(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1封止部及び第2封止部の少なくとも一方と前記負極終端電極の前記電極板との接合領域において、前記電極板が粗面化されている、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような蓄電モジュールでは、電極積層体の積層方向の一端に、電極積層体の内側に負極が形成された負極終端電極が配置されている。この負極終端電極の電極板も封止体によって封止される。しかし、電解液がアルカリ溶液を含んでいる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って蓄電モジュールの外部に滲み出てしまうおそれがある。電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出て拡散すると、例えば蓄電モジュールに接して配置された導電板の腐食や、蓄電モジュールと拘束部材との短絡等が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制可能な蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極の積層体と、当該積層体の積層方向の一端側に配置された負極終端電極とを含んで構成された電極積層体と、電極積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、内部空間に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、負極終端電極は、一方面及び当該一方面の反対側の他方面を含む電極板を含み、封止体と負極終端電極の電極板とによって余剰空間が形成されており、封止体は、負極終端電極の電極板の一方面に接合されている第1封止部と、負極終端電極の電極板の他方面とバイポーラ電極の電極板とに接合されている第2封止部とを含む。
【0007】
この蓄電モジュールでは、封止体は、負極終端電極の電極板の一方面に接合された第1封止部と、負極終端電極の電極板の他方面に接合された第2封止部とを有している。このため、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上には、封止体と負極終端電極の電極板とによって余剰空間が形成され、当該余剰空間は、第1封止部及び第2封止部によって2段階に封止されることとなる。このような余剰空間の形成により、外部の空気中の水分が、電解液が滲み出す起点となる第2封止部と負極終端電極の電極板との間に入り込むことも抑制できる。また、第2封止部が負極終端電極の電極板とバイポーラ電極の電極板との双方に接合されることで、第2封止部の剛性が高められる。これにより、アルカリクリープ現象によって第2封止部が負極終端電極の電極板から剥離してしまうことを抑制でき、アルカリクリープ現象の進行を抑制することが可能となる。したがって、この蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制できる。
【0008】
第1封止部と第2封止部とは、熱溶着によって一体の結合体を形成しており、余剰空間は、結合体と負極終端電極の電極板とによって形成されていてもよい。こうすると、負極終端電極回りの構成をユニット化できるので、蓄電モジュールの製造工程の容易化が図られる。
【0009】
第1封止部及び第2封止部の少なくとも一方と負極終端電極の電極板との接合領域において、電極板が粗面化されていてもよい。この構成によれば、アンカー効果によって、第1封止部及び第2封止部の少なくとも一方と負極終端電極の電極板との接合強度の向上を図ることができる。したがって、第1封止部及び第2封止部の剥離を一層抑制でき、アルカリクリープ現象の進行をさらに抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の別の側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、複数のバイポーラ電極を含むバイポーラ電極ユニットを形成する第1工程と、バイポーラ電極と負極終端電極とを含む負極終端電極ユニットを形成する第2工程と、バイポーラ電極ユニットの一端に負極終端電極ユニットを接合して電極積層体を形成する第3工程と、電極積層体の側面を囲むように封止体を形成し、電極積層体を封止する第4工程と、を備える。第2工程において、負極終端電極の電極板の一方面に第1樹脂体を接合すると共に、負極終端電極の電極板の他方面とバイポーラ電極の電極板とに第2樹脂体を接合し、第4工程では、封止体と負極終端電極の電極板とによって余剰空間を形成する。
【0011】
この蓄電モジュールの製造方法では、第1樹脂体が負極終端電極の電極板の一方面に接合されると共に、第2樹脂体が負極終端電極の電極板の他方面に接合される。このため、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上には、封止体と負極終端電極の電極板とによって余剰空間が形成され、当該余剰空間は、第1封止部及び第2封止部によって2段階に封止されることとなる。このような余剰空間の形成により、外部の空気中の水分が、電解液が滲み出す起点となる第2樹脂体と負極終端電極の電極板との間に入り込むことも抑制できる。また、第2樹脂体が負極終端電極の電極板とバイポーラ電極の電極板との双方に接合されることで、第2樹脂体の合成が高められる。これにより、アルカリクリープ現象によって第2封止部が負極終端電極の電極板から剥離してしまうことを抑制でき、アルカリクリープ現象の進行を抑制することが可能となる。したがって、この蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制できる。
【0012】
第2工程において、第1樹脂体の外縁と第2樹脂体の外縁とを熱溶着してもよい。この場合、負極終端電極周りの構成をユニット化できるので、蓄電モジュールの製造工程の容易化が図られる。
