(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態のリアクトルは、コアと、コイルとを備える。コアは、磁性粉末と樹脂とを含み構成されたメタルコンポジットコア(以下、MCコアとも呼ぶ)である。磁性粉末と樹脂とを混合した粘土状の混合物を、所定の容器に充填し、加圧することでコアを所定の形状とすることができる。コアの形状は、例えば、トロイダル状コア、I型コア、U型コア、θ型コア、E型コア、EER型コアなど、種々の形状とすることができる。
【0018】
磁性粉末としては、軟磁性粉末が使用でき、特に、Fe粉末、Fe−Si合金粉末、Fe−Al合金粉末、Fe−Si−Al合金粉末(センダスト)、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが使用できる。Fe−Si合金粉末としては、例えば、Fe−6.5%Si合金粉末、Fe−3.5%Si合金粉末を使用できる。軟磁性粉末の平均粒子径(D50)は20μm〜150μmが好ましい。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りがない限り、D50、すなわちメジアン径を指すものとする。
【0019】
磁性粉末は、異なる平均粒子径の磁性粉末から構成する。つまり、磁性粉末は、第1の磁性粉末と、第1の磁性粉末より平均粒子径の小さい第2の磁性粉末を含む。また、磁性粉末に対する第1の磁性粉末の添加量が60〜80wt%であることが好ましい。つまり、磁性粉末を、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末により構成した場合、その重量比率は、第1の磁性粉末:第2の磁性粉末=80:20〜60:40とすることが好ましい。この範囲とすることで密度が向上し、透磁率も向上するともに、鉄損を小さくすることができる。
【0020】
第1の磁性粉末の平均粒子径は100μm〜200μmとすることが好ましい。また、第2の磁性粉末は、3μm〜10μmとすることが好ましい。第1の磁性粉末同士の隙間に平均粒子径の小さい第2の磁性粉末が入り込み、密度及び透磁率の向上と低鉄損化を図ることができるからである。本実施形態のコアは、初透磁率が30以上、12kA/mの透磁率が24以上である。
【0021】
第1の磁性粉末及び第2の磁性粉末は、球形であることが好ましい。第1の磁性粉末の円形度は、0.93以上であり、第2の磁性粉末の円形度は、0.95以上であることが好ましい。第1の磁性粉末同士の隙間が少なくなり、かつ、当該隙間により多くの第2の磁性粉末が入り込み易くなり、密度及び透磁率の向上を図ることができるからである。MCコアの場合、加圧工程において加わる圧力は、数kg/cm
2〜数十kg/cm
2であり、数t/cm
2〜数十t/cm
2を必要とする圧粉磁心(以下、ダストコアとも呼ぶ)に比べて、1000分の1程度と非常に小さいため、磁性粉末の円形度が維持できる。つまり、高い圧力で加圧する必要があるダストコアの場合、このような磁性粉末の円形度は得られない。
【0022】
なお、平均粒子径が最大の第1の磁性粉末に対して、これよりも平均粒子径の小さい第2の磁性粉末が含まれていればよいため、第2の磁性粉末は、平均粒子径が異なる磁性粉末を含んでいてもよい。つまり、第2の磁性粉末は、平均粒子径が1つに規定できる磁性粉末であってもよいし、平均粒子径が2以上で規定される磁性粉末であってもよい。また、第1の磁性粉末と第2の磁性粉末の材質、つまり種類は同じでも良いし、異なっていても良い。異なる場合は3種以上であっても良い。3種類以上の粉末により磁性粉末を構成する場合、各種類で平均粒子径を異ならせても良い。
【0023】
第1の磁性粉末は、粉砕分を用いることが好ましい。第2の磁性粉末は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水・ガスアトマイズ法により製造されるものを使用できるが、特に、水アトマイズ法によるものが好ましい。理由は、水アトマイズ法はアトマイズ時に急冷するため、粉末が結晶化しにくいからである。
【0024】
樹脂は、磁性粉末と混合され、磁性粉末を保持する。磁性粉末が平均粒子径の異なる粉末で構成される場合、各粉末を均質に混合した状態で保持する。樹脂としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂が使用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂などが使用できる。紫外線硬化性樹脂としては、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系の樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリイミドやフッ素樹脂などの耐熱性に優れた樹脂を使用することが好ましい。硬化剤を添加することにより硬化するエポキシ樹脂は、硬化剤の添加量などによってその粘度を調整できることから、本発明に適している。熱可塑性のアクリル樹脂やシリコーン樹脂も使用可能である。
