特許第6858274号(P6858274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858274
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】軽水炉を除染するための亜鉛注入
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20210405BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20210405BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20210405BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20210405BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20210405BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20210405BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20210405BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   G21F9/28 525A
   G21F9/28 525D
   C11D7/08
   C11D7/34
   C11D7/32
   C11D7/26
   C11D17/08
   C11D7/10
   C23C26/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-554828(P2019-554828)
(86)(22)【出願日】2018年3月5日
(65)【公表番号】特表2020-516876(P2020-516876A)
(43)【公表日】2020年6月11日
(86)【国際出願番号】EP2018055374
(87)【国際公開番号】WO2018184780
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】102017107584.4
(32)【優先日】2017年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502158302
【氏名又は名称】エルヴェーエー・パワー・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ニーダー,ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】ヨルダン,ダーヴィト
【審査官】 関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−521098(JP,A)
【文献】 特表2013−513098(JP,A)
【文献】 特表平08−506524(JP,A)
【文献】 特表2016−538532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射能で汚染された金属表面を除染するための方法であって、
前記放射能で汚染された金属表面の少なくとも一部分を、フッ化水素酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、カルボン酸、およびそれらの塩から選択される錯化剤および遷移金属のイオンを含む除染溶液と接触させるステップを含み、
前記遷移金属の濃度が≧0.5〜≦15mg/kgの範囲である、方法。
【請求項2】
前記遷移金属の前記イオンが亜鉛、ニッケル、コバルトまたはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属の前記イオンが亜鉛であり、≧2〜≦5mg/kgの範囲の濃度で存在する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
58Coイオンおよび60Coイオンの少なくとも一方が前記金属表面から除去される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記除染溶液が原子炉の一次回路に導入される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記除染溶液が循環される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の方法ステップとして、前記方法が、前記放射能で汚染された金属表面を酸化するかまたは還元するための、予備酸化ステップまたは還元ステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、
