(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6858324
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】防蚊機能を確認する装置及びそれを用いた試験方法
(51)【国際特許分類】
A01K 67/033 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-101261(P2020-101261)
(22)【出願日】2020年5月13日
【審査請求日】2020年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208260
【氏名又は名称】大和化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村松 高広
(72)【発明者】
【氏名】長坂 俊
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−023439(JP,A)
【文献】
特開2006−169209(JP,A)
【文献】
特許第6200126(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、開閉可能な蚊投入口を有する収容体と、
誘引餌を収納し、誘引餌表面を被覆する人工皮膚を備えた給餌容器と、
前記給餌容器を保温する保温器を有する誘引試料と、
を備え、
前記開口部に隙間なく装着された前記誘引試料を有し、
前記収容体は、直径70mm以上100mm以下、長さ130mm以上260mm以下、体積500mL以上1L以下の、開口部を有する円筒形状の容器であり、該開口部に誘引試料が装着された防蚊性試験装置。
【請求項2】
前記収容体の開口部には封止部材を設け蚊の出入りができないように隙間なく前記誘引試料を装着され、収容体の少なくとも一部は透明または半透明な材質からなり、蚊投入口は収容体中央部に設けられ、興奮物質の充満を防ぐための排気口を収容体に設け、興奮物質を供給するための供給口を収容体に備えた請求項1または2に記載の防蚊性試験装置。
【請求項3】
前記誘引試料は、内部に液体の誘引餌貯留した給餌容器の表面を人工皮膚で蓋をし、人工皮膚表面に試験試料を密着し、給餌容器を保温器に取り付けた請求項1から3のいずれかに記載の防蚊性試験装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の防蚊性試験装置を45±20度に傾けて設置する工程と、蚊を一度に収容体内に投入する工程と、興奮物質を適宜注入する工程と、前記試料の効果を計測する計測工程を備える防蚊性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蚊機能を確認する装置に関する。
詳しくは、防蚊成分を加工された物質について、防蚊機能についての判断を行える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間社会の生活において、不快害虫や衛生害虫など、生物に対して様々な影響を及ぼす虫が存在する。中でも蚊は伝染病を媒介する恐れもあり、蚊に対する防虫機能は重要視されており、防虫成分を用いた様々な製品が開発されている。
しかし、そのような製品が防虫機能を持つということを示すには、客観的な視点からの試験結果が求められている。そのため、本発明のように防虫機能を客観的に判断するための装置が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1の試験方法について、羽化後1〜2週間かつ未吸血の蚊を布ケージに入れ、実験者の片方の腕に袋状にした試験布をはめて差し入れ、定めた時間の止まり数と吸血行動の動作を示した蚊の個体数を数えて忌避指数を求めることが記載されている。
特許文献2には羽化後1〜2週間かつ未吸面の蚊を布ケージに入れ、試験品と対照品でそれぞれ処理したラットを各々金網袋に入れて固定し、3分後の止まり数と吸血行動の動作を示した蚊の個体数を数えて、試験品と対照区それぞれの数から、忌避指数を求めることが記載されている。
特許文献3の試験装置は収容体外面に一対のレールを設け、試料ホルダをそのレールに摺動させることにより試料を収容体内部に露出させるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−023439号公報
【特許文献2】特開2006−169209号公報
【特許文献3】特許第6200126号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2の試験について、人体やラットなどを用いるため、その日の生体の状態が影響することになり、客観的な評価を得るのが難しい。
