(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術である特許文献1に開示された発明は、反応溶液が入れられた容器の厚さが異なる場合には共通して使用することができないという課題があった。また、当該容器が柔軟な部材で形成され、表面の形状が必ずしも平坦な状態にならない場合には、反応溶液の温度を正確にコントロールすることが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、厚さの異なる複数の容器に対しても共通して使用することが可能であって、柔軟な部材で形成されており、表面の形状が必ずしも平坦な状態でない容器に反応溶液が封入されているような場合でも、その温度を正確にコントロールすることが可能なサーマルサイクラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明であるサーマルサイクラーは、反応溶液が入れられた容器の上下へ対称に配置され、連結手段を介して上下方向へスライド可能に連結される一対の温度調節ユニットを備え、この温度調節ユニットは、片面が容器へ当接可能に設置された金属板と、この金属板の容器へ当接しない側の面に密着するように設置されたペルチェ素子と、このペルチェ素子を保持しつつ、金属板の容器へ当接しない側の面に設置された板状部材と、この板状部材の金属板と接触しない側の面に設置されたヒートシンクと、金属板に設置された温度センサと、電流制御回路と演算部と電源部を備えてペルチェ素子に接続された制御ユニットと、からなり、連結手段は、一方の温度調節ユニットの側面に立設されたガイド部材と、このガイド部材を保持しつつ、長手方向へ案内するガイド穴が上下方向へ長く形成されるとともに、他方の温度調節ユニットの側面に固定される連結部材と、からなることを特徴とするものである。
【0008】
上記構造のサーマルサイクラーにおいては、上方に配置された温度調節ユニットの高さを変更することで、一対の金属板の間隔が自在に調節されるという作用を有する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、一対の温度調節ユニットは、容器の上下へ対称に配置されて上下方向へスライド可能に連結される代わりに、容器の左右へ対称に配置されて連結手段を介して横方向へスライド可能に連結され、連結部材のガイド穴は、上下方向へ長く形成される代わりに、横方向へ長く形成されたことを特徴とするものである。
このような構造のサーマルサイクラーにおいては、第1の発明の作用に加えて、注入口を上に向けた状態で容器をセットすれば、注入口が接合されていない場合でも容器の内部から反応溶液がこぼれ出すおそれがないという作用を有する。
【0010】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、金属板は、容器に当接する箇所に凹部が設けられたことを特徴とするものである。
上記構造のサーマルサイクラーにおいては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、柔軟な部材で形成され、必ずしも表面の形状が平坦な状態とはならない容器に反応溶液が封入されて、その表面が膨らんでいる場合でも、凹部によって容器の表面に対する金属板の密着性が高まるという作用を有する。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、金属板の凹部は、容器全体を収容可能に形成されたことを特徴とするものである。
【0012】
このような構造のサーマルサイクラーにおいては、第3の発明の作用に加え、一対の金属板が閉じられた際にそれらの凹部によって形成される空間の内部の温度が外気の温度の影響を受け難いという作用を有する。
【0013】
第5の発明は、第1の発明において、貫通穴を有し、連結部材のガイド穴によって保持されつつ、長手方向へ案内される保持板を備え、ガイド部材は、断面が円形をなす凸状体であって、ガイド穴によって保持される代わりに、貫通穴に挿通された状態で保持板によって回動自在に保持されることを特徴とするものである。
このような構造のサーマルサイクラーにおいては、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器が膨らみ、その表面が平坦な状態になっていない場合でも、温度調節ユニットの一方が揺動することにより、容器の上面の形状に合うように金属板が傾斜するという作用を有する。
