(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858340
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】浴室の排水構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20210405BHJP
E03C 1/28 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
E03C1/20 E
E03C1/28 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-53846(P2016-53846)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2017-166257(P2017-166257A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藤 健
(72)【発明者】
【氏名】栗原 幸二
(72)【発明者】
【氏名】石間 敦
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
実公平06−001990(JP,Y2)
【文献】
特開平11−006183(JP,A)
【文献】
特開2010−148745(JP,A)
【文献】
特開2001−182118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、この浴槽に隣接する洗い場床を備えた浴室の排水構造であって、
前記浴槽の底面に設けられた第1の排水口に一端が接続される第1の排水配管と、
前記洗い場床に設けられた第2の排水口に一端が接続される第2の排水配管と、を備え、
前記第1の排水配管および第2の排水配管の他端は、途中で合流することなく前記浴室に隣接する脱衣室の床下に配設された排水トラップに接続され、
前記第2の排水配管は、前記脱衣室側に向かって下降傾斜する傾斜管部を有し、
前記第2の排水口は、長手方向と短手方向とを有する前記洗い場床の長手方向に対して略中央の位置に配置されるとともに、前記洗い場床は、前記第2の排水口に向かって下降傾斜しており、
前記第1の排水配管および第2の排水配管は、横断面形状が横長偏平形状となるよう構成されており、
前記第2の排水配管は、前記第2の排水口から前記排水トラップに接続される途中で、平面視において屈曲していることを特徴とする浴室の排水構造。
【請求項2】
前記排水トラップは、前記脱衣室に配置された洗濯機パンに接続されている洗濯機パン用排水トラップであることを特徴とする請求項1に記載の浴室の排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一端が浴槽の排水口に接続された排水配管の他端を、洗い場床の排水口の下方に配設された排水トラップへ接続した浴室の排水構造が知られている。通常、洗い場床は排水口へ向かって下降傾斜しており、排水口は洗い場床の中でも最も低い位置にあることから、従来の排水構造では洗い場床下に必要な空間の高さが高く、これにより洗い場床の高さを高くせざるを得なかった。
【0003】
一方、住宅のバリアフリー化のために、上記排水構造を採用している浴室よりも洗い場床の高さを低く抑えられる(低床化)排水構造が知られている。特許文献1に記載の構造では、洗い場床の一部を他の部分よりも一段高くし、その一段高い洗い場床の下方に排水トラップを配置することで、洗い場床の低床化を図るものである。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の排水構造では、洗い場床の一部を他の部分よりも一段高くする必要があるため、浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招いてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−59654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招くことなく、洗い場床の低床化が可能な浴室の排水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る浴室の排水構造は、浴槽と、この浴槽に隣接する洗い場床を備えた浴室の排水構造であって、前記浴槽の底面に設けられた第1の排水口に一端が接続される第1の排水配管と、前記洗い場床に設けられた第2の排水口に一端が接続される第2の排水配管と、を備え、前記第1の排水配管および第2の排水配管の他端は、途中で合流することなく前記浴室に隣接する脱衣室の床下に配設された排水トラップに接続され、前記第2の排水配管は、前記脱衣室側に向かって下降傾斜する傾斜管部を有し、前記第2の排水口は、長手方向と短手方向とを有する前記洗い場床の長手方向に対して略中央の位置に配置されるとともに、前記洗い場床は、前記第2の排水口に向かって下降傾斜して
おり、前記第1の排水配管および第2の排水配管は、横断面形状が横長偏平形状となるよう構成されており、前記第2の排水配管は、前記第2の排水口から前記排水トラップに接続される途中で、平面視において屈曲していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る排水構造においては、床面に傾斜を設ける必要がない脱衣室の床下の空間を有効に活用することで、洗い場床の低床化を可能にしている。すなわち、脱衣室の床下に配設された排水トラップに第1の排水配管および第2の排水配管が接続されるよう構成することで、従来のような洗い場床の下方への排水トラップの配設を不要としている。したがって、洗い場床の下方に排水トラップを収納する空間を設ける必要がないため、浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招くことなく、洗い場床の低床化が可能となる。
【0009】
また、第1の排水配管および第2の排水配管の他端は、途中で合流することなく浴室に隣接する脱衣室の床下に配設された排水トラップに接続されるよう構成しているため、排水トラップよりも上流側において、洗い場からの排水および浴槽からの排水の両者を一本の排水配管で排水する必要がない。したがって、洗い場床および浴槽の両者から大量の排水が排水配管に流れ込んだ場合であっても排水性を確保できるよう、内部流路の断面積が大きな排水配管を用いる必要がなくなる。よって、洗い場床の下に配設される第1の排水配管および第2の排水配管それぞれに高さ方向の寸法が小さな排水配管を用いやすくなるため、より確実に浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招くことなく、洗い場床の低床化が可能となる。
【0011】
この好ましい態様の浴室の排水構造においては、洗い場床の下に配設される第1の排水配管および第2の排水配管の横断面形状が横長偏平形状に設けられているため、横断面形状が真円形状の場合と比べて、内部流路の断面積を小さくすることなく、第1の排水配管および第2の排水配管を薄型化することができる。したがって、第1の排水配管および第2の排水配管の排水能力を低下させることなく、より確実に洗い場床の低床化が可能となる。