【0025】
樹脂は、磁性粉末に対して3〜5wt%含有されていることが好ましい。樹脂の含有量が3wt%より少ないと、磁性粉末の接合力が不足し、コアの機械的強度が低下する。また、樹脂の含有量が5wt%より多いと、第1の磁性粉末間に形成された樹脂が入り込み、その隙間を第2の磁性粉末が埋めることができなくなるなど、コアの密度が低下し、透磁率が低下する。
【0026】
樹脂の粘度は、磁性粉末との混合時において50〜5000mPa・sであることが好ましい。粘度が50mPa・s未満であると、混合時において樹脂が磁性粉末に絡みつくことがなく、容器内で磁性粉末と樹脂とが分離しやすくなり、コアの密度又は強度にバラツキが生じる。粘度が5000mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎ、例えば、第1の磁性粉末間に形成された樹脂が入り込み、その隙間を第2の磁性粉末が埋めることができなくなるなど、コアの密度が低下し、透磁率が低下する。
【0027】
樹脂には、粘度調整材料として、SiO
2、Al
2O
3、Fe
2O
3、BN、AlN、ZnO、TiO
2などを使用することができる。粘度調整材料としてのフィラーの平均粒子径は、第2の磁性粉末の平均粒子径以下、好ましくは第2の磁性粉末の平均粒子径の1/3以下が良い。フィラーの平均粒子径が大きいと、得られたコアの密度が低下するからである。また、樹脂には、Al
2O
3、BN、AlNなどの高熱伝導率材料を添加することができる。
【0028】
コアの見かけ密度の、磁性粉末の真密度に対する割合は、76.6%以上、82%未満であることが好ましい。77%以上であると更に好ましい。当該割合が76.6%以上であると、高磁界においても透磁率を高く維持することができる。逆に、当該割合が76.6%未満であると、低密度により高磁界における透磁率が低下しやすい傾向がある。また、同じ透磁率の特性をダストコアで作成しようとすると、コアの見かけ密度の、磁性粉末の真密度に対する割合が82%〜88%程度まで達してしまう。ダストコアは粉末単体で樹脂をコーティングして、上記のように非常に高い圧力で押し固めた時点で外形が形成されるためである。MCコアは、磁性粉末は樹脂に分散されて混ぜ込まれていて、上記のように低い圧力で内部の空気を抜く程度に加圧するに過ぎないため、樹脂が押し固めによらずに硬化している。従って、本実施形態のMCコアの見かけ密度の、磁性粉末の真密度に対する割合は82%未満となる。
【0029】
なお、本実施形態のMCコアの表面とダストコアの表面とは、以下のような相違がある。まず、ダストコアは、上記のように、絶縁樹脂で被覆した軟磁性粉末を金型に入れて、非常に高い圧力で加圧成型した成型体に、焼鈍などの熱処理を行うことにより製造される。このため、ダストコアの表面は、比較的円滑である。一方、MCコアは、上記のように絶縁樹脂を混合した複合磁性粉末を所定形状の容器に入れて、比較的低い圧力をかけることにより、所定の形状に成型する。このため、MCコアの表面は、ダストコアに比べて粗い。例えば、MCコアにはダストコアにはない微小な穴や凹凸が存在する、表面粗さがダストコアに比べて粗い等の相違がある。
【0030】
また、ダストコアは、絶縁樹脂で被覆した軟磁性粉末を、外型の成型孔の内周面と、下型の上面によって形成される領域に投入し、上型によって圧縮後、上型を抜くことにより成型する。このとき、絶縁樹脂で被覆した軟磁性粉末は型内で高圧で加圧されるため、形成されたダストコアを取り出す際に、型に対して押し付けられるような力が加わっている。従って、ダストコアの表面には、取り出しの際に金型の内周面に対して摺動する部分に、摺動痕が形成される。摺動痕とは、金型の表面を擦りながら移動することにより形成される複数の線状の痕である。本実施形態のMCコアは、型内で樹脂の硬化によりコアとなるため、コアが型に押し付けられることがなく、その表面は摺動痕を有しない。摺動痕を有しない面が非摺動面である。本実施形態のMCコアは、全ての表面が非摺動面である。
【0031】
コイルは、絶縁被覆が施された導線であり、線材として銅線やアルミニウム線を用いることができる。コイルは、コアの少なくとも一部に導線が巻き回されて形成され或いは装着されており、コアの少なくとも一部の周囲に配置される。コイルの巻き方や線材の形状は特に限定されない。
【0032】
[1−2.リアクトルの製造方法]