【0014】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれかにおいて、容器は、プラスチックフィルムからなり、反応溶液が注入される注入口を除く周縁部が接合された袋状部材であることを特徴とするものである。
このような構造によれば、反応溶液を注入した後に、注入口を上に向けた状態で容器の側面を押すと、反応溶液よりも先に内部の空気が注入口から排出されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、第1の発明では、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器が膨らんだ状態になっている場合でも、一対の金属板の間隔を調節することで、容器に対する金属板の密着性を高めて金属板と容器の間の熱伝達率を向上させることができる。したがって、容器が上述のような状態でも、本発明のサーマルサイクラーを用いることによれば、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることが可能である。
【0016】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、反応溶液を加熱して、その温度を所定のパターンで変化させながら、容器の注入口から所望の試薬等をその内部に適宜、注入することができるため、試験時の作業効率が格段に向上するという効果を奏する。
【0017】
第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、柔軟な部材で形成された容器に反応溶液が封入されることで、容器の表面が膨らんだ状態となっている場合でも、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることができるという効果が発揮される。
【0018】
第4の発明によれば、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることができるという効果が第3の発明よりもさらに一層発揮される。
【0019】
第5の発明によれば、第1の発明の効果に加え、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器が膨らんだ状態になっている場合でも、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることができるという効果を奏する。
【0020】
第6の発明によれば、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の効果に加え、注入される反応溶液の量の多少によらず、容器の内部にできるだけ空気が含まれない状態にして、ペルチェ素子から反応溶液への熱伝達の効率を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のサーマルサイクラーは、反応溶液が入れられた容器を2つのペルチェ素子によって両側から加熱することにより、反応溶液の温度を正確に変化させるものである。以下、その具体的な構造と、それに基づく作用・効果について
図1乃至
図8を参照しながら具体的に説明する。なお、図が煩雑になるのを避けるため、ペルチェ素子に接続された配線や温度センサについては、その図示を省略している。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明のサーマルサイクラーの第1の実施例の構成図であり、
図2(a)及び
図2(b)はそのサーマルサイクラーを構成する温度調節ユニットの側面図と平面図であり、
図2(c)は
図2(a)におけるA−A線矢視断面の拡大図である。また、
図2(d)及び
図2(e)はそれぞれ
図1又は
図2(a)に示した連結部材と容器の平面図である。
なお、
図1に示した温度調節ユニットは
図2(a)に示した温度調節ユニットの正面図に相当する。また、本実施例のサーマルサイクラーは加熱対象物の容器を中心として上下対称の構造となっているため、
図2(b)は
図1又は
図2(a)に示した温度調節ユニットを上方又は下方のいずれか一方から見た状態を表したものに相当する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、サーマルサイクラー1aは略直方体状をなし、反応溶液が入れられた容器2を挟んで上下対称に配置される一対の温度調節ユニット3a,3aと、矩形状の金属板からなる連結部材4を備えており、その上面と下面の4隅には円柱状の支持部材5がそれぞれ取り付けられている。