【0012】
また、本発明に係る浴室の排水構造では、前記排水トラップは、前記脱衣室に配置された洗濯機パンに接続されている洗濯機パン用排水トラップであることも好ましい。
【0013】
この好ましい態様の浴室の排水構造においては、洗濯機パン用排水トラップとは別に排水トラップを設ける必要がないため、メンテナンスの手間や部材費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の浴室の排水構造によれば、浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招くことなく、洗い場床の低床化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る浴室および脱衣室の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る浴室および脱衣室の平面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る浴室および脱衣室を裏から見た図。
【
図4】本発明の実施形態に係る浴室および脱衣室の
図2におけるX−X断面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る傾斜管部411、421が接続された排水トラップ23の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる浴室1および脱衣室2の斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る浴室1および脱衣室2の平面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る浴室1および脱衣室2を裏から見た図である。
図4は、
図2の浴室1および脱衣室2におけるX−X断面図である。
【0017】
浴室1は、浴槽11、洗い場床12、および浴室1内の空間を囲む壁パネル13を有している。浴槽11の底面および洗い場床12には、それぞれ、排水口111、121が設けられている。洗い場床12は、全体的に排水凹部122に設けられた排水口121に向かって下降傾斜している。なお、通常時には、排水口121は、排水凹部122に載置される図示しない蓋によって覆われている。また、浴槽11および洗い場床12は、浴室1と脱衣室2の下方に存在するスラブ面6に載置された架台7によって支持されている。
【0018】
脱衣室2は、床21と床21の周縁から立設する図示しない壁を有している。床21には洗濯機パン3が取り付けられていると共に、床21の上には洗面化粧台5が載置されている。また、浴室の出入り口14の近傍の床21(浴室寄りの床)には、点検口211(開口)が形成されており、この点検口211を塞ぐように点検口蓋212が設けられている。また、点検口蓋212は床21の一部として構成されていると共に、取り外し可能に構成されている。このように構成することで、排水トラップ23のメンテナンスが可能となる。また、点検口211の周縁には点検口211を裏側から覆うようにして凹状部材22が取り付けられている。凹状部材22の底面には、排水トラップ23の上端が露出する形で排水トラップが取り付けられている。
【0019】
なお、スラブ面6よりも上方かつ洗い場床12および床21の下方の空間に、排水トラップ23、洗濯機パン用排水トラップ32、排水口111と排水トラップ23とを繋ぐ排水配管41、および、排水口121と排水トラップ23とを繋ぐ排水配管42が配設されている。排水配管41の一端は排水口111と連通するよう排水口111に接続され、他端は排水トラップ23に接続されている。排水配管42の接続についても同様である。
【0020】
本発明の実施形態では、床21に傾斜を設ける必要がない脱衣室2の床21の下に配設された排水トラップ23に排水配管41、42を接続しているため、洗い場床12の下方に排水トラップ23を配設する必要がない。したがって、洗い場床12の下方に排水トラップ23を収納する空間を設ける必要がないため、浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招くことなく、洗い場床12の低床化が可能となる。
【0021】
また、本発明の実施形態では、排水口111に一端が接続されている排水配管41および排水口121に一端が接続されている排水配管42は、他端が排水トラップ23に接続される前に互いに合流することなく、排水トラップ23に接続されている。すなわち、排水口111側から排水トラップ23側へ向かって延びる排水配管41と排水口121側から排水トラップ23側へ向かって延びる排水配管42とは途中で合流することなく、排水トラップ23へ接続される。よって、洗い場床12からの排水および浴槽11からの排水の両者を一本の排水配管で排水する必要がない。したがって、洗い場床12および浴槽11の両者から大量の排水が排水配管に流れ込んだ場合であっても排水性を確保できるよう、内部流路の断面積が大きな排水配管を用いる必要がなくなる。よって、洗い場床12の下方に配設される排水配管41、42それぞれに高さ方向の寸法が小さな排水配管を用いやすくなるため、浴室空間の狭小化やデザイン性の低下を招くことなく、洗い場床の低床化が可能となる。
【0022】
また、本発明の実施形態では、排水配管41および排水配管42はそれぞれ、脱衣室2側へ向かって下降傾斜する傾斜管部411、421を有している。
図5は、傾斜管部411の横断面図である。また、
図6は、傾斜管部411、421が接続された排水トラップ23の斜視図である。
図5、6に示す通り、傾斜管部411は、横断面が真円形状ではなく、横長偏平形状に形成されている。同様に、傾斜管部421も、横断面が、横長偏平形状に形成されている。このため、横断面を真円形状に形成する場合と同様の内部流路412の断面積を確保しつつ、傾斜管部411、421を薄く形成することができる。すなわち、排水の排出能力の低下なく、傾斜管部411、421を薄くすることができる。
【0023】
なお、本発明の実施形態では、洗濯機パン3の排水口31に接続されている洗濯機パン用排水トラップ32とは別に排水トラップ23を設け、この排水トラップ23に排水配管41、42を接続していたが、本発明の排水構造はこれに限定されない。例えば、排水トラップ23を設けることなく、洗濯機パン3に設けた洗濯機パン用排水トラップ32に排水配管41、42を接続しても構わない。
【符号の説明】
【0024】
1:浴室
11:浴槽
111:排水口(第1の排水口)
12:洗い場床
121:排水口(第2の排水口)
122:排水凹部
13:壁パネル
14:出入り口
2:脱衣室
21:床
211:点検口
212:点検口蓋
22:凹状部材
23:排水トラップ
3:洗濯機パン
31:排水口
32:洗濯機パン用排水トラップ
41:排水配管(第1の排水配管)
411:傾斜管部
412:内部流路
42:排水配管(第2の排水配管)
421:傾斜管部
43:排水管
6:スラブ面
7:架台