特許文献3の試験装置は収容体外面に一対のレールを設けるため、収容体の形状は少なくともレールを形成できる分だけ大きくなる。そして、少なくともレール形成面は4角型または一対のレールを形成できるに十分な面積を備えた形状になる。その結果、収容体内面の試料の露出面は、露出面が形成された面のほんの一部となる。そうすると、収容体内部の蚊の密度を増加させるにはより多くの蚊が必要となる。
本発明では、防虫機能を客観的に判断するための装置として、レールを設けることがなく、収容体内面に占める試料の露出面の面積をより多くすることにより、より精度の高い防蚊試験向け装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防蚊性試験装置は、開口部11と蚊投入口2以外は閉じられ、開口部11にクッション材を備えることで誘引試料を隙間なく装着することが出来、それにより蚊投入口2以外から蚊の出入りが不可となる、誘引餌への誘引が起きやすくなるよう後述の通り大きさと形状が指定された収容体1
及び、自在に開閉し、試験中の蚊の出入りが不可となるよう作られている蚊投入口2 及び、収容体1内部にさらされる、液体である誘引餌12を保持する為の給餌容器7の蓋となる人工皮膚5、誘引餌12と人工皮膚5を含めた給餌容器7の温度を調節する保温器6、人工皮膚5と接触する試験試料4により構成された直径60mmの誘引試料14、 を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、防虫機能を客観的に判断するための装置として、レールを設けることがなく、収容体内面に占める試料の露出面の面積をより多くすることにより、より精度の高い防蚊試験向け装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の防蚊性試験装置のうち試験試料部分の詳細図
【
図4】本発明の防蚊性試験装置を用いた防蚊機能確認試験の実施する際の設置図
【発明を実施するための形態】
【0009】
試験装置の特徴としては、円筒形容器端面に円形試料を接続、容器内のそれぞれの蚊は基本的に円筒形容器の長さ方向に移動することで試料面に到達し、容器内の場所による試料への距離が均一化できる。そのため、試験の精度が向上し、より多くの蚊を誘引する試験結果の場合には多くの蚊を誘引し、また蚊を誘引できない試験結果の場合にはより少ない蚊しか寄らない。
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、この開示で蚊は、ハエ目糸角亜目カ科に属する昆虫を指す。
【0011】
図1は、本発明の防蚊性試験装置の正面図、
図2は本発明の防蚊性試験装置の側面図である。防蚊性試験装置は、蚊投入口2が形成され、開口部11に、試験試料4、人工皮膚5、保温器6、給餌容器7及びそこに投入する誘引餌12から構成される誘引試料14を装着することにより、蚊投入口2以外は蚊が通過するのを不能に閉じられ、内部に蚊を収容しうる収容体1から構成されている。
開口部11はクッション材やプラスチック材等を用いて、誘引試料14を蚊の出入りができないように隙間なく装着できる。
収容体1は直径70mm以上100mm以下、長さ130mm以上260mm以下、体積500mL以上1L以下の円筒の容器で作成される。収容体1は外側から蚊投入口2を覆いうる板状の蚊投入口カバー3を備える。
【0012】
収容体1の少なくとも一部は、透明また半透明な材質で構成され、内部が確認できる。収容体1には蚊投入口2、給気口9を備える。興奮物質を収容体1に送り込む給気チューブ8を給気口9に差し込む。興奮物質の過剰な充満を防ぐため、収容体1の側面には排気口10を備える。
【0013】
蚊投入口カバー3は、蚊投入口2を閉じることで試験中は外部と完全に遮断できる。蚊投入口カバー3の形状はどのようなものでもよい。スライド式とする場合は透明または半透明の材質で構成し、内部の確認を阻害しないものとする。栓状の蚊投入カバーとする場合はゴムまたはプラスチック製の栓を使用し隙間なく遮断する。
【0014】
図3は誘引試料14の詳細を示す。誘引試料14は試験試料4、人工皮膚5、保温器6、給餌容器7及びそこに投入する誘引餌12から構成される。
【0015】
試験試料4は、主に防虫処理が施された織物、または、防虫処理が施されていない織物である。試料は織物に限らず、誘引餌12を完全に遮断しないかつ蚊が吸血を行う際に支障が無い物質であれば不織布、フィルム、紙または樹脂板でも良い。
【0016】
人工皮膚5は、液体である人工血液を保持するため、豚や羊から採取した腸ケーシング、プラスチックパラフィンフィルムや人工ケーシング等である。なお、蚊からの吸血率を一定とするために、豚や羊から採取した腸ケーシングの塩を洗い流し、一晩水に浸したものを用いるほうがよい。
【0017】