【0013】
第3工程と第4工程との間において、第1樹脂体の外縁と第2樹脂体の外縁とを熱溶着してもよい。この場合、負極終端電極回りの構成をユニット化できるので、蓄電モジュールの製造工程の容易化が図られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制可能な蓄電モジュールが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0018】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て略矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0019】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0020】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引出方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能の他、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0021】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する略矩形の金属版である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0022】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0023】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3は、
図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
図2及び
図3に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、当該積層体の積層方向Dの一端側に配置された負極終端電極18と、当該積層体の積層方向Dの他端側に配置された正極終端電極19とを含む。
【0024】
電極積層体11は、一のバイポーラ電極14と負極終端電極18とを含む負極終端電極ユニット31と、複数のバイポーラ電極14を含むバイポーラ電極ユニット32とを含んでいる。負極終端電極ユニット31は、バイポーラ電極ユニット32の一端に接合されている。積層方向Dに沿って、バイポーラ電極ユニット32の一端側のバイポーラ電極14上に、セパレータ13を挟んで負極終端電極ユニット31のバイポーラ電極14が積層されている。負極終端電極ユニット31では、積層方向Dに沿って、バイポーラ電極14上にセパレータ13を挟んで負極終端電極18が積層されている。
【0025】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む電極板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0026】
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5(
図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の電極板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0027】
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0028】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる略矩形の金属箔である。電極板15の縁部15cは、略矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0029】
セパレータ13は、例えばシート上に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0030】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として略矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。すなわち、封止体12は、電極積層体11の側面11aを囲むように設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の縁部15cに接合された複数の電極支持部21と、側面11aに沿って複数の電極支持部21を外側から包囲し、複数の電極支持部21のそれぞれに接合された筐体部22とを含んでいる。電極支持部21及び筐体部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。電極支持部21及び筐体部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0031】
各電極支持部21は、電極板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て略矩形枠状をなしている。各電極支持部21の断面は、略矩形状である。電極支持部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15に溶着され、気密に接合されている。電極支持部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。各電極支持部21の内側は、積層方向Dから見て、電極板15の縁部15cと重なっている。各電極支持部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、筐体部22に支持されている。
