特許第6858312号(P6858312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6858312高所での障害物を伴う配備のためのセルラアンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858312
(24)【登録日】2021年3月25日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】高所での障害物を伴う配備のためのセルラアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/28 20060101AFI20210405BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01Q3/28
   H01Q21/08
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-531985(P2020-531985)
(86)(22)【出願日】2018年10月12日
(65)【公表番号】特表2020-537459(P2020-537459A)
(43)【公表日】2020年12月17日
(86)【国際出願番号】US2018055613
(87)【国際公開番号】WO2019075329
(87)【国際公開日】20190418
【審査請求日】2020年6月10日
(31)【優先権主張番号】62/572,149
(32)【優先日】2017年10月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520129562
【氏名又は名称】クインテル ケイマン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソング ピーター チュン テック
(72)【発明者】
【氏名】バーカー デイビッド エドウィン
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6175542(JP,B2)
【文献】 特開2015−200520(JP,A)
【文献】 特開2012−104982(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/164221(WO,A1)
【文献】 特開平08−046420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子の少なくとも第1のアレイと、
伝送用の無線周波数信号の電力を第1の複数の成分信号に分割するように構成される少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークと
を備える、フェーズドアレイアンテナシステムであって、
前記第1の複数の成分信号が、前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイのための駆動信号を含み、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイからの第2の複数の成分信号から前記フェーズドアレイアンテナシステムによる受信用の無線周波数信号を組み合わせるようにさらに構成され、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの無線周波数電力分配は、前記少なくとも第1のアレイの一端に向かう前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイ内のアンテナ素子を介して処理される前記第1の複数の成分信号および前記第2の複数の成分信号の非直線的振幅重み付けプロファイルを提供するように配置され
前記少なくとも第1のアレイは、建築物屋上への配備用であり、前記非直線的振幅重み付けプロファイルは、前記建築物屋上の縁部によって生じる回折伝搬損失を最小限に抑えるものであることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記非直線的振幅重み付けプロファイルの振幅重み、および前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの位相重みが、前記フェーズドアレイアンテナシステムの遠方場内である角度範囲にわたって指向性ビームおよび抑制されたサイドローブを展開するように配置され、前記指向性ビームのビームパターンが、セルラモバイル通信ネットワークに好適であることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの前記非直線的振幅重み付けプロファイルの振幅重みが、前記少なくとも第1のアレイの前記一端に向かう前記アンテナ素子のうちの50%未満への合計無線周波数電力の少なくとも73%の割り当てを含む、前記無線周波数電力分配を提供するように配置されることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの前記非直線的振幅重み付けプロファイルの振幅重みが、前記少なくとも第1のアレイの前記一端に向かう前記アンテナ素子のうちの50%以下への合計無線周波数電力の少なくとも80%の割り当てを含む、前記無線周波数電力分配を提供するように配置されることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1のアレイが、仰角面においてビームフォーミングするために垂直面に配置されることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項6】