保温器6は、誘引餌12の液体を定めた温度に保つ、図示しない温度センサとヒータを備える。そして温度ヒータとセンサは図示しない制御装置に接続される。保温器6は上部が開かれている給餌容器7を備えており、誘引餌12を注入できる。誘引餌12は主に馬や牛の血液を主成分とする液体を用いる。誘引餌12の温度を動物の体温程度である34±2度に保つように制御する。
【0018】
誘引試料14は、人工皮膚5で保温器6が備えている給餌容器7の上部を覆うことで密閉し、給餌容器7にシリンジ等を用いて空気が入らないよう誘引餌12を注入し、保温器6と試験試料4が給餌容器7に密着するように固定することによって作成される。
【0019】
試験手順の1例を示す。まず、防蚊性試験装置を準備する。給餌容器7は前項の手順にて作成し、収容体1と組み合わせる。防蚊性試験装置に興奮物質を供給するための給気チューブ8を給気口9から取り付ける。蚊投入口2より蚊を投入し、興奮物質を適宜供給する。試験試料に静止している蚊数を測定する等を行うことで、防蚊性能を評価する。
【0020】
防蚊性試験装置は給餌容器7と収容体1が、レールにより可働するのではなく、収容体1の開口部11に試験試料4を装着した保温器6の大きさにクッション材とプラスチック板を用いて調整し隙間なく装着、またはネジで隙間なく装着することにより位置を保持する。蚊投入口2が閉まっていることを確認する。これにより、蚊が試験開始時から終了時まで自由に出入りすることが不可となり、密閉空間での試験が可能となる。また、この装置について直角部・平面部を極力無くすことにより、直角部・平面部に蚊が集まることを回避することが出来る。
【0021】
図4は実際に試験を実施する際の設置図を示す。試験を実施する際は防蚊試験装置を45±20度に傾けて固定して試験を行う。
【0022】
蚊投入口2から蚊を投入する際はチューブ等に蚊を採取し、一気に吹き込む等の方法で行う。このような方法により、開始時間のずれを可能な限り少なくできる。投入する蚊の数は試験状況によって調整を行う。
【0023】
給気チューブ8より供給する興奮物質としては炭酸ガスを用いる。供給量が多すぎると蚊が眠ってしまうため、投入量は調整を行う。
【0024】
防蚊性の評価方法については試験試料4に静止している蚊数を測定する以外にも防蚊機能を付与した試験試料に静止した蚊がノックダウンした数の測定、一定時間経過後の蚊の腹部を潰すことで吸血数の確認など、様々な方法が考えられる。
【実施例】
【0025】
表1に本発明による防蚊性確認試験と「JIS L1950−1 生地の防蚊性試験方法」における蚊の誘引能力の差を示す。なお、最多蚊静止率は蚊の静止数/全体の蚊投入数にて算出した。
なお、「JIS L1950−1 生地の防蚊性試験方法」の収容体は200mm×200mm×380mmで体積が15.2Lの直方体、試料面は直径60mmを収容体の1つの面に並べて3箇所配置し、蚊の投入が30頭であるのに対し、本発明での収容体は直径70mm、長さ130mm、体積が500mLの円筒、試料面が直径60mmを1箇所、蚊の投入が20頭とした。
本発明では、収容体内部の各蚊から試料までの直線距離が短く、蚊に対する誘引性能が上がっているため試験試料による忌避性能差が出やすく、試験の精度が上がる。
【0026】
【表1】
蚊の頭数を5頭、10頭、15頭に減らした場合においても、同等に約6割の最多蚊静率が得られる。
【0027】
表2に本発明の根拠として、直径70mm、長さ130mm、体積500mLにて作成された収容体1を用いた結果及び直径70mm、長さ260mm、体積1Lにて作成された収容体1を用いた結果を記載する。最多蚊静止率は前述と同様の方法で算出した。
収容体内部の全面積に対して誘引試料14の面積の割合が大きく、収容体の体積に対して蚊の密度が高く、収容体内のどの位置からでも誘引試料14までの直線距離が短い。
【0028】
【表2】
【符号の説明】
1.収容体
2.蚊投入口
3.蚊投入口カバー
4.試験試料
5.人工皮膚
6.保温器
7.給餌容器
8.給気チューブ
9.給気口
10.排気口
11.開口部
12.誘引餌
13.液体注入口およびプラスチック栓
14.誘引試料
【要約】
【課題】 既存防蚊性確認試験装置について、幅広い虫を対象としているため、加えて装置の大きさや形状が指定されておらず、特定の生物に対して精度の高い試験を行うことが出来ない。
【解決手段】 開口部と、開閉可能な蚊投入口を有する収容体と、
誘引餌を収納し、誘引餌表面を被覆する人工皮膚を備えた給餌容器と、
前記給餌容器を保温する保温器を有する誘引試料と、
を備え、
前記開口部に隙間なく装着された前記誘引試料を有し、
前記収容体は、直径70mm以上100mm以下、長さ130mm以上260mm以下、体積500mL以上1L以下の、開口部を有する円筒形状の容器であり、該開口部に誘引試料が装着された防蚊性試験装置。
【選択図】なし