本実施形態に係るリアクトルの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。本リアクトルの製造方法は、
図1に示すように、(1)混合工程、(2)成型工程、(3)加圧工程、及び(4)硬化工程を備える。
【0033】
(1) 混合工程
混合工程は、磁性粉末と樹脂とを混合する工程である。磁性粉末が、平均粒子径の異なる2種類の磁性粉末から構成される場合には、混合工程は、第1の磁性粉末と、第1の磁性粉末より平均粒子径の小さい第2の磁性粉末とを混合し、磁性粉末を構成する磁性粉末混合工程と、磁性粉末に対して3〜5wt%の樹脂を添加し、磁性粉末と樹脂とを混合する樹脂混合工程とを有する。
【0034】
各混合工程の混合は、所定の混合器を用いて自動で、又は手動で行うことができる。各混合工程の混合時間は、適宜設定することができ、特に限定されるものではないが、例えば2分間とする。
【0035】
このような混合工程により、磁性粉末と樹脂との混合物(以下、複合磁性材料ともいう)を得ることができる。なお、混合工程は、成型工程において複合磁性材料を成型するための容器に、磁性粉末と樹脂とを充填して混合しても良い。これにより、複合磁性材料を容器に移し替える必要がなく、製造工数を削減することができる。
【0036】
(2) 成型工程
成型工程は、複合磁性粉末を所定形状の容器に入れて所定の形状に成型する工程である。成型工程では、複合磁性粉末とともにコイルを入れて成型しても良い。
【0037】
容器としては、製造するコアの形状に合わせて各種の形状のものを使用する。コイルを入れる場合には、容器は、上方からコイルを挿入できるよう、上面開口型の箱型や皿形の容器を使用する。成型工程で使用する容器は、そのままコアとコイルとを収容するリアクトルの外装ケースとして使用することもできる。当該容器を外装ケースとして使用すれば、複合磁性粉末の硬化後に容器を取り出す必要がない利点がある。容器を外装ケースとして使用しない場合には、1つの容器で複数のリアクトルを製造するようにしても良い。すなわち、容器の底部に複数の凹部を形成しておき、当該凹部に複合磁性材料及びコイルを入れることにより、複数のリアクトルを製造するようにしても良い。このようにすることで、複数のリアクトルに対し、一度の成型工程で済むので、製造効率を向上させることができる。
【0038】
成型工程に使用する容器としては、その全部又は一部を樹脂成型品によって構成することができる。容器を樹脂製にすることにより、製造コストを削減することができ、かつ、MCコアの任意の形状とすることができる利点を活かすことができる。すなわち、樹脂は、比較的安価な材料であるため、容器を製造するコストを抑えることができるとともに、射出成型等により、任意の形状のコアを形成することができる。樹脂成型品の材料としては、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等を用いることができる。
【0039】
また、容器の全部又は一部を、アルミニウム、マグネシウムなどの熱伝導性の高い金属で構成しても良い。後述するように、加圧工程において複合磁性材料を温めやすくなるからである。
【0040】
(3) 加圧工程
加圧工程は、成型工程時に、複合磁性材料を押圧部材で押圧する工程である。容器に入れられた粘土状の複合磁性材料を、押圧部材で押圧することにより、容器の形状に複合磁性材料を押し広げるとともに、複合磁性材料に含まれていた空隙を減少させ、見かけ密度及び透磁率を向上させる。
【0041】
容器にコイルを入れない場合は、当該工程により、複合磁性材料が容器内部の形状となる。すなわち、複合磁性材料から構成された所定の形状の成型体を得ることができる。
【0042】
容器にコイルを入れる場合は、
図2に示すように、容器内に複合磁性材料を入れて、押圧部材により容器の形状に複合磁性材料を押し広げる。その後、複合磁性材料を押圧したことによりできたスペースにコイルを挿入し、さらに複合磁性材料を充填し、コイルとともに複合磁性材料を押圧部材により上から押圧する。或いは、容器内に複合磁性材料を入れ、その後、コイルをその内外周を含めて当該複合磁性材料に埋設し、コイルとともに複合磁性材料を上から押圧するようにしても良い。このように、コイルとともに複合磁性材料を押圧することにより、複合磁性材料に含まれていた空隙を減少させ、見かけ密度及び透磁率を向上させることができる。なお、コイルが存在する部分は避けて、複合磁性材料のみを押圧するようにしても良い。このように、当該工程により、コイルを含んだ所定形状の複合磁性材料の成型体を得ることができる。
【0043】
このように、加圧工程は、複合磁性材料を押圧部材で押圧して、当該材料を容器の形状としても良く、この場合は、加圧工程を、加圧工程及び成型工程と捉えることができる。