前記除染溶液中に存在する放射性同位体の少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法ステップすべてが少なくとも1回繰り返される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボン酸は、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、ピコリン酸、およびそれらの塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
放射能で汚染された金属表面を除染するため、フッ化水素酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、カルボン酸、およびそれらの塩から選択される錯化剤および≧0.5mg/kg〜≦15mg/kgの範囲の濃度の遷移金属のイオンを含む、水溶液の使用。
【請求項12】
前記カルボン酸は、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、ピコリン酸、およびそれらの塩である、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽水炉を除染するための亜鉛を含む除染溶液、および除染溶液を使用して放射性の金属表面を除染するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉技術の分野においては、金属構成要素は放射能で汚染される。このような汚染は、原子炉の通常運転の間に日常的に発生し、特に、例えば加圧水型原子炉の、一次回路内に位置する金属構成要素に関する。この場合、放射性物質は構成要素の表面上に形成された酸化物層に堆積し、それらを放射能で汚染させる。
【0003】
原子力発電所の点検の際に、点検作業員を放射線から保護するため、汚染された構成要素から放射能を、すなわち金属表面上の堆積物を取り去ることが日常的に必要である。構成要素は、次いで原子力発電所内で連続して処理され得る。原子力発電所を解体することを意図している場合、同じことが適用される。
【0004】
原理上、機械的手段を使用してこのような堆積物を除去することが可能であり、ここで酸化物層、よって汚染された領域は、例えば研磨される。このことは、研磨工具が構成要素の寸法またはそれらの位置により接近することが困難な構成要素にとっては、特に不利である。
【0005】
さらに、シュウ酸などの様々なカルボン酸を含有する錯化剤を含む除染溶液を使用して、これら構成要素を除染することは公知である。この場合、低溶解性の酸化物層の一部分は、例えばCr‐IIIをCr‐VIに酸化するために使用されている過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸)によって、前工程で最初に酸化されるかまたは還元される。主に鉄およびニッケルイオンからなる酸化物層は、次いで錯化剤の助けを借りて溶解し、放出された、60Co2+または58Co2+も含有する陽イオンは、イオン交換によって除染溶液から除去される。この除染プロセスは通常数ラウンドで実施され、酸化物層は少しずつ分解される。
【0006】
これらの放射性同位体に加えて、不活性イオンも常に除染溶液中に放出され、同様にイオン交換樹脂によって除染溶液から除去される。さらに、構成要素の再汚染は、除染溶液中に存在する放射性イオンの結果、除染プロセス中と同じくらい早く発生する。その結果、除染プロセスの効率が低下し、時間およびコストのかかる、必要となるさらに多くの除染サイクルを生じさせ、さらには、処分する必要のある、より大量の汚染されたイオン交換樹脂も生じさせ、それには多大な労力が必要となる。
【0007】
当然のことながら、上述の問題は原子力発電所だけではなく、原理上、金属構成要素が放射能と接触する状況、および除染が必要となる状況においても発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、放射能で汚染された金属表面を除染するための改善された方法が必要とされている。特に、より少ない除染サイクル数、およびより少ない汚染されたイオン交換樹脂の量の少なくとも一方によって除染を実施できる、より効率的な除染方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本目的は、請求項1で明記された特徴を有する方法によって、本発明に従い達成される。さらに、本目的は、請求項11で明記された特徴を有する水溶液、および請求項12に記載のそれらの使用によって達成される。実施形態は従属請求項に明記される。
【0010】
より正確に言うと、本発明に従う方法は、放射能で汚染された金属表面を除染するための方法であり、放射能で汚染された金属表面の少なくとも一部分を、錯化剤および遷移金属を含む除染溶液と接触させるステップを含む。驚くべきことに示されるとおり、遷移金属を除染溶液に添加するときに、除染プロセス中に発生する金属表面の再汚染が効果的に低減される。
