは、広い温度領域にわたってHMAの粘着強度および/または接合強度を改善することができる。
【0017】
本発明によるHMAは、本発明のMAH−g−LLDPEを0.5〜90質量%含有していてよい。ベースポリマーまたはベースポリマーの成分として、MAH−g−LLDPEは、30〜90質量%、または好ましくは30〜60質量%の範囲の量で使用することができる。性能増強剤として、MAH−g−LLDPEは、0.5〜30質量%、または好ましくは5〜15質量%の範囲の量で使用することができる。全てのパーセント値は、HMAの全質量に基づいている。
MAH−g−LLDPEに加えて、HMAは、1種または複数の従来のベースポリマーを含有していてよい。従来のベースポリマーの例には、ポリエチレン(例えば、LDPE、LLDPE、HDPE、およびメタロセン触媒ポリエチレン(mPEs))、アタクチックポリプロピレン、およびポリブテンなどのポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)およびエチレン−不飽和カルボン酸またはエステルコポリマー(例えば、エチレンn−アクリル酸ブチルコポリマー)などのエチレンコポリマー;ポリアミド;ポリエステル;スチレンブロックコポリマーを含む、天然または合成ゴム;ポリ酢酸ビニルおよび酢酸ビニル−不飽和カルボン酸またはエステルコポリマー;ならびにポリウレタンが含まれる。
【0018】
本発明によるHMAは、ベースポリマーを30〜90質量%、または好ましくは30〜60質量%含有していてよい。全てのパーセント値は、HMAの全質量に基づいている。
一実施形態では、ベースポリマーは、mPEを含む。mPEは通常、エチレンとC
4−C
8α−オレフィンコモノマーとのコポリマーであり、より一般的にはエチレンとブテン−1またはオクテン−1とのコポリマーである。mPEは通常、少なくとも100g/10分、より一般的には少なくとも200g/10分、最も一般的には500〜2000g/10分のMIを有する。mPEは、HMAの質量に対して30%〜60質量%の範囲の量でHMA中に存在していてよい。
【0019】
市販されているmPEの例には、Dow Chemical Company製のAffinity(登録商標)およびEngage(登録商標)ポリマーが含まれる。このタイプのポリマーおよび接着剤は、米国特許第6,107,430号および米国特許第6,319,979号に記載されている。
本発明のHMAに使用するのに適した粘着付与樹脂または粘着付与剤は、特に限定されない。粘着付与剤の例には、(a)脂肪族および脂環式石油炭化水素樹脂およびその水素化誘導体;(b)芳香族石油炭化水素樹脂およびその水素化誘導体;(c)脂肪族/芳香族石油由来炭化水素樹脂およびその水素化誘導体;(d)芳香族変性脂環式樹脂およびその水素化誘導体;(e)ポリテルペン樹脂および水素化ポリテルペン樹脂;ならびに(f)天然テルペン、スチレン/テルペン、α−メチルスチレン/テルペン、およびビニルトルエン/テルペンのコポリマーおよびターポリマーが含まれる。2種以上の粘着付与剤の混合物を使用してもよい。
【0020】
ASTM E−28によって決定した、粘着付与剤の環球式軟化点は、70〜140℃、80〜140℃、または90〜140℃の範囲であってよい。
本発明によるHMAは、粘着付与剤を15〜40質量%、または好ましくは25〜35質量%含有していてよい。全てのパーセント値は、HMAの全質量に基づいている。
【0021】
本発明のHMAに使用するのに適したワックスは、特に限定されない。有用なワックスの例には、(1)低分子量(100〜6000g/mol)ポリエチレン;(2)軟化点が130〜170°Fのパラフィンワックスおよび軟化点が135〜200°Fの微晶ワックスなどの石油ワックス;(3)メタロセン触媒プロピレン系ワックス;(4)メタロセン触媒またはシングルサイト触媒ワックス(例えば、米国特許第4,914,253号;米国特許第6,319,979号;WO97/33921;およびWO98/03603に記載されたもの);(5)フィッシャー−トロプシュワックスなど、一酸化炭素と水素を重合することによって製造した合成ワックス;ならびに(6)ポリオレフィンワックスが含まれる。ワックスとして使用できる他の材料には、水素化された獣脂、ラード、大豆油、ヤシ油、綿実油、ヒマシ油などの水素化された動物、魚、および植物の油脂が含まれる。これらの水素化された材料は、しばしば「動物または植物ワックス」と呼ばれる。2種以上のワックスの混合物を使用してもよい。
本発明によるHMAは、ワックスを5〜30質量%、または好ましくは10〜20質量%含有していてよい。全てのパーセント値は、HMAの全質量に基づいている。