【0032】
複数の電極支持部21は、第1封止部41(第1樹脂体)、第2封止部42(第2樹脂体)、複数の第3封止部43(第3樹脂体)、第4封止部44(第4樹脂体)、及び第5封止部45(第5樹脂体)を含んでいる。第1封止部41及び第2封止部42は、上述した負極終端電極ユニット31に含まれている。複数の第3封止部43、第4封止部44、及び第5封止部45は、上述したバイポーラ電極ユニット32に含まれている。
【0033】
第1封止部41は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aの縁部15cに接合されている。第1封止部41は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。本実施形態では、第1封止部41は、負極終端電極18の一方面15aと接合している面の反対側の面では電極板15と接合せずに筐体部22のみと接している。
【0034】
第2封止部42は、負極終端電極18の電極板15の他方面15bの縁部15cと、負極終端電極18に面しているバイポーラ電極14の電極板15の縁部15cとに接合されている。すなわち、第2封止部42は、負極終端電極18の電極板15の縁部15cとバイポーラ電極14の電極板15の縁部15cとに挟まれている。第2封止部42は、負極終端電極18の電極板15の他方面15bの縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。第2封止部42は、バイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。
【0035】
複数の第3封止部43は、それぞれ、バイポーラ電極14の電極板15の他方面15bと、当該バイポーラ電極14とセパレータ13を挟んで隣り合う別のバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aと接合されている。すなわち、各第3封止部43は、互いに隣り合う2つのバイポーラ電極14の電極板15の縁部15cに挟まれている。各第3封止部43は、互いに隣合うバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの縁部15cの全周と、他方面15bの縁部15cの全周とにわたって、気密に接合されている。
【0036】
第4封止部44は、正極終端電極19の電極板15の一方面15aの縁部15cと、正極終端電極19に面しているバイポーラ電極14の電極板15の縁部15cとに接合されている。すなわち、第4封止部44は、正極終端電極19の電極板15の縁部15cとバイポーラ電極14の電極板15の縁部15cとに挟まれている。第4封止部44は、正極終端電極19の電極板15の一方面15aの縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。第4封止部44は、バイポーラ電極14の電極板15の他方面15bの縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。
【0037】
第5封止部45は、正極終端電極19の電極板15の他方面15b(外面側)の縁部15cに接合されている。第5封止部45は、正極終端電極19の電極板15の縁部15cの全周にわたって、気密に接合されている。本実施形態では、第5封止部45は、正極終端電極19の電極板15と接合している面の反対側の面で筐体部22と接合している。
【0038】
電極板15の縁部15cと電極支持部21とが接合する接合領域Kにおいて、電極板15の表面は、粗面化されている。第1封止部41及び第2封止部42の少なくとも一方と負極終端電極18の電極板15との接合領域Kにおいて、電極板15が粗面化されていればよい。本実施形態では、第1封止部41、第2封止部42、第3封止部43、第4封止部44、及び第5封止部45の全てと電極板15との接合領域Kにおいて、電極板15が粗面化されている。本実施形態では、電極板15の一方面15a及び他方面15bの全体が粗面化されている。接合領域Kのみが粗面化されていてもよい。
【0039】
粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現され得る。一方面15a及び他方面15bに複数の突起が形成されることで、一方面15a及び他方面15bにおける電極支持部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込む。その結果、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と電極支持部21との間の接合強度が向上しうる。粗面化の際に形成される突起は、例えば表面に形成された凸部を基端として基端から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0040】
筐体部22は、電極積層体11及び電極支持部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁を構成している。筐体部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。筐体部22は、積層方向Dを軸方向として延在する略矩形の筒状(枠状)を呈している。筐体部22は、例えば射出成形時の熱によって電極支持部21の外表面に溶着されている。
【0041】
電極支持部21及び筐体部22(封止体12)は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。本実施形態では、筐体部22は、電極支持部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間に、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0042】
