(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールでは、電極積層体における積層方向の一端に、内面に負極が形成された電極板からなる負極終端電極が配置されている。この負極終端電極の電極板についても封止体によって封止されているが、電解液がアルカリ水溶液からなる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板上を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って当該電極板の外面側に滲み出ることがある。
【0005】
本発明の一態様は、上記課題の解決のためになされたものであり、電解液の漏れを抑制可能な蓄電モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電モジュールは、バイポーラ電極が積層された電極積層体と、樹脂製の封止体と、を備える。バイポーラ電極は、電極板、電極板の一方面に設けられた正極、及び電極板の他方面に設けられた負極を含む。封止体は、バイポーラ電極の縁部を包囲するように電極積層体の側面に設けられている。封止体は、第1樹脂部と、第2樹脂部と、を有する。第1樹脂部は、バイポーラ電極の縁部に溶着されている。第2樹脂部は、側面に沿って第1樹脂部を外側から包囲する。第1樹脂部の成形収縮率は、第2樹脂部の成形収縮率よりも小さい。
【0007】
この蓄電モジュールでは、樹脂製の封止体が、バイポーラ電極の縁部に溶着された第1樹脂部を有している。バイポーラ電極の縁部に溶着される際、第1樹脂部は、溶融状態から凝固状態に変化するのに伴って凝固収縮する。これにより、バイポーラ電極の縁部と第1樹脂部と間には隙間が形成され、この隙間が電解液の通り道となる場合がある。この蓄電モジュールでは、第1樹脂部の成形収縮率が第2樹脂部の成形収縮率よりも小さいので、第1樹脂部の成形収縮率が第2樹脂部の成形収縮率と同等である場合に比べて、上述のような隙間が形成され難い。したがって、電解液の漏れを抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る蓄電モジュールは、バイポーラ電極が積層された電極積層体と、樹脂製の封止体と、を備える。バイポーラ電極は、電極板、電極板の一方面に設けられた正極、及び電極板の他方面に設けられた負極を含む。封止体は、バイポーラ電極の縁部を包囲するように電極積層体の側面に設けられている。封止体は、第1樹脂部と、第2樹脂部と、を有する。第1樹脂部は、バイポーラ電極の縁部に溶着されている。第2樹脂部は、側面に沿って第1樹脂部を外側から包囲する。第1樹脂部の溶融粘度は、第2樹脂部の溶融粘度よりも大きい。
【0009】
この蓄電モジュールでは、樹脂製の封止体が、バイポーラ電極の縁部に溶着された第1樹脂部を有している。溶融状態の第1樹脂部の流動性が低いと、バイポーラ電極の縁部に溶着される際、第1樹脂部がバイポーラ電極の縁部の表面形状に沿って配置され難い。これにより、バイポーラ電極の縁部と第1樹脂部との間には隙間が形成され、この隙間が電解液の通り道となる場合がある。この蓄電モジュールでは、第1樹脂部の溶融粘度が第2樹脂部の溶融粘度よりも小さいので、第1樹脂部の溶融粘度が第2樹脂部の溶融粘度と同等である場合に比べて、溶融状態の第1樹脂部が高い流動性を有する。このため、第1樹脂部がバイポーラ電極の縁部の表面形状に沿って配置され易くなるので、上述のような隙間が形成され難い。したがって、電解液の漏れを抑制することができる。
【0010】
上記蓄電モジュールでは、縁第1樹脂部の溶融粘度は、4.5g/10min以上100g/10min未満であってもよい。この場合、第1樹脂部の溶融粘度が第2樹脂部の溶融粘度よりも大きい構成を容易に実現することができる。
【0011】
上記蓄電モジュールでは、第2樹脂部の溶融粘度は、1.0g/10min以下であってもよい。この場合、第1樹脂部の溶融粘度が第2樹脂部の溶融粘度よりも大きい構成を容易に実現することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る蓄電モジュールは、バイポーラ電極が積層された電極積層体と、樹脂製の封止体と、を備える。バイポーラ電極は、電極板、電極板の一方面に設けられた正極、及び電極板の他方面に設けられた負極を含む。封止体は、バイポーラ電極の縁部を包囲するように電極積層体の側面に設けられている。封止体は、第1樹脂部と、第2樹脂部と、を有する。第1樹脂部は、バイポーラ電極の縁部に溶着されている。第2樹脂部は、側面に沿って第1樹脂部を外側から包囲する。第1樹脂部の融点は、第2樹脂部の融点よりも低い。
【0013】
この蓄電モジュールでは、樹脂製の封止体が、バイポーラ電極の縁部に溶着された第1樹脂部を有している。第1樹脂部は溶着後に冷却される際、温度の変化量に応じて熱収縮する。これにより、バイポーラ電極の縁部と第1樹脂部との間に隙間が形成され、この隙間が電解液の通り道となる場合がある。この蓄電モジュールでは、第1樹脂部の融点が第2樹脂部の融点よりも低いので、第1樹脂部の融点が第2樹脂部の融点と同等である場合に比べて、第1樹脂部の溶着を低い温度で行うことができる。これにより、第1樹脂部の到達温度が下がる。このため、第1樹脂部が溶着後に冷却される際の温度の変化量が小さくなり、第1樹脂部の熱収縮量を低減することができるので、上述のような隙間が形成され難い。したがって、電解液の漏れを抑制することができる。
【0014】
上記蓄電モジュールでは、第1樹脂部は、ランダムポリプロピレンからなってもよい。ランダムポリプロピレンは、例えばホモプロピレンに比べて融点が低い。したがって、この場合、第1樹脂部の融点が第2樹脂部の融点よりも低い構成を容易に実現することができる。