【0011】
これらに限定されるものではないが、除染溶液に添加される遷移金属が、金属表面(またはその上にある酸化物層)に(再度)取り込まれるために、放出された放射性同位体と競合することが想定される。その結果、イオン交換プロセスによってより多くの量の放射性同位体を除染溶液から有利に除去することができ、それにより、必要とされる除染ステップのラウンド数、および処分すべきイオン交換樹脂の量の少なくとも一方が低減される。
【0012】
除染溶液は、水溶液であることが好ましい。遷移金属は、遷移金属のイオンが好ましく、遷移金属の陽イオンがより好ましく、遷移金属の二価または三価の陽イオンがさらにより好ましい。最も好ましくは、遷移金属は遷移金属の二価の陽イオンである。
【0013】
遷移金属は、減損させた遷移金属、すなわち自然に発生する同位体の比率と比較して低減させた同位体の比率を有する遷移金属がより好ましく、その同位体は、中性子によって容易に活性化され得る。減損させた遷移金属の使用は、除染すべき金属、例えば原子炉の構成要素が除染後に処分されず、再利用されて中性子束にさらされることを意図しているとき、特に有利である。
【0014】
遷移金属は同様に、亜鉛、ニッケル、コバルトまたはそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、遷移金属は亜鉛およびニッケルからなる群から選択される。最も好ましくは、遷移金属は亜鉛である。驚くべきことに、除染溶液における亜鉛の使用は、本発明のとおり、金属表面が再汚染される度合いを低減するときに最大の効果を示した。
【0015】
遷移金属は、好ましくは≧0.5mg/kg〜≦15mg/kg、より好ましくは≧0.5mg/kg〜≦10mg/kg、より好ましくは≧1.5mg/kg〜≦5mg/kgまたは≧2mg/kg〜≦5mg/kg、および最も好ましくは約≧3mg/kg〜≦4mg/kgの範囲の濃度で除染溶液中に存在する。mg/kgの代わりにmmol/Lでも表記することができ、表記されたmg/kgの値は、特定の遷移金属の原子量で除算しなければならない。遷移金属は、好ましくは≧7μmol/L〜≦230μmol/L、より好ましくは≧7μmol/L〜≦155μmol/L、より好ましくは≧23μmol/L〜≦70μmol/Lまたは≧30μmol/L〜≦80μmol/L、および最も好ましくは約≧46μmol/L〜≦62μmol/Lの範囲の濃度で除染溶液中に存在する。
【0016】
明記された濃度範囲は、本発明に従い金属表面を除染溶液と接触させたときの、遷移金属の濃度に当てはまることが好ましい。明記された濃度は同様に、平均濃度であることが好ましい。
【0017】
以下、「遷移金属」の代わりに、単に例として、元素である亜鉛について言及する。適用可能な場合、なされた注釈は一般的に、同様な方法で遷移金属にも適用し、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方にも適用することが好ましい。
【0018】
「亜鉛」という用語は、好ましくは除染溶液中に存在する亜鉛イオン、より好ましくは、Zn2+を意味すると理解すべきことを意図している。より好ましくは、これは減損亜鉛であってよく、特に64Znを減損させた亜鉛であってよい。
【0019】
亜鉛は、可溶性亜鉛化合物によって除染溶液中に導入されることがより好ましい。好ましい可溶性亜鉛化合物は、使用される酸、および亜鉛と共に使用される錯化剤の少なくとも一方の群から選択され、メタンスルホン酸亜鉛(Zn(CHSO)、硝酸亜鉛(Zn(NO)、過マンガン酸亜鉛(Zn(MnO)、硫酸亜鉛(ZnSO)および可溶性亜鉛錯体の少なくともいずれか一つを含む。亜鉛錯体は、亜鉛と、使用される錯化剤との錯体であることがより好ましい。
【0020】
「除染」という用語は、当業者に既知である。このことは、特に金属表面上に存在する放射能の低減および除去の少なくとも一方を意味すると理解すべきことを意図している。特に、このことは金属構成要素に堆積する金属酸化物層の除去を意味すると理解すべきことを意図しており、堆積層は放射性同位体、好ましくはコバルトを含む。換言すれば、本発明に従う方法によって、除染すべき金属表面から放射性同位体が除去される。これらの放射性同位体は、55Feイオン、63Niイオン、54Mnイオン、65Znイオン、125Sbイオン、137Csイオン、58Coイオンおよび60Coイオンからなる群から選択されることが好ましい。放射性同位体は、54Mnイオン、125Sbイオン、137Csイオン、58Coイオンおよび60Coイオンからなる群から選択されることがより好ましい。これらの放射性同位体は、58Coイオンおよび60Coイオンの少なくとも一方が最も好ましく、さらにより好ましくは60Coイオンである。本発明の除染方法は、好ましくは化学除染と称することもできる。より好ましくは、除染方法は、解体される原子炉、または連続して運転されなければならない原子炉を除染するための方法であり得る。
【0021】
