(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858215
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】希土類磁石を製造するための出発材料を生産する方法及びプラント
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20210405BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20210405BHJP
H01F 1/053 20060101ALI20210405BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
B22F9/04 E
B22F9/04 C
B22F9/04 B
B22F9/00 C
H01F1/053
H01F41/02 G
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-78815(P2019-78815)
(22)【出願日】2019年4月17日
(65)【公開番号】特開2019-203190(P2019-203190A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】10 2018 112 411.2
(32)【優先日】2018年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509107781
【氏名又は名称】ネッチュ トロッケンマールテヒニク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】フランク ウインター
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム フェルネンゲル
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/146888(WO,A1)
【文献】
特開平04−110404(JP,A)
【文献】
特開平04−083307(JP,A)
【文献】
特開2005−240094(JP,A)
【文献】
特開2015−214745(JP,A)
【文献】
特開2008−042098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石を製造するための粉末状出発材料(AM2)の生産方法であって、
・少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料(M)を準備するステップを含み、
・前記準備した少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料(M)を、粉砕するステップを含み、前記少なくとも1つの磁性原料又は磁性可能原料(M)から粉末状中間製品(ZP)を生成し、前記粉末状中間製品(ZP)の粉末粒子(2)が、角部(3)及び/又は縁部(4)を有し、
・前記粉末粒子(2)の相互摩耗に起因して前記粉末粒子(2)の前記角部(3)及び/又は前記縁部(4)を互いに研磨して、面取りした粉末粒子(12)を含む粉末製品(10)を生成する研磨ステップを含み、
・前記研磨ステップの後に前記粉末製品(10)を2μm〜10μmの大きさで分級するステップを含み、面取り時に生じた微細な摩耗部分(F)を除去し、分級後に、前記面取りした粉末粒子(12)を含むフラクションを、第2希土類磁石(20)を製造するための出発材料(AM2)として使用する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記粉末状中間製品(ZP)における前記粉末粒子(2)の面取りをするのに、前記角部(3)及び前記縁部(4)を研磨する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、研磨工程を研磨装置(40)で実施し、前記研磨装置(40)内で、前記粉末状中間製品(ZP)の前記粉末粒子(2)を移動させることにより、前記粉末状中間製品(ZP)の前記粉末粒子(2)を互いに摩耗させる方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法であって、研磨工程を、保護ガス(S)を使用しつつ実施する方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、前記研磨装置(40)が、収容チャンバを有し、該収容チャンバ内に、前記粉末状中間製品(ZP)の前記粉末粒子(2)を充填すると共に移動させることにより前記粉末粒子(2)が互いに摩耗し、前記収容チャンバの50%〜99%を粉末状中間製品(ZP)で充填する