また、容器2は、ポリプロピレン製のフィルムによって形成された平面視矩形状をなす厚さ35μmの袋状部材であり、注入口2aを除く周縁部(
図2(d)に破線で示した部分)が接合されている。すなわち、容器2は、反応溶液を注入した後に注入口2aを熱融着等の方法によって密閉することにより、反応溶液が内部に封入される構造となっている。
このような構造の容器2においては、反応溶液を注入した後に、注入口2aを上に向けた状態で側面を押すと、反応溶液よりも先に内部の空気が注入口2aから排出されるという作用を有する。すなわち、容器2を用いることによれば、注入される反応溶液の量の多少によらず、できるだけ容器2の内部に空気が含まれない状態にできるため、ペルチェ素子から反応溶液への熱伝達の効率が高まるという効果を奏する。
【0025】
温度調節ユニット3は、平面視矩形状をなす金属板6と、容器2に当接しない側の面(以下、非当接面6aという。)に一方の面全体が密着するように設置されたペルチェ素子(図示せず)と、発泡材からなり、略中央に配置されたペルチェ素子を保持しつつ、金属板6の非当接面6aを覆うように設置された板状部材7と、片側にフィン8を有し、板状部材7の金属板6に接触しない側の略全面に密着するように設置されたヒートシンク9と、フィン8の先端に接触するように設置される冷却ファン10によって構成されている。
なお、板状部材7は、金属板6とヒートシンク9を直に接触させないようにするためのものである。したがって、板状部材7に用いられる部材は、ペルチェ素子を保持しつつ、断熱材として機能するものあれば良く、発泡材に限られない。また、本実施例では、金属板6をアルミニウム製としているが、これ以外の金属を用いることもできる。
【0026】
また、ペルチェ素子には、電流制御回路11と演算部12と電源部13を備えた制御ユニット14が接続されており、一対の金属板6,6の間には、テープ形の温度センサ(図示せず)が設置されている。そして、この温度センサによる検出結果は制御ユニット14に送られた後、演算部11において、電流制御回路11からペルチェ素子に供給する電流が求められる。
すなわち、制御ユニット14は、ペルチェ素子の電源としての機能を有するとともに、温度センサによって検出された金属板6の温度データに基づいて、ペルチェ素子に供給する電流を調節して、金属板6の温度を制御するという機能を有している。
なお、本実施例では、テープ形の温度センサを用いているが、温度センサは、テープ形に限らず、例えば、熱電対やシート形のものを用いることもできる。
【0027】
連結部材4は、矩形状の開口部4aを有しており、この開口部4aの両側にその長手方向と平行に一対のガイド穴4b,4bが設けられるとともに、一対のネジ挿通穴4c,4cがガイド穴4b,4bから所定の間隔をあけて設けられている。また、連結部材4を、その片面がヒートシンク9の側面と平行をなし、かつ、ガイド穴4bの長手方向が温度調節ユニット3a,3aの上下方向と平行をなすように配置した際に、一対のガイド穴4b,4b又は一対のネジ挿通穴4c,4cと連通するように、一対のネジ穴9a,9a(
図2(c)又は
図4(f)参照)が各温度調節ユニット3aを構成するヒートシンク9の側面にそれぞれ設けられている。
【0028】
なお、連結部材4の開口部4aは、金属板6,6と容器2の接触状態を連結部材4が設置されている側からも目視で確認できるようにするとともに、フィン8やヒートシンク9からの熱の発散を阻害しないように設けられているものである。したがって、温度調節ユニット3aが、そのような機能を十分に発揮できるような大きさや形状であれば、連結部材4に開口部4aを設けない構造としても良い。
また、連結部材4は、ネジ挿通穴4c,4c(
図2(d)参照)に挿通され、先端がネジ穴9a,9a(
図4(f)参照)にそれぞれ螺入されたネジ15a,15aによって、下方に配置された温度調節ユニット3aに対してネジ止めされている。また、ワッシャ16,16にそれぞれ挿通された状態で、上方に配置された温度調節ユニット3aのヒートシンク9のネジ穴9a,9a(
図2(c)参照)に先端がそれぞれ螺入されたネジ15b,15bが、連結部材4のガイド穴4b,4bに対し、その長手方向へ移動可能に挿通されている。
【0029】
すなわち、上方に配置された温度調節ユニット3aのヒートシンク9のネジ穴9aに螺入されたネジ15bは、ヒートシンク9の側面に立設されて、連結部材4のガイド穴4bによってその長手方向へ案内可能に保持されるガイド部材としての機能を有する。そして、温度調節ユニット3a,3aは、このガイド部材と連結部材4からなる連結手段を介して上下方向へスライド可能に連結された構造となっている。