請求項に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1のアレイが、前記少なくとも第1のアレイの外観が地表面から見たときに最小限にされるように、前記建築物屋上の縁部から離した配備のためであることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1のアレイの遠方場放射パターンの上部サイドローブが、前記遠方場放射パターンの主ビームに対して、前記主ビームより最大30度上の範囲にわたって15dB以上抑制されることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記アンテナシステムが、前記少なくとも第1のアレイを含む複数のアンテナアレイと、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークを含む複数の無線周波数ビームフォーミングネットワークとを備え、前記複数のアンテナアレイおよび前記複数の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、
無線周波数ダイバーシティ方式、
複数のスペクトル帯、および
多次多重入力多重出力応用
のうちの少なくとも1つをサポートするように設計されることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、受動の、相互的なビームフォーミングネットワークであることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナシステムであって、前記少なくとも第1のアレイが、能動アンテナアレイであり、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、前記アンテナシステムからユーザ特有のビームフォーミングを展開するためにユーザ指向データに適用されるように構成されるプリコーディングベクトルを使用してベースバンドで実装されることを特徴とするフェーズドアレイアンテナシステム。
【請求項11】
無線周波数アンテナシステムのアンテナ素子の少なくとも第1のアレイを建築物屋上に配備することであって、前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイが、前記無線周波数アンテナシステムの少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークに結合され、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、伝送用の無線周波数信号の電力を第1の複数の成分信号に分割するように構成され、前記第1の複数の成分信号が、前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイのための駆動信号を含み、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイからの第2の複数の成分信号からフェーズドアレイアンテナシステムによる受信用の無線周波数信号を組み合わせるようにさらに構成され、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの無線周波数電力分配が、前記少なくとも第1のアレイの一端に向かう前記アンテナ素子の少なくとも第1のアレイ内のアンテナ素子を介して処理される前記第1の複数の成分信号および前記第2の複数の成分信号の非直線的振幅重み付けプロファイルを提供するように配置され、前記非直線的振幅重み付けプロファイルは、前記建築物屋上の縁部によって生じる回折伝搬損失を最小限に抑えるものである、配備することと、
以下、すなわち
前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークおよび前記少なくとも第1のアレイにより前記伝送用の無線周波数信号を伝送すること、および
前記少なくとも第1のアレイおよび前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークにより前記受信用の無線周波数信号を受信すること
のうちの少なくとも1つを実施することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記配備することが、前記少なくとも第1のアレイの外観が地表面から見たときに最小限にされるように、前記少なくとも第1のアレイを前記建築物屋上の縁部から離して配備することを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記非直線的振幅重み付けプロファイルの振幅重み、および前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの位相重みが、前記フェーズドアレイアンテナシステムの遠方場内である角度範囲にわたって指向性ビームおよび抑制されたサイドローブを展開するように配置され、前記指向性ビームのビームパターンが、セルラモバイル通信ネットワークに好適であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの前記非直線的振幅重み付けプロファイルの振幅重みが、前記少なくとも第1のアレイの前記一端に向かう前記アンテナ素子のうちの50%未満への合計無線周波数電力の少なくとも73%の割り当てを含む、前記無線周波数電力分配を提供するように配置されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの前記非直線的振幅重み付けプロファイルの振幅重みが、前記少なくとも第1のアレイの前記一端に向かう前記アンテナ素子のうちの50%以下への合計無線周波数電力の少なくとも80%の割り当てを含む、前記無線周波数電力分配を提供するように配置されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、前記少なくとも第1のアレイの遠方場放射パターンの上部サイドローブが、前記遠方場放射パターンの主ビームに対して、前記主ビームより最大30度上の範囲にわたって15dB以上抑制されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、前記アンテナシステムが、前記少なくとも第1のアレイを含む複数のアンテナアレイと、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークを含む複数の無線周波数ビームフォーミングネットワークとを備え、前記複数のアンテナアレイおよび前記複数の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、
無線周波数ダイバーシティ方式、
複数のスペクトル帯、および
多次多重入力多重出力応用
のうちの少なくとも1つをサポートするように設計されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、受動の、相互的なビームフォーミングネットワークであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、前記少なくとも第1のアレイが、能動アンテナアレイであり、前記少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、前記アンテナシステムからユーザ特有のビームフォーミングを展開するためにユーザ指向データに適用されるように構成されるプリコーディングベクトルを使用してベースバンドで実装されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、セルラ基地局アンテナに関し、より詳細には、高層建築物の屋上のセットバックなど、高所にあり障害物を伴う場所における改善された性能を有するアンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月13日に出願された米国仮特許出願第62/572,149号に対する優先権を主張するものであり、その全体を本願に引用して援用する。
【0003】
マクロセルラネットワーク内の配備のために設計される基地局アンテナは、典型的には、塔、ポール、および、周囲の他の屋上の平均高さより著しく上にある高さの屋上において、モバイルネットワークトラフィック需要(加入者)の近くに配備される。このマクロセルラ配備は、基地局と加入者端末との間の回折伝搬損失を最小限にし、よってカバレッジ範囲および/または建物内浸透を最大限にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの例では、本開示は、アンテナ素子の少なくとも第1のアレイと、伝送用の無線周波数信号の電力を第1の複数の成分信号に分割するように構成される少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークとを有する、フェーズドアレイアンテナシステムであって、第1の複数の成分信号が、アンテナ素子の少なくとも第1のアレイのための駆動信号を含み、少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークが、アンテナ素子の少なくとも第1のアレイからの第2の複数の成分信号からフェーズドアレイアンテナシステムによる受信用の無線周波数信号を組み合わせるようにさらに構成され、少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの無線周波数電力分配が、少なくとも第1のアレイの一端に向かう複数のアンテナ素子のうちのアンテナ素子を介して処理される第1の複数の成分信号および第2の複数の成分信号の重み付けを提供するように配置される、フェーズドアレイアンテナシステムを提供する。
【0005】
別の例では、本開示は、無線周波数アンテナシステムのアンテナ素子の少なくとも第1のアレイを建築物屋上に配備することを含み得る方法を提供する。1つの例では、アンテナ素子の少なくとも第1のアレイは、無線周波数アンテナシステムの少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークに結合される。1つの例では、少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークは、伝送用の無線周波数信号の電力を第1の複数の成分信号に分割するように構成され、第1の複数の成分信号は、アンテナ素子の少なくとも第1のアレイのための駆動信号を含む。