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記収容チャンバ内の残りの空間を、保護ガス(S)で充填する方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の方法であって、前記粉末状中間製品(ZP)における前記粉末粒子(2)の丸み付けを0.25バール〜1.00バールのガス圧力で実施する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記粉末製品(10)に磁場を作用させることで製造する第1希土類磁石(19)が、前記粉末状中間製品(ZP)に磁場を作用させることで製造する希土類磁石(5)に比べて、より大きな磁気値又はより大きな磁気エネルギー密度を有する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、分級後に、前記面取りした粉末粒子(12)を含むフラクションに磁場を作用させることで製造した前記第2希土類磁石(20)が、前記粉末状中間製品(ZP)に磁場を作用させることで製造した希土類磁石(5)に比べて、より大きな磁気値又はより大きな磁気エネルギー密度を有する方法。
【請求項10】
希土類磁石を製造するための、請求項1に記載の方法に従って生産された粉末状出発材料(AM2)の生産プラント(25)であって、
・準備された磁性原料又は磁化可能原料(M)を粉砕することにより粉末状中間製品(ZP)を生産するための少なくとも1個の粉砕装置(30)を備え、前記粉末状中間製品(ZP)が、角部(3)及び/又は縁部(4)を有する粉末粒子(2)を含み、
・前記粉末粒子(2)の相互摩耗に起因して前記粉末粒子(2)の前記角部(3)及び/又は前記縁部(4)を互いに研磨して、前記粉末状中間製品(ZP)における前記粉末粒子(2)を面取りするための研磨装置(40)を備え、
前記粉末粒子(2)の前記角部(3)及び/又は前記縁部(4)の研磨後に、高速回転して前記粉末粒子(2)から面取り時に生じた微細な摩耗部分(F)を除去し、前記粉末粒子(2)を2μm〜10μmの大きさで分級するよう構成された分離装置(50)を更に備え、前記粗粉末フラクションが、前記研磨装置(40)内で形成された面取り粉末粒子(12)を含み、これにより第2希土類磁石(20)を製造するための出発材料(AM2)が生成可能である、プラント。
【請求項11】
請求項10に記載のプラント(25)であって、前記研磨装置(40)が、ガス圧力で作動可能であるプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載の特徴に係る、希土類磁石を製造するための出発材料の生産方法、並びに希土類磁石を製造するための出発材料の生産プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石は、電磁石とは異なり、電流を必要とせずに静磁場を維持する磁化可能材料、例えば、鉄、コバルト、又はニッケルで構成される。永久磁石は、強磁性材料に磁場を作用させることで作り出すことができる。
【0003】
鉄金属(鉄、コバルト、ニッケル)、並びに希土類金属(特に、ネオジム、サマリウム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム、ガドリニウム)で実質的に構成される永久磁石の一群は、希土類磁石と総称される。希土類磁石は、大きな残留磁束密度を有し、従って大きな磁気エネルギー密度を有することを特徴としている。
【0004】
永久磁石は、結晶粉末で構成される。この磁性粉末は、強力な磁場を作用させつつ型内にプレスされる。この場合、磁化軸線を有する各結晶は、磁場方向に整列される。その後、成型体は焼結される。焼結においては、粉末の粉砕成分が加熱によって結合又は圧縮されるが、出発材料が全く溶融しないか又は少なくとも全てが溶融することはない。この場合に成型体は、加圧下で加熱されることが多く、その加熱下における温度は主成分の溶融温度よりも小さく維持されるため、加工体の形態(形状)が維持される。
【0005】
従来技術においては、永久磁石、特にNd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)磁石を製造するために必要な材料を生産する場合、希土類金属を含有する合金を粉末状中間製品、例えば、粗粉砕粉末又は微粉砕粉末に粉砕することが知られている。粉末状中間製品を生産する場合、基本的には従来の粉砕技術、例えば、スチームジェットミルを使用した粉砕技術が適している。
【0006】