HMAはまた、1種もしくは複数の安定剤または酸化防止剤を含んでいてもよい。安定剤は通常、ポリマー成分を熱および/または酸化崩壊から保護するのを助けるために使用され、これは、HMAの製造または適用中、ならびに周囲条件への通常の曝露中に起こり得る。典型的な安定剤には、Irganox(登録商標)1010またはBNX(登録商標)1010として市販されている、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)(CAS#6683−19−8)が含まれる。
【0022】
安定剤は、HMAの全質量に対して0.1〜1質量%などの典型的な量でHMA中に存在していてよい。
HMAはまた、成核剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤、架橋剤、粘度増強剤、紫外線吸収剤、光安定剤、スリップ剤、粘着防止剤、染料、顔料、天然油、合成油、充填剤、およびゴムなどの他の従来の添加剤を典型的な量で含んでいてもよい。
HMAを含む本発明の接着剤組成物は、当技術分野で既知の技術によって調製することができる。例えば、原料は、撹拌機を備えたジャケット付容器に入れ、例えば、120〜200℃の範囲の高温まで加熱してもよい。固体原料が溶融された後、均質な混合物を形成するのに十分な時間の撹拌を開始し、次いで混合物を冷ましてよい。使用された正確な温度は、特定の原料の融点および完成接着剤組成物の粘度に依存することになる。混合は、不活性ガス雰囲気(窒素など)下または穏やかな真空下で行なうことができる。
【0023】
本発明の接着剤組成物は、押出し、スロットコーティング、スパイラルスプレー、メルトブローン、スプレースプラッター、スクリーン印刷、または例えば120〜200℃の範囲内に温度を制御できるバルクリザーバーからの送出によるロールコーティングなどの、当技術分野で既知の技術によって基材に適用することができる。
本発明は、本明細書に開示された実施形態、特徴、特性、パラメーター、および/または範囲の任意および全ての組合せを含み、かつはっきりと企図する。すなわち、本発明は、本明細書で言及した実施形態、特徴、特性、パラメーター、および/または範囲の任意の組合せによって定義することができる。
【0024】
本明細書では、不定冠詞「a」および「an」は、文脈上そうでないと明確に示唆されていない限り、1種または複数を表す。同様に、名詞の単数形には、それらの複数形が含まれ、文脈上そうでないと明確に示唆されていない限り、逆もまた同様である。
正確であるように試みたが、本明細書に記載された数値および範囲は、(「約」という用語によって修飾されていなくても)近似値であると考えられるべきである。これらの値および範囲は、本発明によって得ようとした所望の特性ならびに測定技術に見られる標準偏差から生じるばらつきに応じて、それらの記載された数と異なっていてよい。さらに、本明細書に記載された範囲は、記載された範囲内の全ての部分範囲および値を含むことを意図し、特に企図している。例えば、50〜100の範囲は、60〜90および70〜80などの部分範囲を含む範囲内の全ての値を記述し、含むことを意図している。
【0025】
特許ならびに非特許文献を含む、本明細書に引用されている全ての文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。任意の組み込まれた主題が任意の本明細書の開示と矛盾するならば、本明細書の開示は、組み込まれた内容よりも優先されるべきである。
本発明は、その好ましい実施形態の以下の例によってさらに例示され得るが、これらの例は、単に例示の目的で含まれ、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【実施例】
【0026】
分析測定
次の例では、以下に挙げる試験手順を使用して、LLDPEおよびMAH−g−LLDPE生成物の特性を評価した。
密度は、下記を除いてASTM D2839−93に従って決定した:
a)7.2節および7.3節に記載された状態調節(conditioning)手順は省略した。
b)ストランドを23℃で30分間状態調節した。
c)密度は、7.4節の直後にASTM D1505に従って決定した。
d)密度は、少なくとも3つの試験片の密度値を平均することによって決定した。最低密度試験片と最高密度試験片との間に許容される最大差は、0.0005g/cm
3であった。この差が>0.0005g/cm
3であった場合、試験を7.1節から始めて繰り返した。
【0027】
メルトインデックス(MI)、I
2は、ASTM D1238、条件190/2.16に沿って決定し、「g/10分」として報告した。
粘度は、ASTM D3237に従って測定した。
ガードナーカラーは、ASTM D1544に従って決定した。
剥離接着破壊試験(PAFT)は、ASTM D4498を用いて行なった。
剪断接着破壊試験(SAFT)は、ASTM D4498を用いて行なった。
