特許第6858345号(P6858345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン・エィ・ダブリュ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6858345-プリント配線基板 図000002
  • 特許6858345-プリント配線基板 図000003
  • 特許6858345-プリント配線基板 図000004
  • 特許6858345-プリント配線基板 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6858345
(24)【登録日】2021年3月26日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】プリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   H05K3/46 N
   H05K3/46 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-66652(P2017-66652)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-170403(P2018-170403A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】深谷 真弘
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−149336(JP,A)
【文献】 特開平07−169877(JP,A)
【文献】 特開昭61−053792(JP,A)
【文献】 特開平09−055423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線層から第n配線層と、
前記第1配線層から第n配線層における各配線層の間に配置された絶縁材と、
前記第1配線層に形成された、電源供給元回路が接続される第1電源配線と、
前記第1配線層に形成された、電源供給先回路が接続される第2電源配線と、
前記第2配線層から第n配線層のうちのいずれかの配線層に形成され、前記第1電源配線の投影領域と前記第2電源配線の投影領域を含み、両投影領域を接続する第3電源配線と、
前記第1電源配線と前記第3電源配線とを電気的に接続する複数の第1電源ビアと、
前記第2電源配線と前記第3電源配線とを電気的に接続する複数の第2電源ビアと、を備え、
前記複数の第1電源ビアは、前記電源供給元回路から前記電源供給先回路に向かう方向よりも、直交方向に長い領域に配置され
前記第3電源配線は、前記第1電源ビアが配置される第1端部領域と、前記電源供給先回路への供給電力に対応する幅の中間領域と、前記第2電源ビアが配置される第2端部領域とを備え、
前記中間領域の両端側は、それぞれ前記第1端部領域、前記第2端部領域に向かって拡幅する第1接続領域、第2接続領域で接続されている、
ことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記第3電源配線の前記電源供給元回路側の端部と、前記第1電源配線は、前記直交方向に長く形成され、前記複数の第1電源ビアが配置される領域を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記複数の第2電源ビアは、前記電源供給元回路から前記電源供給先回路に向かう方向よりも、直交方向に長い領域に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
前記第3電源配線の前記電源供給先回路側の端部と、前記第2電源配線は、前記直交方向に長く形成され、前記複数の第2電源ビアが配置される領域を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板に係り、例えば、コア層の両面側に配線用の各層が配置されたプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の普及に伴い、回路を構成する電子部品同士を接続する配線や、各電子部品に信号を伝送する配線や、電力を供給する配線が配設されたプリント配線基板が広く使用されている。
このプリント配線基板では、プリント配線基板上に配置する他の回路配線との干渉を避けるために、配線層を多層化することで配線層を変更している。異なる層に形成された配線を電気的に接続する場合には、ビア接続が使用されている。
電源供給元回路から電源供給先回路に電力を供給するための配線を他の配線層に変更する場合も同様で、層変更箇所の近傍において、電源供給先回路の消費電力に適した数量の電源ビアが形成される。
例えば、特許文献1では、第4の内層に電源配線を形成し、表面層から電源配線を接続する複数本の電源ビアが形成されている。
【0003】
図4は、従来のプリント配線基板における、電源ビアの配置状態を表した説明図である。
図4(a)は第1配線層の平面図で、電源供給元回路150と、電源供給元回路150からの電流が流れる電源配線121が形成されている。
一方、図4(b)は第5配線層の平面図で、第5配線層に電源配線125が形成されている。
そして、電源配線121から電源配線125まで貫通する電源ビア120が、電源供給先回路(図示しない)の消費電力に応じた数だけ形成されている。
これにより、電源供給元回路150からの電流Iは、第1配線層の電源配線121から各電源ビア120、第5配線層の電源配線125を経由して、同様に複数配設された電源ビア120(図示しない)から電源供給先回路に供給される。
【0004】
しかし、図4に示すように複数の電源ビア120を、電源供給元回路150から電源供給先回路方向(水平方向)に並べて配置している。このため、電源供給元回路150から離れた側の領域Bに比べ、近い側の領域A内の電源ビア120に電流が集中してしまっていた。
各電源ビア120に均等に電流が流れず、一部の電源ビア120に電流Iが集中することで、電源インピーダンスが増加してしまっていた。