【0044】
複合磁性材料を押圧する圧力は、1.6kg/cm
2以上であるとよい。この圧力によって、初透磁率を30以上、12kA/mの透磁率を24以上とすることができる。但し、6.3kg/cm
2以上であると、より好ましい。6.3kg/cm
2未満であれば、押圧する圧力が小さく、見かけ密度を向上させる効果が小さいからである。また、当該値以上であっても、15.7kg/cm
2以下であることが好ましい。この値を超えて押圧しても、見かけ密度を向上させる効果が小さいからである。また、この値を超えて押圧すると、樹脂のみが押圧されて、磁性粉末間の絶縁性が悪化するからである。
【0045】
複合磁性材料を押圧する時間は、樹脂の含有量や粘性によって適宜変更することができる。例えば、10秒とすることができる。
【0046】
加圧工程は、容器又は複合磁性材料を押圧する押圧部材を常温(例えば25℃)よりも高い温度にして行っても良い。容器又は押圧部材の温度を上げることにより、樹脂が温められ、柔らかくなる。そのため、容器内の隙間に複合磁性材料が流れ込み易くなり、成型性を向上させることができるとともに、複合磁性材料中の空隙に当該材料が流れ込み易くなり、密度を向上させることができる。容器又は複合磁性材料を押圧する押圧部材の温度は、複合磁性材料に含まれる樹脂の軟化点より高くすると良い。効果的に樹脂を柔らかくすることができるからである。加圧工程は、容器又は複合磁性材料を押圧する押圧部材の温度を保持したまま行っても良い。
【0047】
また、加圧工程は、容器又は押圧部材の温度を上げておく他、複合磁性材料自体を温めておいて当該複合磁性材料を押圧するようにしても良い。容器又は複合磁性材料を押圧する押圧部材の温度を保持し、かつ、複合磁性材料自体を温めておいて押圧するようにしても良い。
【0048】
(4) 硬化工程
硬化工程は、成型工程で得た成型体中の樹脂を硬化させる工程である。成型体中の樹脂の乾燥により硬化させる場合、乾燥雰囲気は、大気雰囲気とすることができる。乾燥時間は、樹脂の種類、含有量、乾燥温度等に応じて適宜変更可能であり、例えば、1時間〜4時間とすることができるが、これに限定されない。乾燥温度は、樹脂の種類、含有量、乾燥時間等に応じて適宜変更可能であり、例えば、85℃〜150℃とすることができるが、これに限定されない。なお、乾燥温度は、乾燥雰囲気の温度である。
【0049】
また、樹脂の硬化は、乾燥に限られず、樹脂の種類によって硬化方法は異なる。例えば、樹脂が熱硬化性樹脂であれば、熱を加えることにより樹脂を硬化させ、樹脂が紫外線硬化性樹脂であれば、成型体に紫外線を照射させることで樹脂を硬化させる。
【0050】
硬化工程は、所定の温度で所定時間成型体を硬化させる工程を複数回繰り返しても良い。また、例えば、樹脂の乾燥により硬化させる場合、複数回繰り返す毎に、乾燥温度又は乾燥時間を異ならせても良い。
【0051】
[1−3.作用・効果]
(1)本実施形態のコアは、磁性粉末と樹脂とからなるコアであって、磁性粉末は、第1の磁性粉末と、第1の磁性粉末より平均粒子径の小さい第2の磁性粉末を含み、磁性粉末に対する第1の磁性粉末の添加量が60〜80wt%であり、前記磁性粉末の真密度に対する前記コアの見かけ密度の割合が、76.6%以上、82%未満であり、初透磁率が30以上、12kA/mの透磁率が24以上である。
【0052】
このため、優れた成型性と磁気特性の両立ができる。つまり、本実施形態のコアは、MCコアであるため、ダストコアと比べて形状の自由度が高く、分割構成としなくても所望の形状のコアを容易に作成できる。分割構成としないことにより、ギャップを無くすことができるので、本実施形態のコアをリアクトルとして構成した場合に、コイルへの漏れ磁束が低減でき、銅損が低下することによって、コイルの発熱を抑えることができる。また、ダストコアと比べても、高磁界で遜色のない透磁率を得ることができる。つまり、ギャップの存在は、高磁界における透磁率を維持することに寄与するため、ダストコアにおいては、敢えて分割構成としてギャップを生じさせている場合がある。磁性粉末同士の間隔もギャップの役割を果たすが、ダストコアは磁性粉末同士の間隔が密でありギャップとしての機能が弱いため、分割構成としてギャップを生じさせている。一方、MCコアは磁性粉末同士の間隔が、ダストコアと比べて疎であるため、この間隔がギャップの役割を果たすことにより、分割構成とすることなく、高磁界でも高い透磁率を得ることができる。さらに、本実施形態のコアは、低圧力で成型できるため、製造設備の小型化、低コスト化が可能となる。
【0053】
(2)本実施形態のコアは、磁性粉末に対して、樹脂が3〜5wt%である。これにより、成型性の利点を得つつも、生産性及び密度を向上させたコアを得ることができる。すなわち、樹脂量を3〜5wt%としたので、複合磁性材料が粘土状となって扱い易くなり、生産性を向上させることができる。