【0015】
上記蓄電モジュールでは、第2樹脂部のヤング率は、第1樹脂部のヤング率よりも大きくてもよい。この場合、第2樹脂部のヤング率が第1樹脂部のヤング率と同等である場合に比べて、外部からの衝撃に対する蓄電モジュールの耐衝撃性を高めることができる。
【0016】
上記蓄電モジュールでは、第1樹脂部のヤング率は、100MPa以上1000MPa以下であってもよい。この場合、第2樹脂部のヤング率が第1樹脂部のヤング率よりも大きい構成を容易に実現することができる。
【0017】
上記蓄電モジュールでは、第2樹脂部のヤング率は、1000MPa以上であってもよい。この場合、第2樹脂部のヤング率が第1樹脂部のヤング率よりも大きい構成を容易に実現することができる。
【0018】
上記蓄電モジュールでは、第2樹脂部は、変性ポリフェニレンエーテルからなってもよい。変性ポリフェニレンエーテルは大きなヤング率を有している。したがって、この場合、第2樹脂部のヤング率が第1樹脂部のヤング率よりも大きい構成を容易に実現することができる。
【0019】
上記蓄電モジュールでは、縁部は、粗面化されていてもよい。この場合、縁部において、バイポーラ電極と第1樹脂部とが入り組んだ状態となる。このため、仮にバイポーラ電極と第1樹脂部との間に隙間が形成され、この隙間が電解液の通り道になったとしても、電解液が漏れ出るまでの経路長は、縁部が粗面化されていない場合に比べて長くなる。したがって、電解液の漏れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、電解液の漏れを抑制可能な蓄電モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を有する蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0024】
蓄電モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とを備えている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0025】
積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に延在している。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0026】
各導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の延在方向とにそれぞれ直交する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷媒を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4,4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0027】
拘束部材3は、一対のエンドプレート8,8、締結ボルト9及びナット10を含んでいる。一対のエンドプレート8,8は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟んでいる。締結ボルト9及びナット10は、エンドプレート8,8同士を締結している。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0028】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通されている。他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8,8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化される。蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0029】
次に、蓄電モジュール4の構成について更に詳細に説明する。
図2は、蓄電モジュール4の内部構成を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。
【0030】
電極積層体11は、セパレータ13を介して複数のバイポーラ電極14が積層されてなる。この例では、電極積層体11の積層方向Dは蓄電モジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の一方面15aに設けられた正極16、電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が塗工されてなる正極活物質層である。負極17は、負極活物質が塗工されてなる負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0031】
電極積層体11において、積層方向Dの一端には負極終端電極18が配置され、積層方向Dの他端には正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の電極板15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の一方面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19の電極板15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0032】
