(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体またはタンパク質が、配列番号9のVHおよび配列番号10のVLを有する対応する参照キメラ抗体の誘導レベルに等しいかまたはそれより優れたレベルに、HL−60細胞株のアポトーシスを誘導する、請求項1または2に記載の単離された抗TfR抗体またはタンパク質。
ヒトIgG4アイソタイプの定常領域、または突然変異したもしくは化学的に改変された定常領域を含み、ここで前記突然変異したまたは化学的に改変された定常領域は、野生型IgG1アイソタイプの定常領域を有する対応する抗体と比較した場合、前記抗体にADCC活性を付与しないかまたは減少したADCC活性を付与する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離された抗TfR抗体またはタンパク質。
ヒトIgG1アイソタイプの定常領域、または突然変異したもしくは化学的に改変された定常領域を含み、ここで前記突然変異したまたは化学的に改変された定常領域は、野生型IgG1アイソタイプの定常領域を有する対応する抗体と比較した場合、前記抗体に増加したADCC活性を付与する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離された抗TfR抗体またはタンパク質。
腫瘍、例えば血液系腫瘍、より具体的にはリンパ腫または白血病の処置で使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離された抗TfR抗体またはタンパク質。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗TfR抗体またはタンパク質を、医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体の1つまたはそれより多くと組み合わせて含み、任意選択で他の活性成分を含む、医薬組成物。
宿主細胞における請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗TfR抗体の組換え生産のための、前記抗TfR抗体をコードする少なくとも1つの核酸を含むクローニングまたは発現ベクター。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本発明の開示をより容易に理解できるように、まず特定の用語を定義する。追加の定義は詳細な説明中で明示される。
【0026】
用語「免疫応答」は、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって生産された可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、および補体など)の作用であって、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん細胞、または自己免疫もしくは病的な炎症のケースでは正常なヒト細胞もしくは組織の選択的な損傷、それらの破壊、またはそれらの人体からの排除をもたらすものを指す。
【0027】
「シグナル伝達経路」または「シグナル伝達活性」は、一般的にタンパク質−タンパク質相互作用、例えば増殖因子の受容体への結合などによって始まり、結果的に細胞の一部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達をもたらす生化学的な因果関係を指す。一般的に、伝達は、シグナル伝達を引き起こす一連の反応における、1つまたはそれより多くのタンパク質での1つまたはそれより多くのチロシン、セリン、またはスレオニン残基の特異的リン酸化を含む。最後から2番目のプロセスは、典型的には核での事象を包含し、結果として遺伝子発現の変化がもたらされる。
【0028】
CD71またはトランスフェリン受容体またはTfRという用語は、別段の記載がない限り配列番号16で定義されるヒトTfRを指す。
用語「抗体」は、本明細書で記載される場合、全抗体およびそのあらゆる抗原結合フラグメント(すなわち「抗原結合部位」)または単鎖を包含する。
【0029】
天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより高度に保存された領域が散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に細分することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並べられる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織または因子、例えば免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体第1成分(C1q)などへの結合を媒介することができる。
【0030】
抗体の「抗原結合部位」(または単に「抗原部分」)という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の全長または1つもしくはそれより多くのフラグメント(例えばTfRの部分)を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによっても実行できることが示されている。抗体の「抗原結合部位」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、V
L、V
H、C
LおよびCH1ドメインからなる1価フラグメントである、Fabフラグメント;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメントである、F(ab)
2フラグメント;V
HおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一アームのV
LおよびV
HドメインからなるFvフラグメント;ヒンジ領域において改変されたIgG重鎖、例えばIgG4を有する単一アームからなるユニボディ、ドメイン抗体フラグメント(Wardら、1989 Nature 341:544〜546)、またはV
Hドメインからなるナノボディフラグメント;および単離された相補性決定領域(CDR)、またはこのような抗原結合部位を含むあらゆる融合タンパク質が挙げられる。
【0031】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、これらをVL領域とVH領域とが対合して1価分子(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら、1988 Science 242:423〜426;および Hustonら、1988 Proc. Natl. Acad。Sci. 85:5879〜5883を参照)を形成する単鎖のタンパク質のようにすることができる合成リンカーによる組換え方法を使用して、VLとVHとを接続することができる。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部位」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者公知の従来技術を使用して得られ、フラグメントは、無傷の抗体の場合と同じ方式で、有用性に関してスクリーニングされる。
【0032】
「単離された抗体」は、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、TfRに特異的に結合するが、TfR以外の他の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない、単離された抗体)を指す。しかしながら、TfRに特異的に結合する単離された抗体は、例えば他の種由来のTfR分子などの他の抗原に交差反応性を有する場合がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0033】
用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用される場合、単一分子の組成を有する抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性および特定のエピトープへの親和性を表す。
【0034】
「アイソタイプ」は、本明細書で使用される場合、重鎖定常領域の遺伝子によって提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgG、例えばIgG1またはIgG4など)を指す。
【0035】
成句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と同義的に使用される。
「抗原に特異的に結合する」、例えば「TfRに特異的に結合する」抗体またはタンパク質は、本明細書で使用される場合、100nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、1nMまたはそれ未満のK
Dで前記抗原(例えば配列番号16のヒトTfR)に結合する抗体またはタンパク質を指すことが意図される。
【0036】
用語「K
D」は、本明細書で用いられる場合、K
dのK
aに対する比率(すなわちK
d/K
a)から得られる解離定数を指すことが意図され、モル濃度(M)として表される。抗体のK
D値は、当業界において十分に確立されている方法を使用して決定することができる。抗体のK
Dを決定するための方法は、表面プラズモン共鳴を使用すること、または例えばビアコア(Biacore)(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによる方法である。ビアコア(登録商標)システムで抗TfR抗体のK
Dを測定するためのアッセイは、以下の実施例に記載される。
【0037】
用語「K
assoc」または「K
a」は、本明細書で用いられる場合、特定の抗体−抗原相互作用の結合速度を指すことが意図され、それに対して用語「K
dis」または「K
d」は、本明細書で用いられる場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。
【0038】
用語「親和性」は、本明細書で使用される場合、単一の抗原性部位における抗体と抗原との相互作用の強度を指す。各抗原性部位内において、抗体「アーム」の可変領域は、多数の部位で弱い非共有結合の力を介して抗原と相互作用し、相互作用が多いと、親和性もより強くなる。
【0039】
用語「結合活性」は、本明細書で使用される場合、抗体−抗原複合体の全体的な安定性または強度の有益な尺度を指す。これは、3つの主要な要因、すなわち抗体エピトープ親和性;抗原と抗体両方の結合価;および相互作用部位の構造的な配列によって制御される。最終的にこれらの要因は、抗体の特異性、すなわち特定の抗体が正確な抗原エピトープに結合する見込みを定義する。具体的な実施態様において、本開示の前記抗TfR抗体は、2価抗体である。
【0040】
用語「HL−60細胞株」は、本明細書で使用される場合、Collinsら(PNAS1978、75:2458〜1462)によって誘導された前骨髄球細胞株を指し、これは、Gallagherら(Blood、1979、54:713〜733)にも記載されており、例えばATCC(登録商標)コレクションからカタログ番号CCL−240(商標)で入手可能である。
【0041】
抗体A24は、本明細書で使用される場合、WO2005/111082で開示されたもののような抗体を指す。
用語「ADCC」または「抗体依存性細胞傷害」活性は、本明細書で使用される場合、細胞を枯渇させる活性を指す。ADCC活性は、市販のADCCアッセイによって、例えば、参照番号G7015のプロメガ(Promega)によって商品化されたような、さらに、実施例で簡単に説明されるようなADCCレポーターバイオアッセイによって測定することができる。
【0042】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、あらゆるヒトまたはヒト以外の動物を包含する。用語「ヒト以外の動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを包含する。
【0043】
用語「最適化」は、本明細書で使用される場合、生産細胞または生物、一般的には真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはヒト細胞において好ましいコドンを使用してアミノ酸配列がコードされるように、ヌクレオチド配列が変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、開始のヌクレオチド配列によって元々コードされていたアミノ酸配列を完全にまたはできる限りを保持するように操作される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列は、最適化されたとも称される。
【0044】
2つの配列間のパーセント同一性は、本明細書で使用される場合、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れたそれらの配列に共通する同一な位置の数の関数(すなわち、%同一性=同一な位置の数/位置の総数×100)である。2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、後述するような数学的なアルゴリズムを使用して達成することができる。