希土類金属の産出量は限られており、特に希土類金属の抽出は極めてコストがかかるため、希土類磁石を製造するための材料の生産に使用される希土類金属を含有する合金に加えて、希土類磁石を製造するための材料の生産に関しては再使用及び/又はリサイクルされる使用済み磁石(古い磁石)も益々重要になっている。この場合に使用済み磁石とは、例えば、モータ又は電気機器に使用され、もはや必要とされないか、又はその所望の特性及び/又は性能をもはや満たさないか及び/又は完全に満たさない磁石のことを指す。従って、使用済み磁石はリサイクル材料とも称される。
【0007】
しかしながら、従来の方法、例えば流動床ジェットミル又は同様の粉砕プラントにより、上述したような希土類磁性粉末の微粉砕に際して鋭い角部及び縁部を有する粉末粒子が生成されることは問題である。これら鋭い角部又は縁部は様々な理由により極めて不所望であり、これは特にそのような鋭い縁部を有する粉末で製造された磁石が、丸みを有する粉末粒子、即ち鋭い角部及び縁部を有さない粒子粉末を前提として計算した理論値に比べて、磁気値又は磁気エネルギー密度の点でそれぞれ劣っているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、希土類磁石を製造するための出発材料の生産方法を提供することにより、粉末状中間製品中に存在する粉末粒子の鋭い角部及び縁部が少なくとも容易かつ大幅に減少及び/又は低減され、従ってより高性能の希土類磁石を製造するための最適化された出発材料を得ることである。希土類磁石を製造するための粉末状出発材料を生産する方法は、最適化されるのが望ましい。更に、本発明の課題は、希土類磁石を製造するための出発材料の生産プラントを提供することにより、希土類磁石を製造するための出発材料の生産方法を容易に実施可能とし、希土類磁石を製造するための最適化された出発材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題は、独立請求項に記載の特徴を有する、希土類磁石を製造するための粉末状出発材料の生産方法、並びに希土類磁石を製造するための粉末状出発材料の生産プラントにより解決される。他の有利な実施形態は、従属請求項に記載したとおりである。
【0010】
本発明に係る方法の第1ステップにおいては、少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料を準備する。この原料は、例えば、希土類金属を含有する合金として構成することができる。代替的又は付加的に、磁気リサイクル材料、例えば、モータ及び/又は電気機器に使用され、かつもはやそのモータ及び/又は電気機器においては使用価値がない使用済み磁石を使用することができる。少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料又はリサイクル材料は、Nd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)を含有する合金又はNd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)磁石とするのが好適である。
【0011】
次のステップにおいては、準備した磁性原料又は磁化可能原料が粉砕され、その少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料から粉末状中間製品が形成される。この粉末状中間製品は、角部及び縁部を有する粉末粒子を含む。これら角部及び縁部が原因で、粉末状中間製品で製造された磁石の測定磁気値又は測定磁気エネルギー密度は、磁石の理論的な測定磁気値又は測定磁気エネルギー密度を大幅に下回る。
【0012】
磁性原料又は磁化可能原料の粉砕は、粉砕によって形成される粉末状中間製品の粉末粒子が約2 μm〜10 μm、好適には3 μm〜5 μmの粒径を有するよう行われる。
【0013】
粉砕は、特に粉砕装置、例えば従来既知の粉砕技術で行われる。約100 μm〜300 μmの粒径を有する粗粉末を生産するための第1粗粉砕は、例えば、機械的粉砕プラントを使用することにより及び/又は水素技術を使用することにより行うことができる。微粉砕又は約0.1 μm〜20 μmの粒径を有する微粉末の生産に際しては、微粉砕プラント、例えば流動床ジェットミル又は類似の粉砕プラントが特に保護ガス下で使用される。この場合に使用される保護ガスは、典型的には、窒素又はアルゴンである。
【0014】
本発明に係る方法の更なるステップにおいて、粉末状中間製品の粉末粒子は、面取り、即ち粉末粒子の角部及び縁部は、その大部分が丸み付けされ及び/又は減少され及び/又は研磨される。この場合に得られる丸みを帯びた粉末粒子は、好適には、粉末状中間製品における縁部を有する粉末粒子と実質的に同じ大きさ、即ち約2 μm〜10 μm、好適には3 μm〜5 μmの粒径を有する。
【0015】