単純に電源ビア120の数量を増やしたとしても、電源供給元回路150から更に離れた位置に配置することになるため、ビア数を増加しても電源インピーダンス低下の効果は低く、逆に、電源配線の面積が増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−4830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電源供給用に複数の電源ビアを配置した場合に、電源インピーダンスの増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明では、第1配線層から第n配線層と、前記第1配線層から第n配線層における各配線層の間に配置された絶縁材と、前記第1配線層に形成された、電源供給元回路が接続される第1電源配線と、前記第1配線層に形成された、電源供給先回路が接続される第2電源配線と、前記第2配線層から第n配線層のうちのいずれかの配線層に形成され、前記第1電源配線の投影領域と前記第2電源配線の投影領域を含み、両投影領域を接続する第3電源配線と、前記第1電源配線と前記第3電源配線とを電気的に接続する複数の第1電源ビアと、前記第2電源配線と前記第3電源配線とを電気的に接続する複数の第2電源ビアと、を備え、前記複数の第1電源ビアは、前記電源供給元回路から前記電源供給先回路に向かう方向よりも、直交方向に長い領域に配置され、前記第3電源配線は、前記第1電源ビアが配置される第1端部領域と、前記電源供給先回路への供給電力に対応する幅の中間領域と、前記第2電源ビアが配置される第2端部領域とを備え、前記中間領域の両端側は、それぞれ前記第1端部領域、前記第2端部領域に向かって拡幅する第1接続領域、第2接続領域で接続されている、ことを特徴とするプリント配線基板を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記第3電源配線の前記電源供給元回路側の端部と、前記第1電源配線は、前記直交方向に長く形成され、前記複数の第1電源ビアが配置される領域を含んでいる、ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記複数の第2電源ビアは、前記電源供給元回路から前記電源供給先回路に向かう方向よりも、直交方向に長い領域に配置されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント配線基板を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記第3電源配線の前記電源供給先回路側の端部と、前記第2電源配線は、前記直交方向に長く形成され、前記複数の第2電源ビアが配置される領域を含んでいる、ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載のプリント配線基板を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の第1電源ビアは、電源供給元回路から電源供給先回路に向かう方向よりも、直交方向に長い領域に配置されているので、電源インピーダンスの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態において配置される各回路の状態を表したプリント配線基板全体の平面図である。
図2】本実施形態のプリント配線基板における電源ビアの配置状態を表した断面図である。
図3】本実施形態のプリント配線基板における、電源ビアの配置状態を表した説明図である。
図4】従来のプリント配線基板における、電源ビアの配置状態を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のプリント配線基板における好適な実施の形態について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態では、複数の電源ビアを配置する場合に、電源供給元回路50から電源供給先回路60に向かう方向と直交する方向に配置する。これにより、各電源ビア20に電流が略均等に流れ、その結果、一部の電源ビアへの電流集中を防ぎ、電源インピーダンスの増加が抑制される。
これは、流れる電流が減少する位置の手前までの距離(限界距離)の範囲内に各電源ビア20が配置されているためである。すなわち、直交方向の端部に配置された電源ビア20も、電源供給元回路50の端部からの距離が限界距離以内に位置するため、直交方向の端部に配置された電源ビア20を含め均等に電流が流れ、その結果電源インピーダンスの増加が抑制される。
そして、電源インピーダンスの増加が抑制されることで、より少ない数量(最低限)の電源ビアで所望の電源インピーダンスを満たすことができる。
【0011】
(2)実施形態の詳細
図1は本実施形態において配置される各回路の状態を表したプリント配線基板1全体の平面図である。
図1はプリント配線基板の1例であり、プリント配線基板が使用される各種電子機器を構成する、DRAM、Flashメモリなどの他、USB等の外部接続端子などの各種素子が配置されている。プリント配線基板には、後述する配線層(図示しない)が絶縁体を介して複数層配設され、各配線層に形成された配線によって各素子間が接続されている。
またプリント配線基板1には、電源供給元回路50と、電源供給先回路60が配置されている。
本実施形態では、電源供給元回路50から電源供給先回路60に電力を供給するための電源ビアとGNDビアの配置に特徴がある。そのため、以下の説明では、図1において電源供給元回路50と電源供給先回路60を含む、点線領域Pを中心に説明する。
【0012】
図2は、本実施形態のプリント配線基板1における電源ビア20の配置状態を表した断面図である。
図2に示すように、プリント配線基板1の最上層である第1配線層11には電源供給元回路50と電源供給先回路60が配設されている。そして、第1配線層11には、電源供給元回路50に接続された電源配線21(第1電源配線)と、電源供給先回路60に接続された電源配線22(第2電源配線)が形成されている。