【0045】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り入れられているE. MeyersおよびW. Miller (Comput. Appl. Biosci.、4:11〜17, 1988)のアルゴリズムを、PAM120重量残基表(weight residue table)、12のギャップのレングスペナルティーおよび4のギャップペナルティーで使用して決定することができる。代替として、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に取り入れられているNeedlemanおよびWunsch(J. Mol, Biol. 48:444〜453、1970)のアルゴリズムを、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイト、および1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトで使用して決定することができる。
【0046】
2つのヌクレオチドアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、例えばアルゴリズムを使用して、例えば核酸配列のためのBLASTNプログラムを、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較で使用して決定することもできる。
【0047】
組換え抗体
本開示の抗体としては、以下の表1に記載されるような、単離され、それらの可変重鎖および軽鎖アミノ酸配列ならびにヒト定常アイソタイプによって構造的に特徴付けされたヒト化組換え抗体mAb1〜mAb16が挙げられる。
【0049】
mAb1〜mAb16の生成に使用されるIgG4、IgG1およびそれらの突然変異体型であるIgG1 AAおよびIgG1 N297Aの定常アイソタイプ領域の対応するアミノ酸およびヌクレオチドコード配列は、当業界において周知である。
【0050】
以下の表2に、mAb1の全長軽鎖および重鎖ならびに対応するコード配列を示す。
【0052】
表3に、本開示に係る一部の抗体のVH CDR1(HCDR1とも称される)、VH CDR2(HCDR2とも称される)、VH CDR3(HCDR1とも称される)、VL CDR1(LCDR1とも称される)、VL CDR2(LCDR2とも称される)、VL CDR3(HCDR3とも称される)のアミノ酸配列の例を示す。
【0053】
表3において、本発明の開示の一部の抗体のCDR領域を、Chothiaシステム(Chothia C、Lesk AM. 1987、J Mol Biol 196、901〜917)を使用して詳述する。
読み取りを簡単にするために、CDR領域は以降、それぞれHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3と呼ばれる。
【0055】
一実施態様において、単離された組換え抗体は、配列番号1のHCDR1;配列番号2のHCDR2;配列番号3のHCDR3を含む重鎖可変領域;配列番号4のLCDR1;配列番号5または8のLCDR2;および配列番号6のLCDR3を含む軽鎖可変領域を有し、ここで前記抗体は、配列番号16のトランスフェリン受容体に特異的に結合する。
【0056】
具体的な実施態様において、本開示に係る単離された組換え抗体は、
(a)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、ならびに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2および配列番号6のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;
(b)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3を含む可変重鎖ポリペプチド、ならびに配列番号4のLCDR1、配列番号8のLCDR2および配列番号6のLCDR3を含む可変軽鎖ポリペプチド;
(c)配列番号11のVHを含む可変重鎖ポリペプチド、および配列番号13のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(d)配列番号11のVHを含む可変重鎖ポリペプチド、および配列番号14のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(e)配列番号11のVHを含む可変重鎖ポリペプチド、および配列番号15のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(f)配列番号12のVHを含む可変重鎖ポリペプチド、および配列番号13のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(g)配列番号12のVHを含む可変重鎖ポリペプチド、および配列番号14のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド;
(h)配列番号12のVHを含む可変重鎖ポリペプチド、および配列番号15のVLを含む可変軽鎖ポリペプチド
のいずれかを含み、ここで前記抗TfR抗体は、配列番号16のトランスフェリン受容体に特異的に結合する。
【0057】
具体的な実施態様において、上記で定義された前記組換え抗TfR抗体は、以下の特性:
(i)上記抗体が、例えば以下の実施例に記載されるようなSPRによって測定した場合、10nMまたはそれ未満のK
Dで、好ましくは1nMまたはそれ未満のK
Dでトランスフェリン受容体に結合すること;
(ii)上記抗体が、以下の実施例に記載されるようなELISAアッセイで測定した場合、0.1μg/mlまたはそれ未満、好ましくは0.05μg/mlまたはそれ未満のEC50でトランスフェリン受容体に結合すること;
(iii)上記抗体が、例えばHL−60アポトーシス誘導アッセイを使用して測定した場合、配列番号9のVHおよび配列番号10のVLを含む親マウスの可変領域を有する対応する参照キメラ抗体で測定された誘導レベルに等しいかまたはそれより優れたレベルに、HL−60細胞株のアポトーシスを誘導すること
の1つまたはそれより多くを有する。典型的には、10μg/mlの量の本発明の開示の組換え抗体は、配列番号9のVHおよび配列番号10のVLを含むA24の親マウスの可変領域を有する同量の参照キメラ抗体と比較した場合のHL−60細胞株のアポトーシスの誘導に関してアッセイされてもよい。試験された抗体のHL−60アポトーシス誘導アッセイにおけるアポトーシス誘導は、試験された抗体を用いて測定された場合の陽性細胞のパーセンテージが、参照抗体を用いて測定した場合の陽性細胞のパーセンテージより有意に低くない場合、参照抗体に等しい。
【0058】
「対応する」参照キメラ抗体は、本明細書で使用される場合、特定の特性、例えばアポトーシスの誘導に関して試験しようとする抗体のアイソタイプの定常領域に100%同一なアイソタイプの定常領域を有する参照抗体を指す。
【0059】
前述の実施態様と組み合わせることができる特定の実施態様において、本明細書で提供される抗体は、上記で定義した抗体の抗体フラグメントである。
抗体フラグメントとしては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、ユニボディ、およびscFvフラグメント、ダイアボディ、単一ドメインまたはナノボディおよび他のフラグメントが挙げられる。
【0060】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメントを指し、これらのフラグメントは、同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対合を許容するには短かすぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を作り出す。
【0061】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部または軽鎖可変ドメインの全てまたは一部を含む抗体フラグメントである。特定の実施態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体(ドマンティス社(Domantis, Inc.)、マサチューセッツ州ウォルサム;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照)である。
【0062】
抗体フラグメントは、これらに限定されないが、無傷の抗体のタンパク質分解による消化、加えて本明細書に記載されるような組換え宿主細胞による生産などの様々な技術によって作製することができる。
【0063】
特定の実施態様において、本発明の開示の抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体と少なくとも同じ親和性(または優れた親和性)を有しながらヒトへの免疫原性が低減されるようにヒト化される。好ましい実施態様において、本発明の開示の抗体は、親抗体A24のヒト化抗体である。
【0064】
一般的に、ヒト化抗体は、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体、例えばマウスA24抗体由来であり、FR(またはその一部)が、ヒト抗体配列由来である1つまたはそれより多くの可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むと予想される。一部の実施態様において、ヒト化抗体における一部のFR残基は、例えば抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の元となるA24抗体)由来の対応する残基で置換されている。一部の具体的な実施態様において、ヒト化抗体における一部のCDR残基も、例えば抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために置換されている。
【0065】
ヒト化抗体およびその作製方法は、例えば、AlmagroおよびFransson、Front. Biosci. 13:1619〜1633(2008)で総論されており、例えば、Riechmannら、Nature 332:323〜329(1988);Queenら、Proc. Natl Acad. Sci. USA 86:10029〜10033(1989);米国特許第5,821,337号、7,527,791号、6,982,321号、および7,087,409号;Kashmiriら、Methods 36:25〜34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトを記載);Padlan、Mol. Immunol. 28:489〜498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載);Dall’Acquaら、Methods 36:43〜60(2005)(「FRシャッフリング」を記載);ならびにOsbournら、Methods 36:61〜68(2005)およびKlimkaら、Br. J. Cancer、83:252〜260(2000)(FRシャッフリングへの「ガイド化選択(guided selection)」アプローチを記載)でさらに記載されている。
【0066】
好ましくは、本開示に係る組換え抗体は、ヒト化サイレント抗体、好ましくはヒト化サイレントIgG1またはIgG4抗体である。
用語「サイレント」抗体は、本明細書で使用される場合、ADCC活性アッセイで測定した場合、ADCC活性を示さないかまたは低いADCC活性を示す抗体を指す。
【0067】
一実施態様において、用語「ADCC活性を示さないかまたは低いADCC活性を示す」は、サイレント抗体が、野生型ヒトIgG1アイソタイプを有する対応する抗体で観察されるADCC活性の少なくとも10%未満、例えば50%未満であるADCC活性を示すことを意味する。
【0068】
サイレント化されたエフェクター機能は、抗体のFc定常部分中の突然変異により得ることができ、当業界において、Strohl 2009(AAおよびN297A);Baudino 2008、D265A(Baudinoら、J.Immunol. 181(2008):6664〜69、Strohl、CO Biotechnology 20(2009):685〜91)に記載されている。サイレントIgG1抗体の例は、IgG1Fcアミノ酸配列中にL234AおよびL235A突然変異を含むいわゆるAA突然変異体を含む。別のサイレントIgG1抗体は、脱グリコシル化または非グリコシル化抗体を生じるN297A突然変異を含む。
【0069】
突然変異アミノ酸配列を有する抗体は、コード化核酸分子を変異誘発(例えば、部位特異的またはPCR媒介変異誘発)し、続いて本明細書に記載の機能アッセイを使用して保持された機能(すなわち、上記で明示した機能)に関してコードされた変更された抗体を試験することにより得ることができる。
【0070】
保存的改変を有する抗体
特定の実施態様において、本開示の抗体(またはその抗原結合部分を含む結合タンパク質)は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにLCDR1、LCDR2、およびLCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここでこれらのCDR配列の1つまたはそれより多くは、本明細書に記載のmAb1〜mAb16抗体に基づく特定されたアミノ酸配列またはそれらの保存的改変を有し、抗体またはタンパク質は、本開示の抗TfR抗体の望ましい機能特性を保持する。
【0071】
抗TfR抗体の望ましい機能特性としては、これらに限定されないが、
(i)例えばビアコア(登録商標)を使用したSPRアッセイによって測定した場合、10nMまたはそれ未満のK
Dで、好ましくは1nMまたはそれ未満のK
Dでトランスフェリン受容体に結合すること;