このような構造のサーマルサイクラー1aにおいては、連結部材4のガイド穴4b,4bに挿通されたネジ15b,15bを緩めることで、下方に配置された温度調節ユニット3aに対して、上方に配置された温度調節ユニット3aが上下方向へスライド可能となり、上述のネジ15b,15bを再び締め付けることにより、上方に配置された温度調節ユニット3aが所望の高さで固定されるという作用を有する。
【0030】
このように、サーマルサイクラー1aでは、上方に配置された温度調節ユニット3aの高さを変更することにより、封入される反応溶液の量の違いにより容器2の厚さが異なる場合でも、容器2の厚さに応じて金属板6,6の間隔を調節可能な構造となっている。
したがって、サーマルサイクラー1aにおいては、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器2が膨らんだ状態になっている場合でも、金属板6,6の間隔を調節することで、容器2に対する金属板6,6の密着性を高めることができる。これにより、金属板6,6と容器2の間の熱伝達率が向上する。
以上説明したように、サーマルサイクラー1aによれば、容器2に大容量の反応溶液が封入されている場合でも、ペルチェ素子によって発生した熱を金属板6と容器2を介して反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることが可能である。
【実施例2】
【0031】
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ本発明のサーマルサイクラーの第2の実施例を構成する温度調節ユニットの正面図及び側面図であり、
図3(c)は上方に配置された温度調節ユニットの正面図であり、
図3(d)は
図3(b)におけるB−B線矢視断面の拡大図である。
また、
図4(a)乃至
図4(d)は本実施例のサーマルサイクラーを構成する保持板とネジ固定板の外観を示している。具体的には、
図4(a)及び
図4(b)はそれぞれ保持板の平面図及び正面図であり、
図4(c)及び
図4(d)はそれぞれネジ固定板の平面図及び正面図である。そして、
図4(e)及び
図4(f)は本実施例のサーマルサイクラーの作用を説明するための図であり、一対の温度調節ユニットの側面図に相当する。
なお、
図1及び
図2に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。また、
図3(a)及び
図3(b)には、本実施例のサーマルサイクラーの全体が示されているわけではないが、それらの図に示されている構造が実施例1のサーマルサイクラー1aとは異なることを明確にするために、便宜上、サーマルサイクラー1bと表記している。さらに、
図4(e)及び
図4(f)では、保持板を破線で示すとともに、
図3(a)及び
図3(b)に示した構成要素の一部について、符号の図示を省略している。
【0032】
図3及び
図4に示すように、本実施例のサーマルサイクラー1bは、サーマルサイクラー1aにおいて、上方に配置された温度調節ユニット3aの代わりに、温度調節ユニット3bが配置されるとともに、平面視長方形をなす金属製の板材からなる保持板17とネジ固定板18を備えたことを特徴とする。また、連結部材4と温度調節ユニット3aの間には、ネジ固定板18と同じ厚さで、ネジ15a,15aの挿通穴(図示せず)を有する金属製の板材からなるスペーサ27が設置されている。
温度調節ユニット3bでは、ヒートシンク9の側面に、ネジ穴9a,9aが設けられる代わりに、断面が円形をなす凸状体9bが幅方向の中心に立設されている。また、保持板17は、長手方向の略中央に凸状体9bを挿通可能な貫通穴17bを有する円筒状の保持部17aが立設され、両端部の近傍にネジ挿通穴17c,17cが設けられるとともに、側面視した場合に保持部17aが設けられた部分が両端部よりも凹んだ状態になるように曲折されている。さらに、ネジ固定板18は、長手方向の略中央に凸状体9bを挿通可能な貫通穴18aが設けられ、両端部の近傍にネジ15bが螺入されるネジ穴18b,18bが設けられている。
なお、ネジ固定板18のネジ穴18b,18bは、貫通穴18aが貫通穴17bに連通するようにネジ固定板18を保持板17に重ねた場合に、ネジ挿通穴17c,17cに連通するように設けられている(
図3(d)参照)。