少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークは、アンテナ素子の少なくとも第1のアレイからの第2の複数の成分信号からフェーズドアレイアンテナシステムによる受信用の無線周波数信号を組み合わせるようにさらに構成され得、少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークの無線周波数電力分配は、少なくとも第1のアレイの一端に向かう複数のアンテナ素子のうちのアンテナ素子を介して処理される第1の複数の成分信号および第2の複数の成分信号の重み付けを提供するように配置される。本方法は、少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークおよび少なくとも第1のアレイにより伝送用の無線周波数信号を伝送すること、または少なくとも第1のアレイおよび少なくとも第1の無線周波数ビームフォーミングネットワークにより受信用の無線周波数信号を受信することのうちの少なくとも1つを実施することをさらに含み得る。
【0006】
本開示の教示は、添付の図面と併せて以下の詳細説明を検討することにより容易に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】建築物における例となる基地局アンテナ配備構成を描写する図である。
図2】従来の基地局アンテナ振幅および位相分布、ならびに結果として生じる仰角面における遠方場放射パターンを描写する図である。
図3】屋上最適化された基地局アンテナ振幅および位相分布、ならびに結果として生じる仰角面における遠方場放射パターンを描写する図である。
図4】屋上に配備され、屋上縁部からセットバックされる、従来の基地局アンテナを描写する図である。
図5】屋上に配備され、屋上縁部からセットバックされる、最適化された基地局アンテナを描写する図である。
図6】屋上縁部回折損失なしおよびありの従来のアンテナについて、ならびに屋上縁部回折損失ありの最適化された屋上アンテナについて、地上で受信される信号電力を例証する図である。
図7】積極的な屋上縁部回折損失なしおよびありの従来のアンテナについて、ならびに積極的な屋上縁部回折損失ありの最適化された屋上アンテナについて、地上で受信される信号電力を例証する図である。
図8】縁部回折なしの基地局アンテナについて、および30mの屋上に配備され、屋上縁部から6mセットバックされる基地局アンテナについて、受信した信号強度を例証する図である。
図9】本開示に従う、給電ネットワークと共に例となるアンテナシステムを描写する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を促進するため、同一の参照番号は、可能な場合には、図に共通する同一の要素を指定するために使用されている。
【0009】
本開示は、アンテナが屋上縁部からセットバックして配備されるとき、屋上に配備されたマクロセルラネットワーク基地局アンテナと地上の加入者端末との間の伝搬損失を最適化する(すなわち、最小限にする)ためのソリューションを提示する。1つの例では、修正された振幅分布を有する、ビームフォーミングネットワーク、または分配給電ネットワークは、RF電力のかなりの部分が上部アンテナ素子に割り当てられるように使用される。アンテナアレイに沿ったこのような歪んだRF電力分配が、屋上より上の効果的な高さのRF電力を増大させ、したがって各アンテナ素子から屋上縁部までのグレージング角を低減し、よって屋上縁部にわたって回折損失を低減する。例証的な屋上配備の場合、アレイにわたってより従来型のRF電力分配プロファイルを使用した基地局アンテナと比較して、地上のモバイル端末では最大3dBの伝搬損失の低減が達成され得る。本開示はまた、適切な位相重みが、ロバストな上部サイドローブレベル抑制(USLS)を有するなど、セルラネットワーク配備に好適なアンテナの遠方場内での仰角面ビームパターンを展開するために、そのような「トップヘビーの」重み付けされた振幅分布と共に使用され得ることを例証する。本開示は、受動ビームフォーミングネットワークに限定されず、仰角面における伝搬損失を最適化するためのユーザ特有のビームフォーミングが個々の加入者端末のために達成され得るように、プリコーディング重みがユーザ指向データに適用され得る能動アンテナ配置を利用する例を含む。
【0010】
マクロセルラネットワーク内の配備のために設計される基地局アンテナは、典型的には、塔、ポール、および、周囲の他の屋上の平均高さより著しく上にある高さの屋上において、モバイルネットワークトラフィック需要(加入者)の近くに配備される。このマクロセルラ配備は、基地局と加入者端末との間の回折伝搬損失を最小限にし、よってカバレッジ範囲および/または建物内浸透を最大限にする。屋上アンテナ配備の場合、アンテナは、建築物の側面に取り付けられるアンテナ、典型的にはリフトシャフトまたは他の保守構造物を活用して建築物の最も上に取り付けられるアンテナ、屋上自体に取り付けられるアンテナ、および屋上縁部からセットバックされて取り付けられるアンテナなど、様々なやり方で配備され得る。これらの異なる構成は、それぞれ例110、120、および130として図1に例証される。建築物の側面に取り付けられるアンテナ(例えば、例110)は、アンテナ放射パターンが妨害されないことから、カバレッジを最大限にするのに最適であり得る。しかしながら、この選択肢は、典型的なセルラ基地局サイトの3つのセクタに対応して、建築物の3つの側面においてアンテナ配備を要する。大半の建築物は四角であり、一般的に、3つのセクタは各々が、方位角において120度にわたってカバレッジを提供する必要がある。これは、すべてのアンテナが建築物の側面と同一平面に取り付けられることができず、ブラケットが追加される必要性があることを意味する。これは、時に、特に都市および郊外地域では、用途区分/計画許可の懸念の原因となる。