(ii)上記抗体が、以下の実施例に記載されるようなELISAアッセイで測定した場合、0.1μg/mlまたはそれ未満、好ましくは0.05μg/mlまたはそれ未満のEC50でトランスフェリン受容体に結合すること;
(iii)上記抗体が、例えばHL−60アポトーシス誘導アッセイを使用して測定した場合、配列番号9のVHおよび配列番号10のVLを含む親マウスの可変領域を有する対応する参照キメラ抗体で測定された誘導レベルに等しいかまたはそれより優れたレベルに、HL−60細胞株のアポトーシスを誘導すること
が挙げられる。典型的には、10μg/mlの量の本発明の開示の組換え抗体は、配列番号9のVHおよび配列番号10のVLを含むA24の親マウスの可変領域を有する同量の参照キメラ抗体と比較した場合のHL−60細胞株のアポトーシスの誘導に関してアッセイされてもよい。試験された抗体のHL−60アポトーシス誘導アッセイにおけるアポトーシス誘導は、試験された抗体を用いて測定された場合の陽性細胞のパーセンテージが、参照抗体を用いて測定した場合の陽性細胞のパーセンテージより有意に低くない場合、参照抗体に等しい。
【0072】
用語「保存的な配列改変」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるアミノ酸置換を指すことが意図される。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当業界においてすでに定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を包含する。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つまたはそれより多くのアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えられていてもよく、変更された抗体は、本明細書に記載の機能アッセイを使用して保持された機能に関して試験されてもよい。
【0073】
改変は、例えば部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの当業界において公知の標準的な技術によって本開示の抗体に導入することができる。
フレームワークまたはFcの操作
本開示の操作された抗体は、例えば抗体の特性を向上させるためにVHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に改変がなされた抗体を包含する。典型的には、このようなフレームワークの改変は、抗体の免疫原性を減少させるためになされる。例えば、1つのアプローチは、1つまたはそれより多くのフレームワーク残基を対応する生殖細胞系の配列に「復帰突然変異」させることである。より具体的に言えば、体細胞変異を受けた抗体は、抗体の元となる生殖細胞系の配列とは異なるフレームワーク残基を含有していてもよい。このような残基は、抗体のフレームワーク配列を抗体の元となる生殖細胞系の配列と比較することによって同定することができる。フレームワーク領域の配列をそれらの生殖細胞系の配置に戻すため、体細胞変異は、例えば部位特異的変異誘発またはPCR媒介変異誘発によって、生殖細胞系の配列に「復帰突然変異」させることができる。このような「復帰突然変異した」抗体も、本発明に包含されることが意図される。
【0074】
別のタイプのフレームワーク改変は、フレームワーク領域内の1つまたはそれより多くの残基を突然変異させることを含み、または1つまたはそれより多くのCDR領域内の残基も突然変異させてもよく、それによりT細胞エピトープを除去して、可能性のある抗体の免疫原性を低減させる。
【0075】
特定には、アンチトープ(Antitope)社(英国ケンブリッジ)は、治療抗体およびタンパク質中のT細胞エピトープの配置を同定することに基づく、評価および免疫原性の除去のための様々な権利を有する技術を開発してきた。以下にこれらの技術を要約する:
・ iTope(商標)−ヒトMHCクラスII対立遺伝子に結合するペプチドを予測するためのインシリコ技術(Perryら 2008 Drugs in R&D、9(6):385〜396)。
【0076】
・ TCED(商標)−特に抗体のV領域のEpiScreen(商標)T細胞エピトープマッピングアッセイを使用した研究で同定された公知のT細胞エピトープのデータベース(Brysonら 2010 Biodrugs 24(1):1〜8)。データベースは、共通のモチーフを同定するためのBLAST検索によって照合することができる(Altschulら 1997 Nucleic Acids Res.(1997) 25:3389〜3402)。
【0077】
フレームワークまたはCDR領域内になされる改変に加えて、またはその代りに、典型的には抗体の1つまたはそれより多くの機能特性、例えば血清中半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害などを変更するために、本開示の抗体は、Fc領域内に改変を包含するように操作されてもよい。
【0078】
さらに本開示の抗体は、ここでも抗体の1つまたはそれより多くの機能特性を変更するために、化学的に改変されていてもよいし(例えば、1つまたはそれより多くの化学成分が、抗体に付着していてもよい)、またはそのグリコシル化が変更されるように改変されていてもよい。これらの実施態様のそれぞれは、以下のさらなる詳細に記載される。
【0079】
用語「アイソタイプの定常領域」または「Fc領域」は、本明細書で使用される場合、天然の配列のFc領域やバリアントのFc領域など、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに同義的に使用される。ヒトIgG重鎖のFc領域は、一般的に、C226位またはP230位からIgG抗体のカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むと定義されている。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEUインデックスの番号付けである。Fc領域のC末端リシン(K447残基)は、例えば抗体の生産または精製中に除去されてもよい。したがって、本開示の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、およびK447残基を有するおよび有さない抗体の混合物を有する抗体集団を含んでいてもよい。
【0080】
具体的な一実施態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が変更されるように、例えば増加または減少するように改変される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号でさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば軽鎖および重鎖の集合が容易になるように、または抗体の安定性が増加もしくは減少するように変更される。
【0081】
別の実施態様において、抗体のFcヒンジ領域が突然変異して、抗体の生物学的半減期が減少する。より具体的には、抗体におけるブドウ球菌プロテインA(SpA)の結合が天然のFc−ヒンジドメインのSpA結合に比べて損なわれるように、1つまたはそれより多くのアミノ酸の突然変異が、Fc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメインの境界領域に導入される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号でさらに詳細に記載されている。
【0082】
別の実施態様において、抗体は、その生物学的半減期が増加するように改変される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載されるように、以下の突然変異:T252L、T254S、T256Fの1つまたはそれより多くを導入することができる。代替として、生物学的半減期を増加させるために、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および6,121,022号に記載されるように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採取されたサルベージ受容体結合エピトープを含有するように、抗体はCH1またはCL領域内で変更されていてもよい。
【0083】
さらに他の実施態様において、Fc領域は、抗体のエフェクター機能が変更されるように少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによって変更される。例えば、抗体がエフェクターリガンドに関して変更された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、1つまたはそれより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸残基で置き換えられていてもよい。親和性が変更されるエフェクターリガンドは、例えばFc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、両方ともWinterらによる米国特許第5,624,821号および5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0084】
別の実施態様において、抗体が、C1q結合を変更したり、および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を低減もしくは壊滅させたりするように、アミノ酸残基から選択される1つまたはそれより多くのアミノ酸が異なるアミノ酸残基で置き換えられていてもよい。このアプローチは、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。
【0085】
別の実施態様において、補体を固定する抗体の能力が変更されるように、1つまたはそれより多くのアミノ酸残基が変更される。このアプローチは、BodmerらによるPCT公報WO94/29351にさらに記載されている。
【0086】
さらに別の実施態様において、Fc領域は、1つまたはそれより多くのアミノ酸を改変することによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増加させる、および/またはFcγ受容体への抗体の親和性を増加させるように改変される。このアプローチは、PrestaによるPCT公報WO00/42072にさらに記載されている。さらに、ヒトIgG1上のFcγRl、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnのための結合部位がマッピングされており、結合が向上したバリアントが記載されている(Shields、R.L.ら、2001 J. Biol. Chem 276:6591〜6604を参照)。
【0087】
他の実施態様において、Fc領域は、1つまたはそれより多くのアミノ酸を改変することによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を減少させる、および/またはFcγ受容体への抗体の親和性を減少させるように改変される。このようなエフェクター機能が減少した、特定にはADCCが減少した抗体としては、サイレント抗体が挙げられる。
【0088】
特定の実施態様において、IgG1アイソタイプのFcドメインが使用される。一部の具体的な実施態様において、IgG1 Fcフラグメントの突然変異バリアントが使用され、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介するおよび/またはFcγ受容体に結合する融合ポリペプチドの能力を低減または排除するサイレントIgG1 Fcが使用される。IgG1アイソタイプのサイレント突然変異体の例は、HezarehらによるJ. Virol 2001年12月;75(24):12161〜8に記載されるような、234および235のアミノ酸位置でロイシンがアラニンで置き換えられたIgG1である。
【0089】
特定の実施態様において、Fcドメインは、Fcドメインの297位でのグリコシル化を防ぐサイレントFc突然変異体である。例えば、Fcドメインは、297位にアスパラギンのアミノ酸置換を含有する。このようなアミノ酸置換の例は、N297のグリシンまたはアラニンによる置き換えである。
【0090】
さらに別の実施態様において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、脱グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠如している)。グリコシル化は、例えば抗原への抗体の親和性を増加させるように変更されてもよい。このような炭水化物の改変は、例えば抗体配列内の1つまたはそれより多くのグリコシル化部位を変更することによって達成することができる。例えば、1つまたはそれより多くの可変領域フレームワークのグリコシル化部位の排除を引き起こす1つまたはそれより多くのアミノ酸置換を作製することができ、それによってその部位でのグリコシル化が排除される。このような脱グリコシル化は、抗原への抗体の親和性を増加させる可能性がある。このようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号および6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0091】