【0033】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、保持板17は、温度調節ユニット3bのヒートシンク9の凸状体9bが保持部17aの貫通穴17bに挿入された状態で、ワッシャ16とネジ挿通穴17cと連結部材4のガイド穴4bに挿通されて先端がネジ穴18bに螺入されたネジ15bにより、貫通穴18aに上述のヒートシンク9の凸状体9bが挿入されたネジ固定板18に対してネジ止めされている。
したがって、連結部材4のガイド穴4b,4bに挿通されたネジ15b,15bを緩めると、保持板17とネジ固定板18はネジ15b,15bがガイド穴4b,4bの内部で移動可能な範囲で上下方向へスライド可能となり、ネジ15b,15bを再び締め付けると、連結部材4に対して固定される。
【0034】
すなわち、サーマルサイクラー1bでは、保持板17が連結部材4のガイド穴4b,4bによって保持されつつ、その長手方向へ案内される。このとき、凸状体9bは、貫通穴17bに挿通された状態で保持板17によって回動自在に保持されるガイド部材としての機能を有する。
そして、保持板17とネジ固定板18は、連結部材4とともに、温度調節ユニット3bを温度調節ユニット3aに対して、上下方向へスライド可能、かつ、揺動可能に連結する連結手段として機能する。
このような構造のサーマルサイクラー1bにおいては、連結部材4のガイド穴4b,4bに挿通されたネジ15b,15bを緩めると、下方に配置された温度調節ユニット3aに対して、上方に配置された温度調節ユニット3bが上下方向へスライド可能であって、かつ、
図4(e)及び
図4(f)に矢印C1,C2で示したように揺動可能な状態となり、上述のネジ15b,15bを再び締め付けることにより、温度調節ユニット3bが所望の高さで固定されるという作用を有する。
【0035】
このように、サーマルサイクラー1bでは、上方に配置された温度調節ユニット3bを揺動可能な状態で、その高さを調節できるため、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器2が膨らみ、その表面が平坦な状態になっていない場合でも、温度調節ユニット3bが揺動することにより、容器2の上面の形状に合うように温度調節ユニット3bの金属板6を傾斜させて、容器2に対する金属板6,6の密着性を高めることが可能である。
したがって、サーマルサイクラー1bによれば、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器2が膨らんだ状態になっている場合でも、ペルチェ素子によって発生した熱を金属板6と容器2を介して反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることができるという実施例1で説明したサーマルサイクラー1aの効果がより一層発揮される。
【0036】
なお、実施例1のサーマルサイクラー1aにおいて、連結部材4のガイド穴4b,4bの幅よりも外径が小さいネジ15b,15bを用いて、それらを個別に締め付けるようにすれば、上方に配置された温度調節ユニット3aを下方に設置された温度調節ユニット3aに対して傾けた状態で固定することができる。
このような構造であれば、内部に大容量の反応溶液が封入されて容器2が膨らみ、その表面が平坦な状態になっていない場合でも、容器2の上面の形状に合うように上方の温度調節ユニット3aの金属板6を下方の温度調節ユニット3aの金属板6に対して傾斜させて、容器2に対する金属板6,6の密着性を高めることができるという効果がサーマルサイクラー1bの場合と同様に発揮される。
また、本実施例の保持板17は、側面視した場合に保持部17aが設けられた部分が両端部よりも凹んだ状態になるように曲折された構造となっているが、保持板17は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、ネジ固定板18のように平坦な構造であっても良い。
【実施例3】
【0037】
図5(a)は本発明のサーマルサイクラーの第3の実施例を構成する金属板の外観斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)におけるD−D線矢視断面図である。また、
図5(c)は本実施例のサーマルサイクラーの使用時の容器の状態を説明するための図である。
なお、
図5(c)は
図5(b)にヒートシンクの一部と板状部材の断面図を追加して拡大した状態を示している。また、
図5(c)には、本実施例のサーマルサイクラーの全体が示されているわけではないが、その図に示されている構造が実施例1や実施例2として説明したサーマルサイクラー1a,1bとは異なることを明確にするために、便宜上、サーマルサイクラー1cと表記している。そして、