電極板15は、金属製であり、例えばニッケル又はニッケルメッキ鋼板からなる。電極板15は、例えばニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部(バイポーラ電極14の縁部)15cは、矩形枠状をなしている。縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0033】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0034】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の筒状に形成されている。封止体12は、縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、縁部15cに溶着された第1樹脂部21と、側面11aに沿って第1樹脂部21を外側から包囲する第2樹脂部22とを有している。第1樹脂部21は、積層方向Dから見て、矩形枠状をなし、縁部15cの全周にわたって連続的に設けられている。第1樹脂部21は、電極板15の一方面15a側の縁部15cに溶着されている。第1樹脂部21は、例えば超音波又は熱によって溶着されている。第1樹脂部21は所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有するフィルムである。電極板15の端面は、第1樹脂部21から露出している。第1樹脂部21の内側の一部は、積層方向Dに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置している。第1樹脂部21の外側の一部は、電極板15から外側に張り出している。第1樹脂部21は、当該外側の一部において第2樹脂部22に埋没している。積層方向Dで隣り合う第1樹脂部21,21同士は、互いに離間している。
【0035】
第2樹脂部22は、電極積層体11及び第1樹脂部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2樹脂部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dにおいて電極積層体11の全長にわたって延在している。第2樹脂部22は、積層方向Dを軸方向として延在する筒状部である。第2樹脂部22は、積層方向Dに延在する第1樹脂部21の外側面を覆っている。第2樹脂部22は、例えば、射出成型時の熱によって第1樹脂部21の外表面に溶着されている。
【0036】
第2樹脂部22は、積層方向Dに隣り合うバイポーラ電極14,14の間、積層方向Dに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、積層方向Dで隣り合うバイポーラ電極14,14の間、積層方向Dに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。これらの内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。
【0037】
第1樹脂部21を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ホモプロピレン、ブロックポリプロピレン(プロピレン−エチレンブロック共重合体)、又はランダムポリプロピレン(プロピレン−エチレンランダム共重合体)が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリプロピレン及びEPDM(エチレンプロピレンゴム)の混合物、ポリプロピレン及びスチレンゴムの混合物等が挙げられる。第2樹脂部22を構成する樹脂材料としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)(ザイロン(登録商標))等が挙げられる。
【0038】
第1樹脂部21を構成する樹脂材料と第2樹脂部22を構成する樹脂材料とは、互いに相溶性を有している。このため、第1樹脂部21と第2樹脂部22とを溶着により結合させることができる。電解液は強アルカリ性なので、第1樹脂部21及び第2樹脂部22は、いずれも耐強アルカリ性を有する樹脂材料により構成されている。
【0039】
第1樹脂部21の成形収縮率(凝固収縮率)は、第2樹脂部22の成形収縮率よりも小さい。第1樹脂部21の成形収縮率は、例えば0.4以上1.8以下である。第2樹脂部22の成形収縮率は、例えば2.0以上である。第2樹脂部22の成形収縮率は、例えば2.5以上であってもよい。成形収縮率は、JIS K 7152の規格に準じて求められる。
【0040】
第1樹脂部21の溶融粘度(MFR(メルトフローレイト))は、第2樹脂部22の溶融粘度よりも大きい。第1樹脂部21の溶融粘度は、例えば4.5g/10min以上100g/10min未満である。第1樹脂部21の溶融粘度は、例えば5g/10min以上7.5g/10min以下であってもよい。第2樹脂部の溶融粘度は、例えば1.0g/10min以下である。第2樹脂部22の溶融粘度は、例えば0.5g/10min以下であってもよい。溶融粘度は、ISO 1133の規格に準じて求められる。
【0041】
第1樹脂部21の融点は、第2樹脂部22の融点よりも低い。この構成を実現するため、第1樹脂部21は、ランダムポリプロピレンからなってもよい。ランダムポリプロピレンは、例えばホモプロピレンに比べて融点が低いので、第1樹脂部の融点が第2樹脂部の融点よりも低い構成を容易に実現することができる。第1樹脂部21の融点は、例えば165℃未満である。第1樹脂部21の融点は、例えば145℃以上160℃以下であってもよい。第2樹脂部22の融点は、例えば165℃以上である。
【0042】