加えて、または代替として、変更されたタイプのグリコシル化を有する抗体、例えばフコシル残基の量が低減された低フコシル化抗体またはバイセクティングGlcNac構造を増加させた抗体などを作製することもできる。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。このような炭水化物の改変は、例えばグリコシル化機構が変更された宿主細胞で抗体を発現することによって達成することができる。グリコシル化機構が変更された細胞は、当業界においてすでに説明されており、本開示の組換え抗体を発現させる宿主細胞として使用することができ、それによってグリコシル化が変更された抗体が生産される。例えば、HangらによるEP1176195は、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に崩壊させた細胞株を記載しており、その結果、このような細胞株で発現された抗体は低フコシル化を示すようになる。それゆえに、一実施態様において、本開示の抗体は、低フコシル化パターンを示す細胞株、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が不十分な哺乳類細胞株での組換え発現によって生産される。PrestaによるPCT公報WO03/035835は、バリアントCHO細胞株であるLecl3細胞を記載しており、これは、Asn(297)が連結された炭水化物にフコースを結合させる能力が低減されており、結果としてその宿主細胞で発現された抗体の低フコシル化も引き起こす(Shields, R.L.ら、2002 J. Biol. Chem. 277:26733〜26740も参照)。UmanaらによるPCT公報WO99/54342は、操作された細胞株で発現された抗体がバイセクティングGlcNac構造の増加を示し、結果として抗体のADCC活性の増加を引き起こすように糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株を記載している(Umanaら、1999 Nat. Biotech. 17:176〜180も参照)。
【0092】
本発明の開示によって予期される本明細書における抗体の別の改変は、PEG化もしくはHES化(hesylation)または関連技術である。抗体は、例えば抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるために、PEG化することができる。抗体をPEG化するために、抗体またはそれらのフラグメントは、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などと、1つまたはそれより多くのPEG基が抗体または抗体フラグメントに付着するようになる条件下で反応させる。PEG化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行うことができる。用語「ポリエチレングリコール」は、本明細書で使用される場合、他のタンパク質、例えばモノ(C1〜C10)アルコキシ−もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドなどを誘導体化するのに使用されてきたPEGの形態のいずれかを包含することが意図される。特定の実施態様において、PEG化される抗体は、脱グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化するための方法は当業界において公知であり、本開示の抗体に適用することができる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401384を参照されたい。
【0093】
本発明の開示によって予期される抗体の別の改変は、得られた分子の半減期を増加させるための、少なくとも本開示の抗体の抗原結合領域の、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンまたはそのフラグメントなどへのコンジュゲートまたはタンパク質融合である。このようなアプローチは、例えばBallanceら、EP0322094に記載されている。
【0094】
別の可能性は、得られた分子の半減期を増加させるための、少なくとも本開示の抗体の抗原結合領域の、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンに結合することが可能なタンパク質への融合である。このようなアプローチは、例えばNygrenら、EP0486525に記載されている。
【0095】
具体的な一実施態様において、本開示に係る抗体のエフェクター機能または補体活性化機能は、同じアイソタイプの野生型抗体に比べて低減または排除されている。一形態において、エフェクター機能は、抗体のグリコシル化の低減、抗体アイソタイプを天然にエフェクター機能が低減または排除されたアイソタイプに改変すること、およびFc領域の改変から選択される方法によって低減または排除される。具体的な関連する実施態様において、前記エフェクター機能が低減または排除されたアイソタイプは、IgG4アイソタイプである。
【0096】
本開示の抗体をコードする核酸分子
また、本発明の開示の抗TfR抗体または関連タンパク質をコードする核酸分子も本明細書で開示される。可変軽鎖ヌクレオチド配列の例は、mAb1〜mAb16のいずれか1つの可変軽鎖アミノ酸配列をコードする配列であり、mAb1〜mAb16の配列は、表1および表2から、さらに遺伝子コードを使用して、任意選択で宿主細胞種に応じたコドンバイアスを考慮に入れて、容易に得られる。
【0097】
本発明の開示はまた、哺乳類細胞、例えばCHO細胞株でのタンパク質発現に最適化されたmAb1〜mAb16の配列に由来する核酸分子にも関する。
核酸は、全細胞で提供されてもよいし、細胞溶解産物で提供されてもよいし、または一部精製された形態または実質的に純粋な形態の核酸であってもよい。核酸は、標準的な技術、例えばアルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当業界において周知の他の技術などによって、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば他の細胞核酸またはタンパク質から精製されている場合、「単離されている」または「実質的に純粋にされている」。F. Ausubelら編、1987 Current Protocols in Molecular Biology、Greene PublishingおよびWiley Interscience、ニューヨークを参照されたい。本開示の核酸は、例えばDNAまたはRNAであってもよく、イントロン配列を含有していてもよいし、または含有していなくてもよい。一実施態様において、核酸は、例えばファージディスプレイベクターなどのベクター中に、または組換えプラスミドベクター中に提供されてもよい。
【0098】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学的技術を使用して得ることができる。例えばVHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントはさらに、例えば可変領域遺伝子が全長抗体鎖遺伝子に、Fabフラグメント遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換されるように、標準的な組換えDNA技術によって操作されてもよい。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNAフラグメント(例えば表1で定義されるVLおよびVH)は、別のDNA分子に、または例えば抗体定常領域またはフレキシブルなリンカーなどの別のタンパク質をコードするフラグメントに作動可能に連結される。用語「作動可能に連結される」は、この文脈で使用される場合、例えば、2つのDNAフラグメントによってコードされたアミノ酸配列がフレーム内に残るように、または望ましいプロモーターの制御下でタンパク質が発現されるように2つのDNAフラグメントが機能的な方式で接続されることを意味することが意図される。
【0099】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結させることによって、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当業界において公知であり(例えば、Kabat, E.A.ら、1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、NIH公開番号91−3242を参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であってもよい。一部の実施態様において、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプ、例えばヒトIgG1アイソタイプのなかから選択される。他の実施態様において、重鎖定常領域は、IgG4アイソタイプ、例えばヒトIgG4アイソタイプのなかから選択される。Fabフラグメントの重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結されていてもよい。
【0100】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域であるCLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結させることによって、全長軽鎖遺伝子(同様にFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当業界において公知であり(例えば、Kabat, E. A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、米国保健社会福祉省、NIH公開番号91−3242を参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0101】
scFv遺伝子を作り出すために、VHおよびVLをコードするDNAフラグメントは、VLおよびVH領域がフレキシブルなリンカーによって接続された連続した単鎖タンパク質としてVHおよびVL配列を発現できるように、フレキシブルなリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser)
3をコードする別のフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Birdら、1988 Science 242:423〜426; Hustonら、1988 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879〜5883;McCaffertyら、1990 Bird 348:552〜554を参照)。
【0102】
モノクローナル抗体を生産するトランスフェクトーマの生成
本発明の開示の抗体は、例えば当業界において周知の組換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション方法との組合せを使用して、宿主細胞のトランスフェクトーマで生産することができる(例えば、Morrison, S.(1985)Science 229:1202)。
【0103】
例えば、抗体、またはその抗体フラグメントを発現させるために、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNAは、標準的な分子生物学または生化学的技術(例えば、DNA化学合成、PCR増幅または目的の抗体を発現するハイブリドーマを使用するcDNAクローニング)によってより得ることができ、このようなDNAは、遺伝子が転写および翻訳制御配列に作動可能に連結されるように、発現ベクターに挿入することができる。用語「作動可能に連結される」は、この文脈において、ベクター内の転写および翻訳制御配列が、それらの意図された抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する機能を提供するように、抗体遺伝子がベクターにライゲートされていることを意味することが意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選ばれる。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は別々のベクターに挿入されていてもよく、またはより典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメント上の相補的制限部位とベクターとのライゲーション、または制限部位が存在しない場合、平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域は、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、望ましいアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクターにそれらを挿入することによってあらゆる抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作り出すのに使用することができる。加えて、または代替として、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードしていてもよい。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがフレーム内で抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドであってもよいし、または異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0104】