図1及び
図2に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
図5(a)乃至
図5(c)に示すように、本実施例のサーマルサイクラー1cは、実施例1のサーマルサイクラー1aにおいて、金属板6,6に代えて、容器2の全体を収容可能に凹部19aがそれぞれ形成された金属板19,19を備えたことを特徴とする。
このような構造のサーマルサイクラー1cにおいては、金属板19,19が閉じられた際に凹部19a,19aによって形成される空間の内部の温度が外気の温度の影響を受け難いため、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることができるというサーマルサイクラー1aの効果がより一層発揮される。
【実施例4】
【0039】
図6(a)及び
図6(b)は本発明のサーマルサイクラーの第4の実施例を構成する2種類の金属板の外観斜視図であり、
図6(c)及び
図6(d)はそれぞれ
図6(a)におけるE−E線矢視断面図及び
図6(b)におけるF−F線矢視断面図である。また、
図6(e)は本実施例のサーマルサイクラーの使用時の容器の状態を説明するための図である。
なお、
図6(e)は実施例3の
図5(c)に相当する図である。また、
図6(e)には、本実施例のサーマルサイクラーの全体が示されているわけではないが、その図に示されている構造が実施例1乃至実施例3として説明したサーマルサイクラー1a〜1cとは異なることを明確にするために、便宜上、サーマルサイクラー1dと表記している。そして、
図1及び
図2に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
図6(a)乃至
図6(e)に示すように、本実施例のサーマルサイクラー1dは、実施例3のサーマルサイクラー1cにおいて、金属板19,19に代えて、容器2の全体を収容可能であって、周縁部がオーバーラップするように凹部20a,21aがそれぞれ形成された金属板20,21を備えたことを特徴とする。
このような構造のサーマルサイクラー1dにおいては、容器2を凹部20a,21aの内部に収容しつつ、金属板20と金属板21の間隔を調節することが可能である。したがって、金属板20,21が閉じられた際に凹部20a,21aによって形成される空間の内部の温度が外気の温度の影響を受け難いという作用に加え、封入された反応溶液の量が少なく、容器2が薄い場合には、上述の凹部20a,21aによって形成される空間を小さくすることで、その内部に存在する空気の量が少なくなるという作用を有する。
このような作用により、サーマルサイクラー1dでは、サーマルサイクラー1cよりも、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液にさらに効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることが可能である。
【実施例5】
【0041】
図7(a)及び
図7(b)は本発明のサーマルサイクラーの第5の実施例を構成する2種類の金属板の外観斜視図であり、
図7(c)及び
図7(d)はそれぞれ
図7(a)及び
図7(b)に示した金属板の側面図である。また、
図7(e)は本実施例のサーマルサイクラーの使用時の容器の状態を説明するための図である。
なお、
図7(e)は実施例3の
図5(c)や実施例4の
図6(e)に相当する図である。また、
図7(e)には、本実施例のサーマルサイクラーの全体が示されているわけではないが、その図に示されている構造が実施例1乃至実施例4として説明したサーマルサイクラー1a〜1dとは異なることを明確にするために、便宜上、サーマルサイクラー1eと表記している。そして、
図1及び
図2に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
図7(a)乃至
図7(e)に示すように、本実施例のサーマルサイクラー1eは、実施例1のサーマルサイクラー1aにおいて、金属板6,6に代えて、容器2に当接する側の面に、連続した滑らかな曲面によって形成される凹状曲面部22aと、この凹状曲面部22aよりも曲率の小さな曲面によって連続的に滑らかに形成される凸状曲面部23aをそれぞれ有する金属板22,23を備えたことを特徴とする。
このような構造のサーマルサイクラー1eにおいては、本実施例の容器2のように、柔軟な部材で形成されているために、必ずしも表面の形状が平坦な状態とはならない場合でも、金属板22,23は、容器に当接する側の面に、凹状曲面部22aと凸状曲面部23aがそれぞれ設けられているため、容器の表面との密着性が高いという作用を有する。