負極終端電極ユニット31では、第1封止部41と、第2封止部42と、負極終端電極18の電極板15の縁部15cと、筐体部22とによって、余剰空間VAが形成されている。すなわち、余剰空間VAは、封止体12と負極終端電極18の電極板15とによって形成されている。余剰空間VAには、電解液が収容されない。余剰空間VAは、蓄電モジュール4においてアルカリクリープ現象が発生した場合の電解液の移動経路上に設けられている。積層方向Dから見て、余剰空間VAは、負極終端電極18の電極板15の周囲を囲むように形成されている。また、積層方向Dに沿った断面から見て、余剰空間VAは略矩形状である。
【0043】
次に、
図4を参照しながら、蓄電モジュール4の製造方法の一例について説明する。
図4は、上述した蓄電モジュールの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0044】
まず、負極終端電極ユニット31とバイポーラ電極ユニット32とがそれぞれ形成される(ステップS1)。負極終端電極ユニット31の形成では、一のバイポーラ電極14と負極終端電極18とを用意する。続いて、セパレータ13を介して負極終端電極18とバイポーラ電極14とを積層する。続いて、負極終端電極18の電極板15の一方面15aの縁部15cに第1樹脂体(第1封止部41)を接合する。負極終端電極18の電極板15の他方面15bの縁部15cとバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの縁部15cとに第2樹脂体(第2封止部42)を接合する。これより、負極終端電極ユニット31が形成される。
【0045】
バイポーラ電極ユニット32の形成では、所定数のバイポーラ電極14と正極終端電極19とを用意する。続いて、セパレータ13を介して複数のバイポーラ電極14と正極終端電極19とを積層する。続いて、各バイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの縁部15cと他方面15bの縁部15cとに、第3樹脂体(第3封止部43)を接合する。正極終端電極19の電極板15の一方面15aの縁部15cと正極終端電極19に面しているバイポーラ電極14の電極板15の縁部15cとに、第4樹脂体(第4封止部44)を接合する。正極終端電極19の電極板15の他方面15bの縁部15cに、第5樹脂体(第5封止部45)を接合する。これにより、バイポーラ電極ユニット32が形成される。
【0046】
次に、バイポーラ電極ユニット32の一端に負極終端電極ユニット31を接合して電極積層体11を形成する(ステップS2)。この際、セパレータ13を介して、バイポーラ電極ユニット32の一端側のバイポーラ電極14上に負極終端電極ユニット31のバイポーラ電極14が積層される。
【0047】
次に、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、電極支持部21を包囲するように筐体部22(封止体12)を成形する(ステップS3)。すなわち、電極積層体11の側面11aを囲むように封止体12を形成し、電極積層体11を封止する。その結果、封止体12と負極終端電極18の電極板15とによって余剰空間VAが形成される。次に、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液を注入する(ステップS4)。以上の工程によって、蓄電モジュール4が得られる。
【0048】
次に、
図5を参照して蓄電モジュール4の作用効果について説明する。
図5は、比較例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。
図5に示されるように、比較例に係る蓄電モジュール100は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aのみに電極支持部21(封止体12)が接合され、他方面15bに電極支持部21が接合されていない。
【0049】
蓄電モジュール100では、いわゆるアルカリクリープ現象により、内部空間Vに存在する電解液が負極終端電極18の電極板15の表面を伝わり、接合領域Kにおける電極板15と電極支持部21との間の隙間を通って電極板15の一方面15a側に滲み出ることがある。
図5には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路を矢印Aで示す。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因及び流体現象などにより、蓄電装置の充電時及び放電時並びに無負荷時において生じ得る。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じ、時間の経過とともに進行する。
【0050】
これに対し、本実施形態に係る蓄電モジュール4では、第1封止部41(第1樹脂体)が負極終端電極18の電極板15の一方面15aに接合され、第2封止部42(第2樹脂体)が負極終端電極18の電極板15の他方面15bに接合される。このため、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路上には、封止体12と負極終端電極18の電極板15とによって余剰空間VAが形成され、当該余剰空間VAは、第1封止部41及び第2封止部42によって2段階に封止されることとなる。このような余剰空間VAの形成により、外部の空気中の水分が、電解液が滲み出す起点となる第2封止部42と負極終端電極18の電極板15との間に入り込むことも抑制できる。
【0051】
また、第2封止部42が負極終端電極18の電極板15とバイポーラ電極14の電極板15との双方に接合されることで、第2封止部42の剛性が高められる。これにより、アルカリクリープ現象によって第2封止部42が負極終端電極18の電極板15から剥離してしまうことを抑制でき、アルカリクリープ現象の進行を抑制することが可能となる。したがって、この蓄電モジュール4では、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制できる。