コルゲート接合試験は、接着剤(glue−up)(ホットメルト接着剤の0.5インチ幅のストリップ)を作り、インランドコンテナからの典型的な45ポンド段ボール紙を用いて試料を350°Fで熱融着させることを含んでいた。試料を冷蔵庫(約37°F)および冷凍庫温度(約10°F)で24時間熟成させ、手で引っ張った。報告された値は、接合の平均繊維引裂けパーセントである。
【0028】
(例1〜7)
無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの調製
Westlake Chemical Corporation、テキサス州ヒューストンによって製造された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のペレットを、容量測定ペレット供給機を用いて12個のバレル(3つのゾーンに分類した)およびダイを有する25mm二軸スクリュー押出機のインレットホッパー中に供給した。押出機は、3つのゾーンのそれぞれに12個の混練/混合エレメントを有していた。LLDPEは、エチレンおよび1−ヘキセンから構成され、MIが0.5g/10分、および密度が0.906g/cm
3であることを特徴とした。LLDPEをバレル1で押出機に供給し、溶融した。溶融LLDPEをその後、ダイに到達するまで、1つのバレルから次のバレルに移した。溶融無水マレイン酸(MAH)をバレル4で押出機にポンプで注入した。第2の液体注入口は、バレル12で酸化防止剤を溶融混合物に供給した。バレル12で真空排気も実施した。得られたLLDPEは、溶融生成物を標準的な冷水ストランド浴中に押し出すことによって回収した。押出機中のLLDPEの平均滞留時間は、2.5〜3.2分であった。生成物のメルトインデックスは、スクリュー速度およびLLDPEの供給量によって制御された。冷却されたストランドを続いてペレットに切断した。得られたグラフト化LLDPE生成物(MAH−g−LLDPE)を分析した。
使用したプロセス条件およびMAH−g−LLDPEの特性を表1に報告する。
【0029】
【表1】
【0030】
(例8〜10)
ホットメルト接着剤の調製
ホットメルト接着剤ブレンドを、表2に挙げた所望量の各材料をビーカーに入れることによって調製した。ビーカーを、容器および内容物を180℃に維持できるコントローラーに接続された加熱用マントルに入れた。3枚羽パドル撹拌機を備えたSilverstein撹拌機をビーカー内に降ろし、ビーカーの内容物が溶融したとき、撹拌機を始動させた。ビーカーに、窒素注入口を備えた金属蓋を取り付け、ビーカー全体を窒素下で所要時間保持した。材料を溶融後30分混合し、冷まして置いた。
【0031】
次いで、各組成物を、表2に挙げた特性について試験した。
表2のMAH−g−LLDPEは、例1から生成された材料である。
W40−014は、ビスブレーキングされた、マレイン化されていないLLDPEである。これは、例1の出発原料として使用したものと同じLLDPEから生成した。これは、例1の手順を用いたが、MAHを用いずにビスブレーキングされた。ビスブレーキングされたLLDPEは、0.909g/cm
3の密度および330g/10分のMIを有していた。
【0032】
AFFINITY GA 1950は、Dow Chemical Company製のポリオレフィンプラストマーである。プラストマーは、密度が0.874g/cm
3、350°F(177℃)におけるブルックフィールド粘度が17,000cP、MIが500g/10分、およびDSC融点が70℃であることが報告されている。
【0033】
【表2】
【0034】
表2から分かるように、低温におけるコルゲート接合試験によれば、AFFINITY GA 1950に基づくホットメルト接着剤(例10)は、ビスブレーキングされた非マレイン化LLDPE(例9)および例1の非最適化MAH−g−PE(例8)よりも優れた接着性を有していた。しかしながら、非最適化MAH−g−LLDPE(例8)の高温接着性(PAFTおよびSAFT値)は、比較例に対して良好であった。また、非最適化MAH−g−LLDPE(例8)は、熱安定性試験において中間であった。
【0035】
(例11〜13)
異なるスクリューを使用してより大きな運動エネルギー/剪断力をポリマーに付与したことを除いて、別のMAH−g−LLDPEを例1〜7に記載された手順に従って製造した。スクリューは、(1)押出機の第1のゾーンへのより多くの混合エレメントと、ゾーンを通るポリマーフローを遅くするための5つの混合エレメント後の逆エレメント、(2)第2のゾーンにおける追加の混練ブロック(搬送エレメントの代わり)、ならびに(3)最終ゾーンにおける混練ブロックおよび逆エレメントの両方を有していた。MAH−g−LLDPE生成物は、500g/10分のMIおよび4.5の酸価を有していた。それは表3でDA−27と名付けられている。
各例において、DA−27を、例8〜10に概説した手順を用いて表3に挙げた添加剤とブレンドして、接着剤組成物を製造した。次いで組成物を表3に挙げた特性について試験した。