粉末状中間製品における粉末粒子の大部分が丸み付けされ及び/又は減少され及び/又は研磨されることを可能とするため、本発明に係るプラントは、粉末状中間製品における角付きの鋭い粉末粒子を面取りするよう構成された研磨装置を備える。研磨装置は、粉末状中間製品が充填される収容チャンバを有する。この場合、粉末状中間製品は、収容チャンバ内で旋回させることにより粉末粒子が互いに擦れ合い、これにより角部及び縁部が減少し、特に摩耗する。研磨装置内への粉末状中間製品の充填及び処理は、好適には、保護ガスの使用下で行われる。粉末状中間製品は、研磨装置内で特に所定の時間、例えば30分〜2時間、好適には約1時間に亘って加工される。研磨装置における収容チャンバは、50%〜99%が粉末状中間製品で充填され、特に収容チャンバの少なくとも80%が充填されるのが好適である。研磨装置の収容チャンバにおける残りの空間は、好適には、使用する保護ガスで充填される。
【0016】
研磨装置としては、例えば、従来の粉砕装置を改良し、一方では粉末状中間製品を改良研磨装置内で激しく旋回させて粉末粒子を互いに擦れ合わせることができる。他方では、研磨工程時に、鋭い破断縁部を新たに生じさせ得る粉末状中間製品の更なる粉砕が行われてはならない。この緩やかな研磨工程は、例えば、研磨装置又は改良粉砕装置が低ガス圧力、特に0.25バール〜1.00バールのガス圧力で作動されることで達成される。この場合、ガス圧力は、粉末状中間製品における粉末粒子の大部分が研磨装置又は改良粉砕装置内で自由に移動できる大きさとしながらも、粉末粒子に作用するエネルギーが更なる粉砕を生じさせるほど大きくならないようにする必要がある。研磨装置又は改良粉砕装置内の粉末粒子の移動により、個々の粉末粒子間で摩擦作用が生じる。この摩擦作用により、粉末状中間製品における鋭い角部及び縁部が大幅に丸み付けられるため、面取りされた粉末粒子を有する最適化粉末製品を得ることができる。
【0017】
この最適化された粉末製品は、第1希土類磁石を製造するための第1出発材料として使用することができる。第1出発材料を使用することによって製造された第1希土類磁石は、上述した粉末状中間製品で製造された磁石よりも著しく良好な磁気値又はより大きな磁気エネルギー密度を有する。
【0018】
代替的に、最適化された粉末製品は、更なる方法ステップにおいて分級工程にかけられることにより、研磨装置内における粉末粒子の摩擦で蓄積する微細な摩耗部分を最適化粉末製品から除去することも想定可能である。この場合、約2 μm〜10 μm、好適には3 μm〜5 μmの大きさを有すると共に、面取りされた粉末粒子だけを含むフラクションが形成される。第2希土類磁石を製造するためにこのフラクションを第2出発材料として使用すれば、更に大きな磁気値又はより大きな磁気エネルギー密度を有する製品を製造することができる。
【0019】
最適化された粉末製品を、微細な摩耗部分を含む微細フラクションと、磁性原料又は磁化可能原料から生産された所望かつ面取りされた粉末粒子を含む粗大フラクションとに分級する分離装置としては、例えば、動的分級機又は高速回転分級機を使用することができる。
【0020】
実験データによれば、面取りされた粉末粒子を使用して製造された第1希土類磁石、並びに特に分級かつ面取りされた粉末粒子を使用して製造された第2希土類磁石は、より良好な磁気特性を示すと共に、特に理論値に近いより大きな磁気値又は磁気エネルギー密度を示す。
【0021】
本発明に係る装置に関連して記載した全ての態様及び実施形態は、本発明に係る方法の態様にも同様に当てはまる場合があることに留意されたい。従って、明細書又は特許請求の範囲において、本発明に係る装置に関する特定の態様及び/又は関連及び/又は効果について言及される場合、その特定の態様及び/又は関連及び/又は効果は本発明に係る方法にも同様に当てはまる。逆もまた然りであり、本発明に係る方法に関連して記載した全ての態様及び実施形態は、本発明に係る装置の態様にも同様に当てはまる場合があることに留意されたい。従って、明細書又は特許請求の範囲において、本発明に係る方法に関する特定の態様及び/又は関連及び/又は効果について言及される場合、その特定の態様及び/又は関連及び/又は効果は本発明に係る装置にも同様に当てはまる。
【0022】
以下、添付図面に基づいて本発明の例示的な実施形態及びその利点を詳述する。図面における個々の要素間の寸法比は、実際の寸法比を必ずしも表すものではない。これは、明瞭性を高める見地から幾つかの形状が簡略表示されており、他の幾つかの形状は拡大表示されているからである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の方法で生産された希土類磁性粉末を示す走査型電子顕微鏡図である。
【
図2】従来の方法で生産された希土類磁性粉末における個々の粒子を例示的に示す略図である。
【
図3】希土類磁石を製造するための最適化された出発材料を示す走査型電子顕微鏡図である。
【
図4】最適化された出発材料における個々の粒子を例示的に示す略図である。
【