抗体鎖遺伝子に加えて、本明細書で開示された組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、および抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を包含することが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ、1990)に記載されている。当業者であれば、調節配列の選択を包含する発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現のレベルなどの要因に依存する可能性があることが理解されると予想される。哺乳類宿主細胞発現のための調節配列としては、哺乳類細胞において高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどが挙げられる。代替として、例えばユビキチンプロモーターまたはP−グロビンプロモーターなどの非ウイルス性調節配列も使用することができる。さらにその上、調節エレメントは、例えばSV40初期プロモーター由来の配列を含有するSRaプロモーター系、およびヒトT細胞性白血病ウイルス1型のロングターミナルリピートなどの異なる源由来の配列で構成されていてもよい(Takebe、Y.ら、1988 Mol. Cell. Biol. 8:466〜472)。
【0105】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の開示の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子などを有していてもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、全てのAxelらによる米国特許第4,399,216号、4,634,665号および5,179,017号を参照)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択可能マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を用いたdhfr−宿主細胞で使用するため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0106】
軽鎖および重鎖を発現させるために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される多種多様の技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションおよび同種のものを包含することが意図される。原核または真核宿主細胞のどちらでも本発明の開示の抗体を発現させることが、理論上可能である。真核細胞、例えば哺乳類宿主細胞、酵母または糸状菌における抗体の発現が論じられているが、これは、このような真核細胞、特定には哺乳類細胞が、適切にフォールディングした免疫学的に活性な抗体を集合させ分泌させる可能性が原核細胞より高いためである。
【0107】
具体的な一実施態様において、本開示に係るクローニングまたは発現ベクターは、好適なプロモーター配列に作動可能に連結されたmAb1〜mAb16のいずれか1つの重鎖および軽鎖のコード配列の1つを含む。
【0108】
本開示の組換え抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp、1982 Mol. Biol. 159:601〜621に記載されるように、DHFR選択可能マーカーと共に使用される、UrlaubおよびChasin、1980 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216〜4220に記載のdhfr−CHO細胞など)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞、例えばGS Xceed(商標)遺伝子発現系(ロンザ(Lonza))と併用されるGS CHO細胞株が挙げられる。
【0109】
抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳類宿主細胞に導入されると、抗体は、宿主細胞中で抗体を発現させるのに十分な期間、任意選択で宿主細胞を成長させている培養培地に抗体が分泌されるのに十分な期間にわたり宿主細胞を培養することによって生産される。抗体は、例えば培養培地から、それらの分泌後に、標準的なタンパク質精製方法を使用して回収および精製することができる(例えばAbhinavら、2007、Journal of Chromatography 848: 28〜37を参照)。
【0110】
具体的な一実施態様において、本開示の宿主細胞は、それぞれ好適なプロモーター配列に作動可能に連結されたmAb1〜mAb16の発現に好適なコード配列を有する発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞である。
【0111】
次いで上記宿主細胞は、それぞれmAb1〜mAb16からなる群から選択される本開示の抗体の発現および生産に好適な条件下でさらに培養してもよい。
イムノコンジュゲート
別の形態において、本発明の開示は、治療成分、例えば細胞毒素、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒素などにコンジュゲートされた、本明細書で開示される抗TfR抗体、またはそのフラグメントを特徴とする。このようなコンジュゲートは、本明細書では、「イムノコンジュゲート」と称される。1つまたはそれより多くの細胞毒素を包含するイムノコンジュゲートは、「免疫毒素」と称される。細胞毒素または細胞傷害性物質としては、細胞に有害な(例えば細胞を殺滅する)あらゆる薬剤が挙げられる。例としては、タキサン(taxon)、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、t.コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−ジヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにそれらの類似体または相同体が挙げられる。また治療剤としては、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アブレーション剤(ablating agent)(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)、クロラムブシル(chloraxnbucil)、メルファラン(meiphalan)、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアンスラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も挙げられる。
【0112】
細胞毒素は、当業界において利用可能なリンカー技術を使用して本発明の開示の抗体にコンジュゲートされていてもよい。細胞毒素を抗体にコンジュゲートするのに使用されてきたリンカータイプの例としては、これらに限定されないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチドを含有するリンカーが挙げられる。例えば、リソソーム区画内で低いpHによって切断されやすい、またはプロテアーゼ、例えばカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などの腫瘍組織で優先的に発現されるプロテアーゼなどによって切断されやすいリンカーを選ぶことができる。
【0113】
細胞毒素、リンカーのタイプ、および治療剤を抗体にコンジュゲートするための方法のさらなる議論については、抗体薬物コンジュゲートの総論に関するPanowksi Sら、2014年1月1日;6(1):34〜45も参照されたい。
【0114】
また本発明の開示の抗体を放射性同位体にコンジュゲートして、ラジオイムノコンジュゲートとも称される細胞傷害性の放射性医薬品を生成してもよい。診断または治療に使用するための抗体にコンジュゲートすることができる放射性同位体の例としては、これらに限定されないが、ヨウ素
131、インジウム
111、イットリウム
90、およびルテチウム
177が挙げられる。ラジオイムノコンジュゲートを調製するための方法は、当業界において確立されている。
【0115】
二重特異性または多重特異性分子
別の形態において、本発明の開示の抗TfR抗体を含む二重特異性または多重特異性分子がさらに本明細書で開示される。抗体を、誘導体化するか、または別の機能的な分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体、または受容体の場合はリガンド)に連結して、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。抗体を、実際に誘導体化するか、または1つより多くの他の機能的な分子に連結して、2つより多くの異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を生成することもでき、このような多重特異性分子も、本明細書で使用される場合、用語「二重特異性分子」に包含されることが意図される。二重特異性分子を作り出すために、本発明の抗体は、二重特異性分子が生じるように、例えば別の抗体、抗体フラグメント、ペプチドまたは結合模倣剤などの1つまたはそれより多くの他の結合分子に(例えば、化学的カップリング、遺伝学的な融合、非共有結合による結合またはそれ以外の方法で)機能的に連結させることができる。
【0116】
したがって、本発明の開示は、TfR、例えばmAb1〜mAb16のいずれか1つの1つの抗原結合部位のための少なくとも1つの第1の結合特異性と、第2の標的エピトープのための第2の結合特異性とを含む二重特異性分子を包含する。例えば、第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるTfRの別のエピトープである。
【0117】
加えて、二重特異性分子が多重特異性である実施態様の場合、分子は、第1および第2の標的エピトープに加えて第3の結合特異性をさらに包含していてもよい。
一実施態様において、本明細書で開示される二重特異性分子は、結合特異性として、少なくとも1つの抗体、またはそれらの抗体フラグメント、例えばFab、Fab’、F(ab’)
2、Fv、ユニボディまたは単鎖Fvなどを含む。また抗体は、軽鎖または重鎖二量体、またはそれらのあらゆる最小のフラグメント、例えばLadnerらの米国特許第4,946,778号に記載されるようなFvまたは単鎖コンストラクトなどであってもよい。
【0118】
本明細書で開示される二重特異性分子で採用することができる他の抗体は、マウス、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体である。
本発明の開示の二重特異性分子は、当業界において公知の方法を使用して結合特異性を有する成分をコンジュゲートすることによって調製できる。例えば、二重特異性分子のそれぞれの結合特異性を別々に生成し、次いで互いにコンジュゲートしてもよい。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合、共有結合によるコンジュゲーションのために様々なカップリング剤または架橋剤を使用することができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、S−アセチルチオ酢酸N−スクシンイミジル(SATA)、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)、o−フェニレンジマレイミド(oPDM)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジル(SPDP)、および4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スルホスクシンイミジル(スルホ−SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovskyら、1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu、MAら、1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:8648を参照)。他の方法としては、Paulus、1985 Behring Ins. Mitt. 78号、118〜132;Brennanら、1985 Science 229:81〜83)、およびGlennieら、1987 J. Immunol. 139: 2367〜2375に記載されている方法が挙げられる。
【0119】
代替として、両方の結合特異性を同じベクターにコードして、同じ宿主細胞中で発現させ、集合させてもよい。この方法は、二重特異性分子がmAb×mAb、mAb×Fab、Fab×F(ab’)
2またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本開示の二重特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定基を含む単鎖分子、または2つの結合決定基を含む単鎖二重特異性分子であってもよい。
【0120】
二重特異性分子のそれらの特異的な標的への結合は、例えば、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害およびアポトーシス)、またはウェスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらのアッセイのそれぞれは、一般的に、目的の複合体に特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を採用することによって、特定の関心のあるタンパク質−抗体複合体の存在を検出する。