固体および液体物質のクリアランスは、放射線防護令(RPO:Radiological Protection Ordinance、Strahlenschutzverordnung StrlSchV)に従い規制されており、無制限のクリアランス、および埋立地での処分のためのクリアランスに実質的に区分される。金属表面の除染の後に残されることが好ましいものは、埋立地での処分のために浄化された構成要素である。金属表面の除染の後に残されることがさらにより好ましいものは、無制限のクリアランスに適した構成要素である。
【0022】
以下、「放射能で汚染された金属表面」という用語は、好ましくは、金属構成要素の表面上に位置する放射能で汚染された堆積層を含む、金属構成要素の表面を意味すると理解すべきことを意図し、それは、例えば加圧水型原子炉の構成要素を通常使用する間に形成される。このような堆積層は、低溶解性の金属酸化物からなることが好ましい。換言すれば、除染すべき放射性の金属表面は、低溶解性の金属酸化物の放射能で汚染された層を少なくとも1つ含むことが好ましく、その層は表面に配置され、かつ塩基性金属材料でできている。より好ましくは、堆積層はスピネル、好ましくはCr‐NiスピネルおよびCr‐Feスピネルの少なくとも一方である。スピネルは、通常は結晶形態で存在する、酸化物および水酸化物の鉱物クラス由来の低溶解性の鉱物であり、金属:酸素=3:4の物質量の比を有する酸化物であることが好ましい。
【0023】
除染すべき金属表面の金属は、原理上、任意の好適な金属であってよい。金属は、鉄、ニッケル、クロム、マンガン、チタン、ニオブ、銅、コバルトおよびこれらの金属の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される金属であることが好ましい。金属は、鉄、クロム、ニッケル、コバルトおよびこれらの金属の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されることがより好ましい。
【0024】
本発明に従い、金属表面の少なくとも一部分もまた除染溶液と接触させる。好ましくは複数の部分、およびより好ましくは金属表面全体を、除染溶液と接触させる。より良く理解するために、放射能で汚染された金属表面について以下で言及するものの、前記表面の一部分もまた、常にそれによって意味されるものである。
【0025】
放射能で汚染された金属表面は、任意の好適なやり方で、本発明のとおり除染溶液と接触させることができる。除染すべき金属表面は、除染溶液で湿潤されていることが好ましい。除染溶液は、原子炉の一次回路に導入されることがより好ましい。
【0026】
より好ましくは、除染溶液は循環することができる。その結果、金属表面領域の濃度勾配を有利に回避することができ、除染プロセスの効率を増大させることができる。より好ましくは、循環は連続的であり、同様にポンプを使用して実施されることが好ましい。
【0027】
同様に、除染すべき金属表面は、好ましくは金属および円筒形の構成要素の内側側面(例えば熱交換器の管)であり、除染溶液は円筒形の構成要素の空洞に導入される。
【0028】
本発明に従い金属表面の少なくとも一部分を除染溶液と接触させる方法ステップの前に、本発明に従う方法は、追加の方法ステップ、すなわち第1の方法ステップとして、放射能で汚染された金属表面を酸化するかまたは還元するための方法ステップを含むことが好ましい。酸化の場合、この方法ステップは放射能で汚染された金属表面の予備酸化と称することもできる。より好ましくは、予備酸化の間にCr‐IIIがCr‐VIに酸化される。予備酸化は、放射能で汚染された金属表面を、硝酸および過マンガン酸カリウムと、水酸化ナトリウムおよび過マンガン酸カリウム、バナジウム化合物(好ましくはギ酸バナジウム)と、または過マンガン酸と接触させることによって実施することが好ましく、過マンガン酸処理が最も好ましい。前述の還元方法ステップの場合、酸化物層をバナジウム化合物によって還元することが好ましい。このステップの後に続く方法ステップでは、溶解した生成物をピコリン酸と錯体化させることが好ましい。
【0029】
予備酸化ステップの後、および本発明に従い金属表面の少なくとも一部分を除染溶液と接触させる前に、過剰な酸化剤、例えば過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸)を還元するために、追加の方法ステップを実施し得ることがより好ましい。
【0030】
本発明に従い金属表面の少なくとも一部分を除染溶液と接触させた後に、本発明に従う方法は同様に、除染溶液中に存在する放射性同位体またはそれらのイオンの少なくとも一部を除去する追加の方法ステップを含むことが好ましい。これらの放射性同位体は、55Fe、63Ni、54Mn、65Zn、125Sb、137Cs、58Coおよび60Coからなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、放射性同位体は、54Mn、125Sb、137Cs、58Coおよび60Coからなる群から選択される。これらの放射性同位体は、58Coおよび60Coの少なくとも一方が最も好ましく、より好ましくは60Coである。