【0052】
第1封止部41及び第2封止部42と負極終端電極18の電極板15との接合領域Kにおいて、電極板15が粗面化されている。この構成によれば、アンカー効果によって、第1封止部41及び第2封止部42と負極終端電極18の電極板15との接合強度の向上を図ることができる。したがって、第1封止部41及び第2封止部42の剥離を一層抑制でき、アルカリクリープ現象の進行をさらに抑制することが可能となる。
【0053】
次に、
図6を参照して、変形例に係る蓄電モジュール50について説明する。
図6は、蓄電モジュール50の一部を示す拡大断面図である。
図6は、
図3に示されている蓄電モジュール4の一部に対応する部分を示している。
【0054】
蓄電モジュール50は、蓄電モジュール4と同様に、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。封止体12は、電極板15の縁部15cに接合された複数の電極支持部21と、側面11aに沿って複数の電極支持部21を外側から包囲し、複数の電極支持部21のそれぞれに接合された筐体部22とを含んでいる。複数の電極支持部21は、第1封止部41(第1樹脂体)、第2封止部42(第2樹脂体)と、複数の第3封止部43(第3樹脂体)、第4封止部44(第4樹脂体)、第5封止部45(第5樹脂体)を含んでいる。蓄電モジュール50は、第1封止部41と第2封止部42とが熱溶着によって接合されている点で、蓄電モジュール4と相違している。
【0055】
蓄電モジュール50では、第1封止部41と第2封止部42とは、熱溶着部47によって一体の結合体55となっている。本実施形態では、熱溶着部47は、熱板溶着によって形成されている。熱溶着部47は、負極終端電極18の電極板15の縁部15cを包囲する。熱溶着部47は、積層方向Dから見て略矩形枠状をなしており、全周にわたって連続的に設けられている。したがって、蓄電モジュール50の負極終端電極ユニット31では、第1封止部41と、第2封止部42と、負極終端電極18の電極板15の縁部15cと、熱溶着部47とによって、余剰空間VAの代わりに余剰空間VBが形成されている。すなわち、余剰空間VBは、結合体55と負極終端電極18の電極板15とによって形成されている。
【0056】
余剰空間VBには、電解液が収容されない。余剰空間VBは、蓄電モジュール4においてアルカリクリープ現象が発生した場合の電解液の移動経路上に設けられている。積層方向Dから見て、余剰空間VBは負極終端電極18の電極板15の周囲を囲むように形成されている。また、積層方向Dに沿った断面から見て、余剰空間VBは略矩形状である。
【0057】
次に、蓄電モジュール50の製造方法の一例について説明する。蓄電モジュール50の製造方法は、第1樹脂体(第1封止部41)と第2樹脂体(第2封止部42)とを熱溶着する工程を有する点で、蓄電モジュール4の製造方法と相違している。
【0058】
蓄電モジュール50の製造方法においても、蓄電モジュール4の製造方法と同様に、まず、負極終端電極ユニット31とバイポーラ電極ユニット32とがそれぞれ形成される(ステップS1)。この際、負極終端電極ユニット31の形成において、第1樹脂体を負極終端電極18の電極板15の一方面15aの縁部15cに接合し、第2樹脂体を負極終端電極18の電極板15の他方面15bの縁部15cとバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aの縁部15cとに接合する。その後、第1樹脂体の外縁と第2樹脂体の外縁とを互いに熱板溶着する。
【0059】
上述した熱板溶着によって、第1樹脂体と第2樹脂体との間に熱溶着部47が形成される。この結果、第1樹脂体及び第2樹脂体を含む一体の結合体55が形成される。後述する工程によって封止体12となる結合体55と負極終端電極18の電極板15とは、余剰空間VBを形成する。負極終端電極ユニット31において、第1樹脂体及び第2樹脂体は、それぞれ第1封止部41及び第2封止部42として機能する。
【0060】
次に、バイポーラ電極ユニット32の一端に負極終端電極ユニット31を接合して電極積層体11を形成する(ステップS2)。この際、セパレータ13を介して、バイポーラ電極ユニット32の一端側のバイポーラ電極14上に負極終端電極ユニット31のバイポーラ電極14が積層される。次に、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、電極支持部21を包囲するように筐体部22(封止体12)を成形する(ステップS3)。すなわち、電極積層体11の側面11aを囲むように封止体12を形成し、電極積層体11を封止する。次に、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液を注入する(ステップS4)。以上の工程によって、蓄電モジュール50が得られる。
【0061】
第1樹脂体の外縁と第2樹脂体の外縁との熱溶着は、上述した工程の順序に限定されない。例えば、第1樹脂体の外縁と第2樹脂体の外縁とを熱板溶着した後に、第1樹脂体を負極終端電極18の電極板15の一方面15aに接合し、第2樹脂体を負極終端電極18の電極板15の他方面15bとバイポーラ電極14の電極板15の一方面15aとに接合してもよい。バイポーラ電極ユニット32と負極終端電極ユニット31とを接合して電極積層体11を形成した後、筐体部22を成形する前に、第1樹脂体の外縁と第2樹脂体の外縁とを熱板溶着してもよい。
【0062】
次に、蓄電モジュール50の作用効果について説明する。蓄電モジュール50では、第1封止部41(第1樹脂体)と第2封止部42(第2樹脂体)とは、熱溶着によって一体の結合体55を形成している。余剰空間VBは、結合体55と負極終端電極18の電極板15とによって形成されている。この場合、負極終端電極18周りの構成をユニット化できるので、蓄電モジュール50の製造工程の容易化が図られる。