【0121】
本発明の開示の抗体は、人工T細胞受容体(キメラT細胞受容体、またはキメラ抗原受容体(CAR)としても公知)を調製するのにも使用することができる。例えば、抗体の可変領域を使用して、スペーサーを介してTCRの膜貫通ドメインおよびシグナル伝達エンドドメイン(例えばCD3ゼータ)に連結されたscFvを形成することができ、さらにT細胞表面で生産させることができる。このようなCARは、例えば増殖性障害を処置するための養子移入療法で使用することができる。
【0122】
医薬組成物
別の形態において、本発明の開示は、医薬的に許容される担体と共に製剤化された、本明細書で開示された抗体の1つまたは組合せ、例えばmAb1〜mAb16からなる群から選択される1つの抗体を含有する組成物、例えば医薬組成物を提供する。このような組成物は、上述したような(例えば、2つまたはそれより多くの異なる)抗体、またはイムノコンジュゲートまたは二重特異性分子の1つまたは組合せを包含していてもよい。
【0123】
本明細書で開示される医薬組成物はまた、併用療法で、すなわち他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。例えば、併用療法は、少なくとも1つの抗ウイルス剤、抗炎症剤または別の増殖抑制剤と組み合わされた、本発明の開示の抗TfR抗体、例えばmAb1〜mAb16からなる群から選択される1つの抗体を包含し得る。併用療法で使用できる治療剤の例は、以下の本開示の抗体の使用に関するセクションでより詳細に記載される。
【0124】
「医薬的に許容される担体」は、本明細書で使用される場合、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、および同種のものを包含する。担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に好適なものと予想される。一実施態様において、担体は、皮下経路に好適なものと予想される。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体、イムノコンジュゲート、または二重特異性分子は、化合物を不活性化する可能性がある酸および他の天然条件の作用から化合物を保護する材料でコーティングされていてもよい。
【0125】
医薬的に許容される担体の一例は、滅菌リン酸緩衝塩類溶液である。他の好適な担体は、当業者周知である(例えば、Gennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、第19版、1995)を参照)。製剤は、1つまたはそれより多くの賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面上のタンパク質損失を防止するアルブミンなどをさらに包含していてもよい。
【0126】
医薬組成物の形態、投与経路、投薬およびレジメンは、当然ながら、処置しようとする状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重、および性別などによって決まる。
本開示の医薬組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下または眼球内投与などのために製剤化することができる。
【0127】
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤のために医薬的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特定には、等張の滅菌塩類溶液(リン酸モノナトリウムまたはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムおよび同種のもの、またはこのような塩の混合物)であってもよいし、または場合に応じて滅菌水または生理的塩類溶液の添加時に、注射用溶液の調製を許容する、乾燥した、特にフリーズドライした組成物であってもよい。
【0128】
投与に使用される用量は、様々なパラメーターに応じて、特定には使用される投与様式に応じて、関連する病状に、または代替として処置の望ましい持続時間に適合させることができる。
【0129】
医薬組成物を調製するために、有効量の抗体は、医薬的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散させてもよい。
注射用途に好適な医薬の形態としては、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、落花生油または水性プロピレングリコールを包含する製剤;および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末または凍結乾燥物が挙げられる。いずれの場合でも、このような形態は、滅菌されていなければならず、さらに、容易に注射器で使用できる程度に流体でなければならない。これらは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、さらに、例えば細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。
【0130】
遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液は、好適には例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と混合された水中で調製することができる。また分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で調製することもでき、油中で調製することもできる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有する。
【0131】
本開示の抗体は、中性または塩の形態で組成物に配合することができる。医薬的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離のアミノ基で形成される)が挙げられ、例えば塩化水素酸またはリン酸などの無機酸で、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される酸付加塩が挙げられる。また遊離のカルボキシル基で形成された塩も、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基から、さらに、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導することもできる。
【0132】
担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、および同種のもの)、好適なそれらの混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要な粒度の維持によって、界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同種のものによって行うことができる。多くの場合において、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを包含することがより好ましいと予想される。注射用組成物の持効性吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによって行うことができる。
【0133】
滅菌注射用溶液は、活性化合物を、必要な量で適切な溶媒に、必要に応じて上記で列挙された様々な他の成分と共に取り込むこと、それに続いてろ過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌した活性成分を、基礎となる分散媒および上記で列挙されたものからの必要な他の成分を含有する滅菌したビヒクルに取り込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥およびフリーズドライ技術であり、それにより、前もって滅菌ろ過した活性成分に加えてあらゆる追加の望ましい成分の溶液からそれらの粉末が得られる。
【0134】
極めて迅速に浸透させて、高濃度の活性薬剤を小さい腫瘍領域に送達するために、溶媒としてDMSOの使用が想定される場合、直接注射のためのより濃縮された、または高度に濃縮された溶液の調製も予期される。
【0135】
製剤化されたら、溶液は、投与製剤に適合する方式で、さらに治療上有効であるような量で投与されると予想される。製剤は、例えば上述した注射用溶液のタイプなどの様々な剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルおよび同種のものも採用することができる。
【0136】
水溶液中での非経口投与の場合、例えば、溶液は、好適には必要に応じて緩衝化され、液体希釈剤はまず十分な塩類溶液またはグルコースで等張にされると予想される。これらの特定の水溶液は、特に静脈内、筋肉内、皮下および腹膜内投与に好適である。この点について、採用することができる滅菌水性媒体は、本発明の開示の観点から当業者公知であると予想される。例えば、1回の投薬量を1mlの等張NaCl溶液に溶解させて、1000mlの皮下注入用流体に添加してもよいし、または提唱される注入部位に注射してもよい(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照)。処置される対象の状態に応じて、多少の投薬量の変動が必然的に生じる可能性がある。いずれの場合においても、投与の担当者が個々の対象につき適切な用量を決定すると予想される。
【0137】
本開示の抗体は、約0.0001から1.0ミリグラム、または約0.001から0.1ミリグラム、または約0.1から1.0、またはさらには1.0から約10ミリグラム/用量が含まれるように治療混合物中に配合されてもよい。また複数回の用量を投与することもできる。
【0138】
例えば静脈内または筋肉内注射などの非経口投与のために製剤化された化合物に加えて、他の医薬的に許容される形態としては、例えば、経口投与のための錠剤または他の固体;持続放出カプセル;および現在使用されている他のあらゆる形態が挙げられる。
【0139】
特定の実施態様において、抗体を宿主細胞に導入するために、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が予期される。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者公知である。
【0140】
ナノカプセルは、一般的に、化合物を安定で再現可能な方法で閉じ込めることができる。細胞内におけるポリマーの過剰負荷による副作用を回避するために、このような超微細な粒子(約0.1μmのサイズ)は、一般的に、インビボで分解可能なポリマーを使用して設計される。これらの必要条件を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子が本発明の開示で使用するために予期され、このような粒子は、容易に作製することができる。
【0141】
リポソームは、水性媒体中に分散されているリン脂質から形成され、自発的に多層同軸の二分子層小胞(多層小胞(MLV)とも称される)を形成する。MLVは、一般的に25nmから4μmの直径を有する。MLVを超音波破砕すると、200から500Åの範囲の直径を有し、コア中に水溶液を含有する小型単層小胞(SUV)の形成が起こる。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度および2価カチオンの存在に依存する。
【0142】
本開示の抗体またはタンパク質の使用および方法
本発明の開示の抗体またはタンパク質は、インビトロおよびインビボでの診断的および治療的有用性を有する。例えば、これらの分子は、例えばインビトロまたはインビボで培養物中の細胞に投与してもよいし、または様々な障害を処置、予防または診断するために例えばインビボで対象に投与してもよい。
【0143】
本開示の抗体は、細胞の増殖を阻害できることに加えて、例えばT細胞などの高度に増殖する細胞のアポトーシスも誘導することができる。
本発明の開示の抗TfR抗体またはタンパク質を、薬物として、特定には、細胞増殖性の障害、例えば、高いレベルのTfRを発現する腫瘍、より具体的には、血液系腫瘍、例えばリンパ腫など、特定にはATL、MCL、ホジキン病、大細胞型B細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、急性白血病(骨髄性およびリンパ性)、加えて固形腫瘍、例えば腎臓癌、肺がん(小細胞)などを処置、予防または診断することにおいて使用するための薬物として使用することが、本明細書において予期される。
【0144】
HTLV−1関連障害を処置、予防または診断することにおいて使用するための、特定には、HAM/TSP、多発性筋炎、および関節炎などのHTLV−1感染に関連する炎症性疾患におけるウイルス負荷量を低減するための、本発明の開示の抗体がさらに開示される。
【0145】
本開示はまた、治療上効率的な用量の本発明の抗体を含む組成物を投与することによって、ヒト血液細胞におけるトランスフェリンの取り込みを減少または抑制するための方法にも関する。
【0146】
上記で開示されたように使用するための抗体またはタンパク質は、例えば上述の疾患を処置または予防するために、唯一の活性成分として、または他の薬物、例えば抗ウイルス剤、抗炎症剤または細胞傷害剤、増殖抑制剤、化学療法剤もしくは抗腫瘍剤と併用して、例えばこれらの薬物に対するアジュバントとして、またはこれらの薬物と併用されるアジュバントとして、投与されてもよい。