【0031】
放射性同位体は、イオン交換樹脂に結合することによって除去されることが好ましく、陽イオン交換樹脂および合成イオン交換樹脂の少なくとも一方がより好ましい。最も好ましくは、イオン交換は、プロトンが結合陽イオンと交換される、強酸性陽イオン交換である。このようなイオン交換樹脂は、当業者に周知である。
【0032】
より好ましくは、除染溶液中に存在する放射性同位体の約≧50%、さらにより好ましくは約≧70%、≧80%、≧90%または≧99%が除去される。最も好ましくは、除染溶液中に存在する同位体の約≧99%および<100%が除去される。
【0033】
より好ましくは、本発明に従う方法はサイクル式である。換言すれば、少なくとも本発明に従い金属表面を除染溶液と接触させる方法ステップ、およびその後に除染溶液中に存在する放射性同位体の少なくとも一部を除去する方法ステップが、少なくとも1回繰り返される。当然のことながら、この場合、上述の個々の方法ステップまたは追加の方法ステップすべてを付加的に繰り返すこともできる。本発明に従う方法は、放射能で汚染された金属表面の放射能が、≧1〜≦3桁、より好ましくは約2桁の低減に相当する除染係数に達するまで繰り返されることが好ましい。除染係数は、除染溶液中に存在する放射性同位体を除去するために使用されるイオン交換樹脂の放射能を計測することによって、または、本発明に従う方法を実施する前後のイオン交換樹脂の放射能を比較することによって測定することが好ましい。
【0034】
本発明に従う方法は同様に、好ましくは1〜30回、より好ましくは10〜25回、さらにより好ましくは13〜20回のサイクルで繰り返される。シュウ酸を使用したとき、13〜17サイクルの範囲が特に良好な結果を示した。
【0035】
本発明に従うと、遷移金属に加え、除染溶液は少なくとも1つの錯化剤を含む。錯化剤は、キレート剤と称することもできる。金属イオンと共に、錯化剤はキレート錯体を形成する。錯化剤の例としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、フッ素酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸などの酸、およびそれらの塩が挙げられる。
【0036】
錯化剤は、酸であることが特に好ましい。除染溶液は水をさらに含み、その結果、除染溶液の水性成分はそれらの溶解した形態であり得る。換言すれば、除染溶液は水溶液である。
【0037】
酸は、カルボン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、ピコリン酸、硝酸およびクエン酸からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、酸はメタンスルホン酸とシュウ酸の混合物である。酸はシュウ酸が最も好ましい。より好ましくは、除染溶液は酸化剤、好ましくは過マンガン酸、または還元剤をさらに含む。その他の好ましい実施形態では、除染溶液は、メタンスルホン酸亜鉛、硝酸亜鉛、過マンガン酸亜鉛、硫酸亜鉛および使用される錯化剤の亜鉛錯体の少なくともいずれか一つを含む。遷移金属および使用される錯化剤からなる錯体が特に好ましい。
【0038】
本発明に従う方法を実施するための、本発明に従う除染溶液の使用は同様に、本発明の一構成要素である。
図は以下で詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】除染溶液のZn濃度と60Coの除染との間の相関関係。
図2】除染溶液のZn濃度と60Coの除染との間の相関関係。
図3】除染溶液のFe濃度と60Coの除染との間の相関関係。
【実施例】
【0040】
実施例1:Zn濃度と60Coの除染との間の相関関係
軽水炉の一次回路の除染を実施し、それにより除染媒体中の平均Zn濃度およびFe濃度、ならびに、この場合にイオン交換樹脂(強酸性陽イオン交換)によって除染溶液から除去された60Coを測定した。一次回路の除染を15サイクルより多く実施した。
【0041】
図1および図2(Zn濃度を基準とした60Coの除染の測定)で分かるように、この遷移金属と除去された60Coの量との間には、非常に良好な相関関係がある。
【0042】
これに対する比較で、Fe濃度と60Coとの間では、この種の非常に良好な相関関係を実証することができなかった(図3を参照のこと)。
【0043】
実施例2:Ni濃度またはCr濃度と60Coの除染との間の相関関係
実施例1を繰り返し、それによりZn濃度の代わりにNi濃度またはCr濃度を観察した。この場合、いずれの場合においても、遷移金属の濃度と60Coによって除去された放射能との間で同様に相関関係が示された。測定した相関関係は、Znと比較して、CrによってNiから減少する傾向があった。
図1
図2
図3