【0011】
建築物の最も高い部分に配備されるアンテナ(例えば、例120)はまた、最大高さが得られることから、屋上のサイズに応じてカバレッジを最大限にするのに最適であり得る。さらには、この選択肢は、3つすべてのセクタが共同設置されることを可能にし、より単純な配備が促進されることを可能にするが、目障りな配備ソリューションを提示し得る。屋上縁部からセットバックされるアンテナ(例えば、例130)は、アンテナの外観を、特に下の道から隠すのに役立つ。この配備選択肢は、多くの都市において人気があり、多くの場合、計画ガイドラインによって許可される屋上配備の唯一の選択である。セットバック屋上配備の欠点は、屋上縁部または欄干が理由で、アンテナと加入者端末との間に物理的な障害物が存在することである。この障害物は、著しい回折伝搬損失をもたらし得る。これらの回折損失を最小限にすることにより、サービスエリアにわたる改善された信号強度、よって、より大きい建物内浸透ならびに全体としてより良好なサービス品質および体験が可能になる。
【0012】
本開示は、アンテナが屋上縁部からセットバックして配備されるとき、屋上に配備されたマクロセルラネットワーク基地局アンテナと地上の加入者端末との間の伝搬損失を最適化する(すなわち、最小限にする)ための例を提示する。1つの例では、ビームフォーミングネットワーク、または分配給電ネットワークは、RF電力のかなりの部分が上部アンテナ素子に割り当てられるように、修正された振幅分布で使用される。アンテナアレイに沿ったこのような歪んだRF電力分配が、屋上より上の効果的な高さのRF電力を増大させ、したがって各アンテナ素子から屋上縁部までのグレージング角を低減し、よって屋上縁部にわたって回折損失を低減する。本開示はまた、適切な位相重みが、ロバストな上部サイドローブレベル抑制(USLS)を有するなど、セルラネットワーク配備に好適なアンテナの遠方場内での仰角面ビームパターンを展開するために、そのような「トップヘビーの」重み付けされた振幅分布と共に使用され得ることを例証する。
【0013】
ブロードバンドモバイル通信ネットワークのために設計された基地局アンテナは、典型的には、1つ以上のアレイを含み、各アレイが、複数の放射アンテナ素子を備え、アレイは、1つ以上のスペクトル帯をサポートすることができる。各アレイのアンテナ素子は、アンテナアレイによる伝送のための信号を考慮するとき、RF電力をアレイ要素に分配するように設計される、RFビームフォーミングネットワーク、分配ネットワーク、またはRF給電ネットワークに接続される。アレイのアンテナ素子は、典型的には、垂直面に配置され、仰角面に(例えば10度の)比較的狭い放射パターンビームを作成するように設計される。垂直面および仰角面は、同じ面を指し得、前者の用語は、アンテナアレイの物理的配向を指すためにより一般的に使用され、後者の用語は、放射パターンを参照するときにより一般的に使用されるということに留意されたい。位相シフタもまた、典型的には、RF給電ネットワークとアンテナ素子との間で使用される。位相シフタは、アンテナアレイに沿った線形に変化する位相傾斜を付与するため、よって仰角面における放射パターンの視程方向を変化させるために使用される。これは、セルラネットワークカバレッジおよび干渉パラメータを制御および最適化するための可変電気チルト(VET)として知られている。
【0014】
ブロードバンドモバイル通信ネットワークのために設計されたアンテナアレイは、特定の振幅および位相プロファイルを有するRF電力をアンテナ素子に分配するRF給電ネットワークを有し得る。振幅および位相プロファイルは、典型的には、仰角面に最適化された放射パターンを作成するために設計される。マクロセルラネットワーク内に配備される基地局アンテナのための最適化された仰角パターンは、指向性および利得を最大限にするために仰角における狭ビーム幅、サイト間干渉を最小限にするのを助けるために強力な上部サイドローブ抑制(USLS)、サイト間干渉を最小限にするのを助けるために迅速な上部主ビームロールオフ、および基地局サイトに近いカバレッジを最適化するのを助けるために下部サイドローブヌルフィルなどの特定の機能を有し得る。
【0015】
USLSの業界の仕様は、−30度までの上部サイドローブでは>18dBであり、上部サイドローブが、大きさが主ビームよりも18dB低いこと(>18dB)を意味する。1つの例では、本開示は、遠方場放射パターンの主ビームに対して、主ビームより最大30度上の範囲にわたって、15dB以上の遠方場放射パターンの上部サイドローブ抑制を提供する。最小サイドローブを確実にすることを助ける例となる振幅分布は、図2のグラフ290に例証される。図2に例証されるように、基地局アンテナ(100)は、7つの交差偏アンテナ素子(110〜116)のアレイを備える。アンテナ素子(110〜116)は、アンテナの内部にあり得る分配ネットワーク(図示せず)に接続され、中央の素子を中心に対称的に先細になった振幅プロファイル(120〜126)を伴う。アレイにわたる平坦な位相プロファイル(130)が、図2に示され、これは、良好なUSLSおよび指向性主ビームを伴って、グラフ295に例証される仰角面における遠方場放射パターン(140)を結果としてもたらす(仰角を相対利得に関連させる)。良好なUSLSを達成する他の実装形態が存在する。示されないが、1つの方法は、すべての素子で等しい振幅を有するが、アレイに沿って変化する特定の位相プロファイルを使用する。この手法は、素子ごとの大きな位相変化が使用されることから、「位相スポイリング」と称されている。そのような基地局アンテナは、アンテナの近方場の近くに、またはアンテナの近方場内に障害物がほとんどないか全くない、塔、建築物の側面、および建築物の1番上での配備のために設計される。