図5】少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料に基づく、希土類磁石を製造するための最適化された希土類磁性粉末を生産する個々の方法ステップを示す説明図である。
【
図6】希土類磁石を製造するための粉末状出発材料の生産プラントを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の同一要素又は同一作用を有する要素については、同一参照符号で表すものとする。更に、明瞭性を高める見地から、個々の図面における参照符号は、個々の図面の記載にとって必要なものに限定してある。図面における各実施形態は、本発明に係る装置又は方法を例示するものに過ぎず、限定的なものではない。
【0025】
図1は、従来の方法で生産された希土類磁性粉末の走査型電子顕微鏡図を示し、
図2は、従来の方法で生産された希土類磁性粉末1における個々の粒子2の例示的概略図を示す。希土類磁性粉末1の生産は、例えば、対応する原料を粉砕することで行われる。磁性原料又は磁化可能原料は、鉄、ニッケル、コバルトなどを含有する合金、特に、ネオジム、鉄、並びにホウ素(NdFeB)を含有する合金として構成可能であり、又は使用済み磁石で構成可能であり、又は希土類合金及び使用済み磁石の混合物として構成可能である。磁性原料又は磁化可能原料は、例えば、流動床ジェットミル又は類似の粉砕プラントで粉砕されることにより、微細な希土類磁性粉末1が得られる。この場合、粉末粒子2の平均粒径(d50)は、2 μm〜10 μmの間、好適には3 μm〜5 μmの間にある。
【0026】
図1及び
図2に明示されているように、図示の希土類磁性粉末1は、鋭い角部3及び縁部4を有する粉末粒子2を含む。従来の方法で生産された希土類磁性粉末1が磁石の製造に使用された場合、磁気値又は磁気エネルギー密度が理論値に比べて大幅に下回る磁石5が形成される(
図5参照)。
【0027】
図3は、希土類磁石20を製造するための最適化された第2出発材料AM2の走査型電子顕微鏡図を示し(
図5の記載も参照)、
図4は、最適化された第2出発材料AM2における個々の粒子12,12a,12bの例示的概略図を示す。
【0028】
最適化された第2出発材料AM2は、特に、
図5に関連して以下に詳述するように、本発明の方法によって生産される。最適化された出発材料AM2は、特に、希土類磁性粉末1の粉末粒子2と比べて、丸みを帯びた角部13および丸みを帯びた縁部14を僅かにのみ有する粉末粒子12を含み、とりわけ僅かに丸みを帯びた粉末粒子12a又は丸みを帯びた粉末粒子12bを含む。
【0029】
図5は、少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料Mに基づく、希土類磁石19,20を製造するための最適化された出発材料AM1,AM2、特に最適化された希土類磁性粉末10又は付加的に分級された希土類磁性粉末を生産する個々の方法ステップの説明図を示す。
図6は、希土類磁石20を製造するための粉末状出発材料AM2の生産プラント25の概略図を示す。
【0030】
第1方法ステップにおいては、少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料Mを準備する。少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料Mは、希土類合金及び/又は使用済み磁石、特に、Nd-Fe-B合金及び/又はNd-Fe-B使用済み磁石とするのが好適である。
【0031】
次の方法ステップにおいては、準備した少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料Mを粉砕する。この場合、
図1及び
図2に示すように、少なくとも1つの磁性原料又は磁化可能原料Mから粉末状中間製品ZP、特に角部3及び縁部4を有する粉末粒子2を含む希土類磁性粉末1が生成される。
【0032】
粉砕は、粉砕装置30、例えば従来既知の粉砕技術によって行われる。約100 μm〜300 μmの粒径を有する粗粉末を生産するための最初の粗粉砕は、例えば、ミル31などの機械的粉砕プラントを使用することにより及び/又は水素技術を使用することにより行うことができる。微粉砕又は約0.1 μm〜20 μmの粒径を有する微粉末の生産に際しては、微粉砕プラント、例えば流動床ジェットミル32又は類似の粉砕プラントが特に保護ガスS下で使用される。この場合に使用される保護ガスは、典型的には、窒素又はアルゴンである。このようにして生産された希土類磁性粉末1は、例えば、従来の希土類磁石5を製造するのに使用される。更なる方法ステップにおいては、希土類磁性粉末1を保護ガスS下で研磨装置40内に充填し、その後に保護ガス下Sで所定の時間に亘って移動させる。この場合、希土類磁性粉末1の粒子2が研磨装置40内で旋回する。この方法ステップにおける所定の時間は、0.5時間〜3時間、特に約1時間とするのが好適である。