【0036】
(例14)(比較例)
Dow社のAFFINITY GA 1950のペレットを、例8〜10に概説した手順を用いて表3に挙げた添加剤とブレンドして、接着剤組成物を製造した。次いで組成物を表3に挙げた特性について試験した。
(例15)(比較例)
EVATANE 28−420の名称で販売されているArkema製のエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーのペレットを、例8〜10に概説した手順を用いて表3に挙げた添加剤とブレンドして、接着剤組成物を製造した。
EVAコポリマーは、密度が0.950g/cm
3、酢酸ビニル含有量が27〜29質量%、MIが370〜470g/10分、および融点が66℃であることが報告されている。次いで組成物を表3に挙げた特性について試験した。
【0037】
【表3】
【0038】
表3から分かるように、ベースポリマーとしてDA−27を含有するホットメルト接着剤(HMA)(例11〜13)は、比較ブレンド(例14および15)よりも大きなPAFTおよびSAFT値を有し、改善された粘着強度およびより良好な接合性能を示した。繊維引裂け結果は、DA−27を含有するHMAが、広い温度領域にわたって比較ブレンドと同等以上の性能を発揮したことを示している。
【0039】
(例16〜18)
例11、14、および15を繰り返したが、それぞれ35質量%のベースポリマーDA−27、Affinity GA 1950、およびEvatane 28−420のみ用いた。結果を以下の表4に示す。
【0040】
【表4】
表4から分かるように、DA−27を含有するHMA(例16)のPAFTおよびSAFT値は、比較ブレンドのものよりも大きかった。
【0041】
(例19〜25)
例8〜10に概説した一般的な手順に従って、表5に挙げた原料および割合を用いてHMAを調製した。次いで、HMAを表5に挙げた特性について試験した。
Dow社のAFFINITY GA 1950を、全てのHMAにおけるベースポリマーとして使用した。
【0042】
DA−27(本発明によるMAH−g−LLDPE)を2つの濃度で添加剤として使用し、2つの市販されているマレイン化ポリエチレンワックス、Honeywell A−C(登録商標)575およびA−C(登録商標)573と比較した。
A−C(登録商標)575は、密度が0.92g/cm
3、けん化価が30〜40mgKOH/g、ガードナーカラーが最大3、および140℃におけるブルックフィールド粘度が>1000cpsであることが報告されている。
【0043】
A−C(登録商標)573は、密度が0.92g/cm
3、けん化価が3〜6mgKOH/g、ガードナーカラーが最大2、および140℃におけるブルックフィールド粘度が最大600cpsであることが報告されている。
性能試験は、包装専門家協会(Institute of Packaging Professionals)(IoPP)耐熱性試験T−3006および3つの状態調節温度での接合性能試験を含んでいた。IoPP T−3006試験は、2枚の標準の段ボールを一緒に接合するために接着剤を使用した接合割裂試験である。試験は、IoPP試験プロトコルに従って設定した。接合が合格した最高温度を記録した。
【0044】
【表5】
【0045】
表5から分かるように、混合物の物理的性質は、驚くべきことに、DA−27をHMAブレンドに加えることの効果があったことを明らかにしている。DA−27ブレンド(例20および23)の100gPAFTは、対照(例19)および試験した他のマレイン化PE(例21〜22および24〜25)より僅かに高くなった。さらに、DA−27ブレンド(例20および23)の500g剪断力値は、対照(例19)および試験した他のマレイン化PE(例21〜22および24〜25)と比較して上昇した。これらの結果は、添加剤としてDA−27を含有するHMAの粘着強度が他の生成物よりも高かったことを示している。
【0046】
接合結果は、10質量%のDA−27を加えることにより、試験した温度範囲全体にわたってHMAの接合性能が著しく改善されたことを示している。5質量%荷重では、DA−27を含有するHMAは、それほど有効ではなかったが、他のマレイン化PE材料を含有する接着剤よりも依然として優れていた。
IoPP結果は、より高い粘着強度の傾向が10質量%荷重レベルまで続いていたことを示している。5質量%および10質量%の両方の荷重レベルにおいて、他のマレイン化PEと比較して、IoPP値に顕著な改善があった。
【0047】
冷凍庫温度でのより高い耐熱性および改善された接合強度は、DA−27がメタロセン触媒ポリエチレン系HMAの有益な添加剤である良好な指標である。
本発明を、その好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲内で変形および変更を行なうことができることを理解されたい。