【0054】
(3)本実施形態のコアは、前記磁性粉末の真密度に対する前記コアの見かけ密度の割合が、77%以上である。このため、より一層優れた透磁率を得ることができる。
【0055】
(4)本実施形態のコアは、全表面が非摺動面である。このため、ダストコアではないにもかかわらず、上記のような優れた磁気特性を得ることができる。つまり、ダストコアは摺動痕により、磁性粉末を覆っている絶縁被膜が剥がれてしまうことから、渦電流損が悪化する。一方、本実施形態のコアは、摺動痕が生じないため、ダストコアよりも低損失になる。
【0056】
(5)本実施形態のコアは、第1の磁性粉末の円形度は、0.93以上である。このため、ダストコアではないにもかかわらず、上記のような優れた磁気特性を得ることができる。つまり、ダストコアは、加圧による磁性粉末の変形が生じるため、ヒステリシス損が大きくなる。一方、本実施形態のコアは、加圧による磁性粉末の変形が生じないため、ヒステリシス損を抑えることができる。なお、ダストコアは、ヒステリシス損の悪化を軽減するために、加圧成型後に焼鈍を行う必要がある。一方、本実施形態のコアは、ヒステリシス損の悪化が無いため、焼鈍が不要となる。
【0057】
(6)本実施形態のコアの製造方法は、磁性粉末及び樹脂を含むコアの製造方法であって、磁性粉末は、第1の磁性粉末と、第1の磁性粉末より平均粒子径の小さい第2の磁性粉末を含み、磁性粉末に対する第1の磁性粉末の添加量が60〜80wt%であり、磁性粉末に対して、樹脂を混合する混合工程と、混合工程で得た混合物を所定の容器に入れて成型する成型工程と、成型工程時に、磁性粉末の真密度に対する前記コアの見かけ密度の割合が、76.6%以上、82%未満となるように、混合物を押圧する加圧工程と、成型工程で得た成型体中の樹脂を硬化させる硬化工程と、を有する。
【0058】
これにより、成型性の利点を得つつも、生産性及び密度を向上させたコアを得ることができる。加圧工程を有することで、複合磁性材料の形状を所定の形状に成型することができるというMCコアの利点である成型性の利点を確保することができるとともに、複合磁性材料を押圧することにより、複合磁性材料に含まれる空隙に当該材料が入り込みやすくなり、コアの見かけ密度及び磁気特性を向上させることができる。
【0059】
(7)加圧工程は、前記混合物を押圧する圧力を、1.6kg/cm
2以上とした。これにより、MCコアでありながら、コアの磁気特性を向上させることができる。
【0060】
[1−4.実施例]
本発明の実施例を、表1〜表3及び
図3〜
図9を参照して、以下に説明する。
(1)測定項目
測定項目は、密度、透磁率及び鉄損である。作製された各コアのサンプルに対して、φ2.6mmの銅線で40ターンの巻線を施してリアクトルを作製した。各コアのサンプルの形状は、外径35mm、内径20mm、高さ11mmのトロイダル形状とした。また、作製したリアクトルの透磁率及び鉄損を下記の条件で算出した。
【0061】
<密度>
コアの密度は、見かけ密度である。すなわち、各コアのサンプルの外径、内径、及び高さを測り、これらの値からサンプルの体積(cm
3)を、π×(外径
2−内径
2)×高さに基づき算出した。そして、サンプルの質量を測定し、測定した質量を算出した体積で除してコアの密度を算出した。
【0062】
<透磁率及び鉄損>
透磁率及び鉄損の測定条件は、周波数20kHz、最大磁束密度Bm=30mTとした。透磁率は、鉄損Pcv測定時に最大磁束密度Bmを設定したときの振幅透磁率とした。鉄損については、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を次の(1)〜(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損係数、渦電流損失係数を算出することで行った。
【0063】
Pcv=Kh×f+Ke×f
2…(1)
Phv =Kh×f…(2)
Pev =Ke×f
2…(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損係数
Ke :渦電流損係数
f :周波数
Phv:ヒステリシス損失
Pev:渦電流損失
【0064】
本実施例において、各粉末の平均粒子径と円形度は、下記装置を用いて3000個の平均値をとったものであり、ガラス基板上に粉末を分散して、顕微鏡で粉末写真を撮り一個毎自動で画像から測定した。
会社名:Malvern
装置名:morphologi G3S
比表面積は、BET法により測定した。
【0065】
(2)サンプルの作製方法