【0147】
例えば、上記で開示されたように使用するための抗体は、AZT、IFN−アルファ、抗CD20mAb、抗CD25mAb、化学療法剤と組み合わせて使用してもよい。
好適な抗新生物剤としては、これらに限定されないが、アルキル化剤(例えばシクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、ニトロソウレア(nitrosurea)、テモゾロミドなど)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンなど)、タキサン(例えばパクリタキセル、ドセタキセルなど)、エポチロン、トポイソメラーゼIの阻害剤(例えばイリノテカンまたはトポテカンなど)、トポイソメラーゼIIの阻害剤(例えばエトポシド、テニポシド、またはタフルポシド(tafluposide)など)、ヌクレオチド類似体および前駆類似体(例えばアザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、フルオロウラシル(flurouracil)、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、メトトレキセート、またはチオグアニンなど)、ペプチド系抗生物質(例えばカルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンなど)、レチノイド(例えばトレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテンなど)、ビンカアルカロイドおよび誘導体(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンなど)、キナーゼ阻害剤などの標的療法(例えばイブルチニブ、イデラリシブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギブなど)、プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブ、カーフィルゾミブなど)、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えばボリノスタットまたはロミデプシンなど)を挙げることができる。
【0148】
前述の内容に従って、本発明の開示はよりさらなる形態を提供する:
上記で定義された方法は、治療有効量の本開示の抗TfR抗体またはタンパク質と、少なくとも1つの第2の医薬物質とを、例えば同時または順番に共投与することを含み前記第2の医薬物質は、例えば上記で示したような抗ウイルス剤または増殖抑制剤である。
【0149】
一実施態様において、本開示の抗体またはタンパク質は、TfRのレベル、またはTfRを含有する細胞のレベルを検出するのに使用することができる。これは、例えば、抗体とTfRとの間で複合体の形成を可能にする条件下でサンプル(例えばインビトロのサンプルなど)および対照サンプルを抗TfR抗体と接触させることによって達成することができる。抗体とTfRとの間で形成されたあらゆる複合体が検出され、サンプルと対照とで比較される。例えばELISAおよびフローサイトメトリーアッセイなどの標準的な検出方法が当業界において周知であり、本開示の組成物を使用して実行することができる。
【0150】
したがって、一形態において、本開示はさらに、サンプル中のTfR(例えば、ヒトTfR抗原)の存在を検出する、またはTfRの量を測定するための方法であって、抗体またはその部分とTfRとの複合体の形成を可能にする条件下で、サンプルおよび対照サンプルを、本開示の抗体もしくはタンパク質、またはTfRに特異的に結合するそれらの抗原結合領域と接触させることを含む、方法を提供する。次いで複合体の形成が検出され、ここでサンプルと対照サンプルとを比較した複合体形成における差が、サンプル中のTfRの存在を示す。
【0151】
また、本明細書で開示された組成物(例えば、抗体、タンパク質、ヒト化抗体、コンジュゲート抗体および多重特異性分子)および使用説明書からなるキットも本発明の開示の範囲内である。キットはさらに、少なくとも1つの追加の試薬、または1つまたはそれより多くの追加の抗体またはタンパク質(例えば、第1の抗体とは異なる標的抗原上のエピトープに結合する相補活性を有する抗体)を含有していてもよい。キットは、典型的には、キット内容物の意図された使用を表示するラベルを包含する。ラベルという用語は、キット上にもしくはキットと共に供給された、またはそれ以外の方法でキットに付随するあらゆる書込みまたは記録材料を包含する。キットは、患者が、上記で定義されたような抗TfR抗体処置に応答すると予想されるグループに属するかどうかを診断するためのツールをさらに含んでいてもよい。
【0152】
詳細に説明されてきた本発明をここで以下の実施例によってをさらに例示するが、これらは単なる例示にすぎず、さらなる限定を意味しない。
【実施例】
【0153】
方法
1.ELISAによる親和性の試験
抗体の特異性を決定するために、ELISA試験を以下のプロトコールを使用して適用することができる。組換えヒトTfR(R&Dシステムズ(R&D Systems)から入手されるもの等、カタログ番号2474−TR)を96ウェルのプレート上に一晩かけて直接コーティングし、抗体(マウスおよびヒト化mAb)の数種の希釈物(10種)と共にインキュベートする前に2回洗浄して(希釈は、50μg/mlの濃度から開始して0,001μg/mlまでであり得る)、室温で1時間インキュベートする。2回の洗浄後、二次抗体ヤギ抗ヒトIgGを室温で1時間、暗所でインキュベートし、2回洗浄し、450nmで吸光度を読み取る前に10分間TMB溶液と共にインキュベートする。
【0154】
2.表面プラズモン共鳴(ビアコア(Biacore)システム)を使用した親和性の決定
K
D値の決定のために、表面プラズモン共鳴技術を、後述するようなビアコア(Biacore)(商標)技術を使用して適用することができる:
ヒスチジンタグを有するヒトTfR(R&Dシステムズから入手されるもの等、カタログ番号2474−TR)を、共有結合で固定されたペンタ−His mAb CM5センサーチップ上に通過させた後に結合させた。10種の異なる抗体濃度(1〜500nM)を抗His/TfR−His表面全体に4分かけて注入し、複合体の解離を5分間追跡した。時間の単一指数関数を使用したBIAevalutionソフトウェアに実装された非線形二乗アルゴリズムを用いて、結合および解離プロファイルの両方を分析する。
【0155】
3.ADCCアッセイ
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害は、抗体ベースの薬物を使用した標的がん細胞の殺滅にとって望ましいメカニズムである。抗体は、細胞表面上の標的抗原に結合する。さらに標的が結合した抗体のFcエフェクター部分がエフェクター細胞(優勢にはナチュラルキラー細胞)の細胞表面上のFcγRIIIa受容体にも結合したら、2つの細胞型の複数の架橋が生じ、ADCCの経路活性化がもたらされる。標的細胞の殺滅は、この経路活性化の終点であり、エフェクター細胞としてドナーの末梢血単核細胞(PBMC)またはナチュラルキラー(NK)細胞の部分集団を使用する典型的なADCCバイオアッセイで使用される。ADCCレポーターバイオアッセイコンプリートキット(ADCC Reporter Bioassay Complete Kit、プロメガ(Promega)、G7015)は、抗CD20ベースのADCCレポーターバイオアッセイを実行するのに必要な要素および試薬の全てを含有する。ADCCレポーターバイオアッセイは、ADCC経路活性化における初期のポイントでは、代替の読み出し、エフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞核内因子)経路を介した遺伝子転写の活性化を使用する。加えて、ADCCレポーターバイオアッセイは、エフェクター細胞としてホタルルシフェラーゼの発現を開始させるFcγRIIIa受容体およびNFAT応答エレメントを安定して発現する操作されたJurkat細胞を使用する。ADCCにおける抗体生物活性は、NFAT経路活性化の結果として生産されたルシフェラーゼを介して定量化され、エフェクター細胞におけるルシフェラーゼ活性は、発光の読み出しで定量化される。ヒト化mAbと比較するための陽性対照として、キットは、抗CD20抗体を提供する。
【0156】
4.HL−60およびPHAで活性化されたT細胞のアポトーシス誘導アッセイ
アポトーシスアッセイのために、24ウェルプレートで、400μl中細胞100×10
3個/ウェルの濃度で細胞をインキュベートした。その後、細胞は、マウスまたはヒト化抗体での数種の希釈物(200μg/mlから3μg/mlまで)の存在下で3および4日インキュベートされる。インキュベーション時間後、細胞を遠心分離して、アネキシンVおよびTropo3の存在下でフローサイトメトリー分析の前に15分間標識する。
【0157】
5.生産性アッセイ(400ml)
生産性の試験のために、重鎖について、VH遺伝子を合成し、発現ベクターpXCIgG(ΔK)にクローニングした。軽鎖はこれまでにpXCカッパベクターにサブクローニングされていた。400mlの体積(振盪フラスコ)で、16種の抗体をCHOK1SV GS−KO細胞で一時的に発現させた。生産された抗体を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。全ての抗体バリアントにつき、予測された吸光係数(1.49)を使用して抗体濃度を決定した。バリアントの完全性を、還元および非還元条件の両方でのSDS−PAGEにより決定した。
【0158】
実施例mAb1〜mAb16
表1に記載される実施例mAb1〜mAb16は、従来の抗体組換え生産および精製プロセスを使用して生産することができる。
例えば、コード配列は、哺乳類生産細胞株での組換え発現のために生産ベクターにクローニングされる。
以下の表4および5に、本発明を実施するのに有用な、特定には本発明の開示の核酸、発現ベクターおよび抗体を生産するための、詳細なアミノ酸およびヌクレオチド配列を提供する。
【0159】
【表4】
【0160】
【表5-1】
【0161】
【表5-2】
【0162】
結果
A24の機能的なヒト化抗体の設計
ヒト化
ヒト化手順を下記で概説されるようにして実行した:
1.親抗体のドメインおよび領域を同定した。
2.親抗体の配列を一連の参照配列と並べた。
3.親タンパク質の3次元構造モデルを構築した。
4.収集されたデータに基づいて各位置を置換する可能性に関する最初の評価を行い、位置を類別した。
5.必要であればヒト化バリアントの構造モデルを構築して、可能性のある置換の構造的な分析に関して親のモデルと比較した。
6.親配列とアクセプター配列との間で異なる位置を分析することによってCDRグラフティングを行った。寄与する位置は概ね保持されたが、アクセプターフレームワークとの親和性および適合性へのそれらの生じ得る影響に基づき、このような置換が比較的好都合である場合のみ置換された。
7.ヒト化軽鎖および重鎖のバリアントの組合せの最終的なセットを設計した。
【0163】
配列の注釈
保存されたドメインデータベース(CDD)(Marchler-Bauerら、2011)を使用して、各アミノ酸鎖のドメインの内容および各ドメインの隣接する境界を決定した。可変ドメインの境界を、数々の一般的に使用される定義(KabatおよびWu、1991、ChothiaおよびLesk、1987年であり、これらは、Al-Lazikaniら、1997、HoneggerおよびPlucktuhn、2001でアップデートされた)に従って相補性決定領域(CDR)の境界と共に正確に決定した。アップデート済みのChothiaのCDR定義(Al-Lazikaniら、1997)が使用されており、その場合の位置的な番号付けには1987年のChothiaの番号付けが使用されている。
【0164】
配列アライメント
親配列のマウスおよびヒト生殖細胞系配列に対する多重アライメントを、MAFFT(Katohら、2002)を使用して生成し、各アライメントにおけるエントリーを親配列に対する配列同一性(SeqID)に従って順番付けした。100%のSeqIDでクラスター化し、冗長なエントリーを排除することによって、参照セットを配列の固有のセットにまで減らした。
【0165】
臨界的な位置における残基の同定
抗体Fvは、VH/VLの鎖間境界を構成するか、またはCDRのうち5つにつき定義された正規の構造の別個のセットに関与する多数の臨界的な位置を有し(ChothiaおよびLesk、1987、MartinおよびThornton、1996、Al Lazinikiら、1997)、これらの位置は、それらに置換が提唱される前に、詳細に考慮されると予想される。親抗体のヒト生殖細胞系に対する配列アライメントに基づき、最も近くに適合したエントリーを同定した。最適なヒト生殖細胞系のアクセプターとしての同定は、以下に列挙した順番付けされた基準:
1.フレームワーク全体にわたる配列同一性、
2.同一なまたは適合する鎖間境界の残基、
3.親CDRの正規のコンフォメーションを有する支持ループ、
4.生殖細胞系の重鎖および軽鎖の組合せが発現された抗体に見出されること
に基づきなされた。
【0166】
3Dモデルの構築
親マウスの抗体およびそのバリアントのFv領域の構造モデルを、ロンザのモデリングプラットフォームを使用して生成した。フレームワーク(FR)および相補性決定領域(CDR)に加えて全長Fvの候補の構造テンプレートフラグメントを、標的に対するそれらの配列同一性、加えてテンプレート構造の定性的な結晶学的尺度、例えば解像度(オングストローム(Å)で)などに基づいて社内の抗体データベースからスコア付けし、ランク付けし、選択した。
【0167】