【0016】
1つの例では、本開示は、アレイの上端にあるアンテナ素子に著しく高い振幅重みが割り当てられている振幅分布、すなわち「トップヘビーの」振幅分布、を有するアンテナ素子のアレイを有する基地局アンテナを含む。加えて、仰角面における実際の基地局アンテナ放射パターンは、そのような「トップヘビーの」振幅分布を用いて設計され得る。例は、図3に例証される。基地局アンテナ(200)は、7つの交差偏アンテナ素子(210〜216)のアレイを備える。アンテナ素子は、アンテナの内部にあり得る分配ネットワーク(図示せず)に接続され、アレイにわたる、「トップヘビーの」振幅プロファイル、または振幅分布(220〜226)および位相プロファイル(230)がグラフ390に例証されている。このような振幅および位相プロファイルは、グラフ395に例証される仰角面における遠方場放射パターン(240)を結果としてもたらす(仰角を相対利得に関連させる)。参照として、先細の中央に重み付けされた分布についての放射パターンは、(140)に示される。例となる「トップヘビーの」振幅分布(220〜226)および位相重み分布(230)は、良好なUSLS(例えば、18dBよりも良好)を有する仰角面における遠方場放射パターン(240)、指向性主ビーム、および中央に重み付けされた先細の振幅分布を有する図2のアレイ(100)と比較して、非常に類似した上部主ビームロールオフ放射パターンを作成する。1つの例では、位相プロファイル(230)は、入力として所望の遠方場放射パターン(例えば、上部サイドローブを含む)に基づいて自己最適化アルゴリズムに従って選択され得る。しかしながら、「トップヘビーの」振幅分布は、中央に重み付けされた先細の振幅分布に対していくらかの指向性を失う傾向があること、この例では、約0.5dBの指向性損失、を見ることができる。
【0017】
しかしながら、現在の開示は、アンテナと加入者端末との間にいくつかの障害物を有する、基地局アンテナを対象としており、障害物は、例えば、屋上に配備され、屋上縁部からセットバックされるアンテナなどの基地局アンテナの近くにある。これらの配備ケースでは、遠方場放射パターン、特に水平線より下の角度にあるものは、アンテナアレイの近方場内にある、またはその近くにある屋上縁部によって著しく妨げられることになるため、より低い指向性は、特には問題ではない。実際、本開示の例は、改善された効果的な利得、よって、水平線より下の角度における改善されたセルラサービスカバレッジを提供するために設計される。
【0018】
アンテナアレイから放射される電力は、単一地点から放射されるのではなく、いくつかの地点、すなわちアンテナ素子から放射される。加入者端末において受信される、結果として生じる信号電力は、アンテナの遠方場内にあり、各アンテナ素子からの個々の成分信号のベクトル和に、無線チャネル内にもたらされた任意の多重反射のベクトル和を足したものである。アンテナアレイが屋上にあり屋上縁部からセットバックされるシナリオにおいて、屋上縁部は、アンテナと加入者端末との間に回折損失をもたらす。屋上により近く、アレイの底にあるアンテナ素子は、加入者に対して最も大きい回折損失を有する一方、アンテナアレイの上部により近いアンテナ素子は、最も小さい回折損失を有する。
【0019】
図4は、建築物(10)の屋上に配備され、屋上縁部から距離xだけセットバックされる従来型の基地局アンテナ(100)(例えば、アンテナアレイ)を使用した例となる配備シナリオ400を例証する。基地局アンテナ(100)は、振幅重み(120〜126)で示される、アンテナアレイにわたる中央に重み付けされた先細の振幅分布を有する。無線チャネルによってもたらされる多重反射がない、または非常に弱いと仮定すると、加入者端末(300)で受信される電力は、伝搬路(150〜156)でそれぞれ示されるアンテナ素子から放射される成分信号のベクトル和の関数である。伝搬路の線(150〜156)は、アンテナ素子の各々からの成分信号の相対電力に応じて異なる厚さを有する。
【0020】
図5は、建築物(10)の屋上に配備され、屋上縁部から距離xだけセットバックされる、本開示に従う最適化された基地局アンテナ(200)(例えば、アンテナアレイ)を使用した例となる配備シナリオ500を例証する。基地局アンテナ(200)は、振幅重み(220〜226)で示される、アンテナアレイにわたる「トップヘビーの」振幅分布を有する。無線チャネルによってもたらされる多重反射がない、または非常に弱いと仮定すると、加入者端末(300)で受信される電力は、伝搬路(250〜256)でそれぞれ示されるアンテナ素子から放射される成分信号のベクトル和である。この例では、一番上の素子が、最も強い電力を有し、最も低い回折損失を被る。伝搬路の線(250〜256)は、アンテナ素子の各々からの成分信号の相対電力に応じて異なる厚さを有する。この配置は、加入者端末に到達する合計電力を最適化する一方、セルラ配備に望ましい仰角パターンプロパティを依然として維持する。当然ながら、すべてのRF電力を一番上の素子に割り当てて、他の素子に電力を割り当てないことは、加入者端末において最大電力を結果としてもたらすが、これは、セルラネットワークのためのサイト間干渉を管理するのに望ましいであろう十分なUSLSおよび主ビームロールオフ特徴を有する望ましい仰角放射パターンを作成することができない。水平線のおよそ周辺および水平線より上の角度でのアンテナ仰角パターンに対する屋上縁部回折の影響は、近隣セルと基地局アンテナ(200)との間の角度が浅くなり、よって屋上縁部にわたる回折が小さくなることから、はるかに少ないということは注目に値する。そのようなものとして、上部サイドローブおよび主ビームロールオフの受ける影響は少なくなる。