コアのサンプルは、下記のように、(a)加圧工程におけるプレス面圧、(b)樹脂量、(c)容器の温度の違いの観点から作製した。これらの作製方法と、その結果について下記に順に示す。
【0066】
(a) 加圧工程におけるプレス面圧
まず、混合工程として、平均粒径123μmのFe−6.5%Si合金粉末(円形度0.943)と、平均粒径5.1μmのFe−6.5%Si合金粉末(円形度0.908)を重量比率70:30でV型混合機にて30分混合して磁性粉末を構成した。そして、アルミカップに当該磁性粉末を入れ、当該磁性粉末に対して、3.5wt%のエポキシ樹脂を添加し、2分間ヘラを用いて手動で混合した。これにより、磁性粉末と樹脂との混合物である複合磁性材料を得た。
【0067】
次に、混合工程で得た複合磁性材料を、トロイダル形状の空間を有する樹脂製の容器に充填し、油圧プレス機を用いて容器内の複合磁性材料を表1のプレス圧で10秒間押圧し、トロイダル形状の成型体を作製した。この押圧の間、容器の温度は25℃に保った。
【0068】
このように加圧工程及び成型工程で得られた成型体を大気中にて、85℃で2時間乾燥させ、その後120℃で1時間乾燥させ、さらに150℃で4時間乾燥させて、サンプルとなるトロイダルコアを作製した。
【表1】
【0069】
表1及び
図3〜
図7に各プレス圧にて得られた実施例1〜4、比較例1におけるコアの密度、透磁率、鉄損の結果を示す。実施例1〜4は、プレス圧を100N、400N、600N、1000Nとし、比較例1はプレス無しとした。プレス面はいずれも同じである。
【0070】
表1における「理論密度」は、コアの見かけ密度/磁性粉末の真密度により算出された割合である。ここでは、第1の磁性粉末、第2の磁性粉末は、ともにFe−6.5%Si合金粉末を使用しており、その真密度を7.63g/cm
3として理論密度を算出している。
【0071】
図3は、実施例1〜4及び比較例1の面圧に対する理論密度のグラフである。表1及び
図3に示すように、実施例1〜4の面圧に対する理論密度は、加圧工程を行わない比較例1よりも、加圧工程を行った実施例1〜4の方が高く、面圧が上がるにつれて高くなる傾向にあることが分かる。面圧が1.6kg/cm
2の実施例1では、理論密度が76.62%であり、加圧無しの比較例1の理論密度76.47%との差は少ない。しかし、実施例1では、後述するように、透磁率を高くすることができる。面圧が6.3kg/cm
2以上の実施例2〜4では、理論密度が77.5%以上となり、比較例1、実施例1よりも高い値となっている。すなわち、面圧を6.3kg/cm
2以上とすることで、複合磁性材料に含まれる空隙や、容器の隅々まで当該材料が行き渡ることにより密度が向上することが分かる。また、面圧が6.3kg/cm
2以上となると、理論密度はほぼ一定であることが分かる。
【0072】
図4は、実施例3のコア断面のSEM写真(100倍)である。
図5は、比較例1のコア断面のSEM写真(100倍)である。
図4及び
図5において、符号1は、第1の磁性粉末を示し、符号2は、第2の磁性粉末を示している。符号3は、樹脂を示し、符号4は空隙を示している。なお、空隙4は、SEM写真において濃い黒で表されている部分であり、これに対し、比較的薄い黒で表されている部分が樹脂3である。
図4、
図5から明らかなように、
図4に示す実施例3の方が、
図5に示す比較例1より、複合磁性材料中の空隙4の数が減少し、空隙4自体の大きさも小さくできることが分かる。
【0073】
透磁率は、振幅透磁率であり、前述のインピーダンスアナライザーを使用することで、20kHz、1.0Vにおける各磁界の強さのインダクタンスから算出した。表1中の「μ0」は、直流を重畳させていない状態、すなわち磁界の強さが0H(A/m)の時の初透磁率を示す。表1中の「μ12000」は、磁界の強さが12kH(kA/m)の時の透磁率を示す。
【0074】
図6は、実施例1〜4及び比較例1の面圧に対する透磁率のグラフである。表1及び
図6に示すように、透磁率は、加圧しない比較例1に比べて、加圧した実施例1〜4の方が高くなることが分かる。例えば、実施例2の初透磁率μ0は、比較例1と比べて、約8.7%上昇することが分かる。なお、加圧する実施例1でも、加圧しない比較例1と比べて透磁率が高くなる。但し、コアの密度上昇に対する寄与は比較的小さい。つまり、上記のように、実施例1は理論密度が76.62%であり、加圧無しの比較例1の理論密度76.47%との差は少ない。このため、密度が透磁率と関連するという技術常識からは、比較例1と実施例1との理論密度の差では、透磁率を飛躍的に向上させることはできないと想定される。しかし、本発明者らは、実施例1では、初透磁率μ0が33.0、μ12000が24.4であるため、比較例1が初透磁率μ0が31.1、μ12000が23.5であることに比べて、透磁率を飛躍的に向上させることができることを見出した。つまり、透磁率に着目した場合、理論密度76.6%以上とすることは、臨界的意義を有している。