第2樹脂部22のヤング率(引張弾性率)は、第1樹脂部21のヤング率より大きい。この構成を実現するため、第2樹脂部22は、変性ポリフェニレンエーテルからなってもよい。変性ポリフェニレンエーテルは大きなヤング率を有しているので、第2樹脂部22のヤング率が第1樹脂部21のヤング率よりも大きい構成を容易に実現することができる。第1樹脂部21のヤング率は、例えば100MPa以上1000MPa以下である。第1樹脂部21のヤング率は、例えば580MPa以上837MPa以下であってもよい。第2樹脂部22のヤング率は、例えば1000MPa以上である。第2樹脂部22のヤング率は、例えば1500MPa以上であってもよい。第1樹脂部21のヤング率が580MPa以上837MPa以下という構成を実現するために、第1樹脂部21は、ポリプロピレンからなってもよい。
【0043】
図3は、電極板と第1樹脂部との接合界面を示す概略断面図である。同図に示されるように、電極板15の表面は粗面化されている。ここでは、
図2に示される一方面15a、他方面15b及び端面を含む電極板15の表面全体が粗面化されている。電極板15の表面は、例えば、電解メッキ処理で複数の突起15pが形成されることにより、粗面化されている。このように電極板15が粗面化されている場合、電極板15と第1樹脂部21との接合界面では、溶融状態の第1樹脂部21が粗面化により形成された凹部内に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1樹脂部21との結合力を向上させることができる。少なくとも、一方面15aにおける縁部15cが粗面化されていれば、結合力向上の効果が得られる。突起15pは、例えば、基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。この場合、隣接する突起15p,15pの間の断面形状はアンダーカット形状となるので、アンカー効果が生じ易い。
図3は模式図であるため、突起15pの形状及び密度等は、
図3に示される形状に限定されない。
【0044】
続いて、上述した蓄電モジュール4の製造方法について説明する。蓄電モジュール4の製造方法は、一次成形工程と、積層工程と、二次成形工程と、注入工程と、を含んでいる。まず、一次成形工程では、所定数のバイポーラ電極14、並びに一対の負極終端電極18及び正極終端電極19を用意し、各電極板15の一方面15a側の縁部15cに第1樹脂部21を溶着する。
【0045】
積層工程では、第1樹脂部21が電極板15の縁部15c同士の間に配置されるように、セパレータ13を介してバイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19を積層することにより、電極積層体11を形成する。二次成形工程では、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、第1樹脂部21を包囲するように第2樹脂部22を形成する。これにより、電極積層体11の側面11aに封止体12が形成される。注入工程では、二次成形工程の後、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液L(
図4参照)を注入する。これにより、蓄電モジュール4が得られる。
【0046】
図1に示される蓄電装置1は、得られた蓄電モジュール4と導電板5とを積層して蓄電モジュール積層体2を形成する工程、及び拘束部材3によって蓄電モジュール積層体2を拘束する工程等を経て得られる。
【0047】
続いて、
図4及び
図5を参照して、蓄電モジュール4の作用効果を説明する。
図4は、
図2の一部を拡大して示す概略断面図である。
図5は、隙間について説明するための概略断面図である。
【0048】
蓄電モジュール4では、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液Lが負極終端電極18の電極板15上を伝わり、封止体12の第1樹脂部21と電極板15との間を通って電極板15の一方面15a側に滲み出ることがある。
図4には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路が矢印Aで示されている。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因と流体現象等により、蓄電装置1の充電時及び放電時及び無負荷時において生じる。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じる。アルカリクリープ現象を抑制するには、電解液Lの通り道について対策する必要があると考えられる。
【0049】
蓄電モジュール4では、樹脂製の封止体12が縁部15cに溶着された第1樹脂部21を有している。縁部15cに溶着される際、第1樹脂部21は、溶融状態から凝固状態に変化するのに伴って凝固収縮する。これにより、
図5に示されるように、電極板15と第1樹脂部21との間に隙間Wが形成され、この隙間Wが電解液Lの通り道となる場合がある。これに対し、蓄電モジュール4では、第1樹脂部21の成形収縮率が第2樹脂部22の成形収縮率よりも小さいので、例えば、第1樹脂部21が第2樹脂部22と同じ樹脂材料により構成され、第1樹脂部21の成形収縮率が第2樹脂部22の成形収縮率と同等である場合に比べて、上述のような隙間Wが形成され難い。これにより、電解液Lの漏れを抑制することができる。この結果、例えば、負極終端電極18に隣接して配置された導電板5の腐食、又は負極終端電極18と拘束部材3との短絡等を抑制することができるので、信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