【0021】
本開示は、アンテナアレイと加入者端末との間に少なくとも1つの回折縁部が存在する、または存在することが予測されるアンテナアレイ配備のために「トップヘビーの」アンテナアレイ振幅分布を利用する。「トップヘビーの」振幅分布は、セルラネットワーク配備に望ましい仰角面放射パターン、特に上部主ビームロールオフおよびUSLS、を維持する一方で、加入者端末において受信される電力を最大限にすることが意図される。本開示はまた、従来型のアンテナアレイでより一般的な振幅分布を使用したときに加入者端末において受信される電力よりも、加入者端末において多くの電力を達成することが意図される。
【0022】
図6は、dBmでの地上における受信信号電力についてのシミュレーション結果、よって、(1)回折損失なしで屋上縁部に配備される、中央に重み付けされた先細の振幅分布を有する従来型の基地局アンテナアレイ、(2)屋上に配備されるが屋上縁部から6mセットバックされ、故に縁部回折損失を被る、中央に重み付けされた先細の振幅分布を有する従来型の基地局アンテナアレイ、および(3)屋上に配備されるが屋上縁部から6mセットバックされ、故に縁部回折損失を被る、「トップヘビーの」振幅分布を有する屋上最適化された基地局アンテナアレイという3つのケースについて、基地局アンテナからの距離の関数として加入者端末が受信し得るものを伴う、グラフ600を示す。
【0023】
図6の例では、シミュレートされたアンテナは、30mの高さにあり、750MHzで5oの仰角ビームチルトで2.4mの長さにわたって7つのアンテナ素子を備える。グラフは、地上における信号が、屋上最適化された基地局アンテナアレイを使用して、すべての関連距離について従来型のアンテナアレイよりも改善されることを示し、最大で3dBの信号強度改善が見られる。すべての回折損失を回復することは決してできないが、1〜3dBの信号強度改善は、アップリンクおよびダウンリンク両方のチャネルが低減された回折損失から利益を得るため、ネットワーク性能、ならびに、サービスカバレッジ、ブロードバンドデータスループット、およびバッテリ寿命に関するユーザ体験に対する、意義のある改善である。1つの例では、本開示なしに3dB利得を達成するには、2倍のアレイ長のアンテナが使用される必要がある。
【0024】
図7は、dBmでの地上での受信信号電力についての追加のシミュレーション結果、よって、上と同じ3つのケースについて、より深刻な回折縁部を伴う場合に基地局アンテナからの距離の関数として加入者端末が受信し得るものを伴う、グラフ700を示す。図7では、第2の2つの例のためのアンテナが、屋上に配備され、図6の例のように6mセットバックされるが、1mのパラペット壁も存在する。このパラペット壁が、より大きい回折損失をもたらすことになる。図7は、地上における信号が、屋上最適化されたアンテナアレイを使用して、すべての関連距離について従来のアンテナアレイよりも改善されることを示し、約4dBの一貫した信号強度改善が観察される。
【0025】
図8は、(a)いかなる障害物もなし(パターン800)、および(b)屋上に配備され、屋上縁部から6mセットバックされるとき(パターン810)の、30m基地局アンテナ高さについて、基地局アンテナからの垂直高さおよび水平距離の関数としての仰角面における信号強度の変動を描写する。シミュレートされた基地局アンテナは、750MHzで5度の仰角ビームチルトで2.4mの長さにわたって7つのアンテナ素子を備える。図8は、屋上縁部を超えて伝搬し、地上の加入者端末にサーブしようとするときに著しい信号減衰があることを例証する。この場合、2つのケースの間で地上の信号強度において約10dBの減衰があり、図6で観察されるものに関連する。しかしながら、図8は、信号電力が、水平線に向かう角度および水平線より上の角度では減衰されることも明らかにする。この減衰は、サイト間干渉をさらに減少させることを助けることに関して有用であり得るか、または、屋上に配備され、屋上縁部からセットバックされる場合には、上部サイドローブがさらに低減されることになるため、代替的に、アンテナ設計の上部サイドローブ抑制(USLS)仕様の緩和を可能にする。この追加の設計自由度は、地上での信号強度を最大限にするために、より最適な振幅および位相重み分布を提供し得る。
【0026】