本実施形態のプリント配線基板1は、絶縁材であるコア層10を挟んでその一方の面側に第1配線層11〜第3配線層13が形成され、他方の面側に第4配線層14〜第6配線層16が形成されている。すなわち、本実施形態では第m配線層として第3配線層13が形成され、第n配線層として第6配線層16が形成されている。
【0013】
コア層10は、プリント配線基板1内でコア材を使用している層であり、本実施形態ではガラス・エポキシ樹脂(FR−4)が使用されているが、グリーンシート(セラミック基板)等の各種公知の材料を使用することができる。
本実施形態のコア層の一方の面には第3配線層が形成され、他方の面には第4配線層が形成されている。
【0014】
第1配線層11から第3配線層13の各層間、及び、第4配線層14から第6配線層16の各層間には、絶縁材が配設されている。絶縁材としては、多層基板かビルドアップ基板かにより、プリプレグという接着シートを使用する等の各製造方法に応じた絶縁材が使用される。
第1配線層11〜第6配線層16には各素子を接続するための配線が形成されている。配線は銅箔で形成されている。
【0015】
また、図2に示すように、第5配線層15には、他の配線との干渉を避けるための電源配線25(第3電源配線)が形成されている。電源配線25は、電源供給元回路50が接続される電源ビア20(第1電源ビア)と、電源供給先回路60が接続される電源ビア20(第2電源ビア)とを第5配線層15で接続している。
これにより、電源供給元回路50と電源供給先回路60とが、両側の電源ビア20と電源配線25を介して接続され、図中に矢印で示すように電流Iが流れる。
なお、本実施形態では、電源配線25を第5配線層に形成する場合について説明するが、第1配線層11以外の他の配線層に形成するようにしてもよい。
【0016】
図3は、本実施形態におけるプリント配線基板1における、電源ビアの配置状態を表した説明図である。図3(a)は第1配線層11の電源供給元回路50と電源配線21の平面図、(b)は第5配線層15に配置される電源配線25の平面図である。
なお、図3では、電源供給元回路50側について表しているが、電源供給先回路60も同様に形成される。
【0017】
図3(a)に示すように、本実施形態では、電源供給元回路50に接続される電源配線21の形状を、電源供給元回路50から電源供給先回路60に向かう方向と直交する方向(以下直交方向という)に長くなるように形成している。
電源配線21には、電源供給元回路50と面した領域A(図4(a)に示す従来と同じ領域)に、電源ビア20が形成されると共に、その直交方向両側の領域Cに同数の電源ビア20が形成される。この領域Cの電源ビア20は、図4(a)に示した、電流Iの流れが悪くなる従来の領域Bに形成した電源ビアを、領域Aに対して直交する方向の両側に半数ずつ移動したものである。
【0018】
第5配線層15に形成した電源配線25は、図3(b)に示すように、電源配線25a(第1端部領域)と、電源供給先回路60側に延設される電源配線25c(中間領域)と、電源配線25aと電源配線25cとを接続する台形形状の電源配線25b(第1接続領域)から構成されている。
電源配線25cは、配線の配置位置を第5配線層に変更して電源供給元回路50からの電流Iを電源供給先回路60に供給するためのものであり、その幅は、従来と同様に電源供給先回路60に供給する電力に応じた幅に形成される。
なお、上述したように図示していないが、電源供給先回路60側にも、第1配線層11の電源配線22の投影領域に形成された電源配線(第2端部領域)と、この電源配線と電源配線25cとを接続する台形形状の電源配線(第2接続領域)とが形成されている。
【0019】
電源配線25aは、電源配線21の投影領域に、電源配線21と同一形状に形成され、それぞれ領域A、領域Cの各電源ビア20で接続されている。
この両領域Cに配置した電源ビア20は、いずれも電源供給元回路50の角部(電源配線21に接続される端面の両端部)からの距離が従来の領域B内の電源ビアまでの距離よりも短くなる(限界距離以内)ことで、領域Aの電源ビア20への電流の集中が抑制される。
【0020】
そして、電源ビア20を流れる電流は、第5配線層15の電源配線25aから、電源配線25b、電源配線25cを通り、電源供給先回路60に形成された図示しない電源配線と電源ビア20及び電源配線22を通り電源供給先回路60に供給される。
この際、電源配線25aと電源配線25cを直接接続せずに、台形形状の電源配線25bにより接続しているので、電源インピーダンスの増加が抑制されている。
なお、本実施形態では、電源配線25aと電源配線25cとを、電源配線25bを介して接続する場合について説明したが、電源配線25aと電源配線25cとを直接接続するようにしてもよい。この場合、電源配線25aと電源配線25cの幅は同一であっても、異なる幅であってもよい。以上の関係は電源供給先回路60側においても同様であり、電源配線22の投影領域に形成された電源配線25d(図示しない)と、電源配線25cとを直接接続するようにしてもよく、この場合の両電源配線25c、25dは同一幅、異なる幅のいずれでもよい。
【0021】
以上説明したように、図3で説明した実施形態では、図4に示した従来との比較で同数の電源ビアを設ける場合について説明したが、本実施形態では、領域A内の電源ビア20への電源集中が抑制されるので、より少ない数の電源ビア20で所望の電源インピーダンスを満たすことができる。
そのため図3の両領域Cに形成する電源ビア20を減らしても、電源供給先回路60への電力の要求を満たすことができる場合には、例えば、電源供給元回路50から最も離れた領域C内の電源ビアを省略することができる。具体的には、図3(a)において図面上側の領域Cにおける右上の電源ビア20と、下側の領域Cにおける右下の電源ビア20を省略することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 プリント配線基板
11〜16 第1配線層〜第6配線層
20 電源ビア
21、22 電源配線
25a、25b、25c 電源配線
50 電源供給元回路
60 電源供給先回路
図1
図2
図3
図4