【0033】
研磨装置40の収容チャンバは、希土類磁性粉末1で完全には満たさない。収容チャンバは、希土類磁性粉末1が粉砕チャンバの50%〜99%を満たすよう充填されるのが好適である。収容チャンバは、特に、希土類磁性粉末1が収容チャンバの少なくとも80%を満たすよう充填される。粉砕チャンバにおける残りの20%は、保護ガスSで満たされる。
【0034】
希土類磁性粉末1を研磨装置40内で激しく旋回させることにより、粉末粒子2の相互摩耗に起因して粉末粒子2の角部3及び縁部4が互いに研磨される。これにより、
図3及び
図4に示すように、面取りされた粉末粒子12を含む最適化された希土類磁性粉末10が生成される。特に、希土類磁性粉末1が研磨装置40内で更に粉砕されることはなく、従って鋭い角部3及び破断縁部4が新たに形成されることはない。
【0035】
研磨装置40は、好適には、低ガス圧力、例えば0.25バール〜1.00バールの間のガス圧力で作動される。この場合にガス圧力は、特に、中間製品ZP又は希土類磁性粉末1が研磨装置40内で旋回できるよう調整されなければならない。これにより角部3及び縁部4が研磨され、
図3及び
図4に示すように、面取りされた粉末粒子12が形成される。ただしこの場合、粉末粒子2,12に作用させるエネルギーは、更なる粉砕が生じるほど大きくあってはならない。従来の方法で生産された希土類磁性粉末1は、
図4に示すように、実質的に丸みを帯びた粉末粒子12bだけが存在するまで研磨装置40内で処理されるのが好適である。
【0036】
面取りを行うことにより、最適化された第1希土類磁石19を製造するのに使用可能な最適化された希土類磁性粉末10が第1出発材料AM1として生成される。ただし、最適化された希土類磁性粉末10は、丸みを帯びた粉末粒子12(
図3及び
図4も参照)に加えて、特に希土類磁性粉末1における粉末粒子2の角部3及び縁部4の摩耗による微細な摩耗部分Fを含む。これら微細な摩耗部分Fは、任意の方法ステップにおいて除去することにより、更に最適化された第2希土類磁石20を製造するための更に最適化された第2出発材料AM2が生産される。微細な摩耗部分Fは、最適化された第1希土類磁性粉末10が分離装置50、例えば高速回転する動的分級機51で分級されることで除去される。これにより、更に最適化された希土類磁石20を製造するための第2出発材料AM2は、面取りされた粉末粒子12だけを含む。
【0037】
実験で判明したところによれば、最適化された第1希土類磁石19と、特に更に最適化された第2希土類磁石20は、従来の方法で生産された希土類磁性粉末1で構成された希土類磁石5の磁気値又は磁気エネルギー密度に比べて、より大きな磁気値又は磁気エネルギー密度を有する。最適化された第2出発材料AM2で構成された第2希土類磁石20は、理論的な最適値に極めて近い磁気値又は磁気エネルギー密度を有する。
【0038】
異なる視点又は個々の特徴を含む上述した実施形態、例、代案、並びに特許請求の範囲の記載及び図面は、互いに独立して又は任意の組み合わせで適用することができる。実施形態に関連して記載した各特徴は、互いに相容れない場合を除いて、全ての実施形態に適用することができる。
【0039】
図面との関連で「概略的」という用語が使用されていたとしても、図面及びその説明が本発明の開示において二次的な重要さしか有さないことを意味するわけではない。当業者であれば、必ずしも寸法比を反映していない粒子又は図示された他の要素に対する理解が損なわれることなく、本発明の理解を容易にする概略的及び抽象的な図面から十分な情報を得ることができる。従って、当業者は、図面を参照すれば、具体的に記載された本発明に係る方法の実施形態及び具体的に記載された本発明に係る装置の実施形態との関連で、特許請求の範囲、並びに明細書本文に一般的及び/又は抽象的に記載された本発明の思想をより容易に理解することが可能である。
【0040】
以上、本発明を好適な実施形態を参照しつつ説明した。ただし、当業者であれば、添付の特許請求の保護範囲を逸脱することなく、本発明に対して修正又は変更を加えられることは自明のことであろう。
【符号の説明】
【0041】
1 希土類磁性粉末
2 粉末粒子
3 角部
4 縁部又は破断縁部
5 従来の方法で製造された希土類磁石
10 最適化された希土類磁性粉末
12 粉末粒子
12a 僅かに丸みを帯びた粉末粒子
12b 丸みを帯びた粉末粒子
13 丸みを帯びた角部
14 丸みを帯びた縁部
19 最適化された希土類磁石
20 更に最適化された希土類磁石
25 プラント
30 粉砕装置
31 ミル
32 流動床ジェットミル
40 研磨装置
50 分離装置
51 分級機
AM1,AM2 出発材料
F 微細な摩耗部分
M 磁性原料又は磁化可能原料
S 保護ガス
ZP 中間製品