したがって、サーマルサイクラー1eによれば、柔軟な部材で形成され、必ずしも表面が平坦な状態とはならない容器を使用した場合でも、ペルチェ素子によって発生した熱を反応溶液に効率よく伝えて、その温度を所定のパターンで正確に変化させることができるという効果が発揮される。
【実施例6】
【0043】
図8(a)及び
図8(b)は本発明のサーマルサイクラーの第6の実施例を構成する温度調節ユニットの正面図及び側面図であり、
図8(c)は
図8(a)におけるG部の拡大図である。また、
図8(d)は本実施例において使用される容器の平面図である。そして、
図8(e)及び
図8(f)は本実施例のサーマルサイクラーを構成する2種類の金属板の外観斜視図である。
なお、
図8(a)及び
図8(b)には、本実施例のサーマルサイクラーの全体が示されているわけではないが、それらの図に示されている構造が実施例1乃至実施例5として説明したサーマルサイクラー1a〜1eとは異なることを明確にするために、便宜上、サーマルサイクラー1fと表記している。また、
図8(a)では、紙面手前側の連結部材4の図示を省略している。さらに、温度調節ユニット3cは、サーマルサイクラー1aの温度調節ユニット3aにおいて、支持部材5が上下面ではなく側面に取り付けられたものであり、実質的に温度調節ユニット3aと同じ構造であるため、各構成要素について、その符号の図示を省略している。そして、
図1及び
図2に示した構成要素についても同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
図8(a)乃至
図8(c)に示すように、本実施例のサーマルサイクラー1fは、実施例1のサーマルサイクラー1aにおいて、温度調節ユニット3a,3aが容器2の上下へ対称に配置されて連結部材4とネジ15aからなる連結手段を介して上下方向へスライド可能に連結される代わりに、温度調節ユニット3a,3aと実質的に同一構造の温度調節ユニット3c,3cが容器2に相当する容器26の左右へ対称に配置されて上記連結手段を介して横方向へスライド可能に連結されたことを特徴とする。すなわち、サーマルサイクラー1fは、サーマルサイクラー1aが横向きに設置された状態に相当する。
なお、サーマルサイクラー1fでは、容器26が落下しないように、金属板24,25の一辺に受け部24a,25aがそれぞれ設けられている(
図8(c)と
図8(e)及び
図8(f)参照)。
【0045】
このような構造のサーマルサイクラー1fでは、
図8(d)に示すように注入口26aが長い容器26を注入口26aが熱融着等によって接合されていない状態で使用した場合でも、
図8(a)に示すように注入口26aを上に向けた状態でセットすれば、内部から反応溶液がこぼれ出すおそれがない。
すなわち、サーマルサイクラー1fにおいては、注入口26aが接合されていない状態でも容器26を使用可能な構造となっている。したがって、サーマルサイクラー1fは、反応溶液を加熱して、その温度を所定のパターンで変化させながら、注入口26aから所定の試薬等を容器26の内部に適宜、注入することができるため、試験時の作業効率が格段に向上するという効果を有している。
また、サーマルサイクラー1fでは、容器26の出し入れを上方から行う構造であるため、容器2の出し入れを横方向から行う構造のサーマルサイクラー1a〜1eとは異なり、周囲に他の機器があっても支障なく、当該作業を行うことができるというメリットがある。
【0046】
上述の各実施例では、容器2や容器26をポリプロピレン製としているが、これに限定されるものではない。すなわち、容器2や容器26は、ポリアミド製のフィルム等、ポリプロピレン以外の柔軟性を有するプラスチックによって成形されたものであっても良い。ただし、PCR法では反応溶液を95℃まで加熱する必要があることから、それ以上の耐熱温度が有するプラスチックを用いることが望ましい。
また、実施例6のサーマルサイクラー1fにおいて、金属板6,6の代わりにサーマルサイクラー1cの金属板19,19やサーマルサイクラー1dの金属板20,21やサーマルサイクラー1eの金属板22,23を用いることもできる。この場合、実施例3乃至実施例5において説明したサーマルサイクラー1c〜1eの作用及び効果が同様に発揮される。ただし、金属板19〜21を用いる場合には、それらの内部に収まるように容器26のサイズを
図8(a)に示した状態よりも小さくする必要がある。