蓄電モジュール4では、第1樹脂部21が、溶着後に冷却される際、温度の変化量に応じて熱収縮する。温度の変化量が大きければ大きいほど、線形的に熱収縮量が大きくなる。熱収縮は、凝固収縮と異なり、第1樹脂部21において実際に溶融される部分だけでなく、その近傍に位置し溶融されない部分でも生じる。このような熱収縮により、
図5に示されるように、電極板15と第1樹脂部21との間に隙間Wが形成され、この隙間Wが電解液Lの通り道となる場合がある。これに対し、蓄電モジュール4では、第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点よりも低い。したがって、例えば、第1樹脂部21が第2樹脂部22と同じ樹脂材料により構成され、第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点と同等である場合に比べて、第1樹脂部21の溶着を低い温度で行うことができる。これにより、第1樹脂部21の到達温度が下がる。このため、第1樹脂部21が溶着後に冷却される際の温度の変化量が小さくなり、第1樹脂部21の熱収縮量を低減することができる。これにより、上述のような隙間Wが形成され難い。したがって、電解液Lの漏れを抑制することができる。
【0051】
また、第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点よりも低い構成によれば、第1樹脂部21を溶着する際に第1樹脂部21への入熱量を低減できるので、省エネを実現できる。更に、第1樹脂部21の温度が融点に到達するまでの時間を短縮することができるので、生産性が向上する。
【0052】
蓄電モジュール4では、溶融状態の第1樹脂部21の流動性が低いと、縁部15cに溶着される際、第1樹脂部21が縁部15cの表面形状に沿って配置され難い。特に、電極板15の表面は複数の突起15pが形成されることにより粗面化されている。このため、
図5に示されるように、隣接する突起15pの間の凹部内に第1樹脂部21が充填されずに隙間Wが形成され、この隙間Wが電解液Lの通り道となる場合がある。これに対して、蓄電モジュール4では、第1樹脂部21の溶融粘度が第2樹脂部22の溶融粘度よりも小さい。したがって、例えば、第1樹脂部21が第2樹脂部22と同じ樹脂材料により構成され、第1樹脂部21の溶融粘度が第2樹脂部22の溶融粘度と同等である場合に比べて、溶融状態の第1樹脂部21が高い流動性を有する。このため、隣接する突起15pの間の凹部内にも第1樹脂部21が入り込んで充填される。このように、第1樹脂部21が縁部15cの表面形状に沿って配置されるので、上述のような隙間Wが形成され難い。これにより、電解液Lの漏れを抑制することができる。
【0053】
蓄電モジュール4では、第2樹脂部22のヤング率は、第1樹脂部21のヤング率よりも大きい。したがって、例えば、第2樹脂部22が第1樹脂部21と同じ樹脂材料により構成され、第2樹脂部22のヤング率が第1樹脂部21のヤング率と同等である場合に比べて、第2樹脂部22の強度を高めることができる。第2樹脂部22は、蓄電モジュール4の外壁を構成している。したがって、外部からの衝撃に対する蓄電モジュール4の耐衝撃性を高めることができる。
【0054】
電極板15の表面は、複数の突起15pが形成されることにより粗面化されている。したがって、電極板15と第1樹脂部21とが入り組んだ状態となっている。これにより、電極板15と第1樹脂部21との結合力が向上する。また、仮に電極板15と第1樹脂部21との間に隙間Wが形成され、この隙間が電解液Lの通り道になったとしても、電解液Lが漏れ出るまでの経路長は、電極板15が粗面化されていない場合に比べて長くなる。したがって、電解液Lの漏れを更に抑制することができる。
【0055】
本発明は上述した実施形態に限らず、様々な変形が可能である。
【0056】
蓄電モジュール4は、第1樹脂部21の成形収縮率が第2樹脂部22の成形収縮率よりも小さい構成、第1樹脂部21の溶融粘度が第2樹脂部22の溶融粘度よりも大きい構成、及び第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点よりも低い構成のうち、少なくとも1つを備えていればよい。
【0057】
例えば、蓄電モジュール4は、第1樹脂部21の成形収縮率が第2樹脂部22の成形収縮率よりも小さい構成を備えていれば、第1樹脂部21の溶融粘度が第2樹脂部22の溶融粘度と同等であってもよいし、第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点と同等であってもよい。例えば、蓄電モジュール4は、第1樹脂部21の溶融粘度が第2樹脂部22の溶融粘度よりも大きい構成を備えていれば、第1樹脂部21の成形収縮率が第2樹脂部22の成形収縮率と同等であってもよいし、第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点と同等であってもよい。例えば、蓄電モジュール4は、第1樹脂部21の融点が第2樹脂部22の融点よりも低い構成を備えていれば、第1樹脂部21の成形収縮率が第2樹脂部22の成形収縮率と同等であってもよいし、第1樹脂部21の溶融粘度が第2樹脂部22の溶融粘度と同等であってもよい。
【0058】
電極板15の表面は、粗面化されていなくてもよい。第1樹脂部21は、縁部15cに溶着されていればよく、第1樹脂部21は、例えば、電極板15の一方面15aだけでなく電極板15の端面を覆うように縁部15cに溶着されていてもよい。この場合、電極板15の端面にも第1樹脂部21が溶着されているので、電解液Lの漏れを更に抑制可能となる。