【0075】
図7は、実施例1〜4及び比較例1の面圧に対する鉄損のグラフである。表1及び
図7に示すように、鉄損については、加圧しない比較例1に比べて、加圧した実施例1〜4の方が低くなることが分かる。特に、面圧を大きくすることにより、ヒステリシス損失(Phv)が低下する傾向にあることが分かる。加圧する実施例1でも、加圧しない比較例1と比べて鉄損が低減するが、実施例2〜4の方がより鉄損が低減することが分かる。
【0076】
面圧が6.3kg/cm
2以上となると、透磁率及び鉄損がともにほぼ一定となり、加圧することに依る磁気特性への効果が飽和する傾向にあることが分かる。言い換えれば、面圧が1.6〜15.7kg/cm
2の範囲で、加圧工程を有することにより、透磁率の向上及び低鉄損化の効果が得られることが分かる。さらに、6.3kg/cm
2以上とすると、密度上昇に大きく寄与し、鉄損低減効果が高いことが分かる。
【0077】
(b) 樹脂量
実施例3の樹脂量を表2に示す条件として、実施例3と同様の手順でコアのサンプル(実施例5〜9及び比較例2〜4)を作製した。表2及び
図8、
図9に、実施例5〜9及び比較例2〜4の密度、透磁率、鉄損の結果を示す。なお、表2のμ0、μ12000は、表1のものと同じ意味である。
【表2】
【0078】
図8は、実施例5〜9及び比較例2〜4の樹脂量に対する透磁率のグラフである。
図9は、実施例5〜9及び比較例2〜4の樹脂量に対する鉄損のグラフである。表2及び
図8、9に示すように、樹脂量が、複合磁性材料に対して3wt%未満であると、コアの含まれる空隙が多くなり、密度が低下する。その結果、透磁率の低下及びヒステリシス損失増加の原因となる。また、樹脂量が3wt%未満であると、磁性粉末同士が点接触しやすく、渦電流損失の増加の原因となる。一方、樹脂量が、複合磁性材料に対して5wt%超であると、密度の低下が著しくなる。その結果、ヒステリシス損失が増大する。
【0079】
(c) 容器の温度
容器の温度を異ならせてコアのサンプルを作製した。上記(a)の通り、実施例1〜4及び比較例1では、容器の温度は25℃とした。また、容器の温度を70℃とし、容器の温度以外は上記(a)で行った工程と同じにして得たサンプルを、実施例10〜13とした。表3及び
図10、
図11に、実施例1〜4、10〜13及び比較例1の密度、透磁率、鉄損の結果を示す。なお、表3の理論密度、μ0、μ12000は、表1のものと同じ意味である。
【表3】
【0080】
図10は、実施例10〜13の面圧に対する透磁率のグラフである。
図11は、実施例10〜13の面圧に対する鉄損のグラフである。表3及び
図6、7、10、11に示すように、容器の温度を70℃にした実施例10〜13の方が、容器の温度を25℃にした実施例1〜4よりも、密度、理論密度が増加する傾向にあり、鉄損については低減する傾向にあることが分かる。透磁率は面圧によって増減する結果が見えられた。
【0081】
また、容器の温度を70℃とし、温度を高くした中でも、実施例11〜13は、理論密度が77.9%以上となっており、面圧を上げることによって実施例10よりも高くなることが分かる。このように、容器を常温(25℃)よりも温めることで、複合磁性材料中の樹脂が柔らかくなり、当該材料中の空隙に当該材料が流れ込み易くなることにより、見かけ密度が向上し、理論密度が向上するものと考えられる。その結果として、低鉄損化の効果が得られることが分かった。
【0082】
(d) 樹脂の粘度測定
本実施例において使用した樹脂の粘度について、説明する。本実施例に使用した樹脂の粘度は、次のように複合磁性材料状に載せた分銅の沈み込みの深さを測定することにより、樹脂の粘度とした。
【0083】
すなわち、まず、樹脂の添加量を表4に示す条件とし、上記(a)の混合工程と同様にして複合磁性材料を作製した。次に、得られた複合磁性材料を、直径5mmのアルミニウム製の容器に厚さが3mmになるように投入し、その複合磁性材料の上の中央にJIS標準の10gの分銅を載せた。そして、分銅を載せてから10秒経過後、分銅を取り除き、分銅の重みで形成された複合磁性材料の凹みの深さを測定した。その結果を表4に示す。
【表4】
【0084】
表4に示すように、樹脂の添加量が多くなる程、凹みの深さが深くなっており、複合磁性材料の粘性が低く、分銅が沈み込みやすくなっていることが分かる。
【0085】
(e) 樹脂の配合比率
実施例2の第1の磁性粉末と第2の磁性粉末の配合比率を表5に示す条件として、実施例2と同様の手順でコアのサンプル(実施例14、15及び比較例5〜7)を作製した。表5及び