屋上に配備され、屋上縁部からセットバックされる基地局アンテナは、多くの場合、アンテナによって屋上で放射される外部PIM源によって引き起こされる受動相互変調(PIM)干渉に陥りやすい。そのような外部PIM源は、ケーブル、金属導管、金属ベント、格子、ねじ、ボルト、および他の器具を含む。特に異種金属または酸化を伴う、ゆるい金属接合を有し得るこれらのアイテムのいずれかは、外部PIM干渉の強力な源になり得る。本開示の追加の利益は、最も強いRF信号成分を放射する本開示のアンテナ素子が、アンテナアレイの一番上、またはその近くにある素子であるため、屋上の外部PIM源によって生成されるPIM干渉を低減することを助けることである。そのようなものとして、これらのより高い電力放射源は、アンテナアレイに沿ったRF電力の中央に重み付けされた先細の振幅分布を有する従来型のアンテナの場合よりも、潜在的なPIM源からさらに離れている。
【0027】
セルラモバイル通信ネットワーク内の配備に好適なアンテナシステムは、同じレードーム内の、また同じ背面板/反射鏡を共有する、複数アレイを含み得る。追加のアレイは、偏波ダイバーシティ、高次多重入力多重出力(MIMO)(例えば、4×4、6×6、8×8などの多次MIMO)空間処理が活用されること、および追加のスペクトル帯をサポートすることを可能にするために使用され得る。これらの追加のアレイは、同じRFビームフォーミングネットワーク、または1つもしくは複数の異なるRFビームフォーミングネットワークを利用し得る。
【0028】
本開示の例は、受動の、相互的な分配ネットワーク(例えば、アップリンクおよびダウンリンクで同じ分配ネットワーク構成要素)を使用するアンテナアレイを含み得るか、または、振幅および位相重みが、RF電力振幅の前に、低電力RF、中間周波数(IF)、ベースバンド、またはユーザ特有のベースバンドのいずれかで生成される能動アンテナアレイを含み得る。後者の場合、アンテナアレイにわたって特定のユーザを対象とした情報をプリコードすることが可能であり、個々の加入者端末のために仰角面における経路損失を最小限にするためにユーザ特有のビームフォーミングをもたらす。
【0029】
図9は、本開示に従う、受動ビームフォーミング給電ネットワークを実装する例となるアンテナシステム(200)を描写する。アンテナシステム(200)による伝送用および/または受信用の基地局無線からの接続が意図されるRF信号ポート(201)は、RFスプリッタ(202、203、204、205、206)からなる給電ネットワークに接続される。給電ネットワークは、7つの共偏されるアンテナ素子(210〜216)に接続する。任意選択の可変位相シフタ(270〜276)は、放射された仰角パターンのチルトを変化させるために給電ネットワークとアンテナ素子(210〜216)との間で使用され得る。このように、給電ネットワークは、ポート(201)における伝送が意図されるRF信号の電力を、アンテナ素子(210〜216)のアレイのための駆動信号として使用されるように複数の成分信号に分割する。RFスプリッタの配置および特定のRF電力分割比は、図9に示される。この例では、ポート(201)において印加される信号の合計RF電力の73%が上3つのアンテナ素子に割り当てられることが分かる。電圧振幅項における結果として生じる振幅プロファイルは、グラフ900において、アンテナ素子(210〜216)に対応する振幅(220〜226)により例証される。信号入力ポート(201)からアンテナ素子(210〜216)までの位相長さは、どのように給電ネットワークが物理的に実装されるかに応じて、ケーブル長さまたは回路基板トラック長さを使用して調節され得る。アンテナ素子のための意図される位相重みは、位相プロファイル(230)として描写される。そのようなものとして、RFビームフォーミングネットワークの振幅重みおよび位相重みは、アンテナシステム(200)の遠方場内である角度範囲にわたって指向性ビームおよび抑制されたサイドローブを展開するように、したがってセルラモバイル通信ネットワークに好適である指向性ビームのビームパターンを提供するように、配置される。
【0030】
異なるスプリッタの配置、異なる分割比、および図9に示されるものとは異なる数の分岐を有する異なるスプリッタが、同じまたは同様の振幅プロファイルを達成し得る。したがたって、本開示は、著しい電力が最も上のアンテナ素子に割り当てられているが、依然として、例えば、15dBまたはそれより良好なUSLSを伴う、遠方場放射パターンを作成することができる他の給電ネットワークを利用し得る。
【0031】
加えて、アップリンク通信に関して、分配ネットワークはまた、複数の成分信号からのアンテナアレイによる受信が意図されるRF信号を組み合わせるように構成されるということに留意されたい。1つの例では、ポート(201)において印加される信号の合計RF電力の73%が、アレイの一端(例えば、一番上)に向かうアンテナ素子のうちの50%以下(例えば、アンテナ素子(210、211))に割り当てられる。別の例では、ポート(201)において印加される信号の合計RF電力の80%が、アレイの一端(例えば、一番上)に向かうアンテナ素子のうちの50%以下に割り当てられる。1つの例では、アンテナシステム(200)は、フェーズドアレイアンテナシステムの外観が地表面から見たときに最小限にされるように、建築物屋上での配備、または建築物屋上の縁部から著しく離れて配備されること(例えば、3m以上(例えば、6m、10mなどセットバックされる))ことが意図される。
【0032】
前述は、本開示の1つ以上の態様に従う様々な例を説明するが、本開示の1つ以上の態様に従う他の例およびさらなる例が、後に続く特許請求項およびそれらの等価物によって決定される本開示の範囲から逸脱することなく考案され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9