FRテンプレートに対してCDRを構造的に並べるために、CDRテンプレート中にCDRのいずれかの側に5つの残基を入れた。オーバーラップするセグメントに基づいてフラグメントのアライメントを生成し、構造的な配列アライメントを生成した。テンプレートフラグメントをアライメントと共にMODELLERによって加工した(Saliら、1993)。
【0168】
このプロトコールは、並べられた構造テンプレートのセットから生じるコンフォメーション上の制約を作り出す。制約を満たす構造の全体的調和は、コンジュゲートの勾配と模擬されたアニーリング最適化手順によって作り出される。この全体的調和から、タンパク質構造およびコンフォメーション上の制約の達成のスコアから得られるエネルギースコアに基づき1つまたはそれより多くのモデル構造が選択される。モデルを検査し、標的とテンプレートとで異なる位置の側鎖を、側鎖最適化アルゴリズムを使用して最適化し、エネルギーを最小化した。
【0169】
一連の可視化およびコンピューターツールを使用して、コンフォメーション上のCDRの変動に加えて、ドメインおよび領域のコアのおよび局所的なパッキングならびに表面分析を評価し、1つまたはそれより多くの好ましいモデルを選択した。
【0170】
モデル化された構造の比較
親のおよびヒト化Fv領域の構造モデルを上述したように個々にモデル化して、バリアントモデルが、親のモデル構造へのいかなる固有のバイアスも伴わずに構築されたことを確認する。しかしながら、ヒト化バリアントの親の配列に対する高い配列同一性のために、しばしば同一な構造テンプレートが多くのモデルで選択されることになる。
【0171】
異なる置換の親和性および安定性への影響を評価するために、多数の構造的な基準が使用される。主要な基準は、溶媒の接近性、局所的な原子のパッキング、および予測された抗原結合境界またはFv二量体の境界に対する置換の配置である。主要な位置において、不利な溶媒和状態、悪い原子間の接触または不適切な残基の不良な設置が観察されれば、可能性のある置換が却下される。他の基準、例えば静電作用、水素結合パターンまたは可能性のある水素結合パターンなども、置換の適性を評価するために使用される。一連の臨界的な位置が、正規のCDRクラス、個々のドメインコアのパッキング、またはドメイン間の境界を支持することにおいて役割を果たしていることから、置換の承認に関して一部の位置が他の位置より好適である。
【0172】
可能性のある置換の評価
親のフレームワークとアクセプターフレームワークとで異なる、または予測されたエピトープに近い全ての位置を、結合親和性および安定性に対するそれらの可能性のある影響に基づいて評価した。
【0173】
この類別に寄与する、親和性および安定性の両方に関する関係から生じる多くの要因がある。分類に寄与する要因は、以下の通りである:
● 抗原結合に関与する位置
● 臨界的な位置
〇 VH/VL境界中の保存された残基
〇 正規のCDRクラスを決定する位置
● CDRからの距離
● 参照アライメント中の位置における保存または変動
● 溶媒の接近性
● 局所的な原子のパッキング
● 局所的な二次構造
● 静電作用
● 水素結合パターン
● 可能性のある水素結合
● 翻訳後修飾
〇 N−グリコシル化
〇 脱アミド。
【0174】
初期において、臨界的な位置は、VH/VL境界中の臨界的な位置、すなわちCDRコンフォメーションの決定を助ける位置、または参照アライメント中で高度に保存された位置にあることが決定されたChothiaのCDRでの位置と定義される。多くの位置は保存されており、少数の群の、または1つのみのタイプのアミノ酸しか受容しないと予想される。
【0175】
最適なアクセプターフレームワーク選択
親の可変ドメインをヒト生殖細胞系と比較する配列アライメントを生成した。全体的な配列同一性、適合している境界の位置および同様にクラス分けされたCDRの正規の位置を考慮したところ、軽鎖はそれでもなお数々の等しく好適なアクセプターフレームワークを有していた。しばしばあるアクセプターフレームワークがある領域にとってわずかに好適であったが、別の領域にとってはそれほど好適ではなかった。結果として2つの軽鎖アクセプターフレームワーク、VK6−A26およびVK3−L6が選択された。
【0176】
重鎖は、ヒト生殖細胞系VH7−7−4.1と最もよく適合した。VH7生殖細胞系ファミリーは、VH1ファミリーに取り入れることができる唯一のメンバーを含有する(Knappikら、2000)。VH7生殖細胞系はVH1生殖細胞系より低い頻度で見出される可能性が高いため、後者をアクセプターフレームワークとして使用するのにより好ましいとみなした。しかしながら、復帰突然変異が起こる可能性がある位置を分析したところ、VH7生殖細胞系はすでに適切な残基を含有していたことが明確になった。したがって2つのIGHV生殖細胞系;VH7−7−4.1およびVH1−1−03をアクセプターフレームワークとして使用した。
【0177】
FR4およびJ−セグメントにわたり、J−セグメント遺伝子をA24親配列と比較した。JK4およびJH4が軽鎖および重鎖それぞれにとって最良の適合であると同定し、それゆえにJ−セグメントのアクセプターフレームワークとして選択した。
【0178】
ヒト化
親のフレームワークとアクセプターフレームワークとで異なる残基を有する全ての位置のリストを作成した。全ての位置を分析して、単離と他の可能性のある置換の状況の両方を検討した。各位置をランク付けし、ヒト化バリアントにおいてどの残基を置換および評価すべきかに関する示唆を提案した。軽鎖について、3つのヒト化された鎖が提案され、そのうち1つはアクセプターVK3−L6を使用し、2つはアクセプターVK6−A26を使用しており、そのうち1つは、親配列から保持された追加の寄与位置を有していた(復帰突然変異)。重鎖について、2つのヒト化された鎖が提案され、そのうち1つはそれぞれ選択されたアクセプターを使用していた。VH7−7−4.1グラフトは、より保存的である。表6を参照されたい。
【0179】
【表6】
【0180】
6つのヒト化抗体の第1の世代はA24の機能特性を維持できなかった
前のセクションに記載した方法に基づいて、本発明者らはまず、A24の3つのヒト化軽鎖バリアント(以降、VL1、VL2およびVL3と呼ばれる)およびA24の2つのヒト化重鎖バリアント(以降、VH1およびVH2と呼ばれる)を設計した。本発明者らは、A24の対応するVHおよびVLをVH0およびVL0と呼んだ。
【0181】
本発明者らは、以下のヒト化VHおよびVLならびにヒトIgG1アイソタイプの組合せを有する以下の6つのヒト化抗体を生成した:
INA01バリアント1ヒト化抗体:VH1/VL1
INA01バリアント2ヒト化抗体:VH2/VL1
INA01バリアント3ヒト化抗体:VH1/VL2
INA01バリアント4ヒト化抗体:VH2/VL2
INA01バリアント5ヒト化抗体:VH1/VL3
INA01バリアント6ヒト化抗体:VH2/VL3。
【0182】
本発明者らは、これらの6つのヒト化抗体を、上述したアッセイに従ってHL−60細胞のアポトーシス誘導に関してアッセイし、このようなアポトーシスを誘導する特性を、同じヒトIgG1アイソタイプを有する参照マウス抗体A24(VH0/VL0)のキメラ形態と比較した。
図1に結果を示す。
【0183】
図1に示されるように、本発明者らは、驚くべきことに、全ての試験ヒト化抗体がそれらの結合特性を失っていたことを見出した。これは、バリアントの一部が、その親マウスのA24抗体に共通する全ての6つのCDRを有していたことを考慮すると、特に驚くべきことである。
【0184】
5つの新しいヒト化抗体の生成
次いで本発明者らは新しい重鎖(VH3)を設計し、以下のヒト化抗体を生成した:
INA01バリアント7ヒト化抗体:VH0/VL1
INA01バリアント8ヒト化抗体:VH3/VL1
INA01バリアント9ヒト化抗体:VH3/VL2
INA01バリアント10ヒト化抗体:VH3/VL3
INA01バリアント11ヒト化抗体:VH3/VL0。
【0185】
ここでも本発明者らは、これらのヒト化抗体を、上述したHL−60アポトーシス誘導アッセイに基づき、親マウスのA24可変領域およびヒトIgG1アイソタイプを有する抗体に相当するキメラINA01と比較した場合のそれらのアポトーシスを誘導する能力に関して試験した。
図2に結果を示す。
【0186】
図2に示されるように、ヒト化抗体は、ここでも少なくとも部分的にそれらのアポトーシスを誘導する特性を失っていた。
6つの新しいヒト化抗体の生成
上記の3つの新しい抗体で得られた結果に基づき、本発明者らはここでも3つの新しい軽鎖および2つの新しい重鎖を設計した。
【0187】
特定には、本発明者らは、親抗体A24の有利な特性をなお維持しながら免疫原性を低減させるアミノ酸の変化を予測するためのインシリコ分析を(フレームワーク中かまたはCDR領域中かにかかわらず)使用した。
【0188】
現行の分析において、iTope(商標)を使用して、ヒトMHCクラスIIへのプロミスカスな高親和性結合剤に関するA24由来の配列を分析した。プロミスカスな高親和性MHCクラスII結合ペプチドは、T細胞エピトープの存在と相関すると考えられているが(Hillら、2003 Arthritis Res Ther.(2003) 1:R40〜R48)、中程度のおよび低い親和性の結合剤もT細胞応答を開始させる可能性がある。したがってiTope(商標)を使用して、可能性のあるT細胞エピトープの配置に関する有用な最初の「低い解像度」のスクリーニングを提供した。加えて、配列をTCED(商標)BLASTサーチによって分析して、これまでに他のタンパク質配列のEpiScreen(商標)分析によって同定されたあらゆるT細胞エピトープを位置決めした。
【0189】
表7に示されるように、インシリコ分析のiTope(商標)から、LCDR2におけるアミノ酸置換L53Rおよび/またはS55Tは、免疫原性を低減させる可能性があることが解明された。
【0190】
【表7】
【0191】
それゆえに本発明者らは、3つの新しい軽鎖、すなわちA24のLCDR2と比較した場合、LCDR2中に2つのアミノ酸置換を包含する軽鎖(VL4)、LCDR2中に1つのみのアミノ酸置換を包含する軽鎖(VL5)、およびA24と比較した場合、同一なLCDR2を有する軽鎖(VL6)を試験することを決定した。
【0192】
以下の6つの新しいヒト化抗体をIgG1アイソタイプの定常領域を用いて生成した。
INA01バリアント12VH4/VL4
INA01バリアント13VH5/VL4
INA01バリアント14VH4/VL5
INA01バリアント15VH5/VL5
INA01バリアント16VH4/VL6
INA01バリアント17VH5/VL6。
【0193】
図5aは、VL4、VL5、VL6のアライメントをA24抗体のVLと共に示す。
図5bは、VH4およびVH5のアライメントをA24抗体のVHと共に示す。
本発明者らは、これらのヒト化抗体を、上述したHL−60 72hアポトーシスアッセイに基づき、親マウスのA24可変領域およびヒトIgG1アイソタイプを有する抗体に相当するキメラINA01と比較した場合のそれらのアポトーシスを誘導する能力に関して試験した。
図3に結果を示す。
【0194】
図3に示されるように、全ての6つの新しい試験されたヒト化抗体は、親マウスのA24可変領域およびヒトIgG1アイソタイプを有する抗体に相当するキメラINA01と比較して、現状で類似する、またはよりいっそう優れた特性を有する。
【0195】
ここで驚くべきことに、特定の抗体において、LCDR2に2つのアミノ酸置換を有するバリアント12およびバリアント13は、親キメラINA01抗体と比較して優れた誘導特性を示した。
【0196】
IgGへの変換
4つのリード候補の全長IgG、重鎖(V
H)および軽鎖(V
L)の可変ドメインフラグメントを発現させるために、バリアント12、14、15および17を、Fab発現ベクターから、ヒトIgG4、ヒトIgG1野生型、ヒトIgG1 L234AL235AおよびヒトIgG1N297Aにとって適切な発現ベクターにサブクローニングした。ここで前記ヒトIgG1 L234AL235Aは、本明細書において「AA」と称される。その結果として、以下の表8に記載されるように、16種の本発明に係る抗体、mAb1〜mAb16を生産するための発現ベクターが得られた。
【0197】
【表8】
【0198】
ヒトIgGの一過性発現および精製
細胞を、IgG mAb1〜mAb16の重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターDNAでトランスフェクトした。
【0199】
図4に結果を示す。結果から、生産されたIgG4アイソタイプを有する抗体は、他のアイソタイプ、IgG1および突然変異体サイレントIgG1と比較してより優れた収量で生産されることが解明された。
【0200】
mAb1に関するプロファイリングデータ
【0201】
【表9】
【0202】
意外にも、本発明の抗体は、10nM未満の、さらには1nM未満ものK
D親和性およびEC
50を有し、HL−60アポトーシスアッセイで測定した場合、A24より優れたアポトーシス誘導を有することから、薬物として使用するのに特に好適である。
【0203】
さらに、これらは、予測された免疫原性の低減により、特定には真核細胞株での生産およびヒトへの投与のための、有利な発展特性を有する。
可変領域をコードするコード配列は、例えばL234AL235A突然変異を含有するIgG1 Fcバリアント、またはN297A突然変異を含有するIgG1 Fcバリアントを含むサイレントIgG1抗体を生成するために、好適な発現ベクターおよび細胞株に容易に移すことができる。
【0204】
代替として、可変領域をコードするコード配列はまた、例えばIgG1 Fc野生型を含む、および/またはN297アミノ酸位にグリカンのバイセクティングGlcNAcもしくは低フコシル化を有する、高いADCC活性を有する抗体を生成するために、発現ベクターおよび細胞株に移すこともできる。