図12、
図13に、実施例14、15及び比較例5〜7の密度、透磁率、鉄損の結果を示す。なお、表5の密度は表1の理論密度と同じ意味であり、μ0、μ12000は、表1のものと同じ意味である。
【表5】
【0086】
図12は、実施例2、14、15及び比較例5〜7の第2の磁性粉末の添加量に対する透磁率のグラフである。
図13は、実施例2、14、15及び比較例5〜7の第2の磁性粉末の添加量に対する理論密度のグラフである。表5及び
図12、13に示すように、第2の磁性粉末の添加量が、20wt%未満であると、コアに含まれる空隙が多くなり、密度が低下する。その結果、透磁率の低下及び鉄損増加の原因となる。一方、第2の磁性粉末の添加量が40wt%超であると、密度の低下が著しくなる。その結果、鉄損が増大する。
【0087】
[MCコアとダストコアとの違い]
(断面)
図14は、本実施形態のコアの断面のSEM写真(100倍)である。成形したコアの材料は以下の通りである。
第1の磁性粉末…平均粒子径80μm
第2の磁性粉末…平均粒子径10μm
第1の磁性粉末:第2の磁性粉末=70:30(重量比率)
樹脂…5wt%
図15は、ダストコアの断面のSEM写真(1000倍)である。
図14及び
図15において、符号1は、第1の磁性粉末を示し、符号2は、第2の磁性粉末を示している。符号3は、樹脂を示している。
図14、
図15から明らかなように、
図14に示すMCコアの方が、
図15に示すダストコアよりも、第1の磁性粉末1の円形度が高くなっている。つまり、ダストコアは、数t/cm
2〜数十t/cm
2という高い圧力で加圧するため、粉末同士が接触し磁性粉末の粒径が変形してしまう。一方、MCコアは、数kg/cm
2〜数十kg/cm
2という低い圧力で、磁性粉末を内包する樹脂内部の空気を抜く程度に加圧するに過ぎず、コアの成形は樹脂の熱硬化によるものであるため、磁性粉末は変形しない。この相違は、
図14、
図15のSEM写真からもわかるように、視覚的に認識可能である。
【0088】
(リアクトルでの特性比較)
本実施形態に対応するMCコアを適用したリアクトルである実施例16、実施例17と、ダストコアを適用したリアクトルである比較例8の特性を比較した。
【0089】
実施例16、17、比較例8のそれぞれの仕様を、以下の表6に示す。
【表6】
実施例16、17のコアの磁性粉末は実施例2と同様であり、比較例8のコアの磁性粉末はセンダストである。実施例16、17、比較例8のコアは、一対のヨーク部によって一対のリム部(脚部)を繋ぐことにより磁路が形成された構成である。コアの断面積は、6.15mm
2である。実施例16、実施例17のコアは、全体が継ぎ目なく形成されているため、ギャップが存在しない。比較例8のコアは、ヨーク部とリム部が別々に成型された分割構成であり、4箇所の接続部分において、それぞれ0.25mm間隔のギャップが存在する。比較例8のコアは、ヨーク部の初透磁率が147、リム部の初透磁率が75である。
【0090】
コイルの巻数は、比較例8、実施例16は、一対のリム部にそれぞれ41[T(Turns)]が巻装され、実施例17は、一対のリム部にそれぞれ39[T]が巻装されている。リアクトルのサイズは、直交する3辺L、W、Hの長さ及び体積が、比較例8と実施例16が同じであるが、実施例17は体積が小さくなっている。
【0091】
つまり、実施例16は、比較例1のダストコアを、MCコアに置き換えたものであり、実施例17は、30Aで比較例1と同等のインダクタンス値(L値)が得られるように、コイルの巻数を少なくしている。従って、同等のサイズのコア及びコイルを用いた場合、MCコアはダストコアよりもリアクトルの30AでのL値を上げることができるので、コイルの巻数を落としてL値を同等とした場合、ダストコアよりもリアクトルの小型化が可能となる。
【0092】
さらに、ダストコアは、成型性に劣るため、分割コアとする必要があり、ギャップを有することになる。しかし、MCコアは全体を継ぎ目なく形成できるので、ギャップを有しない。このため、コイルへの漏れ磁束を低減できるので、銅損が低下して、コイルの発熱を抑えることができる。
【0093】
表7及び
図16に、比較例8、実施例16、17のリアクトルにおいて、直流励磁電流(Idc)を変化させた各値(A)に応じたL値を詳細に示す。
【表7】
MCコアを用いた実施例16のリアクトルでは、ダストコアを用いた比較例8に比べて、30A以上において高いL値を得ることができるので、直流重畳特性が良好となる。従って、実施例17のようにコイルの巻数を落として比較例1と同等以上のL値を得るとともに、小型化を図ることができる。
【0094】
[3.他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。